(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039512
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】枡
(51)【国際特許分類】
A47G 19/22 20060101AFI20220303BHJP
A45C 11/00 20060101ALI20220303BHJP
A47G 23/02 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
A47G19/22 W
A45C11/00 W
A47G23/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144581
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】593230176
【氏名又は名称】株式会社ユニケミー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】特許業務法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱地 光男
(72)【発明者】
【氏名】濱地 清市
【テーマコード(参考)】
3B001
3B045
3B115
【Fターム(参考)】
3B001AA03
3B001BB01
3B001BB03
3B001BB10
3B001CC17
3B001CC29
3B045DA49
3B045EA02
3B115AA23
3B115BB01
3B115BB11
3B115DA15
(57)【要約】
【課題】 多用途多機能を有し、ワンセットによる商品価値を高めた蓋付の枡を提供する。
【解決手段】 枡10は、ぐい呑みなどの酒器を収容可能な四方を囲む四枚の側板20の下面に接合される底板30と、四枚の側板20の上面に当接または離脱可能であって、酒器を置くコースターとして両面使用可能な蓋体とを備える。底板30は、基板31の下面32に形成される脚部34、35、36、37と、脚部の間に形成される十字状の溝33とを有する。枡本体の開口に蓋体を嵌めて紐を巻き掛けるとき、底板30の溝33が紐を案内して導くから、溝33に紐を十字状に四方から安定して係止することができる。脚部34、35、36、37が載置台に接地し、紐は溝33に嵌合するから、底面の凹凸感が解消する。したがって、巻き掛けられる紐が載置台面に干渉することなしに、枡10は置物として着地が安定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ぐい呑みなどの酒器(50)を収容可能な四方を囲む四枚の側板(20)と、
前記四枚の側板の下面(18)に接合される底板(30、70)と、
前記四枚の側板の上面(17)に当接または離脱可能であって、酒器を置くコースターとして両面使用可能な蓋体(40)とを備え、
前記蓋体は、その下面に、前記四枚の側板の上面に当接可能な座面部(43)と、前記四枚の側板の上面の内縁部に隙間(δ)を介して嵌合可能な方形状の凸面部(42)とを有し、
前記底板は、基礎となる基板(31、71)と、前記基板の下面(32、72)に形成される複数個の脚部(34、35、36、37、74、75、76、77、78、79)と、前記脚部の間に形成される溝(32、33、73、331)とを有することを特徴とする枡。
【請求項2】
前記底板は、基礎となる基板(31)と、前記基板の下面(32)に形成される方形状の凸面部(33)と、この凸面部に形成される脚部(34、35、36、37)とを有することを特徴とする請求項1に記載の枡。
【請求項3】
前記溝は、前記底板において十字状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の枡。
【請求項4】
前記溝は、前記底板において左右対称に十字状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の枡。
【請求項5】
前記溝の深さ(d1)は、枡(10)の外周に紐(56)を巻き掛けたとき、十字状の前記溝に交差して二重に通す紐二個分の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項3または4のいずれか一項に記載の枡。
【請求項6】
前記側板は、一方の縁に4つの凸部(22、23、24、25)を有する第1歯部(21)と、他方の縁に4つの凹部(26、27、28、29)を有する第2歯部(19)とを有し、隣り合う一方の側板の前記第1歯部と他方の側板の前記第2歯部とが直交するように噛み合って組み付けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の枡。
【請求項7】
前記側板と前記底板とからなる枡本体に前記蓋体を嵌合し、前記蓋体と前記枡本体との外周に紐を巻き掛け、前記蓋体の上面で紐を結ぶとき、前記底板に形成される前記溝に紐を嵌合することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の枡。
【請求項8】
前記底板の脚部の高さ(d2)は、枡が載置台から空中に浮き上がっているように見える程度の大きさであることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の枡。
【請求項9】
前記蓋体を前記側板及び前記底板から切り離し、前記側板と前記底板を酒枡として使用可能であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の枡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、枡は、尺貫法の単位である「合」「升」「斗」で体積を計量するための測定器や、日本酒を飲むための「酒枡」として知られている。
酒枡として知られる枡は、計量を目的としないこともあり、式典に用いる「祝枡」や、節分用の豆を入れるための「節分枡」としても知られている。
先行技術文献として、実用新案登録第3207922号公報に示すように、底面に孔を有する枡は知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
枡の周面に紐を巻き掛ける場合に紐の位置を決める工夫を施した枡は知られていない。
本発明は、上述に鑑みてなされたものであり、その目的は、多用途多機能を有し、ワンセットによる商品価値を高めた蓋付の枡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の枡(10)は、ぐい呑みなどの酒器を収容可能な四方を囲む四枚の側板(20)と、前記四枚の側板の下面に接合される底板(30)と、前記四枚の側板の上面に当接または離脱可能であって、酒器を置くコースターとして両面使用可能な蓋体(40)とを備え、
前記蓋体は、その下面に、前記四枚の側板の上面に当接可能な座面部(43)と、前記四枚の側板の上面の内縁部に隙間(δ)を介して嵌合可能な方形状の凸面部(42)とを有する。
前記底板は、基礎となる基板(31)と、前記基板の下面に形成される複数個の脚部(34、35、36、37)と、前記脚部の間に形成される溝(33)とを有する。
【0006】
この枡の構成によると、枡本体(11)の開口に蓋体を嵌めて紐を巻き掛けるとき、底板の溝が紐を案内して導く役割があるから、溝に紐を安定して係止することができる。
このとき、底板の底面における紐の位置特定だけでなく、底面に繋がる四枚の側面を含む六面体のすべての外面に対し巻き掛ける紐の位置決めを安定にする。
紐を巻き掛けた枡を展示台、卓台等に置く場合、脚部の間の溝に紐が嵌まるから、載置台の上面に紐が干渉することなしに、複数個の脚部が枡本体を安定に支持する。載置台に対面する底面の凹凸感が溝によって緩和される。したがって、蓋付きの枡を台に載せたとき、置物として着地感が安定するという効果がある。
枡に紐を巻き掛け、卓台に枡を置く状態では、看者の立場からすると、底面に形成される溝は死角位置になるから、溝が視界に入ること無しにシンプルに紐の巻き掛け位置を特定するという効果がある。
枡本体が複数個の脚部で支持されるから、枡を卓上などの台に載せたとき、台から枡が浮き上がってみえることにより、枡の美的外観が向上する。
【0007】
この枡はぐい呑みなどの酒器の保管ケースまたは「収容箱」としても使用することができる。
この枡の内部空間に、酒器といえども枡とは異なる種類のぐい呑みなどの酒器を収容すれば、その収容される「別異の酒器」を枡の内部空間から取り出して、枡とは趣きの異なる杯として異なる趣好を楽しむことができる。
本発明の枡は、従来の器を収納する箱と対比すると、単なる器収納用箱とは異なり、酒枡としても使用でき、さらに蓋体単体で表面と裏面の両面可能なコースターとしても使用することができる。
本発明の枡を贈物用の収容箱として、ぐい呑みを収容したときには、この枡は、蓋付き枡本体に紐を巻き掛けて展示すると、外観上は、枡のもつ立体感と、枡と紐とが調和した美感を起こさせる商品となる。紐を解いて要素に分解して展示すれば、要素の配置または配列を工夫すれば、美感を高め、これらの要素からなる商品価値を向上することができる。
【0008】
この枡の蓋体に設けられる段付きの凸面部は、枡本体に対する蓋体の位置を安定にする。この蓋体を単体で使用すれば、いずれの酒器にもコースターとして使用できる機能がある。
この枡の材料に例えば檜を用いれば、衝撃からの保護ばかりではなく、抗菌、防虫の効果があり、収納するぐい呑みなどの酒器を衛生的に保存することができる。
【0009】
この枡により枡酒を飲む選択肢とは別に、収容箱から取り出す例えばぐい呑みによって酒を飲む選択肢のいずれかを選ぶことで、趣向の異なる飲酒を楽しむことができるという効果がある。
この枡によれば、多様な用途と機能をもつワンセット商品として商品価値を高められるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る枡を示す斜視図。
【
図2】本発明の第一実施形態に係る枡を示す分解斜視図。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る枡の底板を示す底面図。
【
図5】本発明の一実施形態に係る蓋付きの枡の紐を巻き掛けた状態を示す部分断面図。
【
図6】本発明の第一実施形態に係る蓋付きの枡を示す側面図。
【
図8】本発明の第一実施形態に係る底板及び蓋体の製造工程を示す工程図。
【
図9】本発明の第一実施形態に係る一枚の側板の正面図。
【
図10】本発明の第一実施形態に係る枡本体の組立分解斜視図。
【
図11】本発明の第一実施形態に側板の組込工程を示す模式図。
【
図12】本発明の第一実施形態に係る包装したぐい呑み収容時の断面図。
【
図13】本発明の第一実施形態に係るぐい呑み収容時の断面図。
【
図14】本発明の第一実施形態に係る蓋付き枡の斜視図。
【
図15】本発明の第一実施形態に係る枡の使用状態を説明する説明図。
【
図16】本発明の第一実施形態に係る枡のぐい呑み収容状態を示す平面図。
【
図17】本発明の他の実施形態に係る蓋付き枡の側面図。
【
図18】本発明の第二実施形態に係る蓋付き枡の側面図。
【
図19】本発明の第三実施形態に係る蓋付き枡の側面図。
【
図20】本発明の第四実施形態に係る蓋付き枡の側面図。
【
図21】本発明の第五実施形態に係る蓋付き枡の側面図。
【
図22】本発明の第六実施形態に係る蓋付き枡の側面図。
【
図23】本発明の第一実施形態に係る蓋付きの枡を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0012】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態について
図1から
図16、
図23に基づいて説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る枡10の枡本体11は、4枚の側板20と、底板30とからなる。4枚の側板20は、各両縁が隣り合う側板に接合され、4枚の側板の下面18に底板30が接合される。
図1は、この枡本体11に蓋体40が嵌合され、枡本体11と蓋体40の外周に薄板形状の紐56が巻き掛けられている。
図2は、
図1に示す構成要素を分解した分解斜視図を示している。この実施形態では、枡本体11と蓋体40は天然檜から製作されている。
【0014】
底板30は、
図3から
図7に示すように、基本形が方形状の厚板であり、4辺は均等の長さLになっている。底板30の基礎となる基板31の下面32に段付きで方形状の凸面部33が形成され、この凸面部33に4つの脚部34、35、36、37が形成される。基板31の下面32は、正4角形状であり、基板31の底面に形成される凸面部33は、4つの脚部34、35、36、37に対し十字形状の溝になっている。下面32と凸面部33の間に第1の段差が付けられ、凸面部33と脚部34、35、36、37の間に第2の段差が付けれている。
底板30の4つの脚部34、35、36,37の下面が載置台58に接地する。脚部34、35、36,37の凸面部33からの深さd1は、脚部34、35、36,37の下面32からの深さd2よりも小さい。
【0015】
底板30の底面に形成される十字状の溝は、凸面部33で形成されるが、この溝は紐が巻き掛けられるとき紐の位置決めの役割を果たし、
図1に示すように、枡本体11及び蓋体40に巻き掛けられる紐56の位置を四方から安定させ、位置ずれを防止し、紐56の締め上げ感が高まる。紐56を巻き掛けたとき、底面で紐が載置台58に干渉することがない。これにより紐56の損傷を低減できる。
【0016】
図14に示すように、載置台58に枡10を置いたとき、枡10は4つの脚部34、35、36、37により支持されるから、
図4に示すように、底板30の下面32と載置台58の隙間d2が形成される。これにより、枡10の底板30の下面32に陰59ができ、看者に対し枡10が載置台58から空中に浮き上がったような感覚を起こさせ、枡10の美感を惹起させる。
看者が載置台58から枡10を取り上げ、底板30を眺めれば、
図3に示すように、枡10の外観からは、底面におけるシンメトリな溝形状の美を感じられる。
【0017】
4枚の側板20は、
図1、2、5、6、7、9、10、11に示すように、大きさ同じ、同一形状であり、隣り合う側板20が直交するように各左右の両縁が互いに組み込まれる。
側板20は、基本形が方形状の厚板であり、一方の縁に第1歯部21が形成され、他方の縁に第2歯部19が形成される。側板20の幅は、底板30の幅Lと同じである。第1歯部21は凸部22、23、24、25を有し、第2歯部19は凹部26、27、28、29を有する。一の側板20の第1歯部21は、隣り合う側板20の第2歯部19と隙間無しに嵌合する大きさ及び形状になっている。
【0018】
4枚の側板20の組み込みは、
図10、11に示すように、互いに隣り合う側板20が直交するように、一方の側板20の第1歯部21と他方の側板20の第2歯部19とを噛み合わせ、
図11矢印方向に型52、53により、仮組み込みした4枚の側板20を押圧し、組み付ける。これにより、四方を囲む4枚の側板20が形成される。これら4枚の側板20の下面18と底板30の基板31の上面を接合する。すると、枡本体11が形成される。
【0019】
蓋体40は、
図1、6、7、12、13、14に示すように、基本形が方形状の厚板であり、4辺は均等の長さLになっている。蓋体40は、基礎となる基板41と、その下面43に形成される方形状の凸面部42とからなる。
基板41の下面43は、側板20の上面17に当接する部分である。
蓋体40の凸面部42の一辺の長さは、
図7に示すように、側板20の上面17の内縁で形成される内枠の内壁に隙間δを介して節度感をもって嵌合する程度である。凸面部42の一辺の長さa、対向する側板20間の距離bとすると、理論的には次の関係がある。
b > a
これにより、枡本体11に蓋体40を載せたとき、枡本体11に安定した状態に蓋体40を嵌合することができる。枡本体11が傾いたときでも蓋体40が枡本体11に位置合わせされる。蓋体40の取り外し時にも蓋体40を容易に枡本体11から取り外すことができる。
【0020】
蓋体の製造時、
図8に示すように、(A)に示す四角形状の厚板の素板47を用い、この素板47の下面49の四方の縁を切削し、(B)に示す凸面部48を形成する。この凸面部48は、
図7に示す蓋体40の凸面部42に相当する。
【0021】
底板の製造時、
図8に示すように、(A)に示す四角形状の厚板の素板47を用い、この素板47の下面49の四方の縁を切削し、(B)に示す凸面部48を形成する。この凸面部48を十字状に切削し、(C)に示す脚部34、35、36、37を形成する。すると、
図8(C)に示す脚部34、35、36、37は、
図3及び
図7に示す底板30の脚部34、35、36、37に相当し、十字状の溝となる凸面部33を形成する。
蓋体と底板の製造時、素板47を原材料として共通利用できるため、部品点数及び加工工数を低減し、製造効率が向上する。
【0022】
枡10は、
図12及び
図13に示すように、四枚の側板20を組み込み、底板30を接合した枡本体11の内側空間を形成する。内側空間は、ぐい呑み、おちょこ、杯などと呼称される酒器50を収納するに適した形状及び大きさの空間である。
枡10が有する内部空間は、
図12に示すように、包装材51により保護した酒器50を収容するのに適した大きさであり、
図13に示すように、側板20の内壁12が規制することで酒器50そのものを傾きもせず逆転することもなく枡本体11に収容するのに適した大きさである。
【0023】
(展示状態)
本実施形態の枡10をぐい呑みなどの酒器50とともにぐい呑み付きの商品として販売する一例について説明する。
図3及び
図14に示すように、枡10は脚部34、35、36、37が載置台58に接地するから、枡10に上方あるいは斜方から光が当たると底板30の下面32に陰影59ができ、看者に対し枡10が載置台58から空中に浮き上がったような感覚を起こさせ、枡10の美感を惹起させる。
【0024】
また素材が天然檜からなる木目調の枡10は、蓋付きでその造形美を醸し出し、隣り合う一方の側板20の第1歯部21と他方の側板20の第2歯部19の噛み合いの三次元に交差する美しさがその造形美を一層引き立て、商品価値を向上する。
この枡10は、内部空間に、
図12に示すように、ぐい呑みなどの酒器50を包装材51により保護して収納し、蓋体40を側板20の上面17に載せるとき、側板20の上面17の内縁内壁と蓋体40の凸面部42との間に僅かの隙間δをもって心地よく嵌合する。
【0025】
そして、
図1及び
図15に示すように、蓋体40を嵌合した枡本体11及び蓋体40の外周を幅広の面状の紐56により巻き掛け、蓋体40の上面で紐56を蝶々結びで締め上げる。
このとき、
図4及び
図5に示すように、底板30に左右上下対称(シンメトリ)に調和のとれた十字溝状の凸面部33に紐56が食い込み、十字状に2枚重なる紐56の厚さよりも凸面部33の深さd1の方が大きいことから、紐56の位置が十字状に底面で規制され、紐の位置ずれが防止され、底面から側面へ上方に延びる紐56の位置について側板20の左右中央の位置に安定する。これにより、紐56の心地よい巻き掛け感、絞まり感をもって紐を巻き掛けることかできる。巻き掛けられた紐56が位置ずれすることなく安定感があり、
図1及び
図15に示すように、置物として外観上、枡10と紐56の美しい調和が図られる。
【0026】
しかも、底板30の下面32の下方で載置台58に紐56が接触しないから、空中に浮いた位置に紐56を浮かせ、載置台58と非接触の状態にある紐58の損傷は抑制される。
図15に示す紐56を巻き掛けられた枡10は、例えば贈物用の商品として展示される。上述したように枡及び収容物とともに商品価値を高める効果がある。
この枡10が贈物として目的先に届けられたとき、図示しない包装材から取り出し、
図1及び
図15に示すように、枡10を卓上などに置くと、木箱の自然美と紐56を巻き掛けた枡10の姿勢に
図1に示すような外観の美しさを実感する。
【0027】
次いで、紐56を解き、蓋を開けると、中からぐい呑みなどの酒器50が取り出される。これにより、内容物であるぐい呑みとしての酒器を受け取る喜びだけでなく、枡10が木箱であるばかりか、ぐい呑みとは別異の第2の酒器である酒枡であることを知らしめられ、これで2度の喜びを感ぜられる。
【0028】
さらに、酒器50そのものの美しさ、酒を飲む楽しさを味わえるほか、取り外した蓋体40は、
図15の矢印Aに示すように、ぐい呑みを置くコースターとして使用することができる。また
図15の矢印Bに示すように、蓋体40をひっくり返せば、蓋体40を逆さにして使用でき、凸面部42の上にぐい呑みを置いて楽しむこともできる。
【0029】
もちろん、
図15の矢印Cに示すように、枡本体11を酒器として使用することもできる。
このように本実施形態の枡10は、構成要素の枡本体11及び蓋体40を、包装用木箱として、また酒器として、あるいはコースターとして、多種の機能をもち多様な用途に使うことができるという効果がある。
【0030】
本実施形態の枡によれば、ぐい呑みだけでなく陶器、磁器、ガラス器などの器を収納し保護する収納用木箱として使用することができ、本来の「枡」の目的である日本酒を飲むための酒枡や体積を計量する測定器以外の目的である「収納箱」として機能し、本来の「枡」の用途以外の用途に使えることで、商品の付加価値を高めることができる。
本実施形態の枡は、ぐい呑み収納用箱からぐい呑みと蓋体を取り除けば、枡酒用の酒器として使用することができる。
【0031】
枡から取り出したぐい呑みを酒器として使用できるし、ぐい呑みを取り出した枡を酒器としても使用できる。従って、本実施形態の枡について、ぐい呑みを収納した枡から蓋体を取り外せば、ぐい呑みと枡のいずれの酒器をも選択できるから、そのとき飲酒したい酒器選びが楽しくなるという効果がある。
本実施形態の枡は、ぐい呑みを保管する保管ケースとして使用することもできる。
本実施形態の枡を収用箱として使用した場合、収容箱から取り出したぐい呑みは杯として使用することができる。
【0032】
ぐい呑みを保管する収用箱としての枡は、衝撃から保護するだけでなく、材質の檜の作用により、抗菌、防虫の効果があり、収納するぐい呑みを衛生的に保存することができる。
本実施形態の枡は、陶磁器を収納する収納箱とみれば、従来の陶磁器用箱と比べ、異なる実用性と保全機能を併せもつという効果がある。
【0033】
(比較形態)
本発明の枡について、陶磁器を収容する「木箱」を比較形態として対比する。
陶磁器用の木箱の材質は低級のものから上級のものまで存在する。
陶磁器を収容する木箱は、収容する陶磁器を保護する機能はある。この木箱は、売りモノの対象物である陶磁器に付属品として加えることにより陶磁器の付加価値をあげるものとして使用される場合がある。
陶芸家の創作した作品を木箱に収納するときには、陶磁器と木箱を併せた最終商品の価値が需要者に魅力的であるとはいえないことが多かった。
しかし、この比較形態による木箱には、本発明の構成及び作用効果を有しない。
【0034】
(本実施形態)
材料に天然檜を用いることにより、檜の香り、強度、耐久性を有する商品価値の高い包装用木箱になる。
日本酒を飲むための「酒枡」として使用するときには、飲用容器として、檜などの固有の素材そのものの価値や趣向を高めるものであり、商品価値は高い。
蓋付きの枡は、陶磁器などの酒器を収納し保護する機能があるが、陶磁器などの酒器を収容する入れ物として本発明の枡を使用すれば、木箱を付けることにより酒器の付加価値をあげることもできる。
【0035】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態について
図18に基づいて説明する。
底板30の基板31の下面32の同一面に4個の脚部34、35、36、37が形成される。
【0036】
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態について
図19に基づいて説明する。
底板30の基板31の下面32に2個の脚部341、342が形成される。脚部341、342の間に一線状の溝としての下面32を形成した例である。下面32が紐を通すときの紐の案内及び位置決めの機能を果たす。
【0037】
(第四実施形態)
本発明の第四実施形態について
図20に基づいて説明する。
底板30の基板31の下面32に凸面部33を形成し、この凸面部33に2個の脚部343、344が形成される。脚部343、344の間に一線状の溝としての凸面部33を形成した例である。凸面部33が紐を通すときの紐の案内及び位置決めの機能を果たす。
【0038】
(第五実施形態)
本発明の第五実施形態について
図21に基づいて説明する。
底板70の基板71の下面72に凸面部73を形成し、この凸面部73に6個の脚部74、75、76、77、78、79が形成される。脚部74、75、76、77、78、79の間に一線状の溝とこれに直交する二個の線状の溝としての凸面部73を形成した例である。凸面部73が紐を通すときの紐の案内及び位置決めの機能を果たす。
【0039】
(第六実施形態)
本発明の第六実施形態について
図22に基づいて説明する。
底板30の基板31の下面32に4個の脚部34、35、36、37が形成される。脚部34、35、36、37の間に十字状の溝331を形成した例である。溝331が紐を通すときの紐の案内及び位置決めの機能を果たす。溝331の形状は、横断面が円弧状に形成される。この場合、紐の横断面形状は基本形が円状であってもよい。
溝331に嵌まる紐の外径は、溝の深さ内に嵌まる紐の太さが望ましい。この場合、紐の位置決めを溝が行うだけでなく、紐の損傷が低減できるだけでなく、脚部が接地し、枡をテーブル上に設置したときに枡が安定に接地する。
溝に嵌まる紐の外径は、溝の深さを超える紐の太さであってもよい。紐は柔軟材からなるから、枡の設置に支障を来すほどではない。
【0040】
(その他の実施形態)
本発明の他の実施形態を
図17に示す。枡10の4枚の側板20のうちの一つの側板20の中央部分に刻印60を付加している。刻印60は、枡10の出所表示を示す。本発明では、刻印の大きさは、この実施形態の大きさに限られない。
本実施形態の枡本体11と蓋体40は天然檜から製作されているが、枡本体と蓋体の材料は檜に限られず、他の木材、さらに木材以外の材料のものであってもよい。
上記の実施形態では、側板20の一の縁に形成される歯部の凸部及び凹部の数は4個の実施形態を示したが、本発明では、一の縁に形成される凸部及び凹部の個数はこれに限られない。
【0041】
本実施形態の枡10をぐい呑みなどの酒器50とともに商品として販売される一例について説明した。
本発明では、酒器なしの枡としての商品ももちろん成立する。内部空間に収容する物品は有っても無くても良い。内部空間に収納する物品の種類は問わない。
本実施形態の枡は、立方体の例を示したが、本発明の枡は外観が直方体の形状のものであってもよい。
本発明では、蓋体の厚さと底板の厚さは同じであっても差異があってもよい。
本発明の底板の下面の幅は、蓋体の下面の幅と同じであっても差異があってもよい。具体的には、本発明では、
図7に示す蓋体40の下面43の幅cに相当する下面の幅の大きさと、
図7に示す底板30の下面32の幅dに相当する下面の幅の大きさとは差異があってもよい。
本発明では、底板に形成される溝は、2本有る場合、互いに直交する方向に形成される。溝の本数は問わない。
【0042】
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 枡
11 枡本体
19 第2歯部
20 側板
21 第1歯部
30 底板
31 基板
32 下面(溝)
33 凸面部(溝)
34、35、36、37 脚部
40 蓋体
41 基板
42 凸面部
43 下面(座面部)
50 ぐい呑み(酒器)
56 紐
73 凸面部(溝)
331 溝