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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039142
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】ターボチャージャ用ハウジング
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
F02B39/00 B
F02B39/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144011
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯谷 知之
【テーマコード(参考)】
3G005
【Fターム(参考)】
3G005EA16
3G005FA28
3G005GB32
3G005GB67
3G005GB92
(57)【要約】
【課題】低コストで、生産性の向上と冷媒流路におけるシール性の向上とが図られるターボチャージャ用ハウジングを提供する。
【解決手段】ターボチャージャ用ハウジング100において、コンプレッサハウジング1とベアリングハウジング6の間にはシールプレート4が設けられ、シールプレート4とベアリングハウジング6の間には冷媒流路5が形成されている。冷媒流路5はシールプレート4とベアリングハウジング6との互いの対向面4a、6aに形成された第1冷媒流路形成部51及び第2冷媒流路形成部52により形成された環状の空間50からなる。冷媒流路5をシールする内周シール部541及び外周シール部542は、対向面4a、6aの一方に設けられた被圧接部541a、542aと対向面4a、6aの他方に設けられた圧接部541b、542bとが互いに圧接されて少なくとも圧接部541b、542bが塑性流動してなる塑性流動部からなる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサインペラを収容するコンプレッサハウジングと、上記コンプレッサインペラが組付けられたシャフトを軸受する軸受機構を収容するベアリングハウジングとを含むターボチャージャ用ハウジングであって、
上記コンプレッサハウジングは、上記コンプレッサインペラの外周側において周方向に形成され、上記コンプレッサインペラから吐出される空気を昇圧させるディフューザ通路を形成するディフューザ部を有し、
上記コンプレッサハウジングと上記ベアリングハウジングとの間には、上記コンプレッサハウジングの上記ディフューザ部に対向するシールプレートが設けられており、
上記コンプレッサハウジングと上記ベアリングハウジングとは互いに接続されているとともに、上記シールプレートと上記ベアリングハウジングとの間には上記ディフューザ部を冷却する冷媒を流通させる冷媒流路が形成されており、
上記冷媒流路は、上記シールプレートと上記ベアリングハウジングとの互いの対向面のうち、上記シールプレートの対向面に形成された第1冷媒流路形成部と、上記ベアリングハウジングの対向面に形成された第2冷媒流路形成部とにより形成された環状の空間からなり、
上記冷媒流路の内周側は内周シール部によりシールされるとともに、上記冷媒流路の外周側は外周シール部によりシールされており、
上記内周シール部及び上記外周シール部は、上記シールプレート及び上記ベアリングハウジングとの互いの上記対向面の一方に設けられた被圧接部と、上記対向面の他方に設けられた圧接部とが互いに圧接されて、少なくとも該圧接部が塑性流動してなる塑性流動部からなる、ターボチャージャ用ハウジング。
【請求項2】
上記シールプレート及び上記ベアリングハウジングの互いの上記対向面は、上記コンプレッサインペラの軸線に直交する平面からなるとともに互いに軸方向に当接して軸方向の位置決めをする位置決め合わせ面をそれぞれ有しており、
上記圧接部と上記被圧接部とはそれぞれ、上記位置決め合わせ面と同一平面上に形成されているとともに、上記コンプレッサインペラの軸方向に互いに圧接されて少なくとも上記圧接部が塑性流動するように構成されている、請求項1に記載のターボチャージャ用ハウジング。
【請求項3】
上記第1冷媒流路形成部及び上記第2冷媒流路形成部の一方は軸方向に凹んだ環状凹部を有し、他方は上記環状凹部の内周側部に沿って軸方向に立設された内側環状壁部と、上記環状凹部の外周側部に沿って軸方向に立設された外側環状壁部とを有しており、
上記環状凹部の内周側部と上記内側環状壁部は、上記被圧接部と上記圧接部とを構成しており、互いに圧接されて上記塑性流動部を形成することにより上記内周シール部を形成しており、
上記環状凹部の外周側部と上記外側環状壁部は、上記被圧接部と上記圧接部とを構成しており、互いに圧接されて上記塑性流動部を形成することにより上記外周シール部を形成している、請求項1又は2に記載のターボチャージャ用ハウジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボチャージャ用ハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関に搭載されるターボチャージャは、コンプレッサインペラとタービンインペラとを有し、これらがハウジングに収容されている。コンプレッサインペラはコンプレッサハウジングの内部に形成された空気流路に配されている。空気流路には、コンプレッサインペラに向けて空気を吸い込む吸気口と、コンプレッサインペラから吐出された圧縮空気が通過するディフューザ通路と、ディフューザ通路を通過した圧縮空気が流れ込む吐出スクロール室とを有する。吐出スクロール室は圧縮空気を内燃機関側へ吐出する。
【0003】
そして、自動車等の内燃機関には、クランクケース内に発生したブローバイガスを吸気通路に還流させ、クランクケース内やヘッドカバー内を浄化させるブローバイガス還流装置(以下、PCVという)を備えたものがある。この場合、ブローバイガスに含まれるオイル(オイルミスト)がPCVからターボチャージャにおけるコンプレッサの上流側の吸気通路に流出することがある。
【0004】
このとき、コンプレッサの出口空気圧力が高いとその空気温度も高くなるため、PCVから流出したオイルが蒸発を起因とする濃縮・高粘度化によってコンプレッサハウジングのディフューザ面やそれに対向する軸受ハウジングの表面等にデポジットとなって堆積することがある。そして、堆積したデポジットによってディフューザ通路が狭められ、ターボチャージャの性能低下を招き、さらには内燃機関の出力低下を招くおそれがある。
【0005】
従来は、上述したようなディフューザ通路におけるデポジットの堆積を防止するため、コンプレッサの出口空気温度をある程度抑制していた。そのため、ターボチャージャの性能を充分に発揮することができず、また内燃機関の出力を充分に高めることができなかった。
【0006】
特許文献1には、コンプレッサハウジングにシールプレートを設けて両者の間にディフューザ通路を形成した構成が開示されている。そして、当該ディフューザ通路におけるデポジットの堆積を防止するために、シールプレートとベアリングハウジングとの間に冷媒流路を設けて当該冷媒流路に冷媒を流通させることにより、ハウジング内の空気流路を通過する圧縮空気の温度を低下させている。特許文献1に開示の構成では、シールプレートのベアリングハウジング側の面に径方向の外方が低くなる段差部を形成するとともに、ベアリングハウジングのシールプレート側の面に径方向の内側が低くなる段差部を形成し、両段差部が互い違いとなって空間部が形成されるようにシールプレートとベアリングハウジングとを組み付けることで、当該空間部からなる冷媒流路が画定されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-127861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示の構成では、シールプレートとベアリングハウジングとの間において、冷媒流路の径方向外側と径方向内側のそれぞれに設けたOリングからなるシール部により、冷媒流路から冷媒の漏れることを防止している。そして、Oリングを所定位置に保持するために、ベアリングハウジング又はシールプレートに形成した凹部にOリングを入り込ませている。かかる構成では、冷媒流路のシールのためにOリングは少なくとも2つ必要となるため、部品点数が増加するとともにコスト高となる。また、シールプレートとベアリングハウジングとを組み付ける際にOリングが凹部からはみ出して、シールプレートとベアリングハウジングとの間で噛み込みが発生して冷媒流路のシール不良が生じる場合がある。かかるシール不良はリーク検査で検出されるため市場に流通されないが、歩留まりが低下して生産性が低下することとなる。
【0009】
また、Oリングに替えてシール材を塗布することによりシール部を形成することも考えられる。しかしながら、この場合、シール材が必要になるとともに脱脂などの前処理も必要となることからコスト高となり、作業性も悪い。
【0010】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、低コストで、生産性の向上と冷媒流路におけるシール性の向上とが図られるターボチャージャ用ハウジングを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、コンプレッサインペラを収容するコンプレッサハウジングと、上記コンプレッサインペラが組付けられたシャフトを軸受する軸受機構を収容するベアリングハウジングとを含むターボチャージャ用ハウジングであって、
上記コンプレッサハウジングは、上記コンプレッサインペラの外周側において周方向に形成され、上記コンプレッサインペラから吐出される空気を昇圧させるディフューザ通路を形成するディフューザ部を有し、
上記コンプレッサハウジングと上記ベアリングハウジングとの間には、上記コンプレッサハウジングの上記ディフューザ部に対向するシールプレートが設けられており、
上記コンプレッサハウジングと上記ベアリングハウジングとは互いに接続されているとともに、上記シールプレートと上記ベアリングハウジングとの間には上記ディフューザ部を冷却する冷媒を流通させる冷媒流路が形成されており、
上記冷媒流路は、上記シールプレートと上記ベアリングハウジングとの互いの対向面のうち、上記シールプレートの対向面に形成された第1冷媒流路形成部と、上記ベアリングハウジングの対向面に形成された第2冷媒流路形成部とにより形成された環状の空間からなり、
上記冷媒流路の内周側は内周シール部によりシールされるとともに、上記冷媒流路の外周側は外周シール部によりシールされており、
上記内周シール部及び上記外周シール部は、上記シールプレート及び上記ベアリングハウジングとの互いの上記対向面の一方に設けられた被圧接部と、上記対向面の他方に設けられた圧接部とが互いに圧接されて、少なくとも該圧接部が塑性流動してなる塑性流動部からなる、ターボチャージャ用ハウジングにある。
【発明の効果】
【0012】
上記一態様のターボチャージャ用ハウジングによれば、シールプレートとベアリングハウジングとの間には環状の空間からなる冷媒流路が形成されている。冷媒流路の内周シール部と外周シール部は、それぞれ、シールプレート及びベアリングハウジングとの互いの対向面のうち、一方に設けられた被圧接部に、他方に設けられた圧接部が圧接されて塑性流動してなる塑性流動部からなる。これにより、シール部の形成のためにOリングやシール材の塗布を要しない。そのため、部品点数を削減できるとともに、シール材を塗布するための脱脂などの前処理も不要となり、コスト低減と作業性の向上を図ることができる。また、コンプレッサハウジングとベアリングハウジングとの組付の際に、Oリングの噛み込みによるシール不良が発生しないため、歩留まりが向上して生産性を向上できる。そして、内周シール部及び外周シール部を形成する塑性流動部では、圧接部及び被圧接部が塑性流動することにより微細な隙間が埋められているため、冷媒流路のシール性の向上が図られる。
【0013】
以上のごとく、本態様によれば、低コストで、生産性の向上と冷媒流路におけるシール性の向上とが図られるターボチャージャ用ハウジングを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1における、ターボチャージャ用ハウジングの断面図。
図2】実施例1における、ターボチャージャ用ハウジングの要部断面図。
図3】実施例1における、ターボチャージャ用ハウジングの製造方法を説明するための要部断面概念図。
図4】実施例1における、シールプレートの断面斜視図。
図5】実施例2における、ターボチャージャ用ハウジングの要部断面図。
図6】実施例2における、ターボチャージャ用ハウジングの製造方法を説明するための要部断面概念図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記シールプレート及び上記ベアリングハウジングの互いの上記対向面は、上記コンプレッサインペラの軸線に直交する平面からなるとともに互いに軸方向に当接して軸方向の位置決めをする位置決め合わせ面をそれぞれ有しており、
上記圧接部と上記被圧接部とはそれぞれ、上記位置決め合わせ面と同一平面上に形成されているとともに、上記コンプレッサインペラの軸方向に互いに圧接されて塑性流動するように構成されていることとすることができる。これにより、シールプレートとベアリングハウジングとが異なる材質からなり両者の熱膨張係数が異なる場合でも、塑性流動部における軸方向の熱膨張差の影響をなくしてシール性を向上することができる。
【0016】
上記ターボチャージャ用ハウジングの他の形態として、上記第1冷媒流路形成部及び上記第2冷媒流路形成部の一方は軸方向に凹んだ環状凹部を有し、他方は上記環状凹部の内周側部に沿って軸方向に立設された内側環状壁部と、上記環状凹部の外周側部に沿って軸方向に立設された外側環状壁部とを有しており、上記環状凹部の内周側部と上記内側環状壁部は、上記被圧接部と上記圧接部とを構成しており、互いに圧接されて上記塑性流動部を形成することにより上記内周シール部を形成しており、上記環状凹部の外周側部と上記外側環状壁部は、上記被圧接部と上記圧接部とを構成しており、互いに圧接されて上記塑性流動部を形成することにより上記外周シール部を形成していることとすることができる。この場合、冷媒流路を形成する環状の空間と、内周シール部及び外周シール部とを簡易な構成で形成することができる。
【0017】
本明細書において「周方向」とはコンプレッサインペラの回転方向、「軸方向」とはコンプレッサインペラの回転軸の方向、「径方向」とは、コンプレッサインペラの回転軸を中心とする仮想円の半径方向であって、径方向外側とは当該仮想円の中心から円周に向かって延びる直線の方向をいうものとする。
【実施例0018】
(実施例1)
以下、上記ターボチャージャ用ハウジングの実施例について、図1図4を用いて説明する。
図1に示すように、ターボチャージャ用ハウジング100は、コンプレッサインペラ13を収容するコンプレッサハウジング1と、コンプレッサインペラ13が組付けられたシャフト14を軸受する軸受機構(図示せず)を収容するベアリングハウジング6とを含む。
コンプレッサハウジング1は、コンプレッサインペラ13の外周側において周方向に形成され、コンプレッサインペラ13から吐出される空気を昇圧させるディフューザ通路15を形成するディフューザ部35を有する。
コンプレッサハウジング1とベアリングハウジング6との間には、コンプレッサハウジングのディフューザ部35に対向するシールプレート4が設けられている。
コンプレッサハウジング1とベアリングハウジング6とは互いに接続されているとともに、シールプレート4とベアリングハウジング6との間にはディフューザ部35を冷却する冷媒を流通させる冷媒流路5が形成されている。
冷媒流路5は、シールプレート4とベアリングハウジング6との互いの対向面4a、6aのうち、シールプレート4の対向面4aに形成された第1冷媒流路形成部51と、ベアリングハウジング6の対向面6aに形成された第2冷媒流路形成部52とにより形成された環状の空間50からなる。
冷媒流路5の内周側は内周シール部541によりシールされるとともに、冷媒流路5の外周側は外周シール部542によりシールされている。
図2に示すように、内周シール部541及び外周シール部542は、シールプレート4及びベアリングハウジング6との互いの対向面4a、6aの一方に設けられた被圧接部541a、542aと、対向面4a、6aの他方に設けられた圧接部541b、542bとが互いに圧接されて、圧接部541b、542b及び被圧接部541a、541aが塑性流動してなる塑性流動部Mからなる。
【0019】
以下、本例のターボチャージャ用ハウジング100について、詳述する。
図1に示すように、本例のターボチャージャ用ハウジング100はコンプレッサハウジング1とベアリングハウジング6とを含む。コンプレッサハウジング1は、互いに別部材として形成されたスクロールピース2及びシュラウドピース3により分割形成されている。
【0020】
スクロールピース2は、図1に示すように、吸気口形成部10、第1スクロール室形成部121及び外周部125を有する。吸気口形成部10は筒状をなすとともに軸方向Yに貫通形成されている。第1スクロール室形成部121は、スクロール室12における吸気側Y1の壁面を構成している。外周部125は、第1スクロール室形成部121の吸気側Y1と反対側Y2に位置しており、スクロールピース2の外周部125を形成している。外周部125には、結合部25が形成されている。結合部25は、ボルト26を介してベアリングハウジング6のフランジに形成された被結合部65に結合されている。なお、結合部25と被結合部65との間にシール材が介在していてもよい。
【0021】
図1に示すように、シュラウドピース3は、第2スクロール室形成部122、シュラウド部20及び第1ディフューザ部35を有する。シュラウドピース3における第2スクロール室形成部122は、スクロール室12における内周側の壁面を形成している。シュラウド部20は、コンプレッサインペラ13に対向するシュラウド面22を形成している。第1ディフューザ部35はシュラウド面22からスクロール室12に向かって延びるディフューザ面34を形成している。
【0022】
図1に示すように、スクロールピース2には吸気口形成部10の吸気側Y1と反対側Y2に被圧入部53aが設けられており、シュラウドピース3には吸気側Y1に圧入部53bが設けられている。そして、圧入部53bが被圧入部53aの内側に圧入されることにより、シュラウドピース3がスクロールピース2に組み付けられる。圧入部53bと被圧入部53aとは、互いに周方向の全域において当接している。なお、圧入部53bと被圧入部53aとにおける締め代は、必要な抜け荷重が得られ、かつ破損することがない範囲とすることができる。本例では、スクロールピース2及びシュラウドピース3はアルミニウム合金製であって、両者の締め代を例えば40±20μmの範囲としている。
【0023】
図1に示すように、コンプレッサハウジング1とベアリングハウジング6との間には、シールプレート4が設けられている。シールプレート4には締結孔42が形成されており、ベアリングハウジング6に形成された貫通孔61とボルト43を介してベアリングハウジング6の吸気側Y1の面に取り付けられている。シールプレート4は、第3スクロール室形成部123、シールプレート挿入部41、第2ディフューザ部36及び第1冷媒流路形成部51を有する。第3スクロール室形成部123は、スクロール室12における外周側の壁面を構成している。シールプレート挿入部41は、コンプレッサハウジング1をベアリングハウジング6に組み付ける際に外周部125の内側に挿入される。第2ディフューザ部36は、第1ディフューザ部35とともにディフューザ部30を形成している。第2ディフューザ部36は、第1ディフューザ部35のディフューザ面34と所定距離をおいて対向する対向面37を有する。そして、ディフューザ面34と対向面37との間の空間がディフューザ通路15となっている。なお、図示しないが、シールプレート4にはシャフト14との間のシール性を担保する軸シール部が設けられている。
【0024】
図3に示すように、第1冷媒流路形成部51は、シールプレート4におけるベアリングハウジング6に対向する対向面4aにおいて吸気側Y1に凹んだ溝状に形成されている。そして、第1冷媒流路形成部51は、ディフューザ通路15に沿って環状に形成されている。なお、図1に示すように、スクロールピース2における第1スクロール室形成部121とシールプレート4における第3スクロール室形成部123との間には、若干の隙間Cが存在して互いに当接しないように構成されている。これにより、シールプレート4が所定位置まで挿入されて、ディフューザ通路15が所定の幅で形成される。シールプレート4の材質は限定されないが、本実施形態ではアルミニウム合金製としている。
【0025】
図1に示すように、ベアリングハウジング6はコンプレッサハウジング1の吸気側Y1と反対側Y2に取り付けられている。ベアリングハウジング6は、シャフト14を軸支する図示しないベアリング機構を収納するとともに、第2冷媒流路形成部52を有する。第2冷媒流路形成部52は、ベアリングハウジング6のフランジにおけるシールプレート4に対向する対向面6aにおいて反対側Y2に凹んだ溝状に形成されている。そして、第2冷媒流路形成部52は、第1冷媒流路形成部51と同様に、ディフューザ通路15に沿って環状に形成されている。ベアリングハウジング6の材質は限定されないが、本実施形態では、鋳鉄製としている。なお、ベアリングハウジング6は、図示しない他の構成を収容している。
【0026】
図1に示すように、コンプレッサハウジング1がベアリングハウジング6に組み付けられることにより、シールプレート4の第1冷媒流路形成部51と、ベアリングハウジング6の第2冷媒流路形成部52とにより環状の空間50が形成される。当該空間50が冷媒を流通させる冷媒流路5を構成する。冷媒流路5には、図示しないが、冷媒流路5に冷媒を導入するための冷媒導入部と、冷媒流路5から冷媒を排出するための冷媒排出部とが設けられている。そして、当該冷媒供給部及び冷媒排出部を介して冷媒を冷媒流路5に流通させることにより、ディフューザ面34を冷却することができる。なお、本例では、第1冷媒流路形成部51及び第2冷媒流路形成部52の両方を溝状に形成したが、これに替えて、第1冷媒流路形成部51及び第2冷媒流路形成部52の一方を溝状に形成し、他方を平面状に形成することとしてもよい。
【0027】
図1に示すように、冷媒流路5の内周側は内周シール部541にシールされており、外周側は外周シール部542によりシールされている。図2に示すように、内周シール部541及び外周シール部542は、被圧接部541a、542aと圧接部541b、542bとが圧接されて、両者が塑性流動してなる塑性流動部Mからなる。
【0028】
図2図3に示すように、内周シール部541における被圧接部である内周被圧接部541aはベアリングハウジング6の対向面6aに設けられており、第2冷媒流路形成部52の内周側において周方向に連続して環状に形成されている。一方、内周シール部541における圧接部である内周圧接部541bは、シールプレート4の対向面4aに設けられており、第1冷媒流路形成部51の内周側において周方向に連続して環状に形成されている。さらに、図3図4に示すように、組付前の状態では、内周圧接部541bは径方向外側に突出している。内周圧接部541bの形状は限定されないが、本例では、コンプレッサインペラ13の軸線13a(図1参照)を含む断面において、内周圧接部541bは吸気側Y1の反対側Y2に突出した山形状としている。
【0029】
図3に示すように、組付前の状態において、内周圧接部541bは対向面4aに対して所定の大きさの突出量Tで突出している。突出量Tは、内周圧接部541bが塑性流動可能な範囲であって、例えば、80~120μmとすることができ、本例では100μmとしている。内周圧接部541bの径方向の長さ、すなわち、径方向における内周圧接部541bの形成範囲Hは特に限定されないが、例えば0.5~1.5mmとすることができ、本例では、1.0mmとしている。
【0030】
図3に示すように、内周圧接部541bが圧入部53bに対して所定の突出量Tで突出していることにより、図3に示す矢印Pのように、ベアリングハウジング6の対向面6aをシールプレート4の対向面4aに押し当てて、シールプレート4の対向面4aに設けられた位置決め合わせ面561とベアリングハウジング6の対向面6aに設けられた位置決め合わせ面562とが互いに軸方向Yに当接するまでボルト43で締結してシールプレート4をベアリングハウジング6に組み付けることにより、シールプレート4の内周圧接部541bとベアリングハウジング6の内周被圧接部541aとを互いに圧接する。これにより、少なくとも内周被圧接部541aに0.2%耐力程度の応力を発生させて、図2において、符号Mで示すように主に内周圧接部541bを塑性流動させる。これにより、両者間のミクロな隙間が埋められて、内周シール部541が形成される。
【0031】
図3図4に示すように、外周シール部542における被圧接部である外周圧接部542bも内周圧接部541bと同様に反対側Y2に突出している。外周圧接部542bにおける突出量T及び形成範囲Hも内周圧接部541bの場合と同等とすることができる。そして、内周シール部541と同様に、シールプレート4をベアリングハウジング6にボルト43で締結して組み付けることにより、シールプレート4の外周圧接部542bとベアリングハウジング6の外周被圧接部542aとを互いに圧接して符号Mで示すように主に外周圧接部542bを塑性流動させる。これにより、両者間のミクロな隙間が埋められて、外周シール部542が形成される。
【0032】
図3に示すように、本例では、鋳鉄製のベアリングハウジング6よりも剛性の低いアルミニウム合金製であるシールプレート4に内周圧接部541b及び外周圧接部542bを設け、剛性の高いベアリングハウジング6に内周被圧接部541a及び外周被圧接部542aを設けている。これに限定されないが、本例のように、剛性の低い方に内周圧接部541b及び外周圧接部542bを設け、剛性の高い方に内周被圧接部541a及び外周被圧接部542aを設けることが好ましい。塑性流動部Mを形成しやすいからである。なお、シールプレート4とベアリングハウジング6とが同一材料からなる場合は、どちらに内周圧接部541b及び外周圧接部542bと、内周被圧接部541a及び外周被圧接部542aとを設けてもよい。
【0033】
図3に示すように、シールプレート4における位置決め合わせ面561は対向面4aにおいて締結孔42の近傍に形成されており、内周圧接部541b及び外周圧接部542bと同一平面上に位置している。また、ベアリングハウジング6における位置決め合わせ面562は対向面6aに形成されており、内周被圧接部541a及び外周被圧接部542aと同一平面上に位置している。コンプレッサハウジング1とベアリングハウジング6との組付け時に、位置決め合わせ面561、562とが互いに軸方向Yに当接して、軸方向Yの位置決めがなされることとなる。なお、「同一平面上に位置する」とは、厳密には同一平面上に位置していなくても、設計思想上、実質的に同一平面上に位置するものを含む。
【0034】
次に、本例のターボチャージャ用ハウジング100の作用効果について詳述する。
本例のターボチャージャ用ハウジング100によれば、シールプレート4とベアリングハウジング6との間には環状の空間50からなる冷媒流路5が形成されている。冷媒流路5の内周シール部541と外周シール部542は、それぞれ、シールプレート4及びベアリングハウジング6との互いの対向面4a、6aのうち、一方に設けられた被圧接部541a、542aと、他方に設けられた圧接部541b、542bとが互いに圧接されて塑性流動してなる塑性流動部からなる。これにより、シール部の形成のためにOリングやシール材の塗布を要しない。そのため、部品点数を削減できるとともに、シール材を塗布するための脱脂などの前処理も不要となり、コスト低減と作業性の向上を図ることができる。また、コンプレッサハウジング1とベアリングハウジング6との組付の際に、Oリングの噛み込みによるシール不良が発生しないため、歩留まりが向上して生産性を向上できる。そして、内周シール部541及び外周シール部542を形成する塑性流動部では、圧接部541b、542b及び被圧接部541a、542aが塑性流動することにより微細な隙間が埋められているため、冷媒流路5のシール性の向上が図られる。
【0035】
また、本例では、シールプレート4及びベアリングハウジング6の互いの対向面4a、6aは、コンプレッサインペラ13の軸線13aに直交する平面からなるとともに互いに軸方向Yに当接して軸方向Yの位置決めをする位置決め合わせ面561、562をそれぞれ有している。そして、圧接部541b、542bと被圧接部541a、542aとはそれぞれ、位置決め合わせ面561、562と同一平面上に形成されているとともに、コンプレッサインペラ13の軸方向Yに互いに圧接されて塑性流動するように構成されている。これにより、本例のようにシールプレート4とベアリングハウジング6とが異なる材質からなり両者の熱膨張係数が異なっていても、塑性流動部Mにおける軸方向の熱膨張差の影響をなくしてシール性を向上することができる。
【0036】
以上のごとく、本例によれば、低コストで、生産性の向上と冷媒流路におけるシール性の向上とが図られるターボチャージャ用ハウジング100を提供することができる。
【0037】
(実施例2)
実施例2のターボチャージャ用ハウジング100について、図5図6を用いて説明する。なお、実施例1と同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
本例では、シールプレート4とベアリングハウジング6とを同一材料で構成している。そして、図5図6に示すように、ベアリングハウジング6の第2冷媒流路形成部52は、軸方向Yに凹んだ環状凹部52aを有している。一方、シールプレート4の第1冷媒流路形成部51は、環状凹部52aの内周側部541aに沿って軸方向Yに立設された内側環状壁部51aと、環状凹部52aの外周側部542aに沿って軸方向Yに立設された外側環状壁部51bとを有している。なお、本例では、第1冷媒流路形成部51において、内側環状壁部51aと外側環状壁部51bとの間は軸方向Yに凹んだ環状凹部51cが形成されている。内側環状壁部51a、外側環状壁部51b及び環状凹部52a、51cはいずれもディフューザ通路15に沿って周方向に環状に形成されている。
【0038】
そして、図6において示す矢印Pのように、ベアリングハウジング6の対向面6aをシールプレート4の対向面4aに向けて押し当てて、位置決め合わせ面561、562が互いに軸方向Yに当接するまでボルト43で締結して、内側環状壁部51a及び外側環状壁部51bを環状凹部52aに嵌まり込ませることにより、図5に示すように、環状凹部51cと環状凹部52aとで冷媒流路5としての空間50が形成される。
【0039】
そして、図5図6に示すように、被圧接部541aとしての内周側部541aと、圧接部542aとしての内側環状壁部51aとが、互いに圧接されて塑性流動部Mを形成することにより、両者間のミクロな隙間が埋められて内周シール部541が形成されている。また、被圧接部542aとしての外周側部542aと圧接部542bとしての外側環状壁部51bとが互いに圧接されて塑性流動部Mを形成することにより、両者間のミクロな隙間が埋められて外周シール部542が形成されている。
【0040】
そして、本例では、図6に示すように、圧接部541bは径方向内側に突出しており、圧接部542bは径方向外側に突出している。圧接部541b、542bの突出量及び形成範囲は実施例1の場合と同等である。また、その他の構成も実施例1と同等である。
【0041】
本例においても、実施例1の場合と同等の作用効果を奏する。そして、本例では、環状凹部52aに内側環状壁部51a及び外側環状壁部51bを嵌め込む際に互いに圧接されて塑性流動部Mが形成されるように構成されているため、冷媒流路5を形成する環状の空間50と、内周シール部541及び外周シール部542とを簡易な構成で形成することができる。
【0042】
本例では、シールプレート4に内側環状壁部51a及び外側環状壁部51bを設けるとともにベアリングハウジング6に環状凹部52aを設けたが、シールプレート4とベアリングハウジング6とを同一材料で形成しているため、これに替えて、シールプレート4に環状凹部52aを設けるとともにベアリングハウジング6に内側環状壁部51a及び外側環状壁部51bを設けてもよい。なお、本例では、シールプレート4とベアリングハウジング6とを同一材料で形成しているため、両者の熱膨張係数が同一となり、熱膨張差を考慮する必要はない。
【0043】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施例及び変形例に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
100 ターボチャージャ用ハウジング
1 コンプレッサハウジング
4 シールプレート
4a、6a 対向面
5 冷媒流路
6 ベアリングハウジング
51 第1冷媒流路形成部
51a 内側環状壁部
51b 外側環状壁部
52 第2冷媒流路形成部
52a、51c 環状凹部
541 内周シール部
541a 被圧接部、内周被圧接部
541b 圧接部、内周圧接部
542 外周シール部
542a 被圧接部、外周被圧接部
542b 圧接部、外周圧接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6