(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039669
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】異種材料接合体の製造方法及び異種材料接合体
(51)【国際特許分類】
C25D 7/00 20060101AFI20220303BHJP
C25D 5/56 20060101ALI20220303BHJP
C25D 5/30 20060101ALI20220303BHJP
B29C 65/48 20060101ALI20220303BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
C25D7/00 Z
C25D5/56 B
C25D5/30
B29C65/48
B32B15/08 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144811
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100143236
【弁理士】
【氏名又は名称】間中 恵子
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 守
(72)【発明者】
【氏名】袴田 昌高
(72)【発明者】
【氏名】内藤 江児
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 蒼矢
【テーマコード(参考)】
4F100
4F211
4K024
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB01C
4F100AB02C
4F100AB09C
4F100AB10B
4F100AB13C
4F100AB14C
4F100AB15C
4F100AB16C
4F100AB17C
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4K024AA03
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4K024BA06
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4K024BB02
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4K024DA02
4K024DA06
4K024DA07
4K024DA10
4K024GA01
4K024GA16
(57)【要約】
【課題】金属と樹脂のような異種材料が高い接合強度で互いに接合された異種材料接合体を製造でき、かつ適用できる材料の範囲を広げることが可能な、異種材料接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の異種材料接合体の製造方法は、第1材料で形成された第1部材10と、第1材料とは異なる第2材料で形成された第2部材20とが互いに接合された異種材料接合体100の製造方法である。本発明の製造方法は、(I)第1部材10及び第2部材20を、第1部材10の粗化された面11と第2部材20の所定の面21とが所定の間隔Dを置いて互いに対向するように配置することと、(II)第1部材10の粗化された面11及び第2部材20の所定の面21にめっき膜30を析出させ、めっき膜30を成長させることによって、第1部材10の粗化された面11と第2部材20の所定の面21との間に、第1部材10と第2部材20とを一体化させるめっき接合層40を形成すること、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1材料で形成された第1部材と、前記第1材料とは異なる第2材料で形成された第2部材とが互いに接合された異種材料接合体の製造方法であって、
前記製造方法は、
(I)前記第1部材及び前記第2部材を、前記第1部材の粗化された面と前記第2部材の所定の面とが所定の間隔を置いて互いに対向するように配置することと、
(II)前記第1部材の前記粗化された面及び前記第2部材の前記所定の面にめっき膜を析出させ、前記めっき膜を成長させることによって、前記第1部材の前記粗化された面と前記第2部材の前記所定の面との間に、前記第1部材と前記第2部材とを一体化させるめっき接合層を形成すること、
を含む、異種材料接合体の製造方法。
【請求項2】
前記(I)よりも前に、
前記第1部材の表面を粗化して、前記第1部材に前記粗化された面を形成すること、
をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第2部材の前記所定の面が、粗化されている、
請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記(I)よりも前に、
前記第2部材の表面を粗化して、前記第2部材に粗化された前記所定の面を形成すること、
をさらに含む、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1材料は、非金属材料を含む、
請求項1~4のいずれ1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1材料は、炭素繊維強化プラスチックである、
請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第2材料は、金属である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第2材料は、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群より選択される少なくとも1つである、
請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記(I)よりも前に、
前記第1部材の前記粗化された面に、下地めっき膜を形成すること、
をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記めっき接合層は、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、インジウム、白金、金、及び鉛からなる群より選択される少なくとも1つを含む、
請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
樹脂及び導電性を有する補強材を含む複合材で形成された第1部材と、
前記第1部材とは異なる材料で形成された第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間に設けられた、前記第1部材と前記第2部材とを接合するめっき接合層と、
を備え、
前記第1部材は、前記めっき接合層と接する接合面を有し、
前記接合面は、前記補強材の一部が露出した粗化面であり、
前記粗化面において、前記補強材の表面に、前記めっき接合層を構成する金属のめっき膜が付着している、
異種材料接合体。
【請求項12】
前記複合材は、前記補強材として炭素繊維を含む炭素繊維強化プラスチックである、
請求項11に記載の異種材料接合体。
【請求項13】
前記第2部材は、金属で形成されている、
請求項11又は12に記載の異種材料接合体。
【請求項14】
前記金属は、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群より選択される少なくとも1つである、
請求項11~13のいずれか1項に記載の異種材料接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種材料接合体の製造方法及び異種材料接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂と金属との接合体のような、異なる材料からなる部材が互いに接合されて一体化された異種材料接合体は、広い産業分野において部品用途に利用されている。特に、炭素繊維強化プラスチック(以下、「CFRP」と記載する。)のような、樹脂と補強材とを含む複合材は、軽量かつ高強度であるので、このような複合材と金属との接合体は、自動車部品、航空機部品、及び電子部品等の用途に広く用いられている。
【0003】
従来、樹脂と金属とを接合する方法として、金属における接合面を粗化し、粗化された接合面の凹部及び微孔内にレーザー照射等で溶融させた樹脂を入り込ませることによりアンカー効果を生じさせて、金属と樹脂とを強固に接合する方法が提案されている。
【0004】
特許文献1は、金属と樹脂材との接合方法として、金属の表面に粗面構造を有するめっき膜を設けて、そのめっき膜を介して金属と樹脂材とを接合して一体化する方法を開示している。特許文献1の方法では、樹脂材を構成する樹脂が粗面構造を有するめっき膜の凹凸の隙間に入り込み、隙間を充填するようにして金属と樹脂材とが一体化される。
【0005】
特許文献2は、アルミニウム材の表面に多数の孔部を含むナノ凹凸構造を作製し、ナノ凹凸構造の孔部に溶融状態の樹脂を侵入させてから固化することによって、アルミニウム材と樹脂とを接合する方法を開示している。特許文献2の方法では、ナノ凹凸構造を作製する際に、多孔性酸化被膜であるポーラスアルミナ層を形成する陽極酸化処理と、陽極酸化処理で形成された多数のポーラスを有するポーラスアルミナ層の表面側の一部分を除去するエッチング処理とが行われている。
【0006】
特許文献3は、金属部品の表面に凹部を形成し、その凹部を含む金属部品の表面に微細孔を有する多孔質めっき膜を形成し、凹部及び微細孔に溶融させた樹脂を流し込んで、金属部品と樹脂とを接合する方法を開示している。特許文献3の方法においても、金属部品の表面に設けた粗化面(すなわち凹部及び多孔質めっき膜)を利用して金属と樹脂材とを一体化することで、金属部品と樹脂との接着面積の拡大及び金属部品と樹脂との間に作用するアンカー効果により、高い接合強度を実現している。
【0007】
特許文献4は、鉄鋼部材と熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物とを接合する方法として、鉄鋼部材の樹脂部材との接合部表面に粗化面を形成し、鉄鋼部材のこの粗化面に接するように熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を射出して固化すること方法が開示されている。特許文献4の方法では、鉄鋼部材に、鉄鋼部材と接する面とは反対側の表面が粗化された金属めっき層を付与し、さらにこの金属めっき層表面を無機酸により処理することによって鉄鋼部材の粗化面が作製されている。このように形成された鉄鋼部材の粗化面には、オーバーハング部を有する凹部(ピット)が多数形成され、このようなオーバーハング部を有する凹部がアンカー効果によって熱可塑性樹脂部材との接合力向上に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-151090号公報
【特許文献2】特開2019-166638号公報
【特許文献3】特開2017-71165号公報
【特許文献4】国際公開第2016/171128号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような、金属の表面を粗化し、その粗化面の凹部及び微孔の内部に溶融させた樹脂を充填することによって金属と樹脂とを接合する従来の方法では、得られる接合体における金属と樹脂との接合強度が低く、得られる接合体を高い強度が求められる用途に利用することが困難であった。このように、金属と樹脂とを高い接合強度で接合する方法は、依然未確立である。
【0010】
さらに、従来の方法では、金属と接合される樹脂が熱可塑性樹脂に限定されるため、例えば耐熱性等の点から、得られる接合体の用途が限定されるという課題も有していた。
【0011】
以上のように、従来の方法では、高い接合強度を有する金属と樹脂との接合体を製造することができず、さらに使用できる樹脂が限定的であった。したがって、接合強度を向上させることができ、さらに使用できる樹脂の範囲を広げることができる、新たな接合方法が求められている。
【0012】
そこで、本発明は、金属と樹脂のような異種材料が高い接合強度で互いに接合された異種材料接合体を製造でき、かつ適用できる材料の範囲を広げることが可能な、異種材料接合体の製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、樹脂及び補強材を含む複合材で形成された部材が、他の材料で形成された部材と高い接合強度で接合された異種材料接合体を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1態様に係る異種材料接合体の製造方法は、
第1材料で形成された第1部材と、前記第1材料とは異なる第2材料で形成された第2部材とが互いに接合された異種材料接合体の製造方法であって、
前記製造方法は、
(I)前記第1部材及び前記第2部材を、前記第1部材の粗化された面と前記第2部材の所定の面とが所定の間隔を置いて互いに対向するように配置することと、
(II)前記第1部材の前記粗化された面及び前記第2部材の前記所定の面にめっき膜を析出させ、前記めっき膜を成長させることによって、前記第1部材の前記粗化された面と前記第2部材の前記所定の面との間に、前記第1部材と前記第2部材とを一体化させるめっき接合層を形成すること、
を含む。
【0014】
本発明の第2態様に係る異種材料接合体は、
樹脂及び導電性を有する補強材を含む複合材で形成された第1部材と、
前記第1部材とは異なる材料で形成された第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間に設けられた、前記第1部材と前記第2部材とを接合するめっき接合層と、
を備え、
前記第1部材は、前記めっき接合層と接する接合面を有し、
前記接合面は、前記補強材の一部が露出した粗化面であり、
前記粗化面において、前記補強材の表面に、前記めっき接合層を構成する金属のめっき膜が付着している。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1態様に係る異種材料接合体の製造方法によれば、金属と樹脂のような異種材料が高い接合強度で互いに接合された異種材料接合体を製造でき、かつ適用できる材料の範囲を広げることが可能である。本発明の第2態様によれば、樹脂及び補強材を含む複合材で形成された部材が、他の材料で形成された部材と高い接合強度で接合された異種材料接合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(a)~(c)は、本実施形態の製造方法の各工程を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施例1の異種材料接合体について第1部材とめっき接合層との界面を示す走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の異種材料接合体の製造方法及び異種材料接合体の実施形態について説明する。
【0018】
本実施形態の異種材料接合体の製造方法は、第1材料で形成された第1部材と、前記第1材料とは異なる第2材料で形成された第2部材とが互いに接合された異種材料接合体の製造方法である。本実施形態の製造方法は、
(I)第1部材及び第2部材を、第1部材の粗化された面と第2部材の所定の面とが所定の間隔を置いて互いに対向するように配置することと、
(II)第1部材の粗化された面及び第2部材の所定の面にめっき膜を析出させ、めっき膜を成長させることによって、第1部材の粗化された面と第2部材の所定の面との間に、第1部材と第2部材とを一体化させるめっき接合層を形成すること、
を含む。
【0019】
上記の本実施形態の製造方法では、第1部材の粗化された面と、第2部材の所定の面とが、接合面として用いられる。本実施形態の製造方法によれば、これらの接合面にめっき膜が析出し、さらにそのめっき膜が成長してめっき接合層が形成され、そのめっき接合層によって第1部材及び第2部材の接合面同士が接合されて第1部材と第2部材とが一体化される。したがって、第1部材と第2部材とは、めっき接合層によって高い接合強度で接合される。なお、本実施形態の製造方法は、めっき金属を第1部材と第2部材とを接合するための接着材として使用する方法とみなすこともできる。また、第1部材の接合面は粗化面であるため、第1部材の接合面に析出するめっき膜は、粗化面に存在する凹部及び/又は微孔の内部にめっき金属が侵入した構造を有する。このような構造によれば、アンカー効果により、第1部材とめっき接合層との接着性がさらに高まるので、その結果、第1部材と第2部材との接合強度がさらに向上する。
【0020】
また、本実施形態の製造方法によれば、第1部材及び第2部材を広い範囲から選択できるという効果も得られる。例えば、従来の方法を用いて樹脂と金属との接合体を製造する場合、樹脂を溶融させて金属と接合させる必要があるため、使用できる樹脂は熱可塑性樹脂に限定されていた。しかし、本実施形態の製造方法は、第1部材及び/又は第2部材が樹脂で形成されている場合に、接合のために樹脂を溶融させる必要がない。そのため、第1部材及び/又は第2部材に用いられる樹脂は、熱可塑性樹脂に限定されず、熱硬化性樹脂であってもよい。さらに、本実施形態の製造方法は、樹脂と金属との接合体に限定されず、樹脂、金属、及びセラミックス等のあらゆる材料で形成された所望の部材を適宜組み合わせて接合体を製造することが可能である。なお、第1部材を形成する第1材料及び第2部材を形成する第2材料のそれぞれに応じて、第1部材の接合面及び第2部材の接合面にめっき膜が析出されるような表面処理を施してもよい。このようなめっき膜を析出させるための表面処理方法として、公知の表面処理方法の中から、部材の材料に応じて適切な方法を選択することができる。
【0021】
以下、本実施形態の製造方法について、
図1(a)~(c)を参照しながら、より具体的に説明する。
図1(a)~(c)は、本実施形態の製造方法の各工程を模式的に示す断面図である。
【0022】
本実施形態の製造方法では、まず、
図1(a)に示されるように、第1部材10及び第2部材20を、第1部材10の粗化された面11と第2部材20の所定の面21とが所定の間隔Dを置いて互いに対向するように、配置する。第1部材10の粗化された面11及び第2部材20の所定の面21は、接合面として用いられる。したがって、以下、面11及び面12を、それぞれ、接合面11及び接合面21と記載することがある。
【0023】
次に、
図1(b)に示されるように、第1部材10の粗化された接合面11及び第2部材20の接合面21に、めっき膜30を析出させる。このめっき膜30を成長させて、
図1(c)に示されるように第1部材10の接合面11と第2部材20の接合面21との間をめっき金属で充填して、めっき接合層40を形成する。このような方法により、異種材料接合体100が製造される。
【0024】
本実施形態の製造方法では、粗化された面を有する部材を第1部材10として用い、その粗化された面を接合面11として利用してもよいし、第1部材10の接合面11となる部分の表面を粗化して、第1部材10に粗化された面11を形成してもよい。すなわち、本実施形態の製造方法は、第1部材10及び第2部材20を配置する前に、第1部材10の表面を粗化して、第1部材10に粗化された面11を形成すること、をさらに含んでいてもよい。
【0025】
第2部材20の接合面21は、粗化されていなくてもよいが、後の工程で形成されるめっき接合層40とのアンカー効果による接合強度の向上を得るために、粗化されていることが望ましい。第2部材20の接合面21が粗化されている場合、粗化された面を有する部材を第2部材20として用い、その粗化された面を接合面21として利用してもよいし、予め、第2部材20の接合面21となる部分の表面を粗化して、第2部材20に粗化された面21を形成してもよい。すなわち、本実施形態の製造方法は、第1部材10及び第2部材20を配置する前に、第2部材20の表面を粗化して、第2部材20に粗化された面21を形成すること、をさらに含んでいてもよい。
【0026】
接合面11と接合面21との間隔Dは、
図1(c)に示されるような、製造される異種材料接合体100のめっき接合層40の厚さに相当する。したがって、目的とする異種材料接合体100のめっき接合層40の厚さに応じて間隔Dを決定して、第1部材10及び第2部材20を配置すればよい。めっき接合層40の厚さは、特には限定されない。上述のとおり、めっき接合層40は、第1部材10の接合面11及び第2部材20の接合面21に析出するめっき膜30が成長することによって形成されているため、第1部材10及び第2部材20のそれぞれと高い接合強度で接合している。したがって、めっき接合層40が薄い場合であっても、高い接合強度で第1部材10と第2部材20とを接合することができる。また、めっき接合層40を構成しているめっき金属自体の強度が高いため、めっき接合層40はそれ自体が高い強度を有する。したがって、めっき接合層40が厚い場合であっても、第1部材10と第2部材20との接合強度が低下することはなく、高い接合強度で第1部材10と第2部材20とを接合することができる。なお、上述のとおり、めっき接合層40の厚さは特には限定されず、第1部材10及び第2部材20の材料並びにめっき接合層40に用いられる金属に応じて適切な厚さを適宜選択することが可能であるが、一例として、めっき接合層40の厚さ範囲、すなわち上記間隔Dの範囲が1μm~500μmであってもよい。なお、間隔Dは、接合面11と接合面21との距離の最小値である。
【0027】
第1部材10を形成する第1材料は、非金属材料を含むことが好ましく、非金属材料からなっていてもよい。この場合、第1材料は、樹脂及びセラミックスからなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、樹脂及びセラミックスからなる群より選択される少なくとも1つからなっていてもよい。この場合、本実施形態の製造方法では、従来の接合方法とは異なり、非金属材料(例えば、樹脂及び/又はセラミックス)を含む第1部材10の接合面11が粗化されており、その粗化面にめっき膜を析出させる。このように形成される第1部材10の接合面11と金属からなるめっき接合層40との界面は、金属部材の粗化された表面に溶融させた樹脂を接触させて固化させる従来の方法によって形成された樹脂と金属との界面と比較すると、より高い接合強度を実現できる。本実施形態の製造方法における接合方法を用いて、ある金属部材とある樹脂部材とを互いに接合した場合、得られる接合体の接合強度(例えば、引張強度及び引張せん断強度)は、同じ金属部材と樹脂部材とを従来の接合方法を用いて接合した場合に得られる接合体の接合強度に対し、例えば1.5倍以上の強度を得ることができる場合があり、3倍以上の強度を得ることができる場合もある。
【0028】
第1材料に用いられる樹脂は、特には限定されず、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂は、特には限定されず、例えば、ポリアミド(例えばPA6)等が例示される。熱硬化性樹脂は、特には限定されず、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、及びフェノール樹脂等が例示される。第1材料に用いられるセラミックスは、特には限定されず、例えばAl2O3及びSiC等が例示される。
【0029】
第1材料は、樹脂と、この樹脂を補強する補強材とを含む複合材であることが好ましい。このような複合材は、軽量かつ高強度である。したがって、このような複合材で形成された第1部材10を備えた異種材料接合体100は、自動車部品、航空機部品、及び電子部品等の広い産業分野の部品へ適用されることができる。複合材に用いられる樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよい。複合材に用いられる熱可塑性樹脂は、特には限定されず、例えば、ポリアミド(例えばPA6)等が例示される。複合材に用いられる熱硬化性樹脂は、特には限定されず、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、及びフェノール樹脂等が例示される。補強材の形状は、特には限定されず、繊維状及びフレーク状等の様々な形状の補強材を使用し得る。また、補強材の材料も、特には限定されず、炭素等の導電性材料であってもよいし、ガラス及び高分子材料等の非導電性材料であってもよい。
【0030】
上記複合材において、補強材は導電性材料で形成されていることが好ましい。この場合、第1部材10の粗化された接合面11に、補強材の一部が露出していることが好ましい。第1部材10がこのような構成を有する場合、接合面11にめっき膜を析出させる際に、接合面11に露出している補強材の表面にめっき金属が析出する。補強材の表面に析出しためっき金属は、アンカー効果を助長するので、接合強度がさらに向上する。
【0031】
上記複合材は、CFRPであることがより好ましい。CFRPは、補強材として炭素繊維を含んでいる。CFRPは、軽量かつ高強度の材料として特に優れており、自動車部品、航空機部品及び電子部品において、特に自動車部品において、より有用な材料である。第1部材10がCFRPで形成されている場合、第1部材10の粗化された接合面11に、炭素繊維の一部が露出していることが好ましい。炭素繊維は導電性を有するので、接合面11にめっき膜を析出させる際に、接合面11に露出している炭素繊維の表面にめっき金属が析出する。CFRPの強度は、主に炭素繊維に寄与している。したがって、炭素繊維上に析出しためっき金属によってめっき接合層40と炭素繊維とが結合することにより、第1部材10とめっき接合層40との接合強度が大幅に向上する。
【0032】
第2部材20を形成する第2材料は、金属及び非金属材料のいずれであってもよい。第2材料が非金属材料を含む場合、当該非金属材料は、樹脂及びセラミックスからなる群より選択される少なくとも1つを含んでもよい。第2材料に用いられる樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよい。第2材料に用いられる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びセラミックスは、特には限定されない。第2材料に用いられ得る熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びセラミックスの例は、第1部材10の第1材料に用いられ得る熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及びセラミックスの例と同じである。
【0033】
第2材料は、樹脂と、この樹脂を補強する補強材とを含む複合材であってもよい。第2材料として用いられる複合材は、特には限定されない。第2材料として用いられ得る複合材の例は、第1部材10の第1材料に用いられ得る複合材の例と同じである。
【0034】
第2材料は、例えば金属であってもよい。第2材料が金属である場合、金属の種類は特には限定されず、合金であってもよい。第2材料は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。
【0035】
第1部材10と第2部材20との材料の組み合わせは、特には限定されない。例えば、第1部材10及び第2部材20の両方が、樹脂で形成されていてもよいし、樹脂及び補強材を含む複合材で形成されていてもよい。好ましい組み合わせとして、第1部材10が非金属材料で形成され、第2部材20が金属で形成されている組み合わせが挙げられる。この場合、第1部材10は、樹脂、又は、樹脂及び補強材を含む複合材で形成されていることがより好ましく、CFRPが特に好ましい。金属と、樹脂又は複合材との接合体は、自動車部品等へ好適に適用され得る。特に、第1部材10がCFRPで形成され、第2部材20がアルミニウム及び/又はアルミニウム合金で形成されている場合、製造される異種材料接合体100は、自動車部品等へより好適に適用され得る。
【0036】
本実施形態の製造方法において、第1部材10の粗化された接合面11を形成する場合、粗化の方法は特には限定されず、第1部材10を形成する第1材料に応じて公知の粗化の方法の中から適切な方法を適宜選択して用いることができる。粗化の方法として、ケミカルエッチング、陽極酸化、及びサンドペーパーによる研磨等が挙げられる。第2部材20の接合面21を粗化する場合も、同様に公知の粗化の方法を用いることができる。第1部材10及び第2部材20が、CFRPのような導電性の補強材を含む複合材で形成されている場合であって、かつ接合面11及び21を粗化する場合は、導電性の補強材が露出するまで表面を粗化することが好ましい。
【0037】
第1部材10の粗化された接合面11に、下地めっき膜を形成してもよい。すなわち、本実施形態の製造方法は、第1部材10及び第2部材20を配置する前に、第1部材10の粗化された面に下地めっき膜を形成すること、をさらに含んでいてもよい。また、第2部材20の接合面21に下地めっき膜を形成してもよい。
【0038】
例えば第1部材10が非導電性の材料(例えば、樹脂又はセラミックス)のみから形成されている場合、接合面11上へのめっき膜の析出を可能とするための前処理を行うことが好ましい。例えば、粗化された接合面11上に無電解めっきによってニッケルめっき膜等の下地めっき膜を形成してもよいし、接合面11にスルホン基等の官能基を導入して導電性を付与してもよい。第2部材20が非導電性の材料のみから形成されている場合も、第1部材10の場合と同様に、例えば、接合面21上に無電解めっきによってニッケルめっき膜等の下地めっき膜を形成してもよいし、接合面21にスルホン基等の官能基を導入して導電性を付与してもよい。
【0039】
本実施形態の製造方法では、所定の間隔Dを置いて配置された第1部材10の接合面11及び第2部材20の接合面21に、めっき膜30を析出させる。めっき膜30の金属は、特には限定されない。めっき膜30の金属として、例えば、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、インジウム、白金、金、及び鉛が例示される。
【0040】
例えば、所定の間隔Dを置いて配置された第1部材10及び第2部材20をカソードとし、形成するめっき膜30の金属をアノードとして用いて、めっき浴中で電気めっきを行う。第1部材10の接合面11及び第2部材20の接合面21のみにめっき膜が析出するように、第1部材10の接合面11及び第2部材20の接合面21以外の部分をマスキングしてもよい。
【0041】
めっき膜30が成長して第1部材10の接合面11と第2部材20の接合面21との間がめっき金属で充填されるまで電気めっきを行い、第1部材10の接合面11と第2部材20の接合面21との間に、第1部材10と第2部材20とを一体化させるめっき接合層40を形成する。なお、めっき接合層40は、第1部材10の接合面11と第2部材20の接合面21との間の全体を完全に満たしている必要はなく、第1部材10の接合面11と第2部材20の接合面21とがめっき接合層40によって接合されていれば、めっき金属によって満たされていない部分が存在していてもよい。また、第1部材10が樹脂及び補強材を含む複合材で形成されている場合、異種材料接合体100の断面を観察したときに、補強材の一部がめっき接合層40のみに接し、かつ空隙には接しないように、めっき接合層40を充填してもよい。
【0042】
めっき接合層40は、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、インジウム、白金、金、及び鉛からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。より接合強度を向上させるために、めっき接合層40は、銅、ニッケル、及び亜鉛からなる群より選択される少なくとも1つを含んでいることが好ましい。
【0043】
以上の方法により、異種材料接合体100を製造することができる。本実施形態の製造方法によって製造された異種材料接合体100は、従来の方法で製造された異種材料接合体と比較して、非常に高い接合強度を有している。例えば、第1部材10がCFRP形成されており、第2部材20が金属(例えば、アルミニウム合金)で形成されており、かつ本実施形態の製造方法で製造された異種材料接合体100は、50MPa以上の引張強度及び70MPa以上の引張せん断強度を実現することが可能である。
【0044】
図1(a)~(c)では、第1部材10及び第2部材20が板材である例が示されているが、第1部材10及び第2部材20の形状は、これに限定されない。本実施形態の製造方法では、第1部材10と第2部材20とを、めっき金属によって接合して一体化する。したがって、本実施形態の製造方法で使用できる第1部材10及び第2部材20の形状の自由度は高い。例えば、第1部材10及び第2部材20が曲面を有する形状のような板状以外の形状を有する場合であっても、本実施形態の製造方法によれば、所望の面で第1部材10と第2部材20とを接合することが可能である。
【0045】
上述のとおり、本実施形態の製造方法によって製造される異種材料接合体は、第1部材がCFRPのような複合材で形成されていることが好ましい。すなわち、本実施形態の異種材料接合体は、例えば、以下のように特定され得る:
樹脂及び導電性有する補強材を含む複合材で形成された第1部材と、
第1部材とは異なる材料で形成された第2部材と、
第1部材と第2部材との間に設けられた、前記第1部材と前記第2部材とを接合するめっき接合層と、
を備え、
第1部材は、めっき接合層と接する接合面を有し、
上記接合面は、補強材の一部が露出した粗化面であり、
上記粗化面において、補強材の表面に、めっき接合層を構成する金属のめっき膜が付着している。
【0046】
本実施形態の異種材料接合体において、第1部材を形成する複合材はCFRPが好ましい。
【0047】
本実施形態の異種材料接合体において、第2部材は、金属で形成されていることが好ましい。この場合、第2部材は、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる群より選択される少なくとも1つで形成されていることがより好ましい。
【実施例0048】
以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
[実施例1]
(異種材料接合体の作製)
エポキシ樹脂及び炭素繊維を含むCFRPで形成された、縦約20mm、横約5mm、厚さ1mmの板材を用意した。このCFRPからなる板材の一方の主面を、KMnO4によるエポキシ樹脂の選択的なエッチングで粗化した。エッチングは、0.2mol/Lの過マンガン酸カリウム及び4mol/Lの水酸化ナトリウムを含むエッチング液中で、温度100℃、時間45分の条件で行われた。さらに、粗化した面にスルホン基を導入した。スルホン基導入は、14mol/Lの硫酸溶液中で、温度60℃、時間10分の条件で行った。このCFRPからなる板材を、粗化した面を接合面とする第1部材とした。
【0050】
アルミニウム合金A6061で形成された、縦約20mm、横約5mm、厚さ1mmの板材を用意した。このアルミニウム合金からなる板材の一方の主面を、0.3MのH3PO4水溶液を電解液として用いて陽極酸化して、ポーラス化した。このアルミニウム合金からなる板材を、このポーラス化した粗化面を接合面とする第2部材とした。
【0051】
第1部材と第2部材とを、第1部材の接合面と第2部材の接合面とが約100μmの間隔を置いて対向するように配置した。約100μmの間隔を置いて配置された第1部材及び第2部材をカソードとし、金属銅をアノードとして用いて、めっき浴中で銅めっきを行った。第1部材の接合面と第2部材の接合面との間をめっき銅で充填することにより、めっき接合層を形成した。使用しためっき浴及び銅めっきの条件は、表1に示されている。これにより、実施例1の異種材料接合体が作製された。
【0052】
【0053】
(接合強度の測定)
実施例1の異種材料接合体の引張強度及び引張せん断強度を測定した。引張強度は、平行部長さ20mm×幅5mm×厚さ1mmのサンプルを用い、5mm/分の引張速度で測定された。引張せん断強度は、JIS K 6850に準拠して測定された。その結果、実施例1の異種材料接合体は、52MPaの引張強度及び69MPaの引張せん断強度を有していた。
【0054】
(接合界面の観察)
実施例1の異種材料接合体について、第1部材とめっき接合層との界面をSEM画像を用いて観察した。
図2は、実施例1の異種材料接合体について第1部材とめっき接合層との界面を示すSEM画像である。実施例1の異種材料接合体では、第1部材の接合面において、補強材である炭素繊維の一部が露出しており、かつその炭素繊維の表面に銅めっき膜が付着していることが確認された。
【0055】
[実施例2]
(異種材料接合体の作製)
エポキシ樹脂及び炭素繊維を含むCFRPで形成された、縦約20mm、横約5mm、厚さ1mmの板材を用意した。このCFRPからなる板材の一方の主面を、KMnO4によるエポキシ樹脂の選択的なエッチングで粗化した。さらに、粗化した面に下地めっき膜としてニッケルめっき膜を形成した。このCFRPからなる板材を、粗化した面を接合面とする第1部材とした。下地めっき膜は、電解ニッケルめっきにより形成された。本実施例で実施された電解ニッケルめっきにおいて用いられためっき浴及びめっきの条件は、表2に示されている。
【0056】
【0057】
第2部材として、実施例1で用いた第2部材と同様のものを使用した。
【0058】
第1部材と第2部材との接合は、実施例1と同様の方法で銅めっきを実施することによって行われた。これにより、実施例2の異種材料接合体が作製された。
【0059】
(接合強度の測定)
実施例2の異種材料接合体の引張せん断強度を、実施例1と同様の方法で測定した。その結果、実施例2の異種材料接合体の引張せん断強度は、87MPaと非常に高かった。
【0060】
[実施例3]
(異種材料接合体の作製)
エポキシ樹脂及び炭素繊維を含むCFRPで形成された、縦約20mm、横約5mm、厚さ1mmの板材を用意した。このCFRPからなる板材の一方の主面を、KMnO4によるエポキシ樹脂の選択的なエッチングで粗化した。エッチング処理後、さらに陽極酸化処理を行って、表面に露出している炭素繊維の表面を凹凸にした。このCFRPからなる板材を、粗化した面を接合面とする第1部材とした。陽極酸化処理は、1mol/Lの硫酸溶液中で、電位2V、時間30分の条件で行った。
【0061】
第2部材として、実施例1で用いた第2部材と同様のものを使用した。
【0062】
第1部材と第2部材との接合は、実施例1と同様の方法で銅めっきを実施することによって行われた。これにより、実施例3の異種材料接合体が作製された。
【0063】
(接合強度の測定)
実施例3の異種材料接合体の引張せん断強度を、実施例1と同様の方法で測定した。その結果、実施例3の異種材料接合体の引張せん断強度は、139MPaと非常に高かった。
【0064】
[実施例4]
(異種材料接合体の作製)
ポーラス構造を有する、縦約20mm、横約5mm、厚さ1mmのアルミナ板(アズワン株式会社製「AZP50」)を、実施例4の第1部材として用いた。この第1部材について、第2部材との接合面となる面に下地めっき膜としてニッケルめっき膜を形成した。下地めっき膜は、無電解ニッケルめっきにより形成された。本実施例で実施された無電解ニッケルめっきにおいて用いられためっき浴及びめっきの条件は、表3に示されている。
【0065】
【0066】
第2部材として、実施例1で用いた第2部材と同様のものを使用した。
【0067】
第1部材と第2部材との接合は、実施例1と同様の方法で銅めっきを実施することによって行われた。これにより、実施例4の異種材料接合体が作製された。
【0068】
(接合強度の測定)
実施例4の異種材料接合体の引張強度を、実施例1と同様の方法で測定した。その結果、実施例4の異種材料接合体の引張強度は、10MPaであった。
【0069】
[実施例5]
(異種材料接合体の作製)
縦約20mm、横約5mm、厚さ1mmのアルミナ板(アズワン社製「アルミナ板99.5」)を、実施例5の第2部材として用いた。この第2部材について、第1部材との接合面となる面に下地めっき膜としてニッケルめっき膜を形成した。下地めっき膜は、無電解ニッケルめっきにより形成された。本実施例で実施された無電解ニッケルめっきの方法は、実施例4で実施された無電解ニッケルめっきと同じであった。
【0070】
第1部材として、実施例1で用いた第2部材と同様のものを使用した。
【0071】
第1部材と第2部材との接合は、実施例1と同様の方法で銅めっきを実施することによって行われた。これにより、実施例5の異種材料接合体が作製された。
【0072】
(接合強度の測定)
実施例5の異種材料接合体の引張強度を、実施例1と同様の方法で測定した。その結果、実施例5の異種材料接合体の引張強度は、3MPaであった。
【0073】
[実施例6]
(異種材料接合体の作製)
縦約20mm、横約5mm、厚さ1mmのアルミナ板(アズワン社製「アルミナ板99.5」)を用意した。このアルミナ板の一方の主面を、エッチングにより粗化した。このアルミナ板を、粗化した面を接合面とする第1部材とした。エッチング液として10質量%NaOH+10質量%NaClの溶液を用い、100℃、15分の条件で、エッチングを行った。この第1部材について、第2部材との接合面となる粗化面に、下地めっき膜としてニッケルめっき膜を形成した。下地めっき膜は、無電解ニッケルめっきにより形成された。本実施例で実施された無電解ニッケルめっきの方法は、実施例4で実施された無電解ニッケルめっきと同じであった。
【0074】
第2部材として、実施例1で用いた第2部材と同様のものを使用した。
【0075】
第1部材と第2部材との接合は、実施例1と同様の方法で銅めっきを実施することによって行われた。これにより、実施例6の異種材料接合体が作製された。
【0076】
(接合強度の測定)
実施例6の異種材料接合体の引張強度を、実施例1と同様の方法で測定した。その結果、実施例6の異種材料接合体の引張強度は、17MPaであった。
【0077】
以下の表4に、実施例1~6の異種材料接合体について、第1部材、第2部材、めっき接合層、及び接合強度が示されている。
【0078】
【0079】
以上の実施例の結果から明らかなように、本発明の異種材料接合体の製造方法によって製造された異種材料接合体は、高い接合強度を有する。
本発明の異種材料接合体の製造方法によれば、高い接合強度を有する異種材料接合体が得られる。本発明の製造方法で得られる高い接合強度を有する異種材料接合体は、広い産業分野において部品用途に利用でき、特に自動車部品、航空機部品、及び電子部品等の用途において有用である。