(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039585
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】回線制御装置及び無線通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 24/04 20090101AFI20220303BHJP
H04W 84/22 20090101ALI20220303BHJP
H04W 88/14 20090101ALI20220303BHJP
【FI】
H04W24/04
H04W84/22
H04W88/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144693
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慧
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067BB01
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】 異常が発生したユニットを含むユニット部の冗長切替時に、当該ユニット部以外での通信切断を防ぎ、保守作業を簡易にし、保守時間を低減し、装置の稼働率を向上させることができる回線制御装置及び無線通信システムを提供する。
【解決手段】 同一の機能を備えた#0系及び#1系の2つのユニット13から成る複数のユニット部と、各ユニット13に接続する2つの通信経路とを備え、管理ユニット14が、2つの通信経路の一方を運用中として動作させ、各ユニット13に運用中の通信経路を介して通信するよう設定し、運用中のユニットの異常を検出すると、当該ユニットを待機中とすると共に他方のユニットを運用中とする冗長切替を、異常が発生したユニットを含むユニット部のみで行い、それ以外のユニット部では行わない回線制御装置としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指令を出力する通信卓と、通信端末と無線通信する複数の基地局とに接続し、回線制御を行う回線制御装置であって、
同じ機能を備えた2つのユニットで冗長構成されたユニット部と、
前記ユニットに接続する第1の通信経路及び第2の通信経路と、
前記第1の通信経路又は前記第2の通信経路の一方を運用中、他方を待機中として動作させ、前記ユニット部における一方のユニットを運用中、他方のユニットを待機中として動作させる管理ユニットとを備え、
前記ユニット部は、複数設けられており、
前記管理ユニットは、前記ユニット部における運用中のユニットの異常を検出した際に、当該ユニット部における待機中のユニットを運用中に切り替える冗長切替動作を行い、前記異常を検出したユニットが含まれないユニット部では冗長切替動作を行わないことを特徴とする回線制御装置。
【請求項2】
管理ユニット部が、第1及び第2の通信経路の内、運用中の通信経路の異常を検出した際に、待機中の通信経路を運用中に切り替えて動作させ、各ユニットに、新たに運用中となった通信経路を通信に用いるよう設定することを特徴とする請求項1記載の回線制御装置。
【請求項3】
管理ユニット部が、第1の管理ユニットと第2の管理ユニットとを備えた冗長構成であり、外部からの指示で一方が運用状態、他方が待機状態として動作することを特徴とする請求項1又は2記載の回線制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか記載の回線制御装置と、通信卓と、複数の基地局とを備えたことを特徴とする無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回線制御装置、無線通信システムに係り、特に冗長切替による通信切断の発生を低減すると共に、保守手順及び保守時間を低減することができる回線制御装置及び無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[無線通信システムの概略構成例:
図6]
無線通信システムの概略構成例について
図6を用いて説明する。
図6は、無線通信システムの概略構成例を示す説明図である。
図6に示すように、無線通信システムは、回線制御装置1と、通信卓2a,2b(通信卓2と記載することもある)と、管理装置3と、基地局4a,4b(基地局4と記載することもある)と、通信端末5a~5f(通信端末5と記載することもある)とを備えている。通信卓2、基地局4、通信端末5の数は任意である。
【0003】
回線制御装置1は、無線通信システムの中核装置であり、通信卓2、基地局4、通信端末5からの要求に応じて音声・データ転送のための通信路を確立する回線制御機能を有する。
通信卓2は、指令局等に設けられ、全通信端末5を対象とした一斉指令や、通信端末5間の通話への割込みなど業務運用において特に重要となる指令業務を円滑に行うための機能を有する。
【0004】
管理装置3は、無線通信システムの運用状況を監視し、通信状態や障害状態を表示可能とする。
基地局4は、回線制御装置1に有線接続され、自己のエリア内に存在する(在圏する)通信端末5と無線接続して、通信端末5同士、及び通信端末5と通信卓2間の無線通信の中継機能を有する。
通信端末5は、基地局4を介して、他の通信端末5や通信卓2との無線通信を行う。
図6の例では、通信端末5a,5b,5cは基地局4aのエリアに在圏し、通信端末5d,5e,5fは基地局4bのエリアに在圏している。
【0005】
[冗長構成]
回線制御装置は、その機能を実現するために複数のユニットが設けられている。そして、装置の継続的な運用を可能とするため、それぞれのユニットが二重化された冗長構成となっている。
【0006】
[従来の回線制御装置の構成:
図7]
従来の回線制御装置の構成について
図7を用いて説明する。
図7は、従来の回線制御装置の構成を示す説明図である。
図7に示すように、従来の回線制御装置30は、複数のユニット33と、ユニット間を接続する通信経路#0(31)及び通信経路#1(32)と、管理ユニット#0(34)とを備えている。
【0007】
ユニット33は、機器の種類ごとに異なる機能を実現するものであり、同一機種のユニットを2個ずつ備えている。
図7の例では、3種類のユニット(ユニットA、ユニットB、ユニットC)があり、それぞれ、#0(0系)と#1(1系)の2つのユニットで二重化された構成(冗長構成)としている。ここでは、同一の機能を備えた#0と#1のユニットの組をユニット部と称するものとする。
【0008】
ユニット33としては、例えば、装置間の通話接続を行う機能、基地局4との通信を行う機能、通信卓2との通信を行う機能等を実現する機器がある。
そして、各ユニット33の#0のユニット(ユニット#0)は、通信経路#0(31)に接続し、#1のユニット(ユニット#1)は、通信経路#1(32)に接続している。
【0009】
通信経路#0(31)及び通信経路#1(32)は、インタフェース及び有線回線を介して通信卓2及び基地局4に接続する。
従来の回線制御装置30では、通信経路#0(31),通信経路#1(32)は、管理ユニット#0(34)によって、いずれか一方が通信に用いられ(運用状態)、他方が待機する(待機状態)ように制御されている。
【0010】
管理ユニット#0(34)は、回線制御装置30内の運用中の各ユニット33の動作を監視し、不具合が発生した場合に冗長構成の他方のユニット33に切り替える冗長切替の制御を行う。
通常(正常時)は、各ユニット部のユニット#0が運用状態で動作し、ユニット#1は待機状態で動作している。
管理ユニット#0(34)は、各ユニット33が正常に動作していることを監視し、異常があった場合には、ユニット#0を待機状態にし、ユニット#1を運用状態にするよう切り替える。
【0011】
[従来の冗長切替の例:
図8]
従来の冗長切替の例について
図8を用いて説明する。
図8は、従来の冗長切替の例を示す説明図である。
図8に示すように、ユニット#0及び通信経路#0(31)が運用状態にある場合に、いずれかのユニット部のユニット#0(ここではユニットB#0)に異常が発生すると、管理ユニット#0(34)が冗長切替を行って、全てのユニット部のユニット#0及び通信経路#0(31)を待機状態とし、全てのユニット部のユニット#1及び通信経路#1(32)を運用状態とする。
図8の例では、異常が発生していないユニットA#0,ユニットC#0も待機状態になる。
【0012】
[従来の冗長切替のシーケンス例:
図9]
従来の冗長切替のシーケンス例について
図9を用いて説明する。
図9は、従来の冗長切替のシーケンス例を示す説明図である。
図9に示すように、通常時は、各ユニット部のユニット#0が運用状態で動作し(S11)、各ユニット部のユニット#1が待機状態で動作している(S12)。
この状態で、ユニットB#0に異常が発生すると(S13)、管理ユニット#0(34)が異常を検出し(S14)、異常が発生したユニットB#0及び他のユニット#0を、待機状態に切り替える(S15,S16)。その際、管理ユニット#0(34)は、通信経路#0(31)も待機状態とする。
【0013】
そして、管理ユニット#0(34)は、各ユニット部のユニット#1及び通信経路#1(32)を運用状態へ切り替える(S17)。
これらの切り替え動作により、全てのユニット部において、ユニット#0は待機状態で動作し(S18)、ユニット#1は運用状態で動作することになる(S19)。
【0014】
[両系故障の場合:
図10]
ここで、従来の回線制御装置30において、#0系のユニットと#1系のユニットの両方に不具合(異常)が発生した場合(両系故障)について
図10を用いて説明する。
図10は、従来の回線制御装置において両系故障となった場合の説明図である。
図10に示すように、ユニットB#0で異常が発生して、全てのユニット#0及び通信経路#0(31)が待機状態、全てのユニット#1及び通信経路#1(32)が運用状態となった後で、例えばユニットA#1に異常が発生した場合を考える。
この場合、従来の回線制御装置30では、ユニットA#0には異常は発生していないにも関わらず、冗長切替によって待機状態となっているので、当該ユニット部では、ユニットA#0、ユニットA#1の両方が運用不能な状態となってしまう。
【0015】
[交換作業と通信切断]
更に、この状態から異常となったユニットを交換する際の保守作業について説明する。
ユニットの交換は、待機状態にあるユニットしか行うことができない。
つまり、ユニットA#1は、異常が発生しているものの、運用状態であるため、このままでは交換はできない。
【0016】
そこで、まず、既に待機状態であるユニットB#0を取り外して正常なユニットと交換して、交換後に#1から#0への冗長切替を行い、その後で、待機状態となったユニットA#1の交換を行う必要がある。そのため、交換作業に伴う切替が煩雑になっていた。
そして、このような冗長切替に伴い、ユニットC#0のような、異常が発生していないユニットで行われていた通話接続に関しても、通信の切断が発生していた。
【0017】
[関連技術]
尚、回線制御装置に関する従来技術としては、特開2003-258743号公報「通信システム」(特許文献1)がある。
特許文献1には、回線制御装置において、端末装置及び付属装置のいずれかから切換要求コマンドを受信した際に、基地局装置の現用機と予備機とを切り換えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述したように、従来の回線制御装置では、不具合が発生していないユニットでも冗長切替を行うことにより通信切断が発生してしまい、不都合であるという問題点があった。
また、異常が発生したユニットを交換する際にも冗長切替を伴うことがあり、保守作業が煩雑で時間がかかるという問題点があった。
【0020】
尚、特許文献1には、各ユニットが複数の通信経路に接続され、管理ユニットが、運用中のユニットの異常を検出した場合に、当該ユニット及び当該ユニットと二重化を組むユニットについて冗長切替を行い、それ以外のユニットについては冗長切替を行わないことは記載されていない。
【0021】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、冗長切替をユニット部ごとに独立して行い、異常が発生したユニットを含むユニット部のみで冗長切替を行うことで、他のユニット部での通信切断を防ぎ、保守作業を簡易にし、保守時間を低減し、装置の稼働率を向上させることができる回線制御装置及び無線通信システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、指令を出力する通信卓と、通信端末と無線通信する複数の基地局とに接続し、回線制御を行う回線制御装置であって、同じ機能を備えた2つのユニットで冗長構成されたユニット部と、ユニットに接続する第1の通信経路及び第2の通信経路と、第1の通信経路又は第2の通信経路の一方を運用中、他方を待機中として動作させ、ユニット部における一方のユニットを運用中、他方のユニットを待機中として動作させる管理ユニットとを備え、ユニット部は、複数設けられており、管理ユニットは、ユニット部における運用中のユニットの異常を検出した際に、当該ユニット部における待機中のユニットを運用中に切り替える冗長切替動作を行い、異常を検出したユニットが含まれないユニット部では冗長切替動作を行わないことを特徴としている。
【0023】
また、本発明は、上記回線制御装置において、管理ユニット部が、第1及び第2の通信経路の内、運用中の通信経路の異常を検出した際に、待機中の通信経路を運用中に切り替えて動作させ、各ユニットに、新たに運用中となった通信経路を通信に用いるよう設定することを特徴としている。
【0024】
また、本発明は、上記回線制御装置において、管理ユニット部が、第1の管理ユニットと第2の管理ユニットとを備えた冗長構成であり、外部からの指示で一方が運用状態、他方が待機状態として動作することを特徴としている。
【0025】
また、本発明は、無線通信システムにおいて、上記いずれか記載の回線制御装置と、通信卓と、複数の基地局とを備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、指令を出力する通信卓と、通信端末と無線通信する複数の基地局とに接続し、回線制御を行う回線制御装置であって、同じ機能を備えた2つのユニットで冗長構成されたユニット部と、ユニットに接続する第1の通信経路及び第2の通信経路と、第1の通信経路又は第2の通信経路の一方を運用中、他方を待機中として動作させ、ユニット部における一方のユニットを運用中、他方のユニットを待機中として動作させる管理ユニットとを備え、ユニット部は、複数設けられており、管理ユニットは、ユニット部における運用中のユニットの異常を検出した際に、当該ユニット部における待機中のユニットを運用中に切り替える冗長切替動作を行い、異常を検出したユニットが含まれないユニット部では冗長切替動作を行わない回線制御装置としているので、異常が発生したユニットとは無関係のユニット部について不要な冗長切替を行わず、通信切断を防ぐと共に、異常なユニットのみ直ちにユニット交換を行うことができ、保守作業の手順を簡易にし、保守管理に要する時間を短縮して、装置の稼働時間を増大させることができる効果がある。
【0027】
また、本発明によれば、管理ユニット部が、第1及び第2の通信経路の内、運用中の通信経路の異常を検出した際に、待機中の通信経路を運用中に切り替えて動作させ、各ユニットに、新たに運用中となった通信経路を通信に用いるよう設定する上記回線制御装置としているので、ユニット部においていずれのユニットが運用中であっても、運用中の通信経路を用いて通信を行うことができると共に、当該通信経路に異常が発生した場合には他方の通信経路に切り替えて滞りなく通信を行うことができる効果がある。
【0028】
また、本発明によれば、管理ユニット部が、第1の管理ユニットと第2の管理ユニットとを備えた冗長構成であり、外部からの指示で一方が運用状態、他方が待機状態として動作する上記回線制御装置としているので、運用状態の管理ユニットに異常が発生しても、待機状態の管理ユニットを運用状態として、ユニット部における冗長切替の制御を継続させることができ、装置の運用を継続することができる効果がある。
【0029】
また、本発明によれば、上記いずれか記載の回線制御装置と、通信卓と、複数の基地局とを備えた無線通信システムとしているので、異常が発生したユニット以外での通信切断を防ぐことができ、システムを滞りなく運用することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】本回線制御装置の冗長切替の例を示す説明図である。
【
図3】本回線制御装置における冗長切替のシーケンス例を示す説明図である。
【
図4】本回線制御装置において両系に異常が発生した場合の説明図である。
【
図5】本回線制御装置の実装例を示す説明図である。
【
図6】無線通信システムの概略構成例を示す説明図である。
【
図7】従来の回線制御装置の構成を示す説明図である。
【
図9】従来の冗長切替のシーケンス例を示す説明図である。
【
図10】従来の回線制御装置において両系故障となった場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る回線制御装置(本回線制御装置)は、同一の機能を備えた2つのユニットから成る複数のユニット部と、各ユニットに接続する第1及び第2の通信経路と、各ユニットの状態を監視し、ユニット部毎に一方のユニットを運用中、他方のユニットを待機中として動作させる管理ユニットとを備え、管理ユニットが、第1又は第2の通信経路の一方を運用中として動作させ、各ユニットに運用中の通信経路を介して通信するよう設定し、運用中のユニットの異常を検出すると、当該ユニットを待機中とすると共に他方のユニットを運用中とする冗長切替を当該ユニット部のみで行い、他のユニット部では冗長切替を行わないものであり、冗長切替をユニット単位として正常なユニットについては冗長切替を行わないため、通信切断が発生せず、安定した通信を実現できると共に、冗長切替をユニット単位にしたことで、保守作業もユニット単位で可能となるため、保守作業を簡易且つ短時間とし、装置の稼働率を向上させるものである。
【0032】
また、本回線制御装置は、管理ユニットを2台備えた冗長構成とし、上位の管理装置からの指示で、一方が運用中、他方が待機中として動作するものであり、運用中の管理ユニットに異常が発生した場合には、待機中の管理ユニットに切り替えて動作させることにより、回線制御装置の運用を継続することができるものである。
【0033】
また、本実施の形態に係る無線通信システム(本無線通信システム)は、本回線制御装置を備えた通信システムである。
【0034】
[本回線制御装置の構成:
図1]
本回線制御装置の構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本回線制御装置の構成を示す説明図である。
図1に示すように、本回線制御装置10は、
図6と同様の無線通信システムで用いられ、
図7に示した従来の回線制御装置30と同様に、通信経路#0(11)と通信経路#1(12)と、複数のユニット13と、管理ユニット#0(14a)を備え、更に、管理ユニット#1(14b)を備えている。管理ユニット#0(14a)及び管理ユニット#1(14b)を区別しない場合には、管理ユニット14と記載することがある。
【0035】
ユニット13は、従来と同様に同じ機能を持った#0(0系)と#1(1系)の2台のユニットで二重化され、ユニット部を形成している。
図1の例では、2台のユニットA、2台のユニットB、2台のユニットCから成る3つのユニット部を備えている。
【0036】
また、本回線制御装置10では、管理ユニットについても、管理ユニット#0(14a)と管理ユニット#1(14b)とを備えて、冗長構成としている。管理ユニット#0(14a)、管理ユニット#1(14b)は、上位の管理装置3からの指示によって、一方(通常は#0)が運用状態、他方(通常は#1)が待機状態となっている。
請求項に記載した管理ユニット部は、管理ユニット#0(14a)と管理ユニット#1(14b)とを合わせた構成に相当している。
【0037】
そして、本回線制御装置10の特徴として、個々のユニット13、管理ユニット#0(14a)、管理ユニット#1(14b)は、それぞれ、通信経路#0(11)と、通信経路#1(12)の両方に接続している。
通信経路#0(11)と通信経路#1(12)は、管理ユニット14の制御によって一方が運用状態、他方が待機状態となっており、運用状態の通信経路に異常が発生した場合に、待機状態の通信経路に切り替えられる。
【0038】
各ユニット13は、運用状態と待機状態の両方の通信経路に接続されているが、管理ユニット14から、通信時に使用する通信経路が設定されている(使用通信経路)。使用通信経路は、その時点で運用状態中の通信経路である。
【0039】
これにより、ユニット部毎に運用状態となったユニット13を、#0系、#1系に関係なく運用状態の通信経路を介して通信させることが可能となり、従来のような、系毎の通信経路とユニットの組を全体として切り替えるのではなく、個々のユニット部毎の冗長切替を可能とするものである。
【0040】
具体的には、各ユニット13は、例えば、スイッチで切り替えられる2つの入出力部を備えており、内部の制御部が管理ユニット14からの指示(設定)に従って当該スイッチを切り替えることにより、通信経路#0(11)又は通信経路#1(12)のいずれかを使用するようになっている。
【0041】
[本回線制御装置の冗長切替の例:
図2]
次に、本回線制御装置の冗長切替の例について
図2を用いて説明する。
図2は、本回線制御装置の冗長切替の例を示す説明図である。
図2に示すように、本回線制御装置10が#0系のユニットを運用状態として、通信経路#0(11)を用いて通信を行っている状態において、ユニットB#0に異常が発生したとする。
【0042】
その場合、運用状態にある管理ユニット#0(14a)又は管理ユニット#1(14b)(管理ユニット14)は、全てのユニット部についてユニットを#0系から#1系に切り替えるのではなく、異常が発生したユニットBについてのみ、切替を行ってユニットB#0を待機状態とし、ユニットB#1を運用状態とする。
【0043】
つまり、管理ユニット14は、ユニットBのユニット部のみで冗長切替を行い、異常とは無関係のユニットAのユニット部や、ユニットCのユニット部では冗長切替を行わない。
また、通信経路#0(11)には異常がないので、管理ユニット14は、各ユニット13に対する使用通信経路の設定は更新せず、各ユニット13(ユニットB#1を含む)は引き続き通信経路#0(11)を用いる。
【0044】
これにより、従来、ユニットA#0やユニットC#0は、正常に動作していたにも関わらず、冗長切替によって通信切断が発生していたが、本回線制御装置10では異常が発生した機器以外は冗長切替を行わないので、通信切断を防ぐことができるものである。
【0045】
[本回線制御装置における冗長切替のシーケンス例:
図3]
次に、本回線制御装置における冗長切替のシーケンス例について
図3を用いて説明する。
図3は、本回線制御装置における冗長切替のシーケンス例を示す説明図である。
図3に示すように、通常時は、各ユニット部のユニット#0が運用状態で動作し、ユニット#1が待機状態で動作している。つまり、ユニットBのユニット部では、ユニットB#0が運用状態で動作し(S21)、ユニットB#1が待機状態で動作している(S22)。
【0046】
この状態で、ユニットB#0に異常が発生すると(S23)、運用状態にある管理ユニット14が異常を検出し(S24)、異常が発生したユニットB#0を待機状態に切り替える(S25)。他のユニット部については切替を行わない。
そして、管理ユニット14は、待機状態であったユニットB#1を運用状態に切り替える(S26)。
これにより、ユニットB#0が待機状態で動作し(S27)、ユニットB#1が運用状態で動作することになる(S28)。
このように、本回線制御装置では、ユニット部毎に#0又は#1のいずれかが選択されて運用状態となるものであって、全てのユニット部が共通して#0又は#1を運用状態とするものではない。
【0047】
[両系に異常が発生した場合:
図4]
次に、本回線制御装置において、通信経路#0及び通信経路#1の両系に異常が発生した場合について
図4を用いて説明する。
図4は、本回線制御装置において両系に異常が発生した場合の説明図である。
図4では、ユニットA#1、ユニットB0、ユニットC#0、通信経路#0(11)、及び管理ユニット#0(14a)が運用状態で動作している場合を例としている。
【0048】
この状態で、ユニットB#0に異常が発生した場合、管理ユニット#0(14a)は、ユニットB#0を待機状態とし、ユニットB#1を運用状態とする冗長切替を行う。
その後、ユニットA#1にも異常が発生したとすると、管理ユニット#0(14a)は、ユニットA#1を待機状態、ユニットA#0を運用状態とする冗長切替を行う。
【0049】
つまり、本回線制御装置では、ユニット部単位で独立して冗長切替を行うようにしており、あるユニットで異常が発生した場合には当該ユニットを含むユニット部における冗長切替のみを行い、他のユニット部では冗長切替を行わない。
これにより、異常が発生していないユニットC#0では、冗長切替が行われないため、通信切断が発生せず、通信を継続できるものである。また、回線制御装置全体としても、運用可能時間を増大させることができる(可用性が向上する)ものである。
【0050】
従来の回線制御装置では、いずれかのユニットで異常があると、全てのユニット部で冗長切替が発生する。そのため、各ユニットの異常発生率が同程度であるとすると、通信切断の発生回数はユニットの総数に比例して増加することになる。
これに対して、本回線制御装置では、個々のユニットの冗長切替は、自ユニットで異常が発生した場合、又は自ユニットと二重化を組んでいるユニット(同一ユニット部のユニット)で異常が発生した場合に限定される。
【0051】
そのため、回線制御装置内に140機のユニットが設けられている場合には、各ユニットでの通信切断の発生頻度は最大で70倍程度改善される。つまり、本回線制御装置では、従来の構成に比べて、通信切断の発生頻度が70分の1程度にまで低減されるものである。
【0052】
更に、本回線制御装置では、異常が発生したユニットは、当該ユニット部における冗長切替によって異常が発生したユニットのみ待機状態となるため、直ちにユニット交換の作業を行うことができ、作業の手順(工数)を削減し、迅速に保守作業を行うことができるものである。
特に、本回線制御装置では、全てのユニット部が関わる冗長切替がなくなるため、回線制御装置の運用を継続したまま、異常なユニットの交換を行うことができ、これにより平均復旧時間と装置の稼働率を向上させることができるものである。
【0053】
[通信経路の冗長切替]
運用状態にある管理ユニット#0(14a)又は管理ユニット#1(14b)は、通信経路#0(11)、通信経路#1(12)の状態を監視し、運用状態の通信経路に異常が発生した場合には、冗長切替を行う。
それと共に、ユニット13に対して、新たに運用状態となった通信経路を使用通信経路として設定する。
これにより、本回線制御装置では、通信経路に不具合が発生した場合でも、滞りなく冗長切替を行って、運用を継続することができるものである。
【0054】
[管理ユニットの冗長切替]
本回線制御装置では、管理ユニットも冗長構成としており、管理ユニット#0(14a)、管理ユニット#1(14b)を備えている。
そして、
図6に示した上位の管理装置が管理ユニット#0(14a)又は管理ユニット#1(14b)の一方を運用状態、他方を待機状態として動作させ、管理ユニット#0(14a)及び管理ユニット#1(14b)の状態を監視して、運用状態にある管理ユニット#0(14a)又は管理ユニット#1(14b)に異常が発生した場合には、他方を運用状態とするよう冗長切替を行う。
【0055】
従来は、管理ユニットは1台しか設けられていなかったため、管理ユニットに異常が発生すると冗長切替の制御を行うことができなかったが、本回線制御装置では、管理ユニットも冗長構成とすることで、確実に冗長切替を行って、回線制御装置における冗長切替の制御を継続することができるものである。
【0056】
[本回線制御装置の実装例:
図5]
本回線制御装置の具体的な構成例について
図5を用いて説明する。
図5は、本回線制御装置の実装例を示す説明図である。
図5に示すように、本回線制御装置40は、ユニットとして、通話接続制御装置42と、基地局通信装置43と、通信卓通信装置44と、管理ユニット45とを備え、通信経路として、L2スイッチングハブ(通信経路#0)46及びL2スイッチングハブ(通信経路#1)47とを備えている。
上述したように、全てのユニット及び管理ユニット45は、L2スイッチングハブ(通信経路#0)46とL2スイッチングハブ(通信経路#1)47の両方に接続されている。
【0057】
通話接続制御装置42は、通信卓2と通信端末5、通信端末5同士の通話接続を管理、制御する。
基地局通信装置43は、基地局4との通信を行う。基地局通信装置Aは、
図6に示した基地局Aと通信を行い、基地局通信装置Bは、基地局Bと通信を行う。
【0058】
通信卓通信装置44は、通信卓2との通信を行うものであり、通信卓通信装置Aは、通信卓Aと通信を行い、通信卓通信装置Bは、通信卓Bと通信を行う。
そして、通話接続制御装置42、基地局通信装置A、基地局通信装置B、通信卓通信装置A、通信卓通信装置B、管理ユニット45は、それぞれ#0と#1の2台の機器で二重化され、ユニット部を構成している。
【0059】
このような構成において、例えば、運用中の基地局通信装置A#0で異常が発生した場合、管理ユニット45は、基地局通信装置A#0を待機状態とし、基地局通信装置A#1を運用状態とする冗長切替を行う。
その際、基地局Aを利用している通信端末5の通信は一旦切断されるが、冗長切替以降は、基地局通信装置A#1を使用して再び通信を行うことが可能である。
基地局Aを使用しない通信については、冗長切替が行われないため、通信が切断されることなく継続されるものである。
【0060】
[実施の形態の効果]
本回線制御装置によれば、同一の機能を備えた#0系及び#1系の2つのユニット13から成る複数のユニット部と、各ユニット13に接続する通信経路#0(11)及び通信経路#1(12)と、各ユニット13の状態を監視し、ユニット部毎に一方のユニットを運用中、他方のユニットを待機中として動作させる管理ユニット14とを備え、管理ユニット14が、通信経路#0(11)又は通信経路#1(12)の一方を運用中として動作させ、各ユニット13に運用中の通信経路を介して通信するよう設定し、運用中のユニット13の異常を検出すると、当該ユニットを待機中とすると共に他方のユニットを運用中とする冗長切替を、異常が発生したユニットを含むユニット部のみで行い、それ以外のユニット部では行わない回線制御装置としているので、正常なユニットについては冗長切替を行わないため通信切断が発生せず、安定した通信を実現できると共に、保守作業を簡易且つ短時間とし、装置の稼働率を向上させる効果がある。
【0061】
また、本回線制御装置によれば、管理ユニット14が、運用中の通信経路の異常を検出すると、待機中の通信経路を運用中に切り替えて動作させ、各ユニットに、新たに運用中となった通信経路を用いて通信するよう設定するようにしており、一方の通信経路が異常となっても装置の運用を継続でき、装置の稼働率を向上させる効果がある。
【0062】
また、本回線制御装置によれば、管理ユニット14を冗長構成として、上位の管理装置からの指示で一方を運用中、他方を待機中として動作させるようにしているので、運用中の管理ユニットに異常が発生した場合に、他方の管理ユニットを運用中とすることができ、回線制御装置における冗長切替の制御を継続でき、装置の信頼性を向上させることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、冗長切替による通信切断の発生を低減すると共に、保守手順及び保守時間を低減することができる回線制御装置及び無線通信システムに適している。
【符号の説明】
【0064】
1,10,30,40…回線制御装置、 2…通信卓、 3…管理装置、 4…基地局、 5…通信端末、 11,12,31,32…通信経路、 13,33…ユニット、 14,34…管理ユニット、 42…通話接続制御装置、 43…基地局通信装置、 44…通信卓通信装置、 45…管理ユニット、 46,47…L2スイッチングハブ