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  • 特開-撹拌用回転体及び液体処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039199
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】撹拌用回転体及び液体処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 27/96 20220101AFI20220303BHJP
   B01F 23/40 20220101ALI20220303BHJP
   B01F 25/10 20220101ALI20220303BHJP
   B01F 25/21 20220101ALI20220303BHJP
【FI】
B01F7/32 A
B01F3/08 Z
B01F5/00 G
B01F5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144104
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】596052005
【氏名又は名称】株式会社カナイワ
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】普輪崎 賢彦
【テーマコード(参考)】
4G035
4G078
【Fターム(参考)】
4G035AB37
4G035AB38
4G035AC15
4G035AC44
4G078AA01
4G078BA05
4G078CA08
4G078DA30
4G078DC06
4G078EA10
(57)【要約】
【課題】 撹拌効率を向上した撹拌用回転体と、この撹拌用回転体を使用する液体処理装置を提供する。
【解決手段】 本発明の撹拌用回転体1は、回転軸2に垂直な断面が円形又は多角形の本体部10を備えており、本体部がその下面から側面にまで及ぶ複数のスリット20と、複数のスリットの間に位置する複数の柱状部30を備えており、スリットの下面が被処理液体の吸入口21、側面が被処理液体の吐出口22、吸入口と吐出口とを繋ぐ空間が被処理液体の流通路23となり、流通路の上面23aが回転軸を中心とした半径方向の内側から外側に向かって上方に傾斜している。流通路内の被処理液体は遠心力を受けて水平方向だけでなく流通路の上面に沿って斜め上方にも噴出する。被処理液体が斜め上方に噴出することで撹拌炉内で上下方向に縦回転する流れが形成され易くなるので撹拌効率を向上させることができる。更に柱状部に貫通穴を設けることでより複雑な循環流を形成できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に垂直な断面が円形又は多角形の本体部を備えており、
前記本体部がその下面から側面にまで及ぶ複数のスリットと、前記複数のスリットの間に位置する複数の柱状部を備えており、
前記スリットの下面が被処理液体の吸入口、側面が前記被処理液体の吐出口、前記吸入口と前記吐出口とを繋ぐ空間が前記被処理液体の流通路となり、
前記流通路の上面が前記回転軸を中心とした半径方向の内側から外側に向かって上方に傾斜していることを特徴とする撹拌用回転体。
【請求項2】
前記柱状部がその下面から上面にまで及ぶ貫通穴を備えることを特徴とする請求項1に記載の撹拌用回転体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の撹拌用回転体を備えることを特徴とする液体処理装置。
【請求項4】
上下が開口した円形又は多角形の仕切部材を前記撹拌用回転体の下方に備えることを特徴とする請求項3に記載の液体処理装置。
【請求項5】
前記被処理液体が投入される第1撹拌槽と、前記第1撹拌槽と繋がっており前記撹拌用回転体を収容する第2撹拌槽とを備えており、
前記被処理液体は前記第1撹拌槽内で縦回転することにより撹拌され、次に前記第2撹拌槽内で前記撹拌用回転体により撹拌されることを特徴とする請求項3又は4に記載の液体処理装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を効率よく撹拌できる撹拌用回転体と、この撹拌用回転体を使用する液体処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2種類以上の液体を混合したり、液体と処理剤とを均一に分散させたりする目的で撹拌用回転体が使用される。特許文献1には回転軸に垂直な断面が円形状の本体と、本体の表面に設けられる吸入口及び吐出口と、吸入口と吐出口を繋ぐ流通路を備えており、吸入口を回転軸に近い位置に配置し、吐出口を回転軸から離れた位置に配置した攪拌用回転体が開示されている。この撹拌用回転体によればプロペラ翼と比較して安全に高効率で撹拌することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4418019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の撹拌用回転体は遠心力を利用して本体の半径方向外側(回転軸に直交する方向)に向けて吐出口から液体を噴出して撹拌槽内を撹拌する仕組みであり、必ずしも撹拌が充分とはいえなかった。
【0005】
本発明は、上記のような問題を考慮して、撹拌効率を向上した撹拌用回転体と、この撹拌用回転体を使用する液体処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撹拌用回転体は、回転軸に垂直な断面が円形又は多角形の本体部を備えており、前記本体部がその下面から側面にまで及ぶ複数のスリットと、前記複数のスリットの間に位置する複数の柱状部を備えており、前記スリットの下面が被処理液体の吸入口、側面が前記被処理液体の吐出口、前記吸入口と前記吐出口とを繋ぐ空間が前記被処理液体の流通路となり、前記流通路の上面が前記回転軸を中心とした半径方向の内側から外側に向かって上方に傾斜していることを特徴とする。
また、前記柱状部がその下面から上面にまで及ぶ貫通穴を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の液体処理装置は、上記撹拌用回転体を備えることを特徴とする。
また、上下が開口した円形又は多角形の仕切部材を前記撹拌用回転体の下方に備えることを特徴とする。
また、前記被処理液体が投入される第1撹拌槽と、前記第1撹拌槽と繋がっており前記撹拌用回転体を収容する第2撹拌槽とを備えており、前記被処理液体は前記第1撹拌槽内で縦回転することにより撹拌され、次に前記第2撹拌槽内で前記撹拌用回転体により撹拌されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の撹拌用回転体は流通路の上面が回転軸を中心とした半径方向の内側から外側に向かって上方に傾斜している。流通路内の被処理液体は遠心力を受けて水平方向だけでなく流通路の上面に沿って斜め上方にも噴出する。被処理液体が斜め上方に噴出することで撹拌炉内で上下方向に縦回転する流れが形成され易くなるので複雑な循環流を形成して撹拌効率を向上させることができる。
更に柱状部に貫通穴を設けることにすれば、下方から上方に移動する被処理液体の一部が貫通穴を通過して柱状部の上面から外部に噴出する。これにより被処理液体を水平方向、斜め上方向及び鉛直方向の3方向に噴出することができ、これら3方向の被処理液体が撹拌槽内で衝突するのでより複雑な循環流を形成することができる
仕切部材を撹拌用回転体の下方に配置すると、仕切部材の内部では被処理液体の流れが抑制され、撹拌槽の底部の被処理液体を撹拌用回転体の吸入口からスムーズに流通路内に吸引することができ、吐出口から噴出する被処理液体の勢いを高めることができる。
被処理液体を第1撹拌槽において縦回転で撹拌し、第2撹拌槽において撹拌用回転体で撹拌することにすれば被処理液体と処理剤とを充分に反応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態の撹拌用回転体の斜視図(a)、平面図(b)及び底面図(c)
図2】撹拌用回転体のA-A線矢視図(a)及びB-B線矢視図(b)
図3】撹拌用回転体を回転させた際の被処理液体の流れを示す断面図(a),(b)及び平面図(c)
図4】撹拌用回転体の変形例を示す斜視図(a)、平面図(b)及び底面図(c)
図5】第2の実施の形態の撹拌用回転体の斜視図
図6】液体処理装置を駆動させた際の第1撹拌槽周辺の被処理液体の流れを模式的に示す断面図(a)、同じく第2撹拌槽周辺の断面図(b)及び平面図(c)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[撹拌用回転体の第1の実施の形態]
本発明の撹拌用回転体の第1の実施の形態について説明する。
図1及び図2に示すように撹拌用回転体1は本体部10を備えており、鉛直方向にのびる回転軸2に本体部10が取り付けられている。
本体部10は回転軸2に垂直な断面が円形であり、外形は円柱形状である。本体部10の材料は特に限定されず、樹脂や金属を用いることができる。
【0011】
本体部10はスリット20と柱状部30を備える。
スリット20は本体部10の下面から側面にまで及んでいる。本実施の形態では平面視した場合に回転軸2を中心とした等角度間隔で6つのスリット20が形成されている。
スリット20の下面は被処理液体の吸入口21であり、側面が被処理液体の吐出口22であり、吸入口21と吐出口22とを繋ぐ空間が被処理液体の流通路23となる。
流通路23の上面23aは回転軸2を中心とした半径方向の内側から外側に向かって上方に傾斜している。
【0012】
柱状部30は周方向に隣り合うスリット20の間に位置する部位である。本実施の形態のスリット20は回転軸2に垂直な断面が扇形の柱体である。平面視した場合に回転軸2を中心とした等角度間隔で6つの柱状部30が形成されている。各柱状部30はその上部が相互に連結されている。換言すると、円柱形の本体部10に対してスリット20を形成した残りの部位が柱状部30となる。
柱状部30はその下面から上面にまで及ぶ貫通穴31を備えている。
【0013】
次に撹拌用回転体1を回転させた場合の被処理液体の流れについて説明する。
被処理液体としては例えば排水、河川水、地下水等の水、飲料等が挙げられるがこれらに限定されない。
図3に示すように撹拌槽3内に被処理液体を入れた状態で撹拌用回転体1を入れると流通路23の内部が被処理液体で満たされる。この状態から回転軸2を駆動させて撹拌用回転体1を回転させると流通路23内の被処理液体は遠心力を受けて半径方向外側に向けて移動する。流通路23の上面23aは半径方向の外側に向かって上方に傾斜しているので、流通路23内の被処理液体は吐出口22から水平方向(左右方向)に噴出する(矢印A)だけでなく、流通路23の上面23aに沿って斜め上方にも噴出する(矢印B)。流通炉内の被処理液体が吐出口22から外部に噴出するのと同時に吸入口21から流通炉の内部に被処理液体が吸引(矢印C)される。
【0014】
回転中の撹拌用回転体1の吐出口22から被処理液体が外部に噴出されることで、撹拌槽3の内部には図3(c)に示すように平面視した場合に回転軸2を中心とした円周方向の流れが形成されるだけでなく、図3(a)及び(b)に示すように上下方向に縦回転する流れも形成される。更に、下方から上方に移動する被処理液体の一部は柱状部30の下面から貫通穴31を通過して上面から外部に噴出される(矢印D)。
このように本実施の形態の撹拌用回転体1では被処理液体が水平方向(矢印A)、斜め上方向(矢印B)、鉛直方向(矢印D)の3方向に噴出され、これら3方向の被処理液体が撹拌槽3内で衝突するので複雑な循環流を形成することができ、撹拌効率を大幅に向上させることができる。
なお、本体部10に形成するスリット20及び柱状部30の数は適宜変更可能であり、例えば図4(a)に示すように8つのスリット20と8つの柱状部30を形成することにしてもよい。
また、図4(b)及び(c)に示すように本体部10の回転軸2に垂直な断面を多角形にしてもよい。
【0015】
[撹拌用回転体の第2の実施の形態]
本発明の撹拌用回転体の第2の実施の形態について説明するが、上記第1の実施の形態と同一の構成になる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
図5に示すように本実施の形態の撹拌用回転体4は柱状部30が貫通穴31を備えない点に特徴を有する。
貫通穴31を備えない替わりに流通路23の上面23aの傾斜角を急にすることで、被処理液体を鉛直方向に近い角度で上方に噴出することができる。また、貫通穴31を形成する手間を省くことができる。
【0016】
[液体処理装置100の実施の形態]
本発明の液体処理装置100の実施の形態について説明する。
図6に示すように液体処理装置100は貯水槽101、処理剤投入部102、被処理液体投入部103、第1撹拌槽104、凝集剤投入部105、第2撹拌槽106、撹拌用回転体200、濾過槽108、沈殿物除去部109及び被処理液体排出部110から概略構成される。なお、図6(c)では沈殿物除去部109の図示を省略している。
【0017】
貯水槽101に貯められた被処理液体は処理剤投入部102で処理剤を投入される。なお、貯水槽101からではなく直接河川水等をポンプでくみ上げることにしてもよい。処理剤の種類は被処理液体の種類に応じて適宜変更すればよい。
処理剤を投入された被処理液体は被処理液体投入部103から第1撹拌槽104内に投入される。図6(a)に示すように直方体形状の第1撹拌槽104の前方の上部に向かって被処理液体が噴出するように被処理液体投入部103の位置及び向きを調節しておくと共に、第1撹拌槽104の内部の角部に誘導板111を配置することで、被処理液体は第1撹拌槽104の内部で縦回転して撹拌される。
【0018】
第1撹拌槽104の上方に設置した凝集剤投入部105から凝集剤112を投入することで、添加剤によって析出された沈殿物を第1撹拌槽104の底面に凝集させることができる。
第1撹拌槽104の左右の側面を構成する板には多数の貫通穴が形成されており、被処理液体の一部は左右2つの第2撹拌槽106に移動する。第1撹拌槽104の左右の側面を形成する板の位置は左右方向に移動可能になっており、被処理液体の投入量に応じて調節できるようになっている。
第2撹拌槽106では撹拌用回転体200によって被処理液体が水平方向、斜め上方向及び鉛直方向の3方向に噴出され、相互に衝突するので複雑な循環流によって撹拌が促進され被処理液体と処理剤とを充分に反応させることができる。第2撹拌槽106の内部に邪魔板113を配置することで更に流れを複雑にして撹拌効率を高めることにしてもよい。沈殿物は第2撹拌槽106の底面にも凝集する。
【0019】
撹拌用回転体200の下方に、上下が開口した円形又は多角形の仕切部材114を配置している。仕切部材114の内部では被処理液体の流れが抑制されるので、第2撹拌槽106の底部の被処理液体を撹拌用回転体1の吸入口21からスムーズに流通路23内に吸引することができ、吐出口22から噴出する被処理液体の勢いを高めることができる。
また、第2撹拌槽106の内部にマイクロバブル発生機115を設置しており、外部の空気をマイクロバブル化して供給することで混濁物のフロック化を促進できる。
被処理液体は第1撹拌槽104及び第2撹拌槽106の下部から貯留槽107に至り、貯留槽107をオーバーフローして濾過槽108に移動する。被処理液体は下流の被処理液体排出部110から外部に放出される。
第1撹拌槽104、第2撹拌槽106、貯留槽107及び濾過槽108の底面に堆積した沈殿物は適当なタイミングで沈殿物除去部109から外部に取り出される。
なお、本実施の形態の液体処理装置100の構成は一例に過ぎず、被処理液体の種類や設置場所の環境等に応じて適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、撹拌効率を向上した撹拌用回転体と、この撹拌用回転体を使用する液体処理装置であり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0021】
1 撹拌用回転体
2 回転軸
3 撹拌槽
4 撹拌用回転体
10 本体部
20 スリット
21 吸入口
22 吐出口
23 流通路
23a 上面
30 柱状部
31 貫通穴
100 液体処理装置
101 貯水槽
102 処理剤投入部
103 被処理液体投入部
104 第1撹拌槽
105 凝集剤投入部
106 第2撹拌槽
107 貯留槽
108 濾過槽
109 沈殿物除去部
110 被処理液体排出部
111 誘導板
112 凝集剤
113 邪魔板
114 仕切部材
115 マイクロバブル発生機
200 撹拌用回転体



図1
図2
図3
図4
図5
図6