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  • 特開-測定装置及びその方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039100
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】測定装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/22 20060101AFI20220303BHJP
   G01N 27/06 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
G01R27/22 Z
G01N27/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020143939
(22)【出願日】2020-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】510132211
【氏名又は名称】牧野 繁
(71)【出願人】
【識別番号】511010635
【氏名又は名称】牧野 大地
(71)【出願人】
【識別番号】520198498
【氏名又は名称】株式会社ORANGE kitchen
(74)【代理人】
【識別番号】100090413
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 康稔
(72)【発明者】
【氏名】牧野 繁
(72)【発明者】
【氏名】牧野 大地
【テーマコード(参考)】
2G028
2G060
【Fターム(参考)】
2G028AA01
2G028BC04
2G028CG02
2G028CG22
2G028DH09
2G028GL04
2G028GL07
2G028HN03
2G028HN09
2G060AA05
2G060AA14
2G060AC01
2G060AF08
2G060AF11
2G060AG03
2G060FA01
2G060HC10
(57)【要約】
【課題】 単純な構造でありながら、外乱の影響を受けにくく、精度の高い測定を行う。
【解決手段】
疑似白色雑音発生器22から出力された白色雑音の電圧は、一方において、A/D変換器24でデジタル信号に変換されて相関器40に入力され、他方において、測定対象の液体10に浸されている電極20に印加される。すると、電極20から液体10を介して電極30に電流が流れる。この白色雑音の電流は、電流アンプ32で増幅された後、A/D変換器34でデジタル信号に変換されて相関器40に入力される。相関器40では、入力された白色雑音の電圧信号と電流信号の間の相互相関関数が演算される。電極20→液体10→電極30に至る伝達関数に、求めたい液体10の導電度による電流の変化が反映するので、相互相関関数の値から液体10の導電度が演算器42で求められる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に設けられる一組の電極,
前記電極の一方に疑似白色雑音を印加するための白色雑音発生手段,
該白色雑音発生手段から出力された白色雑音の電圧と、前記電極の他方から得られた電流との相互相関関数を演算する相関演算手段,
を備えたことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記測定対象が液体であり、
前記相互相関関数から、前記液体の電導度を測定することを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の測定装置を使用する測定方法であって、
前記電極の一方に疑似白色雑音の電圧を印加するステップ,
前記電極の他方から疑似白色雑音の電流を得るステップ,
前記疑似白色雑音の電圧と電流の相互相関関数を演算するステップ,
得られた相互相関関数から、前記測定対象の被測定値を得るステップ,
を含むことを特徴とする測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、土壌の電導度(電気伝導率)や水分量,水溶液の電導度など、様々な測定対象の各種の被測定値を測定する測定装置及びその方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電導度測定の従来技術としては、2電極法,4電極法,電磁誘導法などが知られている。2電極法は、測定対象を挟む電極の間に流れる電流の大小から、測定対象の電導度を測定する。4電極法は、測定対象に電流を流す電極と電圧を検出する電極とを設け、電圧と電流を分けて測定する。電磁誘導法は、測定対象を挟む2つのコイルの間に生ずる誘導電流の大小から測定対象の電導度を測定する。例えば、下記特許文献1には、2電極法による電動度計が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57-10464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した背景技術では、次のような課題がある。
a,2電極法では、測定対象が高電導度であると、分極を起こして大きな誤差が生ずる恐れがある。
b,4電極法では、電極の構造が複雑となってしまう。
c,電磁誘導法では、低電導度での誤差が大きく、また装置が複雑で大型化してしまう。
【0005】
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、単純な構造でありながら、精度の高い測定を行うことである。他の目的は、外乱の影響を受けにくい測定を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の測定装置は、測定対象に設けられる一組の電極,前記電極の一方に疑似白色雑音を印加するための白色雑音発生手段,該白色雑音発生手段から出力された白色雑音の電圧と、前記電極の他方から得られた電流との相互相関関数を演算する相関演算手段,を備えたことを特徴とする。主要な形態の一つによれば、前記測定対象が液体であり、前記相互相関関数から、前記液体の電導度を測定することを特徴とする。
【0007】
本発明の測定方法は、前記測定装置を使用する測定方法であって、前記電極の一方に疑似白色雑音の電圧を印加するステップ,前記電極の他方から疑似白色雑音の電流を得るステップ,前記疑似白色雑音の電圧と電流の相互相関関数を演算するステップ,得られた相互相関関数から、前記測定対象の被測定値を得るステップ,を含むことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、疑似白色雑音を利用し、その電圧・電流の相互相関関数を演算することとしたので、測定対象の被測定値を、外乱雑音の影響を低減しつつ、高い精度で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の測定装置の一実施例を示す図である。
図2】前記実施例における測定例の一例を示すグラフである。
図3】前記実施例における測定例の一例を示すグラフである。
図4】前記実施例の測定装置の設計例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例0011】
図1(A)には、本発明にかかる導電度測定装置の一実施例の構成が示されている。同図において、測定対象の液体10は、容器12内に収容されている。液体10には、適宜の間隔をおいて、1組の電極20,30が浸されている。これらのうち、一方の電極20には、疑似白色雑音発生器22が接続されており、更にはA/D変換器24,遅延器26を介して、相関器40の一方の入力側に接続されている。他方の電極30は、電流アンプ32が接続されており、更にはA/D変換器34を介して、相関器40の他方の入力側に接続されている。相関器40の出力側は、演算器42が接続されている。
【0012】
以上の各部のうち、遅延器26は、A/D変換における信号処理時間の遅延を修正するためのものである。A/D変換器24,34の出力をx(t),y(t)としたとき、それらの相互相関Cxyは、遅延時間τに対して、次の数1式で表される。
【数1】
すなわち、x(t)を遅延器26によって遅延時間τだけ遅延させ、これをy(t)と掛けて平均することで、A/D変換器24,34の出力x(t),y(t)間の相互相関Cxyを得ることができる。
【0013】
電流アンプ32は、オペアンプ32Aのマイナス端子が入力側となっており、これにコンデンサ32Bを介して上述した電極30が接続されている。また、オペアンプ32Aのプラス端子はアースに接続されており、更に、オペアンプ32Aのマイナス端子と出力端子の間には抵抗32Cが接続されている。これらオペアンプ32A,コンデンサ32B,抵抗32Cによって電流アンプ32が構成されている。
【0014】
測定対象の液体10としては、各種のものが適用可能である。例えば、塩化ナトリウム水溶液中の塩化ナトリウムの濃度が変化すると、電導度も変化する。そこで、電極20,30を塩化ナトリウム水溶液中に投入し、電導度を測定することで、塩化ナトリウム水溶液の塩化ナトリウムの濃度を求めるような場合が好適な例の一つである。
【0015】
次に、疑似白色雑音発生器22は、白色雑音(ホワイトノイズ)を生成して出力し、これが電極20に印加される。理想的な白色雑音のように、あらゆる周波数成分を一様に含むわけではないが、それに近い疑似的な白色雑音が生成されるようになっている。電流アンプ32は、電極30に流れる電流を増幅するためのものである。A/D変換器24,34は、入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するためのものである。相関器40は、入力信号の間の相互相関関数を演算する機能を備えている。なお、相関器40の入力信号は、白色雑音の電圧と電流であり、両者の相互相関関数が演算されるが、仮に外来雑音や信号の遅延などが全くないと仮定したときは、白色雑音の自己相関関数が演算されることになる。仮に、白色雑音が理想的であるとすると、自己相関関数はいわゆるデルタ関数となる。本実施例では、理想的な白色雑音ではないので、理想的なデルタ関数とはならないが、概ね波形は近似する。
【0016】
次に、本実施例の全体の動作を説明する。疑似白色雑音発生器22から出力された白色雑音の電圧は、一方において、A/D変換器24でデジタル信号に変換され、遅延器26による遅延修正を受けて相関器40に入力され、他方において、測定対象の液体10に浸されている電極20に印加される。すると、電極20から液体10を介して電極30に電流が流れる。この白色雑音の電流は、電流アンプ32で増幅された後、A/D変換器34でデジタル信号に変換されて相関器40に入力される。
【0017】
相関器40では、入力された白色雑音の電圧信号と電流信号の間の相関関数が演算される。図1(B)は、演算の様子が示されており、x(t)は白色雑音電圧を表し、y(t)は白色雑音電流を表す。H(ω)は、図1(A)に示した電極20→液体10→電極30に至る伝達関数を表す。また、Sxyは、白色雑音電圧と白色雑音電流の間の相互相関関数を示す。求めたい液体10の導電度による電流の変化は、伝達関数H(ω)に反映するので、これを求めればよい。相互相関関数Sxyを数式で表すと、次の数2式のようになる。
【数2】
【0018】
同式中、
Rxy:入出力の相互相関関数
ω:角速度
τ:遅延時間
η:たたみ込みの媒介変数
h(η):インパルス応答
Rxx:入力の自己相関関数
Sxx:入力電圧のパワースペクトラム
H(ω):システム伝達関数
である。
【0019】
この数2式に示すように、白色雑音電圧と白色雑音電流の間の相互相関関数Sxyは、伝達関数Hと、白色雑音電圧の入力パワースペクトラムSxxの積で表される。すなわち、入力のパワースペクトラムは、白色雑音の周波数特性であり、恒常「1」である。従って、前記数2式は、Sxy=H(ω)となり、得られた相互相関関数Sxyは、システム伝達関数H(ω)そのものに他ならない。
【0020】
図2には、図1の電極20,30の代わりに既知の抵抗及びコンデンサを接続したときのパワースペクトラムをパラメータとした遅れ時間とシステム伝達関数(相互相関関数)の実験値の一例が示されている。パワースペクトラムの値は、0.1→0.25→0.5→1→1.5→2→3と変化させており、各値について3回測定を行っている。コンデンサの値(静電容量)を変化させたときは、遅れ時間「1022」付近の正のピークPAが変化し、抵抗の値を変化させたときは、遅れ時間「1024」付近の負のピークPBが変化している。電極20,30を取り付けて液体10に浸した場合、静電容量は、電極20,30間の距離が一定であることから、液体10の誘電率に対応して変化することとなる。してみると、ピークPAの大きさから、液体10の誘電率を知ることができる。一方、抵抗分は、電極20,30間の距離が一定であることから、液体10の導電率に対応して変化することとなる。してみると、ピークPBの大きさから、液体10の抵抗率を知ることができる。
【0021】
図3には、塩分濃度をパラメータとしたときの液体10の電解質濃度と相互相関関数の値のシミュレーションの一例が示されている。液体10が塩水の場合、電解質濃度は、塩化ナトリウム(NaCl)の濃度となる。同図に示すように、電解質濃度と相互相関関数の値との間にはほぼ一致した関係があることから、パラメータの変化にかかわらず、相互相関関数の値から電解質濃度ないし電導度を知ることができる。このような相互相関関数の値から、所望の計測結果を得る演算が、演算器42で行われる。
【0022】
以上のように、本発明によれば、測定対象の液体10に浸した電極20,30に白色雑音を印加したときの電圧及び電流の相互相関関数を演算することとしたので、液体10の導電度を良好に測定することができる。また、分極の影響は、伝達関数の別の部分に現れるため、測定から排除することができる。更に、白色雑音と相似な振幅・位相特性のノイズ以外の雑音は、大きく減衰することになり、耐雑音性能が向上する。
【0023】
<設計例> 図4には、上述した導電度測定装置の設計例が示されている。同図の例は、サイプレス・セミコンダクター社製のPSoC(Programmable System-on-chip)4を使用したもので、CPU及びメモリ(RAM,ROM),デジタル/アナログ変換器iDAC1及びiDAC2,オペアンプOPA1及びOPA2,疑似白色雑音発生器PRS1,アナログ/デジタル変換器ADC1,外部出力インターフェースUART1とが、1つのシリコンチップ上に設けられた構成となっている。これらに、抵抗R_1,R_2,R_3と、コンデンサC_1と、電極20,30とを、図示のように接続するとともに、プログラミングを行うことで、図1に示した測定装置を構成することができる。測定プログラムは、メモリのROMに保存され、RAMに変数域が割り当てられて、CPUで実行される。
【0024】
CPUで測定プログラムが実行されると、疑似白色雑音発生器PRS1から白色雑音が読み出され、デジタル/アナログ変換器iDAC1,iDAC2に送られる。デジタル/アナログ変換器iDAC1から出力されたアナログの白色雑音は、オペアンプOPA2で増幅されて電極20に印加される。電極30の電流は、オペアンプOPA1で増幅される。白色雑音の電圧信号及び電流信号は、アナログ/デジタル変換器ADC1でデジタル信号に変換され、メモリに記録される。以上の動作を、例えば150kHzの周波数で繰り返し行い、一定数のデータがメモリに蓄積されたら、CPUで相互相関関数を計算する。
【0025】
<他の実施例> なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例では、塩化ナトリウム水溶液の電導度の測定に本発明を適用したが、様々な測定対象の各種の被測定値に対して本発明は適用可能である。例えば、電極20,30を土壌中に設置して、土壌の水分量を測定するといった具合である。上述したように、電極20,30間の被測定値の変化は、伝達関数Hに反映すれば相互相関関数から測定することができる。
(2)前記実施例で示した装置構成は一例であり、同様の作用を奏するように、種々設計変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、白色雑音を利用し、その電圧・電流の相互相関関数を演算することとしたので、測定対象の被測定値を、外乱雑音の影響を低減しつつ、高い精度で測定することができ、塩水の電導度測定や土壌の水分量測定に好適である。
【符号の説明】
【0027】
10:液体
12:容器
20,30:電極
22:疑似白色雑音発生器
24,34:A/D変換器
26:遅延器
32:電流アンプ
32A:オペアンプ
32B:コンデンサ
32C:抵抗
40:相関器
42:演算器
図1
図2
図3
図4