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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038923
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】引き違い窓の小開口装置
(51)【国際特許分類】
   E05C 17/60 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
E05C17/60 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020143651
(22)【出願日】2020-08-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】594013594
【氏名又は名称】日研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】特許業務法人安田岡本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三井田 靖宗
(72)【発明者】
【氏名】麓 秀美
(57)【要約】
【課題】 小開口位置に位置規制された外側引き戸を、あらゆる事態に対応して位置規制を解除できるようにする。
【解決手段】 外側引き戸4の戸枠4aの戸移動方向中途部に設けたホルダ5と、室内方向に出退可能でありかつ先端が突出することにより内側引き戸3と当接可能なストッパ部材6と、戸移動方向に沿って摺動することによりストッパ部材6を出退させる摺動体7と、回動することにより摺動体7を摺動可能でありかつ室内側の端部に回動工具を係合する工具係合部8aを有する回動体8と、この回動体8を室外側から回動操作する操作部材9とを備えている。前記摺動体7から突出していて摺動体7を室内側から摺動操作可能な補助操作部材12と、この補助操作部材12を覆い隠すべく前記ホルダ5の室内側に配置されておりかつ補助操作部材12を露出すべく強制排除可能な目隠し部材13とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側引き戸(3)に対して外側引き戸(4)を小開口位置(A)まで移動したときに、外側引き戸(4)の開口拡大方向の移動を規制する引き違い窓の小開口装置であって、
外側引き戸(4)の戸枠(4a)の戸移動方向中途部に設けたホルダ(5)と、このホルダ(5)内に配置されていて室内方向に出退可能でありかつ先端が突出することにより内側引き戸(3)と当接可能なストッパ部材(6)と、前記ホルダ(5)内に配置されていて戸移動方向に沿って摺動することによりストッパ部材(6)を出退させる摺動体(7)と、前記ホルダ(5)内に配置されていて回動することにより摺動体(7)を摺動可能でありかつ室内側の端部に回動工具を係合する工具係合部(8a)を有する回動体(8)と、この回動体(8)を室外側から回動操作する操作部材(9)とを備えており、
前記摺動体(7)から突出していて摺動体(7)を室内側から摺動操作可能な補助操作部材(12)と、この補助操作部材(12)を覆い隠すべく前記ホルダ(5)の室内側に配置されておりかつ補助操作部材(12)を露出すべく強制排除可能な目隠し部材(13)とを有することを特徴とする引き違い窓の小開口装置。
【請求項2】
前記補助操作部材(12)は、摺動体(7)内に出退可能に配置され、かつ付勢部材(14)により突出方向に付勢されていることを特徴とする請求項1に記載の引き違い窓の小開口装置。
【請求項3】
前記ホルダ(5)は、ストッパ部材(6)、摺動体(7)及び回動体(8)を支持するホルダ本体(5A)と、このホルダ本体(5A)の室内側に配置されおり、かつストッパ部材用貫通孔(16)、回動体(8)の工具係合部用露出孔(17)及び補助操作部材用挿通孔(18)を形成した室内側板(5B)とを有しており、
前記目隠し部材(13)は手で破壊可能な板材で形成されていて室内側板(5B)の挿通孔(18)を塞ぐ位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の引き違い窓の小開口装置。
【請求項4】
前記ストッパ部材(6)の基部側には動作ピン(21)が設けられ、前記ホルダ(5)には動作ピン(21)を室内外方向の直線移動を案内するガイド溝(22)が形成され、前記摺動体(7)には摺動体(7)の戸移動方向の動きを動作ピン(21)の室内外方向の動きに変換するカム溝(23)が形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の引き違い窓の小開口装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の屋外開口に取り付けられる引き違い窓の小開口装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホテル等の建築物においては、採光、換気のための屋外開口に引き違い窓が取り付けられている。この引き違い窓は内外2枚の引き戸を有し、窓を全閉にしたときに引き戸の移動を阻止するクレセント錠等の防犯用の閉鎖錠と、窓を小開口開放してそれ以上の引き戸の移動を制限する換気用の小開口装置(開放制限装置)とが設けられている。
この小開口装置(開放制限装置)の従来技術として、特許文献1に記載されたバリアフリーサッシの障子開放制限装置は、下枠上面を略フラットに形成し、この下枠上面に細い条状のスライド溝を設け、このスライド溝に、障子下框から垂下させた垂下片を嵌入し、下枠上面を障子がスライド走行する下枠上面フラットサッシ構造とし、障子の開口範囲を制限するストッパ受けを、二重構造にした下枠上面の上の辺を切り欠いて取付凹部を形成して取り付け、当該ストッパ受けに係合するストッパ部材を障子下框内部に自重でこのストッパ部材の先端部が下枠上面を滑り回動するように備え、上記ストッパ受けとストッパ部材の係合を解除する操作用摘みを室外側に備え、室内側からは、キー操作により上記係合解除するための鍵穴を設けている(請求項3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3537430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術は、室外側から操作用摘みを操作することにより、火災時等に消防士がストッパ部材の係合を解除することができ、また、室内側から鍵穴にキーを挿入して操作することにより、管理者が清掃・メンテナンスのときにストッパ部材の係合を解除することができる。
前記小開口装置は、換気のために窓を小開口に開放するという役目と、非倫理的目的のための脱出を防止するという役目とがあり、脱出防止目的のための引き戸の移動を制限するという観点からは、キー及び鍵穴を有する錠前機構が必要である。しかし、室内で不本意で火急の事態が発生することも考えられ、そのような場合にキーがなくともストッパ部材の解除が必要になることがあり、前記従来技術においてはそのような不測事態に対処することは困難になっている。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにした引き違い窓の小開口装置を提供することを目的とする。
本発明は、小開口位置に位置規制された内外側引き戸を、あらゆる事態に対応して位置規制を解除することができるようにした引き違い窓の小開口装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における課題解決のための具体的手段は、内側引き戸3に対して外側引き戸4を小開口位置Aまで移動したときに、外側引き戸4の開口拡大方向の移動を規制する引き違い窓の小開口装置であって、外側引き戸4の戸枠4aの戸移動方向中途部に設けたホルダ5と、このホルダ5内に配置されていて室内方向に出退可能でありかつ先端が突出することにより内側引き戸3と当接可能なストッパ部材6と、前記ホルダ5内に配置されていて戸移動方向に沿って摺動することによりストッパ部材6を出退させる摺動体7と、前記ホルダ5内に配置されていて回動することにより摺動体7を摺動可能でありかつ室内側の端部に回動工具を係合する工具係合部8aを有する回動体8と、この回動体8を室外側から回動操作する操作部材9とを備えており、前記摺動体7から突出していて摺動体7を室内側から摺動操作可能な補助操作部材12と、この補助操作部材12を覆い隠すべく前記ホルダ5の室内側に配置されておりかつ補助操作部材12を露出すべく強制排除可能な目隠
し部材13とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外側引き戸4の開口拡大方向の移動を規制する引き違い窓の小開口装置を室内側から2種の形態で解除することができる。
即ち、ストッパ部材6を出退させる摺動体7を摺動させる回動体8は、室外側からは操作部材9で回動操作可能であり、室内側からは回動体8の室内側の端部に形成された工具係合部8aに回動工具を係合することにより回動操作可能であり、その上に、目隠し部材13を強制排除して室内側から補助操作部材12を操作して、摺動体7を摺動操作することにより回動体8を回動操作できるので、小開口位置Aに位置規制された外側引き戸4を、あらゆる事態に対応して位置規制を解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態を示す断面平面図である。
図2】同平面図である。
図3】同分解図である。
図4】回動体とコマ部材の関係を示す説明図である。
図5】室内側板の正面図である。
図6図3のX-X線断面図である。
図7】小開口装置を適用した引き違い窓の室内側から見た正面図である。
図8図7のY-Y線断面図である。
図9図7のZ-Z線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図7~9において、ホテル等の建築物の屋外開口に取り付けられた引き違い窓40を例示している。
前記引き違い窓40は、上下部に内外2本のレイール41a、41bを有するサッシ枠41と、内下レイール41aに転動する下戸車42aを有する内側引き戸3と、外下レイール41bに転動する下戸車42bを有する外側引き戸4と、基本的に内側引き戸3の端部に取り付けられていて閉鎖時の外側引き戸4の端部に係合して、窓を全閉にしたときに引き戸の移動を阻止するクレセント錠等の防犯用の閉鎖錠43と、窓を小開口開放してそれ以上の外側引き戸4(または内側引き戸3)の移動を制限する小開口装置1とを備えている。
【0010】
前記小開口装置1は、常態においてストッパ部材6が室内側に突出していて、内側引き戸3に対して外側引き戸4を小開口位置A(図7の仮想線で示す位置)まで移動したときに、内側引き戸3に設けた当たり44と当接して、外側引き戸4の開口拡大方向の移動を規制する。
なお、内側引き戸3と外側引き戸4との開閉は相対的なもので、外側引き戸4に対して内側引き戸3を小開口位置A又は全開口位置まで移動するとも言える。また、閉鎖錠43は、室内側から施錠及び解錠でき、かつ消防士が室外側から解錠できる構造になっている。
【0011】
図1~9において、小開口装置1は、外側引き戸4に設けたホルダ5と、このホルダ5内に配置されたストッパ部材6と、ストッパ部材6を出退させる摺動体7と、この摺動体7を摺動する回動体8と、この回動体8を回動操作するための工具係合部8a及び操作部材9と、前記摺動体7を摺動操作可能な補助操作部材12と、この補助操作部材12を隠す目隠し部材13とを備えている。
【0012】
内側引き戸3及び外側引き戸4は、四角形の戸枠3a,4a内にガラス3b、4bを嵌め込んで構成されており、外側引き戸4の戸枠4aの戸移動方向中途部の下部内にホルダ5が配置され、ネジ止めされている。
図1~3、5において、前記ホルダ5は、略長方形状のホルダ本体5Aと、このホルダ本体5Aの室内側に溶接により固着された室内側板5Bと、ホルダ本体5Aの室外側にネジ止めされた裏板5Cとを有しており、室内側板5Bが戸枠4aの前面にネジを介して固
定されている。
【0013】
前記ホルダ本体5A、室内側板5B及び裏板5Cを貫通する貫通孔16が形成され、この貫通孔16に中実棒状(ピン形状)のストッパ部材6が軸心方向移動自在に挿入されており、ストッパ部材6が室内方向に突出することにより、その突出先端が内側引き戸3に取り付けた当たり44と当接して、外側引き戸4の全開口位置への移動を制限し、小開口位置Aに保持することになる。
【0014】
ストッパ部材6の基部側には動作ピン21が直径方向に貫通されており、ホルダ本体5Aには動作ピン21を挿入して室内外方向に案内するガイド溝22が形成されている。前記動作ピン21は摺動体7と係合しており、摺動体7の移動によってストッパ部材6は室内外方向に移動される。
ホルダ本体5A内には貫通孔16と隣接しかつ軸心が平行な回動孔24が形成され、この回動孔24に回動体8が軸心周り回動自在に挿入されている。室内側板5Bに回動孔24と同心の露出孔17が形成され、回動体8の室内側端部の小径部分が配置され、かつその端面が室内側に露出されている。
【0015】
回動体8の室内側端部には同心的にネジ部材25が螺合されており、このネジ部材25の頭部に回動工具を係合する工具係合部8aが形成されている。この工具係合部8aは、プラスドライバ、マイナスドライバ等の一般的な回動工具が係合する係合凹部でもよいが、キーの役目をする特殊工具が係合する特殊形状の係合凹部(鍵穴)でもよく、回動工具を工具係合部8aに係合して回動することにより、回動体8を回動できればよい。
【0016】
図1~4において、回動体8の室外側端部には、外周面から半径方向に突出した駆動ピン26と、端面から軸心に沿って室外側に突出した偏心ピン27とが設けられている。
前記駆動ピン26は摺動体7と係合しており、回動体8の軸心周りの回動により摺動体7を摺動移動する。
前記偏心ピン27は連動コマ28に設けた連動部材29と係合している。この連動コマ28は回動孔24内に配置されていて、裏板5Cによって抜け止めされており、操作部材9と連結する角軸30が挿入される角穴28aが形成されている。
【0017】
操作部材9は角軸30の基部に嵌合固定されている。角軸30は外側引き戸4の戸枠4aの下部に固定のハンドル受け31に回動可能に支持され、先端が前記連動コマ28に挿入されている。
連動部材29は連動コマ28の端面に軸心と交差する角棒を嵌め込み固定することより形成されており、偏心ピン27とは連動コマ28を正逆どちらに回転しても係合して、連動コマ28の略90度の回転を回動体8に伝達する、あるいは回動体8の回転を操作部材9に伝達することができる。
【0018】
操作部材9は外側引き戸4の室外側に配置されており、その操作力は角軸30を介して連動コマ28に伝達され、連動コマ28が回動するのを連動部材29及び偏心ピン27を介して回動体8の回動に変換される。
なお、連動コマ28の略90度の回転は、操作部材9を略180度回転させて達成するように構成されているが、操作部材9を略90度回転させて達成するように構成することもできる。
【0019】
図1~3、6において、前記摺動体7は、回動体8の回動を介して戸移動方向に沿って摺動することによりストッパ部材6を出退させるものであり、ホルダ本体5Aの上面側に配置された摺動板7aと、この摺動板7aの一側下面に装着された摺動ブロック7bとを有する。
前記摺動板7aには、回動体8の駆動ピン26と係合する係合穴33と、ストッパ部材6の動作ピン21と係合するS字状のカム溝23とが形成されており、カム溝23の中途部は戸移動方向に対して略30~60度の傾斜溝になっている。
【0020】
回動体8の回動により駆動ピン26と係合穴33との係合を介して摺動板7aが摺動され、摺動板7aの摺動によりカム溝23が動作ピン21を摺動方向と直交する方向、即ちガイド溝22で案内されて室内外方向に駆動し、動作ピン21の移動によってストッパ部材6が出退移動する。
前記摺動板7aは鉄板等の金属板で形成され、一側は下向きに折り曲げられた前面板7cを有しており、摺動板7aの一側下面及び前面板7cに合成樹脂製の摺動ブロック7bが固着されている。
【0021】
前記摺動ブロック7bはホルダ本体5Aの摺動空間36に摺動自在に配置されており、内部に空洞部37を有し、この空洞部37内に補助操作部材12の基部12aと、補助操作部材12を突出方向に付勢する付勢部材14(スプリング)が配置されている。補助操作部材12の抜け止めは前面板7cによって行われている。
図1~3、5において、前記補助操作部材12の先端12bは、ホルダ本体5Aを貫通して室内側板5Bに形成した挿通孔18内まで突出している。この挿通孔18は、補助操作部材12の移動を許容しかつ案内するもので、この挿通孔18の前面側の室内側板5Bの表面には、挿通孔18より一回り大きな凹部38が形成されている。
【0022】
この凹部38は補助操作部材12の先端12bを突出させて手指の摘まみを可能にするとともに、目隠し部材13を配置するための凹部となっている。
目隠し部材13は透明又は不透明の合成樹脂又はその他の破損可能な材料で平板状に形成されており、室内側板5Bの表面にビス39を介して装着されており、強制排除可能な部材となっている。目隠し部材13はビス39で固着する代わりに、室内側板5Bに対して係合する構造としてもよく、回動工具を使用しなくても、人手で意識的に破壊可能な部材、取り付け構造であればよい。
【0023】
前記目隠し部材13は凹部37に配置することにより付勢部材14に抗して補助操作部材12を後退させ、強制排除することなしには、補助操作部材12を摘まんで操作することを不能にする。目隠し部材13を強制排除すると、補助操作部材12は付勢部材14により挿通孔18から突出する。
補助操作部材12を摘まんで移動する操作は、摺動ブロック7b及び摺動板7aを一体移動することになり、動作ピン21を介してストッパ部材6を移動し、駆動ピン26を介して回動体8、工具係合部8a及び操作部材9をそれぞれ回動する。
【0024】
引き違い窓40は通常の全閉状態において、内側引き戸3及び外側引き戸4はサッシ枠41に当接する閉鎖位置にあり、閉鎖錠43は施錠され、小開口装置1はストッパ部材6が室内側に突出した小開口設定状態に、操作部材9が略水平な待機姿勢になっている。
前記全閉状態から閉鎖錠43を解錠すると、外側引き戸4(又は内側引き戸3でもよい)を開放可能となり、一方を開放移動していくと、小開口装置1のストッパ部材6が内側引き戸3に設けた当たり44と当接して、外側引き戸4の開口拡大方向の移動を規制し、そして外側引き戸4を小開口位置Aに保持し、引き違い窓40は換気を行うことが可能な小開口状態になる。
【0025】
前記閉鎖錠43が解錠されている条件のもとで、前記全閉状態または小開口状態から、引き違い窓40を全開口状態にしたい場合、例えば火災時に消防士が室外側から小開口装置1を解除したい場合は、操作部材9を待機姿勢から略180度又は90度回動操作する。
操作部材9の回動により、角軸30を介して連動コマ28が回動し、連動部材29及び偏心ピン27を介して回動体8の略90度の回動となり、回動体8の駆動ピン26の移動は摺動体7の移動に変換され、摺動体7はカム溝23が動作ピン21を室外方向に駆動し、ストッパ部材6を室内突出位置から後退させ、当たり44と当接して小開口位置Aにある側引き戸4の移動規制を解消する。
【0026】
例えば、清掃・メンテナンスのために建築物管理者が室内側から小開口装置1を解除したい場合は、回動工具を工具係合部8aに係合して、直接的に回動体8を略90度回動操作する。
回動体8の略90度の回動は、前記操作部材9を操作したときと同様に、摺動体7の移動に変換され、ストッパ部材6を室内突出位置から後退させ、外側引き戸4の移動規制を解消する。
【0027】
例えば、室内で火災その他の不本意で火急の事態が発生して室内者が室内側から小開口装置1を解除したい場合は、目隠し部材13を破壊して補助操作部材12をホルダ5から
室内側に露出し、この補助操作部材12を摘まんで移動し、直接的に摺動体7を摺動してカム溝23が動作ピン21を室外方向に駆動し、ストッパ部材6を室内突出位置から後退させ、外側引き戸4の移動規制を解消する。
【0028】
目隠し部材13は破壊された後に新しいものをホルダ5に装着すれば、補助操作部材12を再び覆い隠すことができる。
補助操作部材12は目隠し部材13によって覆い隠されていることにより、非倫理的目的のための脱出しようとする人には心理的な抵抗となり、不純な気持ちを静める作用をする。
【0029】
前述した実施形態の小開口装置1は、外側引き戸4の戸枠4aの戸移動方向中途部に設けたホルダ5と、このホルダ5内に配置されていて室内方向に出退可能でありかつ先端が突出することにより内側引き戸3と当接可能なストッパ部材6と、前記ホルダ5内に配置されていて戸移動方向に沿って摺動することによりストッパ部材6を出退させる摺動体7と、前記ホルダ5内に配置されていて回動することにより摺動体7を摺動可能でありかつ室内側の端部に回動工具を係合する工具係合部8aを有する回動体8と、この回動体8を室外側から回動操作する操作部材9とを備えており、前記摺動体7から突出していて摺動体7を室内側から摺動操作可能な補助操作部材12と、この補助操作部材12を覆い隠すべく前記ホルダ5の室内側に配置されておりかつ補助操作部材12を露出すべく強制排除可能な目隠し部材13とを有するので、回動工具が無くても、目隠し部材13を強制排除することにより、補助操作部材12を摺動操作してストッパ部材6を後退することができ、外側引き戸4の小開口位置規制を解除することができる。その上、1個のホルダ5内にストッパ部材6、摺動体7、回動体8、補助操作部材12等をコンパクトに組込んでおくことができる。
【0030】
また、前記補助操作部材12は、摺動体7内に出退可能に配置され、かつ付勢部材14により突出方向に付勢されているので、目隠し部材13を強制排除すると補助操作部材12が室内側に突出し、摺動体7の室内側からの摺動操作が容易にできる。
さらに、前記ホルダ5は、ストッパ部材6、摺動体7及び回動体8を支持するホルダ本体5Aと、このホルダ本体5Aの室内側に配置されおり、かつストッパ部材用貫通孔16、回動体8の工具係合部用露出孔17及び補助操作部材用挿通孔18を形成した室内側板5Bとを有しており、前記目隠し部材13は手で破壊可能な板材で形成されていて室内側板5Bの挿通孔18を塞ぐ位置に設けられているので、目隠し部材13を簡単かつ安価に形成できかつ装着も容易にできる。
【0031】
さらにまた、前記ストッパ部材6の基部側には動作ピン21が設けられ、前記ホルダ5には動作ピン21を室内外方向の直線移動を案内するガイド溝22が形成され、前記摺動体7には摺動体7の戸移動方向の動きを動作ピン21の室内外方向の動きに変換するカム溝23が形成されているので、摺動体7の戸移動方向の動きをストッパ部材6の室内外方向の動きに簡単かつ確実に変換することができる。
【0032】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、部材の形状、構成及び組み合わせ等を変更したりすることもできる。
例えば、補助操作部材12を摺動ブロック7bに固着し、室内側板5Bに形成した挿通孔18を指先が入る大きさにし、目隠し部材13を破壊しかつ排除すれば、補助操作部材12は室内方向に突出移動しなくとも、手指で摘まんで戸移動方向に摺動できるように構成してもよい。
【0033】
また、ネジ部材25を割愛して、回動体8の室内側端部に直接的に工具係合部8aを刻設してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 小開口装置
3 内側引き戸
4 外側引き戸
4a 戸枠
5 ホルダ
5A ホルダ本体
5B 室内側板
6 ストッパ部材
7 摺動体
8 回動体
8a 工具係合部
9 操作部材
12 補助操作部材
13 目隠し部材
14 付勢部材
16 貫通孔
17 露出孔
18 挿通孔
21 動作ピン
22 ガイド溝
23 カム溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2021-08-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
内側引き戸(3)に対して外側引き戸(4)を小開口位置(A)まで移動したときに、外側引き戸(4)の開口拡大方向の移動を規制する引き違い窓の小開口装置であって、
外側引き戸(4)の戸枠(4a)の戸移動方向中途部に設けたホルダ(5)と、このホルダ(5)内に配置されていて室内方向に出退可能でありかつ先端が突出することにより内側引き戸(3)と当接可能なストッパ部材(6)と、前記ホルダ(5)内に配置されていて戸移動方向に沿って摺動することによりストッパ部材(6)を出退させる摺動体(7)と、前記ホルダ(5)内に配置されていて回動することにより摺動体(7)を摺動可能でありかつ室内側の端部に回動工具を係合する工具係合部(8a)を有する回動体(8)と、この回動体(8)を室外側から回動操作する操作部材(9)とを備えており、
前記摺動体(7)から突出していて摺動体(7)を室内側から摺動操作可能な補助操作部材(12)と、この補助操作部材(12)を覆い隠すべく前記ホルダ(5)の室内側に配置されておりかつ補助操作部材(12)を露出すべく手で破壊可能な目隠し部材(13)とを有することを特徴とする引き違い窓の小開口装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明における課題解決のための具体的手段は、内側引き戸3に対して外側引き戸4を小開口位置Aまで移動したときに、外側引き戸4の開口拡大方向の移動を規制する引き違い窓の小開口装置であって、外側引き戸4の戸枠4aの戸移動方向中途部に設けたホルダ5と、このホルダ5内に配置されていて室内方向に出退可能でありかつ先端が突出することにより内側引き戸3と当接可能なストッパ部材6と、前記ホルダ5内に配置されていて戸移動方向に沿って摺動することによりストッパ部材6を出退させる摺動体7と、前記ホルダ5内に配置されていて回動することにより摺動体7を摺動可能でありかつ室内側の端部に回動工具を係合する工具係合部8aを有する回動体8と、この回動体8を室外側から回動操作する操作部材9とを備えており、前記摺動体7から突出していて摺動体7を室内側から摺動操作可能な補助操作部材12と、この補助操作部材12を覆い隠すべく前記ホルダ5の室内側に配置されておりかつ補助操作部材12を露出すべく手で破壊可能な目隠し部材13とを有することを特徴とする。