IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人滋賀医科大学の特許一覧

<>
  • 特開-ミトコンドリアフェリチン発現誘導剤 図1
  • 特開-ミトコンドリアフェリチン発現誘導剤 図2
  • 特開-ミトコンドリアフェリチン発現誘導剤 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039302
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】ミトコンドリアフェリチン発現誘導剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/12 20060101AFI20220303BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 31/222 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
A61K31/12
A61K31/192
A61K31/222
A61P35/00
A61P35/02
A61P27/02
A61P9/10
A61P25/00
A61P39/06
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144256
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】504177284
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠山 育夫
(72)【発明者】
【氏名】田口 弘康
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 大治郎
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206ZA01
4C206ZA33
4C206ZA36
4C206ZB21
4C206ZB26
4C206ZB27
(57)【要約】
【課題】従来とは異なる物質を新規の有効成分とし、優れたミトコンドリアフェリチン(FtMt)の発現誘導作用を有するFtMt発現誘導剤を提供する。
【解決手段】クルクミン若しくは式(I):
で表されるクルクミン誘導体又はそれらの塩を含有する、ミトコンドリアフェリチン(FtMt)発現誘導剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クルクミン若しくは式(I):
【化1】
(式中、R1はそれぞれ独立にフッ素原子、CH2F-、CHF2-、CF3-、CH2FO-、CHF2O-又はCF3O-であり、R2はそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子であり、A1は水素原子又はメチルであり、A2はアルキル、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル又はR3-(CH2)m-であり、R3はヒドロキシ、カルボキシ、シアノ、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシアルコキシ、ヒドロキシアルコキシ又はCONR4R5であり、R4及びR5はそれぞれ独立に水素原子又はアルキルであり、mは1~5の整数である)で表されるクルクミン誘導体又はそれらの塩を含有する、ミトコンドリアフェリチン発現誘導剤。
【請求項2】
前記A2がR3-(CH2)m-である、請求項1に記載のミトコンドリアフェリチン発現誘導剤。
【請求項3】
前記R3がカルボキシである、請求項2に記載のミトコンドリアフェリチン発現誘導剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミトコンドリアフェリチン発現誘導剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ミトコンドリアフェリチン(mitochondrial ferritin)(以下、「FtMt」と称することもある)は、2001年に新しく発見され報告されたフェリチンであり(J Biol Chem, vol. 276, pp. 24437-40, 2001)、細胞質の鉄をミトコンドリアに輸送するとともに、毒性の高いFe2+を毒性の低いFe3+に変換する性質を持つ(Blood Cells Mol Dis, vol. 29, pp. 376-83, 2002; Int J Biochem Cell Biol, vol. 36, pp. 1887-9, 2004)。
【0003】
FtMtは、鉄の多い臓器である肝臓や脾臓には少なく、精巣、脳、心臓という活動性の高い臓器に多い(Int J Biochem Cell Biol, vol. 36, pp. 1887-9, 2004)。FtMtの体内分布を勘案しても脳機能や脳疾患との関連が強く示唆される。FtMtは酸化ストレスや炎症性サイトカインによって誘導され、細胞に対して保護的に作用する(J Alzheimer Dis 45: 797-811, 2015)。こうしたことからFtMtを誘導する薬剤は、細胞を炎症や酸化ストレスから守る作用があると推測される。
【0004】
最近、Shiらは、FtMtが神経芽細胞腫の増殖を抑制することを報告し、FtMtを増加させることで抗癌作用が期待できることを報告している(非特許文献1)。2017年には、喘息治療薬のRoflumilastがFtMtを増加させる最初の低分子化合物として報告され、Roflumilast がFtMtを増加させて卵巣がんの増殖を抑制することが報告されている(非特許文献2)。
【0005】
また、本発明者らは、特許文献1において、F原子を含むクルクミン誘導体がアミロイドβ蛋白に対して高い結合特異性を有しアルツハイマー病の画像診断薬の有効成分として有用であることを報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2010/098502号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Cell. Mol. Life Sci. 72:983-997, 2015
【非特許文献2】Oncotarget, 8: 112341-112353, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来とは異なる物質を新規の有効成分とし、優れたミトコンドリアフェリチンの発現誘導作用を有するミトコンドリアフェリチン発現誘導剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、前述する特許文献1に記載のクルクミン誘導体及びクルクミンが、FtMtの発現を、mRNAレベルでもタンパク質レベルでも強く誘導するという知見を得た。しかしながら、特許文献1に記載のクルクミン誘導体のフッ素原子を水素原子に置換した化合物についてはFtMtの発現誘導作用は認められなかった。
【0010】
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次のFtMt発現誘導剤を提供するものである。
【0011】
項1.クルクミン若しくは式(I):
【0012】
【化1】
(式中、R1はそれぞれ独立にフッ素原子、CH2F-、CHF2-、CF3-、CH2FO-、CHF2O-又はCF3O-であり、R2はそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子であり、A1は水素原子又はメチルであり、A2はアルキル、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル又はR3-(CH2)m-であり、R3はヒドロキシ、カルボキシ、シアノ、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシアルコキシ、ヒドロキシアルコキシ又はCONR4R5であり、R4及びR5はそれぞれ独立に水素原子又はアルキルであり、mは1~5の整数である)で表されるクルクミン誘導体又はそれらの塩を含有する、ミトコンドリアフェリチン発現誘導剤。
項2.前記A2がR3-(CH2)m-である、項1に記載のミトコンドリアフェリチン発現誘導剤。
項3.前記R3がカルボキシである、項2に記載のミトコンドリアフェリチン発現誘導剤。
【発明の効果】
【0013】
クルクミン若しくは上記式(I)で表されるクルクミン誘導体又はそれらの塩は、優れたFtMtの発現誘導作用を有するので、FtMt発現誘導剤の有効成分として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】試験例1で実施したクルクミンによるFtMt mRNAの発現誘導作用の解析結果を示すグラフである。縦軸はFtMt mRNAの量(DMSO処理を1とした場合の比率)を示す。値は平均±標準誤差、***p<0.001, ****p<0.0001 vs DMSO、ns: not significant、n=5
図2】試験例2で実施したクルクミン及び化合物1-3によるFtMt mRNAの発現誘導作用の解析結果を示すグラフである。縦軸はFtMt mRNAの量(βアクチンの発現量に対する比率)を示す。値は平均±標準誤差、*p<0.05, **p<0.01 vs control、ns: not significant、n=3
図3】試験例3で実施したクルクミン、化合物1及び4のFtMtタンパク質の発現誘導作用の解析結果を示すグラフである。縦軸はFtMtタンパク質の量(未処置を100とした場合の比率)を示す。値は平均±標準誤差、*p<0.05, **p<0.01 vs DMSO ns: not significant、n=4-6
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
なお、本明細書において「含有する(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「のみからなる(consist of)」という意味をも包含する。
【0017】
本発明のミトコンドリアフェリチン(FtMt)発現誘導剤は、クルクミン若しくは式(I):
【0018】
【化2】
(式中、R1はそれぞれ独立にフッ素原子、CH2F-、CHF2-、CF3-、CH2FO-、CHF2O-又はCF3O-であり、R2はそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子であり、A1は水素原子又はメチルであり、A2はアルキル、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル又はR3-(CH2)m-であり、R3はヒドロキシ、カルボキシ、シアノ、アルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシアルコキシ、ヒドロキシアルコキシ又はCONR4R5であり、R4及びR5はそれぞれ独立に水素原子又はアルキルであり、mは1~5の整数である)で表されるクルクミン誘導体又はそれらの塩を含有することを特徴とする。
【0019】
A2、R4及びR5のアルキルは、直鎖又は分枝鎖状のC1-6アルキルであればよく、直鎖又は分枝鎖状のC1-3アルキルが好ましい。当該アルキルの規定は、式(I)のクルクミン誘導体におけるアルキルカルボニルオキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシアルコキシ及びヒドロキシアルコキシのアルキルにも適用される。
【0020】
C1-6アルキルの具体例としてはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、及びヘキシルが挙げられる。
【0021】
C1-3アルキルの具体例としてはメチル、エチル、n-プロピル、及びイソプロピルが挙げられる。
【0022】
式(I)のクルクミン誘導体は、脳に対する副作用を予防するために、血液脳関門を通過しないことが望ましく、そのような特性を有するためにはA2がR3-(CH2)m-であり、R3がカルボキシであることが好ましい。
【0023】
式(I)のクルクミン誘導体又はその塩が不斉炭素を含む場合は、常法に従い分離した光学異性体、及びラセミ体の両方が本発明のクルクミン誘導体に含まれる。
【0024】
クルクミン又は式(I)のクルクミン誘導体は塩であってもよく、そのような塩としては、医薬上許容される塩であればよく、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩のようなアルカリ金属塩;カルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機アミン塩などが挙げられる。また、これらの塩の中で結晶水を持つものもある。
【0025】
A1が水素原子である式(I)のクルクミン誘導体は、公知の方法(例えば、国際公開第2010/098502号に記載の方法)に従い製造することができる。
【0026】
また、A1がメチルである式(I)のクルクミン誘導体又はその塩は、以下に記載の方法により製造することができる。
【0027】
式(IA)の化合物は、式(II)の化合物を加水分解することにより製造することができる。
【0028】
【化3】
(式中、R1, R2及びA2は前述の通りである。)
【0029】
本反応の溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;含水テトラヒドロフラン、含水ジオキサンなどのエーテル類;含水ジメチルホルムアミド、含水ジメチルアセトアミドなどの酸アミド類;含水ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0030】
本反応を促進するために鉱酸を添加することが望ましく、その鉱酸としては塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸などを挙げることができる。鉱酸は、式(II)の化合物に対して3~10倍モル、望ましくは4~6倍モルの量で使用することができる。
【0031】
本反応は、通常0~150℃、望ましくは30~100℃で行うことができ、その反応時間は通常、1~150時間程度である。
【0032】
(II)の化合物は、式(III)の化合物にヨウ化メチルを反応させることにより製造することができる。
【0033】
【化4】
(式中、R1, R2及びA2は前述の通りである。)
【0034】
本反応の溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、石油エーテル、リグロインなどの脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトン、2-ブタノンなどのケトン類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの酸アミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0035】
本反応を促進するためには塩基を添加することが望ましく、その塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、N,N-ジメチルアニリンなどの有機塩基;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;水酸化バリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物などを挙げることができる。塩基は、式(III)の化合物に対して3~20倍モル、望ましくは5~10倍モルの量で使用することができる。
【0036】
本反応は通常0~70℃で行うことができ、反応時間は1~48時間程度である。
【0037】
また、ヨウ化メチルは、式(III)の化合物に対して2~20倍モル使用するのが望ましい。
【0038】
式(III)の化合物は、式(IV)の化合物と式(V)の化合物を縮合させることにより製造することができる。ただし、式(IV)の化合物は式(V)の化合物に対して2倍モル反応させる必要がある。なお、式(V)の化合物は、公知の方法により製造できる。
【0039】
【化5】
(式中、R1, R2及びA2は前述の通りである。)
【0040】
反応を効率的に進めるために、溶媒中でホウ素化合物と塩基の存在下で反応を行うのが望ましい。本反応に使用することができるホウ素化合物としては、ホウ酸、三酸化二ホウ素、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリ-n-ブチル、ホウ酸トリ-tert-ブチル、あるいは三酸化二ホウ素と各種ホウ酸エステルの混合物などを挙げることができる。ホウ酸化合物は、式(IV)の化合物に対して0.5~6倍モル使用するのが望ましい。
【0041】
塩基としては、n-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-プロピルアミン、n-ヘキシルアミン、シクロへキシルアミンなどの一級アミン類;モルホリン、ピぺリジン、1,2,3,4-テトラヒドロキノリンなどの二級アミン類などを挙げることができる。塩基は、式(V)の化合物に対して1倍モル使用するのが望ましい。
【0042】
また、溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、リグロインなどの脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチルなどのエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの酸アミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;ヘキサメチルホスホルトリアミドなどのリン酸アミド類及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0043】
反応温度は、通常0~150℃、望ましくは0~100℃で行うことができ、反応時間は通常0.5~24時間程度である。
【0044】
また、上記反応では、反応後、生成した式(III)の化合物のホウ素錯体を分解するために酸で反応液を処理する必要がある。その際使用する酸としては、塩酸、硫酸などの鉱酸あるいは酢酸、プロピオン酸などの有機酸を挙げることができる。
【0045】
式(IV)の化合物は、式(VI)の化合物にクロロジメチルエーテルを反応させることにより製造することができる。なお、式(VI)の化合物は、公知の方法により製造できる。
【0046】
【化6】
(式中、R1及びR2は前述の通りである。)
【0047】
溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、リグロインなどの脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;アセトン、2-ブタノンなどのケトン類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの酸アミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;ジクロロメタン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。
【0048】
本反応を促進するためには塩基を添加することが望ましく、その塩基としては、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、N-メチルピぺリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、N,N-ジメチルアニリンなどの有機塩基;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などを挙げることができる。塩基は、式(VI)の化合物に対して1~3倍モル、望ましくは1.4~1.8倍モルの量で使用することができる。
【0049】
本反応は、通常0~50℃で行うことができ、反応時間は通常1~48時間程度である。
【0050】
上記した製法及びそれに付随した方法で得られる前記式(I)のクルクミン誘導体は、公知の手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、蒸留、分留、転溶、溶媒抽出、結晶化、再結晶、クロマトグラフィーなどにより単離、精製することができる。
【0051】
式(I)のクルクミン誘導体がフリー体で得られる場合、通常の方法で塩を形成させることができる。
【0052】
式(I)のクルクミン誘導体の具体例を以下の第1表に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
クルクミン又は式(I)のクルクミン誘導体の多くは疎水性の化合物であり、水に対する溶解度は低い。生体に投与する化合物としては水溶解度が高いことが望ましく、クルクミン又は式(I)のクルクミン誘導体の内、塩を持つものがより望ましい。
【0055】
クルクミン若しくは式(I)のクルクミン誘導体又はそれらの塩は、mRNAレベルでもタンパク質レベルでも優れたFtMt (EC 1.16.3.1)の発現誘導作用を有しているので、FtMt発現誘導剤の有効成分として使用することができる。
【0056】
なお、FtMt遺伝子の塩基配列は、NCBIのweb siteにRefSeq Accession No. NM_177478(ヒト)などとして登録されおり、アミノ酸配列は、RefSeq Accession No. NP_803431(ヒト)などとして登録されている。
【0057】
また、FtMtの発現誘導とは、FtMt遺伝子の発現を増加させることを意味し、FtMt遺伝子からの転写産物の生成量の増加、FtMt遺伝子からの翻訳産物の生成量の増加等によって確認することができる。
【0058】
FtMt発現誘導の結果として、抗がん作用、抗酸化作用、抗老化作用、神経細胞死の抑制作用、加齢性黄斑変性症改善作用、糖尿病性網膜症改善作用などが誘導されるため、本発明のFtMt発現誘導剤は、がん(例えば、胃癌、大腸癌(直腸癌、結腸癌)、小腸癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、咽頭癌、食道癌、腎癌、胆のう及び胆管癌、頭頸部癌、膀胱癌、前立腺癌、乳癌、子宮癌(子宮頸癌、子宮体癌)、卵巣癌、脳腫瘍、胸腺腫、白血病、悪性リンパ腫等)、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症などの治療及び予防に利用可能であり、抗酸化剤、抗老化剤、神経細胞死抑制剤などの有効成分として有用である。
【0059】
式(I)のクルクミン誘導体は、基本骨格が食品成分であるクルクミンであるため、安全性は高い。
【0060】
本発明のFtMt発現誘導剤は、医薬組成物、食品組成物などとして利用することができる。
【0061】
本発明の医薬組成物は、ヒトを含む哺乳動物に対して投与される。本発明の医薬組成物の投与は、局所的であってもよく、全身的であってもよい。投与方法には特に制限はなく、経口的又は非経口的に投与される。非経口的投与経路としては、皮下、腹腔内、静脈、動脈又は脊髄液への注射又は点滴、経皮的投与等が挙げられる。
【0062】
本発明の医薬組成物は、ヒトへの投与に適した医薬上許容される形態であって、生理学的に許容し得る添加剤を含む。かかる医薬組成物は、適宜、医薬として許容し得る希釈剤、緩衝剤、可溶化剤(例えば、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、あるいはTween (登録商標)、プルロニック (登録商標)、クレモフォール (登録商標)、リン脂質などの界面活性剤)、無痛化剤等を添加してもよく、更に必要に応じて、医薬として許容し得る溶剤、安定化剤又は酸化防止剤(例えばアスコルビン酸等)のような成分を含んでもよい。本発明の医薬組成物の投与量は、用法、患者の年齢、性別その他の条件、及び疾患の程度により適宜選択される。
【0063】
本発明の医薬組成物におけるクルクミン若しくは式(I)のクルクミン誘導体又はそれらの塩の含量は、0.01~100質量%、好ましくは0.1~100質量%の範囲から適宜選択することが可能である。
【0064】
本発明の食品組成物には、動物(ヒトを含む)が摂取できるあらゆる食品組成物が含まれる。本発明の食品組成物には、必要に応じて、アミノ酸、核酸、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、結合剤、清涼剤、甘味料、必須脂肪酸、崩壊剤、滑沢剤、香料、安定化剤、着色料、防腐剤、界面活性剤、徐放調整剤、溶解剤、湿潤剤等を配合することができる。
【0065】
本発明の食品組成物の種類は、特に限定されず、例えば、飲料類(コーヒー、ジュース、茶飲料のような清涼飲料、乳飲料、炭酸飲料、日本酒、洋酒、果実酒のような酒等);スプレッド類(カスタードクリーム等);ペースト類(フルーツペースト等);洋菓子類(チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ、プリン等);和菓子類(大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ、羊羹等);氷菓類(アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等);食品類(カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム、ローヤルゼリー等);乳製品;発酵食品(ヨーグルト、ローヤルゼリー等);調味料類(ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料、スープの素等)などが挙げられる。
【0066】
また、本発明の食品組成物は、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、特定保健用食品、又は機能性表示食品としても使用できる。サプリメントとして使用する際の投与単位形態については特に限定されず適宜選択できるが、例えば錠剤、顆粒剤、液剤、カプセル剤、散剤等が挙げられる。
【0067】
本発明の食品組成物におけるクルクミン若しくは式(I)のクルクミン誘導体又はそれらの塩の含量は、食品組成物全量中0.01~100質量%、好ましくは0.1~100質量%の範囲から適宜選択することが可能である。
【0068】
本発明の食品組成物の摂取量は、摂取者の体重、年齢、性別、症状などの種々の条件に応じて適宜設定することができる。
【実施例0069】
次に本発明に係わる合成例及び試験例を記載するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。なお、以下の合成例におけるNMRスペクトルはJEOL RESONANCE ECZ-400Sを用いて測定を行った。
【0070】
[合成例1]1,7-ビス(4’-ヒドロキシ-3’-トリフルオロメトキシ)フェニル-4-エトキシカルボニル-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(化合物2)の合成
ジアセト酢酸エチル344 mg (2.0 mmol)と三酸化二ホウ素112 mg (1.6 mmol)(ナカライテスク株式会社)の酢酸エチル(5 mL)溶液を40℃で30分間加熱した後、4-ヒドロキシ-3-トリフルオロメトキシベンズアルデヒド824 mg (4.0 mmol)(ASTA TECH社)とホウ酸トリ-n-ブチル1.08 mL (4.0 mmol)(東京化成工業株式会社)を加え、同じ温度でさらに30分間加熱を続けた。ついで、n-ブチルアミン0.2 mL (2.0 mmol)(ナカライテスク株式会社)を加えて、同じ温度で3時間加熱した。反応液を室温まで冷却した後、1M-塩酸(5 mL)を加えて、15分間激しく攪拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、抽出液を水洗し、ついで飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:ヘキサン=1:2)により精製して得られた物質に少量のジクロロメタンを加えて室温に放置すると、融点179-180℃の1,7-ビス(4’-ヒドロキシ-3’-フルオロメトキシ)フェニル-4-エトキシカルボニル-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン440 mg (40.1%)が得られた。
19FNMR (d6DMSO):δ -58.42 (s), HNMR (d6DMSO):δ1.32 (3H, t, J=7Hz), δ4.37 (2H, q, J=7Hz), δ7.09 (2H, d, J=8Hz),δ7.15 (2H, d, J=15.6Hz), δ7.61 (2H, dd, J=1.6Hz, 8Hz), δ7.70 (2H, br.s), δ7.75 (2H, d, J=15.6Hz), δ18.17 (1H, s).
【0071】
[合成例2]1,7-ビス(4’-ヒドロキシ-3’-トリフルオロメトキシ)フェニル-4,4-ジメチル-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(化合物3)の合成
(1)4-ヒドロキシ-3-トリフルオロメトキシベンズアルデヒド2.06 g (10 mmol)(ASTA TECH社)のアセトン(18 mL)溶液に炭酸カリウム2.21 g (16 mmol)を加えた混合物を氷冷し、ここに攪拌しながらクロロメチルメチルエーテル1.07 mL (14 mmol)(ナカライテスク株式会社)を少量ずつ加えた。反応液を室温で10時間攪拌した後、溶媒を減圧下に留去して得られる残渣を酢酸エチルで抽出した。抽出液を水洗、続いて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:n-ヘキサン=1:3)により精製すると、4-メトキシメトキシ-3-トリフルオロメトキシベンズアルデヒド2.48 g (99%)が無色の油状物として得られた。
19FNMR (CDCl3):δ -58.29 (s), 1HNMR (CDCl3):δ3.50 (3H, s), δ5.30 (2H, s), δ7.36 (1H, d, J=9Hz), δ7.75-7.80 (2H), δ9.89 (1H, s)
【0072】
(2)3-メチル-2,4-ペンタンジオン225 mg (1.98 mmol)(東京化成工業株式会社)の酢酸エチル(8.0 mL)溶液に三酸化二ホウ素139 mg (1.98 mmol)を加え、70℃で30分間加熱し、次いでホウ酸トリ-n-ブチル1.07 mL (3.95 mmol)と前記工程(1)で得られた4-メトキシメトキシ-3-トリフルオロメトキシベンズアルデヒド988 mg (3.95 mmol)とを加えて、同温度で30分間加熱した。さらにn-ブチルアミン0.20 mL (2.0 mmol)を加えて、同温度で10時間加熱した。室温まで冷却した反応液に2M-塩酸(8 mL)を加えて室温で15分間攪拌した後、酢酸エチルで抽出した。抽出液を水洗し、次いで飽和食塩水で洗った後、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:n-ヘキサン=1:3)により精製すると、1,7-ビス(4’-メトキシメトキシ-3’-トリフルオロメトキシ)フェニル-4-メチル-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン271 mg (24%)が得られた。
19FNMR (CDCl3):δ -58.12 (s), 1HNMR (CDCl3):δ3.49 (6H, s), δ5.26 (4H, s), δ6.99 (2H, d, J=15.6Hz), δ7.24 (2H, d, J=8.0 Hz), δ7.45 (2H, dd, J=1.8Hz, 8.0Hz), δ7.47 (2H, br.s), δ7.64 (2H, d, J=15.6Hz)
【0073】
(3)前記工程(2)で得られた1,7-ビス(4’-メトキシメトキシ-3’-トリフルオロメトキシ)フェニル-4-メチル-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン271 mg (0.47 mmol)とヨウ化メチル0.3 mL (4.7 mmol)(ナカライテスク株式会社)のアセトン(15 mL)溶液に粉末の炭酸カリウム650 mg (4.7 mmol)を加えて55℃で3時間加熱した。減圧下に溶媒を留去して得られる残渣を酢酸エチルで抽出した。抽出液を水洗し、次いで飽和食塩水で洗った後、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下に留去して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:n-ヘキサン=1:3)により精製すると1,7-ビス(4’-メトキシメトキシ-3’-トリフルオロメトキシ)フェニル-4,4-ジメチル-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン275 mg (99%)が淡黄色油状物として得られた。
19FNMR (CDCl3):δ -58.19 (s), 1HNMR (CDCl3):δ1.46 (6H, s), δ3.46 (6H, s), δ5.23 (4H, s), δ6.64 (2H, d, J=15.6Hz), δ7.19 (2H, d, J=8.0Hz), δ7.38 (2H, br.s), δ7.40 (2H, dd, J=2.8Hz, 8.0Hz), δ7.62 (2H, d, J=15.6Hz)
【0074】
(4)前記工程(3)で得られた1,7-ビス(4’-メトキシメトキシ-3’-トリフルオロメトキシ)フェニル-4,4-ジメチル-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン266 mg (0.45 mmol)のエタノール(10 mL)溶液に1M-塩酸(2.7 mL;2.7 mmol)を加え、60-65℃に4時間加熱した。溶媒を減圧下に留去して得られる残渣を酢酸エチルで抽出した。抽出液を水洗した後、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下に留去して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:n-ヘキサン=1:3)により精製すると淡黄色結晶の1,7-ビス(4’-ヒドロキシ-3’-トリフルオロメトキシ)フェニル-4,4-ジメチル-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン161 mg (71%)が得られた。融点133-134℃
19FNMR (CDCl3):δ -57.81 (s), 1HNMR (CDCl3):δ1.46 (6H, s), δ6.63 (2H, d, J=15.6Hz), δ7.02 (2H, d, J=8.0Hz), δ7.35 (2H, br.s), δ7.39 (2H, dd, J=1.6Hz, 8.0Hz), δ7.61 (2H, d, J=15.6Hz)
【0075】
[合成例3]1,7-ビス(4’-ヒドロキシ-3’-メトキシ)フェニル-4-カルボキシエチル-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(化合物4)の合成
(1)4-アセチル-5-オキソヘキサン酸メチル186 mg (1.0 mmol)(Sigma-Aldrich)と三酸化二ホウ素56 mg (0.8 mmol)の酢酸エチル(2 mL)溶液を60℃で30分間加熱した後、バニリン304 mg (2.0 mmol)(ナカライテスク株式会社)とホウ酸トリ-n-ブチル0.54 mL (2.0 mmol)を加え、同じ温度でさらに30分間加熱を続けた。ついで、n-ブチルアミン0.1 mL (1.0 mmol)を加えて、同じ温度で4時間加熱した。反応液を室温まで冷却した後、1M-塩酸(2 mL)を加えて、15分間激しく攪拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、抽出液を水洗し、ついで飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下に溶媒を留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:ヘキサン=1:1)により精製して得られた物質に少量のジクロロメタンを加えて室温に放置すると、融点124-125℃の1,7-ビス(4’-ヒドロキシ-3’-メトキシ)フェニル-4-メトキシカルボニルエチル-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン208 mg (45.8%)が得られた。
HNMR (d6DMSO):δ2.07 (1.3H, m), δ2.31 (1.3H, m), δ2.48 (0.7H, m), δ2.98 (0.7H, m), δ3.54 (1H, s), δ3.59 (2H, s), δ3.80 (4H, s), δ3.85 (2H, s), δ4.58 (0.6H, m), δ6.80 (1.3H, d, J=8.0Hz), δ6.83 (0.7H, d, J=8.0Hz), δ6.91 (1.3H, d, J=15.6Hz), δ7.13 (0.7H, d, J=15.6Hz), δ7.16 (1.3H, dd, J=8.0Hz, 2.0Hz), δ7.23 (0.7H, dd, J=8.0Hz, 2.0Hz), δ7.32 (1.3H, d, J=2.0Hz), δ7.35 (0.7H, d, J=2.0Hz), δ7.60 (0.7H, d, J=15.6Hz), δ7.61 (1.3H, d, J=15.6Hz), δ18.03 (0.4H, s).
【0076】
(2)前記工程(1)で得られた1,7-ビス(4’-ヒドロキシ-3’-メトキシ)フェニル-4-メトキシカルボニルエチル-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン182 mg (0.4 mmol)を0.1M-水酸化ナトリウム水溶液12 mL (1.2 mmol)に加え、室温で1時間攪拌した。反応液に1M-塩酸を加えてpH2に調整した後、酢酸エチルで抽出した。抽出液を水及び飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル)により精製すると、融点150-151℃の1,7-ビス(4’-ヒドロキシ-3’-メトキシ)フェニル-4-カルボキシエチル-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン126 mg (71.5%)が得られた。
HNMR (d6DMSO):δ2.04 (1.3H, m), δ2.22 (1.3H, m), δ2.40 (0.7H, m), δ2.93 (0.7H, m), δ3.79 (4H, s), δ3.83 (2H, s), δ4.56 (0.6H, m), δ6.79 (0.7H, d, J=8.0Hz), δ6.81 (0.7H, d, J=15.6Hz), δ6.90 (1.3H, d, J=15.6Hz), δ7.1-7.25 (3.3H), δ7.31 (1.3H, d, J=2.0Hz), δ7.33 (0.7H, d, J=2.0Hz), δ7.59 (0.7H, d, J=15.6Hz), δ7.60 (1.3H, d, J=15.6Hz), δ18.00 (0.4H, s).
【0077】
なお、以下の試験例で使用している1,7-ビス(4’-ヒドロキシ-3’-トリフルオロメトキシ)フェニル-4-カルボキシエチル-1,6-ヘプタジエン-3,5-ジオン(化合物1)は、国際公開公報2010/098502号の合成例2の記載に従い合成を行った。
【0078】
[試験例1]クルクミンのFtMt発現誘導作用の解析
12ウェルプレートのDMEM/F-12 (FBS 10%)培地中に2×105 cells/wellの量でARPE-19細胞を播種した。そして、24時間接着させた。その後、細胞をクルクミン(5μM、15μM又は25μM)を含む又は含まない培地で24時間処理した。処理後、RNA分析のために細胞を抽出した。そして、リアルタイムPCRを用いてFtMt mRNA量を解析した。
【0079】
得られた結果を図1に示す。クルクミンの濃度15μM及び25μMにおいてFtMt mRNA量の有意な増加が認められた。
【0080】
[試験例2]クルクミン及び化合物1-3のFtMt発現誘導作用の解析
12ウェルプレートのDMEM/F-12 (FBS 10%)培地中に2×105 cells/wellの量でARPE-19細胞を播種した。そして、24時間接着させた。その後、細胞をクルクミン、化合物1、2若しくは3(0.1μM、0.2μM、0.5μM又は1μM)を含む又は含まない培地で24時間処理した。処理後、RNA分析のために細胞を抽出した。そして、リアルタイムPCRを用いてFtMt mRNA量を解析した。
【0081】
得られた結果を図2に示す。クルクミンは1μMでFtMt mRNA量の有意な増加が認められた。化合物1は0.5μM及び1μMでFtMt mRNA量の有意な増加が認められた。化合物2は0.5μMでFtMt mRNA量の有意な増加が認められた。化合物3は0.5μM及び1μMでFtMt mRNA量の有意な増加が認められた。
【0082】
[試験例3]クルクミン及び化合物1のFtMt発現誘導作用の解析
12ウェルプレートのDMEM/F-12 (FBS 10%)培地中に2×105 cells/wellの量でARPE-19細胞を播種した。そして、24時間接着させた。その後、細胞をクルクミン、化合物1若しくは4(1μM、5μM又は15μM)を含む又は含まない培地で24時間処理した。処理後、タンパク質分析のために細胞を抽出した。そして、ウェスタンブロッティングを用いてFtMtタンパク質量を解析した。
【0083】
得られた結果を図3に示す。クルクミンは1μM及び5μMではFtMtタンパク質量の有意な増加が認められた。化合物4は1μM、5μM及び15μMではFtMtタンパク質量の有意な変化は認められなかった。化合物1は5μMでFtMtタンパク質量の有意な増加が認められた。
図1
図2
図3