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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039367
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】ブラケット付防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20220303BHJP
   B60K 5/12 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
F16F13/10 F
B60K5/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144352
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】田中 信伍
(72)【発明者】
【氏名】安藤 龍一
(72)【発明者】
【氏名】大木 健司
(72)【発明者】
【氏名】新井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】川邊 啓介
【テーマコード(参考)】
3D235
3J047
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB25
3D235CC01
3D235EE05
3D235EE13
3D235EE20
3J047AA03
3J047AB01
3J047DA10
3J047FA02
3J047GA03
(57)【要約】
【課題】第二の取付部材のブラケットからの抜けをより高い信頼性をもって防止することができる、新規な構造のブラケット付防振装置を提供すること。
【解決手段】防振装置本体12が第二の取付部材16においてブラケット72の幅方向両側の対向壁部84に嵌め合わされてブラケット72に側方から組み付けられているブラケット付防振装置10であって、ブラケット72は対向壁部84から奥方へ延び出す可撓性の係止部106を備え、第二の取付部材16は対向壁部84との重ね合わせ面に開口するアウタ凹部28を有している。係止部106がブラケット72の幅方向内側へ傾斜する傾斜部分108を有することにより、係止部106の先端面112がアウタ凹部28に差し入れられて、係止部106の先端面112がアウタ凹部28の奥方の壁内面32に係止され、第二の取付部材16がブラケット72に対して組付方向と反対の抜け方向への相対変位を制限されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の取付部材と第二の取付部材とを本体ゴム弾性体で連結した防振装置本体と、該防振装置本体に取り付けられるブラケットとを備え、該第二の取付部材の幅方向の両側に設けられた一対の嵌着部が、該ブラケットの幅方向の両側に設けられた一対の対向壁部に形成された一対の嵌着溝へ嵌め入れられて、該防振装置本体が該ブラケットに側方から組み付けられているブラケット付防振装置であって、
前記ブラケットは、前記一対の対向壁部の対向する内面から前記防振装置本体の該ブラケットへの組付方向の奥方へ向けてそれぞれ延び出す可撓性の係止部を備え、
前記第二の取付部材は、該一対の対向壁部との各重ね合わせ面に開口するアウタ凹部を有し、
該係止部が先端に向けて前記ブラケットの幅方向の内側へ傾斜する傾斜部分を有することによって、該係止部の先端面が該アウタ凹部に差し入れられており、
該係止部の該先端面が該アウタ凹部の奥方の壁内面に係止されて、該第二の取付部材が該ブラケットに対して組付方向と反対の抜け方向への相対変位を制限されているブラケット付防振装置。
【請求項2】
前記対向壁部から延び出した前記係止部の先端部分が前記組付方向と平行に奥方へ直線的に延びており、該係止部の基端部分が前記傾斜部分とされている請求項1に記載のブラケット付防振装置。
【請求項3】
前記対向壁部における前記嵌着溝の底面に逃がし凹部が形成されており、前記係止部が該逃がし凹部に位置して設けられている請求項1又は2に記載のブラケット付防振装置。
【請求項4】
前記係止部の前記対向壁部側の基端が先端よりも厚肉とされている請求項1~3の何れか一項に記載のブラケット付防振装置。
【請求項5】
前記係止部の当接によって該係止部の変形量を制限するストッパ面が前記アウタ凹部の凹底面によって構成されている請求項1~4の何れか一項に記載のブラケット付防振装置。
【請求項6】
前記係止部の先端には前記アウタ凹部の凹底側へ向かって突出する突出部が設けられており、該係止部の前記先端面に加えて該突出部が該アウタ凹部の前記奥方の壁内面に係止されている請求項1~5の何れか一項に記載のブラケット付防振装置。
【請求項7】
前記係止部の前記先端面は、該係止部の中心軸上において前記アウタ凹部の前記奥方の壁内面に係止されている請求項1~6の何れか一項に記載のブラケット付防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のエンジンマウント等に用いられるブラケット付防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結した防振装置が、例えば車両用のエンジンマウント等に用いられている。防振装置は、特開2018-040405号公報(特許文献1)に示されているように、第二の取付部材がブラケットを介して車両に取り付けられるようになっている。第二の取付部材とブラケットは、第二の取付部材の幅方向両側に設けられた嵌着部が、ブラケットの幅方向両側の対向壁部に形成された嵌着溝に対して側方から嵌め入れられることによって組み付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-040405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような横挿入タイプのブラケット付防振装置では、第二の取付部材がブラケットに対して組付方向と反対側へ移動して抜けるのを確実に防ぐ必要がある。そこで、特許文献1では、第二の取付部材に設けられたフック部がブラケットの係止穴に挿入されて係止されることによって、第二の取付部材のブラケットに対する移動が規制されるようになっている。
【0005】
ところが、特許文献1の構造では、第二の取付部材がブラケットに対して抜け方向へ移動しようとしてフック部に力が加わると、フック部を支持する腕部は係止穴からフック部が抜ける方向へ変形し易く、入力が予期し得ないほどに大きい場合には、抜け抗力が十分に発揮できず、フック部と係止穴の係止が解除されるおそれもあった。
【0006】
本発明の解決課題は、第二の取付部材のブラケットからの抜けをより高い信頼性をもって防止することができる、新規な構造のブラケット付防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0008】
第一の態様は、第一の取付部材と第二の取付部材とを本体ゴム弾性体で連結した防振装置本体と、該防振装置本体に取り付けられるブラケットとを備え、該第二の取付部材の幅方向の両側に設けられた一対の嵌着部が、該ブラケットの幅方向の両側に設けられた一対の対向壁部に形成された一対の嵌着溝へ嵌め入れられて、該防振装置本体が該ブラケットに側方から組み付けられているブラケット付防振装置であって、前記ブラケットは、前記一対の対向壁部の対向する内面から前記防振装置本体の該ブラケットへの組付方向の奥方へ向けてそれぞれ延び出す可撓性の係止部を備え、前記第二の取付部材は、該一対の対向壁部との各重ね合わせ面に開口するアウタ凹部を有し、該係止部が先端に向けて前記ブラケットの幅方向の内側へ傾斜する傾斜部分を有することによって、該係止部の先端面が該アウタ凹部に差し入れられており、該係止部の該先端面が該アウタ凹部の奥方の壁内面に係止されて、該第二の取付部材が該ブラケットに対して組付方向と反対の抜け方向への相対変位を制限されているものである。
【0009】
本態様に従う構造とされたブラケット付防振装置によれば、防振装置本体がブラケットから抜けようとする際に、ブラケットから傾斜部分をもって奥方へ延び出した係止部が第二の取付部材のアウタ凹部に差し入れられて、係止部の先端面がアウタ凹部の奥方の壁面に係止されることによって抜けが防止される。
【0010】
係止部の先端面に作用する当接反力は、係止部の傾斜部分の変形による傾動がアウタ凹部によって規制されることによって、係止部に対して主として延出方向の圧縮力として作用する。それゆえ、防振装置本体のブラケットに対する抜け抗力が、係止部の突っ張りによってより大きく発揮される。
【0011】
第二の態様は、第一の態様に記載されたブラケット付防振装置において、前記対向壁部から延び出した前記係止部の先端部分が前記組付方向と平行に奥方へ直線的に延びており、該係止部の基端部分が前記傾斜部分とされているものである。
【0012】
本態様に従う構造とされたブラケット付防振装置によれば、傾斜部分が係止部の基端部分に設けられていることによって、係止部の先端部分がアウタ凹部へ差し入れられる。アウタ凹部へ差し入れられる係止部の先端部分が防振装置本体のブラケットに対する組付方向へ直線的に延びていることによって、係止部の先端面に作用するアウタ凹部への当接反力が、係止部に対して延出方向の圧縮力として作用し易くなる。それゆえ、防振装置本体のブラケットに対する抜け抗力が、係止部の突っ張りによって大きく発揮される。
【0013】
第三の態様は、第一又は第二の態様に記載されたブラケット付防振装置において、前記対向壁部における前記嵌着溝の底面に逃がし凹部が形成されており、前記係止部が該逃がし凹部に位置して設けられているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされたブラケット付防振装置によれば、防振装置本体をブラケットに組み付ける際に、係止部の変形が逃がし凹部によって許容される。それゆえ、アウタ凹部の奥側の壁部が係止部を乗り越える際の抵抗が低減されて、防振装置本体とブラケットの組付けに要する力が低減される。
【0015】
第四の態様は、第一~第三の何れか1つの態様に記載されたブラケット付防振装置において、前記係止部の前記対向壁部側の基端が先端よりも厚肉とされているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされたブラケット付防振装置によれば、係止部において延出方向の圧縮力による歪が大きくなり易い基端が先端よりも厚肉とされることにより、係止部の基端において強度の向上が図られる。また、係止部において先端が基端よりも薄肉であることから、係止部の先端は変形し易くなっており、防振装置本体がブラケットに組み付けられる際に、アウタ凹部の奥方の壁部が係止部を乗り越え易く、防振装置本体をブラケットに容易に組み付けることができる。
【0017】
第五の態様は、第一~第四の何れか1つの態様に記載されたブラケット付防振装置において、前記係止部の当接によって該係止部の変形量を制限するストッパ面が前記アウタ凹部の凹底面によって構成されているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされたブラケット付防振装置によれば、アウタ凹部へ差し入れられた係止部の変形が、アウタ凹部の凹底面への当接によって広い範囲にわたって制限され得る。それゆえ、係止部の突っ張りに際して係止部の変形が抑制されて、係止部の先端面がアウタ凹部の奥方の壁内面に当接することによる抜け抗力が効率的に発現されると共に、係止部の過大な変形による損傷が回避される。
【0019】
第六の態様は、第一~第五の何れか1つの態様に記載されたブラケット付防振装置において、前記係止部の先端には前記アウタ凹部の凹底側へ向かって突出する突出部が設けられており、該係止部の前記先端面に加えて該突出部が該アウタ凹部の前記奥方の壁内面に係止されているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされたブラケット付防振装置によれば、係止部の先端面に加えて突出部がアウタ凹部の奥方の壁内面に係止されることにより、防振装置本体のブラケットからの抜けがより効果的に防止される。
【0021】
第七の態様は、第一~第六の何れか1つの態様に記載されたブラケット付防振装置において、前記係止部の前記先端面は、該係止部の中心軸上において前記アウタ凹部の前記奥方の壁内面に係止されているものである。
【0022】
本態様に従う構造とされたブラケット付防振装置によれば、係止部の先端面がアウタ凹部の奥方の壁内面に係止されることによって係止部に作用する当接反力が、係止部に対して延出方向の圧縮力として効率的に及ぼされる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、横挿入タイプのブラケット付防振装置において、第二の取付部材のブラケットからの抜けをより高い信頼性をもって防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第一の実施形態としてのエンジンマウントを示す斜視図
図2図1に示すエンジンマウントを別の角度から示す斜視図
図3図1に示すエンジンマウントの横断面図
図4図1に示すエンジンマウントの縦断面図であって、図5のIV-IV断面に相当する図
図5図4のV-V断面図
図6図1に示すエンジンマウントを構成するマウント本体の斜視図
図7図1に示すエンジンマウントを構成するアウタブラケットの背面図
図8図7のVIII-VIII断面図
図9図7に示すアウタブラケットの斜視断面図
図10A図1に示すエンジンマウントの製造過程を説明する断面図であって、マウント本体の係止壁部が第二の取付部材の係止部を乗り越える前の状態を示す図
図10B図1に示すエンジンマウントの製造過程を説明する断面図であって、マウント本体の係止壁部が第二の取付部材の係止部を乗り越える途中の状態を示す図
図10C図1に示すエンジンマウントの製造過程を説明する断面図であって、マウント本体の係止壁部が第二の取付部材の係止部を乗り越えた後の状態を示す図
図11】本発明の第二の実施形態としてのエンジンマウントの一部を示す断面図
図12】本発明の第三の実施形態としてのエンジンマウントの一部を示す断面図
図13】本発明の第四の実施形態としてのエンジンマウントの一部を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
図1~5には、本発明に係るブラケット付防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、防振装置本体としてのマウント本体12を備えている。マウント本体12は、図4~6に示すように、第一の取付部材14と第二の取付部材16が本体ゴム弾性体18によって連結された構造を有している。以下の説明において、原則として、上下方向とはマウント中心軸方向である図4中の上下方向を、左右方向とは後述するアウタブラケット72の幅方向である図3中の左右方向を、それぞれ言う。また、原則として、前後方向とは図3中の上下方向であって、前方とは図3中の下方を、後方とは図3中の上方を、それぞれ言う。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0027】
第一の取付部材14は、金属や合成樹脂などで形成された高剛性の部材であって、図4図5に示すように、中実の円形ブロック状とされている。第一の取付部材14は、下方に向けて小径となっている。第一の取付部材14は、上面に開口して上下方向に延びるねじ穴20を有している。
【0028】
第二の取付部材16は、固着部材22を備えている。固着部材22は、第一の取付部材14と同様に高剛性の部材であって、図3に示すように環状とされている。固着部材22の外周部分は、図4図5に示すように、内周部分よりも下方へ突出して上下寸法が大きくされている。固着部材22の左右方向の両端部分は、図3図4図6に示すように、それぞれガイド部24とされている。ガイド部24は、固着部材22において上下寸法が大きくされた外周部分によって構成されており、左右方向の両面がガイド面26とされている。ガイド面26は、左右方向に対して略直交して広がる平面とされている。ガイド面26は、後述するマウント本体12のアウタブラケット72に対する挿入時の案内作用を有利に得るために、前後方向に延びていることが望ましく、本実施形態では前後寸法が上下寸法よりも大きくされている。
【0029】
第二の取付部材16のガイド部24には、図6に示すように、アウタ凹部28が形成されている。アウタ凹部28は、ガイド部24のガイド面26に開口して上下方向に貫通する溝状とされている。アウタ凹部28は、図3に示すように、凹底面30の後部が前後方向に対して傾斜しており、後部において前方へ向けて次第に深さ寸法が大きくなっていると共に、前部において略一定の深さ寸法とされている。アウタ凹部28の凹底面30は、後述する係止部106の左右内側の表面に対応する形状とされている。アウタ凹部28の奥方の壁内面である奥壁内面32は、前後方向に対して略直交して広がる平面とされている。ガイド部24は、アウタ凹部28よりも前側が係止壁部34とされていると共に、アウタ凹部28よりも後側が嵌合部36とされている。
【0030】
第一の取付部材14と第二の取付部材16の固着部材22は、図4,5に示すように、略同一中心軸上で上下に離れて配置されて、本体ゴム弾性体18によって弾性連結されている。本体ゴム弾性体18は、略円錐台形状とされて、小径側となる上部に第一の取付部材14が固着されていると共に、大径側となる下部の外周面に第二の取付部材16の固着部材22が固着されている。本体ゴム弾性体18は、例えば、成形時に第一の取付部材14と第二の取付部材16の固着部材22とに加硫接着されている。
【0031】
本体ゴム弾性体18は、下方に向けて開口する凹状部38を備えている。この凹状部38は、周壁の上部が上方に向けて小径となるテーパ形状とされている。本体ゴム弾性体18は、凹状部38が形成されることによって、下方に向けて外周へ傾斜するテーパ状の断面形状を有している。
【0032】
固着部材22には、第二の取付部材16を構成する仕切部材40が取り付けられている。仕切部材40は、全体として略円板形状とされており、仕切部材本体42と蓋部材44の間に可動部材46が配された構造を有している。
【0033】
仕切部材本体42は、外周部分を周方向に一周に満たない長さで延びる周溝48が、上面に開口して形成されている。周溝48の一方の端部には、周溝48の下壁部を貫通する下連通孔50が形成されている。仕切部材本体42の内周部分には、環状の収容凹所52が上面に開口して形成されている。収容凹所52の下壁部には、複数の下透孔54が貫通形成されている。
【0034】
蓋部材44は、薄肉の円板形状とされており、仕切部材本体42の上面に重ね合わされて固定されている。蓋部材44には、周溝48の他方の端部を覆う部分に上連通孔56が形成されている(図3参照)。蓋部材44には、図3に示すように、収容凹所52を覆う部分に複数の上透孔58が形成されている。
【0035】
仕切部材本体42の収容凹所52には、図4図5に示すように、可動部材46が収容されている。可動部材46は、略円環板形状のゴム弾性体であって、内周端部と外周端部がそれぞれ上側へ突出して厚肉とされている。そして、可動部材46が収容凹所52に差し入れられた状態において、蓋部材44が仕切部材本体42に固定されることにより、可動部材46が仕切部材本体42と蓋部材44の間において収容凹所52に収容されている。可動部材46は、厚肉とされた内周端部と外周端部が、仕切部材本体42と蓋部材44の上下方向間において挟持されており、それら内周端部と外周端部との径方向間において厚さ方向の弾性変形を許容されている。
【0036】
仕切部材40の下方には、薄肉のエラストマで形成された可撓性膜60が設けられている。可撓性膜60は、外周端部が厚肉とされて、仕切部材本体42の下面に重ね合わされている。そして、可撓性膜60の外周端部に対して、環状の支持部材62が下方から重ね合わされており、後述するマウント本体12のアウタブラケット72への装着状態において、可撓性膜60の外周端部が仕切部材本体42と支持部材62の間で挟持されている。
【0037】
支持部材62は、本実施形態において第二の取付部材16を構成する部材であって、固着部材22と同様に高剛性の部材とされている。支持部材62は、後述するマウント本体12のアウタブラケット72への装着状態において、内周部分が可撓性膜60を挟持すると共に、外周部分が仕切部材本体42の下面に当接する。これにより、固着部材22と仕切部材40と支持部材62とが上下方向において相互に位置決めされて、それら固着部材22と仕切部材40と支持部材62とによって本実施形態の第二の取付部材16が構成される。
【0038】
本体ゴム弾性体18の一体加硫成形品を構成する固着部材22に対して、仕切部材40と可撓性膜60が取り付けられることにより、本体ゴム弾性体18と仕切部材40の間には、壁部の一部が本体ゴム弾性体18で構成された受圧室64が形成されている。また、仕切部材40と可撓性膜60の間には、壁部の一部が可撓性膜60で構成された平衡室66が形成されている。受圧室64と平衡室66には、非圧縮性流体が封入されている。非圧縮性流体は特に限定されるものではないが、例えば水やエチレングリコールなどが採用される。非圧縮性流体は、混合液であっても良い。
【0039】
受圧室64と平衡室66は、周溝48を含んで構成されるオリフィス通路68によって、相互に連通されている。オリフィス通路68は、仕切部材40の外周部分を周方向に延びており、一方の端部が上連通孔56において受圧室64に連通されていると共に、他方の端部が下連通孔50において平衡室66に連通されている。そして、第一の取付部材14と第二の取付部材16の間に上下方向の振動が入力されて、受圧室64と平衡室66の間に内圧差が生じると、受圧室64と平衡室66の間でオリフィス通路68を通じた流体流動が生じて、流体の流動作用に基づく高減衰作用などの防振効果が発揮されるようになっている。オリフィス通路68は、流動流体の共振周波数であるチューニング周波数が、通路断面積と通路長さの比によって防振対象振動の周波数に調節されており、例えば、エンジンシェイクに相当する10Hz程度の低周波に設定される。
【0040】
収容凹所52に配された可動部材46の上下両面には、受圧室64の液圧と平衡室66の液圧との各一方が及ぼされている。そして、第一の取付部材14と第二の取付部材16の間に上下方向の振動が入力されて、受圧室64と平衡室66の間に内圧差が生じると、可動部材46が厚さ方向に弾性変形して、受圧室64の液圧を平衡室66に伝達して逃すようになっている。
【0041】
低周波大振幅振動が入力される場合には、オリフィス通路68を通じた流体流動が共振状態で積極的に生じて、高減衰による防振効果が発揮される。低周波大振幅振動が入力される場合には、可動部材46の変形が入力振動に追従しきれず、可動部材46の変形による液圧を逃す作用が低減されることから、オリフィス通路68を通じた流体の流動が効率的に生じる。中乃至高周波の小振幅振動が入力される場合には、オリフィス通路68が反共振によって実質的な目詰まり状態になるが、可動部材46が共振状態で積極的に弾性変形して液圧を逃すことにより、低動ばね化による防振効果が発揮される。
【0042】
マウント本体12には、図1~5に示すように、インナブラケット70とブラケットとしてのアウタブラケット72が取り付けられている。
【0043】
インナブラケット70は、板状の部材であって、第一の取付部材14の上面に重ね合わされて前方(図5中の右方)へ延び出す連結部74と、連結部74の前方に一体形成された取付部76とを、備えている。連結部74は、第一の取付部材14の上面に重ね合わされる部分に、上下方向に貫通するボルト孔78を備えている。取付部76は、連結部74に対して左右両側へ突出しており、上下方向に貫通するボルト孔80,80を備えている。そして、インナブラケット70は、連結部74のボルト孔78に挿通された連結ボルト82が、第一の取付部材14のねじ穴20に螺着されることにより、第一の取付部材14に固定されて、マウント本体12に取り付けられている。なお、インナブラケット70は、後述するマウント本体12がアウタブラケット72に装着された状態において、取付部76がアウタブラケット72よりも前方に突出しており、連結部74がアウタブラケット72の挿通孔96(後述)に挿通されて第一の取付部材14に固定される。
【0044】
アウタブラケット72は、図7図8に示すように、一対の対向壁部84,84を備えている。対向壁部84,84は、それぞれ上下方向に延びており、左右方向で相互に対向して設けられている。対向壁部84,84の上端部は、一体形成された天壁部86によって相互に連結されている。対向壁部84,84の下端部は、一体形成された底壁部88によって相互に連結されている。対向壁部84,84の下端部には、左右方向の外側へ向けて突出する取付片90がそれぞれ設けられており、各取付片90には上下方向に貫通するボルト孔92が形成されている(図1図2参照)。
【0045】
アウタブラケット72は、図1図5に示すように、対向壁部84,84の前端部分を一体的につなぐ奥壁部94を備えている。奥壁部94は、前後方向に対する交差方向に広がる板状とされており、左右両端部が対向壁部84,84につながっている。奥壁部94の上端部は、天壁部86に対して下側へ離れており、奥壁部94と天壁部86の間には、前後方向に貫通する挿通孔96が形成されている。
【0046】
アウタブラケット72において、対向壁部84,84と天壁部86と底壁部88と奥壁部94とによって囲まれた空間は、マウント本体12が収容されるマウント収容空所98とされている。マウント収容空所98は後方へ向けて開放された凹所状とされており、マウント収容空所98の後方への開口が挿入開口部100とされている(図2図5参照)。また、マウント収容空所98は、上部において挿通孔96を通じて前方へ向けて開放されている。
【0047】
一対の対向壁部84,84によって構成されたマウント収容空所98の壁内面は、対向内面102,102とされている。対向内面102,102には、図7に示すように、嵌着溝104,104が開口している。嵌着溝104,104は、図9に示すように、前後方向へ直線的に延びており、後端部が一対の対向壁部84,84の後端まで達して挿入開口部100においてアウタブラケット72の後面に開口している。換言すれば、嵌着溝104,104は、挿入開口部100から奥方である前方へ向けて直線的に延びている。嵌着溝104,104は、一対の対向内面102,102の下部に設けられており、対向内面102,102は、上部よりも下部において左右方向の対向面間距離が大きくされている。
【0048】
各対向壁部84には、対向内面102から延び出す係止部106が一体形成されている。係止部106は、板状とされており、板厚方向の可撓性及び弾性を有している。対向内面102において突出する係止部106は、図8図9に示すように、基端部分108が前方に向けて左右方向の内側へ傾斜して延びる傾斜部分とされていると共に、先端部分110が略前後方向で前方へ向けて延びている。係止部106の左右内側の表面と、アウタ凹部28の凹底面30は、相互に対応する形状とされている。本実施形態では、アウタ凹部28の凹底面30と係止部106の左右内側の表面との左右方向の対向面間距離が、図3に示すように、後部において前部よりも大きくされている(図3参照)。係止部106の先端面112は、前後方向に対して略直交して広がる平面とされている。
【0049】
各対向壁部84の対向内面102には、図8図9に示すように、逃がし凹部114が形成されている。逃がし凹部114は、前後方向に延びる溝状であって、嵌着溝104の前方部分において嵌着溝104の底面に開口している。逃がし凹部114は、対向壁部84における係止部106の基端よりも前方に位置している。係止部106は、逃がし凹部114に対して左右方向の内側に配されている。係止部106は、対向内面102における逃がし凹部114の底面によって構成された部分に対して、左右方向の内側に離れて位置しており、係止部106と逃がし凹部114の底面との間にスペースが設けられている。それゆえ、係止部106は、左右方向の外側への変形及び移動が、逃がし凹部114によって許容されている。なお、本実施形態の各対向壁部84には、図9に示すように、逃がし凹部114と連続する溝状の一対の切込部116,116が設けられている。切込部116,116は、係止部106よりも上下方向の両外側において、逃がし凹部114から係止部106の基端よりも後方へ向けて直線的に延びている。
【0050】
奥壁部94には、図1に示すように、一対の確認孔118,118が形成されている。確認孔118,118は、奥壁部94を前後方向に貫通する孔であって、図7~9に示すように、嵌着溝104,104の延長上に配置されている。確認孔118,118の上下両側の壁内面は、逃がし凹部114の上下両側の壁内面に対して、上下方向の同じ位置に配されている。確認孔118,118は、左右方向の外側の壁内面が逃がし凹部114の底壁内面と左右方向において同じ位置に配されていると共に、左右方向の内側の壁内面が係止部106の左右方向の内面よりも内側に位置している。これにより、確認孔118を通じて係止部106を前方から視認することが可能とされている。
【0051】
アウタブラケット72は、図1~5に示すように、マウント本体12に取り付けられている。即ち、マウント本体12は、アウタブラケット72のマウント収容空所98に対して、後端の挿入開口部100から組付方向である前方へ向けて差し入れられる。その際に、マウント本体12の第二の取付部材16は、図4に示すように、左右両端部分である嵌着部120,120が、一対の対向壁部84,84の嵌着溝104,104に対して、挿入開口部100側から前方へ向けて挿入される。本実施形態の嵌着部120,120は、第二の取付部材16の構成部材である固着部材22と仕切部材40と支持部材62との左右両端部分によって構成されている。また、第二の取付部材16の支持部材62は、左右方向の両端部分だけでなく、左右方向の中間部分もアウタブラケット72の底壁部88の上面に重ね合わされている。これらにより、第二の取付部材16がアウタブラケット72に固定されて、マウント本体12がアウタブラケット72に上下方向と略直交する後方から組み付けられている。
【0052】
第二の取付部材16の嵌着部120,120が嵌着溝104,104に嵌め合わされることにより、固着部材22と支持部材62の間には、上下方向において接近方向の力が作用する。これにより、固着部材22と仕切部材40の間において本体ゴム弾性体18の下端部が上下方向に圧縮されると共に、仕切部材40と支持部材62の間において可撓性膜60の外周端部が上下方向に圧縮される。その結果、受圧室64及び平衡室66の壁部における流体密性が高められて、液漏れなどの不具合が回避される。
【0053】
第二の取付部材16の嵌着部120,120が嵌着溝104,104に嵌め合わされることにより、第二の取付部材16を構成する固着部材22のガイド面26,26が嵌着溝104,104の各溝底面に重ね合わされている。これにより、第二の取付部材16とアウタブラケット72が左右方向において相互に位置決めされている。
【0054】
アウタブラケット72の対向内面102から突出する係止部106は、図3に示すように、マウント本体12がアウタブラケット72に組み付けられることによって、第二の取付部材16のアウタ凹部28に差し入れられる。
【0055】
すなわち、係止部106は、基端部分108が傾斜部分とされていることによって、嵌着溝104の底面よりも左右方向の内側に位置している。それゆえ、図10Aに示すように、マウント本体12が、アウタブラケット72のマウント収容空所98に対して、後方から前方へ向けて差し入れられることにより、第二の取付部材16の係止壁部34が、アウタブラケット72の係止部106に当接する。
【0056】
マウント本体12がアウタブラケット72に対して更に前進することにより、係止壁部34は、図10Bに示すように、係止部106を弾性的に変形させて左右方向の外側へ押し退けながら、係止部106を乗り越えていく。本実施形態では、係止部106が逃がし凹部114に位置して設けられており、係止部106の左右方向の外側にスペースが確保されていることから、係止壁部34が係止部106を乗り越える際に、係止部106の左右方向の外側への変形及び変位が十分に許容される。しかも、逃がし凹部114が設けられていることにより、係止部106の基端部分108の傾斜角度を必要以上に大きくすることなく、係止部106の左右方向の外側に十分なスペースを確保することができて、後述する圧縮力を効率的に受けることができる。
【0057】
係止壁部34が係止部106よりも前方まで移動すると、図10Cに示すように、係止壁部34の当接によって係止部106に及ぼされていた左右外向きの力が解除されて、係止部106が元の形状に弾性的に復元し、係止部106がアウタ凹部28へ差し入れられる。係止部106は、基端部分108が左右方向の内側へ向けて傾斜して延びていることにより、マウント本体12をアウタブラケット72に対して前方へ移動させるだけで、アウタ凹部28へ差し入れられる。なお、本実施形態では、アウタブラケット72の奥壁部94に設けられた確認孔118を通じた前方からの目視によって、係止部106がアウタ凹部28へ正しく差し入れられていることを、簡単に確認することができる。
【0058】
アウタ凹部28へ差し入れられた係止部106の先端面112は、アウタ凹部28の奥壁内面32に重ね合わされる。係止部106は、係止部106の中心軸L上に位置する先端面112の左右方向の中央がアウタ凹部28内に位置しており、先端面112の左右方向の中央がアウタ凹部28の奥壁内面32に重ね合わされている。本実施形態では、先端面112の全体がアウタ凹部28に収容されて、奥壁内面32に重ね合わされている。
【0059】
係止部106の先端面112は、後述する抜け抗力が速やかに発揮されるように、アウタ凹部28の奥壁内面32に当接していることが望ましいが、隙間をもって対向するように重ね合わされていてもよい。また、係止部106の左右方向の内面は、アウタ凹部28の凹底面30に接触していてもよいし、隙間をもって対向していてもよい。係止部106は、先端面112の全体がアウタ凹部28に収容されていることが望ましく、少なくとも係止部106の中心軸L(図3中の一点鎖線)上において、先端面112がアウタ凹部28に収容されていることが望ましい。要するに、本実施形態において、先端面112は、左右方向の半分以上がアウタ凹部28内に配置されることが望ましい。
【0060】
マウント本体12がアウタブラケット72に対して組付方向と反対の後方へ挿入開口部100を通じて抜けようとする際に、マウント本体12のアウタブラケット72に対する後方(抜け方向)への移動が、係止部106とアウタ凹部28の奥壁内面32との係止によって制限される。即ち、マウント本体12がアウタブラケット72に対して後方へ相対移動しようとすると、係止部106の先端面112がアウタ凹部28の奥壁内面32に押し当てられて係止され、係止部106に対して当接反力が及ぼされる。係止部106は、当接反力の作用によって、傾斜部分である基端部分108の傾斜角度が変化して、先端部分110が左右方向の内側へ移動し、左右方向の内側へ移動した係止部106の先端部分110は、ストッパ面を構成するアウタ凹部28の凹底面30に当接する。これにより、係止部106は、ストッパ面である凹底面30によって先端部分110の左右内側への移動が制限されて、基端部分108の更なる傾斜角度の変化が制限される。基端部分108の傾動が制限されることにより、係止部106に入力される当接反力は、主として中心軸Lの延伸方向の圧縮力として作用する。そして、中心軸Lの延伸方向の圧縮に対する係止部106の優れた耐荷重性能によって、第二の取付部材16のアウタブラケット72に対する後方への移動が制限されて、マウント本体12のアウタブラケット72に対する後方への抜けが防止される。このように、エンジンマウント10では、係止部106の中心軸方向の圧縮に対する優れた耐荷重性を巧く利用して、マウント本体12のアウタブラケット72に対する後方への抜けを防ぐ抜け抗力をより大きく得ることができる。
【0061】
係止部106の先端面112とアウタ凹部28の奥壁内面32は、何れも前後方向に対して直交して広がることから、先端面112と奥壁内面32の係止に際して、先端面112と奥壁内面32の間に左右方向や上下方向の力が作用し難い。それゆえ、係止部106の先端面112に対して直交方向の力が効率的に作用し、前後方向の抜け抗力を効率的に得ることができる。
【0062】
係止部106の先端部分110が前後方向に延びていると共に、係止部106の先端面112とアウタ凹部28の奥壁内面32が、何れも前後方向に対して略直交して広がっている。これにより、先端面112の奥壁内面32に対する当接係止によって係止部106に及ぼされる力の向きが、係止部106の先端部分110における中心軸Lの延伸方向と略一致する。それゆえ、係止部106と奥壁内面32の係止による力が、係止部106に対して、より効率的に中心軸Lの延伸方向の圧縮力として及ぼされる。
【0063】
係止部106の先端面112において中心軸Lがアウタ凹部28内に位置している。これにより、係止部106に作用する当接反力によるモーメントが低減されて、当接反力が係止部106に対してより効率的に圧縮力として及ぼされることから、抜け抗力が効率的に発揮される。本実施形態では、係止部106の先端面112における左右方向の両端が何れもアウタ凹部28内に位置しており、先端面112の全体がアウタ凹部28に収容されている。これにより、係止部106の先端面112が広い範囲にわたってアウタ凹部28の奥壁内面32に当接係止されて、抜け抗力を効率的に得ることができる。
【0064】
係止部106の変形を係止部106への当接によって制限するストッパ面が、アウタ凹部28の凹底面30によって構成されている。アウタ凹部28の凹底面30が係止部106の左右内側の表面に対応する形状とされていることにより、アウタ凹部28へ差し入れられた係止部106が、ストッパ面を構成する凹底面30に広い範囲で当接する。それゆえ、係止部106の圧縮荷重に対する応力による抜け抗力が効率的に発現されると共に、係止部106の過大な変形による損傷が回避される。
【0065】
係止部106において、前後方向に対して非傾斜で延びる先端部分110と、前後方向に対して傾斜して延びる基端部分108とは、滑らかに連続しており、境界部分の外面に角や凹凸が形成されていない。それゆえ、先端部分110から基端部分108へ中心軸Lの延伸方向に力が伝達される際に、局所的な応力集中が回避されて、係止部106の損傷等が回避される。
【0066】
係止部106は、アウタブラケット72の前後方向の中間に設けられていることから、マウント本体12が組み付けられていないアウタブラケット72の単品状態において、係止部106の損傷が防止される。特に、アウタブラケット72の前端部分に奥壁部94が設けられていることにより、係止部106の前方が奥壁部94によって覆われて保護されており、係止部106の損傷防止がより効果的に実現される。
【0067】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、係止部の具体的な形状は適宜に変更され得る。具体的には、例えば、係止部は、前記実施形態に示すような板状に限定されず、ロッド状などであってもよい。また、複数の係止部を上下方向に並んで並列的に設けることもできる。また、以下において説明する図11~13に示す第二~第四の実施形態に係る係止部130,140,150が何れも採用され得る。
【0068】
図11に示す係止部130は、先端においてアウタ凹部28の凹底側である左右方向の内側(図11中の左側)へ向けて突出する突出部132を備えている。そして、係止部130の先端面112に加えて、突出部132がアウタ凹部28の奥壁内面32に係止されるようになっており、マウント本体12のアウタブラケット72からの抜けがより効果的に防止される。
【0069】
図12に示す係止部140は、全体が前後方向に対して傾斜する傾斜部分とされている。このように、係止部は、前後方向と平行に延びる部分を備えていなくてもよい。図12に示すように、アウタ凹部28の凹底面30は、必ずしも係止部140の左右方向の内面(図12中の右側面)と対応する形状に限定されず、係止部140の左右方向の内面とは異なる形状であってもよい。
【0070】
図13に示す係止部150は、基端152が先端部分110よりも厚肉とされている。これにより、応力の集中が生じ易い係止部150の基端152において、強度の向上が図られる。係止部150の先端部分110は、基端152に比して薄肉であることから変形し易く、アウタ凹部28の係止壁部34が係止部150を乗り越え易くなることから、マウント本体12のアウタブラケット72への組付けが容易になる。
【0071】
係止部106の先端面112とアウタ凹部28の奥壁内面32は、何れもマウント本体12のアウタブラケット72との組付方向に対して傾斜していてもよい。このように先端面112と奥壁内面32が組付方向に対して傾斜している場合には、先端面112と奥壁内面32は、相互に面当たりするように傾斜角度を設定されることが好ましい。
【0072】
前記実施形態では、アウタ凹部28が固着部材22を上下方向に貫通する溝状とされていたが、アウタ凹部28は、固着部材22の上下方向の中間部分に設けられた凹所状とされていてもよい。この場合には、アウタ凹部28を上下方向に外れた両側において、固着部材22のガイド面26が、嵌着溝104の溝底面に重ね合わされていてもよい。
【0073】
第二の取付部材16とアウタブラケット72を固定する具体的な構造は、必ずしも前記実施形態の構造に限定されない。すなわち、前記実施形態では、第二の取付部材16を構成する固着部材22と仕切部材40と支持部材62との左右両端部分が、嵌着溝104,104に嵌め入れられる嵌着部120,120とされていたが、例えば、固着部材22の左右両端部分だけが嵌着溝に嵌め入れられる嵌着部とされていてもよい。
【0074】
また、前記実施形態では、第二の取付部材16の嵌着部120,120とアウタブラケット72の嵌着溝104,104の内面とが、直接的に接するように嵌め合わされていた。しかしながら、例えば、第二の取付部材16の嵌着部120,120にゴム弾性体が固着されるなどして、第二の取付部材16の嵌着部120,120とアウタブラケット72の嵌着溝104,104の内面とが、ゴム弾性体を介して間接的に接するようにしてもよい。このように、第二の取付部材16の嵌着部120,120とアウタブラケット72の嵌着溝104,104の内面との間にゴム弾性体を介在させることにより、部品の寸法誤差による固定力のばらつきや、マウント本体12のアウタブラケット72に対する組付けに必要な力のばらつきが低減される等の効果を得ることができる。なお、嵌着部120,120にゴム弾性体を設ける場合に、ゴム弾性体は、本体ゴム弾性体18と独立していてもよいし、本体ゴム弾性体18と一体形成されていてもよい。
【0075】
前記実施形態では、流体封入式の防振装置本体を例示したが、防振装置本体は、例えば流体封入式でないソリッドタイプであってもよい。
【符号の説明】
【0076】
10 エンジンマウント(ブラケット付防振装置)
12 マウント本体(防振装置本体)
14 第一の取付部材
16 第二の取付部材
18 本体ゴム弾性体
20 ねじ穴
22 固着部材
24 ガイド部
26 ガイド面
28 アウタ凹部
30 凹底面
32 奥壁内面(奥方の壁内面)
34 係止壁部
36 嵌合部
38 凹状部
40 仕切部材
42 仕切部材本体
44 蓋部材
46 可動部材
48 周溝
50 下連通孔
52 収容凹所
54 下透孔
56 上連通孔
58 上透孔
60 可撓性膜
62 支持部材
64 受圧室
66 平衡室
68 オリフィス通路
70 インナブラケット
72 アウタブラケット(ブラケット)
74 連結部
76 取付部
78 ボルト孔
80 ボルト孔
82 連結ボルト
84 対向壁部
86 天壁部
88 底壁部
90 取付片
92 ボルト孔
94 奥壁部
96 挿通孔
98 マウント収容空所
100 挿入開口部
102 対向内面
104 嵌着溝
106 係止部(第一の実施形態)
108 基端部分
110 先端部分
112 先端面
114 逃がし凹部
116 切込部
118 確認孔
120 嵌着部
130 係止部(第二の実施形態)
132 突出部
140 係止部(第三の実施形態)
150 係止部(第四の実施形態)
152 基端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13