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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039630
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】覆蓋の製造方法および覆蓋
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/20 20060101AFI20220303BHJP
   E03F 5/10 20060101ALI20220303BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20220303BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20220303BHJP
   B29C 70/48 20060101ALI20220303BHJP
   B29C 70/68 20060101ALI20220303BHJP
   E02D 29/14 20060101ALI20220303BHJP
   B29K 101/10 20060101ALN20220303BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20220303BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20220303BHJP
【FI】
B29C39/20
E03F5/10 Z
B29C39/24
B29C70/16
B29C70/48
B29C70/68
E02D29/14 E
B29K101:10
B29K105:08
B29L9:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144763
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(71)【出願人】
【識別番号】520331143
【氏名又は名称】株式会社タジマクリエイト
(71)【出願人】
【識別番号】592101149
【氏名又は名称】三山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158665
【弁理士】
【氏名又は名称】奥井 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100206829
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 悟
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 秀浩
(72)【発明者】
【氏名】田島 武
(72)【発明者】
【氏名】竹野 義英
(72)【発明者】
【氏名】高橋 馨祐
【テーマコード(参考)】
2D063
2D147
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
2D063DA11
2D063DA30
2D147BB21
4F204AA36
4F204AD16
4F204AD17
4F204AD18
4F204AD35
4F204AG02
4F204AG03
4F204AH81
4F204EA03
4F204EB01
4F204EB11
4F204EF05
4F204EF27
4F204EK13
4F204EK17
4F205AA36
4F205AD16
4F205AD17
4F205AD18
4F205AD35
4F205AG02
4F205AG03
4F205AH81
4F205HA06
4F205HA12
4F205HA27
4F205HA33
4F205HA37
4F205HB01
4F205HB11
4F205HC04
4F205HF05
4F205HK04
4F205HK05
4F205HL11
4F205HM02
4F205HT12
(57)【要約】
【課題】強度が高く、かつ軽量であり、耐食性の良好な覆蓋の製造方法および覆蓋を提供する。
【解決手段】覆蓋は、下型と上型が形成する成型空間に第1のガラスマット、第1の多軸連続ガラス繊維シート、板状の紙製ハニカムコアと該コアのセルに充填された複数の発泡粒子が成形された3次元網目状構造の空隙部を有する発泡粒子成形体との複合体、第2の多軸連続ガラス繊維シートおよび第2のガラスマットを敷設し、次いで、下型と下型を型締めした後に下型と上型が形成する成型空間を減圧して、該成型空間に熱硬化性樹脂の液体原料を注入し、充填された熱硬化性樹脂を硬化させて製造される。
覆蓋は、複合体の周囲にガラス繊維強化プラスチックの層が形成され、複合体は発泡粒子成形体の3次元網目状構造の空隙部に充填された樹脂が硬化しするとともに、ガラス繊維強化プラスチックの層と該複合体とが多軸連続ガラス繊維シートを介して一体となっている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型と上型が形成する成型空間に樹脂を注入して得られる成型物から覆蓋を製造する方法であって、
下型と上型が形成する成型空間が平板状の立体形状であり、
下型のキャビティーの底面と側面を覆い、縁部が該キャビティーからはみ出すように第1のガラスマットを下型のキャビティーに敷設する工程、
第1のガラスマットが下型のキャビティー内に形成する凹部に、第1の多軸連続ガラス繊維シートを敷設する工程、
第1の多軸連続ガラス繊維シートの上面に、板状の紙製ハニカムコアと該コアのセルに充填された複数の発泡粒子が成形された3次元網目状構造の空隙部を有する発泡粒子成形体との複合体を敷設する工程、
該複合体の上面に第2の多軸連続ガラス繊維シートを敷設する工程、
第2の多軸連続ガラス繊維シートの上面に第2のガラスマットを敷設する工程、
上記の下型の上に上型を載置して型締めした後に下型と上型が形成する成型空間を減圧し、次いで、該成型空間に熱硬化性樹脂の液体原料を注入する工程、
充填された熱硬化性樹脂の液体原料を硬化する工程、
および硬化した成型物を離型する工程
を含むことを特徴とする覆蓋の製造方法。
【請求項2】
離型された前記成型物を切断し、切断により形成される切り口に合成樹脂を塗布する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の覆蓋の製造方法。
【請求項3】
前記下型のキャビティーの底面に凹凸模様が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の覆蓋の製造方法。
【請求項4】
板状の紙製ハニカムコアと該コアのセルに充填された複数の発泡粒子が成形されて形成された3次元網目状構造の樹脂硬化部を有する発泡粒子成形体との複合体の周囲にガラス繊維強化プラスチックの層が形成され、かつガラス繊維強化プラスチックの層と該複合体とが多軸連続ガラス繊維シートを介して一体的に結合している成型物からなることを特徴とする覆蓋。
【請求項5】
板状の紙製ハニカムコアと該コアのセルに充填された複数の発泡粒子が成形されて形成された3次元網目状構造の樹脂硬化部を有する発泡粒子成形体との複合体の周囲にガラス繊維強化プラスチックの層が形成され、かつガラス繊維強化プラスチックの層と該複合体とが多軸連続ガラス繊維シートを介して一体的に結合している成型物を厚さ方向に切断し、切り口に合成樹脂を塗布してなることを特徴とする覆蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水場や下水処理場などの水処理施設の開口部に設置される覆蓋の製造方法および覆蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水処理施設等の開口部には、防臭や転落防止、危険物の投入防止などを目的として、覆蓋が設置されている。
図10に水処理施設で使用される一般的な把手付きの覆蓋の平面図を示す。
この図で19は覆蓋、20は把手である。把手20は、通常、覆蓋19の2ヶ所に取り付けられ、作業者が覆蓋19を運搬したり、水処理施設の開口部の側に覆蓋を取り外したりするときなどに使用されるものである。把手20はリベットなどにより覆蓋に取り付けられる。把手20は、必要に応じて取り付けられるものであり、必須のものではない。覆蓋19は、通常、水処理施設の開口部に設けられた受け枠(図示省略)に載置される。また、覆蓋19にはロック装置(図示省略)を取り付けて、無断で覆蓋を受け枠から開けることがないようにすることもある。なお、図10に示される覆蓋は、上面に凹凸模様が形成されている。
【0003】
従来は、覆蓋には鉄板やFRPなどの合成樹脂製のものが使用されてきた。
鉄板製の覆蓋は、高強度ではあるが、重量があり施設の点検時には蓋の開閉などの取扱いが困難であり、耐食性にも難がある。FRP製の覆蓋は、鉄板製のものに比べて比較的軽量であり耐食性も優れているが、作業員らの人が覆蓋の上に乗るとたわみが大きく、実用上問題がある。
【0004】
そこで、上記の問題点を解決する覆蓋として、2枚のFRP製成形板の間隙に、硬質ポリウレタンフォーム材料を注入発泡して得られたサンドイッチパネルから所定のサイズに切り出し、切り口等発泡体面を合成樹脂で塗布することを特徴とする覆蓋が開発された(特許文献1)。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の覆蓋においても、厚さが30mm程度では、作業者などの人が上に乗った場合にたわみが大きく、このたわみを小さくするにはFRP製成形板の厚さをさらに厚くするする必要があり、覆蓋の重量はその分重くなり、また、価格も高価にならざるをえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特許文献1 特開平7-259111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みて、耐食性が良好で、強度が高く、軽量な覆蓋の製造方法および覆蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。
[1]下型と上型が形成する成型空間に樹脂を注入して得られる成型物から覆蓋を製造する方法であって、下型と上型が形成する成型空間が平板状の立体形状であり、下型のキャビティーの底面と側面を覆い、縁部が該キャビティーからはみ出すように第1のガラスマットを下型のキャビティーに敷設する工程、第1のガラスマットが下型のキャビティー内に形成する凹部に、第1の多軸連続ガラス繊維シートを敷設する工程、第1の多軸連続ガラス繊維シートの上面に、板状の紙製ハニカムコアと該コアのセルに充填された複数の発泡粒子が成形された3次元網目状構造の空隙部を有する発泡粒子成形体との複合体を敷設する工程、該複合体の上面に第2の多軸連続ガラス繊維シートを敷設する工程、第2の多軸連続ガラス繊維シートの上面に第2のガラスマットを敷設する工程、上記の下型の上に上型を載置して型締めした後に下型と上型が形成する成型空間を減圧し、次いで、該成型空間に熱硬化性樹脂の液体原料を注入する工程、充填された熱硬化性樹脂の液体原料を硬化する工程、および硬化した成型物を離型する工程を含むことを特徴とする覆蓋の製造方法。
[2]離型された前記成型物を切断し、切断により形成される切り口に合成樹脂を塗布する工程を含むことを特徴とする[1]に記載の覆蓋の製造方法。
[3]前記下型のキャビティーの底面に凹凸模様が形成されていることを特徴とする[1]または[2]に記載の覆蓋の製造方法。
[4]板状の紙製ハニカムコアと該コアのセルに充填された複数の発泡粒子が成形されて形成された3次元網目状構造の樹脂硬化部を有する発泡粒子成形体との複合体の周囲にガラス繊維強化プラスチックの層が形成され、かつガラス繊維強化プラスチックの層と該複合体とが多軸連続ガラス繊維シートを介して一体的に結合している成型物からなることを特徴とする覆蓋。
[5]板状の紙製ハニカムコアと該コアのセルに充填された複数の発泡粒子が成形されて形成された3次元網目状構造の樹脂硬化部を有する発泡粒子成形体との複合体の周囲にガラス繊維強化プラスチックの層が形成され、かつガラス繊維強化プラスチックの層と該複合体とが多軸連続ガラス繊維シートを介して一体的に結合している成型物を厚さ方向に切断し、切り口に合成樹脂を塗布してなることを特徴とする覆蓋。
【発明の効果】
【0009】
本発明の覆蓋は、板状の紙製ハニカムコアと該コアのセルに充填された複数の発泡粒子が成形された3次元網目状構造の空隙部を有する発泡粒子成形体との複合体を多軸連続ガラス繊維シートで挟み、さらにその周囲をガラスマットに包んで、樹脂を注入して成型することにより、発泡粒子成形体の3次元網目状構造の空隙部に樹脂が充填されて硬化している複合体の周囲に、ガラスマットに充填されて硬化して形成されたガラス繊維強化プラスチックの層が形成されるとともに、該ガラス繊維強化プラスチックの層は多軸連続ガラスシートを介して複合体と一体的に結合したものとなり、耐食性が良好であるのみならず、強度が高く、かつ軽量である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は、下型、下型に敷設される材料(ガラスマット、多軸連続ガラス繊維シート、ハニカムコアとコア内に形成された発泡粒子成形体との複合体)および上型を模式的に示す。(b)は(a)の一部の部位を拡大した図を示す。
図2】多軸(4軸)連続ガラスシートの構造を模式的に示す。
図3】板状の紙製ハニカムコアの斜視図を示す。
図4】(a)は板状の紙製ハニカムコアと該コアのセルに充填された複数の発泡粒子が成形された3次元網目状構造の空隙部を有する発泡粒子成形体との複合体(板状複合体)の斜視図を示す。(b)は(a)の一部の部位を拡大した図を示す。
図5】板状複合体が敷設されている下型の斜視図を示す。
図6】第1のガラスマット、第1の多軸連続ガラス繊維シート、発泡粒子成形体および第2の多軸連続ガラスシートが敷設された下型の断面図を示す。
図7】下型、成型物の材料および吸引パイプと注入パイプが設けられた上型を示す。
図8】下型と上型が形成する成型空間において硬化した成型物を模式的に示す。
図9】型から離型された成型物の断面を模式的に示す。
図10】一般的な覆蓋の平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の覆蓋は、下型と上型からなる一対の成形型内に成型物の材料を設置し、型を閉締した後、樹脂を注入して成型物の材料に含浸させて成型して製造される。
以下、図面を援用し、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
図1(a)に、成型空間を形成する下型1と上型2、この成型空間に配置される成型物の材料を示した。
成型空間に配置される成型物の材料は、第1のガラスマット3、第1の多軸連続ガラス繊維シート4、板状の紙製ハニカムコアと該コアのセル内の3次元網目状構造の空隙部を有する発泡粒子成形体との複合体5、第2の多軸連続ガラス繊維シート6および第2のガラスマット7である。
図1では、上型2が下型1の上方に位置しており、下型1と上型2を型締めする前の状態が示されている。
なお、図面番号0は、下型1の表面に設けられた弾性材料からなるパッキンを示している。パッキン0は、後述するように、下型1と上型2を型締めしたときに下型1と上型2の合わせ面にシール効果をもたらす部材である。
【0013】
ガラスマットとは、短く切ったガラス繊維をランダムに重ねてマット状(布状)に加工したものであり、繊維強化プラスチック(FRP)の基材とすることができるものである。ガラスマットは、種々の寸法のものが市販されており容易に入手できるものである。図1から分かるように、2枚のガラスマット、すなわち第1のガラスマット3および第2のガラスマット7が下型1に配置される。
【0014】
多軸連続ガラス繊維シートは、連続する長いガラス繊維を複数の方向に配列してシートにしたものであり、1シートが多軸の繊維で構成されており、複数の方向に対して強度が高く、補強材として好適である。例えば、4軸連続ガラス繊維シートは、四方向 0°、-20~160°、+20~+160°、90°の繊維を重ねて1シートにしたものである(図2参照)。
多軸連続ガラス繊維シートとしては2軸以上の多軸のものがあるが、蓋体には4軸連続ガラス繊維シートが望ましい。
多軸連続ガラス繊維シートは市販されており、容易に入手することができる。
図1から分かるように、2枚の多軸連続ガラスシート、すなわち第1の多軸連続ガラス繊維シート4および第2の多軸連続ガラス繊維シート6が配置される。
【0015】
板状の紙製ハニカムコアと該コアのセル内の3次元網目状構造の空隙部を有する発泡粒子成形体との複合体(以下、「板状複合体」という)5は、板状の紙製ハニカムコアのセルに複数の樹脂製の発泡粒子を充填し、発泡粒子の樹脂の融点前後に加熱することにより、セル内の複数の発泡粒子を融着させ3次元網目状構造の空隙部を形成させた発泡粒子成形体とし、さらに、その側面を切断して除いたものであり、紙製ハニカムコアと発泡粒子成形体の複合体である。その形状は紙製ハニカムコアと同じ厚みを持つ板状である。
【0016】
図3に板状の紙製ハニカムコア8を示した。同図において、9、10はそれぞれ、該ハニカムコアのセル、セル壁である。そして、図4(a)に板状複合体5を、図4(b)にその一部を拡大した図を示した。
なお、ハニカムコアは、狭義では断面形状が正六角形のセルを隙間なく並べた構造のものを指しているが、ここでは広義のものを指しており、断面形状が正六角形のものに限らず台形や三角形などの正六角形以外のセルを隙間なく並べた構造のものをも含むものである。図3では、断面形状が台形のセルを隙間なく並べたものが示されている。
紙製ハニカムコア8のセル9内で成形された融着後の発泡粒子成形体には、3次元網目状の空隙部12が形成されている〔図4(b)参照〕。この空隙部12には、後述するように、成型時に熱硬化性樹脂が充填されることになる。
板状複合体5においては、紙製ハニカムコア8のセル壁10に発泡粒子11の樹脂が僅かながら浸透しているので、発泡粒子成形体がハニカムコアのセル壁10から脱落することはない。
【0017】
紙製ハニカムコア8のセル9内の発泡粒子11の樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましく、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブチレンサクシネート,ポリエチレンテレフタレート,ポリ乳酸等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などを挙げることができる。
【0018】
板状複合体5の発泡粒子成形体の空隙率(発泡粒子成形体に対して3次元網目状構造の空隙部12が占める割合)は3~30体積%が好ましい。後述するように、網目状構造の空隙部には熱硬化性樹脂が充填(含浸)されるが、空隙率が3体積%未満であると、含浸(充填)できる熱硬化性樹脂の量が少なく、十分な強度の成型物や覆蓋を得ることができない。また、空隙率が30体積%を超えると、充填される熱硬化性樹脂の量が多くなり、軽量な覆蓋を得ることができない。また、発泡粒子の粒径は、熱硬化性樹脂の充填のし易さや発泡成形板と熱硬化性樹脂との複合体の強度向上の点から1.0~3.5mmが好ましい。
このような板状複合体5は、株式会社ジェイエスピーなどの発泡プラスチックのメーカーから市販されている。
【0019】
本発明の覆蓋は、以下に示す工程1~8又は工程1~9からなる製造工程を経て製造される。
<工程1について>
第1のガラスマット3は、下型1の底面及び側面に沿うように、かつ、図1図5~7に示されるように、その縁部が下型1のキャビティーの周縁からはみ出るように、敷設される。したがって、敷設された第1のガラスマット3には、下型1のキャビティーとほぼ同じ形状の凹部が形成される。
後述するように、第1のガラスマット3には熱硬化性樹脂が充填(含浸)され、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の層を形成することになる。
【0020】
<工程2について>
次に、図1に示すように、この第1のガラスマット3の凹部に第1の多軸連続ガラス繊維シート4を敷設する。
第1の多軸連続ガラス繊維シート4の厚みは薄いので、上記の凹部は、少し底部面が上昇するが、大部分は維持されたままである。敷設される第1の多軸連続ガラス繊維シート4の平面形状は、第1のガラスマット3の凹部の平面形状と同じである。
【0021】
<工程3について>
次に、この第1のガラスマット3の凹部に敷設された第1の多軸連続ガラス繊維シート4の上面に板状複合体5を敷設する。
敷設される板状複合体5の平面形状は、第1の多軸連続ガラス繊維シート4と同じであり、したがって第1のガラスマット3の凹部の平面形状とも同じである。
【0022】
<工程4について>
次に、この敷設された板状複合体5の上にさらに第2の多軸連続ガラス繊維シート6を敷設する。
第2の多軸連続ガラス繊維シート6は、板状複合体5の全面に敷設される。
【0023】
<工程5について>
第1のガラスマット3の凹部の全域に敷設された板状複合体5の上に敷設された第2の多軸連続ガラス繊維シート6の上面に、該多軸連続ガラス繊維シート6の全面を覆うように、第2のガラスマット7が敷設される(図1参照)。
<工程6について>
以上のように、下型1のキャビティーに、第1のガラスマット3、第1の多軸連続ガラス繊維シート4、板状複合体5、第2の多軸連続ガラス繊維シート6、第2のガラスマット7の敷設が完了すると、上型2を下型1に被せて押圧して型締めする。型締めされた状態で、下型1と上型2は、平板状の立体形状を有する成型空間を形成している。そして、真空ポンプなどの接続されている減圧吸引用のバルブ(図示省略)を開いて、図7に示すように、上型2に設けた減圧吸引パイプ13から成型空間を減圧する。なお、型締めされたときは、パッキン0が押圧されて変形し、下型1と上型2の合わせ面がシールされ、成形空間が確実に減圧される。
熱硬化性樹脂の液体原料を充填する際には、減圧度が成型空間で均一にするため、減圧は、-0.01~-0.1MPa(G)の範囲とすることが望ましい。なお、(G)はゲージ圧を意味する。
【0024】
減圧吸引パイプ13は、上型2の長手方向および幅方向の中央部に1つか2つ以上設ける。該パイプ13を2つ設ける場合は、上型の長手方向の中央部であって、幅方向に間隔を置いて設ければよい。図7では、上型の長手方向の中央部に設けられた減圧吸引パイプ13が示されている。
【0025】
次いで、熱硬化性樹脂の液体原料を成型空間に注入する。減圧と同時に樹脂の注入を開始してもよいが、減圧は熱硬化性樹脂の液体原料を添加する前に行われることが好ましい。熱硬化性樹脂の液体原料を注入する前に、成型空間全体を減圧することにより、成型空間内に注入する熱硬化性樹脂の液体原料を、第1のガラスマット3、第1の多軸連続ガラス繊維シート4、板状複合体5の3次元網目状構造空隙部12、第2の多軸連続ガラス繊維シート6、第2のガラスマット7に充填(含浸)することが可能となる。また、これらの部位への充填(含浸)と同時に、板状複合体のハニカムコアの紙にも熱硬化性樹脂の液体原料は含浸される。以下、熱硬化性樹脂の液体原料を単に「樹脂液体原料」ということがある。
【0026】
樹脂液体原料の注入パイプ14は、上型2の長手方向の両端部近傍にそれぞれ1つ、計2ヶ所に設け、その2つの注入口を成型空間の長手方向の端部であって幅方向の中央部に位置させることが望ましい。注入の効率を上げるために、さらに上型2の長手方向の端部から少し距離を置いて幅方向の中央部に設けて、計3ヶ所以上に設けてもよい。図7には、減圧吸引パイプ13とともに、上型2の長手方向の両端部近傍の2ヶ所に設けられた注入パイプ14が示されている。
【0027】
第1のガラスマット3、第1の多軸連続ガラス繊維シート4、板状複合体5、第2の多軸連続ガラス繊維シート6および第2のガラスマット7に充填(含浸)する熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、フェノ-ル系樹脂、メラミン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ユリア系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂およびこれらの変性樹脂等を挙げることができる。これらの熱硬化性樹脂は、架橋モノマー、硬化促進剤、添加剤等と混合した液体原料の状態で用いられる。また、このような熱硬化性樹脂に対応して、熱硬化性樹脂と反応して硬化物を生成し得る硬化剤を添加することが好ましい。
【0028】
<工程7について>
充填が完了すると、樹脂液体原料の硬化が進行する。樹脂の硬化特性により充填とともに硬化が進行する場合もある。図8に成型空間での硬化する成型物15を模式的に示した。この図で、成型物15において、周縁部(斜線部)が熱硬化性樹脂の充填(含浸)した第1および第2のガラスマットの部位であり、中央部(黒色部)が熱硬化性樹脂の充填(含浸)した、第1の多軸連続ガラス繊維シート4と第2の多軸連続ガラス繊維シート6とで上面および下面を挟まれた板状複合板5の部位である。周縁部(斜線部)と中央部(黒色部)は一体化して成型物15を形成している。
<工程8について>
硬化が完了した後に下型1と上型2から成型物15を離型する。
この成型物15には、図8から分かるように、下型1と上型2の周縁部で挟まれた第1のガラスマット3の縁部がバリ18として形成されるので、切削して除去する。図9には、離型後にバリ18が切削して除去された成型物15の断面が模式的に示されている。
【0029】
この成型物15の外周は、第1のガラスマット3及び第2のガラスマット7に樹脂液体原料が充填され硬化しているから、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の層が形成されている。
そして、板状複合体5の発泡粒子成形体の3次元網目状の空隙部12〔図4(b)参照〕にも樹脂液体原料が充填されて硬化し、さらに板状複合体5の上面と下面に配置されて、板状複合体5を挟んでいる第1および第2の多軸連続ガラス繊維シートにも樹脂液体原料が含浸されて硬化している。
したがって、第1および第2のガラスマット3、7が形成するガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の層と第1及び第2の多軸連続ガラス繊維シートに上面と下面を挟まれた板状複合体5とは一体化して成型物15を形成している。
【0030】
この成形物15の外周に形成されているガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の層は、厚さが1~3mm程度が好ましい。この層の厚さが大きくなるほど、成型物15の重量が大きくなり、覆蓋の軽量化を図ることができなくなる。
ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の層の厚さは、第1および第2のガラスマット3、7の厚さを調整することで容易に調整することができる。
【0031】
図9に成型物15の表面を含む断面を模式的に示した。この図で、板状複合体5のハニカムコアのセル壁10以外の斜線部が第1と第2のガラスマット3、7、第1と第2の多軸連続ガラス繊維シート4、6および板状複合体5の発泡粒子成形体に形成された3次元網目状構造の空隙部12に充填され硬化した熱硬化性樹脂の部位を示している。
この図から分かるように、成型物15は、外周にガラス繊維強化プラスチックの層が形成されるとともに、板状複合体5の3次元網目状構造の空隙部12にも、樹脂液体原料が充填され硬化しているから、板状複合体5内には硬化物が3次元網目状に分布しており、板状複合体自体も強度が飛躍的に向上したものになっている。また、板状複合体5の上面と下面を挟んでいる多軸連続ガラス繊維シート4、6が成型物15の強度をさらに高めている。さらに、板状複合体のハニカムコアのセル壁10の紙にも樹脂液体原料が含浸して硬化しており、成型物15の強度の向上に寄与している。
また、空隙部12に樹脂が充填された板状複合体5は、空隙部以外の部位を発泡粒子11が占めているから、比較的軽量である。
【0032】
下型1と上型2の寸法を調整して、両者が形成する成型空間が覆蓋の寸法と同一になるようにすれば、成型物15を覆蓋とすることができる。上述したように、この覆蓋は、板状の紙製ハニカムコアと該コアのセルに充填された複数の発泡粒子が成形されて形成された3次元網目状構造の熱硬化性樹脂の硬化部を有する発泡粒子成形体との複合体の周囲にガラス繊維強化プラスチックの層が形成され、かつガラス繊維強化プラスチックの層と該複合体とが多軸連続ガラス繊維シートを介して一体的に結合しているから、耐食性が良好であるのみならず、強度が高く、かつ軽量である。
【0033】
また、成型物15は、以下の工程9に示すように、覆蓋の面積よりも大きく、厚さが覆蓋と同一のものを製造し、次いで覆蓋の寸法に合わせて厚み方向に切断することにより、覆蓋とすることもできる。
<工程9について>
成型物15を厚さ方向に切断して、所望の寸法の覆蓋を製造する。切断後の覆蓋の側面には発泡成形板の切り口が露出しているので、切り口の面には、耐久性や美観の観点から、不飽和ポリエステル樹脂等の合成樹脂を塗布する。
【0034】
成型物を覆蓋の寸法に切断して、複数の覆蓋を製造する一例を示すと、以下のとおりである。
覆蓋の寸法が例えば長さ900mm、幅450mm、厚さ30mmである場合、寸法が長さ2700mm、幅900mm、厚さ30mmの成型物8を製造すると、該成型物8を切断して、6枚の覆蓋を製造することができる。また、成型物8の面積の範囲内であれば、切断して所望の寸法の覆蓋を製造することができる。
【0035】
このように、工程9を経て製造される覆蓋は、切断の切り口以外の面では、板状の紙製ハニカムコアと該コアのセルに充填された複数の発泡粒子が成形されて形成された3次元網目状構造の熱硬化性樹脂の硬化部を有する発泡粒子成形体との複合体5の周囲にガラス繊維強化プラスチックの層が形成され、かつガラス繊維強化プラスチックの層と該複合体とが多軸連続ガラス繊維シートを介して一体的に結合しているから、強度が高く、また耐食性が良好であり、かつ軽量である。
【0036】
覆蓋の表面には、作業者が歩行しやすいようにするためや視覚への感知を効果的にするためなどにより、エンボス(浮き出し)模様を形成することがある。
下型1のキャビティーの底面にエンボス模様が転写される凹凸模様を形成しておけば、図10に示すように、成型物8の下面にエンボス模様を形成することができることを利用して、覆蓋19の表面にエンボス模様を形成することができる。なお、覆蓋19の裏面には通常エンボス模様を形成しないので、凹凸模様の形成は下型1のキャビティーの底面のみでよい。
【符号の説明】
【0037】
0:パッキン
1:下型
2:上型
3:第1のガラスマット
4:第1の多軸連続ガラス繊維シート
5:板状の紙製ハニカムコアと該コアのセルに充填された複数の発泡粒子が成形された
3次元網目状構造の空隙部を有する発泡粒子成形体との複合体(板状複合体)
6:第2の多軸連続ガラス繊維シート
7:第2のガラスマット
8:板状の紙製ハニカムコア
9:板状の紙製ハニカムコアのセル
10:板状の紙製ハニカムコアのセル壁
11:発泡粒子
12:発泡粒子成形体に形成された3次元網目状の空隙部
13:減圧吸引パイプ
14:注入パイプ
15:成型物
16:周縁部
17:中央部
18:バリ
19:覆蓋
20:把手
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10