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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039498
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】土壌改良剤及び土壌改良剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/32 20060101AFI20220303BHJP
   A01G 24/22 20180101ALI20220303BHJP
   A01G 24/42 20180101ALI20220303BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20220303BHJP
   C09K 101/00 20060101ALN20220303BHJP
【FI】
C09K17/32 H
A01G24/22
A01G24/42
A01G7/00 605Z
C09K101:00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144560
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】520330836
【氏名又は名称】竹本 忠士
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(72)【発明者】
【氏名】竹本 忠士
【テーマコード(参考)】
2B022
4H026
【Fターム(参考)】
2B022BA11
2B022BA14
2B022BA15
2B022BA18
2B022BB01
4H026AA08
4H026AA10
4H026AB03
(57)【要約】
【課題】植物の生長を促進することができる土壌改良剤及び土壌改良剤の製造方法を提供する。
【解決手段】土壌改良剤は、抗酸化酵素と、有用微生物群と、植物発酵組成物と、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗酸化酵素と、
有用微生物群と、
植物発酵組成物と、
を含む、土壌改良剤。
【請求項2】
抗酸化酵素、有用微生物群、植物発酵組成物、及び有機物を混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物を発酵させる発酵工程と、
を含む、土壌改良剤の製造方法。
【請求項3】
前記混合工程において混合される前記抗酸化酵素、前記有用微生物群及び前記植物発酵組成物の体積比が、1:1:1である、
請求項2に記載の土壌改良剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌改良剤及び土壌改良剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用又は園芸用の土壌を改良するために、化学系肥料が広く使用されている。化学系肥料は、窒素、リン酸、カリを主成分としている。化学系肥料の散布の結果、土壌中に残存した窒素の一部は硝酸へと変化する。強酸である硝酸は環境汚染の原因ともなっている。
【0003】
環境に配慮して土壌を改良するために、微生物及び植物酵素が利用されている。例えば特許文献1には、有用微生物群(Effective Microorhanisms)を含む肥料の製造方法が開示されている。特許文献2には、植物酵素を含有する液肥が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-302378号公報
【特許文献2】特開2017-193516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
微生物又は植物酵素を利用した肥料の肥効は、化学系肥料と比較して低い。特に、竹林等の痩せた土壌を農業又は園芸に使用するために改良するのには、植物の生長をさらに効率よく促すことができる微生物又は植物酵素を選択する必要がある。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、植物の生長を促進することができる土壌改良剤及び土壌改良剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、微生物等を使用して土壌の改良を施しながら種々の農作物の栽培したところ、植物の生長を効率よく促進することができる成分の組み合わせを特定し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明の第1の観点に係る土壌改良剤は、
抗酸化酵素と、
有用微生物群と、
植物発酵組成物と、
を含む。
【0009】
本発明の第2の観点に係る土壌改良剤の製造方法は、
抗酸化酵素、有用微生物群、植物発酵組成物、及び有機物を混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物を発酵させる発酵工程と、
を含む。
【0010】
この場合、前記混合工程において混合される前記抗酸化酵素、前記有用微生物群及び前記植物発酵組成物の体積比が、1:1:1である、
こととしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、植物の生長を促進することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は下記の実施の形態及び図面によって限定されるものではない。なお、下記の実施の形態において、“有する”、“含む”又は“含有する”といった表現は、“からなる”又は“から構成される”という意味も包含する。
【0013】
(実施の形態)
本実施の形態に係る土壌改良剤は、抗酸化酵素と、有用微生物群と、植物発酵組成物と、有機物と、を含む。
【0014】
抗酸化酵素は、好ましくは植物体内抗酸化酵素である。抗酸化酵素としては、スーパーオキシドディスムターゼ、カタラーゼ及びグルタチオンペルオキシターゼ等が挙げられる。抗酸化酵素として、市販の抗酸化酵素含有飲料(例えば、商品名「アミノシアノ清涼飲料水」、大地の響社製)を用いてもよい。抗酸化酵素含有飲料は、植物を原料として嫌気性微生物及び好気性微生物を用いる複合発酵法で製造される。原料の植物は、桃、松、桜、栗、柿、熊笹、ビワ、梅、いちじく、葉茶、生姜、にんにく、ローレル、ウコン、昆布及び椎茸等である。
【0015】
有用微生物群(以下“EM菌”ともいう)は、具体的には、高温及び高圧領域の耐熱細菌で、光合成細菌と呼ばれる。EM菌は主には紅色非硫黄細菌に分類される菌である。有用微生物群として、市販の有用微生物土壌改良資材(例えば、商品名「EM・1(商標)」、EM研究所製)を用いてもよい。好ましくは、有用微生物群は、複合培養された好気性微生物と嫌気性微生物とを含む。
【0016】
植物発酵組成物は、種々の植物を発酵させて得られる組成物である。植物は、果実、根菜類、穀類、豆、ごま及び海草等である。より具体的には、林檎、柿、バナナ及びパインアップル、アケビ、マタタビ、いちじく、ぶどう及び桃等の果実、ネーブル、ハッサク、みかん及びゆず等の果実、ごぼう、人参、にんにく、れんこん、玄米、もち米、麦、米、大豆、黒ごま、白ごま、昆布、ひじき及び海苔等である。植物の発酵の際に黒糖、はちみつ及び澱粉等が添加されてもよい。発酵は、粗砕し混合した原料を適温に保持することによる自然発酵に加え、酵母等によって発酵させる多段階発酵が好ましい。植物発酵組成物としては、市販の自然発酵食品(例えば、商品名「万田酵素(登録商標)」、万田酵素社製)を使用してもよい。
【0017】
本実施の形態に係る土壌改良剤は、有機物を含んでもよい。有機物は、微生物によって発酵されるものであれば特に限定されない。有機物は、もみがら、米ぬか、糖蜜、おから、魚粉、稲わら、麦わら及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。有機物として、特にもみがら、米ぬか及び糖蜜が好ましい。有機物の一部は発酵によって分解された状態で土壌改良剤に含有されてもよい。
【0018】
続いて、本実施の形態に係る土壌改良剤の製造方法について説明する。土壌改良剤の製造方法は、混合工程と、発酵工程とを含む。
【0019】
混合工程では、抗酸化酵素、有用微生物群、植物発酵組成物、及び有機物を混合する。混合する抗酸化酵素、有用微生物群及び植物発酵組成物の体積比は、特に限定されないが、好ましくは抗酸化酵素、有用微生物群及び植物発酵組成物の体積比は、1:1:1である。混合する有機物の体積も適宜調整されるが、抗酸化酵素、有用微生物群及び植物発酵組成物の総体積に対する有機物の体積は、10~1000倍、100~800倍、300~600倍、好ましくは500倍である。
【0020】
なお、混合工程では、混合物に含まれる水の量に応じて混合物に適宜水を加えてもよい。例えば、混合工程で混合物に加える水の体積は、有機物の体積の10~70%、30~60%又は30~50%、好ましくは40%である。
【0021】
発酵工程では、混合工程で得られた混合物を発酵させる。発酵の温度は、混合物が発酵する温度であれば特に限定されない。発酵の温度は、例えば常温又は室温でもよく、20~40℃であってもよい。混合物を発酵させる時間は、微生物が増殖すれば特に限定されず、10日~数ヶ月であってもよい。混合物を発酵させる時間は、好ましくは数週間である。発酵工程において、有用微生物群を含む種々の微生物による発酵が進み、液状の土壌改良剤が得られる。
【0022】
本実施の形態に係る土壌改良剤は、土壌に混入又は散布することで土壌における植物の生長を促進させることができる。土壌改良剤の使用量は任意であるが、例えば、土壌の体積50cmに対して、0.5~5mL、0.5~3mL又は0.8~1.5mL、好ましくは1mLを使用すればよい。
【0023】
本実施の形態に係る土壌改良剤を適用した土壌は、農業用及び園芸用のいずれにも好適である。農業用の土壌の場合、土壌改良剤は、例えば、かぶ、にんにく、トマト、きゅうり及びしゅんぎく等を含む種々の栽培に好適である。
【0024】
本実施の形態に係る土壌改良剤は、下記実施例に示すように、植物の生長を促進することができる。当該土壌改良剤は、化学系肥料を含有しないため、環境を汚染しない農業及び園芸等の実施に寄与する。
【0025】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例0026】
植物発酵組成物(万田酵素(登録商標)、万田酵素社製)、EM菌(EM・1(商標)、EM研究所製)及び抗酸化酵素含有飲料(アミノシアノ清涼飲料水、大地の響社製)に加え、もみがら、米ぬか、水及び糖蜜を表1に示す量で混合し、実施例を調製した。比較のために、植物発酵組成物、EM菌及び抗酸化酵素含有飲料のいずれか1種を含み、その他の成分は実施例と同じ比較例1~3を調製した。実施例及び比較例1~3の組成を表1に示す。実施例及び比較例1~3を常温に静置し、菌を増殖させた。調製から13日後、菌の増殖が確認できた。
【0027】
【表1】
【0028】
プランター(横35cm、縦20cm、高さ15cm)に土壌を充填し、調製から13日経過し、菌の増殖を確認した実施例及び比較例1~3それぞれ200mLを土壌に散布した。翌日、サラダかぶ(雪の華、トーホク社製)の種子を土壌に植え付けた(0日目)。その後、1日一回、水を土壌に散布し、サラダかぶを栽培した。
【0029】
いずれも7日目に発芽し、13日目に本葉が現れた。本葉の大きさ(本葉の付け根から先端までの長さ)及び最大根径を測定した。本葉の大きさ及び最大根径をそれぞれ表2及び表3に示す。なお、表2及び表3における“無し”は実施例及び比較例1~3のいずれも散布しなかったプランターを示す。
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
本実験に使用した土壌は農業に適していない竹林の土壌であるにも関わらず、実施例を適用したかぶでは、十分な生長が見られた。栽培の途中で害虫が見られたが、実施例を適用したかぶは生長が早いため、害虫の影響をほとんど受けなかった。実施例を適用したかぶの生長が最も早く、かぶも大きかった。実施例を適用したかぶの味は、比較例1~3と比較して良好であった。
【0033】
上記では実施例をかぶに適用したが、にんにく、トマト、きゅうり及びしゅんぎくでも同様に、実施例に係る土壌改良剤は、使用しない場合と比較して植物の生長を促進させた。
【0034】
上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。