(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039519
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】表面コーティング加飾フィルム、加飾成形品、及び、フィルムコーティング用組成物
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220303BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220303BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20220303BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220303BHJP
B32B 27/22 20060101ALI20220303BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20220303BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220303BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/30 A
B32B27/40
B32B27/18 Z
B32B27/00 M
B32B27/30 101
B32B27/22
C09D175/04
C09D7/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144592
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 郁太
(72)【発明者】
【氏名】中見 正宏
(72)【発明者】
【氏名】酒井 保助
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AK01C
4F100AK07B
4F100AK15A
4F100AK15C
4F100AK22A
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK25D
4F100AK51B
4F100AK53D
4F100AL01A
4F100AR00B
4F100AT00E
4F100BA02
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10B
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100CA02B
4F100CA02D
4F100CA04C
4F100CA05D
4F100CA07D
4F100CB05D
4F100DA00E
4F100DE01B
4F100EH46B
4F100HB00A
4F100HB31
4F100JA07
4F100JB13B
4F100JK09
4F100JL13D
4F100JN01B
4J038CB002
4J038DG051
4J038MA03
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】加飾フィルムの意匠を損なうことなく耐擦傷性を向上した表面コーティング加飾フィルムと、該表面コーティング加飾フィルムを用いて得られる加飾成形品と、該表面コーティング加飾フィルムが備える表面コーティング層の形成に用いることができるフィルムコーティング用組成物と、を提供する。
【解決手段】加飾フィルムと、上記加飾フィルムの表面を覆う無色透明の表面コーティング層と、を備え、上記表面コーティング層は、アクリル系ポリオールと脂肪族系イソシアナートとを含有するフィルムコーティング用組成物を硬化して形成されたアクリル系ウレタン樹脂により構成される表面コーティング加飾フィルム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加飾フィルムと、前記加飾フィルムの表面を覆う無色透明の表面コーティング層と、を備え、
前記表面コーティング層は、アクリル系ポリオールと脂肪族系イソシアナートとを含有するフィルムコーティング用組成物を硬化して形成されたアクリル系ウレタン樹脂により構成されることを特徴とする表面コーティング加飾フィルム。
【請求項2】
前記脂肪族系イソシアナートは、ペンタメチレンジイソシアナート又は該誘導体を含むことを特徴とする請求項1に記載の表面コーティング加飾フィルム。
【請求項3】
前記フィルムコーティング用組成物は、ポリオレフィン粒子を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の表面コーティング加飾フィルム。
【請求項4】
前記加飾フィルムは、樹脂フィルムと、粘着剤層と、を含む積層体であり、
前記表面コーティング層は、前記樹脂フィルムを覆うことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の表面コーティング加飾フィルム。
【請求項5】
前記樹脂フィルムは、ポリ塩化ビニルを含有することを特徴とする請求項4に記載の表面コーティング加飾フィルム。
【請求項6】
前記樹脂フィルムは、可塑剤を含有することを特徴とする請求項4又は5に記載の表面コーティング加飾フィルム。
【請求項7】
請求項4~6のいずれかに記載の表面コーティング加飾フィルムと、基材とを備え、
前記加飾フィルムの前記粘着剤層が前記基材に貼り付けられていることを特徴とする加飾成形品。
【請求項8】
前記基材は、3次元曲面を備えるものであり、
前記表面コーティング加飾フィルムは、前記3次元曲面に貼り付けられていることを特徴とする加飾成形品。
【請求項9】
アクリル系ポリオールと、脂肪族系イソシアナートと、を含有することを特徴とするフィルムコーティング用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面コーティング加飾フィルム、加飾成形品、及び、フィルムコーティング用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
基材(被着体)に意匠性を付与する方法として、加飾フィルムを基材に貼り付ける方法が従来から用いられている。加飾フィルムの表面には、耐擦傷性の向上や光沢の付与のために、コーティングが施されることがある。例えば、特許文献1には、ポリオレフィン系樹脂からなる基材フィルム上に、表面層が形成された外装用フィルムであって、上記表面層は、ガラス転移温度(Tg)が60~100℃であるウレタン変性アクリル樹脂からなるものが開示されている。また、特許文献2には、ポリ塩化ビニル系樹脂と、無色透明のコーティング層とを有し、上記コーティング層は、アシルフォスフィンオキサイド基を有する重合開始剤を含む紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物からなる装飾フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-105205号公報
【特許文献2】特開2018-34488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、加飾フィルムには、種々の基材への適用を可能とするため、3次元形状を有する基材の曲面部にも貼り付け可能であることが求められており、真空圧空成形等の方法により、加飾フィルムの基材への貼り付けが行われることがある。そのような場合には、加飾フィルムを比較的柔軟な素材を用いて形成することになるため、加飾フィルムの意匠を損なうことなくフィルム表面の耐擦傷性を向上することが強く求められていた。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、加飾フィルムの意匠を損なうことなく耐擦傷性を向上した表面コーティング加飾フィルムと、該表面コーティング加飾フィルムを用いて得られる加飾成形品と、該表面コーティング加飾フィルムが備える表面コーティング層の形成に用いることができるフィルムコーティング用組成物と、を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の表面コーティング加飾フィルムは、加飾フィルムと、上記加飾フィルムの表面を覆う無色透明の表面コーティング層と、を備え、上記表面コーティング層は、アクリル系ポリオールと脂肪族系イソシアナートとを含有するフィルムコーティング用組成物を硬化して形成されたアクリル系ウレタン樹脂により構成されることを特徴とする。
【0007】
上記脂肪族系イソシアナートは、ペンタメチレンジイソシアナート又は該誘導体を含むことが好ましい。
【0008】
上記フィルムコーティング用組成物は、ポリオレフィン粒子を含有することが好ましい。
【0009】
上記加飾フィルムは、樹脂フィルムと、粘着剤層と、を含む積層体であり、上記表面コーティング層は、上記樹脂フィルムを覆うことが好ましい。
【0010】
上記樹脂フィルムは、ポリ塩化ビニルを含有することが好ましい。
【0011】
上記樹脂フィルムは、可塑剤を含有することが好ましい。
【0012】
本発明の加飾成形品は、本発明の表面コーティング加飾フィルムと、基材とを備え、上記加飾フィルムの上記粘着剤層が上記基材に貼り付けられていることを特徴とする。
【0013】
上記基材は、3次元曲面を備えるものであり、上記表面コーティング加飾フィルムは、上記3次元曲面に貼り付けられていることが好ましい。
【0014】
本発明のフィルムコーティング用組成物は、アクリル系ポリオールと、脂肪族系イソシアナートと、を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の表面コーティング加飾フィルムによれば、特定の組成を有するアクリル系ウレタン樹脂により構成され、かつ無色透明の表面コーティング層が加飾フィルムの表面を覆っているので、加飾フィルムの意匠を損なうことなく耐擦傷性を向上することができる。また、本発明の加飾成形品によれば、耐擦傷性及び意匠性に優れた加飾フィルムを用いて、基材(被着体)を装飾することができる。更に、本発明のフィルムコーティング用組成物によれば、フィルムの表面に、外観を損なうことなく耐擦傷性を向上することができる無色透明の表面コーティング層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の表面コーティング加飾フィルムの一例を示す断面模式図である。
【
図2】本発明の加飾成形品の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<表面コーティング加飾フィルム>
本発明の表面コーティング加飾フィルムは、加飾フィルムと、上記加飾フィルムの表面を覆う無色透明の表面コーティング層と、を備え、上記表面コーティング層は、アクリル系ポリオールと脂肪族系イソシアナートとを含有するフィルムコーティング用組成物を硬化して形成されたアクリル系ウレタン樹脂により構成されることを特徴とする。本明細書中、「フィルム」は「シート」と同義であり、厚みによって両者を区別しない。
【0018】
図1は、本発明の表面コーティング加飾フィルムの一例を示す断面模式図である。
図1に示すように、表面コーティング加飾フィルムは、加飾フィルム20と、加飾フィルム20の一方の表面を覆う表面コーティング層10と、加飾フィルム20の他方の表面に着脱可能に取り付けられたセパレータ30とを備える。加飾フィルム20は、樹脂フィルム(樹脂により構成された表層21、印刷層23a、ベースフィルム23b)及び粘着剤層25からなる積層体であり、表層21側の表面が表面コーティング層10によって覆われ、粘着剤層25側の表面にセパレータ30が取り付けられている。なお、加飾フィルム20は、表層21及び粘着剤層25の間に別の層を有するものであってもよい。また、基材への貼り付けを接着剤によって行う場合には、粘着剤層25及びセパレータ30を設けなくてもよく、代わりに接着剤層を設けることにしてもよい。
【0019】
表面コーティング層10は、無色透明であって、加飾フィルム20の意匠を損なうことなく耐擦傷性を向上させるものである。なお、本明細書における「無色透明」とは、可視光領域での光線透過率が50%以上であり、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、更に好ましくは90%以上であり、特に好ましくは95%以上であることをいう。また、表面コーティング層10は、艶消し機能を奏するものであってもよい。
【0020】
表面コーティング層10は、アクリル系ポリオールと脂肪族系イソシアナートとを含有するフィルムコーティング用組成物を硬化して形成されたアクリル系ウレタン樹脂により構成される。このようなアクリル系ウレタン樹脂によれば、無色透明であり、かつ耐擦傷性に優れた表面コーティング層10を形成することができる。また、アクリル系ウレタン樹脂によれば、アクリル樹脂等の他の樹脂よりも成型時の伸び(下地への追従性)や耐候性に優れた表面コーティング層10を形成することができる。アクリル系ポリオールが用いられることにより、高い透明性が得られる。脂肪族系イソシアナートが用いられることにより、耐候性に優れ黄変しにくいものとすることができる。
【0021】
上記アクリル系ポリオールは、(メタ)アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られる高分子化合物、又は、(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとその他のモノマーとを共重合させて得られる高分子化合物等のうち、末端にヒドロキシル基を有するもので、イソシアネート系化合物のイソシアネート基と反応するものである。
【0022】
末端にヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸誘導体モノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸の両方を指し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方を指す。
【0024】
上記アクリル系ポリオールとしては、市販品を用いてもよく、例えば、三井化学社製のオレスター(登録商標)シリーズの非スチレン系(スチレンを原材料に使用していないもの)に分類されるQ828(Tg:135℃)、Q555(Tg:100℃)、Q628(Tg:84℃)、Q199V(Tg:67℃)、Q631(Tg:66℃)、Q563(Tg:54℃)、Q193(Tg:46℃)、Q641(Tg:38℃)、Q519(Tg:32℃)、Q155(Tg:30℃)等が好適に用いられる。
【0025】
上記脂肪族系イソシアナートとしては、例えば、ペンタメチレンジイソシアナート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、テトラメチレンジイソシアナート、2-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアナート、3-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアナート、リジンジイソシアナート、トリオキシエチレンジイソシアナート、これらの誘導体等が挙げられる。これらは1種類のみで用いられてもよいし、2種類以上で併用されてもよい。なお、誘導体としては、例えば、イソシアヌレート変性、アロファネート変性、及び/又は、ウレタン変性したものが挙げられる。上記脂肪族系イソシアナートとしては、ペンタメチレンジイソシアナート又は該誘導体を含むものが好適に用いられる。
【0026】
上記脂肪族系イソシアナートとしては、市販品を用いてもよく、例えば、三井化学社製のタケネート(登録商標)シリーズ及びスタビオ(登録商標)シリーズのD-370N(イソシアナート:PDI、変性:イソシアヌレート、NCO%:25.0)、D-376N(イソシアナート:PDI、変性:イソシアヌレート、NCO%:24.0)、D-160N(イソシアナート:HDI、変性:TMPアダクト、NCO%:12.6)、D-165N(イソシアナート:HDI、変性:ビュレット、NCO%:23.3)、D-170H(イソシアナート:HDI、変性:イソシアヌレート、NCO%:20.7)、D-177N(イソシアナート:HDI、変性:イソシアヌレート、NCO%:20.0)、D-178NL(イソシアナート:HDI、変性:アロファネート、NCO%:19.2)等を用いることができる。
【0027】
上記フィルムコーティング用組成物中のアクリル系ポリオール及び脂肪族系イソシアナートの配合量は特に限定されないが、NCOインデックス(脂肪族系イソシアナート中のイソシアナート基のモル数/アクリル系ポリオール中の水酸基のモル数)が1~2であることが好ましい。NCOインデックスが1未満であると、表面コーティング層10の硬度が低く、耐擦傷性を充分に向上できないおそれがある。NCOインデックスが2を超えると、表面コーティング層10が硬くなり過ぎ、表面コーティング加飾フィルムに要求される柔軟性を確保できなくなるおそれがある。
【0028】
上記フィルムコーティング用組成物は、ポリオレフィン粒子を含有していてもよい。ポリオレフィン粒子を含有させることで、表面コーティング層10の透明性を損なうことなく、表面の滑りを良くして耐擦傷性を向上させることができる。また、ポリオレフィン粒子を含有することにより、表面コーティング層10に艶消し機能を付与してもよい。ポリオレフィン粒子の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0029】
ポリオレフィン粒子の平均粒径としては、0.01~500μmであることが好ましい。上記平均粒径が0.01μm未満であると、表面の滑りを良くする効果が充分に得られないことがある。上記平均粒径が500μmを超えると、表面コーティング加飾フィルムの意匠に影響を及ぼすおそれがあり、特にポリオレフィン粒子が表面コーティング加飾フィルムの表面から脱離した際に意匠性を大きく低下させてしまうおそれがある。
【0030】
ポリオレフィン粒子の配合量としては、アクリル系ポリオール100重量部に対して、5~20重量部であることが好ましい。上記配合量が5重量部未満であると、表面の滑りを良くする効果が充分に得られないことがある。上記配合量が20重量部を超えると、表面コーティング加飾フィルムの意匠に影響を及ぼすおそれがあり、特にポリオレフィン粒子が表面コーティング加飾フィルムの表面から脱離した際に意匠性を大きく低下させてしまうおそれがある。
【0031】
表面コーティング層10の厚みは、0.5~30μmであることが好ましく、より好ましくは1~20μmであり、更に好ましくは2~10μmである。表面コーティング層10の厚みが0.5μmよりも小さい場合、耐擦傷性を向上する効果が充分に得られないことがある。表面コーティング層10の厚みが30μmよりも大きい場合、表面コーティング加飾フィルムの透明性や加工性が低下することがある。
【0032】
表層21は、樹脂フィルム(トップフィルム)であってもよいし、塗膜からなる樹脂層であってもよい。表層21を構成する樹脂の組成は特に限定されないが、ポリ塩化ビニルを含有することが好ましい。ポリ塩化ビニルによれば、表層21が伸びやすく、破断しにくくなるため、基材に貼り付ける際、表面コーティング加飾フィルムが基材の表面形状に追従しやすくなる。また、ポリ塩化ビニルによれば、ポリエチレンテレフタレート等の他の樹脂と比較して、低温(例えば、130℃以下の温度(80℃程度))で成形可能であるため、良好な成形性が得られる。
【0033】
ポリ塩化ビニルとしては、例えば、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルと他の単量体との共重合体等が挙げられる。中でも、寸法安定性の観点から、塩化ビニルの単独重合体が好ましい。
【0034】
ポリ塩化ビニルが、塩化ビニルと他の単量体との共重合体である場合、他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン、スチレン等のオレフィン;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸ジエステル;フマル酸ジブチル、フマル酸ジエチル等のフマル酸ジエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル、等が挙げられる。これらの単量体は、1種のみの単独で用いられてもよいし、2種以上で併用されてもよい。
【0035】
ポリ塩化ビニルが、塩化ビニルと他の単量体との共重合体である場合、共重合体中の他の単量体の含有量は、通常、50重量%以下であり、好ましくは10重量%以下である。他の単量体の含有量が50重量%よりも多い場合、表層21の耐屈曲性が低下することがある。
【0036】
ポリ塩化ビニルの平均重合度は、表層21の所望の硬さ、その硬さの調整に用いられる可塑剤の量等に応じて適宜調整されるものであるが、加工性の観点から、好ましくは800~1300である。なお、本明細書中、「ポリ塩化ビニルの平均重合度」は、JIS K6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定された平均重合度を意味する。
【0037】
表層21を構成する樹脂は、可塑剤を含有することが好ましい。可塑剤としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ樹脂等のエポキシ系可塑剤;高分子ポリエステル可塑剤;フタル酸オクチル(ジ-2-エチルヘキシルフタレート)、フタル酸ジブチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル等のフタル酸ジエステル;アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル等の脂肪族二塩基酸ジエステル;トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート等のリン酸トリエステル等が挙げられる。これらの可塑剤は、1種のみの単独で用いられてもよいし、2種以上で併用されてもよい。
【0038】
高分子ポリエステル可塑剤としては、例えば、フタル酸の、ポリエチレングリコールジエステル、ポリプロピレングリコールジエステル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジエステル等のポリアルキレングリコールジエステル;アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族二塩基酸の、ポリエチレングリコールジエステル、ポリプロピレングリコールジエステル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールジエステル等のポリアルキレングリコールジエステル等が挙げられる。これらの高分子ポリエステル可塑剤は、1種のみの単独で用いられてもよいし、2種以上で併用されてもよい。
【0039】
可塑剤は、エポキシ化大豆油を含むことが好ましい。これにより、耐熱性を向上させることができ、カレンダー成形によってトップフィルムを形成する場合であっても耐熱性を充分に確保できる。
【0040】
可塑剤の数平均分子量は、好ましくは350~3000である。可塑剤の数平均分子量が350よりも小さい場合、可塑剤が表層21の表面にブリードしやすくなる。可塑剤の数平均分子量が3000よりも大きい場合、可塑剤によって充分な柔軟性が付与されず、表層21が硬くなり過ぎるため、加工性が低下することがある。
【0041】
可塑剤は、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、10重量部以下配合されていることが好ましく、8重量部以下配合されていることがより好ましい。可塑剤の配合量が10重量部よりも多い場合、表面コーティング加飾フィルムの耐熱性が充分に高まらないことがある。一方、可塑剤の配合量が少な過ぎる場合、例えば、カレンダー成形によってトップフィルムを形成する際の加工性が低下することがある。このような観点から、可塑剤は、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、5重量部よりも多く配合されていることが好ましい。
【0042】
表層21を構成する樹脂は、熱収縮防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤(顔料)、発泡剤、滑剤、改質剤、充填剤、希釈剤等の添加剤を更に含有していてもよい。これらの添加剤としては、ポリ塩化ビニルに対して一般的に配合されるものを使用可能である。
【0043】
表層21の厚みは、好ましくは60~200μmである。表層21の厚みが60μmよりも小さい場合、表層21が柔軟になり過ぎて、表面コーティング加飾フィルムの加工性が低下することがある。表層21の厚みが200μmよりも大きい場合、表層21が硬くなり過ぎて、表面コーティング加飾フィルムの加工性が低下することがある。
【0044】
表層21の表面コーティング層10側の表面には、エンボス加工等の表面加工が施されていてもよい。エンボス加工が施されてエンボス形状(凹凸形状)を付与することで、加飾フィルム20の意匠性を高めることが可能である。
【0045】
印刷層23aは、加飾フィルム20に意匠性を付与するための図柄等が印刷される層であり、樹脂フィルムであってもよいし、塗膜からなる樹脂層であってもよい。印刷層23aを構成する樹脂の組成は特に限定されず、表層21やベースフィルム23bを構成する樹脂と同じであってもよいし、異なっていてもよい。印刷層23aを構成する樹脂は、ポリ塩化ビニルを含有することが好ましく、可塑剤を含有することが好ましい。印刷層23aを構成する樹脂は、熱収縮防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤(顔料)、発泡剤、滑剤、改質剤、充填剤、希釈剤等の添加剤を更に含有していてもよい。これらの添加剤としては、ポリ塩化ビニルに対して一般的に配合されるものを使用可能である。印刷層23aを形成する際の印刷方法としては、例えば、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等が挙げられる。
【0046】
印刷層23aの厚みは、好ましくは100~200μmである。印刷層23aの厚みが100μmよりも小さい場合、表面コーティング加飾フィルムの貼り付け対象である基材の色が透けて見えやすくなり、所望の意匠性が得られにくくなることがある。印刷層23aの厚みが200μmよりも大きい場合、表面コーティング加飾フィルムが硬くなり過ぎてしまい、加工性が低下することがある。
【0047】
ベースフィルム23bは、加飾フィルム20において印刷層23aや表層21の下地となる樹脂フィルムである。ベースフィルム23bを構成する樹脂の組成は特に限定されず、表層21や印刷層23aを構成する樹脂と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ベースフィルム23bを構成する樹脂は、ポリ塩化ビニルを含有することが好ましく、可塑剤を含有することが好ましい。ベースフィルム23bを構成する樹脂は、熱収縮防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤(顔料)、発泡剤、滑剤、改質剤、充填剤、希釈剤等の添加剤を更に含有していてもよい。これらの添加剤としては、ポリ塩化ビニルに対して一般的に配合されるものを使用可能である。
【0048】
ベースフィルム23bの厚みは、好ましくは100~200μmである。ベースフィルム23bの厚みが100μmよりも小さい場合、表面コーティング加飾フィルムの貼り付け対象である基材の色が透けて見えやすくなり、所望の意匠性が得られにくくなることがある。また、ベースフィルム23bが柔軟になり過ぎてしまい、加工性が低下することがある。ベースフィルム23bの厚みが200μmよりも大きい場合、表面コーティング加飾フィルムが硬くなり過ぎてしまい、加工性が低下することがある。
【0049】
粘着剤層25は、粘着機能(感圧接着性)を有するものであれば特に限定されない。粘着剤層25の材料としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコン系粘着剤等が挙げられる。中でも、粘着性、加工性、耐熱老化性、耐湿老化性、及び、耐候性に優れるとともに、比較的安価である点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0050】
粘着剤層25の厚みは、好ましくは10~60μm、より好ましくは20~50μmである。粘着剤層25の厚みが10μmよりも小さい場合、充分な粘着性が得られないことがある。粘着剤層25の厚みが60μmよりも大きい場合、表面コーティング加飾フィルムの柔軟性が低下し過ぎてしまい、加工性が低下することがある。
【0051】
セパレータ30としては、フィルムの分野で通常用いられるものを使用可能であり、例えば、離型フィルム、離型紙等が挙げられる。セパレータ30により、表面コーティング加飾フィルムの製造、運搬、保存中に粘着剤層25が露出しないようになるため、粘着剤層25の劣化を防止したり、表面コーティング加飾フィルムの取り扱い性を高めたりすることができる。セパレータ30は、表面コーティング加飾フィルムを基材に貼り付ける直前に剥離されればよい。
【0052】
離型フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の樹脂フィルムの粘着剤層25に貼り付けられる側の表面に、シリコーン系剥離剤、アルキド系剥離剤、フッ素系剥離剤等の塗布による離型処理が施されたものが挙げられる。離型紙としては、例えば、上質紙の粘着剤層25に貼り付けられる側の表面に、シリコーン系剥離剤、アルキド系剥離剤、フッ素系剥離剤等の塗布による離型処理が施されたものが挙げられる。
【0053】
本発明の表面コーティング加飾フィルムの適用対象は特に限定されず、例えば、自動二輪車を含む自動車等の車両分野;キッチン面材、洗面化粧台等の建装材製品、家具等の建築分野;タブレットPC、携帯電話のカバー等の電子端末分野における装飾用途に適用することが可能である。なかでも、本発明の表面コーティング加飾フィルムは、車両内装に使用されることが好ましい。
【0054】
本発明の表面コーティング加飾フィルムは、真空圧空成形、メンブレンプレス成形等のラミネート成形によって、粘着剤層25を介して基材に貼り付けることができる。真空圧空成形は、例えば、TOM成形機を用いて以下のように行われる。まず、表面コーティング加飾フィルム及び基材を、大気圧状態の成形室内にセットする。次に、成形室を気密状態とした後、真空タンクで吸引し、成形室内を真空状態とする。続いて、その真空状態を維持したまま、ヒーターを用いて所望の成形温度まで加熱し、表面コーティング加飾フィルムを軟化させる。そして、基材を、軟化させた表面コーティング加飾フィルムに押し付けた後、成形室内を大気圧状態とし、更に、圧空タンクから圧縮空気を成形室内に供給する。これにより、表面コーティング加飾フィルムが基材に押圧され、粘着剤層25を介して基材の表面形状に沿って貼り付けられる。その後、必要に応じて、基材からはみ出した表面コーティング加飾フィルムの余剰部分をトリミングする。
【0055】
<加飾成形品>
本発明の加飾成形品は、本発明の表面コーティング加飾フィルムと、基材とを備え、上記加飾フィルムの上記粘着剤層が上記基材に貼り付けられていることを特徴とする。
【0056】
図2は、本発明の加飾成形品の一例を示す断面模式図である。
図2に示すように、加飾成形品は、表面コーティング層10と、加飾フィルム20と、基材50とを備える。すなわち、加飾フィルム20は、粘着剤層25に貼り付けられていたセパレータ30が剥離され、粘着剤層25を介して基材50に貼り付けられている。
【0057】
基材50としては、例えば、自転車、バイク、自動車、バス、電車等の車両;船;飛行機、ヘリコプター等の航空機;ヘルメット;家具、家電製品等の家庭用品;壁面、床面、天井、屋根、柱、看板、ドア、門等の建造物;スマートフォン、タブレット等の電子端末;キャビネット、事務机、パソコン等のオフィス用品;建築現場の建築材料;これらの構成部品等が挙げられる。
【0058】
基材50の材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)等の樹脂;鉄、銅、アルミニウム等の金属又はこれらの合金等が挙げられる。
【0059】
基材50は、3次元曲面を備えるものであり、本発明の表面コーティング加飾フィルムは、3次元曲面に貼り付けられていることが好ましい。本発明の表面コーティング加飾フィルムは、真空圧空成型等の方法により、3次元曲面部を有する基材50の表面であっても3次元調意匠を付与できる。また、表面コーティング層10が設けられており、耐擦傷性に優れることから、フィルムの損傷が生じやすい3次元曲面の角部の耐久性を向上することが可能である。
【0060】
本発明の一態様は、アクリル系ポリオールと、脂肪族系イソシアナートと、を含有するフィルムコーティング用組成物でもある。本発明のフィルムコーティング用組成物によれば、フィルムの表面に、フィルムの外観を損なうことなく耐擦傷性を向上することができる無色透明の表面コーティング層を形成することができる。本発明のフィルムコーティング用組成物は、加飾成形の分野に好適に用いられ、内装用としても外装用としても使用可能である。
【実施例0061】
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0062】
<実施例1>
平均重合度800のポリ塩化ビニル100重量部に対して、エポキシ化大豆油(DIC社製の「エポサイザー(登録商標)W-100-EL」)6重量部、フタル酸ジイソノニル2重量部、メタクリル酸メチル-アクリル酸アルキル共重合体(三菱ケミカル社製の「メタブレン(登録商標)H-602」)10重量部を添加し、バンバリーミキサーで溶融混練した後、カレンダー成形を行い、厚み90μmのトップフィルムを作製した。
【0063】
平均重合度800のポリ塩化ビニル100重量部に対して、エポキシ化大豆油(DIC社製の「エポサイザーW-100-EL」)6重量部、フタル酸ジイソノニル2重量部、メタクリル酸メチル-アクリル酸アルキル共重合体(三菱ケミカル社製の「メタブレンH-602」)10重量部を添加し、バンバリーミキサーで溶融混練した後、カレンダー成形を行い、厚み110μmの印刷層形成用フィルムを作製した。得られた印刷層形成用フィルムに対し、インクジェットプリンターにより、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体・アクリル系インクを用いて意匠を印刷し、印刷層を得た。
【0064】
平均重合度800のポリ塩化ビニル100重量部に対して、エポキシ化大豆油(DIC社製の「エポサイザーW-100-EL」)6重量部、フタル酸ジイソノニル2重量部、メタクリル酸メチル-アクリル酸アルキル共重合体(三菱ケミカル社製の「メタブレンH-602」)10重量部を添加し、バンバリーミキサーで溶融混練した後、カレンダー成形を行い、厚み120μmのベースフィルムを作製した。
【0065】
次に、熱ラミネートによって、ベースフィルムに印刷層(印刷済みの印刷層形成用フィルム)を貼り合わせ、更に印刷層にトップフィルムを貼り合わせ、積層フィルムを作製した。
【0066】
次に、主剤である重量平均分子量が64万のアクリル系粘着剤(綜研化学社製の「SK1506A」)100重量部(固形分)に、エポキシ系硬化剤(綜研化学社製の「E-5C」)0.04重量部(固形分)、ヒンダードアミン系光安定剤(綜研化学社製の「LA-52」)3.2重量部、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(ADEKA社製の「アデカ1413」)2.1重量部を添加し、粘着剤組成物を調製した。セパレータとして、上質紙の両面にポリエチレンがラミネートされ、更にシリコーン系離型剤でコーティングされた離型紙を用意した。このセパレータ上に、粘着剤組成物をコンマコーターにより塗工して乾燥させ、厚み40μmの粘着剤層を形成した。その後、セパレータ上に形成された粘着剤層を上記積層フィルムのベースフィルムに対して貼り合わせた。その結果、トップフィルム、印刷層、ベースフィルム、粘着剤層及びセパレータがこの順に積層された構成を有する加飾フィルムが得られた。
【0067】
次に、主剤としての非スチレン系アクリル系ポリオール(三井化学社製の「オレスター(登録商標)Q555」)100重量部(固形分40%、溶剤:酢酸ブチル及び酢酸エチル)と溶剤(粘度調整要の希釈剤)の酢酸エチル75重量部とを混合して攪拌した後に、硬化剤としてのペンタメチレンジイソシアナートのヌレート変性体(三井化学社製の「スタビオ(登録商標)D-370N」、NCO基含有量:25.0モル%)7.2重量部(固形分100%)を投入して再度攪拌し、フィルムコーティング用組成物を調製した。なお、硬化剤の配合量は、フィルムコーティング用組成物のNCOインデックスが1になるように調整されている。
【0068】
得られたフィルムコーティング用組成物を上記加飾フィルムのトップフィルム上に塗工し、80℃で2分間乾燥させた後、40℃で72時間養生させ、厚み5μmの無色透明の表面コーティング層を形成した。その結果、表面コーティング層、トップフィルム、印刷層、ベースフィルム、粘着剤層及びセパレータがこの順に積層された構成を有する表面コーティング加飾フィルムが得られた。
【0069】
<実施例2>
フィルムコーティング用組成物を調製する際、硬化剤としての脂肪族系イソシアナートの使用量を2倍の14.4重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして表面コーティング加飾フィルムを作製した。硬化剤の配合量は、フィルムコーティング用組成物のNCOインデックスが2になるように調整されている。
【0070】
<実施例3>
フィルムコーティング用組成物を調製する際、主剤としてのアクリル系ポリオール(三井化学社製の「オレスター(登録商標)Q555」)100重量部(固形分40%)と、添加剤としての溶剤分散ポリエチレン粒子(岐阜セラツク製造所製の「X-7019」、平均粒子径:12μm)16.1重量部(固形分15%、溶剤:酢酸エチル)と、溶剤の酢酸エチル75重量部とを混合して攪拌した後に、硬化剤としての脂肪族系イソシアナート(三井化学社製の「スタビオ(登録商標)D-370N」)14.4重量部を投入して再度攪拌し、フィルムコーティング用組成物を調製したこと以外は実施例1と同様にして表面コーティング加飾フィルムを作製した。なお、硬化剤の配合量は、フィルムコーティング用組成物のNCOインデックスが2になるように調整されている。
【0071】
<実施例4>
フィルムコーティング用組成物を調製する際、添加剤としての溶剤分散ポリエチレン粒子の使用量を3倍の48.3重量部に変更したこと以外は実施例3と同様にして表面コーティング加飾フィルムを作製した。なお、硬化剤の配合量は、フィルムコーティング用組成物のNCOインデックスが2になるように調整されている。
【0072】
<実施例5>
フィルムコーティング用組成物を調製する際、主剤としてのアクリル系ポリオールとして、三井化学社製の「オレスター(登録商標)Q555」100重量部に代えて、三井化学社製の「オレスター(登録商標)Q563」100重量部(固形分50%、溶剤:酢酸ブチル及び酢酸エチル)を用い、硬化剤の配合量を7.2重量部から8.7重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして表面コーティング加飾フィルムを作製した。なお、硬化剤の配合量は、フィルムコーティング用組成物のNCOインデックスが1になるように調整されている。
【0073】
<実施例6>
フィルムコーティング用組成物を調製する際、硬化剤としての脂肪族系イソシアナートの使用量を2倍の17.4重量部に変更したこと以外は実施例5と同様にして表面コーティング加飾フィルムを作製した。硬化剤の配合量は、フィルムコーティング用組成物のNCOインデックスが2になるように調整されている。
【0074】
<実施例7>
主剤としてのアクリル系ポリオール(三井化学社製の「オレスター(登録商標)Q563」)100重量部(固形分50%)と、添加剤としての溶剤分散ポリエチレン粒子(岐阜セラツク製造所製の「X-7019」)20重量部と、溶剤の酢酸エチル75重量部とを混合して攪拌した後に、硬化剤としての脂肪族系イソシアナート(三井化学社製の「スタビオ(登録商標)D-370N」)17.4重量部を投入して再度攪拌し、フィルムコーティング用組成物を調製したこと以外は実施例5と同様にして表面コーティング加飾フィルムを作製した。なお、硬化剤の配合量は、フィルムコーティング用組成物のNCOインデックスが2になるように調整されている。
【0075】
<実施例8>
フィルムコーティング用組成物を調製する際、添加剤としての溶剤分散ポリエチレン粒子の使用量を3倍の60重量部に変更したこと以外は実施例7と同様にして表面コーティング加飾フィルムを作製した。なお、硬化剤の配合量は、フィルムコーティング用組成物のNCOインデックスが2になるように調整されている。
【0076】
<比較例1>
主剤としてのシリコーン共重合ウレタン樹脂(大日精化工業社製の「レザロイドLU-504SP」)100重量部(固形分19.5%)と、硬化剤(大日精化工業社製の「セイカボンドC-83」)4重量部(固形分100%)を混合して攪拌し、フィルムコーティング用組成物を調製したこと以外は実施例1と同様にして表面コーティング加飾フィルムを作製した。なお、主剤の「レザロイドLU-504SP」は、粒径0.1~0.8μmのシリカ微粒子を含有している。
【0077】
<比較例2>
表面コーティング層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして表面コーティング層を有さない加飾フィルムを作製した。
【0078】
<評価>
実施例1~8及び比較例1の表面コーティング加飾フィルム、及び、比較例2の表面コーティング層を有さない加飾フィルムについて、以下の評価を行った。結果を下記表1に示す。
【0079】
(1)耐擦傷性試験(スチールウールひっかき試験)
表面コーティング加飾フィルムの表面コーティング層側の表面(実施例1~8及び比較例1)又は加飾フィルムのトップフィルム側の表面(比較例2)を、グレード#0000のスチールウールを用いて荷重200gにて50往復擦った後、表面状態を目視にて下記基準により評価した。
0:外観が変化しなかった
1:外観が若干変化した
2:外観が著しく変化した
【0080】
(2)透明性
表面コーティング加飾フィルムの表面コーティング層側の表面(実施例1~8及び比較例1)又は加飾フィルムのトップフィルム側の表面(比較例2)から視認して印刷層の意匠を目視にて下記基準により評価した。
〇:上層が透明であり、印刷層の意匠が明瞭であった
×:上層が白濁し、印刷層の意匠が不明瞭であった
【0081】