IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プライムアースEVエナジー株式会社の特許一覧

特開2022-39144制御装置、二次電池システム、判定方法及び判定プログラム
<>
  • 特開-制御装置、二次電池システム、判定方法及び判定プログラム 図1
  • 特開-制御装置、二次電池システム、判定方法及び判定プログラム 図2
  • 特開-制御装置、二次電池システム、判定方法及び判定プログラム 図3
  • 特開-制御装置、二次電池システム、判定方法及び判定プログラム 図4
  • 特開-制御装置、二次電池システム、判定方法及び判定プログラム 図5
  • 特開-制御装置、二次電池システム、判定方法及び判定プログラム 図6
  • 特開-制御装置、二次電池システム、判定方法及び判定プログラム 図7
  • 特開-制御装置、二次電池システム、判定方法及び判定プログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039144
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】制御装置、二次電池システム、判定方法及び判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/42 20060101AFI20220303BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
H01M10/42 P
H01M10/48 P
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144014
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】成▲せ▼ 友貴
【テーマコード(参考)】
5H030
【Fターム(参考)】
5H030AS08
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF51
5H030FF52
5H030FF67
(57)【要約】
【課題】二次電池又は当該二次電池を制御する制御装置が交換されたか否か判定可能な制御装置、二次電池システム、判定方法及び判定プログラムを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る複数の二次電池30を制御する制御装置10は、制御装置10が備える記憶装置12に保存された二次電池30の識別情報に対応するように、複数の二次電池30の電圧を調整する電圧調整部18と、複数の二次電池30から電圧値を取得し、取得された電圧値と、記憶装置12に保存された識別情報が対応しない場合、二次電池30又は制御装置10が交換されたと判定する交換判定部14とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池を制御する制御装置であって、
前記制御装置が備える記憶装置に保存された識別情報に対応するように、前記複数の二次電池の電圧を調整する電圧調整部と、
前記複数の二次電池から電圧値を取得し、取得された電圧値と、前記記憶装置に保存された識別情報が対応しない場合、前記二次電池又は前記制御装置が交換されたと判定する交換判定部と
を含む、制御装置。
【請求項2】
前記交換判定部はさらに、前記記憶装置に保存された識別情報が初期値であるとき、前記制御装置が交換されたと判定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記交換判定部はさらに、取得した前記複数の二次電池の電圧値が初期値であるとき、前記二次電池が交換されたと判定する、請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記交換判定部はさらに、前記記憶装置に保存された識別情報が初期値でなく、かつ、取得した前記複数の二次電池の電圧値が初期値でないとき、前記制御装置及び前記二次電池の少なくとも一方が中古品に交換されたと判定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記記憶装置に保存された識別情報を更新する識別情報更新部をさらに含み、
前記電圧調整部は、前記識別情報更新部によって更新された前記識別情報に対応するように、前記複数の二次電池の電圧を調整する、請求項1~4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記識別情報は、前記制御装置の起動回数、前記二次電池の使用時間、並びに前記二次電池の充電回数及び放電回数を含む、請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記識別情報は、前記二次電池の数に対応したビット数で表される、請求項1~6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記交換判定部による判定結果を通知する通知部をさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
複数の二次電池と、
請求項1~8のいずれか1項に記載の制御装置と
を含む、二次電池システム。
【請求項10】
複数の二次電池を制御する制御装置が備える記憶装置に保存された識別情報に対応するように、前記複数の二次電池の電圧を調整するステップと、
前記二次電池から電圧値を取得するステップと、
取得された電圧値と、前記記憶装置に保存された識別情報とが対応しない場合、前記二次電池又は前記制御装置が交換されたと判定するステップと
を含む、判定方法。
【請求項11】
複数の二次電池を制御する制御装置が備える演算装置に対し、
前記制御装置が備える記憶装置に保存された識別情報に対応するように、前記複数の二次電池の電圧を調整させるステップと、
前記二次電池から電圧値を取得させるステップと、
取得された電圧値と、前記記憶装置に保存された識別情報とが対応しない場合、前記二次電池又は前記制御装置が交換されたと判定させるステップと
を実行させる、判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池を制御する制御装置、二次電池システム、判定方法及び判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電気自動車やハイブリッド車、プラグインハイブリッド車等の電力を駆動力として利用する車両では、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池が使用されている。このような車両に搭載された二次電池が交換されたか否か判定する技術が提案されている。例えば、特許文献1は、充電完了時又は車両の走行終了時の二次電池の電圧を識別情報として利用する電池識別装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5659844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通常、充電完了時の二次電池の電圧値は、二次電池の容量に応じた値になるため、特許文献1が開示する電池識別装置では、車両に搭載された二次電池が、当該二次電池と同じ容量を有する充電済みの他の二次電池へ交換された場合、二次電池が交換されたことを判定できないという問題があった。
【0005】
また、通常、車両の走行終了時の二次電池の電圧値は、一定の範囲内に収まる。そのため、特許文献1が開示する電池識別装置のように、車両の走行終了時の二次電池の電圧値をそのまま識別情報として利用する場合、識別情報のバリエーションが少なくなる。このため、車両に搭載された二次電池が、当該二次電池と同じ電圧値を保持する他の二次電池へ交換される可能性があり、二次電池が交換されたことを正確に判定できないという問題があった。
【0006】
さらに、特許文献1が開示する電池識別装置では、二次電池を制御する制御装置が交換されたか否か判定することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためのものであり、二次電池又は当該二次電池を制御する制御装置が交換されたか否か判定可能な制御装置、二次電池システム、判定方法及び判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る複数の二次電池を制御する制御装置は、制御装置が備える記憶装置に保存された識別情報に対応するように、複数の二次電池の電圧を調整する電圧調整部と、複数の二次電池から電圧値を取得し、取得された電圧値と、記憶装置に保存された識別情報が対応しない場合、二次電池又は制御装置が交換されたと判定する交換判定部とを含む。
【0009】
交換判定部はさらに、記憶装置に保存された識別情報が初期値であるとき、制御装置が交換されたと判定することができる。
【0010】
交換判定部はさらに、取得した複数の二次電池の電圧値が初期値であるとき、二次電池が交換されたと判定することができる。
【0011】
交換判定部はさらに、記憶装置に保存された識別情報が初期値でなく、かつ、取得した複数の二次電池の電圧値が初期値でないとき、制御装置及び二次電池の少なくとも一方が中古品に交換されたと判定することができる。
【0012】
また、制御装置は、記憶装置に保存された識別情報を更新する識別情報更新部をさらに含むことができる。電圧調整部は、識別情報更新部によって更新された識別情報に対応するように、複数の二次電池の電圧を調整することができる。
【0013】
さらに、識別情報は、制御装置の起動回数、二次電池の使用時間、並びに二次電池の充電回数及び放電回数を含む。
【0014】
さらに、識別情報は、二次電池の数に対応したビット数で表すことができる。
【0015】
さらに、制御装置は、交換判定部による判定結果を通知する通知部をさらに備えることができる。
【0016】
本発明の一態様に係る二次電池システムは、複数の二次電池と、上記制御装置とを含む。
【0017】
本発明の一態様に係る判定方法は、複数の二次電池を制御する制御装置が備える記憶装置に保存された識別情報に対応するように、複数の二次電池の電圧を調整するステップと、二次電池から電圧値を取得するステップと、取得された電圧値と、記憶装置に保存された識別情報とが対応しない場合、二次電池又は制御装置が交換されたと判定するステップとを含む。
【0018】
本発明の一態様に係る判定プログラムは、複数の二次電池を制御する制御装置が備える演算装置に対し、制御装置が備える記憶装置に保存された識別情報に対応するように、複数の二次電池の電圧を調整させるステップと、二次電池から電圧値を取得させるステップと、取得された電圧値と、記憶装置に保存された識別情報とが対応しない場合、二次電池又は制御装置が交換されたと判定させるステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、二次電池又は当該二次電池を制御する制御装置が交換されたか否か判定可能な制御装置、二次電池システム、判定方法及び判定プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る二次電池システムを示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る制御装置の構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る制御装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係る交換判定処理の一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る交換判定処理の一例を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る制御装置の記憶装置内の識別情報と、二次電池の電圧値の一例を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る制御装置が交換された場合の制御装置の記憶装置内の識別情報と、二次電池の電圧値の一例を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る二次電池が交換された場合の制御装置の記憶装置内の識別情報と、二次電池の電圧値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る二次電池システム1を示す図である。二次電池システム1は、車両に設置される電池スタック30を制御するためのシステムである。二次電池システム1は、制御装置10と、電池スタック30とを含む。車載装置40は、電力を利用するモータや電子機器等の装置である。
【0022】
制御装置10は、制御対象の電池スタック30を制御する装置である。制御装置10の具体例として、車両に設置されるECU(Electronic Control Unit)が挙げられる。制御装置10の詳細については、図2を参照して後述する。
【0023】
電池スタック30は、車載装置40に電力を供給する電源である。電池スタック30は、複数の二次電池で構成される。以下、電池スタック30を構成する二次電池をバッテリモジュールと称する。図1に示す電池スタック30は、8つのバッテリモジュールで構成されるが、他の例では、任意の数のバッテリモジュールを用いて電池スタック30を構成することができる。
【0024】
図2は、制御装置10の構成を示すブロック図である。制御装置10は、通信インタフェース(I/F)11と、記憶装置12と、演算装置13とを備える。通信I/F11は、制御装置10と、電池スタック30及び車載装置40との間で、信号の送受信を行うインタフェースである。
【0025】
記憶装置12は、演算装置13が実行するプログラム、演算装置13が処理する種々の情報が保存される記憶装置である。具体的には、記憶装置12には、制御装置10又は電池スタック30が交換されたか否か判定する判定プログラム、識別情報、交換検出フラグ、及び交換検出履歴等が保存される。
【0026】
本実施形態では、識別情報として、例えば、制御装置10の起動回数、電池スタック30の累積の使用時間、電池スタック30の充電回数、放電回数等を採用することができる。なお、識別情報として、電池スタック30の製品番号等の既定値を採用してもよい。当該識別情報は、制御装置10及び/又は電池スタック30の識別情報として機能し得る。
【0027】
交換検出フラグは、制御装置10及び/又は二次電池(電池スタック30若しくはバッテリモジュールの少なくとも1つ)の交換の有無を示す情報である。交換検出フラグには、制御装置10の交換の有無を示す制御装置交換検出フラグと、二次電池の交換の有無を示す二次電池交換検出フラグと、制御装置10及び二次電池(電池スタック30又はバッテリモジュールの少なくとも1つ)の少なくとも一方が中古品に交換された旨を示す中古品交換検出フラグがある。
【0028】
交換検出履歴は、制御装置10及び/又は二次電池(電池スタック30若しくはバッテリモジュールの少なくとも1つ)の交換の有無や、制御装置10及び/又は二次電池(電池スタック30若しくはバッテリモジュールの少なくとも1つ)が中古品に交換された旨を示す履歴情報である。
【0029】
演算装置13は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の演算装置である。演算装置13は、記憶装置12に保存された判定プログラムを、演算装置13が備える記憶装置(図示せず)に展開して実行することにより、判定方法を実行する。判定プログラムには、プログラムモジュールである交換判定部14、電圧値取得部15、駆動源判定部16、識別情報更新部17、電圧調整部18、電圧値判定部19、及び通知部20が含まれる。なお、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路によって、これらのプログラムモジュールの機能を実現してもよい。
【0030】
交換判定部14は、電池スタック30から取得した電圧値と、記憶装置12に保存された識別情報に基づいて、制御装置10が交換されたか否か判定すると共に、電池スタック30又はバッテリモジュールが交換されたか否か判定するプログラムモジュールである。
【0031】
電圧値取得部15は、電池スタック30の電圧値を取得するプログラムモジュールである。電圧値取得部15は、電池スタック30に含まれる各バッテリモジュールの電圧を検出する電圧センサ(図示せず)から、各バッテリモジュールの電圧値を取得することができる。
【0032】
駆動源判定部16は、電池スタック30が搭載される車両のモータやエンジン等の駆動源の状態を判定するプログラムモジュールである。具体的には、駆動源判定部16は、車両の駆動源がOFFであるか否か判定する。
【0033】
識別情報更新部17は、記憶装置12に保存された識別情報を更新するプログラムモジュールである。識別情報として制御装置10の起動回数を採用する場合、識別情報更新部17は、制御装置10の起動回数を計数し、計数した起動回数に基づいて、識別情報を更新することができる。
【0034】
また、識別情報として電池スタック30の累積の使用時間を採用する場合、識別情報更新部17は、電池スタック30の使用時間を計測し、計測した使用時間に基づいて、識別情報を更新することができる。
【0035】
さらに、識別情報として電池スタック30の充電回数又は放電回数を採用する場合、識別情報更新部17は、電池スタック30の充電回数又は放電回数を計数し、計数した充電回数又は放電回数に基づいて、識別情報を更新することができる。
【0036】
電圧調整部18は、電池スタック30の電圧を、記憶装置12に保存された識別情報に対応するように調整するプログラムモジュールである。
【0037】
電圧値判定部19は、電池スタック30の電圧値と、記憶装置12に保存された識別情報が対応するか否か判定するプログラムモジュールである。
【0038】
通知部20は、交換判定部14による判定結果を、他の装置に通知するプログラムモジュールである。他の装置には、車載装置40と、車両に搭載されていない外部装置が含まれる。判定結果が通知される車載装置40の具体例として、例えば、二次電池システム1の上位システムを構成する制御装置が挙げられる。また、外部装置の具体例として、例えば、外部ネットワークを介して制御装置10と通信可能な情報処理装置(PCやサーバ等)が挙げられる。
【0039】
図3は、本発明の一実施形態に係る制御装置10が実行する処理の一例を示すフローチャートである。図3に示す処理は、例えば、制御装置10の起動時に実行される。
【0040】
ステップS101では、交換判定部14が、記憶装置12から識別情報を読み出す。ステップS102では、交換判定部14は、電圧値取得部15を用いて、電池スタック30から電圧値を取得する。ステップS103では、交換判定処理が実行される。交換判定処理については、図4を参照して後述する。
【0041】
ステップS104では、駆動源判定部16が、電池スタック30の搭載された車両の駆動源がOFFであるか否か判定する。駆動源がONである場合(NO)、ステップS104が再び実行される。一方、駆動源がOFFである場合(YES)、ステップS105で識別情報更新部17が、記憶装置12に保存された識別情報を更新する。
【0042】
ステップS106では、電圧調整部18が、識別情報更新部17によって更新された識別情報に基づき、電池スタック30の電圧を調整する。ステップS107では、電圧値判定部19が、電圧値取得部15を用いて、電池スタック30から電圧値を取得する。ステップS108では、電圧値判定部19は、取得した電圧値と、記憶装置12に保存された識別情報が対応するか否か判定する。電圧値と識別情報が対応しない場合(NO)、ステップS106に処理が戻る。一方、電圧値と識別情報が対応する場合(YES)、図3の処理が終了する。
【0043】
図4及び図5は、本発明の一実施形態に係る交換判定処理の一例を示す図である。ステップS201では、交換判定部14が、記憶装置12に保存された識別情報と、電池スタック30から取得した電圧値が、それぞれ初期値であるか否か判定する。識別情報及び電圧値の双方が初期値である場合(YES)、交換判定処理が終了する。一方、それ以外の場合(NO)、すなわち、(1)識別情報及び電圧値が初期値でない場合、(2)識別情報が初期値であり、電圧値が初期値でない場合、(3)識別情報が初期値でなく、電圧値が初期値である場合、ステップS202に処理が分岐する。
【0044】
ステップS202では、交換判定部14は、電池スタック30から取得した電圧値と、記憶装置12に保存された識別情報が対応するか否か判定する。電圧値と識別情報が対応する場合(YES)、交換判定処理が終了する。一方、電圧値と識別情報が対応しない場合(NO)、ステップS203に処理が分岐する。
【0045】
ステップS203では、交換判定部14は、記憶装置12に保存された識別情報が初期値であるか否か判定する。識別情報が初期値である場合(YES)、ステップS204に処理が分岐する。ステップS204では、交換判定部14は、制御装置交換検出フラグを立てる。具体的には、交換判定部14は、制御装置交換検出フラグの値を、制御装置10が交換された旨を示す値に変更する。ステップS205では、通知部20が、制御装置10が交換された旨を他の装置に通知する。ステップS206では、交換判定部14は、制御装置10が交換された旨の情報を記憶装置12の交換検出履歴として記録し、交換判定処理が終了する。
【0046】
ステップS203の判定において、記憶装置12に保存された識別情報が初期値でないと判定された場合(NO)、図5のステップS207に処理が分岐する。ステップS207では、電池スタック30から取得した電圧値が初期値であるか否か判定する。電圧値が初期値である場合(YES)、ステップS208に処理が分岐する。ステップS208では、交換判定部14は、二次電池交換検出フラグを立てる。具体的には、交換判定部14は、二次電池交換検出フラグの値を、二次電池が交換された旨を示す値に変更する。ステップS209では、通知部20が、二次電池が交換された旨を他の装置に通知する。ステップS210では、交換判定部14は、二次電池が交換された旨の情報を記憶装置12の交換検出履歴として記録し、交換判定処理が終了する。
【0047】
ステップS207の判定において、電池スタック30から取得した電圧値が初期値でない場合(NO)、ステップS211に処理が分岐する。ステップS211では、交換判定部14は、中古品交換検出フラグを立てる。具体的には、交換判定部14は、中古品交換検出フラグの値を、制御装置10及び二次電池(電池スタック30又はバッテリモジュールの少なくとも1つ)の少なくとも一方が中古品に交換された旨を示す値に変更する。ステップS212では、通知部20が、制御装置10及び二次電池(電池スタック30又はバッテリモジュールの少なくとも1つ)の少なくとも一方が中古品に交換された旨を他の装置に通知する。ステップS213では、交換判定部14は、制御装置10及び二次電池(電池スタック30又はバッテリモジュールの少なくとも1つ)の少なくとも一方が中古品に交換された旨の情報を記憶装置12の交換検出履歴として記録し、交換判定処理が終了する。
【0048】
図6は、記憶装置12内の識別情報と、電池スタック30の電圧値の一例を示す図である。図6に示す例では、識別情報として制御装置10の起動回数を採用する。なお、説明を簡略化するため、図6に示す例では、電池スタック30は8つのバッテリモジュールで構成されるものとする。この場合、識別情報は、バッテリモジュールの数に対応して8ビットで表される。
【0049】
制御装置10の初回起動時では、記憶装置12内の識別情報は初期値「0」である。初回起動時の電池スタック30のバッテリモジュールB1~B8の電圧値は、初期値「4V」である。なお、識別情報及び電池スタック30の初期値は、これらの値に限定されず、任意の値を採用することができる。制御装置10が起動した後、識別情報更新部17が、記憶装置12内の識別情報を、起動回数を示す「1」に更新する。車両の走行時には、電池スタック30のバッテリモジュールB1~B8の電圧値は、充放電の状況に応じて種々の値となる。
【0050】
次いで、駆動源がOFFになると、電圧調整部18が、電圧値を調整する際の電池スタック30の基準電圧値(最低電圧値や平均電圧値等)に基づいて、電池スタック30のバッテリモジュールB1~B8の電圧値を調整する。図6に示す例では、電圧調整部18は、記憶装置12内の識別情報の第2ビット(2bit)~第8ビット(8bit)に対応するバッテリモジュールB2~バッテリモジュールB8の電圧値を、電池スタック30の基準電圧値(「3.6V」)に調整する。
【0051】
また、電圧調整部18は、当該基準電圧値(「3.6V」)に基づいて所定の電圧値(「3.8V」))を算出し、記憶装置12内の識別情報の第1ビット(1bit)に対応するバッテリモジュールB1の電圧値を、当該所定の電圧値に調整する。所定の電圧値は、例えば、基準電圧値に既定値(例えば、0.2V等)を加算して得ることができる。また、基準電圧値に既定値(例えば、1.05等)を乗算して得られた電圧値を所定の電圧値としてもよい。なお、この既定値は、二次電池の容量を考慮した上で、種々の値を採用することができる。また、上記規定値は、電圧の測定精度及び調整精度に応じて、より小さい値にしてもよい。
【0052】
電池スタック30の電圧の調整の結果、記憶装置12内の識別情報の第2ビット(2bit)~第8ビット(8bit)の値は、電圧調整時の電池スタック30の基準電圧値に対応し、当該識別情報の第1ビット(1bit)は、基準電圧値に基づいて算出された所定の電圧値に対応する。
【0053】
制御装置10の2回目の起動時では、記憶装置12内の識別情報は「1」のままであり、電池スタック30のバッテリモジュールB1~B8の電圧値は、調整後の電圧値のままである。制御装置10が起動した後、識別情報更新部17が、記憶装置12内の識別情報を「2」に更新する。
【0054】
駆動源がOFFになると、電圧調整部18が、記憶装置12内の識別情報の第1ビット(1bit)、第3ビット(3bit)~第8ビット(8bit)に対応するバッテリモジュールB1、バッテリモジュールB3~バッテリモジュールB8の電圧値を、電圧調整時の基準電圧値(「3.5V」)に調整する。また、電圧調整部18は、当該基準電圧値(「3.5V」)に基づいて所定の電圧値(「3.7V」)を算出し、記憶装置12内の識別情報の第2ビット(2bit)に対応するバッテリモジュールB2の電圧値を、当該所定の電圧値に調整する。
【0055】
同様に、制御装置10が10回目に起動した後、識別情報更新部17が、記憶装置12内の識別情報を「10」に更新する。その後、駆動源がOFFになると、電圧調整部18が、電池スタック30のバッテリモジュールB1~B8の電圧値を、図6に示すように、基準電圧値(「3.7V」)と、当該基準電圧値に基づいて算出した電圧値(「3.9V」)に調整する。
【0056】
図7は、制御装置10が10回起動して駆動源がOFFになった後、制御装置10が交換された場合の記憶装置12内の識別情報と、電池スタック30の電圧値の一例を示す図である。
【0057】
上述した通り、制御装置10が10回目に起動した後、駆動源がOFFになった場合には、記憶装置12内の識別情報は「10」となり、電池スタック30のバッテリモジュールB1~B8の電圧値は、図7に示す電圧値となる。この後、制御装置10が交換されると、新たに設置された制御装置10の記憶装置12内の識別情報は初期値「0」であるため、制御装置10の11回目の起動時では、記憶装置12内の識別情報は「0」となる。一方、電池スタック30のバッテリモジュールB1~B8の電圧値は、駆動源の直前のOFF時に調整された電圧値のままである。このため、制御装置10が交換されると、記憶装置12内の識別情報と、電池スタック30の各バッテリモジュールの電圧値が対応しないこととなる。この場合、電圧値判定部19は、電池スタック30の電圧値と、記憶装置12に保存された識別情報が対応しないと判定する。このとき、電圧値判定部19は、基準電圧値(「3.7V」)に既定値(0.1V等)を加算して閾値(3.8V等)を算出する。この既定値は、閾値が基準電圧値(「3.7V」)と、当該基準電圧値に基づいて算出される所定の電圧値(「3.9V」))との間になるように設定される。電圧値判定部19は、当該閾値未満の電圧値(「3.7V」))を0とし、当該閾値以上の電圧値を1として、これらの値と、記憶装置12に保存された識別情報と比較する。
【0058】
図8は、制御装置10が10回起動して駆動源がOFFになった後、電池スタック30が交換された場合の記憶装置12内の識別情報と、電池スタック30の電圧値の一例を示す図である。
【0059】
上述した通り、制御装置10が10回目に起動した後、駆動源がOFFになった場合には、記憶装置12内の識別情報は「10」となり、電池スタック30のバッテリモジュールB1~B8の電圧値は、図8に示す電圧値となる。この後、電池スタック30が、当該電池スタック30の保持する電圧値と異なる電圧値を保持する別の電池スタック30に交換される。図8に示す例は、初期値である電圧値「4V」を保持する電池スタック30に交換された場合を示す。一方、記憶装置12内の識別情報は「10」のままである。このため、記憶装置12内の識別情報と、電池スタック30の各バッテリモジュールの電圧値が対応しないこととなる。この場合、電圧値判定部19は、電池スタック30の電圧値と、記憶装置12に保存された識別情報が対応しないと判定する。
【0060】
上述した実施形態では、車両の走行終了時等の電池スタック30の使用終了後に、制御装置10の電圧調整部18が、制御装置10の備える記憶装置12に保存された識別情報に対応するように、電池スタック30の電圧を調整する。そして、交換判定部14が、制御装置10の起動時に、電池スタック30から電圧値を取得し、取得された電圧値と、記憶装置12内の識別情報が対応しない場合、制御装置10又は電池スタック30若しくはバッテリモジュールが交換されたと判定することができる。
【0061】
本実施形態では、記憶装置12に保存された識別情報に対応するように、電池スタック30の電圧を調整し、調整された電池スタック30の電圧値を識別情報とすることができる。これにより、任意の電圧値を識別情報とすることができ、識別情報のバリエーションを増やすことができる。様々な電圧値を識別情報として電池スタック30に保持させることにより、交換前の電池スタック30の電圧値と交換後の電池スタック30の電圧値が同じになる可能性を大幅に低減することができる。その結果、制御装置10又は電池スタック30若しくはバッテリモジュールの交換の有無を正確に判定することができる。
【0062】
交換判定部14はさらに、記憶装置12内の識別情報が初期値であるとき、制御装置10が交換されたと判定する。通常、車両に新たに設置された制御装置10の記憶装置12の識別情報は初期値である。そのため、電池スタック30の電圧値と、記憶装置12内の識別情報が対応しない場合、すなわち、制御装置10及び二次電池(電池スタック30又はバッテリモジュールの少なくとも1つ)の少なくとも一方が交換された場合において、記憶装置12内の識別情報が初期値であるとき、制御装置10が交換された可能性が高い。これにより、車両に搭載された制御装置10が交換されたことを判定することができる。
【0063】
交換判定部14はさらに、取得した電池スタック30の電圧値が初期値であるとき、電池スタック30が交換されたと判定する。電池スタック30の電圧値と、記憶装置12内の識別情報が対応しない場合、すなわち、制御装置10及び二次電池(電池スタック30又はバッテリモジュールの少なくとも1つ)の少なくとも一方が交換された場合において、取得した電池スタック30の電圧値が初期値であるとき、電池スタック30若しくはバッテリモジュールが交換されたことにより、電池スタック30の電圧値と、記憶装置12内の識別情報が対応しなくなった可能性が高い。このような場合、交換判定部14は、車両に搭載された電池スタック30若しくはバッテリモジュールが交換されたものと判定することができる。
【0064】
交換判定部14はさらに、記憶装置12に保存された識別情報が初期値でなく、かつ、取得した電池スタック30の電圧値が初期値でないとき、制御装置10及び二次電池(電池スタック30又はバッテリモジュールの少なくとも1つ)の少なくとも一方が中古品に交換されたと判定する。電池スタック30の電圧値と、記憶装置12内の識別情報が対応しない場合、すなわち、制御装置10及び二次電池(電池スタック30又はバッテリモジュールの少なくとも1つ)の少なくとも一方が交換された場合において、記憶装置12に保存された識別情報及び取得した電池スタック30の電圧値のいずれもが初期値でないとき、制御装置10と、二次電池(電池スタック30又はバッテリモジュールの少なくとも1つ)の少なくとも一方が中古品に交換されたと言える。これにより、制御装置10及び二次電池(電池スタック30又はバッテリモジュールの少なくとも1つ)の少なくとも一方が中古品に交換されたことを判別することができる。
【0065】
また、制御装置10は、記憶装置12内の識別情報を更新する識別情報更新部17をさらに含む。電圧調整部18は、識別情報更新部17によって更新された識別情報に対応するように、電池スタック30の電圧を調整する。これにより、識別情報のバリエーションを増やすことができ、制御装置10又は電池スタック30の交換の有無を正確に判定することができる。
【0066】
さらに、制御装置10は、交換判定部14による判定結果を通知する通知部20をさらに備える。これにより、通知部20から判定結果を通知された他の装置は、制御装置10又は電池スタック30の交換の有無を把握することができる。そのため、制御装置10又は電池スタック30が交換された場合には、判定結果を受信した他の装置が、電池スタック30の充放電を制限することができる。また、当該他の装置が、電池スタック30の継続使用の可否を判断することができる。
【0067】
さらに、識別情報は、電池スタック30の数に対応したビット数で表される。例えば、電池スタック30を構成するバッテリモジュールの数が40である場合、識別情報を40ビットで表すことができる。この場合、240個の識別情報を利用することができる。このように非常に多くの数の識別情報を利用することができる。
【0068】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに提供することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに提供されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0069】
本発明は上述した実施形態に限られたものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 二次電池システム
10 制御装置
11 通信インタフェース
12 記憶装置
13 演算装置
14 交換判定部
15 電圧値取得部
16 駆動源判定部
17 識別情報更新部
18 電圧調整部
19 電圧値判定部
20 通知部
30 電池スタック
40 車載装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8