(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039588
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】観覧施設評価装置、観覧施設評価方法、および、観覧施設評価プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20220303BHJP
【FI】
G06T19/00 300B
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144697
(22)【出願日】2020-08-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】520330940
【氏名又は名称】株式会社ラムサ
(71)【出願人】
【識別番号】520330951
【氏名又は名称】勝又 英明
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 覚
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】西 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】勝又 英明
(72)【発明者】
【氏名】岩井 彌
(72)【発明者】
【氏名】平間 信裕
(72)【発明者】
【氏名】松尾 浩
【テーマコード(参考)】
5B050
【Fターム(参考)】
5B050BA09
5B050CA07
5B050DA10
5B050EA19
5B050EA27
5B050FA02
(57)【要約】
【課題】客席に着座した観客からの視線の対象となる舞台上の特定の点である注視点に対し、観客席からの見やすさを判定し、評価できる観覧施設評価装置を提供する。
【解決手段】観覧施設評価装置は、舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、観覧施設に対応した空間座標を設定する空間座標設定部410と、仮想空間画像生成部420と、操作情報入力部と、注視点判定部430と、表示部300とを備える。仮想空間画像生成部420は、空間座標が設定された設計情報に基づいて仮想空間画像を生成する。操作情報入力部は、ユーザからの操作に関する操作情報が入力される。注視点判定部430は、客席に着座した観客からの視線の対象となる舞台上の特定の点である注視点を設定し、空間座標が設定された設計情報に基づいて、客席からの注視点の見やすさを判定する。表示部300は、仮想空間画像および、注視点の見やすさの判定結果を表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、前記観覧施設に対応した空間座標を設定する空間座標設定部と、
前記空間座標が設定された前記設計情報に基づいて、仮想空間画像を生成する仮想空間画像生成部と、
ユーザからの操作に関する操作情報が入力される操作情報入力部と、
前記客席に着座した観客からの視線の対象となる前記舞台上の特定の点である注視点を設定し、前記空間座標が設定された前記設計情報に基づいて、前記客席からの前記注視点の見やすさを判定する注視点判定部と、
前記仮想空間画像および、前記操作情報に応じて前記注視点判定部で判定された判定結果を表示する表示部と、を備える観覧施設評価装置。
【請求項2】
前記注視点判定部は、評価対象となる前記観客の視点の前記空間座標と、評価対象となる前記観客より前方に位置する前記客席に着座した前方観客の頭頂の前記空間座標と、を通る直線であるサイトラインを算出し、前記サイトラインと前記注視点の前記空間座標とを比較し、前記注視点の見やすさを判定する、請求項1に記載の観覧施設評価装置。
【請求項3】
前記注視点判定部は、前記注視点の前記空間座標と、評価対象となる前記観客より前方に位置する前記客席に着座した前方観客の頭頂の前記空間座標と、を通る直線である逆サイトラインを算出し、前記逆サイトラインと、評価対象となる前記観客の視点の前記空間座標とを比較し、前記注視点の見やすさを判定する、請求項1に記載の観覧施設評価装置。
【請求項4】
前記注視点判定部は、評価対象となる前記観客の視点の前記空間座標と、前記舞台の開口を形成するプロセニアムの上端の前記空間座標とを比較する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の観覧施設評価装置。
【請求項5】
前記注視点判定部は、評価対象となる前記観客の視点の前記空間座標と、バルコニーの天井先端の前記空間座標と、を通る直線を算出し、前記直線と、前記舞台の開口を形成するプロセニアムの上端の前記空間座標とを比較する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の観覧施設評価装置。
【請求項6】
前記舞台から前記客席を見た視野における前記客席の割合を算出し、仮想半球面に投影する有効観客立体角算出部をさらに備え、
前記表示部は、前記仮想空間画像および前記判定結果に加え、前記有効観客立体角算出部で算出された前記客席の投影画像を表示する、請求項1に記載の観覧施設評価装置。
【請求項7】
コンピュータによって実行される観覧施設評価方法であって、
舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、前記観覧施設に対応した空間座標を設定し、
前記空間座標が設定された前記設計情報に基づいて、仮想空間画像を生成し、
ユーザからの操作に関する操作情報が入力され、
前記客席に着座した観客からの視線の対象となる前記舞台上の特定の点である注視点を設定し、
前記空間座標が設定された前記設計情報に基づいて、前記客席からの前記注視点の見やすさを判定し、
前記仮想空間画像および、前記操作情報に応じて判定された判定結果を表示する、観覧施設評価方法。
【請求項8】
舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、前記観覧施設に対応した空間座標を設定し、
前記空間座標が設定された前記設計情報に基づいて、仮想空間画像を生成し、
ユーザからの操作に関する操作情報が入力され、
前記客席に着座した観客からの視線の対象となる前記舞台上の特定の点である注視点を設定し、
前記空間座標が設定された前記設計情報に基づいて、前記客席からの前記注視点の見やすさを判定し、
前記仮想空間画像および、前記操作情報に応じて判定された判定結果を表示する処理を、コンピュータに実行させるための観覧施設評価プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムを記憶した、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観覧施設評価装置、観覧施設評価方法、および、観覧施設評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、劇場、アリーナ、スタジアム等の観覧施設を設計するにあたり、観客席からの舞台やフィールド等(以下、舞台とする)の見やすさに関して定量的な値を算出し、その値に基づいて、見やすさを評価する手法がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、観客席からみた舞台の可視率を計算し、この可視率に基づいて各観客席からの舞台の見やすさを評価する可視率算出装置が開示されている。特許文献1で示される可視率算出装置は、例えば舞台を評価対象物として定め、評価対象物および評価対象物と観客席との間にある障害物とを仮想スクリーンに投影させる。そして、障害物がある場合の評価対象物の仮想スクリーンでの面積を、障害物がない場合の評価対象物の仮想スクリーンでの面積で割ることで、観客席からみた舞台の可視率を計算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された可視率算出装置では、可視率算出装置のユーザは、各観客席からの舞台の可視率が把握できるだけである。すなわち、各観客席から舞台がどの程度見えるかについて把握できるのみである。しかし、観客席からの可視率のみでは、実際に見える必要がある部分が見えているか否かが判定できない。また、可視率が低い場合、どの障害物によって可視率が低いかを特定することが難しい。すなわち、実際の劇場等の観覧施設の設計において、可視率を評価の指標とすることは難しい。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、観客からの視線の対象となる舞台の特定の点に対して、観客席からの見やすさを容易に評価できる観覧施設評価装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係わる観覧施設評価装置は、舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、観覧施設に対応した空間座標を設定する空間座標設定部と、空間座標が設定された設計情報に基づいて、仮想空間画像を生成する仮想空間画像生成部と、ユーザからの操作に関する操作情報が入力される操作情報入力部と、客席に着座した観客からの視線の対象となる舞台上の特定の点である注視点を設定し、空間座標が設定された設計情報に基づいて、客席からの注視点の見やすさを判定する注視点判定部と、仮想空間画像および、操作情報に応じて注視点判定部で判定された判定結果を表示する表示部と、を備える。
【0008】
本発明の第2の態様に係わる観覧施設評価方法は、コンピュータによって実行される観覧施設評価方法であって、舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、観覧施設に対応した空間座標を設定し、空間座標が設定された設計情報に基づいて、仮想空間画像を生成し、ユーザからの操作に関する操作情報が入力され、客席に着座した観客からの視線の対象となる舞台上の特定の点である注視点を設定し、空間座標が設定された設計情報に基づいて、客席からの注視点の見やすさを判定し、仮想空間画像および、操作情報に応じて判定された判定結果を表示する。
【0009】
本発明の第3の態様に係わる観覧施設評価プログラムは、舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、観覧施設に対応した空間座標を設定し、空間座標が設定された設計情報に基づいて、仮想空間画像を生成し、ユーザからの操作に関する操作情報が入力され、客席に着座した観客からの視線の対象となる舞台上の特定の点である注視点を設定し、空間座標が設定された設計情報に基づいて、客席からの注視点の見やすさを判定し、仮想空間画像および、操作情報に応じて判定された判定結果を表示する処理を、コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、観客からの視線の対象となる舞台の特定の点に対して、観客席からの見やすさを容易に評価できる観覧施設評価装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係わる観覧施設評価装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1および第2の実施形態に係わる入力部の一例を示すブロック図である。
【
図3】第1および第2の実施形態に係わる記憶部に記憶された情報の一例を示すブロック図である。
【
図4】第1および第2の実施形態に係わる観覧施設評価装置によって評価される観客施設の一例を示す平面図である。
【
図5】第1および第2の実施形態に係わる観覧施設評価装置によって評価される観客施設の一例を示す斜視図である。
【
図6】(a)第1および第2の実施形態に係わる仮想空間画像の一例を示す図である。(b)第1および第2の実施形態に係わる仮想空間画像にサイトラインを表示させた一例を示す図である。
【
図7】第1および第2の実施形態に係わる仮想空間画像におけるメニュー領域を拡大した模式図である。
【
図8】第1および第2の実施形態に係わる仮想空間画像において、(a)通常視点の場合と、(b)俯瞰視点の場合の一例を示す図である。
【
図9】第1および第2の実施形態に係わる仮想空間画像において断面図を示した場合の一例を示す図である。
【
図10】第1の実施形態に係わる仮想空間画像において、視点が舞台正面から観客席方向の場合の一例を示す図である。
【
図11】第1および第2の実施形態に係わる仮想空間画像において、(a)1階席からの視点の場合と、(b)サイド席からの視点の場合の一例を示す図である。
【
図12】第1および第2の実施形態に係わる仮想空間画像において、前方客席に観客がいない場合の一例を示す図である。
【
図13】第1および第2の実施形態に係わる仮想空間画像において、(a)前方客席に男性が着座し、男性視点で舞台を見た場合の一例を示す図である。(b)前方客席に男性が着座し、女性視点で舞台を見た場合の一例を示す図である。(c)前方客席に女性が着座し、男性視点で舞台を見た場合の一例を示す図である。(d)前方客席に女性が着座し、女性視点で舞台を見た場合の一例を示す図である。
【
図14】第1および第2の実施形態に係わる施設情報を入力する際の入力画面の一例を示す図である。
【
図15】舞台上の注視点の例を説明するための図である。
【
図16】第1および第2の実施形態に係わる判定結果表示に関する操作情報を入力する際の入力画面の一例を示す図である。
【
図17】第1および第2の実施形態に係わるサイトラインを説明するための模式図である。
【
図18】第1および第2の実施形態に係わる逆サイトラインを説明するための模式図である。
【
図19】第1および第2の実施形態に係わる、(a)プロセニアム判定、(b)バルコニー判定を説明するための模式図である。
【
図20】第1および第2の実施形態に係わるサイトライン判定結果の一例を示す模式図である。
【
図21】第1および第2の実施形態に係わる逆サイトライン判定結果の一例を示す模式図である。
【
図22】
図20に示すサイトライン判定結果の一例を示す図のうち、判定結果表示領域を拡大した図である。
【
図23】
図20に示すサイトライン判定結果の一例を示す図のうち、プロセニアム判定結果領域を拡大した図である。
【
図24】本実施形態に係わる観覧施設評価装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図25】第2の実施形態に係わる観覧施設評価装置の一例を示すブロック図である。
【
図26】第2の実施形態に係わる仮想空間画像において、視点が舞台正面から観客席方向の場合の一例を示す図である。
【
図27】第2の実施形態に係わる仮想空間画像において、観客席を等立体角射影方式により投影した場合の一例を示す図である。
【
図28】他の実施形態に係わる仮想空間画像において、照明から舞台へのサイトラインを図示した一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本実施形態に係わる観覧施設評価装置について詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続状態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示に限定する主旨ではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。さらに、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0013】
(観覧施設評価装置の概要)
本実施形態に係わる観覧施設評価装置は、評価対象となる観覧施設において、観客席からの舞台の見やすさを判定し評価する装置である。以下に、観覧施設評価装置について幾つかの具体的な実施形態を参照して説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係わる観覧施設評価装置1の一例を示すブロック図である。観覧施設評価装置1は、入力部100と、記憶部200と、表示部300と、制御部400と、を含んで構成される。
【0015】
観覧施設評価装置1を構成する入力部100、表示部300、および制御部400の各機能は、パーソナルコンピュータ等に設けられたプロセッサがメモリ上のプログラムを実行することによって構成される。観覧施設評価装置1を構成するパーソナルコンピュータは、1台であっても複数であってもよい。物理的に離れた場所に設置されている複数のパーソナルコンピュータが連結することによって、観覧施設評価装置1の機能を実現することも可能である。また、観覧施設評価装置1の機能を実現するものは、パーソナルコンピュータに限定されず、例えば、プロセッサを備えたサーバやタブレット等の機器においても実現可能である。
【0016】
入力部100は、ユーザによるさまざまな情報を入力するためのインタフェース機能を有し、観覧施設評価装置1の外部より情報が入力される。入力部100は、観覧施設評価装置1と接続された、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、トラックボール、および、音声認識デバイス等を通じてユーザによって情報が入力される。本実施形態において、入力部100に入力される情報は、施設情報および操作情報である。施設情報は、評価対象となる観覧施設のサイズ(寸法)や構造に関する設計情報、および、人間のサイズを定義した人体モデルに関する情報が含まれる。また、操作情報は、ユーザが、観覧施設評価装置1に対して行う操作に関する指示や設定等に関する情報が含まれる。
【0017】
図2に入力部100の概略ブロック図を示す。
図2に示すように、入力部100は、施設情報入力部110、および、操作情報入力部120を含んで構成される。施設情報は施設情報入力部110に入力され、記憶部200に記憶される。また、操作情報は、操作情報入力部120に入力され、操作内容に応じて表示部300または制御部400に入力され、あるいは記憶部200に記憶される。
【0018】
図3に記憶部200の概略ブロック図を示す。記憶部200には、施設情報、操作情報、仮想空間画像情報、および注視点判定結果情報が記憶される。施設情報は、上述の通り、評価対象となる観覧施設のサイズ(寸法)や構造に関する設計情報が含まれる。ここで、評価対象となる観覧施設の設計情報は、例えば観覧施設の3次元CAD(Computer Aided Design)データ、BIM(Building Information Modeling)データ、設計図面等である。これら設計情報は、入力部100を通じて、あらかじめ観覧施設評価装置1の記憶部200に格納されている。なお、記憶部200は、観覧施設評価装置1の内部に含まれる構成に限定されず、例えば、観覧施設評価装置1の外部に接続された外部記憶装置としてもよい。仮想空間画像情報は、後述の仮想空間画像生成部420で生成された仮想空間画像に関する情報である。また、注視点判定結果情報は、後述の注視点判定部430で判定された判定結果に関する情報である。仮想空間画像情報、および、注視点判定結果情報の詳細については後述する。
【0019】
表示部300は、観覧施設評価装置1に接続された表示装置(図示なし)に、仮想空間画像情報、注視点判定結果情報等を送り、表示装置に表示させる。表示装置は、例えば、パーソナルコンピュータやタブレットのディスプレイ装置、HMD(Head Mounted Display)等が挙げられる。
【0020】
制御部400は、空間座標設定部410と、仮想空間画像生成部420と、注視点判定部430と、を含んで構成される。
【0021】
空間座標設定部410は、記憶部200から施設情報(設計情報)を読み込み、設計情報を3次元軸上に空間座標として割り当てる。具体的には、空間座標設定部410は、
図4(a)に示すように、まず観覧施設の上位方向から見た平面図をXY平面として設定する。空間座標設定部410は、XY平面において、舞台20から観客席30の方向に向かって左右対称となる中心軸11を定め、中心軸11と、舞台20と観客席30との境とが交わる点を、座標原点10として定める。すなわち、XY平面において、X軸におけるプラス側が舞台20側となり、X軸におけるマイナス側が観客席30側となる。なお、本明細書において、観覧施設の客席や観覧席を総じて観客席30と称し、観客席30における個別の座席を客席と称する。
【0022】
図4(a)に示すアクティングエリア20aは、舞台20における活動領域を示し、このアクティングエリア20aにおいて、演劇や演奏などが行われる。また、
図4(a)は、Y軸のプラス側に1階席30aを示し、Y軸のマイナス側に2階席30bおよびサイドバルコニー席30cを示す概念図である。実際の観覧施設は、Y軸のプラス、マイナス両軸方向に、1階席30a、2階席30b、および、サイドバルコニー席30cが存在する。
【0023】
また、空間座標設定部410は、
図4(b)に示すように、中心軸11を通る垂直面をXZ平面として定める。さらに、空間座標設定部410は、XY平面およびXZ平面と直交する面をYZ平面として定める。
図4(c)は、
図4(a)の一点鎖線A-Aにおける観覧施設の断面図であり、YZ平面の一例を示す断面図である。なお、
図4(c)には、プロセニアム20bが示されている。ここで、プロセニアムとは、舞台の開口を形成し、舞台の最前列に設けられた観客席と舞台とを区切る額縁型の壁面である。
図5は、空間座標設定部410によって空間座標が設定された観覧施設を、等角投影図法で示した場合の斜視図である。
【0024】
なお、本実施形態において、
図4(a)~(c)および
図5に示すように、舞台側をX軸のプラス方向とし、観客席側をX軸のマイナス方向とする例を示したが、3次元座標軸における空間座標の設定はこれに限定されない。例えば、舞台側をX軸のマイナス方向とし、観客席側をX軸のプラス方向とする形態をとることもできる。同様に、Y軸およびZ軸においても、プラス、およびマイナスの方向は、上述の実施形態に限定されず、
図4(a)~(c)および
図5に示す例とは逆となる方向にY軸およびZ軸のプラス方向、およびマイナス方向を定めてもよい。
【0025】
なお、観覧施設の設計情報は、空間座標設定部410が、あらかじめ観覧施設評価装置1の記憶部200に格納された設計情報から読み込むことで取得する例を示したが、設計情報の取得方法はこれに限定されない。例えば、ユーザが観覧施設評価装置1の外部から観覧施設に関する設計情報を入力することで、空間座標設定部410が設計情報を取得する方法を用いてもよい。
【0026】
仮想空間画像生成部420は、空間座標設定部410で設定された観覧施設の空間座標に基づいて、仮想空間画像を生成し、仮想空間画像に関する情報を記憶部200に記憶する。仮想空間画像は、3次元カラーコンピュータグラフィックスによって表現されることが可能である。仮想空間画像で表現された仮想空間では、あらゆる位置および角度から舞台、客席、観客等の仮想空間における構成要素を表現することが可能である。
【0027】
記憶部200に記憶された仮想空間画像情報は、表示部300において画像データに変換され、上述の表示装置(図示なし)の画面等に表示される。
図6(a)に仮想空間画像生成部420で生成され、表示部300を通じて表示された仮想空間画像の一例を示す。
図6(a)は、客席に着座した任意の客席から舞台を見た場合の画像が画像表示領域421に表示された例を示す。なお、
図6(a)に示す画像は、1階席に着座した観客(男性)の視線の例である。
【0028】
図6(a)に示す画像表示領域421には、1階席に着座した観客(男性)が舞台を見る場合の仮想空間画像の一例が示されている。また、画像表示領域421には、観客席に男性の観客が着座した場合の人体モデルが表示されている。これにより、観客が舞台を見る場合の舞台の見え具合に加え、前方の観客の頭の影響をどの程度受けるか、などの舞台の見やすさを仮想空間画像によって実感することができる。
【0029】
また、ユーザが、画像表示領域421に示される、観客の人体モデルの頭部を選択した場合、その選択した人体モデルが着座する客席から舞台を見た場合の画像が表示部300によって表示される。すなわち、表示される観客の視点が、ユーザが指定した人体モデルの観客の視点に移動する。具体的には、ユーザが選択した人体モデルの観客の頭部の位置情報が、操作情報として、入力部100の操作情報入力部120を通じて表示部300に送られる。表示部300は、ユーザが指定した位置の客席を移動させた仮想空間画像に関する情報を記憶部200より取得し、画像表示領域421に表示させる。
【0030】
さらに、画像表示領域421においては、ユーザが人体モデルの頭部にカーソルを合わせることで、その人体モデルが着座している客席から舞台へのサイトラインが描画される。具体的には、ユーザがカーソルを合わせた人体モデルの観客の頭部の位置情報が、カーソル位置情報(操作情報)として、入力部100の操作情報入力部120を通じて表示部300に送られる。表示部300は、ユーザがカーソルを合わせた位置の客席からのサイトラインに関する情報を記憶部200より取得し、画像表示領域421にサイトラインを表示させる。例えば、表示部300は、ユーザがカーソルを合わせた位置の客席の視点の座標と、舞台上の特定の点の座標とを結ぶ直線を、記憶部200から取得した仮想空間画像に描画する。
図6(b)に、カーソルを合わせた人体モデルから舞台へのサイトライン422aが描画された例を示す。なお、サイトラインの詳細については、後述する。
【0031】
図6(a)に示す例では、画像表示領域421の他に、方向指示領域421a、平面座席
図421b、および、メニュー領域421cが示されている。(なお、方向指示領域421aおよび平面座席
図421bは、オプションとすることが可能であり、表示/非表示を設定できるものとする。)
【0032】
図6(a)に示す方向指示領域421aは、上下左右の4つの方向を示す矢印で示される。
図6(a)に示す画面に対して、ユーザが選択した矢印に関する情報が入力部100の操作情報入力部120を通じて表示部300に送られる。表示部300は、ユーザが指定した矢印の方向に客席を移動させた仮想空間画像に関する情報を記憶部200より取得し、表示させる。例えば上方向の矢印を選択した場合、一つ前の客席から舞台を見た場合の画像が表示部300によって表示される。同様に左右方向の矢印を選択した場合は、左右の観客から舞台を見た場合の画像が選択され、表示部300によって表示される。下方向の矢印の場合は、後ろの客席から舞台を見た場合の画像が選択され、表示部300によって表示される。
【0033】
また、平面座席
図421bに示される観客の頭部をユーザが選択した場合、その選択した客席から舞台を見た場合の画像が表示部300によって表示される。すなわち表示される観客の視点が、ユーザが指定した観客の視点に移動する。具体的には、ユーザが選択した平面座席
図421bに示される観客の頭部の位置情報が操作情報として、入力部100の操作情報入力部120を通じて表示部300に送られる。表示部300は、ユーザが指定した位置の客席を移動させた仮想空間画像に関する情報を記憶部200より取得し、表示させる。
【0034】
図7は、
図6(a)に示すメニュー領域421cを拡大した模式図である。「FLY」で示された項目は、視点の位置を変更するための項目であり、具体的には、通常視点「WALK」と俯瞰視点「FLY」を切り替える項目である。
図8(a)に「WALK」の場合の画像を示す。また、
図8(b)に「FLY」の場合の画像を示す。
図8(b)に示すように、「FLY」により、通常の視点より少し上からの目線で全体を俯瞰して見ることができる。
【0035】
図7のメニュー領域421cの説明に戻る。「視点変更」は、例えば、「断面」、「舞台正面」、「男性1F」、「男性2F」「男性サイド」「女性1F」「女性2F」、「女性サイド」の項目を含む。なお、「視点変更」に含まれる領域は、これらに限定されず、任意の視点を作成し、「視点変更」の項目に追加することができる。「断面」の項目は、
図9に示す断面図を表示させる。また、断面図における観客の人体モデルの頭部にカーソルを合わせることで、その観客から舞台へのサイトライン422aが描画される。また、「断面」の画像には、判定結果表示ボタン422bが設けられる。なお、サイトライン422a、および判定結果表示ボタン422bの詳細については、後述する。
【0036】
「舞台正面」の項目を選択すると、
図10に示すように舞台側から観客席側を見た場合の画像が表示される。すなわち、ユーザが選択した「舞台正面」が操作情報として、入力部100の操作情報入力部120を通じて表示部300に送られる。表示部300は、ユーザが指定した舞台正面からの仮想空間画像に関する情報を記憶部200より取得し、表示させる。
【0037】
メニュー領域421cに表示される「男性1F」から「女性サイド」は、1階席、2階席、またはサイド席に着座した男性および女性の視点を選択し、その視点からの舞台への画像を表示することができる。
図11(a)は、「男性1F」の項目を選択した場合の画像を示す。また、
図11(b)は、「男性サイド」を選択した場合の、サイド席に着座した男性からの視点を示す図である。なお、
図11(b)は、
図11(a)の観客424における観客からの視点である。
【0038】
「設計案の切替」メニューにおいては、観客視点を項目「Off」、項目「男性」および項目「女性」に対して切り替えることができる。項目「Off」は、観客席に客席が着座していない場合の画像を示す。
図12に項目「Off」が選択された場合の画像を示す。項目「男性」および項目「女性」は、観客席に着座しているのが「男性」であるか「女性」であるかを選択することができる。
図13に「視点変更」が「男性1F」または項目「女性1F」で、観客視点を「男性」または「女性」で切り替えた場合の例を示す。
図13(a)は、観客席に「男性」が着座した場合であって、観客視点が「男性」である場合の例である。
図13(b)は、観客席に「男性」が着座した場合であって、観客視点が「女性」である場合の例である。このように、
図13(a)と、
図13(b)とでは、観客視点によって前列の座席の背もたれの高さが異なる。また、
図13(c)は、観客席に「女性」が着座した場合であって、観客視点が「男性」である場合の例である。
図13(a)と、
図13(c)とでは、観客視点によって前列の座席に着座した観客の頭の高さの位置が異なる。
図13(d)は、観客席に「女性」が着座した場合であって、観客視点が「女性」である場合の例である。すなわち、
図13(c)における視点から一番よく舞台が見え、
図13(b)における視点からは、一番舞台が見えづらくなる。このように、着座した男女および視点の男女を柔軟に選択することができ、多くのパターンでの視点を確認することができる。
【0039】
次に、注視点判定部430について説明する。本明細書において、注視点とは、観客からの視線の対象となる舞台上の特定の点である。注視点判定部430は、ユーザによって入力部100の施設情報入力部110に入力された施設情報に基づいて注視点の見えやすさを判定する。ユーザは、
図14に示す施設情報入力画面111を通じて、注視点の判定に必要な情報を入力する。ここで入力される施設情報は、評価対象となる観覧施設の舞台20や観客席30に関する寸法や座標である。この施設情報は、空間座標設定部410で設定された3次元軸上の座標空間に対応する値が入力される。具体的には、ユーザが、
図14に示す施設情報入力画面111において、必要な値を入力した後、入力ボタン112を押すことで、施設情報入力部110に施設情報が入力され、記憶部200に記憶される。
【0040】
施設情報のうち、舞台に関する情報は、例えば、舞台の高さStおよびプロセニアム20bの高さPrHである。
図5に、観覧施設における、舞台の高さStおよびプロセニアム20bの高さPrHを示す。舞台の高さStは、観客席30の最前部の床から舞台床面までの高さである。また、プロセニアム20bの高さPrHは、舞台床面からプロセニアム20bの上端までの高さである。
【0041】
また、施設情報入力部110は、注視点の座標を入力する。注視点は、舞台上における座標軸上の平面的な奥行きPSxと、高さPSzと、が空間座標設定部410で設定された舞台20側の空間座標に対応する座標(PSx、PSz)として入力される。本実施形態において注視点は、XY平面の中心軸11上にあるものとして、舞台先端からのX軸のプラス方向への寸法をPSxとし、舞台床面からの垂直方向の上方への高さをPSzとして設定する。
【0042】
図15に、注視点の設定の例を示す。なお、PSxは、舞台の奥行に対し、観客席からどの地点が見えなければならないかを明確にするためのものである。舞台においては、観客席からは、観客席側が見えやすく、舞台の奥に行くにしたがって見えにくくなる。すなわちPSxの値としては、観客席から見えるべき地点の最小値が入力される。また、PSzは、舞台の垂直方向に対し、具体的に低い点はどこまで見えなければならないかを明確にするためのものである。すなわち、PSzの値としては、PSxと同様に、観客席から見えるべき地点の最小値が入力される。
図15においては、演奏や演劇等によって異なる幾つかの注視点の例を示している。
【0043】
例えば、舞台端から舞台奥の方向に3000mmの位置にいるダンサー21aの場合、観客席からは、舞台床面から150mmの足元より上方に対して見えるのが好ましい。よって、この場合のダンサー21aに対する注視点としては、(PSx、PSz)=(3000、150)となる。同様にチェロ奏者21bの場合の注視点としては、(PSx、PSz)=(2000、450)となる。舞台先端から1500mmの位置にいる俳優21cにおいては、演じている内容に応じて、注視点は複数点存在する。例えば、ひざより上方が見える必要がある場合の注視点は、(PSx、PSz)=(1500、450)となり、胸より上方が見える必要がある場合の注視点は、(PSx、PSz)=(1500、1200)となる。
【0044】
また、舞台より観客先側に前舞台20cやオーケストラピット20dが存在する場合も同様に、注視点を定めることができる。舞台先端より観客席側にある前舞台20cにいる俳優21dの場合の注視点は、例えば、(PSx、PSz)=(-1000、900)となる。一方、オーケストラピット20dにいる指揮者21eについては、頭の位置が見える必要があるため、注視点は、例えば、(PSx、PSz)=(-1500、150)となる。このように、舞台における注視点は、演奏や演劇等によって異なり、さらには演奏者や演者によっても異なる。本実施形態においては、注視点を詳細に設定することが可能であり、設定された各注視点に対する観客席からの見やすさを、注視点ごとに評価することが可能となる。
【0045】
次に、注視点判定部430の具体的な判定方法について説明する。注視点判定部430は、ユーザが
図14の施設情報入力画面111で設定した舞台の注視点に対し、観客席からの見やすさを判定するものである。上述の
図9に示す断面図において、判定結果表示ボタン422bを選択すると、
図16に示す判定結果選択画面431が表示部300によって表示される。ユーザは、判定結果選択画面431に示された判定の中で、評価したい判定内容を選択する。
【0046】
サイトライン判定は、
図17に示すように評価対象となる観客の視点(目の座標)と、評価対象となる観客の前列の観客の頭頂の座標とを通る直線をサイトラインとして定める。さらに、このサイトラインが、舞台上の注視点が存在する評価面のどこで交わるかを判定するものである。なお、評価対象となる観客の前列の観客は前方観客に相当する。評価面は、施設情報入力画面111で入力された注視点のうち、PSxの値で示されるXY平面に相当する。サイトライン判定は、例えば、床面まで見える場合は、それより上方向は見えるため、舞台上の注視点がよく見えるという判定となる。一方で、上方しか見えない場合は、舞台上の注視点があまり見えないという判定となる。
【0047】
ここで、評価対象となる観客の客席が最前列からn列目にあるとすると、評価対象となる観客の視点の座標は、((n-1)H+H1-OST、(n-1)V+EH)で表される。ここで、EHは客席に着座した観客の床面からの目の高さである。また、H1は、座標原点10から最初の段床蹴上までの水平距離である。さらに、Hは、観客席の前後の段床蹴上間の距離である。また、OSTは、客席に着座した観客の目と直後の段床蹴上との水平距離である。ここで、EH、OST、および、H1は、
図14に示す施設情報入力画面111により、ユーザが入力する。Hは、設計情報により、デフォルト値が設定される。
【0048】
同様に、前列の観客の頭頂の座標は、((n-2)H+H1-OST、(n-2)V+EH+TH)で表される。ここで、THは、目と頭頂との距離であって、髪の毛等を考慮して一定のマージンを持たせた値である。THは、
図14に示す施設情報入力画面111により、ユーザが入力する。
【0049】
逆サイトラインは、
図18に示すように、舞台の注視点と、評価対象となる観客の前列の観客の頭頂とを結ぶ線である逆サイトラインが、評価対象となる観客の目の高さより高い座標を通るか、あるいは低い座標を通るかを判定する。なお、評価対象となる観客の前列の観客は前方観客に相当する。逆サイトライン判定は、逆サイトラインが評価対象となる観客の目の高さより高い場合は見えづらいという判定となる。一方で、逆サイトラインが評価対象となる観客の目の高さより低い場合は、逆サイトライン判定は、よく見えるという判定となる。
【0050】
プロセニアム判定は、
図19(a)に示すように、評価対象となる観客の目線がプロセニアムの上端の高さより上にあるか否かを判定する。プロセニアムの上端の高さの座標は、
図14に示す施設情報入力画面111において入力された、舞台床面からプロセニアムまでの高さPrHと舞台面の高さStとを加算した値となる。
【0051】
バルコニー判定は、
図19(b)に示すように、プロセニアムの上端がバルコニーの先端によって見えないか否かを判定するものである。すなわち、評価対象となる観客の視点の座標と、バルコニーの先端の座標とを通る直線が、プロセニアムの上端の上を通るか、下を通るか、により判定する。なお、バルコニーの先端の座標は、
図14に示す施設情報入力画面111において入力された、座標原点10からの水平方向の位置であるBxと、座標原点10からの垂直方向の位置であるBzが用いられる。
【0052】
注視点判定部430は、ユーザによって
図16で選択された判定を、全ての客席に対して行う。
図16に示す判定結果選択画面431において、サイトライン判定を選択し、表示ボタン431aを選択すると、
図20に示すサイトライン判定結果432が表示される。また、
図16に示す入力画面において、逆サイトライン判定を選択し、表示ボタン431aを選択すると、
図21に示す逆サイトライン判定結果433が表示される。なお、サイトライン判定結果を表示させない場合は、終了ボタン431bを選択することで、
図9に示す断面図に戻る。
【0053】
図20に示すサイトライン判定結果432は、観客席設定領域432aと、判定結果表示領域432bと、プロセニアム判定結果領域432cと、バルコニー判定結果領域432dと、を備える。同様に
図21に示す逆サイトライン判定結果433は、観客席設定領域433aと、判定結果表示領域433bと、プロセニアム判定結果領域433cと、バルコニー判定結果領域433dと、を備える。なお、
図21に示す逆サイトライン判定結果433については、
図20に示すサイトライン判定結果432の各領域と同じであるため、以下、説明は省略する。
【0054】
観客席設定領域432aは、各観客席間の水平距離、および垂直距離を示す。また、各観客席における客席の目の高さを示す。なお、各観客席間の水平距離、および垂直距離は、上述の
図14に示す施設情報入力画面111においてユーザが入力した値に基づいて算出される。また、
図20において、ユーザが値を入力することで、座席間の値の再調整が可能となる。
【0055】
判定結果表示領域432bは、
図22に示すように、5つの注視点に対する各観客席からの見やすさを、結果のセルに濃淡をつけて表示させている。結果のセルの濃淡度合いが濃くなるほど、見えにくい箇所であることを示す。なお、
図20では、判定結果の度合いを濃淡で示す例を示したが、これに限定されない。例えば、判定結果の度合いを色彩で区別してもよい。
【0056】
図23は、プロセニアム判定結果領域432cを拡大した模式図である。プロセニアム判定において、観客の目の高さがプロセニアムより高いと判定された場合には、
図23に示すように、結果のセルに「上」の文字が付される。また、バルコニー判定結果領域432dも同様に、バルコニー判定において、プロセニアムの上端がバルコニーにより見えないと判定された場合には、結果のセルに「NG」の文字が付される(図示なし)。
【0057】
以上のように、第1の実施形態の係わる観覧施設評価装置1においては、評価対象となる観覧施設の客席からの全ての視点に対しての判定結果が可能となる。ユーザはこの結果を確認し、どの辺りのどの客席が見やすく、どの客席が見えにくくなっているかを把握することができる。さらに、判定結果の具合が色の濃淡、または色彩別で表示されるため、ユーザは一見して、判定結果を把握することができる。また、判定結果に対して、ユーザは、値を直接入力し調整することができる。これにより、ユーザが値を調整した結果をすぐに確認することができ、劇場設計において、効率よく評価したい舞台および客席の寸法等の値を設定することが可能となる。
【0058】
(観覧施設評価装置1の動作の一例を示すフローチャート)
次に、観覧施設評価装置1の動作の一例のフローチャートについて、
図24に基づいて説明する。
図24に示す処理手順は、観覧施設評価装置1が実行されるパーソナルコンピュータが有するプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)が実行する。CPUの一部の機能を実行する動作部の一例には、入力部100、表示部300、および制御部400が挙げられる。この場合において、CPUはROM(Read Only Memory)(図示せず)に格納されたプログラムにしたがい実行する。
【0059】
なお、以下の処理手順の一部または全部は、例えば、DSP(Digital Signal Processing)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアにより実行できる。但し第1の実施形態では、ROMのプログラムにしたがってCPUが実行する形態とした場合について説明する。
【0060】
ステップS2401において、空間座標設定部410は、観覧施設に関する設計情報に基づいて空間座標を設定する。観覧施設の設計情報は、例えば観覧施設のCADデータやBIMデータであり、記憶部200に記憶されている。具体的には、空間座標設定部410は、上述の
図4に示す三次元座標軸を設定する。次に観覧施設評価装置1は、ステップS2402に進む。
【0061】
ステップS2402において、仮想空間画像生成部420は、空間座標設定部410で設定された観覧施設の空間座標に基づいて、仮想空間画像を生成し、仮想空間画像に関する情報を記憶部200に記憶する。次に観覧施設評価装置1は、ステップS2403に進む。
【0062】
ステップS2403において、注視点判定部430は、記憶部200に記憶された設計情報、およびユーザによって入力部100の施設情報入力部110に入力された施設情報等に基づいて各観客席からの舞台の注視点の見えやすさを判定する。具体的には、観客の視点から舞台の注視点へのサイトラインを算出し、注視点の位置(高さ)に基づいて、評価対象となる客席からの見やすさを判定する。また、舞台の注視点から、評価対象となる観客の前列の観客の頭頂とを結ぶ逆サイトラインを算出し、逆サイトラインと評価対象となる観客の目の高さを比較し、評価対象となる客席からの舞台の見やすさを判定する。
【0063】
さらに、注視点判定部430は、評価対象となる観客の視点がプロセニアムの上端より上にあるかを判定するプロセニアム判定を行う。また、注視点判定部430は、プロセニアムの上端がバルコニーの先端によって見えないか否かの判定であるバルコニー判定を行う。注視点判定部430は、評価対象となる客席と舞台の注視点とを結ぶ軸上の全ての客席に対し、サイトライン判定、逆サイトライン判定、プロセニアム判定、およびバルコニー判定を行い、判定結果を記憶部200に記憶する。次に観覧施設評価装置1は、ステップS2404に進む。
【0064】
ステップS2404において、表示部300は、仮想空間画像生成部420で生成され、記憶部200に記憶された仮想空間画像に関する情報を画像データに変換して表示する。次に観覧施設評価装置1は、ステップS2405に進む。
【0065】
ステップS2405において、入力部100は、ユーザからの操作情報を取得する。ユーザからの操作情報は、値の入力指示、視点の変更指示、注視点判定結果の表示指示、および終了指示である。ユーザは、表示部300によって表示された仮想空間画像に対し、視点を変更したい場合は、
図7に示すメニュー領域421cから適切な指示を選択する。また、ユーザは、注視点判定結果を表示させたい場合は、
図9に示す判定結果表示ボタン422bを選択し、注視点判定結果の表示を指示する。さらに、ユーザは、画面に表示された注視点判定結果に対して、値を調整したい場合は、調整したい項目に値を入力し、値の入力を指示する。一方で、視点変更や値の調整等の指示が必要ない場合は、ユーザは、例えば、
図6(a)の終了ボタン421dを選択し、終了を指示する。
【0066】
ステップS2406において、表示部300は、ユーザからの操作情報の有無を判定する。ユーザからの操作情報がない場合(ステップS2406:NO)には、ステップS2405に戻り、ユーザからの操作情報を取得する。一方で、ユーザからの指示がある場合(ステップS2406:YES)には、ステップS2407に進む。
【0067】
ステップS2407において、表示部300は、仮想空間画像の視点や断面表示等の表示に関する変更指示があるか否かを判定する。ユーザから仮想空間画像の表示の変更の指示がある場合(ステップS2407:YES)には、ステップS2408に進む。一方で、ユーザから仮想空間画像の表示の変更の指示がない場合(ステップS2407:NO)には、ステップS2409に進む。
【0068】
ステップS2408において、表示部300は、ユーザからの操作情報に応じて仮想空間画像の表示を変更させる。すなわち、入力部100の操作情報入力部120に入力された情報に応じて、仮想空間画像の表示を変更させる。仮想空間画像の表示の変更は、男女の視点変更、前方客席に着座した男女の人体モデルの変更、断面表示等である。次に、観覧施設評価装置1は、ステップS2409に進む。
【0069】
ステップS2409において、表示部300は、ユーザによって入力された操作情報において注視点判定結果の表示の指示があるか否かを判定する。例えば、
図9に示す判定結果表示ボタン422bをユーザが選択した場合(ステップS2409:YES)、表示部300は、ステップS2410に進む。一方で、ユーザから注視点判定結果の表示の指示がない場合(ステップS2409:NO)には、ステップS2411に進む。
【0070】
ステップS2410において、表示部300は、
図16に示す判定結果選択画面431を表示する。またユーザは、判定結果選択画面431において、表示させたい判定結果を選択する。これにより、ユーザの選択結果が操作情報として、入力部100の操作情報入力部120に入力される。さらに、表示部300は、操作情報入力部120に入力された操作情報に応じてサイトライン判定結果432または、逆サイトライン判定結果433を表示する。なお、第1の実施形態において、判定結果表示ボタン422bは、
図9に示す断面図に表示される例を示したがこれに限定されない。例えば、
図6(a)に示す客席からの視点の画像において、判定結果表示ボタン422bを表示させてもよい。その後、ユーザから判定結果の表示終了の指示があった場合には、ステップS2405に戻り、ユーザからの操作情報を取得する。なお、注視点判定結果が表示された状態における終了指示は、例えば、
図20に示す終了ボタンをユーザが選択した場合である。なお、判定結果の表示の終了については、この終了ボタンのクリックによる手段に限定されない。例えば、ユーザが判定結果の右上の「×」印(「閉じる」)を選択することで判定結果の表示を終了させる手段を用いてもよい。
【0071】
ステップS2411において、表示部300は、ユーザが入力した確認結果を判定し、ユーザが終了を指定した場合(ステップS2411:YES)には、処理フローが終了する。一方で値の再調整など、ユーザが値を入力した場合(ステップS2411:NO)には、ステップS2403に戻り注視点判定が行われる。ユーザがステップS2411で終了を指定するまでステップS2403からS2411までの処理が繰り返される。
【0072】
以上のように、第1の実施形態の係わる観覧施設評価装置1においては、観客からの視線の対象となる舞台の特定の点(注視点)に対して、観客席からの見やすさを判定し、判定結果が表示される。これにより、ユーザは、少なくとも一つの注視点に対し、どの辺りの客席から見えやすく、あるいは見えづらいかを一目で把握することができる。さらに、判定結果の具合が色の濃淡、または色彩別で表示されるため、ユーザは一見して、判定結果を把握することができる。また、判定結果に対して、ユーザは、値を直接入力し調整することができる。これにより、ユーザが値を調整した結果をすぐに確認することができ、劇場設計において、効率よく評価したい舞台および客席の寸法等の値を設定することが可能となる。
【0073】
また、第1の実施形態に係わる観覧施設評価装置1においては、観客からの視線の対象となる舞台の特定の点(注視点)を複数設定することができる。舞台で行われる演奏や演劇に対し、演奏者や演者に応じて柔軟に注視点を設定することができ、ユーザは、演奏や演劇の内容に応じて、詳細に見やすさを評価することができる。
【0074】
さらに、第1の実施形態に係わる観覧施設評価装置1においては、仮想空間画像における観客席における各客席からの視点による舞台の見え方や、断面図におけるサイトラインを表示させることができる。これにより、サイトライン判定結果や逆サイトライン判定結果で得られる数値および濃淡表示による判定結果のみではわかりづらい実際の視線やサイトラインの様子を、ユーザは仮想空間画像により仮想空間内で認識することができる。例えば、観覧施設の設計や評価の過程において、判定結果の数値的には問題がある場合でも、仮想空間における視点からの見え方では問題がない場合がある。また、逆に判定結果の数値的には問題がない場合で、仮想空間における視点からの舞台の見え方が好ましくない場合も存在する。第1の実施形態に係わる観覧施設評価装置1では、このように多面的な観点(指標)から観覧施設の評価が可能となり、ユーザは、より適切な観覧施設の設計や評価が可能となる。
【0075】
また、第1の実施形態に係わる観覧施設評価装置1においては、サイトラインの判定に加え、プロセニアム判定およびバルコニー判定を行うことが可能である。例えば、サイトラインを確保するために、客席の高さを上げすぎた場合など、プロセニアム判定およびバルコニー判定を行うことで、客席の高さを問題のない高さに設定することが可能となる。
【0076】
(第2の実施形態)
以上のとおり、具体的な実施形態を一つ説明したが、上述した実施形態は例示であって実施形態を限定するものではない。例えば、上述の実施形態では、舞台上の注視点と客席視点とに基づいて注視点を判定し、客席からの見やすさを判定する形態を例示した。ここではさらに、舞台から観客席に対する「一体性」および「親密性」を判定し表示する第2の実施形態にかかる観覧施設評価装置2について、第1の実施形態と異なる構成について説明する。
【0077】
本明細書において、「一体性」とは、舞台と観客との一体感を数値化したものである。例えば、空間全体の「一体性」を評価する場合には、舞台前方からの視野における観客席のうち、観客の顔や胸部が見える割合である。例えば、客席の傾斜が強いほど、舞台から見える観客の度合いは増加し、「一体性」は高くなる。また、本明細書において「親密性」とは、「一体性」を観客数で割った数値で表され、演技者と観客の視覚的な近さを示す指標として用いられる。すなわち、演技者から見える観客一人当たりの有効な「一体性」の平均値に相当する数値となる。第2の実施形態における観覧施設評価装置2は、「一体性」および「親密性」を算出し、仮想空間画像に表示させる。
【0078】
図25は、第2の実施形態における観覧施設評価装置2のブロック図の一例を示す。
図25に示すように第2の実施形態においては、第1の実施形態における観覧施設評価装置1の制御部400において、さらに、有効観客立体角を算出する有効観客立体角算出部440を備える構成となる。本明細書において有効観客立体角とは、舞台上のある特定点に対し、その特定点を取り囲む有効観客身体(胸像部)が占める仮想空間画像を、仮想半球面に立体角として投影したものである。ここで、有効観客身体(胸像部)とは、舞台上から見える胸部および頭部である。
【0079】
第2の実施形態における観覧施設評価装置2においては、有効観客立体角算出部440によって、算出された立体角の和を「一体性」とする。有効観客立体角算出部440は、記憶部200から、観覧施設に関する設計情報および人体モデル情報を読み込む。その後、投射の中心となる中心視点を定める。ここで中心視点は、例えば、
図14に示す施設情報入力画面111において、注視点の座標(PSx、PSz)を用いて定めることができる。例えば、舞台と観客の一体性を評価する場合には、中心軸11上の舞台端から1.5mの位置を定める。この場合、
図14に示す施設情報入力画面111において、注視点の座標PSx=1500、PSz=0を入力し、中心視点を設定する。次に、有効観客立体角算出部440は、中心視点から見た観客席側の仮想空間画像を仮想半球面に投影する。有効観客立体角算出部440は、仮想半球面に投影された観客席の面積を計測し、有効観客立体角を算出する。ここで、有効観客立体角は、例えば等立体角射影方式によって算出される。例えば、面積がaである評価対象となる物体が、視点から距離rの場所にある場合、立体角は、a/(r×r)で示すことができる。なお、本明細書において立体角の単位にはステラジアン(sr)を用いる。ただし、有効観客立体角の算出方法はこれに限定されない。
【0080】
ここで、観客の顔が手摺等の建築の一部や、前列の観客の頭髪に隠れて演者から見えない部分、および、重複する部分は「一体性」には寄与しない。よって、人体モデル情報の頭髪部は障害物として除外する。さらに演者から見て、仰角30度以上の領域は、一般的に、通常認識できないと言われるため、この部分は評価対象から除外する。さらに、下方については、通常舞台等の際に位置し、極めて立体角が恣意的に大きくなる部分であるので、水平から下方に15度を超える部分は評価対象から除外する。有効観客立体角算出部440は、有効観客立体角を、評価対象の仮想半球面2π(sr)の内仰角30度を超える部分および俯角15度を下回る分を除く立体角(約2.383sr)の面積で割ることで、「一体性」を算出する。
【0081】
また、有効観客立体角算出部440は、「一体性」を観客席数で割ることで「親密性」を算出する。この時、「親密性」が示す値は視点から視た観客の胸像部の立体角の平均となり、平均的距離に反比例すると考えることもできる。すなわち、演者の視点から観客の胸像部への距離が長いほど、「親密性」は低くなる。有効観客人体モデル胸像部を正面から見た時の立体角は、ほぼ直径0.5mの球と一致する。劇場の設計計画において演者の表情や細かいしぐさを認識できる限界距離は、一般的に20mといわれている。視点から20mの距離にある直径0.5m(半径0.25m)の物体を見た時の立体角は、(0.25×0.25×π)/(20×20)=0.00049(sr)=490(μsr)となる。これを1親密性(I)の単位(基準値)として用いることで、親密度の把握が容易となる。例えば、計算結果が122.5(μsr)の場合、122.5/490=0.25(I)となり、100%観客が見える状態の場合、20mの倍の距離である40mの場所に平均的に対象となる観客がいるのと等しくなる。一方、計算結果が1960(μsr)の場合、1960/490=4(I)となり、20mの半分の距離である10mの距離の場所に平均的に対象となる観客がいるに等しいとみなせる。
【0082】
図26は、
図7に示す仮想空間画像のメニュー領域421cにおいて、視点を「舞台正面」とした場合の仮想空間画像を示す。第2の実施形態においては、
図26に示す通り、仮想空間画像に有効観客立体角計算ボタン423が設けられる。
【0083】
図27(a)は、ユーザが
図24Aにおける有効観客立体角計算ボタン423を選択した場合に表示される画像であり、舞台から見た観客席が仮想半球面に投影されたものである。
図27(a)の右下には、「一体性」および「親密性」の計算結果が表示されている。
図27(b)は、
図27(a)とは異なる劇場における投影画像を示す。
図27(b)の右下においても、「一体性」および「親密性」の計算結果が表示されている。
図27(b)に示される観客席が投影された面積が
図27(a)に示さるものより大きい。すなわち
図27(b)に示す劇場の方が
図27(a)に示される劇場より「一体性」が高いことがわかる。すなわち、ユーザは、この投影画像により、評価対象となる舞台における「一体性」を画像および数値で認識することができる。同様に、
図27(b)に示す劇場の方が、
図27(a)に示される劇場より「親密性」が低いことがわかる。すなわち、ユーザは、この投影画像により、評価対象となる舞台における「親密性」を画像および数値で認識することができる。
【0084】
以上のように、第2の実施形態に係わる観覧施設評価装置2においては、仮想空間画像および注視点の判定結果に加え、舞台と観客席との「一体性」および「親密性」が定まる有効観客立体角を算出することができる。有効観客立体角の算出は、記憶部200に記憶された観覧施設の設計情報および人体モデル情報を用いることで容易に算出することができる。これにより、ユーザは、観客席側から舞台への視線に加え、舞台側から観客席への見え方の評価が可能となり、観覧施設の設計および評価において、有用な情報を取得することができる。
【0085】
(他の実施形態)
以上、本実施形態を説明したが、実施形態はこれらに限定されるものではなく、実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。また、さまざまな実施形態の一部または全部を組み合わせて新たな実施形態とすることも可能である。
【0086】
上述の各実施形態において、観覧施設が劇場である例を示したが、観覧施設はこれに限定されない。例えば、音楽堂、公会堂、講堂、教室、競技場、アリーナ、スタジアム等の観劇、音楽鑑賞、教育、集会、スポーツ観覧、展示、演出を目的とする施設であってもよい。また、観覧施設は、恒久的または仮設的といった施設の設置期間に関する種別を問わない。また、観覧施設の会場内にディスプレイ、スクリーン等を設置し、そこに人体を投影した場合にも、視点からの有効観客立体角が算出可能なので、「一体性」、および、「親密性」の情報を得ることが可能である。
【0087】
また、上述の各実施形態においては、注視点判定は、観客の視点から舞台やプロセニアムへのサイトラインを判定および評価するものであるが、これに限定されない。例えば、
図28に示すように、観客の視点の代わりに観客席側の壁や天井に設けられた照明の投光位置を用いて判定および評価することも可能である。また、観客の視点の代わりに、映像装置のレンズを用いることが可能であり、舞台正面すなわち客席センター付近からプロセニアムまたはホリゾント、背景幕への投射環境が適切か否かを検証することができる。さらに、施設の演出空間で行われるイベントを光によって演出する空間演出照明に関する空間情報を、仮想半球面に投影し、空間演出照明の配置が適切であるか否かを評価することも可能である。
【0088】
以下に、本実施形態に係わる観覧施設評価装置、観覧施設評価方法、および、観覧施設評価プログラムの特徴について記載する。
【0089】
(1) 観覧施設評価装置1は、以下の構成を有する。
(i) 舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、観覧施設に対応した空間座標を設定する空間座標設定部410を含む。
(ii) 空間座標が設定された設計情報に基づいて、仮想空間画像を生成する仮想空間画像生成部420を含む。
(iii) ユーザからの操作に関する操作情報が入力される操作情報入力部120を含む。
(iv) 客席に着座した観客からの視線の対象となる舞台上の特定の点である注視点を設定し、空間座標が設定された設計情報に基づいて、客席からの注視点の見やすさを判定する注視点判定部430を含む。
(v) 仮想空間画像および、操作情報に応じて注視点判定部430で判定された判定結果を表示する表示部300を含む。
【0090】
本開示によれば、観覧施設評価装置は、観客からの視線の対象となる舞台の特定の点(注視点)に対して、観客席からの見やすさを判定する。さらに、観覧施設評価装置は、仮想空間画像と、見やすさの判定結果を表示する。これにより、ユーザは、少なくとも一つの注視点に対し、どの辺りの客席から見えやすく、あるいは見えづらいかを一目で把握することができる。さらに仮想空間画像により、ユーザは、仮想空間における視点から舞台の見え具合を認識することができる。
【0091】
(2) 注視点判定部430は、評価対象となる観客の視点の空間座標と、評価対象となる観客より前方に位置する客席に着座した前方観客の頭頂の空間座標と、を通る直線であるサイトラインを算出することが好ましい。さらに、サイトラインと注視点の空間座標とを比較し、注視点の見やすさを判定することが好ましい。
【0092】
本開示によれば、評価対象となる観客からのサイトラインと注視点との空間座標を比較することにより、対象となる注視点が見えるか否かの判定を行うことが可能となる。
【0093】
(3) 注視点判定部430は、注視点の空間座標と、評価対象となる観客より前方に位置する客席に着座した前方観客の頭頂の空間座標と、を通る直線である逆サイトラインを算出することが好ましい。さらに、逆サイトラインと、評価対象となる観客の視点の空間座標とを比較し、注視点の見やすさを判定することが好ましい。
【0094】
本開示によれば、注視点と、評価対象となる観客より前方に位置する客席に着座した観客の頭頂の空間座標とに基づいて逆サイトラインを算出し、逆サイトラインと、評価対象となる観客の視点の空間座標とを比較する。これにより、評価対象となる観客の視点から、対象となる注視点が見えるか否かの判定を行うことが可能となる。
【0095】
(4)注視点判定部430は、評価対象となる観客の視点の空間座標と、舞台の開口を形成するプロセニアムの上端の空間座標とを比較することが好ましい。
【0096】
本開示によれば、評価対象となる観客の視点の高さがプロセニアムの上端より上であるか否かを判定することができる。これにより、注視点の見やすさの判定に加え、舞台の見やすさの判定が可能となる。
【0097】
(5) 注視点判定部430は、評価対象となる観客の視点の空間座標と、バルコニーの天井先端の空間座標と、を通る直線を算出し、当該直線と、舞台の開口を形成するプロセニアムの上端の空間座標とを比較することが好ましい。
【0098】
本開示によれば、評価対象となる観客の視点からプロセニアムの上端を見る場合において、バルコニーの天井先端によって見えなくなるか否かを確認することが可能となる。
【0099】
(6) 観覧施設評価装置は以下の構成をさらに有することが好ましい。
(vi) 舞台から客席を見た視野における客席の割合を算出し、仮想半球面に投影する有効観客立体角算出部440を含むことが好ましい。
表示部300は、仮想空間画像および判定結果に加え、有効観客立体角算出部440で算出された客席の投影画像を表示することが好ましい。
【0100】
本開示によれば、観覧施設評価装置は、観客席側から舞台への視線に加え、舞台側から観客席への見え方の評価が可能となり、観覧施設の設計および評価において、有用な情報を取得することができる。
【0101】
(7) コンピュータによって実行される観覧施設評価方法は、以下の処理を有することが好ましい。
(i) 舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、観覧施設に対応した空間座標を設定する処理を含む。
(ii) 空間座標が設定された設計情報に基づいて、仮想空間画像を生成する処理を含む。
(iii) ユーザからの操作に関する操作情報が入力される処理を含む。
(iv) 客席に着座した観客からの視線の対象となる舞台上の特定の点である注視点を設定する処理を含む。
(v) 空間座標が設定された設計情報に基づいて、客席からの注視点の見やすさを判定する処理を含む。
(vi) 仮想空間画像および、操作情報に応じて判定された判定結果を表示する処理を含む。
【0102】
本開示によれば、観覧施設評価方法は、観客からの視線の対象となる舞台の特定の点(注視点)に対して、観客席からの見やすさを判定する。さらに、観覧施設評価方法は、仮想空間画像と、見やすさの判定結果を表示する。これにより、ユーザは、少なくとも一つの注視点に対し、どの辺りの客席から見えやすく、あるいは見えづらいかを一目で把握することができる。さらに仮想空間画像により、ユーザは、仮想空間における視点から舞台の見え具合を認識することができる。
【0103】
(8) コンピュータに実行させるための観覧施設評価プログラムは、以下の処理を有する。
(i) 舞台と客席とを備える観覧施設に関する設計情報に基づいて、観覧施設に対応した空間座標を設定する処理を含む。
(ii) 空間座標が設定された設計情報に基づいて、仮想空間画像を生成する処理を含む。
(iii) ユーザからの操作に関する操作情報が入力される処理を含む。
(iv) 客席に着座した観客からの視線の対象となる舞台上の特定の点である注視点を設定する処理を含む。
(v) 空間座標が設定された設計情報に基づいて、客席からの注視点の見やすさを判定する処理を含む。
(vi) 仮想空間画像および、操作情報に応じて判定された判定結果を表示する処理を含む。
【0104】
本開示によれば、観覧施設評価プログラムは、観客からの視線の対象となる舞台の特定の点(注視点)に対して、観客席からの見やすさを判定する。さらに、観覧施設評価プログラムは、仮想空間画像と、見やすさの判定結果を表示する。これにより、ユーザは、少なくとも一つの注視点に対し、どの辺りの客席から見えやすく、あるいは見えづらいかを一目で把握することができる。さらに仮想空間画像により、ユーザは、仮想空間における視点から舞台の見え具合を認識することができる。
【0105】
(9) 観覧施設評価プログラムを、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶した態様とすることもできる。
【0106】
本開示によれば、観覧施設評価プログラムは、観客からの視線の対象となる舞台の特定の点(注視点)に対して、観客席からの見やすさを判定する。さらに、観覧施設評価プログラムは、仮想空間画像と、見やすさの判定結果を表示する。これにより、ユーザは、少なくとも一つの注視点に対し、どの辺りの客席から見えやすく、あるいは見えづらいかを一目で把握することができる。さらに仮想空間画像により、ユーザは、仮想空間における視点から舞台の見え具合を認識することができる。
【符号の説明】
【0107】
1、2 観覧施設評価装置
100 入力部
200 記憶部
300 表示部
400 制御部
410 空間座標設定部
420 仮想空間画像生成部
430 注視点判定部
440 有効観客立体角算出部