(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039157
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】所定肉厚の文字ないし図形を有する砂型用模型およびこれを元型として鋳造した鋳物
(51)【国際特許分類】
B22C 7/00 20060101AFI20220303BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20220303BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220303BHJP
【FI】
B22C7/00 113
B22C7/00 112B
B33Y80/00
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144033
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】596166472
【氏名又は名称】木戸 平太郎
(72)【発明者】
【氏名】木戸 平太郎
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093FB10
4E093FC01
(57)【要約】
【課題】 本発明は、彫りが深く、端正で高級感のある砂型用模型を提供すること、更にこの砂型用模型用いて、彫りが深く、端正で高級感のある鋳物を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明かかる砂型用模型は、3Dプリンタで出力された所定肉厚の文字および/または図形が、接合要素を介して基板に固定されているものである。さらに、3Dプリンタで出力された所定肉厚の文字および/または図形が、その各構成要素の相対位置を保持した状態で、接着剤を介して基板に固定されているものであり、支持シートに反転状態で出力された文字および/または図形がその反支持シート側に塗布された接着剤を介して、前記各構成要素の相対位置を保持した状態で、基板に固定されているものである。3Dプリンタとして熱溶解樹脂積層法のものが好適である。
本発明にかかる鋳物は、前記砂型用模型を元型として用いて形成された砂型鋳造キャビティに金属溶湯を流し込むことにより製造された鋳物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dプリンタで出力された所定肉厚の文字および/または図形が、接合要素を介して基板に固定されていることを特徴とする、砂型用模型。
【請求項2】
3Dプリンタで出力された所定肉厚の文字および/または図形が、その各構成要素の相対位置を保持した状態で、接着剤を介して基板に固定されていることを特徴とする、請求項1記載の砂型用模型。
【請求項3】
支持シートに反転状態で出力された前記文字および/または図形がその反支持シート側に塗布された接着剤を介して、前記各構成要素の相対位置を保持した状態で、基板に固定されていることを特徴とする、請求項2記載の砂型用模型。
【請求項4】
前記3Dプリンタが熱溶解樹脂積層法により出力する装置であり、前記反転状態の文字および/または図形がサポート材を介して支持シートに出力されていることを特徴とする、請求項3記載の砂型用模型。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の砂型用模型を用いて形成された砂型鋳造キャビティに金属溶湯を流し込むことにより製造された鋳物。
【請求項6】
熱溶解樹脂積層法の3Dプリンタを用いて所定の肉厚の文字および/または図形を反転状態でサポート材を介して支持シートに出力し、前記文字および/または図形の反支持シート側に接着剤を塗布し、前記支持シートを基板に押し当てることにより、前記文字および/または図形を反転させるとともに前記各構成要素の相対位置を保持した状態で基板に固定させ、前記接着剤が硬化した後に、前記支持シートおよびサポート材を除去することを特徴とする、請求項4記載の砂型用模型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に接着要素を介して所定肉厚の文字および/または図形を固定した砂型用模型に関し、更にこの砂型用模型を元型として形成した鋳造キャビティに金属溶湯を鋳込んで製造した鋳物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている砂型用模型としては、木製の木型およびプラスチック製の樹脂型がある。木材ブロックないしプラスチック製ブロックを削り出したり、所定形状の木材片やプラスチック片を立体的につなぎ合わせたりして、所定の肉厚の文字および/または図形を有する木型ないし樹脂型を作成している。
【0003】
木型ないし樹脂型では10度以上の抜き勾配を設けなければならず、このため木材やプラスチックを使用して砂型用模型を製作するには時間がかかり、熟練が必要である。特に、画数の多い漢字や欧文文字のE、F、G、Rのような接近した2本の線を有する文字に抜き勾配をつけて立体的に形成することは難しく、時間と労力が必要である。同様に、曲線で囲まれた図形に抜き勾配を設けながら立体的に形成することも難しく熟練のいる作業である。
【0004】
所定肉厚で形成した文字および/または図形(文字等という)の側壁の傾斜角(抜き勾配)は、文字自体や図形自体を大きくすれば、それらを構成する線の間隔は大きくなるので、抜き勾配を大きくすることができ、砂型用模型の傾斜角を緩くする(10度から20度)ことができるので、型崩れのない砂型を製作することができる。しかし、このような抜き勾配が大きな砂型用模型を元型として鋳造した鋳物は、文字等のエッジが甘くなり、抜き勾配が小さなものに比べて彫りが浅い感じになり、高級感のあるものとすることができない。文字自体や図形自体の大きさを変えないで、抜き勾配を大きくすると文字等を構成する近傍の線の対向斜面(対峙壁面)が途中高さで交差することになって、初期の突設高さを確保することが難しくなる。例えば、橋札(橋標)のように小型で、漢字の多い鋳物ではこのような欠点が顕著にあらわれる。このため、従来は文字等以外の部分は黒く塗りつぶして彫りの深さにばらつきがあることを隠していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2-15846
【特許文献2】実開昭52-963091
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
彫りが深く、端正で高級感のある鋳物を形成する場合、砂型用模型の文字等の肉厚(突設高さ)を高く、かつ抜き勾配を小さくする必要がある。しかし、砂型用模型の文字等の肉厚を高くすると抜けにくくなるので、抜き勾配を大きくする必要があり、逆に、抜き勾配を小さくすると模型を取り外すときに砂型が崩れてしまうという欠点がある。このため、文字等の肉厚が高く、かつ抜け勾配が小さな砂型を作成することは難しく、彫りが深く、端正で高級感のある小型の鋳物製造形物を得ることは困難であった。
【0007】
次に、漢字(例えば「谷」)や欧文文字列(例えば「CIC」)では、漢字の構成要素(例えば「谷」の「ハ」と「入」、「ロ」)の位置関係や文字(例えば「C」、「I」、「C」)相互の位置関係が文字や語句の美しさを決める重要な要素である。所定肉厚の文字や語句を個別に作成した場合、各構成要素を基板の適正な位置に再配置して固定することは煩わしく、文字等の各構成要素の相対位置を保持しながら砂型用模型を形成することは、困難である。
【0008】
本発明は、3Dプリンタを用いて、抜き勾配が小さくかつ所定肉厚の文字や図形を簡単な操作で作成し、作成された文字等を接合部材で基板に固定することにより、彫りが深く、端正で高級感のある砂型用模型を製造し、更にこの砂型を元型として用いることにより、彫りが深く、端正で高級感のある鋳物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の砂型用模型は、3Dプリンタで出力された所定肉厚の文字および/または図形が、接合要素を介して基板に固定されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載の砂型用模型において、3Dプリンタで出力された所定肉厚の文字および/または図形が、その各構成要素の相対位置を保持した状態で、接着剤を介して基板に固定されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2記載の砂型用模型において、支持シートに反転状態で出力された前記文字および/または図形がその反支持シート側に塗布された接着剤を介して、前記各構成要素の相対位置を保持した状態で、基板に固定されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3記載の砂型用模型において、前記3Dプリンタが熱溶解樹脂積層法により出力する装置であり、前記反転状態の文字および/または図形がサポート材を介して前記支持シートに出力されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1~4のいずれかに記載の砂型用模型を用いて形成された砂型鋳造キャビティに金属溶湯を流し込むことにより製造された鋳物である。
【0014】
請求項6の発明方法は、熱溶解樹脂積層法の3Dプリンタを用いて所定の肉厚の文字および/または図形を反転状態で支持シートに出力し、前記文字および/または図形の反支持シート側に接着剤を塗布し、前記支持シートを基板に押し当てることにより、前記文字および/または図形を反転させるとともに前記各構成要素の相対位置を保持した状態で基板に固定させ、前記接着剤が硬化した後に、前記支持シートおよびサポート材を除去することにより、請求項4記載の砂型用模型を製造する方法である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の砂型用模型は、所定の肉厚で文字および/または図形を種々の出力方式の3Dプリンタで出力し、所望に位置に設けられた接合要素を介して基板に固定したものであるから、文字等と基板との素材を別々のものにすることができる。また、複雑な形状で一品制作的なものである文字等を3Dプリンタで製造し、単純形状で汎用性の高い基板に多量生産品を用いたから、砂型用模型の製造コストを抑えることができる。
【0016】
請求項2記載の発明は、3Dプリンタで出力された文字および/または図形の各構成要素の相対位置を保持した状態で固定されたものであるから、文字等の美しい配列(相対位置)をそのまま維持することができる。
【0017】
請求項3記載の発明は、支持シートに反転状態で出力された前記文字および/または図形の反支持シート側に塗布された接着剤を介して、基板に反転固定されたものであるから、3Dプリンタの出力時の状態をそのまま保持することができる。
【0018】
請求項4記載の発明は、熱溶解樹脂積層法の3Dプリンタにより反転状態で出力された前記文字および/または図形がサポート材を介して支持シートに出力されているから、前記支持シートを基板に押し当てるだけで基板に接着固定することができる。熱溶解樹脂積層法のプリンタで出力された文字等の側壁面は凸凹段差が小さいので、高さ3~5mmの肉厚の文字等であれば抜き勾配を設けなくても砂型崩れを起こさない。
【0019】
請求項5記載の発明は、上記砂型用模型を用いて形成された鋳物であるから、文字等の彫りが深く、端正で高級感のある文字や模様を有する小型の鋳物を得ることができる。
【0020】
請求項6記載の発明方法は、熱溶解樹脂積層法の3Dプリンタを用いて所定の肉厚の文字および/または図形を反転状態で支持シートに出力し、この支持シートを基板に押し当てて文字および/または図形の各構成要素の相対位置を保持した状態で基板に接着剤で固定し、前記支持シートおよびサポート材を除去することにより、請求項4記載の砂型用模型を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】犬の肉厚図形が嵌合対で基板に接合される状態を示す斜視図である。
【
図2】(a)は支持シートに出力された反転文字の斜視図であり、(b)は反転文字を基板に反転させて固定した文字を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
請求項1の砂型用模型は、3Dプリンタで出力された所定肉厚で文字および/または図形が、接合要素を介して基板に固定されたものである。3Dプリンタとしては、熱溶解樹脂積層法、インクジェット法、粉末焼結法、粉末固着法、光造形法などの種々の方式のものを用いることができる。接合要素としては、嵌合対や接着剤がある。嵌合対の場合は文字等と基板との相対位置はあらかじめ定められている。接着剤の場合は、3Dデータの平面図を別途用意しておき、透明なプラスチック製の基板の裏面に貼り付け、反対側から文字等の各構成要素をその相当する位置に接着剤で固定することができる。このような構成とすることにより、3Dプリンタで出力された所定肉厚で文字および/または図形のような複雑な形状で一品制作的なものと、単純な形状で画一的である基部とを異なった装置で異なった素材を用いて製造することができ、砂型用模型を簡単かつ安価に製造することができる。
【0023】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の砂型用模型において、所定肉厚の文字および/または図形の各構成要素の相対位置を保持した状態で、接着剤を介して基板に固定するものである。各構成要素の相対位置を保持するには、各構成要素をつなぎ材で連結をした状態で文字等を出力して各構成要素の相対位置を保持することができる。
【0024】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の砂型用模型において、支持シートにサポート材を介して反転状態の文字および/または図形を出力し、反支持シート側に塗布された接着剤を介して反転状態の文字等を反転して基板に固着したものである。支持シートおよびサポート材が前記各構成要素の相対位置を保持している。支持シートおよびサポート材は接着材が硬化したら除去される。
【0025】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の砂型用模型において、熱溶解樹脂積層法の3Dプリンタを用いて、造形ステージ上に載置された支持シートにサポート材を介して文字および/または図形を反転状態で出力するものであるから、支持シートを基板に押し当てるだけで簡単に固定することができる。また、熱溶解樹脂積層法は積層ピッチが小さく、文字等の側面が滑らかであるから、抜き勾配を0度~5度に設定することができる
【0026】
請求項5記載の鋳物は、請求項1~4のいずれかに記載の砂型用模型を用いて形成された鋳造キャビティに金属溶湯を流し込むことにより製造されたものである。端正な文字および/または図形を有する砂型用模型を用いたので、彫りが深く美しい鋳物をスピーディに製造することができる。
【0027】
請求項6記載の発明方法は、請求項4記載の砂型用模型を製造する方法であり、熱溶解樹脂積層法の3Dプリンタを用いて所定の肉厚の文字および/または図形を反転状態で支持シートに出力し、前記文字および/または図形の反支持シート側に接着剤を塗布し、前記支持シートを基板に押し当てることにより、前記文字および/または図形を反転させるとともに前記各構成要素の相対位置を保持した状態で基板に固定させ、前記接着剤が硬化した後に、前記支持シートおよびサポート材を除去する方法である。支持シートは可撓性があり、湾曲させてサポート材から剥離させるものである。モデル材(フィラメント)にABSを用いるときはサポート材としてPVAを用いるのがよい。
【実施例0028】
図1は本発明の第1実施例を示したもので、犬の肉厚の図形(立体図形)が嵌合対により基板に接合される前の状態を示す斜視図である。犬の立体図形1は犬を撮影した写真からシルエットを取得し、描画用ソフトウエアを用いてアウトラインを抽出して2次元データ化したあと、3Dモデリングソフトウエアに取り込んで立体化し、3Dプリンタで出力したものである。犬の立体図形の寸法は縦横50mmで、肉厚は2mmである。犬の立体図形の足部分には短冊状の嵌合片2、2が設けられている。一方、基板3は上辺が山形状の湾曲した厚さ4mmの木製板材であり、上辺に嵌合片2、2に嵌合する嵌合孔4、4が設けられている。嵌合対を嵌合させることにより、犬の位牌を鋳造するための砂型用模型が完成する。
【0029】
犬の立体図形1を出力する3Dプリンタは石膏積層法によるものであり、0.1mmの石膏粉を順次積層し、バインダを吹き付けて固着して造形する。造形後はシアノアクリレートなどの補強材を含浸させて、取り扱い可能な強度に維持する。犬の立体図形1および基板3の側壁には、7度の抜き勾配が設けられている。なお、石膏製の砂型用模型は、積層間の凸凹が大きく、砂型崩れを防止するために5~8度の抜き勾配が必要である。
【0030】
この砂型用模型を用いて犬の位牌(鋳物)を得る方法を説明する。前記模型1を図示しない作業台上に載置し、前記模型を囲むように第1の枠体を作業台上に配置したあと、第1の枠体内にフラン自硬性の鋳物砂を投入して第1の砂型を形成する(第1工程)。次に、第1の砂型を天地逆にして模型5の背面を露出させるとともに、第2の枠体(図示せず)を第1の砂型ないし第1の枠体の上に載置する。さらに湯口孔形成用棒材と排気孔形成用棒材の下端面を模型の背面に立設したあと、フラン自硬性の鋳物砂を投入して第2の砂型を形成する(第2工程)。
【0031】
鋳物砂が固化したら湯口形成棒材と排気口形成棒材を抜去したあと、第1の砂型から第2の砂型を取り外し、第1の砂型から模型1を撤去する。第1の砂型に第2の砂型を載置して鋳造キャビティを形成し、形成された鋳造キャビティに湯口孔からアルミニウム溶湯金属を流し込む。アルミニウム溶湯が冷却したら、第1および第2の砂型を破壊して鋳物であるペット用位牌を取り出す(第3工程)。
【0032】
以下、本発明の第2実施例を説明する。3Dモデリングソフトウエアのテキスト機能から2次元データの文字abcを作成画面上に呼び出し、グループ解除後に文字abcを押出し機能によりそれぞれ個別に高さ5mmの3次元データの立体文字にする。このとき、抜き勾配を5度に設定した。次に、移動機能を使って文字abcを水平軸回りに180度回転して反転状態の立体文字の3Dデータを作る。この3Dデータを用いて熱溶解樹脂積層法の3Dプリンタで出力する。砂型用模型の文字の上面となる部分が反転して造形ステージ側に位置した状態(反転状態)で出力すれば、造形ステージに載置された支持シートにサポート材を介して、反転状態の文字abcが支持されることになる。使用した3Dプリンタは、メーカー:ストラタシス、機種:FORTUS 360mc-Lであり、対応材種:ABS、ナイロン12、ポリカーボネートの3種類に対応しているものである。造形方法は、造形ステージを同一平面上でxy軸方向に移動させ、一層を形成したらz軸方向に一層分降下させて積層していく方式である。このメーカーの3Dプリンタは、造形ステージに透明で可撓性のある支持シートを載せ、透明シート上に樹脂を出力していくものである。
【0033】
本実施例では、3Dプリンタの樹脂の積層ピッチが0.127mmになるように設定している。直径0.3mmのフィラメントを溶かしながら順次積層していくものであるから、積層速度により異なるが、本実施例では外郭線に沿うツールパス(コンター)が0.3mmに設定されており、最小幅が0.6mmの文字等を出力することができる。出力された文字の高さ方向(壁面)は凸凹がなく比較的滑らかであった。
【0034】
図2の(a)に示す11、12および13は、プラスチック製の透明な可撓性の支持シート14の表面にPVA製のサポート材15を介して反転状態で出力されたABS製の高さ5mmの文字abcである。なお文字等の側面は逆テーパ(上方に開いた状態)になっている。
図2に(b)に示す砂型用模型17は、反転状態の文字abcの頂面(反支持シート側)にシアノアクリレート接着剤を塗り、支持シート14を基板16に押し当てて反転状態の文字abcを反転させて基板16の所定に位置に接着したものである。このとき、文字等の側面は抜き勾配が5度のテーパ(下方に開いた状態)になっている。接着剤が硬化したら支持シート14を湾曲させながらサポータ材15から外す。次に、サポート材15を基板の文字abcから取り外す。支持シートを用いれば反転状態の文字を更に反転した状態(正常な形に戻った状態)の文字に戻した砂型用模型17とすることができる。出力時の反転状態の文字abcの姿勢や相対位置は支持シート14およびサポート材15により保持され、正常な形に戻ったときにその姿勢や相対位置がそのままで基板16に固定されるから、バランスの取れた、美しい状態の文字を維持することができる。
【0035】
この砂型用模型を用いて鋳物を得る方法は前記の場合と同様であるが、砂型模型の文字に抜き勾配として5度が確保されているので、脱型時に砂型崩れが起きることがなく、高さ5mmの文字を正確に転写した鋳造キャビティを形成することができ、彫りが深く、端正で高級感のある文字や図形を有する小型の鋳物を得ることができる。熱溶解樹脂積層法の3Dプリンタで出力された文字や図形において、文字の高さにもよるが、抜き勾配を0度から5度に設定すれば、模型の脱型時に砂型崩れを防止するには十分である。
文字等の彫りが深く、端正で高級館感のある砂型用模型を提供することができる。したがって、この砂型用模型を元型として用いることにより、彫りが深く、端正で高級感のある表札、室名札、橋の銘板(橋札)、位牌その他の立体感のある小型の鋳物を得ることができる。