(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039382
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】荷役物推定装置
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
B66F9/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144376
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】服部 晋悟
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA01
3F333FD13
3F333FD15
3F333FE05
(57)【要約】
【課題】産業車両が荷役物に向けて走行する際に、産業車両の操舵の挙動を安定化させることができる荷役物推定装置を提供する。
【解決手段】荷役物推定装置30は、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の現在の位置及び姿勢を予測する位置姿勢予測部21と、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の現在の位置及び姿勢を観測する位置姿勢観測部22と、メッシュパレット3の位置及び姿勢の予測値とメッシュパレット3の位置及び姿勢の観測値とを用いて、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の現在の位置及び姿勢を推定する位置姿勢推定部23と、予測値及び観測値の比率を設定する比率設定部25と、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離を検出する距離検知部24とを備え、比率設定部25は、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離に応じて、予測値及び観測値の比率を変更する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役を行うことが可能な産業車両に対する荷役物の位置及び姿勢を推定する荷役物推定装置であって、
前記産業車両に対する前記荷役物の過去の位置及び姿勢の推定値を用いて、前記産業車両に対する前記荷役物の現在の位置及び姿勢を予測する予測部と、
前記産業車両に対する前記荷役物の現在の位置及び姿勢を観測する観測部と、
前記予測部により得られた前記荷役物の位置及び姿勢の予測値と前記観測部により得られた前記荷役物の位置及び姿勢の観測値とを用いて、前記産業車両に対する前記荷役物の現在の位置及び姿勢を推定する推定部と、
前記予測値及び前記観測値の比率を設定する比率設定部と、
前記産業車両から前記荷役物までの距離を検出する距離検出部とを備え、
前記比率設定部は、前記距離検出部により検出された前記産業車両から前記荷役物までの距離に応じて、前記予測値及び前記観測値の比率を変更し、
前記推定部は、前記荷役物の位置及び姿勢の予測値と前記荷役物の位置及び姿勢の観測値と前記予測値及び前記観測値の比率とに基づいて、前記産業車両に対する前記荷役物の現在の位置及び姿勢を推定する荷役物推定装置。
【請求項2】
前記比率設定部は、前記産業車両から前記荷役物までの距離が短くなるほど、前記予測値の比率に対して前記観測値の比率を大きくする請求項1記載の荷役物推定装置。
【請求項3】
前記産業車両の操舵を許可しない不感帯の範囲を設定する不感帯設定部を更に備える請求項1または2記載の荷役物推定装置。
【請求項4】
前記不感帯設定部は、前記距離検出部により検出された前記産業車両から前記荷役物までの距離に応じて、前記不感帯の範囲を変更する請求項3記載の荷役物推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役物推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の荷役物推定装置としては、例えば特許文献1に記載されているような技術が知られている。特許文献1に記載の荷役物推定装置は、産業車両であるフォークリフトに搭載されている。荷役物推定装置は、パレットに設けられたマークを撮影するカメラと、パターンマッチング処理に使用するテンプレートのデータを記憶するテンプレート記憶部と、カメラで撮影して得たマークの画像データに対してテンプレートを用いたパターンマッチング処理を行うことで、マークのパターンを画像認識する画像認識処理部と、画像認識処理部により認識されたパターンとカメラにより撮影されたパターンとが一致する点の位置データを求め、この位置データに基づいてマークの位置を割り出す画像演算部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フォークリフトの自動運転を実施する場合には、フォークリフトに対するパレットの位置及び姿勢を推定し、パレットの自動荷役を行う。しかし、フォークリフトからパレットまでの距離に応じて、フォークリフトに対するパレットの位置及び姿勢の推定精度が変化する。具体的には、フォークリフトからパレットまでの距離が長くなるほど、パレットの位置及び姿勢の推定値のばらつきが大きくなる。パレットの位置及び姿勢の推定値のばらつきが大きいと、フォークリフトがパレットに向けて走行する際に、フォークリフトの操舵の挙動が不安定になりやすい。
【0005】
本発明の目的は、産業車両が荷役物に向けて走行する際に、産業車両の操舵の挙動を安定化させることができる荷役物推定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、荷役を行うことが可能な産業車両に対する荷役物の位置及び姿勢を推定する荷役物推定装置であって、産業車両に対する荷役物の過去の位置及び姿勢の推定値を用いて、産業車両に対する荷役物の現在の位置及び姿勢を予測する予測部と、産業車両に対する荷役物の現在の位置及び姿勢を観測する観測部と、予測部により得られた荷役物の位置及び姿勢の予測値と観測部により得られた荷役物の位置及び姿勢の観測値とを用いて、産業車両に対する荷役物の現在の位置及び姿勢を推定する推定部と、予測値及び観測値の比率を設定する比率設定部と、産業車両から荷役物までの距離を検出する距離検出部とを備え、比率設定部は、距離検出部により検出された産業車両から荷役物までの距離に応じて、予測値及び観測値の比率を変更し、推定部は、荷役物の位置及び姿勢の予測値と荷役物の位置及び姿勢の観測値と予測値及び観測値の比率とに基づいて、産業車両に対する荷役物の現在の位置及び姿勢を推定する。
【0007】
このような荷役物推定装置においては、産業車両に対する荷役物の過去の位置及び姿勢の推定値を用いて、産業車両に対する荷役物の現在の位置及び姿勢が予測されると共に、産業車両に対する荷役物の現在の位置及び姿勢が観測される。そして、荷役物の位置及び姿勢の予測値と荷役物の位置及び姿勢の観測値と予測値及び観測値の比率とに基づいて、産業車両に対する荷役物の現在の位置及び姿勢が推定される。このとき、産業車両から荷役物までの距離が検出され、その距離に応じて予測値及び観測値の比率が変更される。従って、産業車両から荷役物までの距離に応じた適切な比率が得られるため、荷役物の位置及び姿勢の推定値のばらつきが抑えられる。これにより、産業車両が荷役物に向けて走行する際に、産業車両の操舵の挙動が安定化する。
【0008】
比率設定部は、産業車両から荷役物までの距離が短くなるほど、予測値の比率に対して観測値の比率を大きくしてもよい。このような構成では、産業車両から荷役物までの距離が長いことで、荷役物の位置及び姿勢の観測値のばらつきが大きくても、予測値の比率に対して観測値の比率が小さくなる。このため、荷役物の位置及び姿勢の推定値のばらつきが更に抑えられる。これにより、産業車両が荷役物に向けて走行する際に、産業車両の操舵の挙動が更に安定化する。
【0009】
荷役物推定装置は、産業車両の操舵を許可しない不感帯の範囲を設定する不感帯設定部を更に備えてもよい。このような構成では、産業車両の操舵量における不感帯の範囲では、操舵が行われない。これにより、産業車両が荷役物に向けて走行する際に、産業車両の操舵の挙動がより安定化する。
【0010】
不感帯設定部は、距離検出部により検出された産業車両から荷役物までの距離に応じて、不感帯の範囲を変更してもよい。このような構成では、産業車両から荷役物までの距離に応じた適切な範囲の不感帯が得られる。これにより、産業車両が荷役物に向けて走行する際に、産業車両の操舵の挙動がより一層安定化する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、産業車両が荷役物に向けて走行する際に、産業車両の操舵の挙動を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る荷役物推定装置を備えた走行制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】フォークリフトの荷役装置により荷役が行われるメッシュパレットを示す正面図である。
【
図3】フォークリフトに対するメッシュパレットの位置及び姿勢の一例をフォークリフトからメッシュパレットまでの走行経路と共に示す概念図である。
【
図4】観測値及び予測値の比率の一例を示すグラフである。
【
図5】メッシュパレットの位置及び姿勢の推定値の一例を比較例と共に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る荷役物推定装置を備えた走行制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図1において、走行制御装置1は、荷役を行うことが可能な産業車両であるフォークリフト2(
図3参照)に搭載されている。ここでは、フォークリフト2は、
図2に示されるようなメッシュパレット3の荷役を行う。
【0015】
メッシュパレット3は、メッシュ状(網状)に構成されたパレット本体4と、このパレット本体4の下部に取り付けられた4つの脚部5とを有している。メッシュパレット3の前面(正面)の下部には、メッシュパレット3の左右方向に延びるプレート6が取り付けられている。
【0016】
プレート6には、2枚の位置検知用のマーカ7が貼り付けられている。マーカ7は、プレート6の左右両端部に貼り付けられている。なお、マーカ7の数としては、特に2枚には限られず、1枚でもよい。この場合には、プレート6の中央部にマーカ7が貼り付けられる。
【0017】
フォークリフト2は、
図3に示されるように、図示しない駆動輪及び操舵輪を有する走行装置8と、この走行装置8の前側に配置された荷役装置9とを備えている。荷役装置9は、メッシュパレット3を保持して昇降させる1対のフォーク10を有している。
【0018】
図1に戻り、走行制御装置1は、フォークリフト2をメッシュパレット3に向けて自動的に走行させるように制御する。走行制御装置1は、車速センサ11と、舵角センサ12と、IMU13と、カメラ14と、レーザセンサ15と、コントローラ16と、走行モータ17と、操舵モータ18とを備えている。
【0019】
車速センサ11は、フォークリフト2の走行速度を検出するセンサである。舵角センサは、フォークリフト2の操舵量としてフォークリフト2のステアリング19の操舵角度を検出するセンサである。IMU13は、フォークリフト2の加速度及び角速度等を検出する慣性計測ユニットである。カメラ14は、メッシュパレット3に設けられたマーカ7を撮像する撮像部である。
【0020】
レーザセンサ15は、フォークリフト2からメッシュパレット3に向けてレーザ光を照射し、メッシュパレット3で反射されたレーザ光を受光する。レーザセンサ15としては、例えばレーザレンジファインダが使用される。
【0021】
コントローラ16は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。コントローラ16は、車速センサ11、舵角センサ12及びIMU13の検出値とカメラ14の撮像画像とレーザセンサ15の受光データとに基づいて、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の位置及び姿勢を推定し、フォークリフト2をメッシュパレット3まで走行させるように走行モータ17及び操舵モータ18を制御する。
【0022】
走行モータ17は、フォークリフト2の駆動輪(前述)を回転させる電動モータである。操舵モータ18は、フォークリフト2の操舵輪(前述)を転舵させる電動モータである。なお、操舵輪の転舵動作に連動して、ステアリング19が自動的に操作される。
【0023】
コントローラ16は、位置姿勢予測部21(予測部)と、位置姿勢観測部22(観測部)と、位置姿勢推定部23(推定部)と、距離検知部24と、比率設定部25と、経路生成部26と、不感帯設定部27と、駆動制御部28とを有している。
【0024】
ここで、車速センサ11、舵角センサ12、IMU13、カメラ14、レーザセンサ15、コントローラ16の位置姿勢予測部21、位置姿勢観測部22、位置姿勢推定部23、距離検知部24、比率設定部25及び不感帯設定部27は、本実施形態の荷役物推定装置30を構成している。
【0025】
荷役物推定装置30は、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の位置及び姿勢を推定する。フォークリフト2に対するメッシュパレット3の位置は、2次元座標(XY座標)で表される。フォークリフト2に対するメッシュパレット3の姿勢は、角度θで表される。
【0026】
位置姿勢予測部21は、車速センサ11、舵角センサ12及びIMU13の検出値と前回得られたメッシュパレット3の位置及び姿勢の推定値とに基づいて、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の現在の位置及び姿勢を予測する。これにより、メッシュパレット3の位置及び姿勢の予測値が得られる。前回得られたメッシュパレット3の位置及び姿勢の推定値は、メッシュパレット3の過去の位置及び姿勢の推定値に相当する。
【0027】
位置姿勢観測部22は、カメラ14の撮像画像に基づいて、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の現在の位置及び姿勢を観測する。これにより、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の位置及び姿勢の観測値が得られる。
【0028】
位置姿勢推定部23は、位置姿勢予測部21により得られたメッシュパレット3の位置及び姿勢の予測値と位置姿勢観測部22により得られたメッシュパレット3の位置及び姿勢の観測値と計測値及び観測地の比率とに基づいて、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の現在の位置及び姿勢を推定する。これにより、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の位置及び姿勢の推定値が得られる。
【0029】
具体的には、位置姿勢推定部23は、カルマンフィルタを用いて、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の現在の位置及び姿勢を推定する。カルマンフィルタは、予測値と観測値とを合成して位置及び姿勢の推定を行う手法である。このとき、カルマンフィルタは、予測値及び観測値のどちらを重要視するかを表すカルマンゲインと称される比率を用いて、予測値と観測値とを合成する。
【0030】
距離検知部24は、レーザセンサ15の受光データに基づいて、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離L(
図3参照)を検知する。距離検知部24は、レーザセンサ15と協働して、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lを検出する距離検出部を構成する。
【0031】
比率設定部25は、位置姿勢推定部23によるメッシュパレット3の位置及び姿勢の推定処理において使用される予測値及び観測値の比率(カルマンゲイン)を設定する。比率設定部25は、距離検知部24により検出されたフォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lに応じて、予測値及び観測値の比率を変更する。
【0032】
カルマンゲインは、位置及び姿勢を予測する際に発生するシステムノイズと、位置及び姿勢を観測する際に発生する観測ノイズとを考慮して設定される。システムノイズは、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lによっては殆ど変わらない。しかし、観測ノイズは、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lによって大きく変わる。具体的には、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lが短いときは、観測ノイズは小さいが、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lが長いときは、観測ノイズは大きくなる。
【0033】
そこで、比率設定部25は、
図4に示されるように、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lが短くなるほど、予測値の比率r1に対して観測値の比率r2(=1.0-r1)を大きくする。このとき、比率設定部25は、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lが短くなるほど、予測値の比率r1を比例的に小さくすると共に観測値の比率r2を比例的に大きくする。なお、
図4に示される比率データは、マップデータとして予め記憶されている。
【0034】
経路生成部26は、位置姿勢推定部23により得られたフォークリフト2に対するメッシュパレット3の位置及び姿勢の推定値に基づいて、メッシュパレット3の荷取り位置までのフォークリフト2の走行経路R(
図3参照)を生成する。メッシュパレット3の荷取り位置は、フォークリフト2のフォーク10がメッシュパレット3を荷取りすることが可能な位置である。
【0035】
不感帯設定部27は、フォークリフト2の操舵を許可しない不感帯の範囲を設定する。フォークリフト2の操舵量における不感帯の範囲では、操舵が行われない。不感帯の範囲は、フォークリフト2の操舵量が規定値以下の範囲である。不感帯設定部27は、距離検知部24により検出されたフォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lに応じて、不感帯の範囲を変更する。
【0036】
例えばフォークリフト2がメッシュパレット3に近づくほど、フォークリフト2の操舵の制御をきめ細かく行う必要がある。そこで、不感帯設定部27は、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lが短くなるほど、不感帯の範囲を比例的に狭くする。
【0037】
駆動制御部28は、経路生成部26により生成された走行経路Rに従ってフォークリフト2をメッシュパレット3に向けて走行させるように走行モータ17及び操舵モータ18を制御する。ここで、駆動制御部28は、フォークリフト2の操舵量に対応する操舵モータ18の制御指令値が不感帯設定部27により設定された不感帯の範囲内であるときは、操舵モータ18を駆動しない。
【0038】
ところで、比較例として、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の位置及び姿勢の観測値のみを用いて、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の現在の位置及び姿勢を推定する場合には、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lによって、メッシュパレット3の位置及び姿勢の推定精度が変わる。
【0039】
例えば
図5(a)に示されるように、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lが長いときは、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の位置及び姿勢の推定値のばらつきが大きくなり、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lが短いときは、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の位置及び姿勢の推定値のばらつきが小さくなる。なお、
図5の横軸は、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lを表している。
図5の縦軸は、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の角度(姿勢)を表している。
【0040】
フォークリフト2に対するメッシュパレット3の位置及び姿勢の推定値(観測値)のばらつきが大きいと、フォークリフト2がメッシュパレット3に向けて走行する際に、フォークリフト2の操舵の挙動が不安定になる。従って、フォークリフト2のステアリング19のがたつきが発生し、結果的にフォークリフト2の振動が増大してしまう。
【0041】
一方、本実施形態では、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の位置及び姿勢の予測値と、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の位置及び姿勢の観測値とを用いて、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の現在の位置及び姿勢が推定される。ここで、例えば
図5(b)に示されるように、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lが長くなるほど、観測値の比率r2に対して予測値の比率r1を大きくすることにより、
図5(a)に示される比較例に比べて、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の位置及び姿勢の推定値のばらつきが小さくなる(
図5(b)中の白丸印参照)。
【0042】
以上のように本実施形態によれば、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の過去の位置及び姿勢の推定値を用いて、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の現在の位置及び姿勢が予測されると共に、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の現在の位置及び姿勢が観測される。そして、メッシュパレット3の位置及び姿勢の予測値とメッシュパレット3の位置及び姿勢の観測値と予測値及び観測値の比率とに基づいて、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の現在の位置及び姿勢が推定される。このとき、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離が検出され、その距離に応じて予測値及び観測値の比率が変更される。従って、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離に応じた適切な比率が得られるため、メッシュパレット3の位置及び姿勢の推定値のばらつきが抑えられる。これにより、フォークリフト2がメッシュパレット3に向けて走行する際に、フォークリフト2の操舵の挙動が安定化する。その結果、フォークリフト2のステアリング19のがたつきが低減されるため、フォークリフト2の振動を抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態では、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離が短くなるほど、予測値の比率に対して観測値の比率が大きくなる。このため、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離が長いことで、メッシュパレット3の位置及び姿勢の観測値のばらつきが大きくても、予測値の比率に対して観測値の比率が小さくなる。このため、メッシュパレット3の位置及び姿勢の推定値のばらつきが更に抑えられる。これにより、フォークリフト2がメッシュパレット3に向けて走行する際に、フォークリフト2の操舵の挙動が更に安定化する。
【0044】
また、本実施形態では、フォークリフト2の操舵を許可しない不感帯の範囲が設定されている。このため、フォークリフト2の操舵量における不感帯の範囲では、操舵が行われない。これにより、フォークリフト2がメッシュパレット3に向けて走行する際に、フォークリフト2の操舵の挙動がより安定化する。
【0045】
また、本実施形態では、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離に応じて、不感帯の範囲が変更される。このため、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離に応じた適切な範囲の不感帯が得られる。これにより、フォークリフト2がメッシュパレット3に向けて走行する際に、フォークリフト2の操舵の挙動がより一層安定化する。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、カルマンフィルタを用いて、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の位置及び姿勢が推定されているが、予測値と観測値とを合成して位置及び姿勢の推定を行うのであれば、特にカルマンフィルタには限られず、例えば他の無限インパルス応答フィルタを用いて、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の位置及び姿勢を推定してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、前回得られたメッシュパレット3の位置及び姿勢の推定値を用いて、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の現在の位置及び姿勢が予測されているが、特にその形態には限られず、過去に得られた1つ又は複数のメッシュパレット3の位置及び姿勢の推定値を用いて、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の現在の位置及び姿勢を予測してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lが短くなるほど、予測値の比率r1に対して観測値の比率r2が比例的に大きくなっているが、特にそのような形態には限られない。フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lが短くなるほど、予測値の比率r1に対して観測値の比率r2を段階的または指数関数的に大きくしてもよい。
【0049】
また、フォークリフト2がメッシュパレット3に対して規定距離以下に近づくまでは、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lが短くなるほど、予測値の比率r1に対して観測値の比率r2を大きくし、フォークリフト2がメッシュパレット3に対して規定距離以下に近づいた後は、予測値の比率r1に対して観測値の比率r2を一定にしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lが短くなるほど、フォークリフト2の操舵を許可しない不感帯の範囲が比例的に狭くなっているが、特にそのような形態には限られない。フォークリフト2からメッシュパレット3までの距離Lが短くなるほど、不感帯の範囲を段階的または指数関数的に狭くしてもよい。
【0051】
また、フォークリフト2の走行開始時には、フォークリフト2の操舵の応答性を確保するために、フォークリフト2の操舵量が規定値以下であっても、不感帯を無効化し、フォークリフト2の操舵を許可してもよい。また、フォークリフト2の操舵を許可しない不感帯も範囲については、特に設定しなくてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、メッシュパレット3にマーカ7が設けられているが、特にその形態には限られず、マーカ7は無くてもよい。この場合には、カメラ14の撮像画像に基づいて、メッシュパレット3の形状及び寸法等を検知することで、フォークリフト2に対するメッシュパレット3の現在の位置及び姿勢を観測する。
【0053】
また、上記実施形態では、フォークリフト2によりメッシュパレット3の荷役が行われているが、荷役物としては、特にメッシュパレット3には限られず、平パレットまたはボックスパレット等であってもよく、或いは荷物等であってもよい。
【0054】
また、上記実施形態の荷役物推定装置30は、フォークリフト2に搭載されているが、本発明は、特にフォークリフト2には限られず、荷役を行うことが可能な産業車両であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
2…フォークリフト(産業車両)、3…メッシュパレット(荷役物)、15…レーザセンサ(距離検出部)、21…位置姿勢予測部(予測部)、22…位置姿勢観測部(観測部)、23…位置姿勢推定部(推定部)、24…距離検知部(距離検出部)、25…比率設定部、27…不感帯設定部、30…荷役物推定装置、L…距離、r1…予測値の比率、r2…観測値の比率。