(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039322
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】スイベル
(51)【国際特許分類】
A01K 91/047 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
A01K91/047 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144285
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】八木 啓之
【テーマコード(参考)】
2B307
【Fターム(参考)】
2B307EB02
(57)【要約】
【課題】フックやシンカーを装着して容易にカシメることができると共に、フックやシンカーを複数回交換しても破損等が生じ難いスイベルを提供する。
【解決手段】本発明のスイベルは、本体3と、第1フック部5と、先端10dが開いたリング形状の第2フック部10とを備えている。第2フック部10は、本体3に固定される固定部10aから延出する延出部10bと、延出部10bの端部で湾曲形成される湾曲中間部10cとを有し、湾曲中間部10cの先端側は、延出部を含む平面Pに対してスパイラル状に捩れて、先端10eが平面Pに対してオフセットした状態で開いていることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
本体の一端側に固定され、リング形状の第1フック部と、
本体の他端側に固定され、先端が開いたリング形状の第2フック部と、
を備えたスイベルにおいて、
前記第2フック部は、前記本体に固定される固定部から延出する延出部と、延出部の端部で湾曲形成される湾曲中間部とを有し、前記湾曲中間部の先端側は、前記延出部を含む平面に対してスパイラル状に捩れて、先端が前記平面に対してオフセットした状態で開いていることを特徴とするスイベル。
【請求項2】
前記延出部と湾曲中間部との間に屈曲部が形成されており、
前記先端は、カシメた状態で側面視した際、屈曲部の範囲内に位置していることを特徴とする請求項1に記載のスイベル。
【請求項3】
前記先端は、カシメた状態で径方向に広がる力を受けた際、前記屈曲部に当て付く位置にあることを特徴とする請求項2に記載のスイベル。
【請求項4】
前記先端は、カシメた際、前記延出部又は屈曲部が度当てとなって当て付くことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスイベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイベルに関し、特に、バスフィッシングやソルトウォーターゲーム等の仕掛けに使用されるスイベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイベルは、特許文献1に開示されているように、連結体(本体)の両側に糸環が設けられており、仕掛け中に配設して糸ヨレを防いだり仕掛けを容易に作成・交換する等の目的で用いられる。このようなスイベルは、糸環が閉じた状態にあるため、フック(釣針)の環部やシンカー(錘)の環部を糸環に対して直接、取り付けることはできない。
【0003】
ところで、最近のバスフィッシングやソルトウォーターゲーム(カサゴやメバルなどの根魚、ヒラメやチヌなどを対象とした釣り)では、スイベルとして、シンカーとフックを、リングを介して一体化した直リグ(ゼロダンとも称される)が用いられることがある。このような直リグは、仕掛けの作成が容易であると共に、実釣時では、水面にゴミなどが浮遊していてもフックに装着したワームを落とし込むことができ、かつ、垂直に落とし込むことができる等のメリットがある。非特許文献2には、シンカーとフックを一体化するリングをC形状のリングで構成した直リグが開示されている。この直リグは、フックの環部やシンカーの環部を前記C形状のリングに通した後、プライヤを用いて離間した部分をカシメてリング部分をO形状に閉じるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭59-133066号
【非特許文献1】http://www.katsuichi.co.jp/decoy
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したようなC形状のリングを備えたスイベル(直リグ)では、フックやシンカーの環部をリングに通した後、プライヤでリングの開口を周方向に圧縮するようにカシメることから、圧縮による金属疲労によってリングの曲げ部が破損する能性があり、開閉を繰り返すとより破損が生じやすくなる。また、線材の持つバネ性により、カシメ難く開口部分を完全に閉じることが難しい。特に、スイベルが小さいサイズでは、カシメる作業がやり難い。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、フックやシンカーを装着して容易にカシメることができると共に、フックやシンカーを複数回交換しても破損等が生じ難いスイベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係るスイベルは、本体と、本体の一端側に固定され、リング形状の第1フック部と、本体の他端側に固定され、先端が開いたリング形状の第2フック部と、を備えており、前記第2フック部は、前記本体に固定される固定部から延出する延出部と、延出部の端部で湾曲形成される湾曲中間部とを有し、前記湾曲中間部の先端側は、前記延出部を含む平面に対してスパイラル状に捩れて、先端が前記平面に対してオフセットした状態で開いていることを特徴とする。
【0008】
上記したスイベルにフックやシンカーを取り付ける場合、開いた状態にある第2フック部の先端から、フックやシンカーの環部を嵌め込む。そして、嵌め込んだ後は、プライヤで、延出部を含む平面に対して垂直方向に挟み込む(カシメる)ことで、スパイラル状に捩れた湾曲中間部の先端側は前記平面内に倒れ込み、先端が閉じられる。すなわち、従来のように、リングを周方向で圧縮するようにカシメるのではなく、スパイラルを解消するようにひねりを戻すだけなので、簡単かつ確実に開口を閉じることができると共に、大きな圧縮力を作用させないことから、湾曲中間部に金属疲労が生じ難く、破損等が生じ難くなる。なお、本発明では、上記のように第2フック部のスパイラル状に捩れた状態にある湾曲中間部をプライヤで挟み込んで、そのスパイラル状を平坦状にして先端の開口を閉じる態様についても、「カシメ」という表現を用いることとする。また、第2フック部に関し、先端が開いたリング形状、更には、カシメて閉じたリング形状には、円形以外にも、四角形・三角形・楕円など、形状は限定されることはない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フックやシンカーを装着して容易にカシメることができると共に、フックやシンカーを複数回交換しても破損等が生じ難いスイベルが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るスイベルの一実施形態を示し、スイベルにフックとシンカーを取り付けた状態を示す図。
【
図2】
図1に示すスイベルを示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図。
【
図3】
図1に示すスイベルを作成する工程の一例を示す図であり、(a)は第2フック部の加工前の状態を示す図、(b)は第2フック部を曲げ加工して先端側をスパイラル状に開いた状態を示す図。
【
図4】
図1に示すスイベルの第2フック部をカシメる工程を示す図であり、(a)はカシメる前の第2フック部の形態を示す図、(b)はカシメた後の第2フック部の形態を示す図。
【
図5】(a)は、
図1に示した第2フック部をカシメた状態を示す図、(b)~(d)は、それぞれ第2フック部の第1~第3変形例(カシメた状態)を示す図。
【
図6】(a)及び(b)は、第2フック部の第4変形例(カシメた状態)を示す図であり、(c)は、第5変形例(カシメた状態)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るスイベルの実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
図1及び
図2は、スイベルの一実施形態を示す図であり、
図1はスイベルにフックとシンカーを取り付けた状態を示す図、
図2(a)は正面図、
図2(b)は側面図、
図2(c)は背面図である。
【0012】
スイベル1は、略円筒形状に形成された本体3と、本体3の一端側に固定され、リング形状の第1フック部5と、本体3の他端側に固定され、先端が開いたリング形状の第2フック部10と、を備えて構成されている。
【0013】
前記本体3は、真鍮等の金属材料によって一体形成されており、第1フック部5は、ステンレス等、金属材料で形成された線材をループ状にして両端部を重ね、この部分を本体3の一端側に圧入等することで本体3に固定されている。本実施形態の第1フック部5は、リールから繰り出される釣糸(道糸)等が締結されたり、他の仕掛けのスナップやスプリットリングが取り付けられるように閉じた状態に形成されている。
なお、第1フック部5は、上記のように閉じた状態で本体3に固定されたものであっても良いし、例えば、開閉できるスナップとして本体3に固定されていても良い。また、第1フック部の形状(釣糸等が挿通される開口形状)については、円形状、楕円形状、矩形形状等、特に限定されることはない。
【0014】
前記第2フック部10は、ステンレス等、金属材料で形成された線材の一端を本体3に圧入固定し、他端側は先端が開いた状態のリング形状に形成されている。スイベル1は、この第2フック部10に、フック30の環部30aおよびシンカー40の環部40aを通し、その後、プライヤ等でカシメることで開いている部分(開口)を閉じてリング形状にした状態で使用される。
図1は、フック30及びシンカー40を取り付け、第2リング部10をカシメた状態が示されている。
【0015】
前記第2フック部10は、線材を曲げ加工することで形成することができ、本体3に対して圧入、固定される固定部10aから略直線状に延出する延出部10bと、延出部10bの端部で湾曲形成される湾曲中間部10cとを有している。湾曲中間部10cは、
図2(b)で示すように、側面視した際、略円形状となるように曲げ加工されるが、その先端側は、
図2(a)(c)で示すように、延出部10bを含む平面Pに対してスパイラル状に捩れて、先端(面)10dが平面Pに対してオフセットした状態で開くように曲げ加工されている。
【0016】
このような第2フック部10は、
図3(a)に示すように、線材の一端を固定部10aとして本体3に圧入しておき、略直線に垂下している延出部10bの中間部分を曲げ加工して、先端10dが延出部10bに接触するように湾曲させて、閉じた状態となる円形状(リング状)の湾曲中間部10cを形成する。そして、先端10dを、前記平面Pからオフセットするように、平面Pに対して略垂直方向に倒れるように曲げ加工することで形成することが可能である(
図3(b))。この場合、先端が閉じていないようにリング形状に曲げ加工されたリング部材の基端部を本体3に圧入した後、先端を曲げ加工しても良いし、予めスパイラル状に曲げ加工された状態の第2フック部を本体3に圧入しても良い。
【0017】
上記のように先端10dがオフセットしたことで生じる隙間(オフセット量をWで示す)から、フック30の環部、シンカー40の環部を通すことができ、通し終わった後は、そのスパイラル部分を、プライヤで、延出部10bを含む平面Pに対して、垂直方向に挟み込む(カシメる)ことで、スパイラル状に捩れた湾曲中間部10cの先端側は、平面内Pに倒れ込み、先端10dの部分の開口が閉じられる(
図4(a)(b)参照)。
【0018】
このように、
図3のようにして形成されているスパイラルを解消するようにひねりを戻すだけなので、簡単かつ確実に開口を閉じることができる。また、従来のように、リングに対して周方向に大きな圧縮力を作用させてカシメるのではないため、湾曲中間部10cに金属疲労が生じ難く、破損等が生じ難くなり、実釣時にフックやシンカーを取り換えるなど、複数回に亘って使用することが可能となる。さらに、周方向へのバネ性が発生しないので、開口部分を確実に閉じることができ、小さいサイズのスイベルでも作業がし易くなる。
【0019】
上記した構成において、第2フック部10の構成については、種々、変形することが可能である。
図5(a)は、上記した実施形態において、第2フック部10をカシメて開口を閉じた状態を示している。先端10dは、延出部10bの側面に当て付いているが、場合によっては僅かな隙間Gが生じている可能性もある。このような隙間があると、釣糸が入り込んで絡みが発生する可能性もあり、また、フック30に大きい魚が掛かったり、仕掛けが絡むなど、湾曲中間部10cに高引張力が作用すると隙間Gが広がる可能性がある。
【0020】
このため、例えば、
図5(b)(c)の第1変形例、第2変形例に示すように、延出部10bと湾曲中間部10cとの間に屈曲部10fを形成しておき、カシメた際の先端10dが、側面視した際に、その屈曲部10fの範囲内、具体的には、延出部10bの側面10b´よりも周方向内側に位置するようにすることが好ましい。
【0021】
このようなリング形状によれば、先端10d部分に僅かな隙間が生じていても、釣糸を入り難くすることができる。
【0022】
或いは、このような構成では、例えば、
図5(d)の第3変形例に示すように、先端10dが矢印で示すように、径方向に広がる力を受けた際、先端10dが屈曲部10fに当て付く位置となるように形成することが好ましい。
【0023】
このような構成によれば、湾曲中間部10cに大きな負荷が作用して拡げようとする力が作用しても、屈曲部10fに先端10dが当て付いて開口を拡げないように作用することから、隙間が発生することを確実に防止することが可能となる。
【0024】
また、上記した構成では、第2リング部10の先端(先端10dの位置)は、
図6(a)(b)の第4変形例で示すように、カシメた際、延出部10bが度当てとなって当て付くようにしても良い。このような構成では、先端領域が延出部10bに当て付くようにプライヤで挟み込むだけで良いため、開口を確実に閉じることができる。この場合、
図6(c)の第5変形例で示すように、先端領域にテーパ10d´を形成しておくことで、先端領域をカシメた際、径方向の膨らみが抑制されるため、釣糸の引っ掛かりを防止することが可能となる。
【0025】
なお、先端が当て付くのは、
図6に示したように、延出部10bであっても良いし、
図5(b)~(d)で示した屈曲部10fであっても良い。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されることはなく、種々変更することが可能である。例えば、本体3の形状、本体3に対する第1フック部5や第2フック部10の取付方法など、適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 スイベル
3 本体
5 第1フック部
10 第2フック部
10a 固定部
10b 延出部
10c 中間湾曲部
10d 先端
10f 屈曲部
30 フック
40 シンカー