(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039214
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】泡消火設備
(51)【国際特許分類】
A62C 5/02 20060101AFI20220303BHJP
A62C 35/02 20060101ALI20220303BHJP
F16K 11/044 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
A62C5/02 B
A62C35/02 B
F16K11/044 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144131
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000111074
【氏名又は名称】ニッタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】牧野 徹
(72)【発明者】
【氏名】入江 健一
【テーマコード(参考)】
2E189
3H067
【Fターム(参考)】
2E189MA05
3H067AA02
3H067CC32
3H067DD02
3H067DD12
3H067DD33
3H067EA02
3H067ED15
3H067FF17
3H067GG13
3H067GG21
(57)【要約】
【課題】広範囲の流量に対して希釈消火剤の濃度を一定に保つことができる混合装置を備えた泡消火設備を提供する。
【解決手段】エリア内の各区画に配設された複数の泡放出ヘッドと、送水用ポンプと、流入した水に対して泡消火剤を混合させて所定の濃度に希釈して送出する第1の混合器および第2の混合器と、1つの流入口と2つの吐出口を有し流入口より流入した水の流路を切替え可能な三方切替え弁と、泡消火剤を貯留し第1の混合器および第2の混合器へ泡消火剤を供給可能な泡消火剤貯留タンクとを備えた泡消火設備において、第1の混合器は第2の混合器よりも多くの希釈泡消火剤を流出可能に構成され、三方切替え弁の一方の吐出口は他方の吐出口よりも断面積が大きく設定され、一方の吐出口には第1の混合器が接続され、他方の吐出口には前記第2の混合器が接続されているようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリア内の各区画に配設された複数の泡放出ヘッドと、
送水用ポンプと、
流入した水に対して泡消火剤を混合させて所定の濃度に希釈して送出する第1の混合器および第2の混合器と、
1つの流入口と2つの吐出口を有し、前記流入口より流入した水の流路を切替え可能な三方切替え弁と、
泡消火剤を貯留し、前記第1の混合器および第2の混合器へ泡消火剤を供給可能な泡消火剤貯留タンクと、
前記送水用ポンプと第1の混合器および第2の混合器との間に設けられた第1の配管と、
前記第1の混合器および第2の混合器と前記泡放出ヘッドとの間に設けられた第2の配管と、を備えた泡消火設備であって、
前記第1の混合器は前記第2の混合器よりも多くの希釈泡消火剤を流出可能に構成され、前記三方切替え弁の一方の吐出口は他方の吐出口よりも断面積が大きく設定され、前記一方の吐出口には前記第1の混合器が接続され、前記他方の吐出口には前記第2の混合器が接続されていることを特徴とする泡消火設備。
【請求項2】
前記三方切替え弁は、
前記1つの流入口と前記2つの吐出口を有するシリンダと、
前記流入口より流入した水が流入可能な空間を有し前記シリンダの内部に軸方向移動可能に収納されたピストンと、
前記一方の吐出口と前記ピストンの前記空間との間を連通する流通路を有し、前記一方の吐出口に対応する側に設けられた第1オリフィス板と、
前記一方の吐出口と前記ピストンの前記空間との間を連通する流通路を有し、前記他方の吐出口に対応する側に設けられた第2オリフィス板と、
前記ピストンを前記一方の吐出口の側へ付勢する付勢手段と、
を備え、前記第2オリフィス板の前記流通路は前記第1オリフィス板の前記流通路よりも流路抵抗が大きくなるよう設定されていることを特徴とする請求項1記載の泡消火設備。
【請求項3】
前記第1の混合器の流量範囲と前記第2の混合器の流量範囲は、一部が重なるように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の泡消火設備。
【請求項4】
前記第1の混合器の流量範囲における最小流量と最大流量との比は、前記第1の混合器の流量範囲における最小流量と最大流量との比と同一であることを特徴とする請求項3に記載の泡消火設備。
【請求項5】
前記泡放出ヘッドは、閉鎖型のヘッドであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の泡消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡消火剤を使用した泡消火設備に関し、特に消火剤流量調整器を有する混合装置を用いた泡消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
泡消火設備においては、消火剤に水を混合して希釈する消火剤混合装置が設けられており、小流量から大流量まで広範囲の流量に対して消火剤濃度を一定に保つ必要がある。そこで、消火剤を送る配管途中に流量検出器を設置して流量情報を取得し、取得した流量情報を制御器に渡し、制御器が流量情報に応じて配管途中の電磁弁制御し、自動開放弁を作動させ、小流量、中流量、大流量毎に泡原液を流水に混合する混合器を切り替えるようにした発明が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64-11570号公報
【特許文献2】特開2006-296918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている発明は、電気的な制御系が必要であるためシステムが複雑になり、コストアップを招くという課題点がある。
【0005】
そこで、消火を行う放出口へ送水される流水に対して消火剤貯蔵タンクから消火剤原液を供給して混合させる消火剤混合装置の消火剤原液の混合濃度を調節する消火剤流量調整器に、上流側に位置する消火剤原液の流路よりも狭小に形成された縮径部と、消火剤原液の供給流量に応じて縮径部の縮径率を可変調節する可変手段とを設けて、泡原液の流量を制御することで、広範囲の流量に対して消火剤濃度を一定にできるようにした発明も提案されている(特許文献2)。
しかし、特許文献2に記載されている消火剤混合装置は、消火剤濃度を一定にする能力が充分でないという課題があった。
【0006】
本発明は上記のような課題に着目してなされたものでその目的とするところは、広範囲の流量に対して希釈消火剤の濃度を一定に保つことができる混合装置を備えた泡消火設備を提供することにある。
本発明の他の目的は、消火剤を送る主管から分岐された分岐管が配設される区画ごとに泡放出ヘッドの設置数が異なっていても、各ヘッドから一定濃度の希釈消火剤を放出させることができる泡消火設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は、
エリア内の各区画に配設された複数の泡放出ヘッドと、
送水用ポンプと、
流入した水に対して泡消火剤を混合させて所定の濃度に希釈して送出する第1の混合器および第2の混合器と、
1つの流入口と2つの吐出口を有し、前記流入口より流入した水の流路を切替え可能な三方切替え弁と、
泡消火剤を貯留し、前記第1の混合器および第2の混合器へ泡消火剤を供給可能な泡消火剤貯留タンクと、
前記送水用ポンプと第1の混合器および第2の混合器との間に設けられた第1の配管と、
前記第1の混合器および第2の混合器と前記泡放出ヘッドとの間に設けられた第2の配管と、を備えた泡消火設備において、
前記第1の混合器は前記第2の混合器よりも多くの希釈泡消火剤を流出可能に構成され、前記三方切替え弁の一方の吐出口は他方の吐出口よりも断面積が大きく設定され、前記一方の吐出口には前記第1の混合器が接続され、前記他方の吐出口には前記第2の混合器が接続されているように構成したものである。
【0008】
上記のような構成を有する泡消火設備によれば、1つの流入口と断面積の異なる2つの吐出口を有する三方切替え弁が、流入口と吐出口との差圧によって自動的に流路を切り替えるように動作することができる。そして、三方切替え弁の流入口により水を流入させて、互いに異なる流出量を有する2つの混合器のいずれかに流路を切り替えて供給することによって、混合器において泡消火剤と水を混合して所定の濃度に希釈させて流出させることができるため、濃度を一定に保つことができ使用可能な流量範囲の大きな混合装置を実現することができる。
【0009】
また、それによって、消火剤を送る主管から分岐された分岐管が配設される区画ごとに泡放出ヘッド(フォームヘッド)の設置数が異なっていても、各ヘッドから一定濃度の希釈消火剤を放出させることができるようになる。
【0010】
ここで、望ましくは、前記三方切替え弁は、
前記1つの流入口と前記2つの吐出口を有するシリンダと、
前記流入口より流入した水が流入可能な空間を有し前記シリンダの内部に軸方向移動可能に収納されたピストンと、
前記一方の吐出口と前記ピストンの前記空間との間を連通する流通路を有し、前記一方の吐出口に対応する側に設けられた第1オリフィス板と、
前記一方の吐出口と前記ピストンの前記空間との間を連通する流通路を有し、前記他方の吐出口に対応する側に設けられた第2オリフィス板と、
前記ピストンを前記一方の吐出口の側へ付勢する付勢手段と、
を備え、前記第2オリフィス板の前記流通路は前記第1オリフィス板の前記流通路よりも流路抵抗が大きくなるよう設定されているようにする。
かかる構成によれば、比較的シンプルな構成で、流入口と吐出口との差圧によって自動的に流路を切り替えるように動作する三方切替え弁を実現することができるため、コストアップを抑制することができる。
【0011】
また、望ましくは、前記第1の混合器の流量範囲と前記第2の混合器の流量範囲は、一部が重なるように設定されているように構成する。
かかる構成によれば、放出作動するヘッドの数が変わることで、流量が広範囲にわたって連続的に変化したとしても、2つの混合器により一定濃度に希釈された泡消火剤をヘッドへ供給することができる。
【0012】
さらに、望ましくは、前記第1の混合器の流量範囲における最小流量と最大流量との比は、前記第1の混合器の流量範囲における最小流量と最大流量との比と同一であるように構成する。
かかる構成によれば、小流量に対応した混合器と大流量に対応した混合器を設計する際に、一方の混合器を設計すれば、他方の混合器は寸法を比例縮小または比例拡大するだけで簡単に設計することができる。
【0013】
また、望ましくは、前記泡放出ヘッドは、閉鎖型のヘッドであるようにする。
閉鎖型のフォームヘッドを使用した泡消火設備においては、解放のフォームヘッドを使用した泡消火設備に比べて頻繁に作動するヘッドの数が変わる(増加する)ため、流量が広範囲にわたって連続的に変化したとしても一定濃度に希釈された泡消火剤をヘッドへ供給することができる本発明の泡消火設備は、閉鎖型のフォームヘッドを使用したシステムに適用すると極めて有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の泡消火設備によれば、広範囲の流量に対して希釈消火剤の濃度を一定に保つことができ混合装置を実現することができる。また、消火剤を送る主管から分岐された分岐管が配設される区画ごとに泡放出ヘッドの設置数が異なっていても、各ヘッドから一定濃度の希釈消火剤を放出させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の泡消火設備に使用される消火剤混合装置を構成する三方切替え弁の実施形態を示す中央断面図で、(A)は消火水の流量が小さな状態を示し、(B)は消火水の流量が大きな状態を示す。
【
図2】実施形態の混合装置全体の使用可能な流量範囲に対する、小流量に対応した混合器の流量範囲と大流量に対応した混合器の流量範囲の関係を示す図である。
【
図3】実施形態の三方切替え弁を、閉鎖型フォームヘッドを備えた泡消火設備に適用した場合の構成例を示すシステム構成図である。
【
図4】実施形態の三方切替え弁を、開放型フォームヘッドを備えた泡消火設備に適用した場合の構成例を示すシステム構成図である。
【
図5】切替え弁と混合器とからなる消火剤混合装置を備えた泡消火設備の他の例を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る泡消火設備の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る泡消火設備を構成する三方切替え弁の断面構造を示すもので、(A)には三方切替え弁への流入量が小さな状態が示され、(B)には三方切替え弁への流入量が大きな状態が示されている。
図1に示すように、本実施例の三方切替え弁10は、有底円筒状をなす弁本体としてのシリンダ11と、該シリンダ11の開口側(図では右側)の端部を閉塞するプラグ12と、シリンダ11の内部に軸方向に移動可能に配設されたピストン14と、該ピストン14を一方(図では右方)の側へ付勢する圧縮バネ15と、を備えている。シリンダ11は円筒状に限定されるものでなく、角筒状であっても良い。
【0017】
シリンダ11の開口側端部の内周面には雌ネジが形成されており、プラグ12の外周面に形成された雄ネジをシリンダ11の内周面の雌ネジに螺合させることで、シリンダ11の開口側端部にプラグ12が結合されている。
また、シリンダ11の外周壁の、上記オリフィス板16Aと16Bに挟まれた空間に対応する部位に流入口11aが形成されている。また、プラグ12には小流量側吐出口13Aが形成され、シリンダ11の底壁には上記小流量側吐出口13Aよりも径の大きな大流量側吐出口13Bが形成されている。
【0018】
一方、ピストン14の両端には、円形のオリフィス板16A,16Bが一体に設けられており、プラグ12に近い側のオリフィス板16Aとプラグ12との間に上記圧縮バネ15が介挿されている。なお、シリンダ11の外周面とプラグ12の内周面との間にはOリング17が介挿され、シリンダ11とプラグ12との間の水密性が保たれている。
【0019】
さらに、上記オリフィス板16Aと16Bにはそれぞれ1個または複数の開口16aと16bがそれぞれ形成されており、開口16aの総断面積は開口16bの総断面積よりも小さくなるように設定されている。また、オリフィス板16Aは16Bよりも厚みが厚くなるように形成され、開口16aの長さは開口16bの長さよりも長くなっている。これにより、開口16aの流路抵抗は開口16bの流路抵抗よりも大きくなる。
上記オリフィス板16Aと16Bの開口16aと16bは、吐出口13Aと13Bの外側すなわちプラグ12の内面とシリンダ11の底壁の内面に対向する位置にそれぞれ形成されている。
【0020】
本実施例の三方切替え弁10においては、シリンダ11の外周壁の流入口11aより流入される液体の圧力が圧縮バネ15の圧縮力よりも小さいときは、
図1(A)に示すように、ピストン14が右方へ移動されてオリフィス板16Bがシリンダ11の底壁に接触して開口16bが閉塞される。これにより、流入口11aよりシリンダ11内に流入した液体は、オリフィス板16Aの開口16aを通って小流量側吐出口12Aより流出する。
【0021】
一方、流入口11aより流入される液体の圧力が圧縮バネ15の圧縮力よりも大きいときは、
図1(B)に示すように、ピストン14が左方へ移動されてオリフィス板16Aがプラグ12の内面に接触して開口16aが閉塞される。これにより、流入口11aよりシリンダ11内に流入した液体は、オリフィス板16Bの開口16bを通って大流量側吐出口13Bより流出する。なお、流入口11aと吐出口13Aおよび13Bの内周面には、配管の端部を螺合するための雌ネジが形成されている。
【0022】
本実施形態においては、
図2に示すように、三方切替え弁10と混合器を使用した混合装置全体の使用可能な流量範囲が30~600L/min(リットル/分)の場合、三方切替え弁10の小流量側吐出口13Aには、小流量に対応して例えば流量範囲30~180L/minの混合器が接続され、大流量側吐出口13Bには、大流量に対応して例えば流量範囲100~600L/minの混合器が接続される。そして、小流量に対応した混合器の流量範囲と大流量に対応した混合器の流量範囲とが重なるように設定されることで、連続した流量変化に対応できるとともに、シリンダの径やピストン14のストローク量が適切に設定されることで、オリフィス板16Aと16Bが吐出口13Aと13Bの両方から離れるような位置にピストン14が移動した状態でも、所望の流量が得られる。
【0023】
また、本実施形態においては、小流量に対応した混合器の流量範囲における最小流量と最大流量の比と、大流量に対応した混合器の流量範囲における最小流量と最大流量の比は、共に6倍に設定されている。したがって、小流量に対応した混合器と大流量に対応した混合器を設計する際に、一方の混合器を設計すれば、他方の混合器は寸法を比例縮小または比例拡大するだけで簡単に設計することができる。
【0024】
図3には、上記実施例の三方切替え弁10を使用した閉鎖型の泡消火設備の構成例が示されている。
図3に示す泡消火設備は、水を送るポンプ101と、泡消火剤を貯蔵するタンク102と、ポンプ101で送られてきた水とタンク102から供給される泡消火剤とを混合して希釈する混合器103A,103Bと、混合器103A,103Bの上流側に設けられた上述の三方切替え弁10と、ポンプ101と混合器103A,103Bとの間に接続された送水用の主配管104と主配管104から分岐されて泡消火剤貯蔵タンク102に接続された加圧水側配管105と、泡消火剤貯蔵タンク102と三方切替え弁10との間に接続された消火剤側配管106を備える。
【0025】
上記混合器103A,103Bは例えばベンチュリー型のものが使用され、そのうち一方(103A)は小流量用混合器とされ、他方(103B)は大流量用混合器とされる。
泡消火剤貯蔵タンク102は、その内部が隔膜によって加圧水領域と消火剤領域とに隔てられており、主配管104は三方切替え弁の入口側にて加圧水側配管105を経て泡消火剤貯蔵タンク102の加圧水領域に接続され、泡消火剤貯蔵タンク102の消火剤領域は消火剤側配管106を経て混合器103A,103Bの絞り部に接続されている。
主配管104の途中には、逆止弁107、フレキ管108、仕切弁109等が設けられている。また、加圧水側配管105と消火剤側配管106の途中にも逆止弁や仕切弁が設けられている。
【0026】
上記混合器103A,103Bの泡消火剤流出側は、混合器103A,103Bで希釈された泡消火剤を送出する主送出配管111を経て、各区画に配設されそれぞれ複数の閉鎖型フォームヘッド112を有する分岐管113A,113Bに接続されている。主送出配管111の途中には、制御弁114や流水検知器115が設けられている。
閉鎖型フォームヘッド112は、平常時は出口が閉鎖されており、所定の温度に達すると感熱部が作動することによって出口が開放することで泡消火剤を放出する。
【0027】
次に、上記閉鎖型の泡消火設備における三方切替え弁10と混合器103A,103Bとからなる泡消火剤混合装置の動作を説明する。
通常時、三方切替え弁10は流入口11aより流入される液体の圧力が低いため、ピストン14が圧縮バネ15のバネ復元力より大流量側吐出口13Bへ押し付けられ、大流量側吐出口13Bはオリフィス板16Bにより閉塞されている。
閉鎖型フォームヘッド112の作動により流水が発生した場合、流水検知器115により検知されてポンプ101が起動されて、送出された消火水は三方切替え弁10の流入口12aへ流入する。
【0028】
ここで、作動したヘッドの数が少なくて流量が少ない場合、ピストン14が圧縮バネ15によって引き続き大流量側に押し付けられる。それにより、三方切替え弁10へ流入した消火水は、ピストン14の小流量側のオリフィス板16Aの開口16aを経由し小流量側吐出口13Aから流出し、小流量に対応した混合器103A(流量範囲30~180L/min)で泡消火剤と混合され、適正な混合濃度を有する希釈泡消火剤として、主送出配管111と分岐管113A,113Bを経て、各区画に配設された閉鎖型フォームヘッド112へ供給されて放出される。
【0029】
一方、複数の閉鎖型フォームヘッド112の作動により流量が増加し、三方切替え弁10は流入口11aより流入される消火水の圧力が高くなって圧縮バネ15のバネ復元カに勝った場合、ピストン14は小流量側に移動し、オリフィス板16Aによって小流量側吐出口13Aが閉塞され、大流量側のオリフィス板16Bの開口16bを経由し大流量側吐出口13Bから消火水が流出する。それにより、小流量に対応した混合器103Aでの希釈混合が停止され、大流量に対応した混合器103B(流量範囲100~ 600L/min)による泡消火剤の希釈混合が開始され、適正な混合濃度を有する希釈泡消火剤として閉鎖型フォームヘッド112へ供給されて放出される。
【0030】
上記のように、本実施形態の三方切替え弁10と混合器103A,103Bとからなる泡消火剤混合装置は、広流量範囲(最小・最大流量比20倍)で適正な希釈混合濃度を得ることができる。その結果、火災範囲が広がって作動する泡放出ヘッドの数が徐々に増加したり、泡消火剤を放出する区画が増加したりしても、各ヘッド112から一定濃度の希釈消火剤を放出させることができる。
なお、消火後、制御弁等の開上により泡消火剤の供給が停止され、三方切替え弁10の流入口11aより流入される消火水の圧力が下がると、ピストン14は再び圧縮バネ15のバネ復元カにより大流量側に押し付けられた状態に復帰することとなる。
【0031】
図4には、上記実施例の三方切替え弁10と混合器を使用した閉鎖型でない通常の泡消火設備の構成例が示されている。
図4に示す泡消火設備は、
図3に示す閉鎖型泡消火設備とほぼ同様な構成を有する。
図4に示す泡消火設備と
図3に示す閉鎖型泡消火設備との差異は、
図4の泡消火設備水では、各区画に配設されている分岐管113A,113Bに、それぞれ閉鎖型でない開放型フォームヘッド116がそれぞれ接続されている。また、各区画には、火災感知機能を有する複数の感知ヘッド117が配設されているとともに、分岐管113A,113Bの始端側には一斉開放弁118が設けられている点にある。
そして、感知ヘッド117は配管119を介して一斉開放弁118に接続されており、感知ヘッド117が火災を感知すると対応する区画の一斉開放弁118が開かれて、泡消火剤がフォームヘッド116から放出される。
【0032】
なお、一斉開放弁118が開かれた後における三方切替え弁10と混合器103A,103Bとからなる泡消火剤混合装置の動作は、
図3に示す閉鎖型泡消火設備の場合と同じであり、設置されているフォームヘッド116の数が少ない区画で火災が発生した場合には、流量が少ないため、ピストン14が圧縮バネ15によって大流量側に押し付けられる。それにより、三方切替え弁10へ流入した消火水は、小流量側吐出口13Aから流出して小流量に対応した混合器103Aで泡消火剤と混合されて希釈され、適正な混合濃度を有する希釈泡消火剤としてフォームヘッド116へ供給されて放出されることとなる。
【0033】
また、設置されているフォームヘッド116の数が多い区画で火災が発生した場合には、流量が多いため、ピストン14が圧縮バネ15に抗して小流量側に押し付けられ、三方切替え弁10へ流入した消火水は、大流量側吐出口13Bから流出して大流量に対応した混合器103Bで泡消火剤と混合されて希釈され、適正な混合濃度を有する希釈泡消火剤としてフォームヘッド116へ供給されて放出される。
【0034】
上記のように、本実施形態の三方切替え弁10と混合器103A,103Bとからなる泡消火剤混合装置は、閉鎖型でない通常の泡消火設備においても、広流量範囲で適正な希釈混合濃度を得ることができる。その結果、消火剤を送る主管から分岐された分岐管が配設される区画ごとに泡放出ヘッドの設置数が異なっていても、各ヘッドから一定濃度の希釈消火剤を放出させることができる。
また、三方切替え弁10は簡素な構成であるとともに、電磁弁を使用しないため、泡消火設備のコストダウンが可能である。
さらに、特許文献1の様に、3種類(小流量、中流量、大流量)の混合器を使用する場合は、それぞれの流量に適合させた前記三方弁切替え弁10を2つを用意して、
図5に示すようにカスケード接続して用いることで3種類(小流量、中流量、大流量)の流量(混合器)に対応することもできる。
【0035】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、泡消火剤貯蔵タンク102は送水用ポンプ101より送出された水の圧力を受けて泡消火剤を混合器103A,103Bへ供給するように構成されていると説明したが、ポンプの送水圧に応じて泡消火剤を供給できるものであれば良い。
【0036】
また、上記実施形態では、オリフィス板16Aと16Bの開口16aと16bは、吐出口13Aと13Bの外側すなわちプラグ12の内面とシリンダ11の底壁の内面に対向する位置にそれぞれ形成されていると説明したが、オリフィス板16Aの開口16aと16Bの開口16bの一部が、吐出口13Aと13Bの一部と重なっていても良い。
さらに、
図3および
図4では、入り口側と出口側の差圧を利用して自動的に流路が切り替わる
図1の三方切替え弁を使用したが、各吐出口の流量が異なるように構成されたものであれば電磁弁を使用するようにしても良い。
【符号の説明】
【0037】
10 三方切替え弁
11 シリンダ
12 プラグ
13A 小流量側吐出口
13B 大流量側吐出口
14 ピストン
15 圧縮バネ
16A,16B オリフィス板
101 ポンプ
102 泡消火剤貯蔵タンク
103A,103B 混合器
112 閉鎖型フォームヘッド(泡放出ヘッド)
115 流水検知器
116 開放型フォームヘッド(泡放出ヘッド)
117 感知ヘッド
118 一斉開放弁