(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039421
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】樹脂複合成形体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/06 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
B32B27/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144428
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000201582
【氏名又は名称】前澤化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(72)【発明者】
【氏名】野口 大輝
(72)【発明者】
【氏名】椎名 理一
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AC00C
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK01E
4F100AK25A
4F100AK51C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10E
4F100BA13
4F100DE01C
4F100DG01A
4F100GB07
4F100HB11
4F100HB31
4F100JL09
4F100JN01B
4F100JN01E
(57)【要約】
【課題】天然の石材と同等の外観および質感を有し、天然の石材と比較して加工性や運搬性に優れた石目調の材料である樹脂複合成形体を提供する。
【解決手段】第1成形体を、光透過性の第1樹脂で覆った第1成形層と、前記第1成形層の一面に接して設けられ、第2成形体と第2樹脂とを混合した第2成形層と、を有することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1成形体を、光透過性の第1樹脂で覆った第1成形層と、
前記第1成形層の一面に接して設けられ、第2成形体と第2樹脂とを混合した第2成形層と、を有することを特徴とする樹脂複合成形体。
【請求項2】
前記第1樹脂と前記第2樹脂とは、同一の樹脂材料であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂複合成形体。
【請求項3】
前記第1成形体は、金属、繊維、または樹脂のうち、少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂複合成形体。
【請求項4】
前記第1成形層と前記第2成形層との間には、第3樹脂からなる中間層が形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂複合成形体。
【請求項5】
前記第1成形層の他面に接して、光透過性の第4樹脂からなる被覆層が形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の樹脂複合成形体。
【請求項6】
前記被覆層は、前記第1成形層の厚み方向に沿った側面を覆うことを特徴とする請求項5に記載の樹脂複合成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂を含む複合材料によって成形された樹脂複合成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、墓石や石碑などは、石材を成形することによって製造されている。また、建築物の階段、浴槽、表札などのうち、比較的高級な製品などにおいても、石材を用いるものがある。
【0003】
一方、一般的に石材は硬度が高く割れやすいため、所望の形状に加工するためのコストが高くなりやすい。また、石材は比重が大きいものが多いので、搬送のためのコストも高くなりやすい。このため、石材を用いた製品は、樹脂などを用いた同形状の製品と比較して、高コストであるという課題があった。
【0004】
こうした課題を解決するために、例えば、母材となるマトリックス樹脂に、暗色系の着色樹脂粒子を分散させた、石目調の樹脂材料も知られている。このような石目調の樹脂材料は、石材よりも加工が容易であり、かつ比重も小さくて搬送も容易である。
しかしながら、一般的な石目調の樹脂材料は、マトリックス樹脂と、着色樹脂粒子との収縮率の違いにより、成形後の表面に凹凸が生じやすく、表面平滑度が低いという課題があった。
【0005】
このため、例えば、特許文献1では。熱可塑性ポリマーを用いた着色粒子をマトリックス樹脂に分散させることにより、石目調のデザインを施し、この着色粒子として、マトリックス樹脂を重合反応させる際の温度の下で軟化状態となるものを用いた石目調樹脂成形品が開示されている。これにより、着色粒子とマトリックス樹脂との間の収縮率の違いによる、成型時の表面の凹凸の発生を抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたような石目調樹脂成形品は、天然の石材と比較して、外観や質感の違いを容易に認識できる程度であった。このため、天然の石材と同等程度の外観や質感を有し、かつ加工性や運搬性に優れた石目調の材料が望まれている。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、天然の石材と同等の外観および質感を有し、天然の石材と比較して加工性や運搬性に優れた石目調の材料である樹脂複合成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明の樹脂複合成形体は、第1成形体を、光透過性の第1樹脂で覆った第1成形層と、前記第1成形層の一面に接して設けられ、第2成形体と第2樹脂とを混合した第2成形層と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の樹脂複合成形体によれば、第2成形層として、第2樹脂に第2成形体を混合して形成することにより、任意の素材、例えば石目調の外観を有する石材を模した材料を、石材よりも軽量に形成することができる。そして、こうした第2成形体に重ねて、任意のデザインを施した第1成形体を可視光透過性の第1樹脂で覆った第1成形層を形成することにより、任意の素材、例えば石材を模した第2成形体に、任意のデザインを容易に形成することができる。
【0011】
また、本発明では、前記第1樹脂と前記第2樹脂とは、同一の樹脂材料であってもよい。
【0012】
また、本発明では、前記第1成形体は、金属、繊維、または樹脂のうち、少なくともいずれか1つを含んでいてもよい。
【0013】
また、本発明では、前記第1成形層と前記第2成形層との間には、第3樹脂からなる中間層が形成されてもよい。
【0014】
また、本発明では、前記第1成形層の他面に接して、光透過性の第4樹脂からなる被覆層が形成されてもよい。
【0015】
また、本発明では、前記被覆層は、前記第1成形層の厚み方向に沿った側面を覆っていてもよい。
【0016】
なお、前記第一成形層の他面、および第一成形層や第二成形層の側面に平滑性、あるいは耐候性を付与し、厳しい環境下においてもデザイン部の可視化が保持される性能を有するように構成することもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、天然の石材と同等の外観および質感を有し、天然の石材と比較して加工性や運搬性に優れた石目調の材料である樹脂複合成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態である樹脂複合成形体を示す断面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態である樹脂複合成形体を示す断面図である。
【
図3】本発明の第3実施形態である樹脂複合成形体を示す断面図である。
【
図4】本発明の第4実施形態である樹脂複合成形体を示す断面図である。
【
図5】実施例1の樹脂複合成形体を示す外観写真である。
【
図6】実施例1の第1成形層を示す外観写真である。
【
図7】実施例2の樹脂複合成形体を示す外観写真である。
【
図8】実施例3の樹脂複合成形体を示す外観写真である。
【
図9】実施例4の樹脂複合成形体を示す外観写真である。
【
図10】検証例1の試験片の様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の樹脂複合成形体について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態である樹脂複合成形体を示す断面図である。
本実施形態の樹脂複合成形体10は、第1成形体11を、第1樹脂12で覆った第1成形層(デザイン層)13と、この第1成形層13の一面13aに接して設けられ、第2成形体14と第2樹脂15とを混合した第2成形層(基材層)16とを有している。
【0021】
第1成形体11は、任意のデザイン、例えば、樹脂複合成形体10を墓石や表札に用いる際には、任意の文字をプリントしたシート状材料、加飾材料として用いる場合には、任意の絵柄などを象ったシート状材料などを用いることができる。
【0022】
第1成形体11の形成材料としては、繊維、金属、樹脂などを用いることができる。例えば、第1成形体11の形成材料として繊維を用いる場合には、第1樹脂12が含浸可能なものを用いることが好ましい。
【0023】
第1成形体11の形成材料の具体例としては、任意のデザインを施した天然繊維や合成繊維からなる布材、任意のデザインを象ったアルミニウム、ステンレス、銅などからなる金属膜、任意のデザインを施したアクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、オレフィン系樹脂などからなる樹脂シートなどが挙げられる。
【0024】
第1樹脂12は、光透過性の樹脂によって形成されている。ここでいう光透過性の樹脂とは、第1成形層13の他面13bから樹脂複合成形体10を見た時に、第1樹脂12に覆われた第1成形体11が、可視光下、例えば、日中の屋外での自然光下で視認可能な程度の透明度を有する樹脂によって形成される。よって、第1樹脂12は、第1成形層13の他面13bから第1成形体11までの厚みや、第1成形体11の色調などに応じて、第1成形体11が視認できる程度の光透過性を有する樹脂が選択される。
【0025】
第1樹脂12の形成材料の具体例としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂のうち、可視光透過性を有する無色透明や有色透明なものを用いることができる。
【0026】
なお、第1樹脂12は、耐候性を有していてもよい。耐候性を有することで、経年による劣化が抑制され、その視認性を担保できる。
【0027】
このような構成の第1成形層13の他面13bは、ブランクに対し、中心波長295~450nm、強度80(mW/cm2)の紫外線を150時間照射した後であっても、JIS Z 8751に定める方法により算出した鏡面光沢度が、少なくとも50%以上保持される。
【0028】
第2成形体14は、樹脂複合成形体10の視認時に、所望の構成材料を模擬する材料である。例えば樹脂複合成形体10が、墓石や表札などに用いられる石材を模擬する場合、第2樹脂15との混合によって石目調を呈する濃色の樹脂粒、岩石粒、金属粒などを用いる。
【0029】
こうした第2成形体14の形状は、樹脂複合成形体10が模擬する構成材料に応じて選択されればよく、上述した粒状以外にも、例えば、箔状、薄板状、不定形状など、各種形状のものを用いることができる。
【0030】
第2樹脂15は、第2成形体14を混合可能な樹脂、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂などを用いることができる。第2樹脂15は、可視光透過性であっても、可視光遮光性であってもよく、樹脂複合成形体10が模擬する構成材料の外観模様に応じて、各種色調に着色された樹脂を用いることが好ましい。
【0031】
また、第2樹脂15は、第1樹脂12に対して接合性のある樹脂を用いることが好ましい。これにより、特に接着層などを形成せずに、第1成形層(デザイン層)13と第2成形層(基材層)16とを一体化できる。
【0032】
また、第2樹脂15として可視光透過性の樹脂を用いる場合、第1樹脂12と同一の樹脂を用いることもできる。これにより、第1成形層(デザイン層)13と第2成形層(基材層)16とを容易に一体化できる。
【0033】
以上の様な構成の本実施形態の樹脂複合成形体10によれば、基材層となる第2成形層16として、第2樹脂15に第2成形体14を混合して形成することにより、例えば、石目調の外観を有する石材を模した材料を、石材よりも軽量に形成することができる。例えば、第2成形体14として岩石粒を第2樹脂15に混合すれば、石材により近い外観を備え、石材よりも軽量な基材層となる第2成形体14が形成される。
【0034】
そして、こうした第2成形体14に重ねて、任意のデザインを施した第1成形体11を可視光透過性の第1樹脂12で覆った第1成形層13を形成することにより、任意の素材、例えば石材を模した第2成形体14に、任意のデザインを容易に形成することができる。
【0035】
これにより、本実施形態の樹脂複合成形体10は、軽量で任意の形状に成形、加工が容易な樹脂をベースにして、任意のデザインが表面側に形成された、例えば石目調の外観を有する成形体を形成できる。
【0036】
こうした樹脂複合成形体10は、例えば石材を用いて形成した石碑と比較して、外観は実際の石材に近似した石目調の外観を有するものの、石材のように表面を削るなどの手間とコストの掛かる工程を経ずに、容易に任意のデザイン、例えば文字などを形成でき、かつ、外形形状の加工が容易であり、さらに軽量で運搬性にも優れている。
【0037】
また、基材層となる第2成形層16を、可視光透過性の第1樹脂12を有する第1成形層(デザイン層)13で覆うことによって、例えば、岩石粒などを混合した第2成形層16の表面に凹凸があっても、樹脂複合成形体10の表面になる第1成形層13の他面13bを平滑にすることができ、表面平滑性に優れた樹脂複合成形体10を実現できる。
【0038】
なお、本実施形態では、基材層となる第2成形層16として、石目調の外観を有する石材を模したものを挙げたが、これ以外にも、第2樹脂15に第2成形体14として金属粉を混合した金属外観を持つものなど、基材として任意の外観(質感)を有するように形成することができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の樹脂複合成形体の第2実施形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と同様の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
図2は、本発明の第2実施形態である樹脂複合成形体を示す断面図である。
本実施形態の樹脂複合成形体20は、第1成形体11を、第1樹脂12で覆った第1成形層(デザイン層)13と、第2成形体14と第2樹脂15とを混合した第2成形層(基材層)16と、第1成形層(デザイン層)13と第2成形層(基材層)16との間に形成された中間層17と、を有している。
【0040】
中間層17は、第3樹脂によって形成されている。中間層17を構成する第3樹脂としては、第1成形層(デザイン層)13および第2成形層(基材層)16に対して接合性のある樹脂、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂などを用いることができる。
【0041】
また、第3樹脂は、下層となる第2成形層16の外観、例えば、石目調の外観を第1成形層13側から視認できるように、可視光透過性の樹脂を用いることが好ましい。なお、中間層17を構成する第3樹脂は、第1成形層13の第1樹脂12や、第2成形層16を構成する第2樹脂15と同一の樹脂を用いることもできる。
【0042】
樹脂複合成形体20は、こうした中間層17を形成することによって、例えば、第1成形層(デザイン層)13の厚みを薄く成形した際に、第2成形層(基材層)16の表面の凹凸がそのまま第1成形層13に反映されるなど、第1成形層(デザイン層)13の変形を防止する。第2成形層(基材層)16の表面の凹凸を中間層17で緩和して、第1成形層13の他面(外面)13b側を平滑にして、第1成形体11のデザインを鮮明に視認可能にすることができる。また、薄肉化できることから、樹脂12が高価である場合、コスト低減を図ることもできる。
【0043】
(第3実施形態)
次に、本発明の樹脂複合成形体の第3実施形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第2実施形態と同様の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
図3は、本発明の第3実施形態である樹脂複合成形体を示す断面図である。
本実施形態の樹脂複合成形体30は、第1成形体11を、第1樹脂12で覆った第1成形層(デザイン層)13と、第2成形体14と第2樹脂15とを混合した第2成形層(基材層)26と、第1成形層(デザイン層)13と第2成形層(基材層)26との間に形成された中間層17と、を有している。
【0044】
第2成形層(基材層)26は、中空円筒形に形成され、内部が空洞になっている。
こうした第3実施形態の樹脂複合成形体30によれば、例えば、中空な第2成形層(基材層)26の開口端側から第1成形層(デザイン層)13に向けて光を照射することによって、第1成形層13の他面13b側から見ると、第1成形体11がバックライトによって照らし出されるように、鮮明に表示される。よって、第1成形層(デザイン層)13の視認性に優れた樹脂複合成形体30を実現することができる。
【0045】
(第4実施形態)
次に、本発明の樹脂複合成形体の第4実施形態について説明する。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と同様の構成には同一の番号を付し、重複する説明を省略する。
図4は、本発明の第4実施形態である樹脂複合成形体を示す断面図である。
本実施形態の樹脂複合成形体40は、第1成形体11を、第1樹脂12で覆った第1成形層(デザイン層)13と、この第1成形層13の他面13bに接して設けられ、第2成形体14と第2樹脂15とを混合した第2成形層(基材層)16と、第1成形層13の他面13bに接して設けられた被覆層18と、を有している。
【0046】
被覆層18は、第4樹脂によって形成されている。被覆層18を構成する第4樹脂としては、被覆層18の表面から第1成形層(デザイン層)13の第1樹脂12を介して第1成形層13が視認可能な可視光透過性を有し、かつ第1成形層(デザイン層)13に対して接合性のある樹脂、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂などを用いることができる。
【0047】
また、第4樹脂は、下層となる第2成形層16の外観、例えば、石目調の外観を第1成形層13側から視認できるように、可視光透過性の樹脂を用いることが好ましい。第4樹脂は、第1成形層13を構成する第1樹脂12や、第2成形層16を構成する第2樹脂15、中間層17を構成する第3樹脂と、それぞれ同一の樹脂を用いることもできる。
【0048】
樹脂複合成形体40は、こうした被覆層18を形成することによって、第1成形層(デザイン層)13の厚みを薄く成形した場合であっても、外部からの応力による第1成形層13の破損を防止し、また、紫外線や雨水による第1成形層13の劣化を防止することができる。また、第1成形層13と第2成形層16とを個々に成形後、それらを組み合わせて型に配置し、被覆層18によって覆い固めることで製造時の作業性を向上させることもできる。
【0049】
なお、被覆層18は、第1成形層13の他面13bを覆い、更に樹脂複合成形体40の厚み方向に沿った側面まで覆うように形成することもできる(
図4の点線領域を参照)。これにより、樹脂複合成形体40の厚み方向の側面から雨水などが各層の層間に浸入することを防止することができ、樹脂複合成形体40の耐候性を更に高めることができる。
【0050】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例0051】
本発明の樹脂複合成形体の作成例を示す。
(実施例1)
上述した第1実施形態の構成の樹脂複合成形体として、石目調のレリーフを作成した。
第1成形層(デザイン層)の第1成形体として、繊維にデザイン(本実施例では精霊牛の絵柄)をプリントし、この繊維を第1樹脂としてアクリル樹脂で被覆した。
第2成形層(基材層)の第2成形体として石粒を用い、この石粒を第2樹脂としてウレタン樹脂に混合した。そして、第1成形層と第2成形層とを接合して実施例1の樹脂複合成形体を得た。
【0052】
得られた樹脂複合成形体の外観写真を
図5に示す。また、第2成形層の外観写真を
図6に示す。実施例1によれば、石目調の外観を有し、表面にデザインが施された、白御影石風のレリーフが得られた。
【0053】
(実施例2)
上述した第4実施形態の構成の樹脂複合成形体として、石目調の表札を作成した。
第1成形層(デザイン層)の第1成形体として、カーボンファイバーシートにデザイン(本実施例では名前、猫の絵柄)を施し、このシートを第1樹脂としてアクリル樹脂で被覆した。
【0054】
第2成形層(基材層)の第2成形体として石粒を用い、この石粒を第2樹脂としてウレタン樹脂に混合した。そして、第1成形層と第2成形層とを接合し、更に被覆層として、第1成形層(デザイン層)の表面を不飽和ポリエステル樹脂で被覆した。
【0055】
得られた樹脂複合成形体の外観写真を
図7に示す。実施例2によれば、石目調の外観を有し、表面にデザインが施された、黒御影石風の表札が得られた。
【0056】
(実施例3)
実施例3として、上述した第2実施形態の構成の樹脂複合成形体を作成した。この樹脂複合成形体の製造方法の一例を説明する。
まず、円筒状プラスチック容器に耐候性エポキシ樹脂(第1樹脂)を注入後、脱泡処理を行った。次に、耐候性エポキシ樹脂(第1樹脂)を注入後、デザイン画を印字した上質紙(第1成形体)を載置し、オーブンで加熱処理を行い、上質紙(第1成形体)が耐候性エポキシ樹脂(第1樹脂)に覆われた第1成形層を得た。
【0057】
次に、第1成形層の一面側に汎用エポキシ樹脂(第3樹脂)を注入後、オーブンで加熱処理を行い、第1成形層の一面側に中間層を形成した。
【0058】
次に、中間層側に大磯砂(第2成形体)を投入し、更にポリウレタン樹脂(第2樹脂)を注入して混合し、平坦なシリコンシートにて栓をし、硬化させて中間層に接する第2成形層を得た。
【0059】
このような工程を経て、中間層を介して接合された第1成形層と第2成形層とを有する、実施例3の樹脂複合成形体を得た。この実施例3の樹脂複合成形体の外観写真を
図8に示す。実施例3によれば、石目調の外観を有し、表面が緑色でデザインが表面側に施された円筒形の樹脂複合成形体を得ることができた。
【0060】
(実施例4)
上述した第3実施形態の構成に基づく樹脂複合成形体として、その一部を空壁とする中空円筒形の表示体を作成した。
第1成形層(デザイン層)の第1成形体として、上質紙にデザイン(本実施例では社名)を施し、円形の成形型内においてこのシートを第1樹脂として耐候性エポキシ樹脂で被覆し、真空脱泡により脱気した後、加熱により硬化させ、円板状の透明な第1成形体を得た。
【0061】
次に、この第1成形体の一面に中間層として汎用エポキシ樹脂層を形成した後、この汎用エポキシ樹脂層に重ねて円柱状のシリコンゴム(成形型)を設置した。このシリコンゴムの周囲に大磯砂(第2成形体)を充填し、更に黒色のポリウレタン樹脂(第2樹脂)を注入して混合し、平坦なシリコンシートにて栓をし、硬化させて円筒形の第2成形層を得た。
【0062】
得られた樹脂複合成形体の外観写真を
図9に示す。実施例4によれば、黒色石目調の外観を有する円筒形の第2成形体の一方の開放面側が、光透過性の第1成形体で覆われた円筒形の表示体が得られた。
【0063】
(検証例1)
次に、第1実施形態の構成の樹脂複合成形体の耐候性(耐紫外線性)を検証した。
実施例3で用いた耐候性エポキシ樹脂(第1樹脂)からなる試験片(3cm角、厚み2mm)を作成した。そして、作成後の試験片(ブランク)の鏡面光沢度を測定した。次に、試験片(ブランク)に対して紫外線を150時間照射した試験片(UV150H)の鏡面光沢度を測定した。試験片の様子を
図10に示す。
図10中の上が試験片(ブランク)、下が試験片(UV150H)を示している。
【0064】
UV照射:アイスーパーUVテスター(岩崎電気株式会社製(UV光源:メタルハイドロランプ)、ブラックパネル温度:63℃、湿度50%、ウォータースプレー噴霧時間:15秒/時間、照射強度:80mW
鏡面光沢度測定:グロスチェッカーIG331(株式会社堀場製作所製)、測定角度60°計、標準板光沢度:90
【0065】
このようにして測定した結果、試験片(ブランク)は光沢度が83、試験片(UV150H)は光沢度が77であった。紫外線を150時間照射後であっても、鏡面光沢度の低下率は10%未満に抑えられた。よって、このような耐候性エポキシ樹脂(第1樹脂)を用いて第1成形層を形成した樹脂複合成形体は、優れた耐候性(耐紫外線性)を有することが確認された。
【0066】
(検証例2)
次に、第1実施形態の構成の樹脂複合成形体の表面平滑性を検証した。
実施例3の樹脂複合成形体を用いて、第2成形層の表面(中間層側の面)、第2成形層の裏面(中間層側の反対面)および第1成形層の表面(耐候性エポキシ樹脂)のそれぞれの表面粗さRaを測定した。
表面粗さ測定:表面粗さ測定機SJ-210(株式会社ミツトヨ製)
【0067】
上述した測定機によって表面粗さを測定した結果、第2成形層の表面の表面粗さRaは2.949(μm)、第2成形層の裏面の表面粗さRaは6.231(μm)、第1成形層の表面の表面粗さRaは0.080(μm)であった。
【0068】
よって、本実施形態の樹脂複合成形体によれば、岩石粒などを第2樹脂に混合した、表面粗さが大きい第2成形層に、第1樹脂を有する第1成形層を重ねて成型することにより、第2成形層の大きな表面粗さが第1成形層の表面に反映されることが無く、表面が平滑でデザインの視認性に優れた樹脂複合成形体が得られることが確認された。