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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039021
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】舵
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/38 20060101AFI20220303BHJP
   B63H 5/08 20060101ALI20220303BHJP
   B63H 5/07 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
B63H25/38 102
B63H5/08
B63H5/07 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020143796
(22)【出願日】2020-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000129851
【氏名又は名称】株式会社ケイセブン
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗林 定友
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 紀幸
(57)【要約】      (修正有)
【課題】航海中の船のエネルギ消費を低減させるために、大きな推力を発生する舵を提供する。
【解決手段】第1舵2Aを、第1プロペラ1Aの左側に配置される左舵3Aと、第1プロペラの右側に配置される右舵3Bで形成し、第2舵2Bを、第2プロペラ1Bの左側に配置される左舵3Aと、第2プロペラの右側に配置される右舵3Bで形成し、第1舵と第2舵の左舵を左右方向に延在する第1左舵部と、第1舵と第2舵の右舵を左右方向に延在する第1右舵部を形成し、第1舵の第1左舵部と第1右舵部を、第1プロペラとの外周線の上端からプロペラの直径の10~20%よりも上方に配置し、第2舵の第1左舵部と第1右舵部を、第2プロペラとの外周線の上端からプロペラの直径の10~20%よりも上方に配置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船の船尾の前後方向の同一位置に左右方向に所定の間隔を隔てて設けられた第1プロペラと第2プロペラの側部に配置される舵において、
前記舵を、前記第1プロペラの両側に配置される第1舵と、前記第2プロペラの両側に配置される第2舵で形成し、
背面視において、前記第1舵を、前記第1プロペラの左側に配置される左舵と、前記第1プロペラの右側に配置される右舵で形成し、
背面視において、前記第2舵を、前記第2プロペラの左側に配置される左舵と、前記第2プロペラの右側に配置される右舵で形成し、
背面視において、前記第1舵と第2舵の左舵を左右方向に延在する第1左舵部と、該第1左舵部の左端から下方左側に向かって湾曲する第2左舵部と、該第2左舵部の下端から下方に向かって延在する第3左舵部で形成し、
背面視において、前記第1舵と第2舵の右舵を左右方向に延在する第1右舵部と、該第1右舵部の右端から下方右側に向かって湾曲する第2右舵部と、該第2右舵部の下端から下方に向かって延在する第3右舵部で形成し、
背面視において、前記第1舵の第1左舵部と第1右舵部を、前記第1プロペラとの外周線の上端からプロペラの直径の10~20%よりも上方に配置し、
背面視において、前記第2舵の第1左舵部と第1右舵部を、前記第2プロペラとの外周線の上端からプロペラの直径の10~20%よりも上方に配置したことを特徴とする舵。
【請求項2】
前記第1舵の第1左舵部と第1右舵部に、それぞれ左舵軸と右舵軸を設け、
側面視において、前記第1舵の第3左舵部と第3右舵部の前後方向の長さを、前記第1プロペラの直径の40~100%に形成し、前記第1プロペラを、前記第1舵の第3左舵部と第3右舵部の前端から前後方向の長さの15~65%の間に設け、前記第1舵の左舵軸と右舵軸を、前記第1舵の第3左舵部と第3右舵部の前端から前後方向の長さの35~50の間に設け、
前記第2舵の第1左舵部と第1右舵部に、それぞれ左舵軸と右舵軸を設け、
側面視において、前記第2舵の第3左舵部と第3右舵部の前後方向の長さを、前記第2プロペラの直径の40~100%に形成し、前記第2プロペラを、前記第2舵の第3左舵部と第3右舵部の前端から前後方向の長さの15~65%の間に設け、前記第2舵の左舵軸と右舵軸を、前記第2舵の第3左舵部と第3右舵部の前端から前後方向の長さの35~50の間に設けた請求項1記載の舵。
【請求項3】
背面視において、前記第1舵の第3左舵部の右内面と第1プロペラの外周線の左端の間隔と、前記第1舵の第3右舵部の左内面と第1プロペラの外周線の右端の間隔を第1プロペラの直径の4~10%に形成し、
背面視において、前記第2舵の第3左舵部の右内面と第2プロペラの外周線の左端の間隔と、前記第2舵の第3右舵部の左内面と第2プロペラの外周線の右端の間隔を第2プロペラの直径の4~10%に形成した請求項1又は2記載の舵。
【請求項4】
背面視において、前記第1舵の第3左舵部と第3右舵部の下端を、前記第1プロペラの軸心よりも下方に位置させ、
背面視において、前記第2舵の第3左舵部と第3右舵部の下端を、前記第1プロペラの軸心よりも下方に位置させた請求項1~3のいずれか1項に記載の舵。
【請求項5】
背面視において、前記第1舵を、前記第1プロペラの左側に配置される左舵で形成し、
背面視において、前記第2舵を、前記第2プロペラの右側に配置される右舵で形成した請求項1~4のいずれか1項に記載の舵。
【請求項6】
前記第1舵の左舵と第2舵の右舵の間に舵軸と舵板が同一平面内にある通常舵を設け、
背面視において、前記第1プロペラと第2プロペラの左右方向の中間に、前記固定舵を配置した請求項5記載の舵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右方向に一対のプロペラを前後方向の同一位置に備えた2軸船のプロペラに配置される舵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、左右方向に一対のプロペラを前後方向の同一位置に備えた2軸船の左右一対のプロペラの後方中央に舵を配置する技術が知られている。(特許文献1)
【0003】
また、プロペラから噴出される噴流を加速するために、プロペラの両側にプロペラの外周部に沿うように円弧状に形成された左舵と右舵を備えるダクトプロペラの技術が知られている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-97711号公報
【特許文献2】特開平1-501384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、船の直進時に、左右一対のプロペラの後方中央に配置した舵には抵抗が生じ、航海中の船のエネルギ消費を十分低減できていないという問題があった。
【0006】
また、特許文献2の技術では、ダクトの効率をあげるために、プロペラと左右舵のクリアランスが小さく設定されているために、左右舵の内部にキャビテーションによるエロ―ジョンが発生しやすいという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、航海中の船のエネルギ消費を低減させるために、大きな推力を発生する舵を提供することにある。また、舵の近傍で発生するキャビテーションを防止して舵のエロ―ジョンを抑制する舵を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
請求項1に係る発明は、船の船尾の前後方向の同一位置に左右方向に所定の間隔を隔てて設けられた第1プロペラと第2プロペラの側部に配置される舵において、
前記舵を、前記第1プロペラの両側に配置される第1舵と、前記第2プロペラの両側に配置される第2舵で形成し、背面視において、前記第1舵を、前記第1プロペラの左側に配置される左舵と、前記第1プロペラの右側に配置される右舵で形成し、背面視において、前記第2舵を、前記第2プロペラの左側に配置される左舵と、前記第2プロペラの右側に配置される右舵で形成し、背面視において、前記第1舵と第2舵の左舵を左右方向に延在する第1左舵部と、該第1左舵部の左端から下方左側に向かって湾曲する第2左舵部と、該第2左舵部の下端から下方に向かって延在する第3左舵部で形成し、背面視において、前記第1舵と第2舵の右舵を左右方向に延在する第1右舵部と、該第1右舵部の右端から下方右側に向かって湾曲する第2右舵部と、該第2右舵部の下端から下方に向かって延在する第3右舵部で形成し、背面視において、前記第1舵の第1左舵部と第1右舵部を、前記第1プロペラとの外周線の上端からプロペラの直径の10~20%よりも上方に配置し、 背面視において、前記第2舵の第1左舵部と第1右舵部を、前記第2プロペラとの外周線の上端からプロペラの直径の10~20%よりも上方に配置したことを特徴とする舵である。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記第1舵の第1左舵部と第1右舵部に、それぞれ左舵軸と右舵軸を設け、側面視において、前記第1舵の第3左舵部と第3右舵部の前後方向の長さを、前記第1プロペラの直径の40~100%に形成し、前記第1プロペラを、前記第1舵の第3左舵部と第3右舵部の前端から前後方向の長さの15~65%の間に設け、前記第1舵の左舵軸と右舵軸を、前記第1舵の第3左舵部と第3右舵部の前端から前後方向の長さの35~50の間に設け、前記第2舵の第1左舵部と第1右舵部に、それぞれ左舵軸と右舵軸を設け、側面視において、前記第2舵の第3左舵部と第3右舵部の前後方向の長さを、前記第2プロペラの直径の40~100%に形成し、前記第2プロペラを、前記第2舵の第3左舵部と第3右舵部の前端から前後方向の長さの15~65%の間に設け、前記第2舵の左舵軸と右舵軸を、前記第2舵の第3左舵部と第3右舵部の前端から前後方向の長さの35~50の間に設けた請求項1記載の舵である。
【0010】
請求項3に係る発明は、背面視において、前記第1舵の第3左舵部の右内面と第1プロペラの外周線の左端の間隔と、前記第1舵の第3右舵部の左内面と第1プロペラの外周線の右端の間隔を第1プロペラの直径の4~10%に形成し、背面視において、前記第2舵の第3左舵部の右内面と第2プロペラの外周線の左端の間隔と、前記第2舵の第3右舵部の左内面と第2プロペラの外周線の右端の間隔を第2プロペラの直径の4~10%に形成した請求項1又は2記載の舵である。
【0011】
請求項4に係る発明は、背面視において、前記第1舵の第3左舵部と第3右舵部の下端を、前記第1プロペラの軸心よりも下方に位置させ、背面視において、前記第2舵の第3左舵部と第3右舵部の下端を、前記第1プロペラの軸心よりも下方に位置させた請求項1~3のいずれか1項に記載の舵である。
【0012】
請求項5に係る発明は、背面視において、前記第1舵を、前記第1プロペラの左側に配置される左舵で形成し、背面視において、前記第2舵を、前記第2プロペラの右側に配置される右舵で形成した請求項1~4のいずれか1項に記載の舵である。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記第1舵の左舵と第2舵の右舵の間に舵軸と舵板が同一平面内にある通常舵を設け、背面視において、前記第1プロペラと第2プロペラの左右方向の中間に、前記固定舵を配置した請求項5記載の舵である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、舵を、第1プロペラの両側に配置される第1舵と、第2プロペラの両側に配置される第2舵で形成し、背面視において、第1舵を、第1プロペラの左側に配置される左舵と、第1プロペラの右側に配置される右舵で形成し、背面視において、第2舵を、第2プロペラの左側に配置される左舵と、第2プロペラの右側に配置される右舵で形成し、背面視において、第1舵と第2舵の左舵を左右方向に延在する第1左舵部と、第1左舵部の左端から下方左側に向かって湾曲する第2左舵部と、第2左舵部の下端から下方に向かって延在する第3左舵部で形成し、背面視において、第1舵と第2舵の右舵を左右方向に延在する第1右舵部と、第1右舵部の右端から下方右側に向かって湾曲する第2右舵部と、第2右舵部の下端から下方に向かって延在する第3右舵部で形成し、背面視において、第1舵の第1左舵部と第1右舵部を、第1プロペラとの外周線の上端からプロペラの直径の10~20%よりも上方に配置し、背面視において、第2舵の第1左舵部と第1右舵部を、第2プロペラとの外周線の上端からプロペラの直径の10~20%よりも上方に配置したので、第1舵の第1左舵部及び第1右舵部と第2舵の第1左舵部及び第1右舵部にダクトプロペラのダクト上部よりも大きな推力を発生させて、第1舵の第2左舵部及び第2右舵部と第2舵の第2左舵部及び第2右舵部にダクトプロペラのダクト上部の両側部と同等の推力を発生させて、航海中の船のエネルギ消費を低減させることができる。また、キャビテーションを防止して第1舵と第2舵のエロ―ジョンを抑制することができる。さらに、第1舵の第3左舵部と第2舵の第2右舵部は左右方向に隔たって配置されているので船の横揺れを効率良く抑制することができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、第1舵の第1左舵部と第1右舵部に、それぞれ左舵軸と右舵軸を設け、側面視において、第1舵の第3左舵部と第3右舵部の前後方向の長さを、第1プロペラの直径の40~100%に形成し、第1プロペラを、第1舵の第3左舵部と第3右舵部の前端から前後方向の長さの15~65%の間に設け、第1舵の左舵軸と右舵軸を、第1舵の第3左舵部と第3右舵部の前端から前後方向の長さの35~50の間に設け、第2舵の第1左舵部と第1右舵部に、それぞれ左舵軸と右舵軸を設け、側面視において、第2舵の第3左舵部と第3右舵部の前後方向の長さを、第2プロペラの直径の40~100%に形成し、第2プロペラを、第2舵の第3左舵部と第3右舵部の前端から前後方向の長さの15~65%の間に設け、第2舵の左舵軸と右舵軸を、第2舵の第3左舵部と第3右舵部の前端から前後方向の長さの35~50の間に設けたので、第1舵の第3左舵部及び第3右舵部と第2舵の第3左舵部及び第3右舵部に大きな推力を発生させて、航海中の船のエネルギ消費をより低減させることができる。また、第1舵の左舵軸及び右舵軸と第2舵の左舵軸及び右舵軸の回転トルクを小さくすることができ、第1舵の第3左舵部及び第3右舵部と第2舵の第3左舵部及び第3右舵部を前方姿勢にした場合に、大きな舵力を発生させて船を効率良く停止させることができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、背面視において、第1舵の第3左舵部の右内面と第1プロペラの外周線の左端の間隔と、第1舵の第3右舵部の左内面と第1プロペラの外周線の右端の間隔を第1プロペラの直径の4~10%に形成し、背面視において、第2舵の第3左舵部の右内面と第2プロペラの外周線の左端の間隔と、第2舵の第3右舵部の左内面と第2プロペラの外周線の右端の間隔を第2プロペラの直径の4~10%に形成したので、第1舵の第3左舵部及び第3右舵部と第2舵の第3左舵部及び第3右舵部の前部にコアンダ効果による大きな推力が発生し、後部にUSB効果による大きな推力が発生して、航海中の船のエネルギ消費をさらに低減させることができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、請求項1~3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、背面視において、第1舵の第3左舵部と第3右舵部の下端を、第1プロペラの軸心よりも下方に位置させ、背面視において、第2舵の第3左舵部と第3右舵部の下端を、第1プロペラの軸心よりも下方に位置させたので、船の直進時に、第1舵の第3左舵部及び第3右舵部と第2舵の第3左舵部及び第3右舵部が抵抗になるのを抑制することができる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、請求項1~4のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、背面視において、第1舵を、第1プロペラの左側に配置される左舵で形成し、背面視において、第2舵を、第2プロペラの右側に配置される右舵で形成したので、船の直進時に、第1舵と第2舵の抵抗をより抑制することができる。また、第1舵の左舵と第2舵の右舵の舵角の可動範囲を大きく設定することができる。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、請求項5記載の発明の効果に加えて、第1舵の左舵と第2舵の右舵の間に舵軸と舵板が同一平面内にある通常舵を設け、背面視において、第1プロペラと第2プロペラの左右方向の中間に、固定舵を配置したので、通常舵に推力が発生して、航海中の船のエネルギ消費を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】船の船尾の左右一対のプロペラの外周に第1実施形態の舵の第1舵と第2舵を設けた背面図である。
図2】第1実施形態の舵の第1舵の斜視図である。
図3】第1舵の背面図である。
図4】第1舵の左側面図である。
図5】第1舵の右側面図である。
図6】第1舵の平面図である。
図7】タンカー船に設けた舵近傍の水流の速さのシュミュレーションである。
図8】コンテナ船に設けた舵近傍の水流の速さのシュミュレーションである。
図9】第1舵を-舵角(前方操舵)と+舵角(後方操舵)に回転させた場合の舵力の測定値である。
図10】船の船尾の左右一対のプロペラの外周に第2実施形態の舵の第1舵と第2舵を設けた背面図である。
図11】船の船尾の左右一対のプロペラの外周に第3実施形態の舵の第1舵と第2舵を設けた背面図である。
【0021】
図1に示すように、船の船尾には、左右方向に所定の間隔を隔てて第1プロペラ1Aと第2プロペラ1Bが設けられている。これにより、船を高速で航行する場合においても、第1プロペラ1Aと第2プロペラ1Bの回転速度を過度に高速にすることなく必要な推力を得ることができるので、キャビテーションの発生を抑制し、第1プロペラ1Aと第2プロペラ1Bに発生するエロ―ジョンを抑制することができる。
【0022】
第1プロペラ1Aと第2プロペラ1Bは同一形状に形成されている。なお、本明細書においては、第1プロペラ1Aと第2プロペラ1Bを総称してプロペラ1という。
【0023】
<第1実施形態の舵>
次に、第1実施形態の舵について説明する。図1に示すように、第1プロペラ1Aの外周には、第1実施形態の舵を形成する第1舵2Aが設けられ、第2プロペラ1Bの外周には、第1実施形態の舵を形成する第2舵2Bが設けられている。
【0024】
第1舵2Aと第2舵2Bは同一形状に形成されている。なお、本明細書においては、第1舵2Aと第2舵2Bを総称して舵2という。
【0025】
第1舵2Aは、第1プロペラ1Aの左側に配置された左舵3Aと、第1プロペラ1Aの右側に配置された右舵3Bから形成されている。第2舵2Bは、第2プロペラ1Bの左側に配置された左舵3Aと、第2プロペラ1Bの右側に配置された右舵3Bから形成されている。なお、第1舵2Aの右舵3Bと第2舵2Bの左舵3Aは、回動時に相互に干渉しないように左右方向に所定の間隔を隔てて配置されている。
【0026】
左右方向において、第1舵2Aは、船の中心よりも左側に配置され、第2舵2Bは、船の中心よりも右側に配置され、特に、第1舵2Aの左舵3Aは、船の中心よりも左舷に偏移した位置に配置され、第2舵2Bの右舵3Bは、船の中心よりも右舷に偏移した位置に配置されている。これにより、船に横揺れ(ローリング)が発生した場合には、第1舵2Aの左舵3Aと第2舵2Bの右舵3Bは、フレスタビライザと同様の機能を発揮して船の横揺れを効率良く抑制することができる。短軸船よりも抑制することができる。
【0027】
以下、第1舵2Aの左舵3Aと右舵3Bについて説明する。なお、第2舵2Bの左舵3Aと右舵3Bは、第1舵2Aの左舵3Aと右舵3Bと同一形状に形成されているので説明を省略する。
【0028】
図2に示すように、第1舵2Aの左舵3Aは、左右方向に延在する第1左舵部4Aと、第1左舵部4Aの左端部から左側下方に向かって湾曲する第2左舵部5Aと、第2左舵部5Aの下端部から下方に延在する第3左舵部6Aから形成されている。
【0029】
第1左舵部4Aの右端部には、上下方向に延在する左舵軸8Aが設けられている。左舵軸8Aの上部は、船の機関室内に延在して、左操舵機10Aに連結されている。
【0030】
第1舵2Aの右舵3Bは、左右方向に延在する第1右舵部4Bと、第1右舵部4Bの右端部から右側下方に向かって湾曲する第2右舵部5Bと、第2右舵部5Bの下端部から下方に延在する第3右舵部6Bから形成されている。
【0031】
第1右舵部4Bの左部には、上下方向に延在する右舵軸8Bが設けられている。右舵軸8Bの上部は、船の機関室内に延在して、右操舵機10Bに連結されている。なお、本明細書においては、左操舵機10Aと右操舵機10Bを総称して操舵機10という。
【0032】
図3に示すように、上下方向において、第1舵2Aの第1左舵部4Aと第1右舵部4Bの下面は、第1プロペラ1Aの外周線Lの上端から上方にプロペラ1の直径Dの10~20%の間隔を隔てた位置に配置するのが好ましい。
【0033】
図4,5に示すように、第1プロペラ1Aよりも上方を流れる水流の速度は、第1プロペラ1Aよりも下方を流れる水流の速度よりも遅い。これにより、第1左舵部4Aと第1右舵部4Bの下面を、第1プロペラ1Aの外周線Lの上端から上方にプロペラ1の直径Dの10~20%の間隔を隔てた位置に配置した場合、プロペラの外周線Lに沿って配置されるダクトプロペラのダクト上部の中間部位に発生する推力よりも大きな推力を第1左舵部4Aと第1右舵部4Bに発生させることができる。
【0034】
図3に示すように、左右方向において、第3左舵部6Aの右内面7Aは、第1プロペラ1Aの外周線Lの左端から左方に第1プロペラ1Aの直径Dの4~10%の間隔を隔てた位置に配置しするのが好ましい。これにより、船の直進時に、第1プロペラ1Aに流れ込む吸引流によって第1プロペラ1Aよりも前方に延在する第3左舵部6Aの前部に発生するコアンダ効果による大きな推力と、第1プロペラ1Aから噴出される噴流によって第1プロペラ1Aよりも後方に延在する第3左舵部6Aの後部に発生するUSB効果による大きな推力が発生して、船を前方に移動させる大きな推力(揚力)を発生させることができる。
【0035】
同様に、第3右舵部6Bの左内面7Bは、第1プロペラ1Aの外周線Lの右端から右方に第1プロペラ1Aの直径Dの4~10%の間隔を隔てた位置に配置するのが好ましい。
【0036】
これにより、船の直進時に、第1プロペラ1Aに流れ込む吸引流によって第1プロペラ1Aよりも前方に延在する第3右舵部6Bの前部に発生するコアンダ効果による大きな推力と、第1プロペラ1Aから噴出される噴流によって第1プロペラ1Aよりも後方に延在する第3右舵部6Bの後部に発生するUSB効果による大きな推力が発生して、船を前方に移動させる大きな推力(揚力)を発生させることができる。
【0037】
上下方向において、第3左舵部6Aと第3右舵部6Bの下端は、第1プロペラ1Aの軸視によりも下方に位置し、第1プロペラ1Aの外周線Lの下端の近傍に位置させるのが好ましい。これにより、第3左舵部6Aと第3右舵部6Bの抵抗を抑制して船を効率良く航行させることができる。なお、本明細書においては、右内面7Aと左内面7Bを総称して内面7という。
【0038】
第2左舵部5Aと第2右舵部5Bは、第1プロペラ1Aの外周線Lから半径方向に所定の間隔を隔てて略円弧形状に形成するのが好ましい。これにより、プロペラの外周部に沿って配置されるダクトプロペラのダクト上部の両側部位に発生する推力と同等な推力を第2左舵部5Aと第2右舵部5Bに発生させることができる。
【0039】
図4に示すように、左側面視において、前後方向において、第3左舵部6Aの左舵弦長(請求項の「前後方向の長さ」)CAは、ダクトプロペラのダクト長さと同様に第1プロペラ1Aの直径Dの40~100%に形成するのが好ましい。これにより、第3左舵部6Aに推力を効率良く発揮させることができる。
【0040】
第1プロペラ1Aは、第3左舵部6Aの前端部から左舵弦長CAの15~65%の間、すなわち、第1プロペラ1Aの羽根部の前端部Fを第3左舵部6Aの前端部から左舵弦長CAの15%よりも後側に配置し、第1プロペラ1Aの羽根部の前端部Eを第3左舵部6Aの前端部から左舵弦長CAの65%よりも前側に配置している。
【0041】
左舵軸8Aは、第3左舵部6Aの前端部から第3左舵部6Aの左舵弦長CAの30~50%に設け、特に、第3左舵部6Aの前端部から第3左舵部6Aの左舵弦長CAの35~45%に設けるのが好ましい。これにより、左操舵機10Aで左舵軸8Aを回動させるトルクを小さくすることができ、また、前方操舵時に第3左舵部6Aに大きな舵力を発生させることができ船を効率良く停止させることができる。
【0042】
同様に、図5に示すように、右側面視において、前後方向において、第3右舵部6Bの右舵弦長(請求項の「前後方向の長さ」)CBは、第1プロペラ1Aの直径Dの40~100%に形成するのが好ましい。これにより、第3右舵部6Bに推力を効率良く発揮させることができる。なお、本明細書においては、左舵弦長CAと右舵弦長CBを総称して舵弦長Cという。
【0043】
第1プロペラ1Aは、第3左舵部6Aの前端部から右舵弦長CBの15~65%の間、すなわち、第1プロペラ1Aの羽根部の前端部Fを第3左舵部6Aの前端部から右舵弦長CBの15%よりも後側に配置し、第1プロペラ1Aの羽根部の前端部Eを第3左舵部6Aの前端部から右舵弦長CBの65%よりも前側に配置している。
【0044】
右舵軸8Bは、第3右舵部6Bの前端部から第3右舵部6Bの右舵弦長CBの30~50%に設け、特に、第3右舵部6Bの前端部から第3右舵部6Bの左舵弦長CBの35~45%に設けるのが好ましい。これにより、右操舵機10Bで右舵軸8Bを回動させるトルクを小さくすることができ、また、前方操舵時に第3右舵部6Bに大きな舵力を発生させることができ船を効率良く停止させることができる。
【0045】
図6に示すように、平面視において、第3左舵部6Aの右内面7Aは、第1プロペラ1A側に所定の膨らみを持った反り線(キャンバーライン)状に形成されている。これにより、第3左舵部6Aに、前方右側に向かって推力を効率良く発生させることができる。また、第3左舵部6Aの右内面7Aの前縁側に発生する第1プロペラ1Aによる吸引流がコアンダ効果を生じさせ、推力をより大きくすることができる。
【0046】
第3左舵部6Aには、所定の捻じり角を形成するのが好ましく、上部の捻じり角を下部の捻じり角よりも大きな角度に形成するのが好ましく、第3左舵部6Aは、上部の捻じり角を7度、下部の捻じり角を3度に形成されている。
【0047】
左操舵機10Aで左舵軸8Aは、-舵角に0~15度回転し、+舵角に0~105度回転できる構成に形成されている。なお、-舵角は、左舵軸8Aを時計方向に回転させ前方操舵させた舵角であり、+舵角は、左舵軸8Aを反時計方向に回転させ後方操舵させた舵角である。
【0048】
これにより、左舵軸8Aを時計方向に過度に回転させて、第3左舵部6Aの前部が船の船尾に過度に近いて、第1プロペラ1Aに流れ込む吸引流の流場に攪乱を生じさせて、振動や騒音の原因となるキャビテーションの増大を抑制することができる。
【0049】
同様に、平面視において、第3右舵部6Bの左内面7Bは、第1プロペラ1A側に所定の膨らみを持った反り線(キャンバーライン)状に形成されている。これにより、第3右舵部6Bに、前方左側に向かって推力を効率良く発生させることができる。また、第3右舵部6Bの左内面7Bの前縁側に発生する第1プロペラ1Aによる吸引流がコアンダ効果を生じさせ、推力をより大きくすることができる。
【0050】
第3右舵部6Bには、所定の捻じり角を形成するのが好ましく、上部の捻じり角を下部の捻じり角よりも大きな角度に形成するのが好ましく、第3右舵部6Bは、上部の捻じり角を7度、下部の捻じり角を3度に形成されている。
【0051】
右操舵機10Bを駆動して右舵軸8Bは、-舵角に0~15度回転し、+舵角に0~105度回転できる構成に形成されている。なお、-舵角は、右舵軸8Bを反時計方向に回転させ前方操舵させた舵角であり、+舵角は、右舵軸8Bを時計方向に回転させ後方操舵させた舵角である。
【0052】
これにより、右舵軸8Bを反時計方向に過度に回転させて、第3右舵部6Bの前部が船の船尾に過度に近いて、第1プロペラ1Aに流れ込む吸引流の流場に攪乱を生じさせて、振動や騒音の原因となるキャビテーションの増大を抑制することができる。
【0053】
図9に示すように、左舵軸8Aを-舵角に回転させて第3左舵部6Aの前部を後部よりも前方右側に位置する姿勢にした場合に発生する舵力は、左舵軸8Aを+舵角に回転させて第3左舵部6Aの前部を後部よりも前方左側に位置する姿勢にした場合に発生する舵力よりも大きくなる。例えば、左舵軸8Aを-舵角に10度回転させた場合の舵力は、約0.005kgであり、左舵軸8Aを+舵角に10度回転させた場合の舵力は、約0.0025kgである。
【0054】
同様に、右舵軸8Bを-舵角に回転させて第3右舵部6Bの前部を後部よりも前方左側に位置する姿勢にした場合に発生する舵力は、右舵軸8Bを+舵角に操舵させて第3右舵部6Bの前部を後部よりも前方右側に位置する姿勢にした場合に発生する舵力よりも大きくなる。例えば、右舵軸8Bを-舵角に10度回転させた場合の舵力は、約0.005kgであり、右舵軸8Bを+舵角に10度回転させた場合の舵力は、約0.0025kgである。
【0055】
船を停止する場合には、左操舵機10Aを駆動して左舵軸8Aを-舵角に15度回転させて、右操舵機10Bを駆動して右舵軸8Bを-舵角に15度回転する構成に形成している。これにより、第1プロペラ1Aの遊転を促進している船前方からの水流を遮断して、第1プロペラ1Aの慣性力を小さくし船の停止性能を高めることができる。
【0056】
<第2実施形態の舵>
次に、第2実施形態の舵について説明する。なお、第1実施形態と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
図10に示すように、船の船尾の第1プロペラ1Aの外周には、第2実施形態の舵を形成する第1舵12Aが設けられ、第2プロペラ1Bの外周には、第2実施形態の舵を形成する第2舵12Bが設けられている。
【0058】
第1舵12Aと第2舵12Bは、第1プロペラ1Aと第2プロペラ1Bの左右方向の中心線に対して左右対象に形成されている。なお、本明細書においては、第1舵12Aと第2舵12Bを総称して舵12という。
【0059】
第1舵12Aは、第1プロペラ1Aの左側に配置された左舵3Aから形成され、第1実施形態の第1舵2Aの右舵3Bに対応する右舵を備えない舵である。また、第2舵12Bは、第2プロペラ1Bの右側に配置された右舵3Bから形成され、第1実施形態の第2舵2Bの左舵3Aに対応する左舵を備えない舵である。なお、第1舵12Aの左舵3Aは、第1舵2Aの左舵3Aと同一形状に形成され、第2舵12Bの右舵3Bは、第2舵2Bの右舵3Bと同一形状に形成されている。
【0060】
これにより、第1舵12Aと第2舵12Bの抵抗を抑制して船を効率良く航行させることができる。また、第1舵12Aの左舵3Aと第2舵12Bの右舵3Bは左右方向に大きく隔たって配置されていることから、第1舵12Aの左舵3Aと第2舵12Bの右舵3Bの+舵角の可動範囲を大きく設定することができる。
【0061】
<第3実施形態の舵>
次に、第3実施形態の舵について説明する。なお、第1実施形態と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
図11に示すように、船の船尾の第1プロペラ1Aの外周には、第3実施形態の舵を形成する第1舵22Aが設けられ、第2プロペラ1Bの外周には、第3実施形態の舵を形成する第2舵22Bが設けられている。
【0063】
第1舵22Aと第2舵22Bは、第1プロペラ1Aと第2プロペラ1Bの左右方向の中心線に対して左右対象に形成されている。なお、本明細書においては、第1舵22Aと第2舵22Bを総称して舵22という。
【0064】
第1舵22Aは、第1プロペラ1Aの左側に配置された左舵3Aと、第1プロペラ1Aと第2プロペラ1Bの左右方向に中心に上下方向に延在する右固定舵23から形成されている。
【0065】
上下方向において、右固定舵23の下端部は、左舵3Aの下端部と同一位置に形成され、前後方向において、右固定舵23の右舵弦長は、左舵3Aの左舵弦長と同一長さに形成されている。また、右固定舵23の左内面23Aには、第1プロペラ1A側に所定の膨らみを持った反り線(キャンバーライン)状に形成するの好ましい。
【0066】
第2舵22Bは、第2プロペラ1Bの右側に配置された右舵3Bと、第1プロペラ1Aと第2プロペラ1Bの左右方向に中心に上下方向に延在する左固定舵24から形成されている。
【0067】
上下方向において、左固定舵24の下端部は、右舵3Bの下端部と同一位置に形成され、前後方向において、左固定舵24の左舵弦長は、右舵3Bの右舵弦長と同一長さに形成されている。また、左固定舵24の右内面24Aには、第2プロペラ1B側に所定の膨らみを持った反り線(キャンバーライン)状に形成するの好ましい。なお、右固定舵23と左固定舵24は一体的に形成され固定舵25を形成している。また、固定舵25を舵軸と舵板が同一平面内にある通常舵に形成することもできる。
【0068】
これにより、第1舵22Aと第2舵22Bの抵抗を抑制して船を効率良く航行させることができる。また、第1舵22Aの左舵3Aと固定舵25は左右方向に大きく隔たって配置されていることから、第1舵22Aの左舵3Aの+舵角の可動範囲を大きく設定することができ、第2舵22Bの右舵3Bと固定舵25は左右方向に大きく隔たって配置されていることから、第2舵22Bの右舵3Bの+舵角の可動範囲を大きく設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、船尾の左右方向に複数のプロペラを設けた船に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1A 第1プロペラ
1B 第2プロペラ
2A 第1舵
2B 第2舵
3A 左舵
3B 右舵
4A 第1左舵部
4B 第1右舵部
5A 第2左舵部
5B 第2右舵部
6A 第3左舵部
6B 第3右舵部
7A 右内面
7B 左内面
8A 左舵軸
8B 右舵軸
25 固定舵
CA 左舵弦長(前後方向の長さ)
CB 右舵弦長(前後方向の長さ)
D 直径
L 外周線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11