(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039587
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】保温性素材
(51)【国際特許分類】
A47G 9/02 20060101AFI20220303BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20220303BHJP
A41D 31/02 20190101ALI20220303BHJP
A41D 31/06 20190101ALI20220303BHJP
【FI】
A47G9/02 E
A41D31/00 502E
A41D31/00 503G
A41D31/02 A
A41D31/06 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144695
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000178675
【氏名又は名称】ヤマシンフィルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 満
(72)【発明者】
【氏名】中倉 美紀
(72)【発明者】
【氏名】陳 力浩
【テーマコード(参考)】
3B102
【Fターム(参考)】
3B102BA10
3B102BA12
(57)【要約】
【課題】保温性が向上した保温性素材、該保温性素材を備える衣類及び寝具、並びに該保温性素材に使用する繊維積層体を提供すること。
【解決手段】中綿層と、繊維積層体層とを備え、前記繊維積層体層が、繊維集合体及び繊維集合体を挟持する不織布からなり、前記繊維集合体を構成する繊維の平均繊維径が400nm以上2000nm以下であり、かつ、前記繊維集合体を構成する繊維が熱可塑性樹脂を主成分として含み、熱源側から中綿層及び繊維積層体層の順に配置される、保温性素材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中綿層と、繊維積層体層とを備え、
前記繊維積層体層が、繊維集合体及び繊維集合体を挟持する不織布からなり、
前記繊維集合体を構成する繊維の平均繊維径が400nm以上2000nm以下であり、かつ、前記繊維集合体を構成する繊維が熱可塑性樹脂を主成分として含み、
熱源側から中綿層及び繊維積層体層の順に配置される、
保温性素材。
【請求項2】
前記保温性素材が、衣類用又は寝具用である、請求項1に記載の保温性素材。
【請求項3】
前記繊維集合体の目付が30g/m2以上200g/m2以下である、請求項1又は2に記載の保温性素材。
【請求項4】
前記繊維積層体の厚みが0.6mm以上2.8mm以下である、請求項1~3のいずれかに記載の保温性素材。
【請求項5】
前記繊維集合体が、繊維径1μm以上2μm未満の繊維を10%以上60%以下含有する、請求項1~4のいずれかに記載の保温性素材。
【請求項6】
前記繊維集合体が、繊維径400nm以上1000nm未満の繊維を35%以上含有する、請求項1~5のいずれかに記載の保温性素材。
【請求項7】
前記繊維集合体の繊維径2μm以上の繊維の含有率が20%以下である、請求項1~6のいずれかに記載の保温性素材。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂である、請求項1~7のいずれかに記載の保温性素材。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂が、ポリブチレンテレフタレートである、請求項1~8のいずれかに記載の保温性素材。
【請求項10】
前記中綿層を構成する繊維の平均繊維径が5μm以上である、請求項1~9のいずれかに記載の保温性素材。
【請求項11】
前記中綿層の厚みが1mm以上である、請求項1~10のいずれかに記載の保温性素材。
【請求項12】
前記中綿層を構成する繊維がポリエステル繊維である、請求項1~11のいずれかに記載の保温性素材。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の保温性素材を備える、衣類。
【請求項14】
請求項1~12のいずれかに記載の保温性素材を備える、寝具。
【請求項15】
請求項1~12のいずれかに記載の保温性素材に使用される、繊維積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温性素材に関する。
【背景技術】
【0002】
寝具や上衣例えばダウンジャケットなどの中綿には、保温性が求められている。
例えば、特許文献1には、寝床内の温度を速やかに上昇させ、また、暖かい状態を長く保つことができ、更に、寝床内の湿度を一定に保って寝床内の環境を短時間で快適にすることのできる布団を提供することを目的として、極細繊維による綿層と、吸湿発熱繊維による綿層を備えていることを特徴とする布団が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、保温性が向上した保温性素材、該保温性素材を備える衣類及び寝具、並びに該保温性素材に使用する繊維積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意検討の結果、中綿層と、特定の平均繊維径を有する繊維集合体を有する繊維積層体層とを備え、熱源側から中綿層及び繊維積層体層の順に配置した保温性素材とすることにより、上記の課題が解決されることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の<1>~<15>に関する。
<1> 中綿層と、繊維積層体層とを備え、前記繊維積層体層が、繊維集合体及び繊維集合体を挟持する不織布からなり、前記繊維集合体を構成する繊維の平均繊維径が400nm以上2000nm以下であり、かつ、前記繊維集合体を構成する繊維が熱可塑性樹脂を主成分として含み、熱源側から中綿層及び繊維積層体層の順に配置される、保温性素材。
<2> 前記保温性素材が、衣類用又は寝具用である、<1>に記載の保温性素材。
<3> 前記繊維集合体の目付が30g/m2以上200g/m2以下である、<1>又は<2>に記載の保温性素材。
<4> 前記繊維集合体の厚みが0.6mm以上2.8mm以下である、<1>~<3>のいずれかに記載の保温性素材。
<5> 前記繊維集合体が、繊維径1μm以上2μm未満の繊維を10%以上60%以下含有する、<1>~<4>のいずれかに記載の保温性素材。
<6> 前記繊維集合体が、繊維径400nm以上1000nm未満の繊維を35%以上含有する、<1>~<5>のいずれかに記載の保温性素材。
<7> 前記繊維集合体の繊維径2μm以上の繊維の含有率が20%以下である、<1>~<6>のいずれかに記載の保温性素材。
<8> 前記熱可塑性樹脂が、ポリエステル樹脂である、<1>~<7>のいずれかに記載の保温性素材。
<9> 前記熱可塑性樹脂が、ポリブチレンテレフタレートである、<1>~<8>のいずれかに記載の保温性素材。
<10> 前記中綿層を構成する繊維の平均繊維径が5μm以上である、<1>~<9>のいずれかに記載の保温性素材。
<11> 前記中綿層の厚みが1mm以上である、<1>~<10>のいずれかに記載の保温性素材。
<12> 前記中綿層を構成する繊維がポリエステル繊維である、<1>~<11>のいずれかに記載の保温性素材。
<13> <1>~<12>のいずれかに記載の保温性素材を備える、衣類。
<14> <1>~<12>のいずれかに記載の保温性素材を備える、寝具。
<15> <1>~<12>のいずれかに記載の保温性素材に使用される、繊維積層体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、保温性が向上した保温性素材、該保温性素材を備える衣類及び寝具、並びに該保温性素材に使用する繊維積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、メルトブロー装置1の概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[保温性素材]
本発明の保温性素材は、中綿層と、繊維積層体層とを備え、前記繊維積層体層が、繊維集合体及び繊維集合体を挟持する不織布からなり、前記繊維集合体を構成する繊維の平均繊維径が400nm以上2000nm以下であり、かつ、前記繊維集合体を構成する繊維が熱可塑性樹脂を主成分として含み、熱源側から中綿層及び繊維積層体層の順に配置される。
本発明によれば、熱源に対して、中綿層及び繊維積層体層を特定の順に配置することにより、保温性が向上した保温性素材が得られる。上述の効果が得られる詳細な理由な不明であるが、一部は以下のように考えられる。
中綿層を熱源側に配置し、中綿層に対して、熱源とは反対側に、特定の平均繊維径を有する繊維集合体及び繊維集合体を挟持する不織布からなる繊維積層体を配置することにより、単に中綿層と繊維積層体との相加的な効果に比べて、大きな保温性が得られることを見出したものである。中綿に比べて、熱伝達率の低い繊維積層体を、中綿層に対して熱源とは反対側に配置することで、大きな保温性が得られたものと考えられる。
また、前記繊維積層体に含まれる繊維集合体として、平均繊維径を400nm以上2000nm以下であり、熱可塑性樹脂を主成分とした繊維の集合体を使用することにより、薄いながらも優れた保温率、クロー値を有する繊維積層体が得られたものと考えられる。
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0009】
<中綿層>
本発明の保温性素材は、中綿層を備える。
中綿層は、シート状であることが好ましく、中綿としては、綿、羽毛、麻、真綿、ウール、合成繊維綿等を使用することができる。これらの中でも、綿、麻、真綿、合成繊維等の繊維により構成された中綿であることが好ましく、より好ましくは合成繊維から構成された中綿であることがより好ましい。
中綿層を構成する合成繊維としては、公知の合成繊維を使用することができ、例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維綿が好ましく、入手容易性及び保温性の観点から、ポリエステル繊維がより好ましい。
また、中綿層を構成する合成繊維として、中空繊維を使用してもよい。
【0010】
中綿層を構成する繊維の平均繊維径は、保温性を高める観点、及び衣類や寝具等に適したボリューム感を得る観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上であり、そして、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、更に好ましくは50μm以下、より更に好ましくは25μm以下である。
中綿層を構成する繊維の平均繊維径は、実施例に記載の方法により測定される。
【0011】
中綿層の厚みは、保温性素材の用途及び要求される保温性により適宜選択すればよいが、保温性を高める観点、及び衣類や寝具等に適したボリューム感を得る観点から、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、更に好ましくは3mm以上、より更に好ましくは5mm以上、特に好ましくは10mm以上である。そして、上限は特に限定されないが、製品への加工性の観点から、好ましくは150mm以下、より好ましくは100mm以下、更に好ましくは50mm以下、より更に好ましくは30mm以下である。
中綿層の厚みは、実施例に記載の方法により測定される。
【0012】
また、中綿層の目付は特に限定されず、保温性素材の用途及び要求される保温性により適宜選択すればよいが、保温性を高める観点、及び衣類や寝具等に適したボリューム感を得る観点から、好ましくは10g/m2以上、より好ましくは15g/m2以上、更に好ましくは20g/m2以上であり、そして、上限は特に限定されないが、製品への加工性の観点から、好ましくは500g/m2以下、より好ましくは250g/m2以下、更に好ましくは200g/m2以下である。
中綿層の目付は、実施例に記載の方法により測定される。
【0013】
中綿層の密度は特に限定されないが、保温性を高める観点、及び衣類や寝具等に適したボリューム感を得る観点から、好ましくは0.002g/cm3以上、より好ましくは0.004g/cm3以上、更に好ましくは0.006g/cm3以上であり、そして、好ましくは0.2g/cm3以下、より好ましくは0.04g/cm3以下、更に好ましくは0.02g/cm3以下、より更に好ましくは0.012g/cm3以下である。
【0014】
<繊維積層体>
本発明の保温性素材は、繊維積層体層を備え、該繊維積層体層は、繊維集合体及び繊維集合体を挟持する不織布からなる。
〔繊維集合体〕
繊維集合体は、種々の繊維径を有する繊維の集合体であり、後述するように、メルトブロー法等により製造した、繊維集合体であることが好ましい。
【0015】
(平均繊維径)
本発明において繊維集合体を構成する繊維の平均繊維径は、400nm以上2000nm以下である。繊維集合体を構成する繊維の平均繊維径が上記範囲内であると、保温性に優れる。
前記平均繊維径は、より保温性を向上させる観点から、好ましくは600nm以上、より好ましくは800nm以上、更に好ましくは900nm以上、より更に好ましくは1000nm以上であり、そして、好ましくは1600nm以下、より好ましくは1400nm以下、更に好ましくは1200nm以下である。
繊維集合体を構成する繊維の平均繊維径は、実施例に記載の方法により測定される。
【0016】
(繊維径1μm以上2μm未満の繊維の含有率)
本発明において、繊維集合体は、保温性素材としての保温性をより高める観点から、繊維径1μm以上2μm未満の繊維を10%以上含有することが好ましく、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上、より更に好ましくは35%以上であり、そして、好ましくは60%以下、より好ましくは55%以下、更に好ましくは50%以下である。
繊維径が1μm以上2μm未満の繊維の含有率は、実施例に記載の方法により測定される。
【0017】
(繊維径400nm以上1000nm未満の繊維の含有率)
本発明において、繊維集合体を構成する繊維のうち、繊維径が400nm以上1000nm未満の繊維の含有率は、保温性素材としての保温性をより高める観点から、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上、更に好ましくは45%以上であり、そして、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは70%以下、より更に好ましくは60%以下である。
繊維径が400nm以上1000nm未満の繊維の含有率は、実施例に記載の方法により測定される。
【0018】
(繊維径2μm以上の繊維の含有率)
本発明の繊維積層体を構成する繊維のうち、繊維径が2μm以上の繊維の含有率は、保温性素材としての保温性をより高める観点から、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下、より更に好ましくは10%以下である。
繊維径が2μm以上の繊維の含有率は、実施例に記載の方法により測定される。
【0019】
(繊維径400nm以上600nm未満の繊維の含有率)
本発明において、繊維集合体を構成する繊維のうち、繊維径が400nm以上600nm未満の繊維の含有率は、保温性素材としての保温性をより高める観点から、好ましくは1%以上、より好ましくは3%以上であり、そして、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下である。
繊維径が400nm以上600nm未満の繊維の含有率は、実施例に記載の方法により測定される。
【0020】
〔繊維径600nm以上800nm未満の繊維の含有率〕
本発明において、繊維集合体を構成する繊維のうち、繊維径が600nm以上800nm未満の繊維の含有率は、保温性素材としての保温性をより高める観点から、好ましくは5%以上、より好ましくは8%以上、更に好ましくは10%以上であり、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下である。
繊維径が600nm以上800nm未満の繊維の含有率は、実施例に記載の方法により測定される。
【0021】
〔繊維径800nm以上1000nm未満の繊維の含有率〕
本発明において、繊維集合体を構成する繊維のうち、繊維径が800nm以上1000nm未満の繊維の含有率は、保温性素材としての保温性をより高める観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上であり、そして、好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは35%以下である。
繊維径が800nm以上1000nm未満の繊維の含有率は、実施例に記載の方法により測定される。
【0022】
(繊維径400nm未満の繊維の含有率)
本発明において、繊維集合体を構成する繊維のうち、繊維径が400nm未満の繊維の含有率は、保温性素材としての保温性をより高める観点から、好ましくは20%以下であり、より好ましくは18%以下、更に好ましくは15%以下である。また、その下限は特に限定されず、0%であってもよい。
繊維径が400nm未満の繊維の含有率は、実施例に記載の方法により測定される。
【0023】
本発明において、繊維集合体を構成する繊維は、上述の繊維径の分布を有することが好ましいが、大径の繊維と、小径の繊維とを混合して使用するのではなく、分布が広く、場合によっては、2つ以上のピークが存在するような繊維の集合であることが、製造容易性及び面内均一性、並びに保温性素材としての保温性、製品への加工容易性の観点から好ましい。
【0024】
(熱可塑性樹脂)
本発明において、繊維集合体を構成する繊維は、熱可塑性樹脂を主成分として含む。本発明において、繊維集合体は、後述するようにメルトブロー法により製造することが好ましく、繊維原料として、熱可塑性樹脂が好適である。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂;ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂(PA)等が例示される。これらの中でも、熱可塑性樹脂は、クリーニング、特にドライクリーニング時の耐熱性や耐薬品性の観点から、好ましくはポリエステル樹脂であり、より好ましくはポリブチレンテレフタレートである。
熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明において、繊維集合体を構成する繊維は、熱可塑性樹脂を50質量%以上含有し、好ましくは70質量%以上、より好ましく90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、100質量%であってもよい。
【0026】
本発明において、繊維集合体は、上記熱可塑性樹脂に加え、他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、界面活性剤、着色剤、リン系、フェノール系等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系等の耐候安定剤、ヒンダードアミン系等の耐光安定剤、ブロッキング防止剤、ステアリン酸カルシウム等の分散剤、滑剤、核剤、顔料、柔軟剤、親水剤、撥水剤、助剤、充填剤、抗菌剤、農薬、防虫剤、薬剤、天然油、合成油などが挙げられる。
【0027】
(繊維集合体の目付)
本発明において、繊維集合体の目付(坪量)は、保温性素材としての保温性をより高める観点、及び繊維積層体としての厚さを低減する観点から、好ましくは30g/m2以上、より好ましくは35g/m2以上であり、そして、好ましくは200g/m2以下、より好ましくは150g/m2以下、更に好ましくは100g/m2以下、より更に好ましくは50g/m2以下である。
繊維集合体の目付は、実施例に記載の方法により測定される。
【0028】
(繊維集合体の厚み)
本発明の繊維集合体の厚みは、目的とする保温性によって適宜選択すればよいが、保温性を高める観点、繊維積層体としての厚みを低減する観点、及び取扱い性の観点から、好ましくは0.4mm以上、より好ましくは0.6mm以上、更に好ましくは0.8mm以上、より更に好ましくは1.0mm以上であり、そして、好ましくは2.6mm以下、より好ましくは2.2mm以下、更に好ましくは1.8mm以下である。
繊維集合体の厚みは、例えば、株式会社ミツトヨ製、シックネスゲージで測定される。
なお、繊維積層体の厚みは、その用途に応じて適宜変更すればよく、より厚い繊維積層体とする場合には、その厚みは、側面に定規を立てて、自然厚を測定すればよい。
【0029】
〔不織布〕
本発明において、繊維積層体は、繊維集合体及び繊維集合体を挟持する不織布を有する。
繊維集合体を挟持する不織布としては特に限定されないが、後述するメルトブロー法により繊維集合体を製造する際に、基材及び被覆材として使用することが好ましい。
不織布としては、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布、ニードルパンチング及びスパンレース不織布などが例示される。不織布としては、繊維集合体を挟持することにより、繊維集合体からの繊維の脱落、毛羽立ちなどを抑制することができれば、特に限定されない。
該不織布を構成する繊維は特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂等の中から適宜選択すればよく、クリーニング、特にドライクリーニング時の耐熱性、耐薬品性の観点から、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂がより好ましく、ナイロンが更に好ましい。
なお、繊維集合体を挟持する不織布としては、繊維集合体の上下層の2つの不織布が使用される。2つの不織布は、同一であってもよく、異なる種類の不織布が使用されていてもよく、特に限定されない。
【0030】
不織布の目付は特に限定されないが、繊維集合体を挟持することにより、繊維の脱落等を抑制する観点から、不織布1枚当たり、好ましくは5g/m2以上、より好ましくは10g/m2以上、更に好ましくは15g/m2以上、より更に好ましくは20g/m2以上であり、繊維積層体及び保温性素材の全体としての目付を抑制する観点から、好ましくは150g/m2以下、より好ましくは100g/m2以下、更に好ましくは50g/m2以下、より更に好ましくは30g/m2以下である。
【0031】
また、不織布の厚みは特に限定されないが、繊維集合体を挟持することにより、繊維の脱落等を抑制する観点から、不織布1枚当たり、好ましくは25μm以上、より好ましくは50μm以上、更に好ましくは75μm以上、より更に100μm以上であり、そして、繊維積層体全体としての厚みを抑制する観点から、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、更に好ましくは150μm以下である。
【0032】
不織布の密度は、繊維集合体を挟持することにより、繊維の脱落等を抑制する観点から、好ましくは0.01g/cm3以上、より好ましくは0.05g/cm3以上、更に好ましくは0.10g/cm3以上、より更に0.15g/cm3以上であり、そして、繊維積層体全体としての密度を抑制する観点から、好ましくは1.0g/cm3以下、より好ましくは0.5g/cm3以下、更に好ましくは0.30g/cm3以下、より更に好ましくは0.25g/cm3以下である。
不織布は、上市されている製品から、所望の素材、厚み、坪量、密度等を考慮して、適宜選択してもよい。
【0033】
〔繊維積層体及び繊維集合体の製造方法〕
本発明において、繊維積層体の製造方法特に限定されず、上述した平均繊維径及び好ましい繊維径分布を有する繊維集合体が不織布により挟持されていればよく、乾式で製造してもよく、湿式で製造してもよいが、上述した平均繊維径及び好ましい繊維径分布の繊維集合体を得るためには、乾式で製造することが好ましく、乾式の繊維集合体の製造方法としては、メルトブロー法、スパンボンド法等が例示される。これらの中でも、メルトブロー法で作製することが好ましく、熱可塑性樹脂を溶融して押出機のノズルから吐出し、高速高温の気流で噴き出すメルトブロー法で製造することがより好ましい。
より詳細には、高温雰囲気下において、溶融した熱可塑性樹脂を上方から下方に向けて吐出すると共に、吐出された熱可塑性樹脂に向けて略水平方向より、エアノズルから高温かつ高圧の空気を吹き付けて、溶融した熱可塑性樹脂を繊維状の樹脂とし、該繊維状の樹脂を捕集して、繊維集合体を製造することが好ましい。上記の方法では、エアノズルから吹き付けられた空気により、溶融した熱可塑性樹脂が延伸されて繊維状の樹脂となる。
ここで、捕集までの距離が長いほど、密度が低い繊維集合体が得られる傾向にある。また、吐出された熱可塑性樹脂に吹き付ける空気の温度を上げるほど、繊維状の樹脂の繊維径が小さくなる傾向にあり、吹き付ける空気の風量を上げるほど、繊維状の樹脂の繊維径が小さくなる傾向にある。また、溶融した熱可塑性樹脂の時間あたりの吐出量を下げると、繊維径が小さくなる傾向にある。
また、捕集した繊維状の樹脂を巻き取りながら、繊維集合体を製造するが、このとき、巻き取り速度を遅くすることで、目付(坪量)を上げることができる。
【0034】
本発明において特に好適な繊維集合体の製造方法について、
図1を参照して詳述する。
図1は、メルトブロー装置1の概略を示す模式図である。
メルトブロー装置1は、主として樹脂供給部10と、空気流発生部20と、捕集部30と、過熱蒸気供給部40と、を有する。
樹脂供給部10は、主として、ホッパ11と押出機12と、ダイ13と、樹脂ノズル14と、を有する。熱可塑性樹脂の原料チップをホッパ11に投入し、押出機12に備えられた図示しないヒータで加熱して熱可塑性樹脂を溶融し、溶融した熱可塑性樹脂を得る。押出機12は、図示しないギアポンプにより、溶融した熱可塑性樹脂をダイ13へと押し出す。
樹脂ノズル14は、ダイ13に設けられており、溶融した熱可塑性樹脂を吐出する。樹脂ノズル14からは、溶融した熱可塑性樹脂が上方から下方に向けて吐出される。
【0035】
空気流発生部20は、主として圧縮空気を生成するコンプレッサ21と、圧縮空気が通過する配管22と、レギュレータ23と、配管22を加熱するヒータ24と、エアノズル25と、を有する。コンプレッサ21、配管22、及びヒータ24は、高温かつ高圧の空気を生成する高温高圧空気生成部に相当する。エアノズル25は、樹脂ノズル14に隣接して設けられており、高温高圧空気生成部で生成された高温かつ高圧の空気を吐出する。
エアノズル25から吐出する空気の温度は、熱可塑性樹脂の種類等により適宜選択すればよいが、所望の平均繊維径及び繊維径分布を得る観点から、好ましくは400℃以上、より好ましくは450℃以上、更に好ましくは470℃以上であり、そして、好ましくは800℃以下、より好ましくは700℃以下、更に好ましくは650℃以下、より更に好ましくは620℃以下である。
なお、樹脂ノズル14及びエアノズル25は、図の紙面奥に向かって、一列に並んで設けられており、エアノズル25の配列方向は、樹脂ノズル14の配列方向と略並行であり、エアノズル25の配置領域は、樹脂ノズル14の配置領域を含む。
【0036】
エアノズル25からは、高温かつ高圧の空気が略水平方向に吐出される。エアノズル25から吐出される空気の流量は、所望の平均繊維径及び繊維径分布を得る観点から、好ましくは5L/min以上、より好ましくは10L/min以上、更に好ましくは15L/min以上であり、そして、好ましくは60L/min以下、より好ましくは45L/min以下、更に好ましくは35L/min以下である。エアノズル25から吐出された空気を吹き付けることによって、樹脂ノズル14から吐出された溶融熱可塑性樹脂が延伸されて、繊維状の樹脂となる。
【0037】
捕集部30は、主として、繊維状の樹脂を捕集する略円筒形状のサクションドラム31と、ブロワ32と、ブロワ32に接続された吸引部33と、不織布51、52が巻回された不織布ロール34、35と、巻取りドラム36と、を有する。ここで、不織布51は基材であり、不織布52は被覆材(カバー材)である。
【0038】
エアノズル25から吐出された空気により、樹脂ノズル14から吐出された溶融ポリマーは微細な繊維(例えば、ナノファイバ)となり、サクションドラム31に吹き付けられる。サクションドラム31には、不織布ロール34から引き出された不織布51が巻き掛けられており、吸引部33から空気が吸引されることで繊維状の樹脂が不織布51の表面に吸着する。
不織布51の端は巻取りドラム36に設けられている。巻取りドラム36が一定の速度で回転することで、繊維状の樹脂が表面に吸着した不織布51は、巻取りドラム36に向けて一定速度で移動する。
また、不織布ロール35から引き出された不織布52も、端が巻取りドラム36に設けられている。従って、巻取りドラム36が一定の速度で回転することで、不織布52が不織布51表面の繊維層を覆う。そして、不織布52が不織布51表面の繊維層を覆ったものをカレンダー加工等により一体化することで、繊維集合体が不織布51、52によって挟持された構造が得られ、これは、引取りドラム36に巻回される。
本発明において、繊維集合体は、樹脂ノズル14から吐出された樹脂が繊維状樹脂となって集合した部分を意味する。従って、本発明の繊維積層体は、繊維集合体が基材である不織布及び被覆材である不織布に挟持された形態で使用される。
【0039】
過熱蒸気供給部40は、樹脂ノズル14、エアノズル25、及びサクションドラム31により囲まれた空間に過熱蒸気を供給する。樹脂ノズル14、エアノズル25、及びサクションドラム31により囲まれた空間は、エアノズル25から吹き出された空気が溶融した熱可塑性樹脂を繊維化する領域である。過熱蒸気供給部40は、主として、過熱蒸気を発生させる加熱器41と、配管42と、過熱蒸気ノズル43とを有する。
加熱器41は、図示しないボイラー等により発生する飽和蒸気を更に熱し、高い温度の過熱蒸気を発生させる。過熱蒸気は、沸点より高い温度の乾いた水蒸気であり、例えば、200℃以上700℃以下の温度帯で使用される。
加熱器41で生成された過熱蒸気は、配管42を介して、過熱蒸気ノズル43に供給され、過熱蒸気ノズル43から吐出される。過熱蒸気ノズル43は、紙面の奥に向けて一列に並んで設けられており、過熱蒸気ノズル43の配列方向は、樹脂ノズル14及びエアノズル25の配列方向と略並行であり、過熱蒸気ノズル43の配置領域は、樹脂ノズル 14及びエアノズル25の配置領域を含む。
過熱蒸気ノズル43から、過熱蒸気を大量に供給することで、樹脂ノズル14、エアノズル25、及びサクションドラム31により囲まれた空間を高温高湿雰囲気下に置くことができる。
【0040】
なお、樹脂ノズル14は、中心軸が略鉛直方向に沿っている。従って、樹脂ノズル14から吐出された溶融した熱可塑性樹脂は、自重で鉛直下向きに落下する。
また、エアノズル25は、中心軸が略水平方向に沿っている。従って、高温かつ高圧の空気は、エアノズル25から水平方向に吹き出す。
エアノズル25は、樹脂ノズル14の中心軸と交差することが好ましい。つまり、エアノズル25の先端は、樹脂ノズル14の中心軸よりも前方に位置することが好ましい。エアノズル25から吹き出した空気は随伴流が発生しており、樹脂ノズル14から吐出された溶融した熱可塑性樹脂は、随伴流に乗って水平方向に吹き飛ばされ、その後、エアノズル25から吐出された空気により前方に吹き飛ばされることで延伸されて繊維状の樹脂となり、エアノズル25の前方に配置されたサクションドラム31に吹き付けられる。
なお、過熱蒸気ノズル43は、中心軸が水平方向に傾いており、エアノズル25の下方かつ後方からエアノズル25に向けて過熱蒸気を吐出することが好ましい。過熱蒸気ノズル43から吐出された過熱蒸気は、随伴流に乗って水平方向に流れ、樹脂ノズル14、エアノズル25、及びサクションドラム31によって囲まれた雰囲気に供給される。過熱蒸気を随伴流に乗せることで、樹脂ノズル14、エアノズル25及びサクションドラム31により囲まれた空間に過熱蒸気が広がりやすい。
樹脂ノズル14から吐出された溶融した熱可塑性樹脂は、過熱蒸気が樹脂ノズル14、エアノズル25、及びサクションドラム31により囲まれた空間に供給されているため、高温雰囲気下で延伸されて繊維状となる。
【0041】
〔繊維積層体の特性〕
(繊維積層体の厚み)
繊維積層体の厚みは、取扱い性の観点から、好ましくは0.6mm以上、より好ましくは1.0mm以上、更に好ましくは1.2mm以上であり、そして、好ましくは2.8mm以下、より好ましくは2.4mm以下、更に好ましくは2.0mm以下である。
繊維積層体の厚みは、実施例に記載の方法により測定される。
【0042】
<保温性素材の特性>
本発明の保温性素材は、上述のように、中綿層及び繊維積層体層が積層されてなり、熱源側から中綿層及び繊維積層体層の順に配置される。本発明において、熱源側から中綿層及び繊維積層体層の順に配置することにより、中綿及び繊維積層体から想定される保温性よりも、更に優れた保温性が得られる点に、顕著な効果がある。
保温性の指標であるクロー値に関し、一般的には、中綿を単独で測定したクロー値をA、繊維積層体を単独で測定したクロー値をBとしたとき、これらを積層した保温性素材のクロー値は、それぞれ単独で測定したクロー値の和(A+B)に近い値となる。一方、本発明の保温性素材のクロー値をCとすれば、C/(A+B)は、好ましくは1.10以上、より好ましくは1.15以上、更に好ましくは1.20以上であり、想定されるクロー値(A+B)よりも大きく保温性が向上する。
なお、熱源に対して、繊維積層体層、中綿層の順に積層した場合には、クロー値の上昇は殆んど認められない。
クロー値とは、衣類等の熱抵抗を表し、保温性の指標となる数値である。1cloとは、「気温21℃、湿度50%以下、気流10cm/secの室に着席した状態で安静にしている被験者が快適でかつ平均皮膚温33℃を維持できる衣服の保温力」と定義され、ASTM D 1518-85に準拠して測定され、クロー値が大きい程、保温性に優れることを意味する。
【0043】
また、熱源に対して、中綿層、繊維積層体層の順で積層することにより、熱源に対して繊維積層体層、中綿層の順に配置した場合に比べて、保温率の向上が認められる。熱源に対して、繊維積層体層、中綿層の順に配置した保温性素材の保温率(%)をP、熱源に対して、中綿層、繊維積層体層の順に配置した保温性素材の保温率(%)をQとしたとき、Q/Pは、好ましくは1.02以上、より好ましくは1.04以上、更に好ましくは1.05以上である。
保温率は、JIS L 1096:2010のA法に準拠して測定される。具体的には、恒温発熱体からの熱損失をH0、また、恒温発熱体を試料で覆ったときの熱損失をHcとしたとき、保温率は以下の式で表される。
保温率(%)=(H0-Hc)/H0×100
保温率が高い程、保温性に優れることを意味する。
【0044】
更に、熱源に対して、中綿層、繊維積層体層の順で配置することにより、熱源に対して繊維積層体層、中綿層の順に配置した場合に比べて、熱伝達率の低下が認められる。熱源に対して、繊維積層体層、中綿層の順に配置した保温性素材の熱伝達率(W/(m2・K))をX、熱源に対して、中綿層、繊維積層体層の順に配置した保温性素材の熱伝達率(W/(m2・K))をYとしたとき、Y/Xは、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.90以下、更に好ましくは0.85以下である。
熱伝達率は、2種類の物資間での熱エネルギーの伝え易さを表す値であり、JIS L 1096:2010のA法に準拠して測定され、熱伝達率が低い程、保温性に優れることを意味する。
【0045】
本発明の保温性素材は、衣類用又は寝具用の保温性素材として好適に使用される。
また、本発明によれば、本発明の保温性素材を備える衣類、及び本発明の保温性素材を備える寝具が提供される。
本発明の保温性素材を衣類又は寝具に使用する場合には、中綿及び繊維積層体を直接に積層し、更に、中綿側に裏地を、繊維積層体側に表地を積層して、これをステッチ又は縫製により一体化することで、衣類、寝具等に適用される。また、周端部には、縁地を設けてもよい。なお、人体は発熱体であり、熱源に該当する。従って、衣類又は寝具に使用する場合には、人間に近い方(内側)に中綿を配置し、遠い方(外側)に繊維積層体を配置する。
衣類としては、ダウンウェア、ダウンジャケット、コートのライナー、ネックウォーマー、レッグウォーマーなどが例示される。
また、寝具としては、掛布団、敷布団、寝袋などが例示される。
【0046】
更に、本発明によれば、本発明の保温性素材に使用される繊維積層体が提供される。繊維積層体の好ましい態様は、上述した保温性素材における繊維積層体と同様である。
【実施例0047】
以下に実施例と比較例とを挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0048】
[測定・評価]
<繊維集合体の繊維径の測定>
〔測定装置〕
スパッタ:Vacuum Device Inc.製、MODEL MSP-1S Magnetron Sputter
SEM:本体=株式会社キーエンス製 VHX-D510
測定システム=株式会社キーエンス製 VHX-950F
〔測定方法〕
測定試料に上記スパッタ装置で金蒸着し、視野に100本強入る倍率で(2,500~3,000倍)、100本以上の繊維径を測定した。得られたデータから、各繊維径の分布を算出した。
なお、幅約1mの繊維積層体について、幅方向に5分割したときの中央部(端から約40~60cm)から不織布を除去したものを試料とした。
-平均繊維径算出方法-
(1)測定値を下記のような階級に分類し、相対度数を求めた。
200nm未満、200nm以上400nm未満、400nm以上600nm未満、600nm以上800nm未満、800nm以上1,000nm未満、1μm以上2μm未満、2μm以上3μm未満、3μm以上5μm未満、5μm以上10μm未満、10μm以上
(2)各階級の階級値は下記の通りとした。
200nm未満;階級値=200nm
200nm以上400nm未満;階級値=300nm
400nm以上600nm未満;階級値=550nm
600nm以上800nm未満;階級値=750nm
800nm以上1,000nm;階級値=850nm
1μm以上2μm未満;階級値=1,500nm
2μm以上3μm未満;階級値=2,500nm
3μm以上;階級値=4,000nm
(3)測定した繊維径の対数平均値を平均繊維径とした。
【0049】
<中綿の繊維径の測定>
〔測定装置〕
スパッタ:Vacuum Device Inc.製、MODEL MSP-1S Magnetron Sputter
SEM:本体=株式会社キーエンス製 VHX-D510
測定システム=株式会社キーエンス製 VHX-950F
〔測定方法〕
測定試料に上記スパッタ装置で金蒸着し、視野に100本強入る倍率で(250~300倍)、100本以上の繊維径を測定した。得られたデータから、各繊維径の分布を算出した。
-平均繊維径算出方法-
(1)測定値を下記のような階級に分類し、相対度数を求めた。
10μm未満、10μm以上11μm未満、11μm以上12μm未満、12μm以上13μm未満、13μm以上14μm未満、14μm以上15μm未満、15μm以上16μm未満、16μm以上18μm未満、18μm以上20μm未満、20μm以上
(2)各階級の階級値は下記の通りとした。
10μm未満;階級値=10,000nm
10μm以上11μm未満;階級値=10,500nm
11μm以上12μm未満;階級値=11,500nm
12μm以上13μm未満;階級値=12,500nm
13μm以上14μm未満;階級値=13,500nm
14μm以上15μm未満;階級値=14,500nm
15μm以上16μm未満;階級値=15,500nm
16μm以上18μm未満;階級値=17,000nm
18μm以上20μm未満;階級値=19,000nm
20μm以上;階級値=20,000nm
(3)測定した繊維径の対数平均値を平均繊維径とした。
【0050】
<厚み>
繊維積層体、並びに基材及び被覆材として使用した不織布の厚みは、株式会社ミツトヨ製、シックネスゲージ(547-301)を使用して測定した。中綿は、JIS1級直尺を使用して測定した。
【0051】
<目付>
目付は、10cm角にカットした試料を10個用意し、それぞれを精密天秤にて測定し、質量(g)を面積(0.01m2)で除した値の平均値を目付とした。
なお、繊維積層体について目付を測定し、基材及び被覆材である不織布の目付を差し引いて、繊維集合体の目付とした。
【0052】
<保温率、熱伝達率>
保温率及び熱伝達率は、JIS L 1096:2010のA法に準拠し、ASTM形保温性試験機で2回測定した平均値とした。
保温率が高い程、保温性に優れることを意味し、熱伝達率が低い程、保温性に優れることを意味する。
なお、試験環境は、20℃、65%RHとした。
【0053】
<クロー値>
ASTM D 1518-85に準拠して測定した。
クロー値が高い程、保温性に優れることを意味する。
【0054】
[繊維積層体の製造]
図1に示すメルトブロー装置を使用し、熱可塑性樹脂として、ポリブチレンテレフタレートを使用し、繊維積層体を作製し、上述の方法により、得られた繊維積層体について、測定及び評価を行った。
なお、製造時には、基材の不織布及び被覆材の不織布として、ナイロン不織布(ユニチカ株式会社製、製品番号:P0253WTO、目付:25g/m
2、密度:0.192g/cm
3、厚み:130μm)を使用した。
結果を以下の表1に示す。
【0055】
【0056】
また、中綿について、測定した結果を以下に示す。中綿1及び中綿2は、ポリエステル製の合繊繊維綿である。
【0057】
【0058】
[実施例1]
中綿1と繊維積層体とを積層し、保温性素材を得た。中綿1が熱源側となるように配置し、保温率、熱伝達率、及びクロー値を測定した。結果を以下の表3に示す。
【0059】
[実施例2]
中綿1を中綿2に変更した以外は実施例1と同様にして保温性素材を得た。また、中綿2が熱源側となるように配置し、保温率、熱伝達率、及びクロー値を測定した。結果を以下の表3に示す。
【0060】
[参考例1]
繊維積層体が熱源側となるように保温性素材を配置した以外は、実施例1と同様にして、保温率、熱伝達率、及びクロー値を測定した。結果を以下の表3に示す。
【0061】
[参考例2]
繊維積層体が熱源側となるように保温性素材を配置した以外は、実施例2と同様にして、保温率、熱伝達率、及びクロー値を測定した。結果を以下の表3に示す。
【0062】
【0063】
本発明によれば、保温性が向上した保温性素材を提供することができた。
より具体的には、中綿層と特定の繊維積層体層とを、熱源に対して中綿層、繊維積層体層の順に配置することにより、中綿単独でのクロー値をA、繊維積層体単独でのクロー値をBとしたとき、保温性素材のクロー値Cは、それぞれのクロー値の和(A+B)よりも大きく、熱源に対して特定の順で配置することにより、保温性が高まることが示された。これに対して、熱源に対して、繊維積層体層、中綿層の順に配置した場合には、それぞれのクロー値の和(A+B)からの増加は殆んど認められなかった。
また、保温率についても、熱源に対して、繊維積層体層、中綿層の順に配置した場合の保温率をPとし、熱源に対して、中綿層、繊維積層体層の順に配置した場合の保温率をQとしたとき、Q/P>1となり、本発明の保温性素材は、優れた保温性を有することが示された。
更に、熱伝達率に関し、熱源に対して、繊維積層体、中綿層の順に配置した場合の熱伝達率をXとし、熱源に対して、中綿層、繊維積層体層の順に配置した場合の熱伝達率をYとしたとき、Y/X<1となり、本発明保温性素材は、優れた保温性を有することが示された。