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特開2022-38876人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質とを含有する機能性材料組成物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038876
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質とを含有する機能性材料組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20220303BHJP
   E04B 1/78 20060101ALI20220303BHJP
   E04B 1/82 20060101ALI20220303BHJP
   E04B 1/86 20060101ALI20220303BHJP
   D01F 9/08 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
C04B38/00 301C
C04B38/00 302D
E04B1/78 A
E04B1/82 C
E04B1/86 A
D01F9/08
D01F9/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020143579
(22)【出願日】2020-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】597086863
【氏名又は名称】豊和直 株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006910
【氏名又は名称】株式会社淀川製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100170184
【弁理士】
【氏名又は名称】北脇 大
(72)【発明者】
【氏名】上原 豊
(72)【発明者】
【氏名】井上 康寛
【テーマコード(参考)】
2E001
4G019
4L037
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DE01
2E001DF02
2E001DF04
2E001HA28
2E001HA31
2E001HA32
2E001HA33
2E001HA34
4G019CA02
4G019CB01
4G019CC02
4L037CS16
4L037CS37
4L037UA01
4L037UA02
4L037UA18
4L037UA20
(57)【要約】
【課題】グラスウール、ロックウール、セラミックウールおよびアルカリアースシリケートウール(AES)といった人造鉱物繊維の廃材を使用して簡便に得られる、遠赤外線・マイナスイオンを大量に発生させ、抗菌能力に優れ、調湿機能および二酸化炭素や有害物質吸着分解などの性能を持ち合わせるのみならず、軽量で高強度かつ耐火・断熱性に優れた機能性材料組成物を提供する。
【解決手段】人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質とを含有する機能性材料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質とを含有する機能性材料組成物。
【請求項2】
人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質との含有量比(人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物:無機発泡体:無機アルカリ性物質)が、重量比にて1:0.01:0.3~1:1:3である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
嵩比重が0.3~1.0である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
人造鉱物繊維が、グラスウール、ロックウール、セラミックウールおよびアルカリアースシリケートウール(AES)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
人造鉱物繊維混合物が、人造鉱物繊維の集合体と無機物質とを混合後粉砕したものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
粉砕前の無機物質が、繊維の絡まった塊である人造鉱物繊維の集合体の直径の長さよりも小さい平均粒子径を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
無機物質が、火山噴出物である、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
無機発泡体が、火山噴出物発泡体、フライアッシュバルーンおよびガラスバルーンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
火山噴出物発泡体が、シラス発泡体、黒曜石発泡体または真珠岩発泡体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
無機アルカリ性物質が、ケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
耐火・断熱材、遮音材、または吸音材に使用される、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
(1)人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質とを混合する工程、
(2)得られた混合物を固化させる工程、
を含む、機能性材料組成物の製造方法。
【請求項13】
さらに、混合物を乾燥、粉砕、造粒または整粒する工程を含む、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
人造鉱物繊維が、グラスウール、ロックウール、セラミックウールおよびアルカリアースシリケートウール(AES)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項12または13に記載の製造方法。
【請求項15】
人造鉱物繊維混合物が、人造鉱物繊維の集合体と無機物質とを混合後粉砕したものである、請求項12~14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
粉砕前の無機物質が、繊維の絡まった塊である人造鉱物繊維の集合体の直径の長さよりも小さい平均粒子径を有する、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
無機物質が、火山噴出物である、請求項15または16に記載の製造方法。
【請求項18】
無機発泡体が、火山噴出物発泡体、フライアッシュバルーンおよびガラスバルーンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項12~17のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
火山噴出物発泡体が、シラス発泡体、黒曜石発泡体または真珠岩発泡体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
無機アルカリ性物質が、ケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項12~19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項21】
人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質との含有量比(人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物:無機発泡体:無機アルカリ性物質)が、重量比にて1:0.01:0.3~1:1:3である、請求項12~20のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項22】
混合物に炭酸ガスを加えて固化させる、請求項12~21のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質とを含有する、遠赤外線・マイナスイオンを大量に発生させ、抗菌能力に優れ、調湿機能および二酸化炭素や有害物質吸着分解などの性能を持ち合わせる、軽量で高強度かつ耐火・断熱性に優れた機能性材料組成物およびその製造方法に関する。
さらに詳しくは、耐火・断熱材、遮音材、吸音材などとして好適に利用され得る機能性材料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量で高強度の火山噴出物発泡粒子集塊物が、断熱材、保温材および吸音材として使用できることが知られている(特許文献1)。
また、火山噴出物加工粉体の固形成形方法であって、得られた固形成形物が二酸化炭素を有効に吸着することができ、吸湿・放湿を効果的に行うことができ、さらに揮発性有機化合物(VOC)をも効果的に吸着することができる方法が知られている(特許文献2)。
さらに、二酸化炭素、ホルムアルデヒドおよびVOC吸着分解や調湿性能に優れ、断熱・吸音能力に優れた、火山噴出物を利用した、簡便に得られる機能性材料組成物が知られている(特許文献3)。
しかしながら、グラスウール、ロックウール、セラミックウールおよびアルカリアースシリケートウール(AES)といった人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物を、火山噴出物発泡体などの無機発泡体および無機アルカリ性物質と組み合わせることにより得られる、遠赤外線・マイナスイオンを大量に発生させ、抗菌能力に優れ、調湿機能および二酸化炭素や有害物質吸着分解などの性能を持ち合わせるのみならず、軽量で高強度かつ耐火・断熱性に優れる機能性材料組成物は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-12058号公報
【特許文献2】特開2009-72750号公報
【特許文献3】特開2013-63866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
天然鉱物繊維であるアスベストの使用が健康被害のために全面禁止された今日、その代替物としてグラスウール、ロックウール、セラミックウールおよびアルカリアースシリケートウール(AES)といった人造鉱物繊維を用いた耐火・断熱パネルが主流になっている。
耐火・断熱パネルの製造時や建築現場・建屋の解体時には多くの人造鉱物繊維の廃材が排出され、リサイクルされる場合もあるものの、多くは産業廃棄物として処理されている。
少資源国の日本において廃棄物の有効利用は不可欠の課題であるが、有効な再利用の手段が確立していない。
【0005】
このような現状に対しては、グラスウール、ロックウール、セラミックウールおよびアルカリアースシリケートウール(AES)といった人造鉱物繊維の廃材を、産業廃棄物として処理するのではなく、耐火・断熱材として再利用できるか否かが、喫緊の課題である。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、グラスウール、ロックウール、セラミックウールおよびアルカリアースシリケートウール(AES)といった人造鉱物繊維の廃材を使用して簡便に得られる、遠赤外線・マイナスイオンを大量に発生させ、抗菌能力に優れ、調湿機能および二酸化炭素や有害物質吸着分解などの性能を持ち合わせる、軽量で高強度かつ耐火・断熱性に優れた機能性材料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、グラスウール、ロックウール、セラミックウールおよびアルカリアースシリケートウール(AES)といった人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質とを混合して得られる機能性材料組成物が、遠赤外線・マイナスイオンを大量に発生させ、抗菌能力に優れ、調湿機能および二酸化炭素や有害物質吸着分解などの性能を持ち合わせるのみならず、軽量で高強度かつ耐火・断熱性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の通りである。
[1]
人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質とを含有する機能性材料組成物。
[2]
人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質との含有量比(人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物:無機発泡体:無機アルカリ性物質)が、重量比にて1:0.01:0.3~1:1:3である[1]に記載の組成物。
[3]
嵩比重が0.3~1.0である、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]
人造鉱物繊維が、グラスウール、ロックウール、セラミックウールおよびアルカリアースシリケートウール(AES)からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の組成物。
[5]
人造鉱物繊維混合物が、人造鉱物繊維の集合体と無機物質とを混合後粉砕したものである、[1]~[4]のいずれか1つに記載の組成物。
[6]
粉砕前の無機物質が、繊維の絡まった塊である人造鉱物繊維の集合体の直径の長さよりも小さい平均粒子径を有する、[5]に記載の組成物。
[7]
無機物質が、火山噴出物である、[5]または[6]に記載の組成物。
[8]
無機発泡体が、火山噴出物発泡体、フライアッシュバルーンおよびガラスバルーンからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の組成物。
[9]
火山噴出物発泡体が、シラス発泡体、黒曜石発泡体または真珠岩発泡体からなる群から選択される少なくとも1種である、[8]に記載の組成物。
[10]
無機アルカリ性物質が、ケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[9]のいずれか1つに記載の組成物。
[11]
耐火・断熱材、遮音材、または吸音材に使用される、[1]~[10]のいずれか1つに記載の組成物。
[12]
(1)人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質とを混合する工程、
(2)得られた混合物を固化させる工程、
を含む、機能性材料組成物の製造方法。
[13]
さらに、混合物を乾燥、粉砕、造粒または整粒する工程を含む、[12]に記載の製造方法。
[14]
人造鉱物繊維が、グラスウール、ロックウール、セラミックウールおよびアルカリアースシリケートウール(AES)からなる群から選択される少なくとも1種である、[12]または[13]に記載の製造方法。
[15]
人造鉱物繊維混合物が、人造鉱物繊維の集合体と無機物質とを混合後粉砕したものである、[12]~[14]のいずれか1つに記載の製造方法。
[16]
粉砕前の無機物質が、繊維の絡まった塊である人造鉱物繊維の集合体の直径の長さよりも小さい平均粒子径を有する、[15]に記載の製造方法。
[17]
無機物質が、火山噴出物である、[15]または[16]に記載の製造方法。
[18]
無機発泡体が、火山噴出物発泡体、フライアッシュバルーンおよびガラスバルーンからなる群から選択される少なくとも1種である、[12]~[17]のいずれか1つに記載の製造方法。
[19]
火山噴出物発泡体が、シラス発泡体、黒曜石発泡体または真珠岩発泡体からなる群から選択される少なくとも1種である、[18]に記載の製造方法。
[20]
無機アルカリ性物質が、ケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種である、[12]~[19]のいずれか1つに記載の製造方法。
[21]
人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質との含有量比(人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物:無機発泡体:無機アルカリ性物質)が、重量比にて1:0.01:0.3~1:1:3である、[12]~[20]のいずれか1つに記載の製造方法。
[22]
混合物に炭酸ガスを加えて固化させる、[12]~[21]のいずれか1つに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、略全て産業廃棄物として処理されていたグラスウール、ロックウール、セラミックウールおよびアルカリアースシリケートウール(AES)といった人造鉱物繊維の廃材を、無機発泡体および無機アルカリ性物質と組み合わせることにより、遠赤外線・マイナスイオンを大量に発生させ、抗菌能力に優れ、調湿機能および二酸化炭素や有害物質吸着分解などの性能を持ち合わせるのみならず、軽量で高強度かつ耐火・断熱性に優れる機能性材料組成物として再利用することができる。
また、本発明の機能性材料組成物は、簡便に製造することができる。
さらに、本発明の機能性材料組成物は、無機発泡体を使用するため安価に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の組成物
本発明は、人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質とを含有することを特徴とする機能性材料組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう)を提供する。
本発明の組成物における人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質との含有量比(人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物:無機発泡体:無機アルカリ性物質)は、重量比にて好ましくは1:0.01:0.3~1:1:3である。
本発明の組成物は、人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質とを均一に混合・撹拌して、必要に応じて得られた混合物を粉砕・造粒・整粒し、または固形化して得られる。
【0011】
本発明における人造鉱物繊維としては、ガラス長繊維、グラスウール、特殊用途ガラス微細繊維、ロックウール、セラミックウール、アルカリアースシリケートウール(AES)、リフラクトリーセラミックファイバー(RCF)などの人造非晶質繊維;アルミナ繊維、ウィスカ類(チタン酸カリウムウィスカ、炭化ケイ素ウィスカなど)などの人造結晶質繊維が挙げられ、人造非晶質繊維が好ましく、グラスウール、ロックウール、セラミックウールおよびアルカリアースシリケートウール(AES)がより好ましい。
【0012】
本発明における人造鉱物繊維は、通常は複数の繊維の集合体である。
複数の繊維の集合体である場合、粉砕しただけでは微細化されないため、粉砕メディアの役割を果たす無機物質と混合して粉砕することで微細化する。
本発明における人造鉱物繊維の集合体の形状としては、粉体状、パネル状、ブロック状または繊維状が好ましい。
【0013】
本発明における人造鉱物繊維の大きさは、通常20~500μmである。
本発明における人造鉱物繊維の集合体が繊維の絡まった塊である場合、その塊の直径は、通常3mmより長い。
【0014】
本発明における粉砕前の無機物質の平均粒子径は、通常0.2mm~3mmであり、好ましくは0.5mm~1.5mmである。
【0015】
本発明における人造鉱物繊維混合物は、人造鉱物繊維の集合体と無機物質とを混合後粉砕して得られる、微細化された人造鉱物繊維と粉砕された無機物質との混合物である。
【0016】
本発明における無機物質としては、火山噴出物(シラス、軽石、黒曜石)、無機粉体(シリカ、アルミナ)および粘土鉱物が挙げられ、火山噴出物が好ましい。
【0017】
本発明における火山噴出物としては、シラス、軽石、黒曜石が挙げられ、シラス、軽石が好ましい。
【0018】
本発明における人造鉱物繊維混合物中の人造鉱物繊維と無機物質との含有量比(人造鉱物繊維:無機物質)は、重量比にて好ましくは0.1:1~3:1である。
【0019】
本発明における無機発泡体としては、火山噴出物発泡体、シリカ・アルミナを主成分とするフライアッシュバルーンおよび無機ガラスからなるガラスバルーンが挙げられる。
【0020】
本発明における無機発泡体の平均粒子径は、通常5~300μmであり、好ましくは90~200μmである。
本発明における平均粒子径は、篩い分け法で測定を行う。
すなわち、電磁式ふるい振とう器に標準ふるいを5~10段装着し、試料をふるい振とうすることで分級し、各粒子区分の重量比で測定する。例えば、標準ふるいを目開きの大きいものを上にして順次重ね、上段に試料20gを入れ15分間ふるい振とうさせ、各メッシュ毎の試料の重量を測定し、粒度分布を求める。
平均粒子径は、各メッシュ毎に篩い分けられた粒子の試料全体に対する割合(重量%)を算出し、各ふるいの目開きに対して、各ふるいにふるい分けられた粒子の重量の試料全重量に対する割合をプロットした曲線から、メディアン径として重量平均粒子径を求める。
【0021】
また、本発明における無機発泡体の嵩比重は、通常は1.0以下であり、0.05~0.5が好ましい。
嵩比重はタッピング比重の方法で求められる。
【0022】
本発明における無機発泡体は、火山噴出物発泡体、シリカ・アルミナを主成分とするフライアッシュバルーンおよび無機ガラスからなるガラスバルーンの1種または2種以上を混合して用いることができるが、二酸化炭素および有害物質の吸着・分解、調湿、マイナスイオン・遠赤外線放出能力強度、軽量化、コストなどの総合的な点で、火山噴出物発泡体が好ましい。
【0023】
本発明における火山噴出物発泡体としては、シラスを発泡させたシラス発泡体(シラスバルーン)、黒曜石発泡体(パーライト)および真珠岩発泡体(パーライト)が挙げられるが、強度、永続的な二酸化炭素および有害物質の吸着・分解、調湿、マイナスイオン・遠赤外線放出能力の点でシラス発泡体(シラスバルーン)がより好ましい。
本発明における火山噴出物発泡体の平均粒子径は、通常6~500μmであり、30~300μmが好ましい。
また、本発明における火山噴出物発泡体の嵩比重は、通常は0.6以下であり、0.15~0.4が好ましい。
【0024】
本発明における無機アルカリ性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物、ケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)、ケイ酸カリウムなどのケイ酸のアルカリ金属塩、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムなどのケイ酸のアルカリ土類金属塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの炭酸のアルカリ金属塩、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどの炭酸のアルカリ土類金属塩などが挙げられ、これらは粉末の状態で用いてもよく、水溶液として用いてもよい。
本発明の目的には、ケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)、ケイ酸カリウムなどのケイ酸のアルカリ金属塩が好ましく、ケイ酸ソーダ濃厚水溶液(水ガラス)がより好ましい。
これらの無機アルカリ性物質は、1種または2種以上混合して使用してもよい。
【0025】
本発明の組成物における人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質との含有量比(人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物:無機発泡体:無機アルカリ性物質)は、重量比にて好ましくは1:0.01:0.3~1:1:3である。
人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物に対する無機発泡体の重量比が0.01、無機アルカリ性物質の重量比が0.3よりも小さいと、粒子強度が低くなり好ましくない。
また、無機発泡体の重量比が1.0、無機アルカリ性物質の重量比が3.0よりも大きいと、炭酸ガス反応に時間がかかり、コストアップになり好ましくない。
【0026】
本発明の組成物は、本発明の特徴を損なわない範囲で、燃焼抑制剤、消火剤、抗菌剤、消臭剤、抗アレルギー剤など機能性材料を含有することができる。
【0027】
本発明の組成物は、人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物、無機発泡体および無機アルカリ性物質を所望の重量比にて混合し、場合により他の吸着剤等の添加成分を添加、混合した後、必要に応じて乾燥、粉砕、造粒、整粒などを行って、粉末状、粒状、塊状などの組成物とすることができる。
上記成分の混合は、粉粒体の混合に用いられる一般的な混合方法により行うことができ、例えば、水平円筒型混合機、V型混合機、二重円錐型混合機、揺動回転型混合機、単軸リボン型混合機、複軸パドル型混合機、回転働型混合機、円錐スクリュー型混合機などの各種混合機、混合撹拌機などを用いて行うことができる。
上記混合物の粉砕は、一般的な粉砕方法により行うことができ、混合時における無機アルカリ性物質の状態により、乾式粉砕、湿式粉砕のいずれをも用いることができる。すなわち、無機アルカリ性物質を固体状で混合する場合には、乾式粉砕が好ましく採用され、水溶液の状態で混合する場合には、湿式粉砕が好ましく採用される。
乾式粉砕としては、ジェットミル粉砕およびメカノケミカル粉砕が挙げられ、湿式粉砕としては、コロイドミル粉砕が挙げられる。
上記混合物の造粒は、一般的な造粒方法により行うことができ、混合時における無機アルカリ性物質の状態により、乾式造粒、湿式造粒のいずれをも用いることができる。すなわち、無機アルカリ性物質を固体状で混合する場合には、乾式造粒が好ましく採用され、水溶液の状態で混合する場合には、湿式造粒が好ましく採用される。
乾式造粒としては、スラッグ法、ローラーコンパクター法などが挙げられ、湿式造粒としては、撹拌混合造粒法、噴霧乾燥造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、転動流動層造粒法、押し出し造粒法などが挙げられる。
上記混合物の整粒についても、一般的な整粒方法を採用することができる。かかる整粒法としては、篩過による整粒、摩砕整粒、分級機能付解砕整粒、破砕整粒、湿式連続整粒、回転式遠心砕塊整粒、高速または低速回転型整粒、球形整粒などが挙げられる。
上記混合物の乾燥は、風乾、天日乾燥などの自然乾燥または温熱乾燥(30~100℃)により行うことが好ましい。
【0028】
また、本発明の組成物は、人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物、無機発泡体および無機アルカリ性物質を含む混合物を、適宜乾燥、粉砕、造粒、整粒などを行った後固化成形し、パネル状、ブロック状などとすることもできる。
上記混合物の固化は、型枠に充填して1~100kg/cmのプレス圧にて圧縮成形する、無機アルカリ性物質に対して当mol以上の炭酸ガスを加えて反応させて固化するなどの手段により行うことができる。
【0029】
本発明の組成物は、好ましくは、パネル状または粒状である。
【0030】
本発明の組成物がパネル状であるとき、型枠に応じた寸法でパネル状とすることができる。
【0031】
本発明の組成物が粒状であるとき、その平均粒子径は、通常0.5~15mmであり、好ましくは2~12mmであり、より好ましくは3~10mmである。
【0032】
また、本発明の組成物の嵩比重は、0.3~1.0が好ましい。
【0033】
本発明において「機能性材料」とは、「制御された環境下において安定的または鋭敏な変化を示す物理的および化学的な特性を持つ材料」を意味する。当該変化には、温度、気体分子の吸収、圧力、電気、磁気、光などが挙げられる。
具体的な機能性材料組成物としては、湿度や気温の変化、有害物質に反応する機能性材料組成物が挙げられる。
【0034】
本発明の組成物は、耐火・断熱材、遮音材、吸音材、調湿剤、二酸化炭素吸着剤、ホルムアルデヒド吸着剤、VOC吸着剤などに使用することができ、耐火・断熱材、遮音材または吸音材に使用することが好ましい。
調湿とは、水分を吸収・放出し、湿度を調整することを意味する。
VOCとしては、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどが挙げられる。
【0035】
本発明の方法
本発明は、また、
(1)人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質とを混合する工程、
(2)得られた混合物を固化させる工程、
を含む機能性材料組成物の製造方法(以下、「本発明の方法」ともいう)に関する。
本発明の方法は、さらに、得られた混合物を乾燥する工程、粉砕する工程、造粒する工程または整粒する工程を含み得る。
具体的な実施態様として、本発明の方法は、
(1)人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質とを混合する工程、
(2)得られた混合物を撹拌し、プラスチック製などの容器や袋体など、密閉できる容器に入れ、無機アルカリ性物質に対して当mol以上の炭酸ガスを加えて5~15分間反応せしめる工程、
を含む機能性材料組成物の製造方法に関する。
別の態様として、
(1)人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質とを混合する工程、
(2’)得られた混合物を金型に投入し、プレス成形後炭酸ガスを加える工程、
を含むパネル状の機能性材料組成物の製造方法も本発明の方法に包含される。
さらに別の態様として、
(1)人造鉱物繊維または人造鉱物繊維混合物と無機発泡体と無機アルカリ性物質とを混合する工程、
(2’’)得られた混合物を整粒した後、炭酸ガスを加える工程、
を含む粒状の機能性材料組成物の製造方法も本発明の方法に包含される。
本発明の方法において、人造鉱物繊維・人造鉱物繊維混合物・無機発泡体・無機アルカリ性物質などの定義や重量比・嵩比重などは、本発明の組成物のものと同様である。
【0036】
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例0037】
平均粒子径の測定方法
本発明における無機発泡体、火山噴出物発泡体および本発明の組成物の平均粒子径の測定は、以下の方法(篩い分け法)により行った。
電磁式ふるい振とう機(アズワン株式会社製)に標準ふるいを5段~10段装着し、試料をふるい振とうすることで分級して、各粒度区分の重量比により測定した。すなわち、標準ふるいを目開きの大きいものを上にして順次重ね、上段に試料20gを入れ15分間ふるい振とうさせ、各ふるい上に残存する試料の重量を測定し、粒度分布を求めた。
次いで、各ふるい毎に篩い分けられた試料について、試料全量に対する割合(重量%)を算出し、各ふるい毎の前記割合(重量%)を上段から順に足していき、試料重量の割合の合計が50重量%を超える前の前記合計値(重量%)を[d]、50重量%を超えた後の前記合計値(重量%)を[e]とし、試料重量の割合の合計が50重量%を超えない粒径区分のアンダー値(μmまたはmm)を[a]とする。そして、試料重量の割合の合計が50重量%を超える粒径を含む区分を特定し、その粒径区分のオーバー値(μmまたはmm)を[b]、アンダー値(μmまたはmm)を[c]として、下記式(I)より重量平均粒子径を求めた。
平均粒子径(μmまたはmm)=a-〔(b-c)×{(50-d)/e}〕・・・(I)
【0038】
(実施例1)
混合撹拌機(カワタ製)にて混合攪拌により粉砕した人造鉱物繊維混合物1,000gとシラス発泡体(シラスバルーン:平均粒子径70μm、豊和直(株)製)200gにケイ酸ソーダ3号(日本化学工業(株)製)1,500gを加え、混合撹拌機(カワタ製)にて混合攪拌して、30×30×5cmの金型に入れプレス成形(カンザキ製・20kg/cm)した後、炭酸ガス(1.53mMOL*44g/MOL=67.3mg)を加えて5~15分間反応させ、パネル状の機能性材料組成物を得た。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、略全て産業廃棄物として処理されていたグラスウール、ロックウール、セラミックウールおよびアルカリアースシリケートウール(AES)といった人造鉱物繊維の廃材を、無機発泡体および無機アルカリ性物質と組み合わせることにより、遠赤外線・マイナスイオンを大量に発生させ、抗菌能力に優れ、調湿機能および二酸化炭素や有害物質吸着分解などの性能を持ち合わせるのみならず、軽量で高強度かつ耐火・断熱性に優れる機能性材料組成物として再利用することができる。