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  • 特開-車両の制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039172
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/08 20200101AFI20220303BHJP
   B60W 30/02 20120101ALI20220303BHJP
【FI】
B60W50/08
B60W30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144063
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】都鳥 義晴
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA18
3D241BA26
3D241BA60
3D241BA70
3D241CC01
3D241CC08
3D241DA52Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DB32Z
(57)【要約】
【課題】車両が牽引状態にある場合、車両の挙動を安定できる車両の制御装置を提供する。
【解決手段】車両Cの制御装置1は、牽引可能な車両Cの制御装置1である。車両Cの制御装置1は、牽引判断部4と、車両挙動制御部6と、非作動切替スイッチ12と、を備える。牽引判断部4は、車両Cが牽引状態であるか否かを判断する。車両挙動制御部6は、走行状態に応じて車両Cの挙動が安定するように制御する。非作動切替スイッチ12は、車両挙動制御部を作動状態と非作動状態のどちらかに切り替える。作動状態制御部9は、車両挙動制御部が非作動状態において、牽引判断部4によって牽引状態と判断され、車両挙動制御部6を作動状態にする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引可能な車両の制御装置であって、
前記車両が牽引状態であるか否かを判断する牽引判断部と、
走行状態に応じて前記車両の挙動が安定するように、前記車両を制御する車両挙動制御部と、
前記車両のユーザ操作によって、前記車両挙動制御部を作動状態と非作動状態のどちらかに切り替える切替操作部と、
前記車両挙動制御部が非作動状態において、前記牽引判断部によって牽引状態と判断された場合、前記車両挙動制御部を作動状態にする作動状態制御部と、
を備える車両の制御装置。
【請求項2】
前記車両の速度を検知する速度検知部をさらに備え、
前記作動状態制御部は、前記車両の速度が所定速度以上になった場合、前記車両挙動制御部を作動状態にする、
請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記作動状態制御部は、前記牽引判断部によって牽引状態と判断されてから所定時間経過した場合、前記車両挙動制御部を作動状態にする、
請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記作動状態制御部は、前記車両挙動制御部を作動状態にした後、前記切替操作部によって前記車両挙動制御部が非作動状態に切り替え操作された場合、前記車両挙動制御部を非作動状態にする、
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
牽引状態に適した走行モードである牽引モードを含む複数の走行モードを選択可能な選択操作部をさら備え、
前記牽引判断部は、前記選択操作部によって前記走行モードが前記牽引モードに選択された場合、前記車両が牽引状態であると判断する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記車両挙動制御部が作動状態になった場合、前記車両のユーザに報知する報知手段をさらに備える、
請求項1から5のいずれか1項に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引可能な車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両が曲がりながら走行している場合、車両の横滑りを防止し、車両の挙動を安定させる車両挙動制御部を備える車両の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の車両の制御装置では、舵角、ヨーレート、スリップ率から車両が横滑り状態にあるか否かを判断する。特許文献1の車両の制御装置では、車両が横滑り状態である場合、車両挙動制御部を作動させて車両の挙動を安定させる。また、このような車両の制御装置では、エンジンなどの動力源の出力を低下させ、車両の挙動を安定させることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-20584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、車両がスタックした場合、車両挙動制御部によって、車両のユーザが意図しない、制動装置の作動やエンジン出力の低下が発生することがある。このようなユーザが意図しない車両挙動制御部の作動を防止するため、ユーザの操作によって車両挙動制御を非作動状態にできるスイッチが設けられることが、一般的である。
【0005】
しかし、ユーザが、車両挙動制御が非作動状態であることに気づかずに被牽引車両を牽引する場合、車両の挙動が乱れるおそれがある。
【0006】
本開示の課題は、車両が牽引状態にある場合、車両の挙動を安定させる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る車両の制御装置は、牽引可能な車両の制御装置である。車両の制御装置は、牽引判断部と、車両挙動制御部と、切替操作部と、作動状態制御部と、を備える。牽引判断部は、車両が牽引状態であるか否かを判断する。車両挙動制御部は、走行状態に応じて車両の挙動が安定するように車両を制御する。切替操作部は、車両のユーザ操作によって、車両挙動制御部を作動状態と非作動状態のどちらかに切り替える。作動状態制御部は、車両挙動制御部が非作動状態において、牽引判断部によって牽引状態と判断された場合、車両挙動制御部を作動状態にする。
【0008】
この車両の制御装置によれば、牽引判断部によって牽引状態と判断されれば、車両挙動制御部が非作動状態であっても、作動状態制御部が車両挙動制御部を作動状態にし、車両挙動制御部が作動する。これによって、例えば、ユーザが、牽引状態にあるにもかかわらず車両挙動制御部が非作動状態であることに気づいていない場合、作動状態制御部が自動的に車両挙動制御部を作動状態にさせる。これによって、牽引状態では、車両の挙動が乱れにくい。この結果、車両が牽引状態にある場合、車両の挙動を安定させる車両の制御装置を提供できる。
【0009】
車両の制御装置は、車両の速度を検知する速度検知部をさらに備えてもよい。作動状態制御部は、車両の速度が所定速度になった場合、車両挙動制御部を作動状態にしてもよい。
【0010】
牽引状態では車両の走行速度が高い場合、車両の挙動が乱れやすい。一方、車両の走行速度が低い場合、車両がスタックしている場合もある。この構成によれば、車両が牽引状態にあり、かつ、車両が所定速度以上で走行している場合、作動状態制御部は、車両挙動制御部を作動状態にする。これによって、車両が牽引状態、かつ、走行速度が高い場合、車両挙動制御部が確実に作動状態になる。一方、車両が牽引状態であっても、走行速度が低い場合、車両挙動制御部が作動状態にならないようにできる。
【0011】
作動状態制御部は、牽引判断部によって牽引と判断されてから所定時間経過した場合、車両挙動制御部を作動状態にしてもよい。
【0012】
この構成によれば、牽引判断部によって牽引状態と判断された場合、車両挙動制御部は、所定時間経過後に確実に作動状態になる。
【0013】
作動状態制御部は、車両挙動制御部を作動状態にした後、切替操作部によって車両挙動制御部が非作動状態に切り替え操作された場合、車両挙動制御部を非作動状態にしてもよい。
【0014】
この構成によれば、作動状態制御部は、車両挙動制御部を作動状態にした後、ユーザ操作によって車両挙動制御部が非作動状態に切り替えられるまで、車両挙動制御部の作動状態を維持する。これによって、ユーザが意図せず車両挙動制御部が非作動状態となることがない。この結果、車両の安全性が高くなる。
【0015】
車両の制御装置は、牽引状態に適した走行モードである牽引モードを含む複数の走行モードを選択可能な選択操作部をさらに備えてもよい。牽引判断部は、選択操作部によって走行モードが牽引モードに選択された場合、車両が牽引状態であると判断してもよい。
【0016】
この構成によれば、選択操作部によって走行モードが牽引状態に選択された場合、車両挙動制御部を自動的に作動状態にできる。
【0017】
車両の制御装置は、車両挙動制御部が作動状態になった場合、車両のユーザに報知する報知手段をさらに備えてもよい。
【0018】
この構成によれば、車両のユーザは車両挙動制御部が作動状態となったか否かを認識できる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、車両が牽引状態にある場合、車両の挙動を安定させる車両の制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の実施形態による車両の制御装置のシステム図。
図2】本開示の実施形態による走行モード選択スイッチを示す図。
図3】本開示の実施形態による車両の制御装置の制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
図1に示すように、車両Cの制御装置1は、車両制御部2と、牽引判断部4と、車両挙動制御部6と、走行制御部8と、作動状態制御部9と、走行モード選択スイッチ(選択操作部の一例)10と、非作動切替スイッチ(切替操作部の一例)12と、報知部(報知手段の一例)16と、車輪速センサ(速度検知部の一例)18と、加速度センサ20と、ヨーレートセンサ22と、舵角センサ24と、を備える。
【0023】
車両Cは、車両Cの後部に設けられたヒッチメンバ(図示せず)などに被牽引車両を連結することによって、被牽引車両を牽引可能な車両である。車両Cは、内燃機関、モータ、変速機、および減速機などを組み合わせることによって、車両Cの動力源となるパワートレイン14が設けられる。パワートレイン14は、パワートレイン14の制御装置14aによって、出力や変速タイミングが制御される。本実施形態では、車両Cは、前後左右にそれぞれ1つ、合計4つの車輪を有する四輪車両であり、パワートレイン14からの出力を2つの前輪もしくは2つの後輪、あるいは、2つの前輪および2つの後輪の両方、に分配することによって各車輪を駆動する。また、本実施形態では、車両Cは、後述する走行モード選択スイッチ10によって選択された走行モードに応じて、パワートレイン14の出力や変速タイミング、および4つの車輪の回転差などの調整が可能である。
【0024】
また、車両Cは、4つの車輪のそれぞれに、制動装置26を有する。本実施形態では、制動装置26は、ディスクブレーキ、もしくはドラムブレーキであり、制動装置26の制御装置26aによって、4つの制動装置26をそれぞれ別々に作動させることができる。
【0025】
車両制御部2は、車両Cに搭載される各種装置、センサ、および各種スイッチと電気的に接続され、車両Cの各種機能を制御する装置である。本実施形態では、車両制御部2は、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成されるECU(Electrоnic Control Unit)である。車両制御部2は、各種装置、センサ、および各種スイッチからの信号、ならびにメモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、車両Cが所望の運転状態となるように各種装置を制御する。
【0026】
車両制御部2は、少なくとも牽引判断部4と、車両挙動制御部6と、走行制御部8と、作動状態制御部9と、を含む。牽引判断部4、車両挙動制御部6、走行制御部8、および作動状態制御部9は、ECU(Electrоnic Control Unit)に記憶されるソフトウェアによって実現される機能構成である。
【0027】
また、車両制御部2は、少なくとも、走行モード選択スイッチ10、非作動切替スイッチ12、パワートレイン14の制御装置14a、報知部16、車輪速センサ18、加速度センサ20、ヨーレートセンサ22、舵角センサ24、および制動装置26の制御装置26aと電気的に接続される。車両制御部2は、走行モード選択スイッチ10、非作動切替スイッチ12、車輪速センサ18、加速度センサ20、ヨーレートセンサ22、および舵角センサ24からの信号を取得し、取得した信号に応じて牽引判断部4、車両挙動制御部6、走行制御部8、および作動状態制御部9に信号を送信するとともに各制御部を制御する。また、車両制御部2は、車両挙動制御部6、走行制御部8および作動状態制御部9からの信号をパワートレイン14の制御装置14a、および制動装置26の制御装置26aに送信することによって、パワートレイン14および制動装置26を制御する。さらに、車両制御部2は、車両挙動制御部6の作動状態、および走行制御部8の作動状態を、報知部16に送信することによって、車両Cのユーザに車両Cの状態を報知する。車両制御部2は、この他、車両Cの空調装置(図示せず)などの車両Cの各種装置を制御してもよい。
【0028】
牽引判断部4は、車両Cが牽引状態か否かを判断し、車両Cが牽引状態である場合、作動状態制御部9に信号を送信する。本実施形態では、牽引判断部4は、走行モード選択スイッチ10が後述する牽引モードに選択されると、車両Cが牽引状態であると判断する。しかし、牽引判断部4は、例えば、車両Cと被牽引車両を電気的に接続するためのコネクタ(図示せず)が接続状態にある場合、牽引状態であると判断してもよい。
【0029】
車両挙動制御部6は、例えば車両Cが曲がりながら走行している状態などの車両Cの走行状態に応じて、車両Cの挙動が安定するように車両Cのパワートレイン14および制動装置26を制御する。本実施形態では、車両挙動制御部6は、舵角センサ24から、車両Cの舵角を取得する。また、車両挙動制御部6は、加速度センサ20から車両Cの加速度、およびヨーレートセンサ22から車両Cのヨーモーメントの値を取得する。車両挙動制御部6は、舵角および車両Cの速度に応じて、車両Cにオーバステア、またはアンダーステアが発生し難く、車両Cの挙動が安定する加速度およびヨーモーメントの値を予め記憶している。車両挙動制御部6は、これら記憶した加速度およびヨーモーメントの値となるように車両Cの前後左右に設けられた制動装置26の作動を制御する。
【0030】
また、車両挙動制御部6は、車両Cの各車輪の車輪速センサ18から各車輪の回転数を取得するとともに、各車輪の回転数から車両Cの速度の算出および各車輪の回転数の差を算出する。車両挙動制御部6は、各車輪の回転数の差から車輪がスリップ(空転)状態にあるか否かを判断し、スリップ状態にある場合は、スリップ状態の車輪の制動装置26を作動させることによって、車両Cの挙動を安定させる。さらに、車両挙動制御部6は、制動装置26によっては車両Cの挙動を安定できないと判断した場合、パワートレイン14の出力を低下させることによって、車両Cの挙動を安定させる。
【0031】
なお、被牽引車両は、横風、路面の凹凸、および車両Cのハンドル操作などによって、蛇行することがある。そこで、車両挙動制御部6は、被牽引車両の蛇行によって、車両Cの挙動が乱れることを防止する。より具体的には、被牽引車両が蛇行すると、被牽引車両に引きずられることによって車両Cの後方が横方向に振れる。このため、車両挙動制御部6は、牽引状態の場合、加速度センサ20、ヨーレートセンサ22、および舵角センサ24を用いて、車両Cの横方向の振れを監視する。車両挙動制御部6は、車両Cの横方向の振れが大きい場合、振れ方向に応じて左右の車輪の制動装置26をそれぞれ作動させる。これによって、車両Cの挙動が安定する。すなわち、車両Cの後方が車両Cの前進方向(図1の矢印F参照)に対し左側(図1の紙面奥側)に振られる場合、車両挙動制御部6は、右輪の制動装置26を作動させることによって、車両Cの左回転方向に発生するヨーモーメントを打ち消す。車両挙動制御部6は、車両Cが右側(図1の紙面手前側)に振られる場合も同様に、左輪の制動装置26を作動させることによって、車両Cの右回転方向に発生するヨーモーメントを打ち消す。
【0032】
走行制御部8は、後述する走行モード選択スイッチ10によって選択された走行モードに合わせて、車両Cの走行状態を制御する。走行制御部8は、少なくとも後述する牽引モードが選択された場合、牽引状態に合わせた出力特性とするようパワートレイン14の制御装置14aに信号を送信する。パワートレイン14の制御装置14aは、牽引モードでは、他の走行モードよりもパワートレイン14の変速タイミングを早め、車両Cのユーザのアクセル操作に対して出力が早期に発生するように、車両Cの出力特性を調整する。これによって、車両Cが被牽引車両を牽引しやすくなる。
【0033】
作動状態制御部9は、少なくとも車輪速センサ18、牽引判断部4、非作動切替スイッチ12からの信号を取得し、予め記憶されたプログラムに基づいて、車両挙動制御部6の作動、非作動を自動的に切り替える。予め記憶されたプログラムには、タイマーを含む。作動状態制御部9は、車両挙動制御部6が非作動状態において、牽引判断部4によって牽引状態と判断された場合、車両挙動制御部6を作動状態にする。作動状態制御部9は、車両Cの速度Vが所定速度V1以上になった場合、車両挙動制御部6を作動状態にする。作動状態制御部9は、牽引判断部4によって牽引状態と判断されてから所定時間T1経過した場合、車両挙動制御部6を作動状態にする。作動状態制御部9は、非作動切替スイッチ12によって車両挙動制御部6が非作動状態に切り替え操作された場合、車両挙動制御部6を非作動状態にする。
【0034】
走行モード選択スイッチ10は、車両Cのユーザが操作することにより、牽引モードを含む複数の走行モードを選択できるスイッチである。図2に示すように、本実施形態では、走行モード選択スイッチ10は、通常状態の走行モードであるノーマルモード、牽引状態の走行モードである牽引モード、エネルギーの消費を抑えるエコモード、および路面状況に応じた走行モードなど複数の走行モードがダイヤルの周囲に表示される。車両Cのユーザは、走行モード選択スイッチ10のダイヤルを回し、目印Bを複数の走行モードのいずれかの位置に合わせることによって、走行モードを選択できる。
【0035】
非作動切替スイッチ12は、図1に示すように、車両Cのユーザ操作によって、車両挙動制御部6を作動状態から非作動状態に切り替えるスイッチである。本実施形態では、非作動切替スイッチ12はボタン式スイッチであり、車両Cのユーザがボタンを押すことによって、作動状態制御部9を介して車両挙動制御部6が作動状態から非作動状態に切り替わる。このとき、後述する報知部16は、車両挙動制御部6が非作動状態である旨の警告を表示し、車両Cのユーザが車両挙動制御部6の作動状態を認識できるように報知する。非作動切替スイッチ12は、車両Cのユーザがもう一度押すことによって、車両挙動制御部6が作動状態制御部9を介して非作動状態から作動状態に切り替わる。また、このとき報知部16に表示された警告は消える。
【0036】
報知部16は、車両挙動制御部6が作動状態になった場合、車両Cのユーザに報知する。また、報知部16は、車両挙動制御部6が非作動状態である場合も、非作動状態である旨の警告を表示することによって、ユーザに報知する。本実施形態では、報知部16は、例えば、車両Cのユーザ、特に運転者が視認しやすいメータパネル(図示せず)内に配置された液晶パネルである。
【0037】
次に、図3のフローチャートを用いて、作動状態制御部9が行う制御手順について説明する。なお、作動状態制御部9は、図示しないイグニッションスイッチがオンになると、制御動作を開始する。
【0038】
S1では、作動状態制御部9は、非作動切替スイッチ12からの信号を取得し、車両挙動制御部6が非作動状態であるか否か判断する。
【0039】
このような、非作動切替スイッチ12は、車両Cのユーザが意図的に車両挙動制御部6の作動を停止させるために用いられる。すなわち、車両挙動制御部6は、車両Cが泥や雪などの路面でスタックした場合、車両Cのユーザが意図しない場合も作動することがある。より具体的には、車両挙動制御部6は、車両Cがスタック状態であるにも関わらず、ユーザの意図に反して制動装置26を作動させる場合、およびパワートレイン14の出力を低下させる場合がある。このため、車両Cのユーザが、非作動切替スイッチ12を意図的に操作することによって、車両挙動制御部6を非作動状態にできるようになっている。一方、車両Cのユーザの誤操作によって、すなわちユーザの意図に反して非作動切替スイッチ12が押されることもある。また、ユーザが非作動切替スイッチ12を押したことを忘れる場合もある。このように、ユーザの意図に反して車両挙動制御部6が非作動状態となる場合であっても、牽引状態では非牽引車両の蛇行を防止する方が好ましい。そこで、作動状態制御部9は、車両Cが牽引状態である場合、車両Cの挙動を安定させるように以下の制御を行う。
【0040】
作動状態制御部9は、車両挙動制御部6が非作動であると判断すると(S1 Yes)、S2に処理を進める。S2では、作動状態制御部9は、牽引判断部4から牽引状態であるか否かの信号を取得する。本実施形態では、牽引判断部4は、走行モードを取得し、走行モードが牽引モードに選択された場合、牽引状態であると判断する。このように、牽引判断部4が判断することによって、牽引状態の誤検知を防止できる。作動状態制御部9は、牽引状態であるとの信号を取得した場合(S2 Yes)、S3に処理を進める。
【0041】
S3では、作動状態制御部9は、車輪速センサ18から各車輪の回転数を取得し車両Cの速度Vを算出し、車両Cの速度Vが所定速度V1以上であるか否かを判断する。車両制御部2は、車両Cの速度Vが所定速度V1以上の場合(S3 Yes)、S4に処理を進める。S4では、作動状態制御部9は、車両Cが所定速度V1以上で走行した時間Tが所定時間T1以上経過したか否かを判断する。作動状態制御部9は、車両Cが所定速度V1以上で走行した時間Tが所定時間T1以上経過した場合(S4 Yes)、S5に処理を進める。S5では、作動状態制御部9は、車両挙動制御部6を作動状態にし、S6に処理を進める。ここで、被牽引車両の蛇行は、特に車両Cが高速走行している場合に発生しやすい。上記制御によれば、車両制御部2は、車両Cが牽引状態で高速走行する場合、車両挙動制御部6は確実に作動状態となる。これによって、車両Cが牽引状態で高速走行する場合、車両Cの挙動が安定する。この結果、車両Cの安全性が高くなる。
【0042】
S6では、作動状態制御部9は、車両Cのユーザによって、車両挙動制御部6を作動状態から非作動状態に切り替え操作がされたか否か判断する。本実施形態では、作動状態制御部9は、S5で車両挙動制御部6が作動状態になった後、非作動切替スイッチ12が再び押された場合、車両Cのユーザが、車両挙動制御部6を作動状態から非作動状態に切り替え操作したと判断する。車両制御部2は、車両Cのユーザが車両挙動制御部6を作動状態から非作動状態に切り替え操作したと判断した場合(S6 Yes)、S7に処理を進める。S7では、作動状態制御部9は、車両挙動制御部6を非作動状態に切り替え、S8に処理を進める。作動状態制御部9は、S8で車両挙動制御部6が作動状態になった場合、報知部16に車両挙動制御部6が作動状態になった旨を表示させ、車両Cのユーザに報知する。
【0043】
作動状態制御部9は、S1で車両挙動制御部6が非作動状態でないと判断した場合(S1 No)、すなわち車両挙動制御部6が作動状態の場合、処理を最初に戻す。また、作動状態制御部9は、S2で牽引判断部4から牽引状態であるとの信号を取得していない場合(S2 No)、車両挙動制御部6の非作動状態を維持したまま処理を最初に戻す。本実施形態では、牽引状態でない場合は、走行モード選択スイッチ10によって牽引モード以外が選択された場合である。
【0044】
また、作動状態制御部9は、車両Cの速度Vが所定速度V1より小さい場合(S3 No)、処理をS3の前に戻し、車両Cの速度Vが所定速度V1以上となるまで車両挙動制御部6を非作動状態に維持する。さらに、車両制御部2は、車両Cが所定速度V1以上で走行した時間Tが所定時間T1経過していない場合(S4 No)、処理をS3の前に戻し、車両Cが所定速度V1以上で走行した時間Tが所定時間T1以上経過するまで、車両挙動制御部6を非作動状態に維持する。このように、作動状態制御部9は、車両Cが牽引状態にあっても、車両の速度Vが所定速度V1より小さい場合、車両挙動制御部6を非作動状態にする。これによって、車両Cがスタック中に、ユーザの意図に反して車両挙動制御部6が作動することを防止できる。
【0045】
また、作動状態制御部9は、車両Cのユーザによって、車両挙動制御部6を作動状態から非作動状態に切り替え操作されていないと判断した場合(S6 No)、車両挙動制御部6を作動状態に維持する。これによって、ユーザの操作によって車両挙動制御部6が非作動状態に切り替えられるまで、車両挙動制御部6が作動状態に維持される。このため、牽引状態でユーザが意図せず車両挙動制御部6が非作動状態となることがない。この結果、車両Cの安全性が高くなる。
【0046】
以上説明した通り、本開示によれば、車両Cが牽引状態にある場合、車両Cの挙動を安定させる車両Cの制御装置1を提供できる。
【0047】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0048】
(a)上記実施形態では、走行モードを選択可能な選択操作部の一例として、走行モード選択スイッチ10を例に説明したが、本開示はこれに限定されない。選択操作部は、走行モードを選択可能であればよく、ボタンを押すことによって走行モードを切り替えるもの、タッチパネル上に表示されるアイコンを選択することによって走行モードを切り替えるもの、音声認識によって走行モードを切り替えるもの、などであってもよい。
【0049】
(b)上記実施形態では、車両挙動制御部6の作動状態と非作動状態を切り替える切替操作部の一例として、非作動切替スイッチ12を例に説明したが、本開示はこれに限定されない。切替操作部は、ダイヤルによって切り替えるもの、タッチパネル上に表示されるアイコンによって切り替えるもの、音声認識によって切り替えるもの、などであってもよい。
【0050】
(c)上記実施形態では、作動状態制御部9は、車両Cが所定速度V1以上で走行した時間Tが所定時間T1以上経過した場合(S4 Yes)、車両挙動制御部6を作動状態にする(S5)の例を用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。作動状態制御部9は、車両Cが所定速度V1以上となった場合、車両挙動制御部6を作動状態にしてもよい。また、作動状態制御部9は、速度Vとは関係なく、所定時間経過後に車両挙動制御部6を作動状態にしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1:制御装置,4:牽引判断部,6:車両挙動制御部,9:作動状態制御部
10:走行モード選択スイッチ(選択操作部),12:非作動切替スイッチ(切替操作部)
16:報知部(報知手段),18:車輪速センサ(車速検知部)
C:車両,T1:所定時間,V:速度,V1:所定速度
図1
図2
図3