(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039440
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】硬化性シリコーン組成物、封止材、および光半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20220303BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20220303BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20220303BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/04
C08L83/05
H01L23/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144458
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】520070769
【氏名又は名称】デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】林 昭人
(72)【発明者】
【氏名】堀江 さわ子
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
【Fターム(参考)】
4J002CP033
4J002CP042
4J002CP051
4J002CP121
4J002DB006
4J002GQ01
4J002GQ03
4J002GQ05
4M109AA01
4M109BA03
4M109EA10
4M109EB08
4M109EB12
4M109EC20
4M109GA01
(57)【要約】
【課題】伸び特性に優れる硬化物を形成できる、硬化性シリコーン組成物を提供すること。
【解決手段】(A)平均単位式(I):(R1
3SiO1/2)a(R1
2SiO2/2)b(R1SiO3/2)c(SiO4/2)d(XO1/2)eで表わされ、式(I)中、R1は各々独立に、アルケニル基を含む一価の炭化水素基であり、ただし、一分子当たりのアルケニル基の個数は平均して2個未満であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c<0.9、0≦d<0.5、及び0≦e<0.4であり、a+b+c+d=1.0であり、かつ、c+d>0である、一分子当たりに平均して2個未満のアルケニル基を含有するレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)一分子当たりに2個以上のケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び
(C)硬化反応用触媒、
を含む、硬化性シリコーン組成物により、上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均単位式(I):(R1
3SiO1/2)a(R1
2SiO2/2)b(R1SiO3/2)c(SiO4/2)d(XO1/2)eで表わされ、式(I)中、R1は各々独立に、アルケニル基を含む一価の炭化水素基であり、ただし、一分子当たりのアルケニル基の個数は平均して2個未満であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c<0.9、0≦d<0.5、及び0≦e<0.4であり、a+b+c+d=1.0であり、かつ、c+d>0である、一分子当たりに平均して2個未満のアルケニル基を含有するレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)一分子当たりに2個以上のケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び
(C)硬化反応用触媒、
を含む、硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、一分子当たりに3個以上のケイ素原子結合水素原子を含む、請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
(A)及び(B)成分とは異なる、(D)直鎖状オルガノポリシロキサンをさらに含む、請求項1または2に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
レジン状オルガノポリシロキサンと直鎖状オルガノポリシロキサンとの質量比が、9:1~1:9である、請求項3に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の硬化性シリコーン組成物を含む、封止材。
【請求項6】
請求項5に記載の封止材を備える、光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化性シリコーン組成物に関し、より具体的には、光半導体の封止材に好適に用いられる硬化性シリコーン組成物に関する。また、本発明は、こうした硬化性シリコーン組成物の硬化物からなる封止材、並びに当該封止材により封止された光半導体装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性シリコーン組成物は、硬化して、優れた耐熱性、耐候性、及び透明性を有する硬化物を形成することから、光学材料として広く利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、(A)一分子中に少なくとも2 個のケイ素原子結合アルケニル基と少なくとも1個のケイ素原子結合アリール基を有する直鎖状のオルガノポリシロキサン、(B)一分子中に少なくとも1 個のケイ素原子結合アルケニル基と少なくとも1個のケイ素原子結合アリール基を有し、一般式:RSiO3/2(式中、Rは置換または非置換の一価炭化水素基である。)で表されるシロキサン単位を有する分岐鎖状のオルガノポリシロキサン{(A)成分に対する本成分の含有量の比が重量単位で1/99~99/1となる量}、(C)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン{(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して1~200重量部}、および(D)ヒドロシリル化反応用触媒(本組成物の硬化を促進する量)からなる硬化性オルガノポリシロキサン組成物が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、(A)下記平均組成式(1)(R1SiO3/2)a(R2R3SiO)b(R4R5R6SiO1/2)c(SiO4/2)d(1)(式中、R1~R6はそれぞれ同一もしくは異種の一価炭化水素基を示し、その全一価炭化水素基の1~50モル%は非共有結合性二重結合含有基であり、a、b、c及びdは各シロキサン単位のモル比を示す正数であり、a/(a+b+c+d)=0.40~0.95、b/(a+b+c+d)=0.05~0.60、c/(a+b+c+d)=0~0.05、d/(a+b+c+d)=0~0.10、a+b+c+d=1.0である。)で示されるオルガノポリシロキサンを(A)成分全体の30~100質量%含有する、一分子中に2個以上の非共有結合性二重結合基を有する有機ケイ素化合物、(B)一分子中に珪素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェン
ポリシロキサン、(C)触媒量の白金系触媒を必須成分とする付加硬化型シリコーン樹脂組成物において、(A)成分及び(B)成分のオルガノポリシロキサンがシラノールを含有しないことを特徴とする光半導体素子封止用樹脂組成物が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、400nmと596nmで測定した屈折率の比が1.01以上であり、かつ400nmの屈折率が1.50以上であるシリコーン樹脂からなるLED用シリコーン樹脂レンズが記載されている。
【0006】
また、特許文献4には、(A)一分子中に2個以上の脂肪族不飽和結合を有し、粘度が25℃で100mPa・s以上であるオルガノポリシロキサン、(B)一分子中に3個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)白金族金属系触媒を必須成分として含有し、硬化物が無色透明となることを特徴とするレンズ成形用シリコーン樹脂組成物が記載されている。
【0007】
しかしながら、1分子中に3個以上のケイ素原子結合水素原子を持つ従来のレジン状の架橋剤を含有する硬化性シリコーン組成物は、硬化物の伸び特性が不十分であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004-143361号公報
【特許文献2】特開2006-299099号公報
【特許文献3】特開2006-324596号公報
【特許文献4】特開2006-328102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、より優れた伸び特性を有する硬化物を形成できる、硬化性シリコーン組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、本発明の硬化性シリコーン組成物を含む封止材を提供することにある。また、本発明のさらに別の目的は、本発明の封止材で封止された光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、本件発明者は、鋭意検討した結果、驚くべきことに、一分子中に平均して2個未満のアルケニル基を含有するレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンと、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを組み合わせた硬化性シリコーン組成物が、優れた伸び特性を有するシリコーン硬化物を形成できることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
したがって、本発明は、
(A)平均単位式(I):(R1
3SiO1/2)a(R1
2SiO2/2)b(R1SiO3/2)c(SiO4/2)d(XO1/2)eで表わされ、式(I)中、R1は各々独立に、アルケニル基を含む一価の炭化水素基であり、ただし、一分子当たりのアルケニル基の個数は平均して2個未満であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c<0.9、0≦d<0.5、及び0≦e<0.4であり、a+b+c+d=1.0であり、かつ、c+d>0である、一分子当たりに平均して2個未満のアルケニル基を含有するレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)一分子当たりに少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び
(C)硬化反応用触媒、
を含む、硬化性シリコーン組成物に関する。
【0013】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、一分子当たりに3個以上のケイ素原子結合水素原子を含むことが好ましい。
【0014】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、(A)及び(B)成分とは異なる(D)成分として、直鎖状オルガノポリシロキサンをさらに含むことが好ましい。
【0015】
本発明の硬化性シリコーン組成物に含まれるオルガノポリシロキサン成分において、レジン状オルガノポリシロキサンと直鎖状オルガノポリシロキサンとの質量比が、9:1~1:9であることが好ましい。
【0016】
本発明はまた、本発明に係る硬化性シリコーン組成物を含む、封止材にも関する。
【0017】
本発明はまた、本発明に係る封止材を備える、光半導体装置にも関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る硬化性シリコーン組成物によれば、伸び特性に優れる硬化物を形成できる。また、本発明に係る封止材によれば、本発明の硬化性シリコーン組成物を含むので、伸び特性に優れる硬化物で光半導体を封止できる。また、本発明の光半導体装置によれば、伸び特性に優れる封止材で封止されているので、信頼性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[硬化性シリコーン組成物]
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、
(A)平均単位式(I):(R1
3SiO1/2)a(R1
2SiO2/2)b(R1SiO3/2)c(SiO4/2)d(XO1/2)eで表わされ、式(I)中、R1は各々独立に、アルケニル基を含む一価の炭化水素基であり、ただし、一分子当たりのアルケニル基の個数は平均して2個未満であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c<0.9、0≦d<0.5、及び0≦e<0.4であり、a+b+c+d=1.0であり、かつ、c+d>0である、一分子当たりに平均して2個未満のアルケニル基を含有するレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)一分子当たりに少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び
(C)硬化反応用触媒、
を含む。
【0020】
以下、本発明の硬化性シリコーン組成物の各成分について詳細に説明する。
【0021】
(A)レジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
(A)成分は、一分子中に平均して2個未満のアルケニル基を含有するレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンであり、以下の平均単位式(I)で表される。
平均単位式(I):(R1
3SiO1/2)a(R1
2SiO2/2)b(R1SiO3/2)c(SiO4/2)d(XO1/2)e(式(I)中、R1は各々独立に、アルケニル基を含む一価の炭化水素基であり、ただし、一分子当たりのアルケニル基の個数は平均して2個未満であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦0.95、0≦d<0.5、及び0≦e<0.4であり、a+b+c+d=1.0であり、かつ、c+d>0である)。本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、1種類の(A)一分子中に平均して2個未満のアルケニル基を含有するレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含んでもよいし、2種類以上の(A)一分子中に平均して2個未満のアルケニル基を含有するレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含んでもよい。
【0022】
本明細書において、レジン状オルガノポリシロキサンとは、分子構造中に分岐状または三次元網状構造を有するオルガノポリシロキサンを意味する。一実施形態において、(A)成分のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、その分子構造中に少なくとも1つのRSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)及び/又はSiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を含む。一実施形態において、(A)成分のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、その分子構造中にT単位を含み、Q単位は含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0023】
(A)成分の式(I)で表される一分子中に平均して2個未満のアルケニル基を含有するアルケニル基含有レジン状オルガノポリシロキサンは、好ましくは、分子鎖末端にアルケニル基を含有するが、D単位および/又はT単位上に含んでいてもよい。
【0024】
(A)成分の上記式(I)において、R1の一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。R1は、好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基、好ましくはメチル基、炭素数が6~10個のアリール基、好ましくはフェニル基、及び炭素数が2~6個のアルケニル基、好ましくはビニル基から選択される。
【0025】
(A)成分の上記式(I)においてXは水素原子またはアルキル基である。Xのアルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、およびプロピル基が例示される。
【0026】
(A)成分の上記式(I)において、aは、好ましくは、0.05≦a≦0.8の範囲であり、より好ましくは0.1≦a≦0.6の範囲であり、さらに好ましくは0.15≦a≦0.4の範囲である。(A)成分の上記式(I)において、bは、好ましくは、0≦b≦0.9の範囲であり、より好ましくは0≦b≦0.7の範囲であり、特に0≦b≦0.5の範囲である。(A)成分の上記式(I)において、cは、好ましくは、0.1≦c≦0.9の範囲であり、より好ましくは0.3≦c≦0.85の範囲であり、特に0.5≦c≦0.8の範囲である。(A)成分の上記式(I)において、dは、好ましくは、0≦d≦0.5の範囲であり、より好ましくは0≦d≦0.3の範囲であり、さらに好ましくは0≦d≦0.1の範囲である。上記式(I)において、eは、好ましくは、0≦e≦0.15の範囲であり、より好ましくは0≦e≦0.1の範囲であり、特に0≦e≦0.05の範囲である。
【0027】
(A)成分の式(I)で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、一分子当たり平均して2個未満のアルケニル基を有し、好ましくは一分子当たり平均して1.9個以下のアルケニル基を有し、より好ましくは一分子当たり平均して1.8個以下のアルケニル基を有する。また、(A)成分のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、通常、一分子当たり平均して1個以上のアルケニル基を含み、好ましくは一分子当たり平均して1.1個以上のアルケニル基を含み、より好ましくは一分子当たり平均して1.2個以上のアルケニル基を有する。
【0028】
(A)成分のレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンに含まれるアルケニル基の平均数は、式(I)で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンに含まれる一分子当たりのアルケニル基の個数を全分子数に基づいて平均したものである。なお、アルケニル基の個数は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析法、または以下の滴定法によって求めることができる。
【0029】
滴定法により各成分中のアルケニル基量を定量する方法について説明する。オルガノポリシロキサン成分中のアルケニル基含有量は、ウイス法として一般的に知られる滴定方法により精度よく定量することができる。原理を下記に述べる。まずオルガノポリシロキサン原料中のアルケニル基と一塩化ヨウ素とを式(1)に示すように付加反応させる。次に式(2)に示される反応により、過剰の一塩化ヨウ素をヨウ化カリウムと反応させヨウ素として遊離させる。次に遊離したヨウ素をチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する。
式(1)CH2=CH- + 2ICl → CH2I-CHCl- + ICl(過剰)
式(2)ICl+KI → I2 + KCl
滴定に要したチオ硫酸ナトリウムの量と、別途作成したブランク液との滴定量の差から、成分中のアルケニル基量を定量することができる。
【0030】
また、オルガノポリシロキサンの設計上の平均単位式が明らかな場合、この平均単位式からオルガノポリシロキサン成分中のアルケニル量を計算することもできる。
【0031】
一分子当たりの平均のアルケニル基の個数の算出方法を説明する。一分子当たりのアルケニル基の個数は、アルケニル基をビニル基とみなして計算できる。オルガノポリシロキサンの設計上の平均単位式が明らかな場合、平均単位式から算出したビニル基当量の理論値とGPC測定によって得られる数平均分子量(Mn)の実測値から計算できる。
1分子当たりのアルケニル基(ビニル基)の個数=数平均分子量(実測値)/設計構造のビニル基当量
【0032】
また、オルガノポリシロキサンの設計上の平均単位式が明らかでない場合、上記測定方法により求めた一定量に含まれるアルケニル量と、GPC測定によって得られる数平均分子量(Mn)の実測値から計算できる。
【0033】
(A)成分のオルガノポリシロキサンの分子量は、特に限定されないが、例えば、標準ポリスチレン換算による数平均分子量(Mn)が500以上であり、好ましくは1000以上であり、また、好ましくは100,000以下であり、より好ましくは10,000以下であり、さらに好ましくは5,000以下である。なお、数平均分子量(Mn)は、例えば、GPCで測定することができる。
【0034】
一実施形態において、(A)成分の式(I)で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子結合官能基R1にアリール基を含む。(A)成分のオルガノポリシロキサンのケイ素原子結合官能基R1全体に占めるアリール基の量は、特に限定されないが、例えば、5モル%以上であり、好ましくは10モル%以上であり、より好ましくは15モル%以上であり、さらに好ましくは20モル%以上であり、特に25モル%以上である。また、(A)成分のオルガノポリシロキサンのケイ素原子結合官能基R1全体に占めるアリール基の量は、例えば、65モル%以下であり、好ましくは60モル%以下であり、さらに好ましくは55モル%以下である。なお、ケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0035】
(A)成分の式(I)で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンが、ケイ素原子結合官能基R1にアリール基を含む場合、好ましくは、アリール基はSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)に含まれ得る。M単位及び/又はD単位はアリール基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0036】
成分(A)の式(I)で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンの量は、特に限定されないが、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、好ましくは10質量%以上で含まれ、より好ましくは12質量%以上で含まれ、さらに好ましくは14質量%以上で含まれ、優先的には16質量%以上で含まれ、特に好ましくは18質量%以上で含まれる。また、成分(A)の式(I)で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、例えば、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて90質量%以下の量で含まれ、好ましくは80質量%以下の量で含まれ、より好ましくは70質量%以下の量で含まれ、さらに好ましくは60質量%以下の量で含まれる。
【0037】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
本発明の硬化性シリコーン組成物は、架橋剤として、(B)成分の一分子当たりに2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む。(B)成分は1種のみのオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いてもよく、2種以上のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを組み合わせて用いてもよい。
【0038】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造としては、例えば、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、レジン状、又は環状構造が挙げられる。好ましくは、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状構造又は分岐鎖状構造であり、さらに好ましくは分岐鎖状構造である。好ましくは、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、その分子構造中に少なくとも1つのRSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)及び/又はSiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を含む。一実施形態において、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、その分子構造中にT単位を含み、Q単位は含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。(B)成分は1種のみの構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いてもよく、2種以上の構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを組み合わせて用いてもよい。
【0039】
(B)成分のケイ素原子結合水素原子は、分子鎖両末端か、または、分子鎖の両末端以外の側鎖にケイ素原子結合水素原子が含有されていてもよい。(B)成分中の水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、アルケニル基を除く一価の炭化水素基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が例示される。なお、(B)成分中のケイ素原子には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の水酸基やメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を有していてもよい。
【0040】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、好ましくは、分子鎖末端にケイ素原子結合水素原子を含有する。好ましくは、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)にケイ素原子結合水素原子を有し、D単位及び/又はT単位にはケイ素原子結合水素原子を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0041】
このような(B)成分としては、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、H(CH3)2SiO1/2単位およびSiO4/2単位からなるオルガノポリシロキサン、ならびにH(CH3)2SiO1/2単位、(CH3)3SiO1/2単位およびSiO4/2単位からなるオルガノポリシロキサンが例示される。
【0042】
本発明の好ましい実施形態において、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子当たりに平均して3個以上のケイ素原子結合水素原子を含み、より好ましくは一分子当たりに平均して3.5個以上のケイ素原子結合水素原子を含み、さらに好ましくは一分子当たりに平均して4個以上のケイ素原子結合水素原子を含む。このような(B)成分としては、例えば、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、H(CH3)2SiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、H(CH3)2SiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)SiO3/2単位とからなる共重合体、H(CH3)2SiO1/2単位と(C6H5)SiO3/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0043】
一実施形態において、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ケイ素原子結合官能基にアリール基を含む。(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量は、特に限定されないが、例えば、2モル%以上であり、好ましくは5モル%以上であり、より好ましくは10モル%以上であり、さらに好ましくは15モル%以上である。また、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量は、例えば、40モル%以下であり、好ましくは30モル%以下であり、さらに好ましくは25モル%以下である。
【0044】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、ケイ素原子結合官能基にアリール基を含む場合、好ましくは、アリール基はSiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)に含まれ得る。M単位及び/又はD単位はアリール基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0045】
(B)成分の含有量は、特に限定されないが、例えば、硬化性シリコーン組成物中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が0.1~10モルとなる量であり、好ましくは、0.5~5モルとなり、特に、0.8~2.0モルとなる量であり得る。なお、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子の含有量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0046】
また、一分子当たりに含まれる平均のケイ素原子結合水素原子の数は、オルガノポリシロキサンの設計上の平均単位式が明らかな場合、この平均単位式からオルガノポリシロキサン成分中のケイ素原子結合水素原子を計算することもができる。一分子当たりの平均のケイ素原子結合水素原子の個数の算出方法を説明する。一分子当たりのケイ素原子結合水素原子の個数は、オルガノポリシロキサンの設計上の平均単位式が明らかな場合、平均単位式から算出したケイ素原子結合水素原子基当量の理論値とGPC測定によって得られる数平均分子量(Mn)の実測値から計算できる。
1分子当たりのケイ素原子結合水素原子の個数=数平均分子量(実測値)/設計構造のケイ素原子結合水素原子当量
【0047】
また、オルガノポリシロキサンの設計上の平均単位式が明らかでない場合、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析により求めた一定量に含まれるケイ素原子結合水素原子の量と、GPC測定によって得られる数平均分子量(Mn)の実測値から計算できる。
【0048】
また、別の実施形態において、(B)成分の含有量は、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、好ましくは1質量%以上で含まれ、より好ましくは5質量%以上で含まれ、さらに好ましくは8質量%以上で含まれ、特に好ましくは10質量%以上で含まれる。また、成分(B)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、例えば、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて50質量%以下の量で含まれ、好ましくは40質量%以下の量で含まれ、より好ましくは35質量%以下の量で含まれ、さらに好ましくは30質量%以下の量で含まれる。
【0049】
(C)硬化反応用触媒
本発明の硬化性シリコーン組成物は、(C)成分として、オルガノポリシロキサン成分を硬化するための硬化反応用触媒を含む。本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、1種類の(C)硬化反応用触媒を含んでもよいし、2種類以上の(C)硬化反応用触媒を含んでもよい。
【0050】
(C)成分の硬化用触媒は、ヒドロシリル化反応硬化型のシリコーン組成物の硬化を促進するためのヒドロシリル化反応触媒である。このような(C)成分としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金とオレフィンの錯体、白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体、白金を担持した粉体等の白金系触媒;テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム、パラジウム黒、トリフェニルフォスフィンとの混合物等のパラジウム系触媒;さらに、ロジウム系触媒が挙げられ、特に、白金系触媒であることが好ましい。
【0051】
(C)成分の配合量は、本発明の硬化性シリコーン組成物の硬化に必要な触媒量であり、特に制限されるものではないが、例えば白金系触媒を用いた場合、この白金系触媒に含まれる白金金属量は、シリコーン組成物中に重量単位で0.01~1000ppmの範囲内となる量であることが実用上好ましく、特に、0.1~500ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0052】
(D)他のオルガノポリシロキサン成分
本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、(D)成分として、上記(A)及び(B)成分以外の他のオルガノポリシロキサン成分を含んでもよい。(D)成分のオルガノポリシロキサンの分子構造としては、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、分岐鎖状、環状、レジン状、および三次元網状構造が例示される。(D)成分は、これらの分子構造を有する1種のオルガノポリシロキサンであるか、あるいはこれらの分子構造を有する2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。
【0053】
一実施形態において、本発明の(D)成分は、一般式(II):
R1
3SiO(R1
2SiO)mSiR1
3
(式中、R1は各々独立に、一価の炭化水素基であり、mは5~1,000の整数である。)で表される直鎖状のオルガノポリシロキサンを含み得る。
【0054】
上記式(II)において、R1の一価の炭化水素基としては、上述した式(I)のR1と同じものが適用でき、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。R1は、好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基、好ましくはメチル基、及び炭素数が2~6個のアルケニル基、好ましくはビニル基から選択される。
【0055】
上記式(II)において、mは、好ましくは5~500の整数であり、より好ましくは10~300の整数であり、さらに好ましくは15~150の整数であり得る。
【0056】
一実施形態において、式(II)で表される(D)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンにおいて、一分子当たり少なくとも2個のR1はアルケニル基であり得る。好ましい実施形態において、式(II)で表される(D)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンは、分子鎖両末端にアルケニル基を含有する、分子鎖両末端アルケニル基封鎖直鎖状オルガノポリシロキサンであり得る。好ましくは、式(II)で表される(D)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンは、SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)にアルケニル基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0057】
式(II)で表される(D)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンがケイ素原子結合官能基R1にアルケニル基を含む場合、ケイ素原子結合官能基全体に占めるアルケニル基の量は、特に限定されないが、例えば、0.3モル%以上であり、好ましくは0.5モル%以上であり、より好ましくは0.8モル%以上であり、さらに好ましくは1モル%以上である。また、式(II)で表される(D)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合官能基全体に占めるアルケニル基の量は、例えば、20モル%以下であり、好ましくは15モル%以下であり、さらに好ましくは10モル%以下である。
【0058】
また、別の実施形態において、式(II)で表される(D)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子結合官能基R1にアリール基を含む。式(II)で表される(D)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合官能基R1全体に占めるアリール基の量は、特に限定されないが、例えば、2モル%以上であり、好ましくは5モル%以上であり、より好ましくは10モル%以上であり、さらに好ましくは15モル%以上である。また、式(II)で表される(D)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量は、例えば、55モル%以下であり、好ましくは50モル%以下であり、さらに好ましくは45モル%以下である。
【0059】
式(II)で表される(D)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンが、ケイ素原子結合官能基にアリール基を含む場合、好ましくは、アリール基はSiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)に含まれ得る。M単位はアリール基を含んでも含まなくてもよいが、好ましくは含まない。
【0060】
式(II)で表される(D)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンの量は、特に限定されないが、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、好ましくは5質量%以上で含まれ、より好ましくは10質量%以上で含まれ、さらに好ましくは15質量%以上で含まれ、特に好ましくは20質量%以上で含まれる。また、式(II)で表される(D)成分の直鎖状オルガノポリシロキサンは、例えば、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて80質量%以下の量で含まれ、好ましくは75質量%以下の量で含まれ、より好ましくは70質量%以下の量で含まれる。
【0061】
一実施形態において、本発明の(D)成分は、一般式(III):
(R1
2SiO)n
(式中、R1は各々独立に、一価の炭化水素基であり、nは3~50の整数である。)で表される環状のオルガノポリシロキサンを含み得る。
【0062】
上記式(III)において、R1の一価の炭化水素基としては、上述した式(I)のR1と同じものが適用でき、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等の炭素数が7~20個のアラルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられる。R1は、好ましくは、炭素原子数1~6のアルキル基、好ましくはメチル基、及び炭素数が2~6個のアルケニル基、好ましくはビニル基から選択される。
【0063】
上記式(III)において、nは、好ましくは3~40の整数であり、より好ましくは4~20の整数であり得る。
【0064】
一実施形態において、式(III)で表される(D)成分の環状オルガノポリシロキサンにおいて、一分子当たり少なくとも2個のR1はアルケニル基であり得る。式(III)で表される(D)成分の環状オルガノポリシロキサンがケイ素原子結合官能基R1にアルケニル基を含む場合、ケイ素原子結合官能基全体に占めるアルケニル基の量は、特に限定されないが、例えば、10モル%以上であり、好ましくは20モル%以上であり、より好ましくは30モル%以上であり、さらに好ましくは40モル%以上である。また、式(III)で表される(D)成分の環状オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合官能基全体に占めるアルケニル基の量は、例えば、80モル%以下であり、好ましくは70モル%以下であり、さらに好ましくは60モル%以下である。
【0065】
式(III)で表される(D)成分の環状オルガノポリシロキサンの量は、特に限定されないが、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、好ましくは0.3質量%以上で含まれ、より好ましくは0.5質量%以上で含まれ、さらに好ましくは0.8質量%以上で含まれ、特に好ましくは1質量%以上で含まれる。また、式(III)で表される(D)成分の環状オルガノポリシロキサンは、例えば、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて20質量%以下の量で含まれ、好ましくは10質量%以下の量で含まれ、より好ましくは5質量%以下の量で含まれる。
【0066】
さらに別の実施形態において、本発明の(D)成分は、平均単位式(IV):
(R2
3SiO1/2)a(R2
2SiO2/2)b(R2SiO3/2)c(SiO4/2)d(XO1/2)e
(式中、R2は同じかまたは異なるハロゲン置換または非置換の一価の炭化水素基又はエポキシ基含有有機基であり、但し、少なくとも1個のR2はエポキシ基含有有機基であり、Xは水素原子またはアルキル基であり、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c<0.9、0≦d<0.5、及び0≦e<0.4であり、a+b+c+d=1.0であり、かつ、c+d>0である)で表される、エポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンを含み得る。
【0067】
上記(IV)において、R2は、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数が1~12個のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素数が6~20個のアリール基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数が2~12個のアルケニル基;これらの基の水素原子の一部または全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基、及びエポキシ基含有有機基から選択される。エポキシ基含有基としては、例えば、2-グリシドキシエチル基、3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-プロピル基等のエポキシシクロアルキルアルキル基;3,4-エポキシブチル基、7,8-エポキシオクチル基等のエポキシアルキル基が例示され、好ましくは、グリシドキシアルキル基であり、特に好ましくは、3-グリシドキシプロピル基である。
【0068】
好ましい実施形態において、式(IV)のエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンは、R2にアルケニル基を含み、さらに好ましくは(R2
3SiO1/2)単位中のR2にアルケニル基を含む。(D)成分のエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合官能基全体に占めるアルケニル基の量は、特に限定されないが、0.1モル%以上が好ましく、より好ましくは1モル%以上であり、さらに好ましくは2モル%以上であり、例えば25モル%以下であり、好ましくは20モル%以下であり、より好ましくは15モル%以下である。
【0069】
好ましい実施形態において、式(IV)のエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンは、(R2
2SiO2/2)単位中のR2にエポキシ基含有有機基を含む。式(IV)で表される(D)成分のエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサン中のケイ素原子結合官能基全体に占めるエポキシ基含有有機基の量は、特に限定されないが、0.1モル%以上が好ましく、より好ましくは1モル%以上であり、さらに好ましくは5モル%以上であり、例えば50モル%以下であり、好ましくは40モル%以下であり、より好ましくは30モル%以下である。なお、エポキシ基含有有機基の量は、例えば、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR)等の分析によって求めることができる。
【0070】
また、別の実施形態において、式(IV)で表される(D)成分のエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンは、ケイ素原子結合官能基R2にアリール基を含み、好ましくは(R2SiO3/2)単位中のR2にアリール基を含み得る。式(IV)で表される(D)成分のエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合官能基R2全体に占めるアリール基の量は、特に限定されないが、例えば、5モル%以上であり、好ましくは10モル%以上であり、より好ましくは15モル%以上であり、さらに好ましくは20モル%以上である。また、式(IV)で表される(D)成分のエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンのケイ素原子結合官能基全体に占めるアリール基の量は、例えば、60モル%以下であり、好ましくは50モル%以下であり、さらに好ましくは40モル%以下である。
【0071】
上記式(IV)において、aは、好ましくは、0≦a≦0.8の範囲であり、より好ましくは0.05≦a≦0.6の範囲であり、特に0.1≦a≦0.4の範囲である。式(X)において、bは、好ましくは、0≦b≦0.9の範囲であり、より好ましくは0.1≦b≦0.7の範囲であり、特に0.2≦b≦0.5の範囲である。式(X)において、cは、好ましくは、0.1≦c<0.9の範囲であり、より好ましくは0.2≦c≦0.8の範囲であり、特に0.3≦c≦0.7の範囲である。式(X)において、dは、好ましくは、0≦d<0.5の範囲であり、より好ましくは0≦d≦0.4の範囲であり、さらに好ましくは0≦d≦0.3の範囲である。式(X)において、eは、好ましくは、0≦e≦0.3の範囲であり、より好ましくは0≦e≦0.2の範囲であり、特に0≦e≦0.1の範囲である。
【0072】
式(IV)で表される(D)成分のエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンの量は、特に限定されないが、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて、好ましくは0.5質量%以上で含まれ、より好ましくは1質量%以上で含まれ、さらに好ましくは1.5質量%以上で含まれ、特に好ましくは2質量%以上で含まれる。また、式(IV)で表される(D)成分のエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサンは、例えば、全オルガノポリシロキサン成分の総質量に基づいて20質量%以下の量で含まれ、好ましくは10質量%以下の量で含まれ、より好ましくは5質量%以下の量で含まれる。
【0073】
本発明の特定の実施形態において、本発明に係る硬化性シリコーン組成物は、レジン状オルガノポリシロキサンと直鎖状オルガノポリシロキサンとを、例えば、1:9~9:1の質量比で含むことができ、好ましくは1:7~7:1の質量比、より好ましくは1:5~5:1の質量比で含むことができる。また、本発明の別の特定の実施形態において、発明に係る硬化性シリコーン組成物は、レジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンと直鎖状アルケニル基含有オルガノポリシロキサンとを、例えば、1:9~9:1の質量比で含むことができ、好ましくは1:7~7:1の質量比、より好ましくは1:5~5:1の質量比で含むことができる。
【0074】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で任意成分を配合することができる。この任意成分としては、例えば、アセチレン化合物、有機リン化合物、ビニル基含有シロキサン化合物、ヒドロシリル化反応抑制剤、硬化遅延剤、顔料、無機充填剤、または、無機充填剤の表面を有機ケイ素化合物により疎水処理してなる無機充填剤、粉体の表面処理剤又は界面活性剤、ケイ素原子結合水素原子およびケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサン、粘着性付与剤、離型剤、金属石鹸、耐熱性付与剤、耐寒性付与剤、熱伝導性充填剤、難燃性付与剤、チクソ性付与剤、蛍光体、溶剤等が挙げられる。
【0075】
ヒドロシリル化反応抑制剤は、シリコーン組成物のヒドロシリル化反応を抑制するための成分であって、具体的には、例えば、エチニルシクロヘキサノールのようなアセチレン系、アミン系、カルボン酸エステル系、亜リン酸エステル系等の反応抑制剤が挙げられる。反応抑制剤の添加量は、通常、本組成物全体の0.001~5質量%である。
【0076】
硬化遅延剤としては、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル基含有低分子量シロキサン;メチル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン、ビニル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン等のアルキニルオキシシランが例示される。この硬化遅延剤の含有量は限定されないが、本組成物に対して、質量単位で、10~10000ppmの範囲内であることが好ましい。
【0077】
顔料としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物;ガラスバルーン、ガラスビーズ等の中空フィラー;その他、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、チタン酸バリウム、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化アンチモンが例示される。また、黒色顔料として、たとえば、酸化鉄、アニリンブラック、活性炭、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0078】
無機充填剤としては、例えば、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ、シルセスキオキサン、酸化マグネシウム、酸化鉄、タルク、マイカ、ケイ藻土、ガラスビーズ等の金属酸化物粒子;水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の無機充填剤;ガラス繊維等の繊維状充填剤、これらの充填剤をオルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物で表面疎水化処理した充填剤等が挙げられる。また、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー等を配合してもよい。但し、無機充填剤の配合量は、本組成物の40質量%以下であってよく、30質量%以下であってもよく、20質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよい。
【0079】
粉体の表面処理剤としては、特に限定されないが、オルガノシラザン類、オルガノシクロシロキサン類、オルガノクロロシラン類、オルガノアルコキシシラン類、低分子量の直鎖状シロキサン類、有機化合物などが挙げられ、ここで、有機化合物としては、例えば、多価アルコール、アルカノールアミン又はその誘導体、有機シロキサン等の有機ケイ素化合物、高級脂肪酸又はその金属塩、有機金属化合物、有機金属錯体、フッ素系有機化合物、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0080】
接着付与剤としては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を一分子中に少なくとも1個有する有機ケイ素化合物が好ましい。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基が例示され、特に、メトキシ基が好ましい。また、有機ケイ素化合物中のアルコキシ基以外のケイ素原子に結合する基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基等のハロゲン置換もしくは非置換の一価炭化水素基;3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;3,4-エポキシブチル基、7,8-エポキシオクチル基等のエポキシアルキル基;3-メタクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基;水素原子が例示される。この有機ケイ素化合物は本組成物中のアルケニル基またはケイ素原子結合水素原子と反応し得る基を有することが好ましく、具体的には、ケイ素原子結合水素原子またはアルケニル基を有することが好ましい。また、各種の基材に対して良好な接着性を付与できることから、この有機ケイ素化合物は一分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有一価有機基を有するものであることが好ましい。こうした有機ケイ素化合物としては、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサンオリゴマー、アルキルシリケートが例示される。このオルガノシロキサンオリゴマーあるいはアルキルシリケートの分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、環状、網状が例示され、特に、直鎖状、分枝鎖状、網状であることが好ましい。有機ケイ素化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物;一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子、およびケイ素原子結合アルコキシ基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物、ケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシラン化合物またはシロキサン化合物と一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物との混合物、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、エポキシ基含有エチルポリシリケートが例示される。この接着付与剤は低粘度液状であることが好ましく、その粘度は限定されないが、25℃において1~500mPa・sの範囲内であることが好ましい。また、この接着付与剤の含有量は限定されないが、本組成物の合計100質量部に対して0.01~10質量部の範囲内であることが好ましい。
【0081】
離型剤としては、特に限定されないが、例えば、カルボン酸系離型剤、エステル系離型剤、エーテル系離型剤、ケトン系離型剤、アルコール系離型剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記離型剤としては、ケイ素原子を含まないもの、ケイ素原子を含むもの、又は、これらの混合物を使用することができる。より具体的には、離型剤としてカルナウバワックス、モンタンワックス、ステアリン酸カルシウム、モンタン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、モンタン酸亜鉛、エステル系ワックス、オレフィン系ワックス等が例示される。
【0082】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、各成分を混合することにより調製できる。各成分の混合方法は、従来公知の方法でよく特に限定されないが、通常、単純な攪拌により均一な混合物となる。また、任意成分として無機充填剤等の固体成分を含む場合は、混合装置を用いた混合がより好ましい。こうした混合装置としては特に限定がなく、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサー、ヘンシェルミキサー等が例示される。
【0083】
[封止材]
本発明は、本発明の硬化性シリコーン組成物を含む封止材にも関する。本発明の封止材は、光半導体用の封止材である。本発明の封止材の形状は、特に限定されないが、好ましくはフィルム状またはシート状である。そのため、本発明はまた、本発明の硬化性シリコーン組成物を固化して得られるフィルムにも関する。本発明のフィルムは、半導体素子を封止するためのフィルム状封止材に好ましく用いられ得る。本発明の封止材またはフィルムにより封止される半導体は特に限定されず、例えば、SiC、GaN等の半導体または発光ダイオードなどの光半導体が挙げられる。
【0084】
本発明の封止材またはフィルムによれば、本発明の硬化性シリコーン組成物を含むので、伸び特性に優れた硬化物で光半導体を封止でき、信頼性の高い光半導体装置を提供できる。
【0085】
[光半導体装置]
本発明の光半導体装置は、光半導体素子が上記本発明の封止材で封止されものである。換言すれば、光半導体素子が上記本発明の硬化性シリコーン組成物の硬化物により封止、被覆、または接着されている。この光半導体素子としては、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、固体撮像、フォトカプラー用発光体と受光体が例示され、特に、発光ダイオード(LED)であることが好ましい。
【0086】
発光ダイオード(LED)は、光半導体素子の上下左右から発光が起きるので、発光ダイオード(LED)を構成する部品は、光を吸収するものは好ましくなく、光透過率が高いか、反射率の高い材料が好ましい。そのため、光半導体素子が搭載される基板も、光透過率が高いか、反射率の高い材料が好ましい。こうした光半導体素子が搭載される基板としては、例えば、銀、金、および銅等の導電性金属;アルミニウム、およびニッケル等の非導電性の金属;PPA、およびLCP等の白色顔料を混合した熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、BT樹脂、ポリイミド樹脂、およびシリコーン樹脂等の白色顔料を含有する熱硬化性樹脂;アルミナ、および窒化アルミナ等のセラミックスが例示される。
【0087】
本発明の光半導体装置は、伸び特性に優れる本発明の封止材により封止されているので、信頼性が高い。
【実施例0088】
本発明の硬化性シリコーン組成物を以下の実施例および比較例により詳細に説明する。
【0089】
以下の実施例および比較例において、下記に示す原料成分を用いた。以下でMeはメチル基を表し、Viはビニル基を表し、Phはフェニル基を表し、Epは3-グリシドキシプロピル基を表す。
【0090】
(a)成分:レジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
成分a-1:数平均分子量が1600であり、平均単位式(Me3SiO1/2)0.13(ViMe2SiO1/2)0.09(MeSiO3/2)0.39(PhSiO3/2)0.39で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン 一分子当たりの平均ビニル基数:1.5
成分a-2:数平均分子量が1700であり、平均単位式(Me3SiO1/2)0.15(ViMe2SiO1/2)0.07(MeSiO3/2)0.39(PhSiO3/2)0.39で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン 一分子当たりの平均ビニル基数:1.3
成分a-3:数平均分子量が1200であり、平均単位式(Me3SiO1/2)0.07(ViMe2SiO1/2)0.18(PhSiO3/2)0.75で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン 一分子当たりの平均ビニル基数:1.8
成分a-4:数平均分子量が1400であり、平均単位式(Me3SiO1/2)0.13(ViMe2SiO1/2)0.09(MeSiO3/2)0.39(PhSiO3/2)0.39で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン 一分子当たりの平均Vi基数:1.3
成分a’-1:平均単位式(Me3SiO1/2)0.05(ViMe2SiO1/2)0.17(MeSiO3/2)0.39(PhSiO3/2)0.39で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン 一分子当たりの平均ビニル基数:3.0
成分a’-2:平均単位式(ViMe2SiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75で表されるレジン状アルケニル基含有オルガノポリシロキサン 一分子当たりの平均ビニル基数:2.5
成分b-1:平均単位式(HMe2SiO3/2)60(PhSiO3/2)40で表される、オルガノハイドロジェンポリシロキサン:一分子当たりに含まれる平均のケイ素原子結合水素原子の数4.6個
成分c:白金濃度が4.0質量%である白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの錯体:全オルガノポリシロキサン成分100質量部に対して、5000ppmの量(触媒量)
成分d-1:一般式 ViMe2SiO(MePhSiO)20SiViMe2で表される分子鎖両末端アルケニル基封鎖直鎖状オルガノポリシロキサン
成分d-2:一般式 ViMe2SiO(Me2SiO)60(Ph2SiO)30SiViMe2で表される分子鎖両末端アルケニル基封鎖直鎖状オルガノポリシロキサン
成分d-3:一般式 (ViMeSiO)4で表されるアルケニル基含有環状オルガノポリシロキサン
成分d-4:平均単位式(ViMe2SiO1/2)0.18(EpMeSiO2/2)0.29(PhSiO3/2)0.53で表されるエポキシ基含有レジン状オルガノポリシロキサン
【0091】
[実施例1~4および比較例1~3]
各成分を表1及び2に示す組成(質量%)で混合し、硬化性シリコーン組成物を調製した。
【0092】
[評価]
実施例または比較例にかかる各組成物において、硬化物の伸びを次のようにして測定し、結果を表1に示した。
【0093】
硬化性シリコーン組成物をシート状に塗布し、150℃で1時間加熱して1mm厚のシート状の硬化物を作製し、これをJISK6251-1993「加硫ゴムの引張試験方法」に規定のダンベル状3号形に打ち抜き、島津製作所製オートグラフを用いて破断時の伸び(%)を測定した。
【0094】
【0095】
【0096】
以上の結果から分かるとおり、本発明の実施例1及び2の硬化性シリコーン組成物を硬化して得られた硬化物は、優れた伸び特性を示した。
本発明の硬化性シリコーン組成物は、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ、フォトダイオード、フォトトランジスタ、固体撮像、フォトカプラー用発光体と受光体等の光半導体用の封止材として特に有用である。