(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039589
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】布類供給装置
(51)【国際特許分類】
D06F 67/04 20060101AFI20220303BHJP
D06C 3/00 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
D06F67/04
D06C3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144699
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】502407130
【氏名又は名称】株式会社プレックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 眞徳
(72)【発明者】
【氏名】林田 誉生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 信治
【テーマコード(参考)】
3B154
【Fターム(参考)】
3B154AB27
3B154AB31
3B154BA17
3B154BA18
3B154BA42
3B154BB47
3B154BB67
3B154BC16
3B154BC48
3B154CA44
3B154DA24
(57)【要約】
【課題】布類の上辺部の幅に応じて投入クランプの高さの差を異ならせ、布類の複数貯留と相俟って布類展張装置の処理効率を高めることにある。
【解決手段】一または複数個所に設けられ、下部が互いに平行に上方に向けて延在するとともに上部が互いに合流する二経路の投入経路と、二経路の投入経路が互いの合流後にさらに合流する共通の搬送経路と、二経路の投入経路を互いに独立してそれぞれ通り布類の隣り合う角部をそれぞれ把持する一対の搬送クランプと、共通の搬送経路から分岐して一対の展張クランプとの受け渡し位置まで延在する供給経路と、一対の搬送クランプを二経路の投入経路で互いに独立に上昇移動させるとともに共通の搬送経路に前後並びにして通す角部独立投入手段と、一対の搬送クランプを共通の搬送経路から供給経路まで通して、それらの搬送クランプが把持する布類の両角部を一対の展張クランプに引き渡す角部引き渡し手段と、を具える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の展張クランプで布類の隣り合う角部をそれぞれ把持してその布類の前記角部間の上辺部を左右方向に展張し、その上辺部を展張した布類を後方に搬出する布類展張装置に用いられ、投入された布類を一枚ずつ搬送してその布類の隣り合う角部を前記一対の展張クランプに引き渡す布類供給装置において、
一または複数個所に設けられ、下部が互いに平行に上方に向けて延在するとともに上部が互いに合流する二経路の投入経路と、
前記二経路の投入経路が前記互いの合流後にさらに合流する共通の搬送経路と、
前記二経路の投入経路を互いに独立してそれぞれ通り、前記布類の隣り合う角部をそれぞれ把持する一対の搬送クランプと、
前記共通の搬送経路から分岐して前記一対の展張クランプとの受け渡し位置まで延在する供給経路と、
前記一対の搬送クランプを前記二経路の投入経路で互いに独立に上昇移動させるとともに前記共通の搬送経路に前後並びにして通す角部独立投入手段と、
前記一対の搬送クランプを前記共通の搬送経路から前記供給経路まで通して、前記一対の搬送クランプが把持する前記布類の両角部を前記一対の展張クランプに引き渡す角部引き渡し手段と、
を具えることを特徴とする布類供給装置。
【請求項2】
前記互いの合流後の二経路の投入経路が前記共通の搬送経路に合流する箇所に、前記一対の投入クランプの前記共通の搬送経路への入り込みを待機させる待機手段を具えている、請求項1記載の布類供給装置。
【請求項3】
前記供給経路から前記投入経路まで前記一対の投入クランプを通す戻り経路と、
その戻り経路で前記一対の投入クランプを移動させる投入クランプ戻し手段と、
を具えている、請求項1または2記載の布類供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、布類洗濯工場等において洗濯した布類を一枚ずつ展張して次工程に送るために一対の展張クランプで布類の隣り合う角部をそれぞれ把持してその布類の前記角部間の上辺部を左右方向に展張し、その上辺部を展張した布類を後方に搬出する布類展張装置に用いられ、投入された布類を一枚ずつ搬送してその布類の隣り合う角部を前記一対の展張クランプに引き渡す布類供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の布類展張装置としては、例えば本願の出願人が先に開示した特許文献1記載のものが知られており、この布類展張装置は、布類の投入部と、投入された布類を左右に展張する展張部と、展張された布類を搬出する搬出部とを備えている。投入部はこの布類展張装置の前部に左右方向に間隔をあけて複数個所設けられ、各々、投入位置で布類の隣り合う角部を把持する一対の投入クランプと、その一対の投入クランプを投入位置とそれより上方の受渡し位置との間で昇降移動させるとともに一方の投入クランプを一方の角部の把持後に他方の投入クランプよりも先に上昇させてその角部を持ち上げ、作業者に他方の角部を見つけ出して他方の投入クランプに把持させ易くする昇降装置とを有している。
【0003】
展張部は、各投入部の受渡し位置でその一対の投入クランプから布類の隣り合う角部を受け取って把持する一対の展張クランプと、その一対の展張クランプを一緒に横行させて各投入部の受渡し位置で一対の展張クランプに布類の隣り合う角部を把持させた後その一対の展張クランプを互いの離間方向に横行させてその布類を左右方向に広げる横行装置とを有している。そして搬出部は、左右方向に広げられた布類の上辺部を展張クランプから中間移動体を介して受け取って後方へ引き込むとともに布類の上辺部よりも下側の残り部分も順次に引き上げて布類全体を後方に搬出するベルトコンベヤを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-123466号公報
【特許文献2】特開2014-188377号公報
【特許文献3】特開2010-075444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記特許文献1記載の従来の布類展張装置では、複数個所の投入部を具えるものの、それぞれの投入部に多くの布類を貯留しておくことはできないため、投入クランプから展張クランプへの布類の受け渡し速度が作業者による投入クランプへの布類の投入速度の制約を受け、処理効率を十分に高めるのが未だ困難であった。
【0006】
また、複数種類の布類、特に上辺部の幅が互いに異なる布類を展張する場合に、それらが複数個所の投入部に混在していると、それら上辺部の幅が異なる布類の展張の際に、投入クランプの受け渡し位置からの展張クランプの移動距離が異なって展張に時間がかかり、この点でも、処理効率を十分に高めるのが未だ困難であった。
【0007】
そこで、従来の布類展張装置の上記課題を解決するために布類展張装置に布類供給装置から布類を供給することが考えられ、従来の布類供給装置としては、例えば特許文献2に記載されたものが知られている。この布類投入装置は、布類の上辺部の隣り合う角部を把持させた一対のクランプを所定間隔で移送する間にその布類の垂れ下がった上辺部の下端の高さとその布類の最下端の高さをセンサで検出し、それらの高さから求めたその布類の幅と長さからその布類を種類ごとに仕分けして貯留し、種類ごとに処理装置に投入する。
【0008】
また、従来の布類供給装置としては、例えば特許文献3に記載されたものも知られており、この布類投入装置は、複数個所の投入部の各々の投入位置で布類の隣り合う角部を把持した一対の投入クランプを、複数の搬送経路で一旦複数対貯留した後、共通の搬送経路に合流させて搬送し、布類展張装置の近くで一対ずつ分離させて共通の受渡し位置に送るとともに、共通の搬送経路への合流および待機を布類の種類に応じて行って、複数種類の布類の混合処理を回避している。
【0009】
しかしながら、これら従来の布類供給装置で布類を種類ごとに仕分けするとともに複数枚貯留して、布類展張装置の一対の展張クランプに布類の角部を受け渡しすることとしても、これらの布類供給装置では通常、一対の投入クランプを共通の一本のレール上に一定間隔で配置して、作業者がそれらの投入クランプに布類の両角部を順次に把持させるようにしているので、布類の上辺部の幅が広い場合には作業者が両角部を見つけ出す手間がかかるため、投入クランプから展張クランプへの布類の受け渡し速度が依然として作業者による布類の投入速度の制約を受け、処理効率を十分高めるのが困難であることが推定された。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上述の如き従来の布類展張装置の課題を有利に解決する布類供給装置を提供することを目的とするものであり、この発明の布類供給装置は、
一対の展張クランプで布類の隣り合う角部をそれぞれ把持してその布類の前記角部間の上辺部を左右方向に展張し、その上辺部を展張した布類を後方に搬出する布類展張装置に用いられ、投入された布類を一枚ずつ搬送してその布類の隣り合う角部を前記一対の展張クランプに引き渡す布類供給装置において、
一または複数個所に設けられ、下部が互いに平行に上方に向けて延在するとともに上部が互いに合流する二経路の投入経路と、
前記二経路の投入経路が前記互いの合流後にさらに合流する共通の搬送経路と、
前記二経路の投入経路を互いに独立してそれぞれ通り、前記布類の隣り合う角部をそれぞれ把持する一対の搬送クランプと、
前記共通の搬送経路から分岐して前記一対の展張クランプとの受け渡し位置まで延在する供給経路と、
前記一対の搬送クランプを前記二経路の投入経路で互いに独立に上昇移動させるとともに前記共通の搬送経路に前後並びにして通す角部独立投入手段と、
前記一対の搬送クランプを前記共通の搬送経路から前記供給経路まで通して、前記一対の搬送クランプが把持する前記布類の両角部を前記一対の展張クランプに引き渡す角部引き渡し手段と、
を具えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
この発明の布類供給装置にあっては、一または複数個所に設けられ、下部が互いに平行に上方に向けて延在するとともに上部が互いに合流する二経路の投入経路が、互いの合流後にさらに共通の搬送経路に合流し、その共通の搬送経路から分岐した供給経路が、一対の展張クランプとの受け渡し位置まで延在しており、前記二経路の投入経路を互いに独立してそれぞれ通り、布類の隣り合う角部をそれぞれ把持する一対の搬送クランプを、角部独立投入手段が、それら二経路の投入経路で互いに独立に上昇移動させるとともに前記共通の搬送経路に前後並びにして通し、そして角部引き渡し手段が、前記一対の搬送クランプを前記共通の搬送経路から前記供給経路まで通して、それらの搬送クランプが把持する布類の両角部を一対の展張クランプに引き渡す。さらに、それら投入経路と共通の搬送経路と供給経路との何れか1つ以上が、そこに位置する搬送クランプによって前記布類を複数貯留する。
【0012】
従って、この発明の布類供給装置によれば、一対の投入クランプを二経路の投入経路で互いに独立に上昇移動させ、作業者がそれらの投入クランプに布類の両角部を順次に把持させるようにしているので、布類の上辺部の幅に応じて一対の投入クランプの高さの差を異ならせて作業者が両角部を見つけ出す手間を減らすことができ、投入経路と共通の搬送経路と供給経路との何れか1つ以上での布類の複数貯留と相俟って、布類展張装置の処理効率を十分高めることができる。
【0013】
なお、この発明の布類供給装置においては、前記互いの合流後の二経路の投入経路が前記共通の搬送経路に合流する箇所に、前記一対の投入クランプの前記共通の搬送経路への入り込みを待機させる待機手段を具えてもよい。
【0014】
このようにすれば、先に投入クランプに投入されて共通の搬送経路を搬送されている種類の布類の、布類展張装置への引き渡しが終了するまで、次の種類の布類を把持している投入クランプを投入経路に待機させて貯留しておけるので、布類展張装置が同一種類の布類に対する同一処理を連続して行うことができ、それゆえ布類展張装置の処理効率を十分高めることができる。
【0015】
また、この発明の布類供給装置においては、前記供給経路から前記投入経路まで前記一対の投入クランプを通す戻り経路と、その戻り経路で前記一対の投入クランプを移動させる投入クランプ戻し手段と、をさらに具えてもよい。
【0016】
このようにすれば、投入クランプを供給経路での布類の引き渡し後に自動的に投入経路に戻して循環利用することができるので、作業者が布類の投入作業に集中でき、処理効率をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の布類供給装置の一実施形態を、それを用いる布類展張装置の断面と一緒に示す側面図である。
【
図2】上記実施形態の布類供給装置の、
図1中のA部から見た断面図である。
【
図3】上記実施形態の布類供給装置のレールラインのうち、供給レールラインのみの一構成例を示す平面図である。
【
図4】上記実施形態の布類供給装置のレールラインのうち、回収レールラインのみの一構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。ここに、
図1は、この発明の布類供給装置の一実施形態を、それを用いる布類展張装置の断面と一緒に示す側面図、
図2は、上記実施形態の布類供給装置の、
図1中のA部から見た断面図、
図3は、上記実施形態の布類供給装置のレールラインのうち、供給レールラインのみの一構成例を示す平面図、そして
図4は、上記実施形態の布類供給装置のレールラインのうち、回収レールラインのみの一構成例を示す平面図である。
【0019】
この実施形態の布類供給装置を用いる布類展張装置1は、布類洗濯工場等において、洗濯した布類を次工程の例えばアイロンローラに投入するために一枚ずつ展張するもので、
図1に断面図、
図2に正面図、
図3,4に平面図で例示するように、従来の布類の投入部に代えて布類展張装置1の前方に配置された上記実施形態の布類供給装置10と、投入された布類を左右に展張する展張部2と、展張された布類を搬出する搬出部3とを具えており、展張部2と搬出部3とは、前述した従来の布類展張装置におけると同様に構成されている。
【0020】
すなわち、展張部2は、所定の受渡し位置で一対の搬送クランプから布類Cの隣り合う角部を受け取って把持する一対の展張クランプ2aと、その一対の展張クランプ2aを一緒に横行させて上記の受渡し位置で一対の展張クランプ2aに布類Cの隣り合う角部を把持させた後その一対の展張クランプ2aを互いの離間方向に横行させてその布類Cを左右方向に広げる横行装置2bとを有している。そして搬出部3は、左右方向に広げられた布類Cの上辺部を前進位置で展張クランプ2aから受け取って負圧により上面上に展張状態で吸着保持する中間移動体としてのキャッチベース3aと、そのキャッチベース3aの後退移動と負圧の除去に伴い、左右方向に広げられた布類Cの上辺部を受け取って負圧により吸着保持しつつ後方へ引き込むとともに、布類Cの上辺部よりも下側の残り部分も順次に引き上げて布類C全体を後方に搬出するベルトコンベヤ3bとを有している。
【0021】
一方、上記実施形態の布類供給装置10は、各々スプリングで付勢されて閉じるレバー形の爪と走行ローラとを有する一対の搬送クランプ11にそれぞれ投入された布類Cの隣り合う角部をそれらの搬送クランプ11でそれぞれ把持して搬送するための共通の搬送経路12と、その共通の搬送経路12から布類展張装置1の前方で左右に分岐して所定間隔LMで互いに平行に延在する二経路の計測経路13と、共通の搬送経路12から順次に外れてその二経路の計測経路13を左右に並んで通る一対の搬送クランプ11でそれぞれ把持した布類Cの角部間の上辺部の弛み程度の大小を例えば受光量の多少で光学的に計測し、ON-OFF信号で出力する弛みセンサ14と、それら二経路の計測経路13からそれぞれ分岐した、弛み別供給経路としての二経路の内側供給経路15および二経路の外側供給経路16と、布類分類供給制御手段としての、通常のコンピュータを有するコントローラ17と、を具えており、それら共通の搬送経路12と計測経路13と内側供給経路15と外側供給経路16とは、例えば下向き面の中央部が長手方向に沿って切り欠かれた断面略コ字状のレールで各々形成されて供給レールライン18を構成し、計測経路13から内側供給経路15および外側供給経路16への分岐点には、通常の切り替え機構19が設けられている。
【0022】
ここで、二経路の内側供給経路15は所定間隔L1で互いに平行に延在し、二経路の外側供給経路16はL1よりも大きい所定間隔L2で互いに平行に延在し、内側供給経路15および外側供給経路16は各々、計測経路13に繋がる下降経路と、布類展張装置1の展張部2に対向する上昇経路との下端部同士を円弧状の連結部で繋いだ略U字状をなしており、下降経路では搬送クランプ11はその自重およびそこに把持した布類Cの重量による重力で走行移動するが、連結部から上昇経路の上端部にかけては、例えば従来の投入部におけると同様、経路の側部に沿わせて配置した無端のタイミングベルトをサーボモータやステップモータ等で駆動するとともに、そのタイミングベルトにその延在方向に並べて突設した多数のピンの何れかを搬送クランプ11に掛合させることで搬送クランプ11を駆動する図示しない駆動機構が設けられて搬送クランプ11の移動を制御している。
【0023】
そしてコントローラ17は、弛みセンサ14からのON(受光量多)信号を受けると上記上辺部の弛み程度が大きい方の布類Cであると判断して、その布類Cの角部を把持している一対の搬送クランプ11を切り替え機構19によって二経路の計測経路13から左右二経路の外側供給経路16にそれぞれ通す一方、弛みセンサ14からOFF(受光量少)信号を受けると上記上辺部の弛み程度が小さい方の布類Cであると判断して、その布類Cの角部を把持している一対の搬送クランプ11を切り替え機構19によって二経路の計測経路13から左右二経路の内側供給経路15にそれぞれ通し、さらに、その切り替え機構19を通った搬送クランプ11の数と布類展張装置1の展張クランプ2aの展張動作の回数とから内側供給経路15および外側供給経路16に残っている搬送クランプ11の数を判断して、布類展張装置1に、それら一対の搬送クランプ11を通した各々左右二経路の外側供給経路16または内側供給経路15のうち搬送クランプ11が残っている方の供給経路の左右二経路の上昇経路に対向させて一対の展張クランプ2aを配置させるとともに、搬送クランプ11が残っている方の供給経路の下降経路に図示しない通常の掛止機構で掛止されている先頭の一対の搬送クランプ11を解放して上昇経路に送り、上記駆動機構で駆動されて上昇経路を通って上昇移動する一対の搬送クランプ11から一対の展張クランプ2aに布類Cの上辺部の互いに隣り合う角部を引き渡す。
【0024】
従って、上記実施形態の布類供給装置によれば、一対の展張クランプ2aは次に展張する布類Cの上辺部の幅に対応した位置でその布類Cの角部を受け取るので、布類Cを展張する際の展張クランプ2aの移動距離を布類Cの上辺部の幅の大小にかかわらず小さくして展張時間を短縮し、処理効率を高めることができる。
【0025】
上記実施形態の布類供給装置10はまた、互いに所定間隔で並行する二経路の投入経路21を有する角部独立投入手段としての投入部20を、一または複数個所、図示例では四箇所に具え、各投入部20における二経路の投入経路21は各々、内側供給経路15および外側供給経路16におけると同様、布類展張装置1から遠い側に位置する下降経路と、布類展張装置1に近い側に位置する上昇経路との下端部同士を円弧状の連結部で繋いだ略U字状をなしており、下降経路では搬送クランプ11はその自重およびそこに把持した布類Cの重量による重力で走行移動するが、連結部から上昇経路の上端部にかけては、例えば従来の投入部におけると同様、経路の側部に沿わせて配置した無端のタイミングベルトをサーボモータやステップモータ等で駆動するとともに、そのタイミングベルトにその延在方向に並べて突設した多数のピンの何れかを搬送クランプ11に掛合させることで搬送クランプ11を駆動する図示しない駆動機構が設けられて搬送クランプ11の移動を制御しており、二経路の投入経路21のそれらの駆動機構は互いに独立して作動し、コントローラ17は、作業者Wの、例えば供給コンベヤSでその投入部20に供給されてきた布類の上辺部の幅の種類に応じたスイッチ操作で、それらの駆動機構を順次に起動して、一対の搬送クランプ11をその投入する布類の上辺部の幅の大きさに応じて互いに間隔を空けることで高さの差を設けて上昇させる。
【0026】
従って、上記実施形態の布類供給装置によれば、投入する布類の上辺部の幅の大きさに応じて、投入経路21の下端部で一対の搬送クランプ11の一方に一方の角部を把持させた後に、その搬送クランプ11の上昇移動によって一方の角部が引き上げられることで発見し易くなった布類Cの他方の角部を投入経路21の下端部で他方の搬送クランプ11に把持させることができるので、布類Cの投入効率を高めることができる。
【0027】
各投入部20における二経路の投入経路21は、それらの上昇経路の上端部で互いに合流して前下がりに傾斜した一経路の貯留経路22に繋がり、その一経路の貯留経路22は、平面視で略U字状をなす共通の搬送経路12に合流し、貯留経路22では搬送クランプ11はその自重およびそこに把持した布類Cの重量による重力で走行移動するが、共通の搬送経路12では、経路の下部に沿わせて配置した無端のタイミングベルト23をサーボモータやステップモータ等で駆動するとともに、そのタイミングベルト23にその延在方向に並べて突設した多数のピン24の何れかを搬送クランプ11に掛合させることで搬送クランプ11を駆動する駆動機構25が設けられて搬送クランプ11の移動を制御しており、これら各投入部20における二経路の投入経路21および一経路の貯留経路22と共通の搬送経路12とは、これも供給レールライン18を構成する。
【0028】
ここで、各投入部20の一経路の貯留経路22から共通の搬送経路12への合流点には、一または複数対の搬送クランプ11を貯留経路22に貯留させるとともにそれらの搬送クランプ11のうち先頭の一対の搬送クランプ11を前後並びの状態で共通の搬送経路12に通す待機手段としての図示しない通常の掛止機構が設けられており、コントローラ17は、各種類の布類Cについての作業者Wのスイッチ操作の回数と、共通の搬送経路12での各合流点の下流側近傍に設けられたマイクロスイッチ等の接触式または光センサ等の非接触式の図示しない通過検知器で検知したその合流点を通った搬送クランプ11の数と、それと同様の通過検知器で検知した上記掛止機構を通った搬送クランプ11の数とのデータを入力する。
【0029】
そしてコントローラ17は、それらのデータから貯留経路22に貯留している布類Cの種類とそれを把持する搬送クランプ11の対の順序とを判断して、共通の搬送経路12をその上流側から通って合流点を通過した布類Cの種類(例えばA)と同じ種類の布類が貯留経路22の先頭にある場合は、その合流点の掛止機構で掛止されている先頭の一対の搬送クランプ11を解放して貯留経路22から共通の搬送経路12に通し、共通の搬送経路12をその上流側から通って合流点を通過した布類Cの種類(例えば第1の種類A)と異なる種類(例えば第2の種類B)の布類Cが貯留経路22の先頭にある場合は、先の種類(例えば第1の種類A)がその合流点を通過した後一定時間待って間を空けてからその貯留経路22の先頭の一対の搬送クランプ11を解放するか、その貯留経路22の先頭の布類Cの種類(例えば第2の種類B)と同じ種類の布類Cが共通の搬送経路12をその上流側から通って合流点を通過するまで待ってその先頭の一対の搬送クランプ11を解放して貯留経路22から共通の搬送経路12に通す。
【0030】
従って、上記実施形態の布類供給装置によれば、第1の種類Aと第2の種類Bとのうち例えば上辺部の幅が同じ第1または第2の種類の布類Cを布類展張装置1の展張クランプ2aによって同じ引き渡し位置から連続して展張処理できるので、布類Cを展張する際の展張クランプ2aの移動距離をさらに小さくして展張時間を短縮し、処理効率を高めることができ、かつ、布類Cを種類ごとに纏めて布類展張装置1から搬出することができる。
【0031】
さらに、この実施形態の布類供給装置においては、二経路の計測経路13がそれぞれ下向きに分岐して、複数経路の弛み別供給経路としての二経路の内側供給経路15および二経路の外側供給経路16となっている。従って、上記実施形態の布類供給装置によれば、計測経路13から内側供給経路15および外側供給経路16への分岐のための工場の床面積を殆ど必要としないので、布類Cの供給スペースの効率を高めて設備コストを低減させることができる。
【0032】
さらに、この実施形態の布類供給装置は、二経路の内側供給経路15と二経路の外側供給経路16とのそれぞれの上昇経路の上端部に繋がるとともに前下がりに傾斜した四経路の戻り経路26と、それら四経路の戻り経路26が順次に合流した平面視で略U字状をなす共通の戻り経路27と、その共通の戻り経路27から分岐して各投入部20に向かい、さらに各投入部20で二つに分岐して二経路の投入経路21の下降経路の上端部に繋がる前下がりに傾斜した搬送クランプ供給経路28とを具え、戻り経路26および搬送クランプ供給経路28では搬送クランプ11はその自重による重力で走行移動するが、共通の戻り経路27では、経路の上部に沿わせて配置した無端のタイミングベルト29をサーボモータやステップモータ等で駆動するとともに、そのタイミングベルト29にその延在方向に並べて突設した多数のピン30の何れかを搬送クランプ11に掛合させることで搬送クランプ11を駆動する投入クランプ戻し手段としての駆動機構31が設けられて搬送クランプ11の移動を制御している。
【0033】
そしてそれら四経路の戻り経路26と共通の戻り経路27と搬送クランプ供給経路28とは、例えば上向き面の中央部が長手方向に沿って切り欠かれた断面略コ字状のレールで各々形成されて回収レールライン32を構成し、共通の戻り経路27から搬送クランプ供給経路28への各分岐点には、共通の戻り経路27での各分岐点の上流側近傍に設けられた上記と同様の図示しない通過検知器が設けられるとともに、切り替え機構19と同様の図示しない通常の切り替え機構が設けられており、コントローラ17は、その通過検知器で検知したその分岐点を通る搬送クランプ11を切り替え機構で1つずつ分離させて、4つの投入部20の搬送クランプ供給経路28に順次に通す。
【0034】
従って、上記実施形態の布類供給装置によれば、二経路の内側供給経路15と二経路の外側供給経路16とのそれぞれの上昇経路で布類Cの角部を展張クランプ2aに引き渡した空の搬送クランプ11は、自重による降下で戻り経路26を通って共通の戻り経路27に集合した後、各投入部20の搬送クランプ供給経路28に一対ずつ供給され、それらの搬送クランプ供給経路28から投入経路21の下降経路の上端部に戻されて、作業者Wの、投入する布類の上辺部の幅の種類に応じたスイッチ操作による駆動機構の起動で投入経路21に送られるのを待機するので、布類Cの投入作業を効率的に行うことができる。
【0035】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更し得るものであり、例えば上記実施形態の布類供給装置では布類展張装置1が具える制御装置と別個にコントローラ17を具えているが、布類展張装置1が具える制御装置をコントローラ17としても用い、別個のコントローラ17を省略してもよい。
【0036】
また、上記実施形態の布類供給装置では二経路の計測経路を上辺部の弛みに応じて弛み別供給経路としての二経路の内側供給経路15と二経路の外側供給経路16とに分岐させているが、二経路の計測経路をそれぞれ、さらに多数の弛み別供給経路に分岐させてもよい。
【0037】
そして、上記実施形態の布類供給装置では布類Cの第1の種類と第2の種類とを、上辺部の幅の違いで分けているが、これに代えて、その上辺部の幅の違いから判明するシーツとカバーといった布類の種類の違いや客先の違い等で分けるようにしてもよく、このようにしても同じ種類の複数枚の布類を連続して布類展張装置に供給してその処理効率を十分に高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
かくしてこの発明の布類供給装置によれば、一対の投入クランプを二経路の投入経路で互いに独立に上昇移動させ、作業者がそれらの投入クランプに布類の両角部を順次に把持させるようにしているので、布類の上辺部の幅に応じて一対の投入クランプの高さの差を異ならせて作業者が両角部を見つけ出す手間を減らすことができ、投入経路と共通の搬送経路と供給経路との何れか1つ以上での布類の複数貯留と相俟って、布類展張装置の処理効率を十分高めることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 布類展張装置
2 展張部
2a 展張クランプ
2b 横行装置
3 搬出部
3a キャッチベース
3b ベルトコンベヤ
10 布類供給装置
11 搬送クランプ
12 共通の搬送経路
13 計測経路
14 弛みセンサ
15 内側供給経路
16 外側供給経路
17 コントローラ
18 供給レールライン
19 切り替え機構
20 投入部
21 投入経路
22 貯留経路
23 タイミングベルト
24 ピン
25 駆動機構
26 戻り経路
27 共通の戻り経路
28 搬送クランプ供給経路
29 タイミングベルト
30 ピン
31 駆動機構
32 回収レールライン
C 布類
LM,L1,L2 所定間隔
S 供給コンベヤ
W 作業者