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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039629
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】自動水栓
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20220303BHJP
   E03C 1/05 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
E03C1/042 F
E03C1/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144761
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】592243553
【氏名又は名称】株式会社タカギ
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】芳川 敏康
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BE09
2D060CA04
2D060CA07
(57)【要約】
【課題】引出し・格納可能なスパウトを備え浸水防水機能に優れた自動水栓の提供。
【解決手段】水栓本体と、水栓本体から突出形成された筒状のスパウトホルダS1と、引出し可能なホースHと接続されスパウトホルダS1の先端部に差込保持されるスパウトと、を備え、スパウトホルダS1に、自動吐水用のセンサ3と、センサ3から水栓本体に至る配線4と、ホースHの通路を形成する通路部材2と、配線4との干渉を避ける通線部61を備えつつ通路部材2とスパウトホルダS1の内面との隙間を封止する封止部材6と、が設けられ、スパウトホルダS1における封止部材6よりも先端側に、スパウトホルダS1の内部に溜まった水の少なくとも一部を排水する排水部が形成され、通線部61が排水部よりも高位置に設けられている自動水栓U。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明に係る自動水栓の特徴構成は、
水栓本体と、
前記水栓本体から突出形成された筒状のスパウトホルダと、
引出し可能なホースと接続され前記スパウトホルダの先端部に差込保持されるスパウトと、を備え、
前記スパウトホルダに、自動吐水用のセンサと、前記センサから前記水栓本体に至る配線と、前記ホースの通路を形成する通路部材と、前記配線との干渉を避ける通線部を備えつつ前記通路部材と前記スパウトホルダの内面との隙間を封止する封止部材と、が設けられ、
前記スパウトホルダにおける前記封止部材よりも先端側に、前記スパウトホルダの内部に溜まった水の少なくとも一部を排水する排水部が形成され、前記通線部が前記排水部よりも高位置に設けられている自動水栓。
【請求項2】
前記排水部が、前記スパウトホルダの軸心の個々の部位を通る鉛直線と前記スパウトホルダの内面とが交差して得られる下側の交点のうち最も高い位置にある前記交点とされる請求項1に記載の自動水栓。
【請求項3】
前記排水部が、前記スパウトホルダの軸心の個々の部位を通る鉛直線と前記スパウトホルダの内面とが交差して得られる下側の交点のうち最も高い位置にある前記交点と、前記封止部材と、の間の位置において、前記スパウトホルダの壁部に貫通形成された第1連通部である請求項1に記載の自動水栓。
【請求項4】
前記スパウトを差込保持する保持部および前記ホースを摺動可能に挿通するガイド面を備えたジョイント部材が、前記通路部材と離間した状態で前記スパウトホルダの先端に固定されている請求項1から3の何れか一項に記載の自動水栓。
【請求項5】
前記通路部材のうち前記ジョイント部材に対向する端部領域の少なくとも最下部に、前記通路部材の内面と外面とに亘る第2連通部が形成されている請求項4に記載の自動水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐水制御用のセンサを備えたスパウトホルダに対して引出し・格納が可能なスパウトを備え、スパウトホルダの内部への水の浸入を防止する構造を備えた自動水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような水栓装置に関連する技術としては、例えば以下の特許文献1(〔0014〕~〔0017〕、〔0029〕、図1図4等参照)に示すものがある。
【0003】
この水栓装置は、水栓本体(ボデー12)から略円弧状のスパウトホルダ(吐水口本体16)が延出し、その先端部には、ホース24が接続されたスパウト(吐水ヘッド21)を引出し・格納可能に装着するものである。
【0004】
スパウトホルダの先端にはセンサ(センサユニット26)が設けられ、ここから水栓本体の内部まで配線(電線コード29)が配設されている。
【0005】
この従来技術は、水栓装置の組み立てに際し、電線コードが捻じれることなく所定の位置に配線できるようにするものである。
【0006】
具体的には、非接触で人体を検知して吐水操作を行わせるセンサユニットをスパウトホルダの先端部に設け、ここから延出する配線をスパウトホルダの内部を通して水栓本体の下方に設けた電磁弁等にまで配設している。
【0007】
配線は、スパウトホルダの内部に挿通されたホースガイドとスパウトホルダの内面との間に配設される。ホースガイドは合成樹脂板を丸め、縁部どうしが重なるようにして形成した略円筒状の部材である。この縁部どうしの重なり部には段差が生じ、配線は、この段差部に配設されることで、スパウトホルダの内部における位置が安定化される。
【0008】
配線の途中には、直方体状のロック部材が設けられており、スパウトホルダの基端部に設けられた筒状の保持部材に固定される。これにより、スパウトホルダの内部に配設された配線の姿勢が安定し、スパウトホルダを水栓本体に取り付ける際に、配線に捻じれが生じるのを防止できるとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017-166266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来より、引出し・格納可能なスパウトを備える水栓装置においては、例えばスパウトの引出し・格納操作に際してスパウトホルダの内部に水が浸入するのを抑制すべきとの課題がある。スパウトホルダの内部に浸入した水が、水栓本体の内部や台所シンクの下にまで至るのを避けるためである。特に、上記従来技術のようにスパウトホルダの内部に配線を有するものでは止水処理がより困難となる。
【0011】
その点、当該従来技術のスパウトホルダはグースネック形状であり、スパウトとの接続部は、グースネックの頂点から大きく下方に下がった位置にある。よって、スパウトホルダの先端部からの水の浸入はそれ程考慮する必要がない。現に明細書中の記載および図面には、スパウトホルダの先端には特段の部材は設けられていない。
【0012】
しかしながら、スパウトが引出し・格納可能である場合、当該従来技術のように、スパウトの引出し方向が下方に限定されると利便性に欠ける場合がある。また、グースネックが大きく上方に突出する場合、当該水栓装置を設置できる台所環境が限定される場合もある。このような不都合を解消するためには、スパウトホルダの高さが目立たないものや、スパウトの引出し方向が上向きのものが求められる場合がある。
【0013】
その場合、スパウトホルダの端部からの浸水対策が必須となり、特に、内部に配線を有する自動水栓等においては浸水防止効果を高める必要があるが、従来からこのような要望を満たす自動水栓は実現されていない。このように従来から、引出し・格納可能なスパウトを備え浸水防水機能に優れた自動水栓の提供が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(特徴構成)
本発明に係る自動水栓の特徴構成は、
水栓本体と、
前記水栓本体から突出形成された筒状のスパウトホルダと、
引出し可能なホースと接続され前記スパウトホルダの先端部に差込保持されるスパウトと、を備え、
前記スパウトホルダに、自動吐水用のセンサと、前記センサから前記水栓本体に至る配線と、前記ホースの通路を形成する通路部材と、前記配線との干渉を避ける通線部を備えつつ前記通路部材と前記スパウトホルダの内面との隙間を封止する封止部材と、が設けられ、
前記スパウトホルダにおける前記封止部材よりも先端側に、前記スパウトホルダの内部に溜まった水の少なくとも一部を排水する排水部が形成され、前記通線部が前記排水部よりも高位置に設けられている点に特徴を有する。
【0015】
(効果)
本構成の自動水栓は、スパウトが引出し可能であって、スパウトホルダに自動吐水用のセンサを備えている。スパウトが引出し可能である場合、スパウトホルダの端部から内部に水が浸入し易い。そこで、本構成の自動水栓では、スパウトホルダの内部に設けられたホース挿通用の通路部材とスパウトホルダの内面との間に封止部材を設けてある。
【0016】
本構成では、自動吐水用のセンサを設けてあり、このセンサからは水栓本体に向けて配線が延出している。そのため、封止部材にはこの配線との干渉を避けるための通線部が設けられている。
【0017】
ただし、この通線部は配線と封止部材との干渉を避けるのが目的であり、干渉を避けつつ十分な密封性を担保することが困難である。そこで本構成では、仮に、スパウトホルダの先端部に水が溜まる場合でも、この水の少なくとも一部が排水される排水部を設けると共に、通線部の位置を排水部よりも高い位置に設定している。これにより、水が通線部を介してスパウトホルダの内部に浸入するのを大幅に抑制することができる。
【0018】
(特徴構成)
本発明に係る自動水栓においては、前記排水部が、前記スパウトホルダの軸心の個々の部位を通る鉛直線と前記スパウトホルダの内面とが交差して得られる下側の交点のうち最も高い位置にある前記交点とされる構成が含まれる。
【0019】
(効果)
スパウトホルダの形状は、スパウトの引出し・格納操作の利便性やデザイン外観に鑑みて様々に設定される。そのため、封止部材から先端側の部位と封止部材との高低差が僅かな場合がある。そのような場合には、スパウトホルダに特段の加工を行うことなく排水することが可能となる。
【0020】
つまり、封止部材から先端側に水が溜まる場合でも、当該水がスパウトホルダの先端の開口から排出可能であり、且つ、封止部材の一部が貯水の水面よりも高い位置に設定できる場合がある。
【0021】
この場合、貯水のレベルが最高位置となる部位は、前記スパウトホルダの軸心の個々の部位を通る鉛直線とスパウトホルダの内面とが交差して得られる下側の交点のうち最も高い位置にある交点の位置となる。よって、通線部をこの交点よりも高所に設けることで、スパウトホルダの構造を複雑化することなく、水がスパウトホルダの内部に浸入することの抑制が可能となる。
【0022】
(特徴構成)
本発明に係る自動水栓においては、前記排水部が、前記スパウトホルダの軸心の個々の部位を通る鉛直線と前記スパウトホルダの内面とが交差して得られる下側の交点のうち最も高い位置にある前記交点と、前記封止部材と、の間の位置において、前記スパウトホルダの壁部に貫通形成された第1連通部とされてもよい。
【0023】
(効果)
スパウトホルダの形状によっては、封止部材から先端側の高さが過大であり、スパウトホルダの開口部の高さが封止部材の高さを上回る場合がある。その場合には、貯水の可能性のある部位、即ち、スパウトホルダの軸心の個々の部位を通る鉛直線とスパウトホルダの内面とが交差して得られる下側の交点のうち最も高い位置にある交点と、封止部材と、の間の部位につき、通線部よりも低い位置に第1連通部を形成する。第1連通部は、スパウトホルダの壁部を貫通する状態に設ける。
【0024】
これにより、スパウトホルダの内部排水効果が高まり、通線部を介した水のスパウトホルダの奥部への浸入がより効果的に抑制される。
【0025】
(特徴構成)
本発明に係る自動水栓においては、前記スパウトを差込保持する保持部および前記ホースを摺動可能に挿通するガイド面を備えたジョイント部材が、前記通路部材と離間した状態で前記スパウトホルダの先端に固定されていると好都合である。
【0026】
(効果)
ホースの引出し・格納を円滑に行うためには、本構成のように、ホースを摺動可能に挿通するガイド面をジョイント部材に形成すると好都合である。ガイド面を設けることで、例えばスパウトをスパウトホルダに保持させる際に、ホースをガイド面に沿って格納することでスパウトの姿勢が自然と保持姿勢に近付き、スパウトの保持作業が容易となる。
【0027】
このような構成では、ホースとガイド面との隙間がそれ程広くはなく、水が当該隙間からスパウトホルダの内部に浸入するのを防止する効果が高まる。ただし、スパウトホルダを清掃するために、ジョイント部材に向けて散水する場合もあるため、ジョイント部材の内部への水の浸入を完全に防止することはできない。
【0028】
よって、本構成では、ジョイント部材と通路部材とを離間した状態に設けた。これにより、水が仮にジョイント部材の内部に浸入した場合でも、水をジョイント部材の背面やスパウトホルダの内面に沿って下方に誘導し、通路部材の内部に水が浸入することや、通路部材の外面に沿って通線部に水が到達することを防止している。
【0029】
(特徴構成)
本発明に係る自動水栓においては、前記通路部材のうち前記ジョイント部材に対向する端部領域の少なくとも最下部に、前記通路部材の内面と外面とに亘る第2連通部を形成しておくことができる。
【0030】
(効果)
通路部材の端部領域に、その内面と外面とに亘る第2連通部を形成することで、仮に、水が通路部材の内部に浸入した場合でも、水を通路部材の外部に排出する機会を設けることができる。本構成によれば、水は通路部材の外部に排出され易くなり、一旦、通路部材の外部に排出された水は、適切な高さに設定された通線部の効果に基づいて、スパウトホルダの先端開口あるいは第1連通部からスパウトホルダの外部に排出される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態に係る自動水栓の外観を示す斜視図
図2】第1実施形態に係るスパウトホルダの内部構造を示す断面図
図3】第1実施形態に係るスパウトホルダの内部構造を示す分解斜視図
図4】第2実施形態に係る自動水栓の外観を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔第1実施形態〕
(概要)
本発明の自動水栓Uは、水栓本体Bに対してスパウトS2の引出し・格納操作が可能なものであり、当該操作に際して、水栓本体Bの内部への水の浸入を極力防止するものである。以下には、本発明の自動水栓Uに係る第1実施形態を図1乃至図3と共に示す。
【0033】
図1および図2に示すように、本実施形態に係る自動水栓Uは、水栓本体Bと、水栓本体Bから突出形成されたスパウトホルダS1と、引出し可能なホースHが接続されスパウトホルダS1の先端部に差込保持されるスパウトS2と、を備えている。
【0034】
スパウトホルダS1およびスパウトS2は両者を接続した状態で略半円弧状の外観を有する。自動水栓Uを設置した状態で、スパウトS2とスパウトホルダS1の接続部は、円弧のちょうど頂上部付近に位置する。
【0035】
スパウトS2の先端には、例えば、浄水と原水との切り替え、および、直流水とシャワー水との切り替え等が可能な吐出部S3が設けられている。
【0036】
スパウトホルダS1の先端には、ホースHを挿通しつつスパウトS2を保持するジョイント部材1が設けられる。また、スパウトホルダS1の内部には、ホースHの通路を形成する通路部材2が設けられる。また、スパウトホルダS1の側面には自動吐水用のセンサ3が配置される。ここには、例えば、赤外線センサや静電容量式の近接センサ等が用いられ、使用者が手を近付けることで自動吐水が行われる。センサ3からはスパウトホルダS1の内部を介して水栓本体Bに至る配線4が延出している。
【0037】
(ジョイント部材)
図2および図3に示すように、スパウトホルダS1の先端開口S1aにはジョイント部材1が取り付けてある。ジョイント部材1の先端には凸状の保持部11が形成されており、スパウトS2の筒状の端部と嵌合する。保持部11の外周面には、環状の溝部12が形成してあり、スパウトS2に設けたスナップジョイントの係合部材(図外)が係合する。
【0038】
保持部11の中心部には、ホースHの外径に合わせて内径が設定された円筒状のガイド面13が形成されている。ガイド面13を設けることで、例えばスパウトS2をスパウトホルダS1に保持させる際に、ホースHをガイド面13に沿って格納することでスパウトS2の姿勢が自然と保持姿勢に近付き、スパウトS2の保持作業が容易となる。
【0039】
ガイド面13とホースHとの隙間は、最も広くなる部位で例えば0.5~2mmに設定する。これにより、ホースHの円滑な引出し・格納を可能としつつ、水の浸入を大幅に抑制している。この隙間寸法は、例えば、スパウトホルダS1の端面等を清掃する際に水を掛けた場合でも、水の浸入が防止できる程度に設定してある。
【0040】
ガイド面13に対して保持部11の先端側の内面には内径を僅かに広くしてホースHの延出方向を規制する拡径部14が形成してある。これにより、ガイド面13に対するホースHの角度を所定角度に留めることができ、ガイド面13におけるホースHの引掛りを防止している。
【0041】
保持部11の基端部には拡径した鍔部15が設けてある。鍔部15がスパウトホルダS1の先端に当接することでジョイント部材1の固定位置が規定される。鍔部15を挟んで保持部11と反対側には、スパウトホルダS1に対する回転姿勢を決める凸部16aが形成されている。スパウトホルダS1の先端開口S1aの一部には、この凸部16aが係合する凹部16bが設けてある。これらの構成により、ジョイント部材1をスパウトホルダS1に取り付けたとき、保持部11の突出方向が適切に設定される。ジョイント部材1の下面には雌ネジ部17aが形成してあり、スパウトホルダS1の該当位置に形成した孔部17bを介してネジ部材17cを螺合させて固定する。
【0042】
(通路部材)
スパウトホルダS1の内部には、ホースHの通路を規定する通路部材2が配置してある。図2および図3に示すように、通路部材2はスパウトホルダS1の形状に応じた曲率を有する筒状の部材である。この通路部材2の端部は、さらに奥側に配置される第2通路部材5に挿入されて位置固定される。
【0043】
図2に示すように、通路部材2はジョイント部材1とは離間した状態に取り付けられる。こうすることで、仮にジョイント部材1の内部に水が浸入した場合でも、水をジョイント部材1の背面やスパウトホルダS1の内面に沿って下方に誘導することができ、通路部材2の内部への水の流入を防止することができる。
【0044】
通路部材2のうち、ジョイント部材1に近い側の端部には、複数の窓部21が形成してある。そのうちの一つが、通路部材2の端部の縁部に沿って複数設けた第1窓部21aである。この第1窓部21aは、通路部材2の内部に浸入した水を外部に排出するものである。特に下方に位置する第1窓部21aは、通路部材2の内部に浸入した水を重力により下方外部に排出する。一方、上方に位置する第1窓部21aは、ジョイント部材1とホースHとの隙間から通路部材2の内部に勢いよく水が流入した場合に、通路部材2の内面に衝突して通路部材2の内部に跳ね返ろうとする水を外部に通過させるものである。
【0045】
また、通路部材2の縁部の最下位置には、ややサイズが大きく、通路部材2の長手方向に沿った第2窓部21bが形成してある。本構成であれば、ジョイント部材1の背面を伝って下方に流下した水を通路部材2の外部下方に効率よく流下させることができる。
【0046】
第2窓部21bの内部には、通路部材2の一部から弾性を有する腕部22を突出形成すると共に、腕部の先端に下向きの爪部23が形成してある。この爪部23は、スパウトホルダS1の下方の壁部に貫通形成した第2連通部P2に係合する。第2連通部P2については後述する。
【0047】
(封止部材)
図2および図3に示すように、通路部材2の奥側端部の外周面には、環状の封止部材6が取り付けられる。この封止部材6は、通路部材2とスパウトホルダS1との隙間をシールするものであり、通路部材2の外周部を介して水が水栓本体Bの側に流入するのを防止するものである。
【0048】
封止部材6はスパウトホルダS1の曲げ中心を通る平面上に収まるように配置される。つまり、設置個所におけるスパウトホルダS1の軸心Xに対して直角な平面内に配置される。このように配置することで、封止部材6がスパウトホルダS1と通路部材2とによって圧縮変形される程度を周方向に沿って均等化することができる。よって、特定箇所において水の封止効果が低下するなどの不都合が生じない。
【0049】
ただし、封止部材6の所定箇所には、センサ3の配線4を敷設するための通線部61を形成してある。これは、封止部材6のうち周方向に沿った一部の個所に設けた凹状の部位である。通線部61の寸法は、例えば、周方向に沿った切欠きの幅を5~6.5mm程度に構成する。この寸法であれば、配線4によって通線部61が押し広げられることがない。封止機能は、後述の如く通線部61の設置高さによって担保されるから、当該部位における配線4との密着性は必須ではない。ただし、配線4との接触によって通線部61が僅かに拡大し、配線4との密着性を高めるものであっても良い。
【0050】
この封止部材6は、水圧等の影響を受けない。よって、外周部には変形し易いリップ部分62が設けてあり、スパウトホルダS1に対して線状に当接すると共に、この当接状態が長く維持されるようにしてある。また、組み立ての際に、封止部材6を先にスパウトホルダS1の内部に設置し、後からの通路部材2の挿入を容易にすべく、断面形状を角ばったものとしている。さらに、通路部材2の挿入を容易にするために、図3に示すように全周に亘る内周面に傾斜面63を形成してある。
【0051】
通線部61を設ける位置は高いほど封水機能が発揮されるが、図2に示すように、少なくとも、封止部材6の取付姿勢を水栓本体BおよびスパウトホルダS1が設置された状態で、スパウトホルダS1の先端開口S1aにおける最下レベルLよりも高くに設定する。これにより、スパウトホルダS1の先端部に水が溜まる場合であっても、スパウトホルダS1の先端開口S1aが排水部となり、先端開口S1aの最下位置から水が排出される。この結果、通線部61を介してスパウトホルダS1の奥部に水が浸入することを防止することができる。
【0052】
尚、この例とは別に、スパウトホルダS1の先端開口S1aが、スパウトホルダS1の最高位置になく、封止部材6と先端開口S1aとの間の位置が最高位置となる場合がある。この場合、排水部は、スパウトホルダS1の軸心Xの個々の部位を通る鉛直線とスパウトホルダS1の内面とが交差して得られる下側の交点のうち最も高い位置にある交点に設定されることとなる。
【0053】
通線部61の高さは、通路部材2の長さやスパウトホルダS1の形状あるいは延出角度等によっても変化する。満たすべき要件は、水が通線部61からスパウトホルダS1の内部に浸入するよりも先に、先端開口S1aの最下位置など通線部61よりも低位置にある部位から排出されることである。そのためには、封止部材6の設置される部位においてスパウトホルダS1の軸心Xと水平方向とのなす角度のうち小さい方の角度が30度以下のスパウトホルダS1であれば、通線部61の高さ設定が容易となる。
【0054】
封止部材6の材質としては、シール性及び組立性が重要となるため弾性体が好ましい。シール性の観点から、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、NBR(ニトリルゴム)、TPE(熱可塑性エラストマー)、PE(ポリエチレン)が好ましい。このうち、幅広いシールを実現しコストを削減するためにNBRとした。
【0055】
尚、このようにスパウトホルダS1の先端部に水が溜まる事態をさらに回避すべく、図2に示すように、スパウトホルダS1のうち封止部材6よりも先端側に第1連通部P1および第2連通部P2を設けてある。
【0056】
第1連通部P1は、スパウトホルダS1の壁部のうち先端開口S1aと封止部材6との間であって封止部材6に近接した最下部に、下方に貫通する状態に設けてある。第1連通部P1の孔径は、例えば3~5mmに設定する。これにより確実な排水機能が得られて好都合である。
【0057】
仮に、この例とは別に、スパウトホルダS1のうち先端開口S1aと封止部材6との間の位置での高さが最高位となる場合等には、第1連通部P1の設置位置は、貯水の可能性のある部位の何れかとなる。即ち、スパウトホルダS1の軸心Xの個々の部位を通る鉛直線とスパウトホルダS1の内面とが交差して得られる下側の交点のうち最も高い位置にある交点と、封止部材6と、の間の部位であって、通線部61よりも低い位置に設けるとよい。
【0058】
図2に示すように、第1連通部P1に対して先端開口S1aの側には、さらに別の第2連通部P2を設けてある。この第2連通部P2は、主に、上記通路部材2の爪部23が係合するものであるが、爪部23の外径に比べて孔径寸法を大きく形成してある。これにより、第2連通部P2にも排水機能を持たせ、封止部材6の近傍の水位が通線部61に達してスパウトホルダS1の奥部に浸入することを確実に防止している。
【0059】
〔第2実施形態〕
本発明の自動水栓Uは、図4に示すように、スパウトS2およびスパウトホルダS1が直線状のものに適用することもできる。
【0060】
スパウトホルダS1が直線状の場合、通路部材2の長さによっては、封止部材6の通線部61と先端開口S1aの最低位置との高低差が大きくなる。よって、封止部材6に設ける通線部61は環状領域の頂部近傍に設けるのが良い。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係る自動水栓は、吐水制御用のセンサを備えたスパウトホルダに対して引出し・格納が可能なスパウトを備え、スパウトホルダの内部への水の浸入防止が求められる自動水栓に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 ジョイント部材
11 保持部
13 ガイド面
2 通路部材
3 センサ
4 配線
6 封止部材
61 通線部
B 水栓本体
H ホース
L 最下位置
P1 第1連通部
P2 第2連通部
S2 スパウト
S1 スパウトホルダ
S1a 先端開口
U 自動水栓
図1
図2
図3
図4