(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039661
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】回転電機用冷却構造
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20220303BHJP
H02K 1/32 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
H02K9/19 B
H02K1/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144798
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 聡
【テーマコード(参考)】
5H601
5H609
【Fターム(参考)】
5H601AA16
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD25
5H601DD30
5H601DD32
5H601DD47
5H601EE26
5H601GE11
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5H609BB16
5H609PP02
5H609PP06
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5H609PP08
5H609PP09
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5H609PP11
5H609QQ04
5H609QQ05
5H609QQ07
5H609QQ08
5H609QQ09
5H609QQ20
5H609RR26
5H609RR37
5H609RR40
5H609RR42
5H609RR53
(57)【要約】 (修正有)
【課題】中空内部内の冷媒の温度を中空内部内で下げる回転電機用冷却構造を提供する。
【解決手段】回転電機用冷却構造は、中空のロータシャフト34及びロータコア32を有するロータ30と、ステータコア211及びコイル22を有するステータ21と、ロータ及びステータが収容される室を形成するケース10と、ロータシャフトの中空内部に延在し、第1冷媒が流れる冷媒流路70と、を含み、冷媒流路は、中空内部内に供給される又は封入される第2冷媒と冷媒流路内の第1冷媒との間で熱交換が生じるように設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のロータシャフト及びロータコアを有するロータと、
ステータコア及びコイルを有するステータと、
前記ロータ及び前記ステータが収容される室を形成するケースと、
前記ロータシャフトの中空内部に延在し、第1冷媒が流れる冷媒流路と、を含み、
前記冷媒流路は、前記中空内部内に供給される又は封入される第2冷媒と前記冷媒流路内の前記第1冷媒との間で熱交換が生じるように設けられる、回転電機用冷却構造。
【請求項2】
前記ロータシャフトには、前記ロータの回転時に内周面から径方向の厚みを有する態様で前記第2冷媒が溜まるように堰部が形成され、
前記冷媒流路は、前記ロータシャフトの内周面に対して前記第2冷媒の厚み以下の距離まで近接する、請求項1に記載の回転電機用冷却構造。
【請求項3】
前記ロータシャフトは、前記ロータコアが取り付けられる大径部と、軸方向の一端に前記大径部より径が小さい小径部とを有し、
前記堰部は、軸方向の一端側において、前記大径部と前記小径部との間の径方向の段差に基づいて形成される、請求項2に記載の回転電機用冷却構造。
【請求項4】
前記ケースに対して前記ロータシャフトを回転可能に支持するベアリングを更に含み、
前記堰部は、軸方向の前記一端とは逆側の他端において、前記ロータシャフトの内周面に支持される前記ベアリングのアウタレースにより形成される、請求項3に記載の回転電機用冷却構造。
【請求項5】
前記冷媒流路は、前記ロータの回転軸まわりに螺旋状をなす態様で、軸方向に延在する、請求項1~4のうちのいずれか1項に記載の回転電機用冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機用冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータシャフトの中空内部を形成する内周面に、油が溜まる周溝を備える回転電機が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、ロータシャフトの中空内部から油を供給する構成において、中空内部内の油の温度を中空内部内で下げることが難しい。中空内部内に供給された油の温度を中空内部内で下げることができれば、ロータシャフトの径方向内側からロータコア等を効果的に冷却できる。なお、上記の課題は、ロータシャフトの中空内部から油を供給する構成に限られず、ロータシャフトの中空内部から冷媒によりロータコア等を冷却する任意の構成に当てはまる。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、中空内部内の冷媒の温度を中空内部内で下げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、中空のロータシャフト及びロータコアを有するロータと、
ステータコア及びコイルを有するステータと、
前記ロータ及び前記ステータが収容される室を形成するケースと、
前記ロータシャフトの中空内部に延在し、第1冷媒が流れる冷媒流路と、を含み、
前記冷媒流路は、前記中空内部内に供給される又は封入される第2冷媒と前記冷媒流路内の前記第1冷媒との間で熱交換が生じるように設けられる、回転電機用冷却構造が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、本開示によれば、中空内部内の冷媒の温度を中空内部内で下げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施例による回転電機用冷却構造が適用される回転電機の断面構造を概略的に示す断面図である。
【
図2】車両用駆動装置の冷却構造に関する全体構成を概略的に示す図である。
【
図3】
図1に示す断面図に冷媒の流れを矢印等で模式的に示す図である。
【
図4】回転電機の組み付け方法を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0010】
図1は、一実施例による回転電機用冷却構造が適用される回転電機1の断面構造を概略的に示す断面図である。
図1は、回転電機1の回転軸12を通る平面による断面図である。
図2は、本実施例における油(第2冷媒の一例)の流れ及び冷却水(第1冷媒の一例)の流れの説明図である。
図2では、点線の矢印R110から矢印R113により油の流れが模式的に示され、実線の矢印R120から矢印R122により冷却水の流れが模式的に示されている。
【0011】
図1には、回転電機1の回転軸12が図示されている。以下の説明において、軸方向とは、回転電機1の回転軸(回転中心)12が延在する方向を指し、径方向とは、回転軸12を中心とした径方向を指す。従って、径方向外側とは、回転軸12から離れる側を指し、径方向内側とは、回転軸12に向かう側を指す。また、周方向とは、回転軸12まわりの回転方向に対応する。
【0012】
また、
図1には、X方向と、X方向に沿ったX1側とX2側が定義されている。X方向は、軸方向に平行である。以下の説明において、X1側とX2側の各用語は、相対的な位置関係を表すために用いられる場合がある。
【0013】
回転電機1は、例えばハイブリッド車両や電気自動車で使用される車両駆動用のモータであってよい。ただし、回転電機1は、他の任意の用途に使用されるものであってもよい。
【0014】
回転電機1は、ケース10内にステータ21及びロータ30等を含む。ケース10は、ステータ21及びロータ30を収容する室SP1を形成する。ケース10は、後述するカウンタギヤ機構4や差動歯車機構5等を収容する室(図示せず)を更に形成してもよい。ケース10は、2つ以上のケース部材により形成されてもよい。
図1に示す例では、ケース10は、周壁部を形成するケース部材110と、ケース部材110のX1側の開口を覆うカバー部材112とを含む。この場合、ケース部材110とカバー部材112とは、軸方向(X方向)に突き合せられた状態で互いに対して結合される。
【0015】
回転電機1は、インナロータタイプであり、ステータ21がロータ30の径方向外側を囲繞するように設けられる。ステータ21は、径方向外側がケース10に固定される。ステータ21は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなるステータコア211を備え、ステータコア211の径方向内側には、コイル22が巻回される複数のスロット(図示せず)が形成される。
【0016】
ロータ30は、ステータ21の径方向内側に配置される。ロータ30は、ロータコア32と、ロータシャフト34とを備える。ロータコア32は、ロータシャフト34の外周面348に固定され、ロータシャフト34と一体となって回転する。ロータシャフト34は、ケース10にベアリング14a、14bを介して回転可能に支持される。なお、ロータシャフト34は、回転電機1の回転軸12を画成する。
【0017】
ベアリング14aは、
図1に示すように、ロータシャフト34のX1側の端部(縮径した部位)における径方向外側に設けられる。具体的には、ベアリング14aは、アウタレースの径方向外側がケース10に支持され、インナレースの径方向内側がロータシャフト34の外周面348に支持される。
【0018】
ベアリング14bは、
図1に示すように、ロータシャフト34のX2側の端部(縮径していない部位)における径方向内側に設けられる。具体的には、ベアリング14bは、アウタレースの径方向外側がロータシャフト34の内周面349に支持される。なお、ベアリング14bは、インナレースの径方向内側がケース10のケース部材110に支持される。より具体的には、ケース部材110は、X方向X2側からロータシャフト34の中空内部34Aへと延在する円筒状の部位1102を有し、部位1102の外周面にベアリング14bのインナレースが支持される。
【0019】
ロータ30は、例えば
図2に示すように、入力部材3、カウンタギヤ機構4、差動歯車機構5、及び中継部材6を介して、車輪(図示せず)に連結される。ロータ30により発生される回転トルクは、入力部材3、カウンタギヤ機構4、差動歯車機構5、及び中継部材6を介して、車輪(図示せず)に伝達される。なお、ロータ30と車輪との間の動力伝達機構は、任意であり、
図2以外の構成であってもよい。
【0020】
ロータコア32は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなる。ロータコア32の内部には、永久磁石325が埋め込まれる。あるいは、永久磁石325のような永久磁石は、ロータコア32の外周面に埋め込まれてもよい。なお、永久磁石325の配列等は任意である。
【0021】
ロータコア32の軸方向の両側には、エンドプレート35A、35Bが取り付けられる。エンドプレート35A、35Bは、ロータコア32からの永久磁石325の離脱を防止する機能の他、ロータ30のアンバランスの調整機能(切削等されることでアンバランスをなくす機能)を有してよい。
【0022】
ロータシャフト34は、
図1に示すように、ロータコア32と結合する大径部340Aと、X方向X1側の端部を形成する小径部340Bとを有する。小径部340Bは、大径部340Aよりも外径が小さい。なお、かかる外径の異なるロータシャフト34は、鋳造やフローフォーミング、ハイドロフォーミング等により形成できる。また、ロータシャフト34は、複数のピースにより形成されてもよい。
【0023】
ロータシャフト34は、
図1に示すように、中空内部34Aを有する。中空内部34Aは、ロータシャフト34の軸方向の全長にわたり延在する。中空内部34Aは、軸方向の両側で軸方向に開口する。
【0024】
ロータシャフト34は、X方向X1側の端部が縮径するが、X方向X2側の端部が縮径しないような外形を有する。ただし、他の実施例では、ロータシャフト34は、X方向X2側の端部も縮径するような外形を有してもよい。あるいは、ロータシャフト34は、一定の径を有してもよい。また、ロータシャフト34は、2以上のシャフト部材(ピース)により形成されてもよい。
【0025】
ロータシャフト34は、第1油孔341を有する。第1油孔341は、中空内部34Aから軸方向外側へと軸方向に貫通する。具体的には、第1油孔341は、中空内部34Aに開口する内周面349側の開口341aと、外周面348側の開口341bとを有し、開口341a及び開口341b間に延在する。なお、他の実施例では、第1油孔341は、中空内部34Aから径方向外側へと径方向に貫通する形態であってもよい。
【0026】
第1油孔341の開口341bは、コイル22のコイルエンド22Aに対向する態様で、ロータコア32に対し軸方向にずれた位置に配置される。すなわち、第1油孔341の開口341bは、ロータコア32の軸方向端面よりも軸方向外側に配置される。従って、第1油孔341の開口341bの径方向外側には、ロータコア32が存在しないことになる。なお、第1油孔341は、周方向に複数個形成されてもよい。
【0027】
ロータシャフト34は、更に、第1油孔341とは異なる軸方向の位置に、第2油孔342を有する。第2油孔342は、中空内部34Aから径方向外側へと径方向に貫通する。具体的には、第2油孔342は、中空内部34Aに開口する内周面349側の開口342aと、外周面348側の開口342bとを有し、開口342a及び開口342b間に延在する。
【0028】
第2油孔342の開口342bは、コイル22のコイルエンド22Bに対向する態様で、ロータコア32に対し軸方向にずれた位置に配置される。すなわち、第2油孔342の開口342bは、ロータコア32の軸方向端面よりも軸方向外側に配置される。従って、第2油孔342の開口342bの径方向外側には、ロータコア32が存在しないことになる。なお、第2油孔342は、周方向に複数個形成されてもよい。また、第2油孔342は、第1油孔341とは異なる周方向の位置(位相)に形成されてもよい。
【0029】
本実施例では、回転電機1は、ロータシャフト34の中空内部34Aを介して冷却用の油を循環させるための油路構造90を有する。油路構造90は、オイルポンプ98に連通し、ロータシャフト34内に、ロータシャフト34の一端(X2側の端部)側から油を供給するように構成される。ただし、変形例では、油路構造90は、ロータシャフト34内に、ロータシャフト34の他端(X1側の端部)側から油を供給するように構成されてもよい。
【0030】
オイルポンプ98の種類や駆動態様は任意である。例えば、オイルポンプ98は、回転電機1の回転トルクにより動作するギアポンプであってもよいし、電動式であってもよい。なお、
図2に示す例では、オイルポンプ98は、カウンタギヤ機構4のカウンタシャフトに同芯に設けられるが、他の態様で設けられてもよい。
【0031】
オイルポンプ98は、ケース10内の油溜め部80(
図2参照)に貯溜された油を汲み上げ、当該汲み上げた油を吐出するポンプである。なお、オイルポンプ98は、油溜め部80内の油をストレーナ99(
図2参照)を介して吸い込んでもよい。
【0032】
本実施例では、一例として、油路構造90は、ケース内油路91と、管路部材92と、ロータ軸油路95とを含む。
【0033】
ケース内油路91は、
図2に示すように(
図1では可視でない)、オイルポンプ98と管路部材92との間に設けられる。ケース内油路91は、オイルポンプ98から吐出された油を管路部材92に供給する。ケース内油路91は、ケース10に形成される。ただし、変形例では、ケース内油路91は、ケース10とは別体の管路部材により形成されてもよい。
【0034】
管路部材92は、一端(X2側の端部)側がケース内油路91を介してオイルポンプ98に連通する。管路部材92は、中空に形成され、内部が油路を画成する。すなわち、管路部材92は、油路として機能する中空内部92Aを有する。中空内部92Aは、管路部材92の軸方向の全長にわたり延在する。ただし、中空内部92Aは、他端側(X方向X1側の端部であって、オイルポンプ98側とは逆側の端部)は開口しない。すなわち、管路部材92は、他端(X方向X1側の端部)が閉塞される。ただし、変形例では、後述の吐出孔93に代えて、管路部材92のX方向X1側の端部が開口されてもよい。
【0035】
管路部材92は、内部から外部へと径方向に貫通する連通孔94を有する。連通孔94は、オイルポンプ98からケース内油路91(
図2参照)(
図1では可視でない)に連通する。この場合、管路部材92には、ケース内油路91及び連通孔94を介してオイルポンプ98からの油が供給される。なお、他の実施例では、ケース内油路91に代えて、管路部材92のような別の管路部材が用いられてもよい。この場合、当該別の管路部材は、管路部材92と一体的に形成されてもよいし、管路部材92のX2側端部と連通されてもよい。
【0036】
管路部材92は、ロータシャフト34の内周面349に対して径方向で隙間を有する態様でロータシャフト34の中空内部34A内に延在する。管路部材92の中心軸は、回転軸12と一致する。なお、管路部材92は、
図1に示すように、ケース10に固定されてよい。
【0037】
管路部材92は、内部から外部へと径方向に貫通する吐出孔93を備える。吐出孔93は、径方向外側がロータシャフト34の中空内部34Aに連通する。この場合、管路部材92に供給された油は、吐出孔93を介してロータシャフト34の中空内部34Aに供給される。なお、管路部材92の軸方向の長さは任意であり、ロータシャフト34の中空内部34Aに油を供給できる吐出孔93を形成できる限り、図示の長さよりも長くても短くてもよい。また、吐出孔93は、複数設けられてもよいし、軸方向の位置や径方向の位置は任意である。
【0038】
ロータ軸油路95は、ロータシャフト34に形成される。すなわち、ロータ軸油路95は、上述したロータシャフト34内の中空内部34Aにより実現される。
【0039】
本実施例では、回転電機1は、更に、水路構造として、冷却水路70と、ケース内水路72とを備える。
【0040】
冷却水路70は、ロータシャフト34の中空内部34Aに延在する。なお、冷却水は、例えばLLC(Long Life Coolant)である。
【0041】
冷却水路70は、中空内部34Aの油と冷却水路70内の冷却水との間で熱交換が生じるように設けられる。なお、冷却水路70は、
図1に示すように、ケース10に固定されてよい。
【0042】
具体的には、冷却水路70は、ロータシャフト34の内周面349に対して径方向で僅かな隙間Δ1だけ離間する態様で、近接する。隙間Δ1は、回転部材であるロータシャフト34と、ケース10に対して固定される冷却水路70との間で、確保されるべき最小のクリアランスに対応してよい。
【0043】
図1に示す例では、冷却水路70は、ロータ30の回転軸(回転軸12)まわりに螺旋状をなす態様で、軸方向に延在する。すなわち、冷却水路70は、ロータシャフト34の内周面349に対して径方向で僅かな隙間Δ1だけ離間しつつ、螺旋状をなす態様で、軸方向に延在する。これにより、冷却水路70のうちの、ロータシャフト34の内周面349に対して隙間Δ1だけ離れて対向する部分を、効率的に増加できる。この結果、ロータシャフト34の内周面349に厚さ(径方向の厚さ)Δ2(
図3参照)で溜まりうる油と、冷却水路70内の冷却水との間の、熱交換を効率的に促進できる。
【0044】
なお、変形例では、冷却水路70は、軸方向X1側とX2側との間で行き来しながら回転軸12まわりを周回する態様で形成されてもよい。この場合も、冷却水路70のうちの、ロータシャフト34の内周面349に対して隙間Δ1だけ離れて対向する部分を、効率的に増加できる。
【0045】
冷却水路70は、ケース10(ケース部材110)に入口部701と出口部702とを有する。入口部701及び出口部702は、ケース10に形成されてもよいし、ケース10の外部に形成されてもよい。冷却水路70のうちの、螺旋状をなす部位のX2側端部70Bは、入口部701に連通し、同螺旋状をなす部位のX1側端部70Aは、出口部702に連通する。
【0046】
ケース内水路72は、例えばケース部材110に形成される。例えば、ケース内水路72は、回転軸12まわりを周回する螺旋状に形成されてもよい。あるいは、ケース内水路72は、冷却水がピンフィンまわりを通る態様で形成されてよい。あるいは、ケース内水路72は、単なる空間により形成されてもよいし、冷却水が蛇行等する態様で形成されてもよい。ただし、変形例では、ケース内水路72は、ケースとは別体の管路部材により形成されてもよい。ケース内水路72は、供給側水路721と、排出側水路722とを含む。
【0047】
供給側水路721は、一端が冷却水路70の入口部701に連通し、他端がウォーターポンプ78(
図2参照)の吐出側に連通する。排出側水路722は、一端が冷却水路70の出口部702に連通し、他端がウォーターポンプ78(
図2参照)の吸入側に連通する。
【0048】
次に、
図2を引き続き参照しつつ
図3を参照して、回転電機1の回転時における油の流れ及び冷却水の流れとともに、本実施例の効果を説明する。
【0049】
なお、
図2は、車両用駆動装置100の冷却構造に関する全体構成を概略的に示す。車両用駆動装置100は、回転電機1と、入力部材3と、カウンタギヤ機構4、差動歯車機構5等を含む。
図3は、
図1に示す断面図に冷媒(油及び冷却水)の流れを矢印等で模式的に示す図である。
【0050】
図2に示す例では、冷却水路70は、インバータモジュールMJ内に連通する。インバータモジュールMJは、回転電機1を駆動するためのインバータやインバータ制御装置等(図示せず)を内蔵するモジュールである。なお、インバータモジュールMJは、ケース10に取り付けられてよい。
【0051】
ウォーターポンプ78は、インバータモジュールMJ、供給側水路721(ケース内水路72)、冷却水路70、排出側水路722(ケース内水路72)をこの順で通過するように、冷却水を循環させる(矢印R120~矢印R122参照)。排出側水路722からの冷却水は、ラジエータ79により冷却される。なお、ラジエータ79は、空気(例えば車両の走行時に通過する空気)と冷却水との間で熱交換を実現するものであってよい。なお、ウォーターポンプ78やラジエータ79の位置は、任意であり、
図2に示す位置に限られない。例えば、ウォーターポンプ78は、ラジエータ79とインバータモジュールMJの間に設けられてもよい。
【0052】
このようにして、
図2に示す例では、冷却水は、インバータモジュールMJ内にてパワーモジュール(図示せず)のような発熱素子の熱を奪い、ついで、ロータ軸油路95内の油の熱を奪ってから、ラジエータ79にて冷却される。この場合、インバータモジュールMJ(及びそれに伴いパワーモジュール)は、ラジエータ79に対して最も上流側に配置されるので冷却水により効果的に冷却される。また、
図2に示す例では、冷却水路70は、ラジエータ79に対してインバータモジュールMJ(及びそれに伴いパワーモジュール)の次に上流側に配置されるので、ロータ軸油路95内の油を効果的に冷却できる。ただし、変形例では、ラジエータ79に対して上流側から順に、冷却水路70及びインバータモジュールMJが設けられてもよい。また、更なる他の変形例ではラジエータ79からの循環経路が、インバータモジュールMJへの経路と、冷却水路70への経路へと分岐してもよい。この場合、インバータモジュールMJからの分岐路と、冷却水路70からの分岐路は、合流してから、ラジエータ79に導かれてよい(戻されてよい)。
【0053】
また、
図2に示す例では、油路構造90内の油は、ロータ軸油路95においてラジエータ79からの冷却水にて冷却されるので、ロータ軸油路95を介して各種冷却対象部位を適切に冷却できる。具体的には、オイルポンプ98から吐出される油は、ロータ軸油路95内に供給される(矢印R110参照)。ロータ軸油路95内に供給された油は、
図3に模式的に示すように、ロータ30の回転時、遠心力によって内周面349上に層状となる。
図3では、ロータ軸油路95において厚みΔ2で溜まった油がハッチング領域82により模式的に示される。
【0054】
本実施例では、
図3に示すように、ベアリング14bのアウタレースが、X方向X2側の堰部96Aとして機能し、かつ、ロータシャフト34のX方向X1側の端部の段差(大径部340Aと小径部340Bとの間の遷移に係る段差)が、X方向X1側の堰部96Bとして機能する。堰部96A、96Bは、ロータ軸油路95内の油が、遠心力によって内周面349上に、厚みΔ2の層状の形態となるように機能する。この場合、ロータシャフト34内の冷却水路70を通る冷却水と、ロータ軸油路95内の層状の油との間で効率的に熱交換が実現される。すなわち、ロータ軸油路95内の層状の油が、ロータシャフト34内の冷却水路70を通る冷却水によって効率的に冷却される。
【0055】
このようにして冷却水路70により冷却されたロータ軸油路95内の油は、内周面349を介してロータコア32及びそれに伴い永久磁石325を冷却できる。特に本実施例では、ロータシャフト34は、
図1等に示すように、ロータコア32と結合する大径部340Aが比較的大きい外径であるので、永久磁石325と内周面349との間の径方向の距離が短くなりやすい。このため、永久磁石325がロータコア32における比較的径方向外側に配置される場合でも、ロータコア32を効率的に冷却できる。
【0056】
また、このようにして冷却水路70により冷却されたロータ軸油路95内の油は、ロータ30の回転時の遠心力等によって、第1油孔341及び第2油孔342(
図1参照)を介してコイルエンド22A、22Bに向けて径方向内側から供給される(矢印R111参照)。これにより、コイルエンド22A、22Bを径方向内側から効果的に冷却できる。
【0057】
コイルエンド22A、22B等の冷却に供された油は、重力により油溜め部80に溜まる(矢印R112参照)。そして、油溜め部80内の油は、オイルポンプ98によりストレーナ99等を介して(矢印R113参照)、再び、コイルエンド22A等へと吐出される。このようして油は、ロータ軸油路95内で冷却水路70の冷却水により冷却されながら循環し、各種冷却対象部位を適切に冷却できる。
【0058】
このように、本実施例によれば、ロータ軸油路95内の油を、ロータシャフト34の中空内部34Aに延在する冷却水路70により冷却できる。これにより、ロータシャフト34の中空内部34Aから油を供給する構成において、中空内部34A内に供給された油の温度を中空内部34A内で下げることができる。従って、中空内部34A内に供給された油によりコイルエンド22A、22Bを径方向内側から効果的に冷却できる。また、ロータ軸油路95内において冷却水路70により冷却された油は、ロータシャフト34の内周面349を介してロータコア32及び永久磁石325を径方向内側から冷却できる。従って、本実施例によれば、中空内部34A内に供給された油により回転電機1全体を効率的に冷却できる。
【0059】
また、本実施例によれば、ロータ軸油路95内の油を、ロータシャフト34の中空内部34Aに延在する冷却水路70により冷却できるので、ロータ軸油路95に供給される油を冷却するためのオイルクーラを省略又は簡略化できる。例えば、
図2にて点線で示すようなオイルクーラ73を省略できる。なお、
図2にて点線で示すオイルクーラ73は、インバータモジュールMJを通った後の冷却水を利用して、ロータ軸油路95に供給される油を冷却する。
【0060】
なお、オイルクーラ73が設けられる変形例では、オイルクーラ73は、図示とは異なる位置に設けられてもよい。例えば、オイルクーラ73は、ストレーナ99とオイルポンプ98との間に設けられてもよい。
【0061】
また、本実施例によれば、冷却水路70に供給される冷却水は、インバータモジュールMJの冷却に供される冷却水と同じであるので、これらを別個独立に循環させる場合に比べて、簡易な構成を実現できる。すなわち、一のウォーターポンプ78を利用して、ステータ11及びインバータモジュールMJを冷却水により冷却できる。ただし、変形例では、冷却水路70に供給される冷却水は、インバータモジュールMJの冷却に供される冷却水とは異なってもよい。
【0062】
なお、
図2に示す例では、ロータ軸油路95には、オイルポンプ98により吐出された油がケース内油路91を介して供給されるが、これに限られない。例えば、入力部材3に、ロータ軸油路95に連通する油路が形成されてもよい。この場合、オイルポンプ98により吐出された油は、当該油路を介してロータ軸油路95に供給されてよい。
【0063】
また、
図2に示す例では、ケース内油路91は、ロータ軸油路95にのみ連通するが、他の油路や油孔に連通してもよい。例えば、ケース10には、コイルエンド22A、22Bに対して径方向に対向する油孔が形成されてもよく、この場合、ケース内油路91は、当該油孔に連通してもよい。この場合、コイルエンド22A、22Bに対して径方向外側から油を供給(滴下)できるので、コイルエンド22A、22Bに対する冷却能力を効果的に高めることができる。
【0064】
また、
図2に示す例では、ステータコア211の外周面に径方向に当接するカバー部材112に、ケース内水路72が形成されるので、ケース内水路72を通る冷却水によりステータコア211及びそれに伴いコイル22を冷却できる。この場合、ケース内水路72は、回転軸12まわりを周回する態様で、ステータコア211まわりに形成されてもよい。
【0065】
次に、
図4を参照して、本実施例による回転電機1の組み付け方法について説明する。
【0066】
図4は、回転電機1の組み付け方法を模式的に示す説明図である。
【0067】
図4に示すように、3つのサブアセンブリ400、410、420が準備される。
【0068】
サブアセンブリ400は、ケース部材110に、ベアリング14b、冷却水路70、管路部材92等が組み付けられてなる。
【0069】
サブアセンブリ410は、ロータ30に係るサブアセンブリであり、ロータシャフト34に、ロータコア32や永久磁石325、エンドプレート35A、35B等を組み付けてなる。
【0070】
サブアセンブリ420は、カバー部材112に、ステータ11やベアリング14a等を組み付けてなる。
【0071】
この場合、
図4に矢印R40で示すように、サブアセンブリ420にサブアセンブリ410を組み付け、ついで、
図4に矢印R41で示すように、サブアセンブリ420に組み付けられたサブアセンブリ410に、サブアセンブリ400を組み付けることができる。あるいは、
図4に矢印R41で示すように、サブアセンブリ410に、サブアセンブリ400を組み付け、ついで、
図4に矢印R40で示すように、サブアセンブリ420に、サブアセンブリ400を組み付けたサブアセンブリ410を組み付けてもよい。このようにして本実施例によれば、組み付け性が良好な回転電機1を得ることができる。
【0072】
特に、本実施例では、ロータシャフト34は、上述したように、X方向X1側の端部(大径部340Aの一部)が、X方向X2側の端部(小径部340B)とは異なり、縮径されていないので、ロータシャフト34の中空内部34A内へと冷却水路70を軸方向に組み付けることが可能である。また、本実施例によれば、ロータシャフト34は、上述したように、X方向X1側の端部が縮径されていないものの、ベアリング14bが堰部96Bとして機能できる。これにより、ロータシャフト34への冷却水路70の組み付け性を良好としつつ、ロータシャフト34の中空内部34Aにおける堰部96A、98Aによる油溜めを可能とすることができる。
【0073】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0074】
例えば、上述した実施例では、ベアリング14bが堰部96Bとして機能するが、これに限られない。例えば、ベアリング14bは、ベアリング14aと同様、ロータシャフト34の径方向外側に設けられてもよい。この場合、ロータシャフト34には、堰部96Bに対応する堰部を形成するリング状の部材(堰部材)が嵌合されてもよい。あるいは、ロータシャフト34を2つ以上のピースにより構成することで、冷却水路70を内蔵するロータシャフト34を実現してもよい。
【0075】
また、上述した実施例では、冷却水路70がロータシャフト34内に延在することで、冷却水路70内の冷却水と、ロータシャフト34内に供給される油との間で熱交換が可能であるが、これに限られない。例えば、熱交換する冷媒は、水と油である必要はなく、双方が、油であってもよいし、双方が水であってもよいし、他の冷媒が利用されてもよい。また、ロータシャフト34内に供給される油に代えて、ロータシャフト34内に封入される水又は油が利用されてもよい。この場合、冷却水路70がロータシャフト34内に延在することで、冷却水路70内の冷却水と、ロータシャフト34内に封入される水又は油との間で熱交換が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1・・・回転電機、10・・・ケース、11・・・ステータ、12・・・回転軸、14b・・・ベアリング、21・・・ステータ、22・・・コイル、30・・・ロータ、32・・・ロータコア、34・・・ロータシャフト、34A・・・中空内部、70・・・冷却水路(冷媒流路)、90・・・油路構造、96A・・・堰部、96B・・・堰部、211・・・ステータコア、340A・・・大径部、340B・・・小径部、SP1・・・室