(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022038988
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】ピペリン類配合茶系飲料
(51)【国際特許分類】
A23F 3/30 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
A23F3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020143751
(22)【出願日】2020-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】303044712
【氏名又は名称】三井農林株式会社
(72)【発明者】
【氏名】王 娜
(72)【発明者】
【氏名】野崎 絵理奈
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB11
4B027FC02
4B027FE02
4B027FE08
4B027FE09
4B027FK02
4B027FK08
4B027FP85
(57)【要約】
【課題】 茶系飲料にヒハツを配合した際のピペリン類に由来する辛味が抑制された茶系飲料を提供すること
【解決手段】 ピペリン類を含む茶系飲料において、(A)茶ポリフェノールに対するピペリン類の含有量比率が0.002~0.015、(B)茶ポリフェノールに対するカフェインの含有量比率が0.1以下、とすることにより、ピペリン類を生理機能活性を示す有効量を含みながらも、ピペリン類に特有の辛味を抑制することができる。ピペリン類を含む素材の起源としてはヒハツが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペリン類および茶ポリフェノールを含有する茶系飲料であって、
(A)茶ポリフェノールに対するピペリン類の含有量比率が0.002~0.015、
(B)茶ポリフェノールに対するカフェインの含有量比率が0.1以下、
であることを特徴とする茶系飲料。
【請求項2】
飲用状態におけるピペリン類含有量が0.1~0.5mg%、茶ポリフェノールの含有量が10~150mg%であることを特徴とする請求項1に記載の茶系飲料。
【請求項3】
ピペリン類がヒハツ由来であることを特徴とする請求項1または2に記載の茶系飲料。
【請求項4】
茶系飲料の形態が、粉末飲料、容器詰液体飲料、ティーバッグのいずれかであることを特徴とする請求項1から3に記載の茶系飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペリン類が配合された茶系飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
コショウ科コショウ属の植物であるヒハツ(Piper longum)、コショウ(Piper nigrum)、ヒハツモドキ(Piper retrofractum)等は古くから薬草や香辛料として利用されている。特にヒハツ抽出物には含有されるピペリン類による冷え性の改善作用(非特許文献1)や高血圧の改善作用(非特許文献2)といった生理機能が知られており、それらの作用を利用した飲食品が開示されている(特許文献1、2)。しかしながら、ヒハツ抽出物には、独特の香味(辛味や匂い)を有しており、前述の優れた機能性を享受するに際しての障害となっている。
【0003】
ヒハツ由来成分の独特の香味を改善する方法としては、次のような手段が提案されている。ヒハツ果穂抽出物に糖アルコール、可食性酸類、甘味度がショ糖の0.1~0.7倍である単糖類及び甘味度がショ糖の0.1~0.7倍である二糖類から選ばれる少なくとも1種類の化合物を配合することにより、これら各成分が相乗的に働いて、辛味、苦味及び渋味等の不快な呈味を効果的に抑制する方法(特許文献3)。ヒハツ原体に対して、一定の割合でタンニンと玄米粉粒物を組み合わせて配合することにより、ヒハツ抽出物由来の特有の香り・味を抑制する方法(特許文献4)。pH4.4以下の酸性食品とした時に生ずるヒハツ抽出物を含有した食品に特有な不快臭の改善に、柑橘由来成分ヘスペリジンから製造された糖転移ヘスペリジンおよびケイヒを併用する方法(特許文献5)。しかしながら、これらの方法は、ヒハツ抽出物の独特な香味を改善する方法としては、必ずしも十分ではなかった。
【0004】
一方、茶系飲料は古くから日常的に飲用される習慣があり、食品由来の機能性成分を継続的に摂取するのに都合がよいことから、さまざまな機能性飲料のベースとして利用されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-040788号公報
【特許文献2】特開2005-162745号公報
【特許文献3】特開2003-135037号公報
【特許文献4】特開2006-136245号公報
【特許文献5】特開2012-029596号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】薬理と治療、47巻2号、219-225、2018年
【非特許文献2】薬理と治療、43巻10号、p1451-1461、2015年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、茶系飲料にヒハツ抽出物の機能性作用を得るための有効量を配合した際に、ヒハツ由来の香味の中で、特にピペリン類由来のピリピリとした辛味がより際立って感じられることを認めた。そこで、本発明の課題は、茶系飲料にヒハツを配合した際のピペリン類に由来する辛味が抑制された茶系飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた過程で、茶系飲料にヒハツ抽出物を配合した際にピペリン類に由来する辛味が茶成分中のカフェインによって増強されることを見出した。さらに、茶系飲料中のカフェイン含有量を調整することによって、増強される作用を抑制するだけでなく、辛味が軽減された穏やかな香味へと改善できることを突き止め、本発明の完成に至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] ピペリン類および茶ポリフェノールを含有する茶系飲料であって、
(A)茶ポリフェノールに対するピペリン類の含有量比率が0.002~0.015、
(B)茶ポリフェノールに対するカフェインの含有量比率が0.1以下、
であることを特徴とする茶系飲料。
[2] 飲用状態におけるピペリン類含有量が0.1~0.5mg%、茶ポリフェノールの含有量が10~150mg%であることを特徴とする[1]に記載の茶系飲料。
[3] ピペリン類がヒハツ由来であることを特徴とする[1]または[2]に記載の茶系飲料。
[4] 茶系飲料の形態が、粉末飲料、容器詰液体飲料、ティーバッグのいずれかであることを特徴とする請求項[1]から[3]に記載の茶系飲料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ピペリン類を含む茶系飲料において、ピペリン類の辛味が抑制され、穏やかな香味を有する茶系飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明において「mg%」とは、飲料100gあたりの質量(単位=mg)を指す。また、「下限値~上限値」の数値範囲は、特に他の意味であることを明記しない限り、「下限値以上、上限値以下」の数値範囲を意味する。
【0012】
本発明におけるピペリン類とはピペリン(piperine)とその類縁化合物(ピペラニン:piperanine、シャビシン:chavicine、イソピペリン:isopiperine、 イソシャビシン:isochavicine)の5種の化合物を意味し、本発明の茶系飲料中のピペリン類含有量とはこれら5種の合計量で表される。なお、本発明の茶系飲料中のピペリン類含有量は、文献公知の方法(食品衛生学雑誌、60巻、5号、p.134-143、2019年)によりHPLC法にて定量分析されるものである。
【0013】
ピペリン類には、冷え性や高血圧の改善作用の他、栄養吸収や代謝の促進、抗菌、防腐、殺虫作用なども知られており、これら機能を活用した飲食品に利用されている。ピペリン類には特有の辛味があり、この辛味の発現は感覚神経に発現している温度受容体TRPV1(TRPVイオンチャネルファミリーのひとつ)の活性化によるものと考えられている。本発明の作用メカニズムは定かではないが、この受容体への作用にカフェインが何らかの作用を及ぼす可能性が考えられる。
【0014】
ピペリン類は、植物原料としてコショウ科コショウ属の植物であるヒハツ(Piper longum)、コショウ(Piper nigrum)、ヒハツモドキ(Piper retrofractum)等の果実や果穂に含有されており、これらの乾燥物やその粉砕物がピペリン類含有素材として本発明に利用でき、ホールの粒コショウやコショウ粉末、ヒハツ粉末などが一般に入手可能である。また、前述の植物原料を熱水やアルコールなどを用いて抽出したエキスやその乾燥粉体も好適に利用することができ、これらの市販品としては例えば、Tie2ヒハツエキスパウダーMF(丸善製薬)、黒コショウエキス(バイオアクティブズジャパン)などで入手することができる。
【0015】
本発明の茶系飲料におけるピペリン類の濃度は飲用状態で0.1~0.5mg%である。飲用時の一杯分の液量が140ml程度を想定した場合、ピペリン類の濃度が0.1mg%未満であるとピペリン類によってもたらされる生理機能性が期待できず、0.5mg%を超えるとピペリン類の辛味を抑制することが困難になる。ピペリン類の濃度は飲用状態で0.1~0.3mg%が好ましく、0.15~0.20mg%がより好ましい。ピペリン類の濃度がこの範囲にあるとピペリン類の辛味が抑制されつつ、有用な生理機能性を期待することができる。なお、本発明における飲用状態とは、濃度調整された液体の状態でそのまま口に含み、飲み込むことができる状態を意味する。各形態においては、液体飲料ではRTDであればそのままの状態、濃縮液体であれば適宜希釈した状態、粉末飲料の形態では、水やお湯に適量を溶解した状態、ティーバックの形態では適量の水やお湯で浸出した溶液を意味する。
【0016】
本発明における茶系飲料とは、「チャノキ」(Camellia sinensis var.sinensisやCamellia sinensis var.assamica、またはこれらの雑種)の生葉や生茎、あるいはこれらを一次原料として製造された茶葉(例えば、煎茶、玉露、覆茶、番茶、釜炒り緑茶などの不発酵茶、不発酵茶に花の香りを移したジャスミン茶や桂花茶などの花茶、白茶などの弱発酵茶、烏龍茶などの半発酵茶、紅茶などの発酵茶、プアール茶などの微生物発酵茶)などを由来とした茶系素材(茶葉や茶葉の粉砕物、それらの抽出液やその濃縮物、乾燥物、精製物)を用いて加工された飲料を意味する。
【0017】
本発明において茶ポリフェノールとは「日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル・解説」(文部科学省監修、建帛社、2016年2月)の242~243ページに記載の酒石酸鉄吸光光度法により測定される、茶に含まれるポリフェノールのことであり、タンニンや茶タンニン等の用語と同義に扱う。茶ポリフェノールの例としては、カテキン類、フラボノール類、フラボノール配糖体類、没食子酸、テオガリンおよびそれらの重合体であるテアフラビン類、テアフラビン酸類、テアフラガリン類、テオガリニン類、テアフラボニン類、テアナフトキノン類、テアシネンシン類、プロアントシアニジン類、アッサミカイン類、ウーロンホモビスフラバン類、テアルビジンや、加水分解型タンニンであるストリクチニン、β-グルコガリン、1,4,6-トリガロイルグルコース等が挙げられる。
【0018】
本発明の茶系飲料における茶ポリフェノールの濃度は飲用状態で10~150mg%である。茶ポリフェノールの濃度が10mg%未満であると茶系飲料らしい香味が期待できず、150mg%を超えると茶ポリフェノールの渋みが目立ち、いずれも嗜好性に乏しいものになってしまう。茶ポリフェノールの濃度は飲用状態で15~100mg%が好ましく、20~80mg%がより好ましい。茶ポリフェノールの濃度がこの範囲にあると茶系飲料としての嗜好性を維持しながら、カフェイン含有量の調整することによってピペリン類由来の辛味を効果的に抑制することができる。
【0019】
本発明の茶系飲料において、茶ポリフェノールに対するピペリン類の含有量比率(ピペリン類含有量/茶ポリフェノール含有量)は、特に限定されるものではないが、0.002~0.015であることが好ましく、0.002~0.01であることがより好ましい。茶ポリフェノールに対するピペリン類の含有量比率がこの範囲にあることによって、茶飲料感を損なわずに効果的にピペリン類由来の辛味を抑制することができる。
【0020】
本発明におけるカフェインとは、CAS登録番号が58-08-2で特定される化合物を意味し、本発明の茶系飲料の主たる原料である茶素材(茶葉や茶抽出物など)に通常含まれる。カフェインの含有量は高速液体クロマトグラフ法を用いた公知の手法で定量することができる。公知の手法としては例えば「日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアル・解説」(文部科学省監修、建帛社、2016年2月)の238~241ページに記載の方法を例示できる。
【0021】
本発明の茶系飲料におけるカフェインの濃度は飲用状態で3.0mg%以下である。カフェインの濃度が3.0mg%を超えるとピペリン類に由来する辛味が感じられるようになり、嗜好性に乏しくなる。カフェインの濃度は飲用状態で2.0mg%以下が好ましく、1.5mg%以下がより好ましい。カフェインの濃度がこの範囲にあると茶系飲料としての嗜好性を維持しながら、茶ポリフェノール含有量を調整することによってピペリン類由来の辛味を効果的に抑制することができる。茶系飲料中のカフェイン含有量は、あらかじめカフェイン低減処理された茶系素材(茶葉や茶抽出物など)を利用するのが好適である。カフェインが低減された素材は茶系飲料の形態に合わせて適宜選択すればよく、例えば、粉末飲料であれば低カフェインの茶抽出物、ティーバッグであれば茶葉を選択する。
【0022】
本発明の茶系飲料において、茶ポリフェノールに対するカフェインの含有量比率(カフェイン含有量/茶ポリフェノール含有量)は、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。茶ポリフェノールに対するカフェインの含有量比率がこの範囲にあることによって、茶飲料感を損なわずに効果的にピペリン類由来の辛味を抑制することができる。
【0023】
本発明の茶系飲料のpHは、特に限定されるものではないが、飲用状態において2.0~4.6であることが好ましく、2.5~4.5であることがより好ましい。pHをこの範囲に調整することによって、本発明の香味改善作用がより発揮されやすくなる。pH調整には、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、L-アスコルビン酸等の有機酸とその塩や、重炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機の塩基を用いることができる。これらのうち、少なくとも有機酸を使用してpHを調整するのが、辛味の抑制の点で好ましい。有機酸としては特にクエン酸がピペリン類含有素材との香味的な相性の観点で好ましい。
【0024】
本発明の茶系飲料には、前述した茶系素材やピペリン類含有素材の他に、デキストリン、オリゴ糖、環状オリゴ糖、植物性油脂、動物性油脂、粉末果汁、食品用エキス、酒類、ハーブ、スパイス類、香辛料抽出物、pH調整剤、甘味料、酸味料、調味料、酵素、糊料、ゲル化剤、増粘多糖類、安定剤、乳化剤、着色料、香料、酸化防止剤、日持向上剤、栄養強化剤、保存料などの副成分を含有してもよい。これらの副成分は、それぞれ用途に応じた好ましいタイミングで添加すればよい。
【0025】
本発明の茶系飲料は、その形態として粉末飲料、容器詰液体飲料、ティーバッグとすることができる。
粉末飲料とは、水又はお湯で希釈して飲用される粉末状(顆粒状、粉末を塊状に成型したタブレット状も含む)の形態の飲料である。粉末飲料は速やかに溶解もしくは分散するものが好ましいため、顆粒状が好ましいが、特に粉末の粒子径は定めるものではない。包装形態としては、バルク状の包装容器内からスプーンなどで飲用分を取り出す方法でも良いが、スティック包装や3方シール包装などで一杯分を個包装するのがピペリン類の生理機能性を享受しやすい点や品質保持の点で都合が良い。包装資材としては樹脂製資材とアルミ箔を組み合わせたラミネート品が品質保持の点で好適である。本発明の茶系飲料を粉末飲料とする場合には、飲用状態で成分含有量が所定の濃度となるように茶系素材とピペリン類含有素材、その他副素材を混合し、および必要に応じて造粒し前述の包装資材に充填することで製造することができる。
【0026】
液体飲料とは、そのまま飲用できる容器詰茶系飲料(いわゆるRTD飲料)や水又はお湯で希釈して飲料される液体状の形態の飲料である。これらは飲用の手間がかからない反面、微生物による汚染が起こりやすいため、加熱処理による殺菌と衛生的な容器充填が必要である。殺菌は食品衛生法に定められた殺菌条件にて行い、包装容器としてはPETボトルなどのプラスチックボトル、缶、瓶、紙パックを用い、容器に応じてホットパック充填やアセプティック充填を行えばよい。本発明の茶系飲料を液体飲料とする場合には、茶葉の抽出または茶抽出物を溶解し、これにピペリン類含有素材やその他副素材を配合して各成分が所定の濃度となるように調合し、前述の殺菌・容器充填することで製造することができる。
【0027】
ティーバッグは、紙や合成繊維の不織布やメッシュのバッグに茶葉やその他原料を充填したもので、これを水やお湯に浸漬して得られる浸出液を飲用に供するものである。固形物と浸出液を分離することができるため、より天然に近い状態の原料素材を用いて自然な香味を得られる特徴がある。本発明の茶系飲料をティーバッグとする場合には、飲用状態で成分含有量が所定の濃度となるように茶葉とピペリン含有素材の量を調整し、必要に応じて副素材とともにバッグ内に充填し、開口部を閉じることで製造することができる。飲用状態とするための条件としては例えば、ティーバッグ1つを140mlのお湯で2分間抽出し、ティーバッグを取り出した際の溶液条件をあげることができる。
【実施例0028】
以下に本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0029】
<試験例1>
茶系飲料にピペリン類含有素材を配合した場合の香味への影響について確認した。
紅茶エキス粉末(製品名:インスタントティーRX-100、茶ポリフェノール濃度:27.0%、カフェイン濃度:5.4%、メーカー:三井農林)、ヒハツエキス粉末(製品名:Tie2ヒハツエキスパウダーMF、ピペリン類含有量:0.124%、メーカー:丸善製薬)を表1の組成となるように混合して粉末の茶系飲料を調製し、それぞれを120mlのお湯(90℃)に溶解した。これらについて専門パネラー5名により香味を官能評価した。
【0030】
官能評価における評価は、香味や異臭についての識別やそれらの濃度識別についてトレーニングされた専門パネラー5名で実施した。評価は、ピペリン類に特有のピリピリとした辛味について着目し、
5点:コントロールと同等、
4点:コントロールと比べてわずかに辛みを感じる、
3点:コントロールと比べて少し辛みを感じる、
2点:コントロールと比べて辛みを感じる、
1点:コントロールよりもかなり辛味が強い、
とした基準で評点させた。パネラー5名の評価点は平均化した。これらの結果から、◎:優、〇:良、△:可、×:不可、として評価した。また、評価パネラーのコメントを取り纏め、代表的なコメントを抽出した。これら結果を表1に示した。
【0031】
【0032】
表1に示した通り、ピペリン類を含有するヒハツエキスを紅茶エキスと合わせて飲用した場合、ピペリン類含有量に応じてピリピリとした辛味が強まることが確認された。特にピペリン類の機能性が大いに期待できるピペリン類濃度0.1mg%以上(試験例1-3~1-6)においては辛味が強く感じられるようになり、継続的に飲用するには困難であると思われた。
【0033】
<試験例2>
茶系飲料にピペリン類含有素材を配合した場合に、香味へのカフェイン含有量の影響について確認した。
紅茶エキス粉末(製品名:インスタントティーRX-100、茶ポリフェノール濃度:27.0%、カフェイン濃度:5.4%、メーカー:三井農林)、 低カフェイン紅茶エキス粉末(製品名:インスタントティーBCL、茶ポリフェノール濃度:30.0%、カフェイン濃度:0.0%、メーカー:三井農林)ヒハツエキス粉末(製品名:Tie2ヒハツエキスパウダーMF、ピペリン類含有量:0.124%、メーカー:丸善製薬)を表2の組成となるように混合して粉末の茶系飲料を調製し、それぞれを120mlのお湯(90℃)に溶解した。これらについて専門パネラー5名により香味を官能評価した。
【0034】
官能評価における評価は、香味や異臭についての識別やそれらの濃度識別についてトレーニングされた専門パネラー5名で実施した。評価は、ピペリン類に特有のピリピリとした辛味、茶ポリフェノールに特有の渋み、全体的な香味の3項目について、各ポリフェノール濃度でカフェインを含むものをコントロールとして、カフェインを低減した場合の影響を以下の表2に示した基準で評点させ、パネラー5名の評価点を平均化した。これらの結果から総合的に、◎:優、〇:良、△:可、×:不可、として評価した。また、評価パネラーのコメントを取り纏め、代表的なコメントを抽出した。これら結果を表3に示した。
【0035】
【0036】
【0037】
表3から明らかなとおり、一般的な紅茶エキス(カフェイン未低減)を使用したコントロールに比べ、低カフェイン紅茶エキスを用いてカフェイン含有量を低減した場合には、ピペリン類に由来するピリピリとした辛味が抑制され、紅茶ポリフェノールに由来する渋みはやや穏やかになっていた。同時に、ヒハツに特有の漢方様の臭いもマスキングされていることが確認された。特に辛味の感じ方については口に含んだ直後の辛味が少なく、紅茶らしい味わいの後半に弱い辛味が発現する程度で、「飲みやすさ」の点で大幅に改善されていることが確認された。
【0038】
<試験例3>
試験例2に続き、カフェイン含有量の影響についてさらに詳細に確認した。
紅茶エキス粉末(製品名:インスタントティーRX-100、茶ポリフェノール濃度:26.2%、カフェイン濃度:5.4%、メーカー:三井農林)、 低カフェイン紅茶エキス粉末(製品名:インスタントティーBCL、茶ポリフェノール濃度:30.0%、カフェイン濃度:0.0%、メーカー:三井農林)ヒハツエキス粉末(製品名:Tie2ヒハツエキスパウダーMF、ピペリン類含有量:0.124%、メーカー:丸善製薬)を表4の組成となるように混合して粉末の茶系飲料を調製し、それぞれを120mlのお湯(90℃)に溶解した。これらについて専門パネラー5名により試験例2と同様の基準にて官能評価し、その結果を表4に示した。
【0039】
【0040】
表4の結果から明らかなとおり、飲用時のカフェイン含有量の減少に伴って辛味が徐々に減少し、試験例3-4および3-5の条件においては、感覚的に気にならない程度まで辛味が抑制されるとともに、ヒハツに特有の漢方臭が弱くなっており、一般的なカフェイン含有量の紅茶エキスを使用したコントロール(試験例3-1)に比較して、かなり飲みやすい印象を与えていた。
【0041】
<試験例4>
試験例3に続き、緑茶エキスを採用した際のカフェイン含有量の影響について確認した。
緑茶エキス粉末(製品名:ポリフェノンKN、茶ポリフェノール濃度:41.1%、カフェイン濃度:6.4%、メーカー:三井農林)、 精製緑茶エキス粉末(製品名:ポリフェノン70S、茶ポリフェノール濃度:83.7%、カフェイン濃度:0.0%、メーカー:三井農林)ヒハツエキス粉末(製品名:Tie2ヒハツエキスパウダーMF、ピペリン類含有量:0.124%、メーカー:丸善製薬)を表4の組成となるように混合して粉末の茶系飲料を調製し、それぞれを120mlのお湯(90℃)に溶解した。これらについて専門パネラー5名により試験例2と同様の基準にて官能評価し、その結果を表5に示した。
【0042】
【0043】
試験例3の結果と同様に、茶系素材として緑茶エキスを使用した場合においても、飲用時のカフェイン含有量の減少に伴って辛味が徐々に減少する効果が確認された。特に試験例4-4および4-5の条件においては、辛味が減少して穏やかになっており、お茶らしい渋味が感じられ、一般的なカフェイン含有量の緑茶エキスを使用したコントロール(試験例4-1)に比較して、かなり飲みやすい印象を与えていた。
【0044】
<試験例5>
ヒハツエキスおよび紅茶葉を配合したティーバッグについて、辛味の抑制効果を確認した。試験例5-1として、インド産の紅茶葉(CTC製法)2.0gとヒハツエキス粉末(製品名:Tie2ヒハツエキスパウダーMF、ピペリン類含有量:0.124%、メーカー:丸善製薬)2.0gをナイロン製メッシュ素材の小袋に充填してティーバッグとした。試験例5-2は茶葉をインド産紅茶葉のカフェインレス処理品(超臨界二酸化炭素抽出処理品)に変更したほかは試験例5-1と同様にして作成した。これらを沸騰水140mlの中にティーバッグ1つを投入し、2分間抽出した後にバッグを取り出し、各抽出液について専門パネラー5名により試験例2と同様の基準にて官能評価し、その結果を表6に示した。
【0045】
【0046】
茶系素材として茶葉を直接的な原料とした本試験においても、ヒハツエキスに含まれるピペリン類由来の辛味は、低カフェイン茶葉を用いることにより、無処理の茶葉を使用した場合に比べて優位に低下することが確認された。