(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039671
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】コイルボビン及び変成器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/32 20060101AFI20220303BHJP
H02K 3/46 20060101ALI20220303BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20220303BHJP
H01F 41/12 20060101ALN20220303BHJP
【FI】
H01F27/32 150
H02K3/46 B
H01F30/10 E
H01F41/12 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144814
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 剛
(72)【発明者】
【氏名】林 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 由太
(72)【発明者】
【氏名】大野 裕之
【テーマコード(参考)】
5E044
5H604
【Fターム(参考)】
5E044BA01
5E044BB02
5E044BC01
5E044CA08
5H604AA08
5H604PB04
(57)【要約】
【課題】巻線を整列させて複数のコイルを取り付けることができ、二つのコイルを接続する接続線の絶縁を確保することができるコイルボビン及び変成器を提供する。
【解決手段】コイルボビン(2)は、環状をなし、外周に沿って形成された溝(2d)を有する枠体(200)と、前記溝の内側に周方向に沿って形成され、環状をなす壁(2a、2b、2c)と、前記溝の内側にて前記壁の一面側に形成された第1室(21)と、前記溝の内側にて前記壁の他面側に形成された第2室(22)との間に形成され、絶縁させた状態で巻線を案内する案内部(2e、2k)とを備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状をなし、外周に沿って形成された溝を有する枠体と、
前記溝の内側に周方向に沿って形成され、環状をなす壁と、
前記溝の内側にて前記壁の一面側に形成された第1室と、前記溝の内側にて前記壁の他面側に形成された第2室との間に形成され、絶縁させた状態で巻線を案内する案内部と
を備える
コイルボビン。
【請求項2】
前記案内部の少なくとも一部は、前記壁の内部にて、前記壁の一面及び他面の間に形成される
請求項1に記載のコイルボビン。
【請求項3】
前記案内部は、
前記壁の縁部に切欠状に形成され、前記第1室に連なる凹部と、
軸方向にて前記凹部の隣に配置され、周方向における第1位置及び該第1位置とは異なる第2位置の間であって、前記壁の最外周位置及び最内周位置の間に形成された、前記第2室に連なる案内面と
を有する
請求項1又は2に記載のコイルボビン。
【請求項4】
軸方向から視認した場合、前記壁は矩形状をなし、
前記壁のいずれか一つの辺部に前記案内部が設けられている
請求項1から3のいずれか一つに記載のコイルボビン。
【請求項5】
前記壁の複数の辺部に亘って前記案内部が設けられている
請求項1から3のいずれか一つに記載のコイルボビン。
【請求項6】
環状をなし、外周に沿って形成された溝を有する枠体と、
前記溝に巻き付けられる巻線と、
前記溝の内側に周方向に沿って形成され、環状をなす壁と、
前記溝の内側にて前記壁の一面側に形成された第1室と、前記溝の内側にて前記壁の他面側に形成された第2室との間に形成され、絶縁させた状態で前記巻線を案内する案内部と
を備える
変成器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、巻線が巻かれるコイルボビン及び変成器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、環状の枠体の外周面に、周方向に延びる溝を形成したコイルボビンが開示されている。溝の内側には、周方向に延びる分割壁が形成されている。分割壁の両側それぞれに、コイルが取り付けられる。分割壁の一面側又は他面側のコイルの軸方向幅は、分割壁を設けずに溝に取り付けられたコイルに比べて短くなる。コイルは、巻線からなる層を径方向に重ねるように、形成されており、コイルの軸方向幅を短くすることによって、層間の耐電圧を高く保つ必要がなくなる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイルボビンには、例えば、以下のようにしてコイルが取り付けられる。分割壁の一面側に巻線を巻いて第1コイルを形成し、巻線を切断する。次に、分割壁の他面側に巻線を巻いて第2コイルを形成し、巻線を切断する。その後、作業者は、第1コイル及び第2コイルを、絶縁処理した線又は圧着スリーブ等で直接接続する。
【0005】
近年、変成器の製造において、省人化が求められている。例えば、機械を使用して、第1コイルを形成した後、第2コイルを続けて形成することが考えられる。しかし、第1コイル及び第2コイルを接続する巻線の一部、即ち接続線は、第2コイル側にて分割壁に沿って配置され、第2コイルの整列巻きを阻害する。また前記接続線は、第2コイルの各層に接触するので、前記接続線に対し絶縁処理が必要である。
【0006】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、巻線を整列させて複数のコイルを取り付けることができ、二つのコイルを接続する接続線の絶縁を確保することができるコイルボビン及び変成器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係るコイルボビンは、環状をなし、外周に沿って形成された溝を有する枠体と、前記溝の内側に周方向に沿って形成され、環状をなす壁と、前記溝の内側にて前記壁の一面側に形成された第1室と、前記溝の内側にて前記壁の他面側に形成された第2室との間に形成され、絶縁させた状態で巻線を案内する案内部とを備える。
【0008】
本開示の一実施形態においては、第1室と第2室との間に案内部を設けて、巻線を整列させ、接続線の絶縁を確保して、線材を案内する。
【0009】
本開示の一実施形態に係るコイルボビンは、前記案内部の少なくとも一部は、前記壁の内部にて、前記壁の一面及び他面の間に形成される。
【0010】
本開示の一実施形態においては、案内部によって、壁の一面及び他面の間に接続線は配置されるので、接続線の絶縁を確保することができる。
【0011】
本開示の一実施形態に係るコイルボビンは、前記案内部は、前記壁の縁部に切欠状に形成され、前記第1室に連なる凹部と、軸方向にて前記凹部の隣に配置され、周方向における第1位置及び該第1位置とは異なる第2位置の間であって、前記壁の最外周位置及び最内周位置の間に形成された、前記第2室に連なる案内面とを有する。
【0012】
本開示の一実施形態においては、例えば、凹部及び傾斜部を介して、第1室から第2室に接続線を案内することができる。
【0013】
本開示の一実施形態に係るコイルボビンは、軸方向から視認した場合、前記壁は矩形状をなし、前記壁のいずれか一つの辺部に前記案内部が設けられている。
【0014】
本開示の一実施形態においては、壁のいずれか一つの辺部に案内部を形成する。一つの辺部に案内部を形成することにより、案内部の構造が簡素化され、金型によるコイルボビンの製造がしやすくなる。
【0015】
本開示の一実施形態に係るコイルボビンは、前記壁の複数の辺部に亘って前記案内部が設けられている。
【0016】
本開示の一実施形態においては、壁の複数の辺部に亘って案内部を形成しているので、第1室及び第2室の間における接続線の案内は徐々に行われる。そのため、機械を使用して自動的に巻線を取り付ける場合、失敗し難い。
【0017】
本開示の一実施形態に係る変成器は、環状をなし、外周に沿って形成された溝を有する枠体と、前記溝に巻き付けられる巻線と、前記溝の内側に周方向に沿って形成され、環状をなす壁と、前記溝の内側にて前記壁の一面側に形成された第1室と、前記溝の内側にて前記壁の他面側に形成された第2室との間に形成され、絶縁させた状態で前記巻線を案内する案内部とを備える。
【0018】
本開示の一実施形態においては、第1室と第2室との間に案内部を設けてあるので、第1室又は第2室に、二つのコイルを接続する巻線の一部、即ち接続線は配置されず、第1室及び第2室に巻線を整列させることができる。また接続線の絶縁を確保することができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示の一実施形態に係るコイルボビン及び変成器にあっては、第1室と第2室との間に案内部を設けてあるので、第1室又は第2室に、二つのコイルを接続する巻線の一部、即ち接続線は配置されず、第1室及び第2室に巻線を整列させることができる。また接続線の絶縁を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施の形態1に係る変成器の略示分解斜視図である。
【
図2】左上方向から視認したコイルボビンの略示斜視図である。
【
図3】右上方向から視認したコイルボビンの斜視図である。
【
図6】
図5に示すVI-VI線を切断線とした略示正面断面図である。
【
図7】
図4のVII線で囲った部分の略示部分拡大平面図である。
【
図8】
図7に示すVIII-VIII線を切断線とした略示部分拡大左側面図である。
【
図9】左上方向から視認した実施の形態2に係るコイルボビンの略示斜視図である。
【
図12】
図10に示すXII-XII線を切断線とした略示正面断面図である。
【
図13】
図10に示すXIII-XIII線を切断線とした略示断面図である。
【
図14】
図10に示すXIV-XIV線を切断線とした略示断面図である。
【
図15】コイルボビンの略示部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施の形態1)
以下本発明を、実施の形態1に係る変成器を示す図面に基づいて説明する。以下の説明では、図に示す上下前後左右を使用する。
図1は、変成器の略示分解斜視図である。
【0022】
変成器1は樹脂製のコイルボビン2を備え、コイルボビン2は、矩形環状をなす枠体200を備える。枠体200の四隅は円弧形に湾曲している。枠体200の軸方向は前後方向に対応し、枠体200の長辺部に平行な方向は上下方向に対応し、枠体200の短辺部に平行な方向は左右方向に対応する。
【0023】
枠体200の外周面には周方向に延びる溝2dが形成され、該溝2dは枠体200の全周に設けられている。前記溝2dの底には、径方向外向きに突出した三つの壁2a、2b、2cが形成されている。壁2a、2b、2cは周方向に延び、枠体200の全周に亘って設けられている。壁2aは後側に配置され、壁2cは前側に配置され、壁2bは、壁2a及び壁2cの間に配置される。
【0024】
壁2aの後面と溝2dの後側面2daとの間に巻線が巻回され、一次コイル3が取り付けられる。壁2aの前面と壁2bの後面との間に巻線が巻回され、一次コイル4が取り付けられる。壁2bの前面と壁2cの後面との間に巻線が巻回され、一次コイル5が取り付けられる。壁2cの前面と溝2dの前側面2dbとの間に巻線が巻回され、一次コイル6が取り付けられる。即ち、コイルボビン2は一次コイル3~6を保持する。なお、後述するように、壁2cの後面と壁2bの前面との間に、第1室が形成され、壁2cの前面と溝2dの前側面2dbとの間に、第2室が形成される。
【0025】
枠体200の径方向内側に、二次コイル8(以下、内側二次コイル8という)が設けられている。内側二次コイル8の外周の径方向寸法は、コイルボビン2の内周の径方向寸法及び軸方向寸法に対応し、内側二次コイル8はコイルボビン2の内側に収まる。内側二次コイル8は、自身の形状を保持する構造を備え、ボビンなどの保持機構が無くとも、コイル形状を保つことができる。内側二次コイル8は、例えば平角線によって構成され、平角線を折り曲げることによって、形成されている。平角線に代えて、複数の丸線を一体化した線群を使用してもよい。例えば、複数の丸線をバンドによって拘束するか又は樹脂によって固めて、線群は作成される。線群は平角線と同様、形状保持が実現できる。
【0026】
枠体200の径方向外側に、二次コイル9(以下、外側二次コイル9という)が設けられている。外側二次コイル9の内周の径方向寸法及び軸方向寸法は、コイルボビン2の外周の径方向寸法に対応し、コイルボビン2は外側二次コイル9の内側に収まる。外側二次コイル9は、自身の形状を保持する構造を備え、ボビンなどの保持機構が無くとも、コイル形状を保つことができる。外側二次コイル9は、例えば平角線によって構成され、平角線を折り曲げることによって、形成されている。なお、平角線に限らず、自身の形状を保持することができる線材、例えば、コイル形状の保持が可能な直径を有する丸線によって、外側二次コイル9、内側二次コイル8を構成してもよい。
【0027】
枠体200、外側二次コイル9及び内側二次コイル8の二つの長辺部は、第1カバー部10a及び第2カバー部10bによって、覆われる。第1カバー部10aは、二つの長辺部に対応した二つの半円筒部を有する。第2カバー部10bは、二つの長辺部に対応した二つの半円筒部を有する。第1カバー部10a及び第2カバー部10bは前後方向に対向し、半円筒部の内側に長辺部が配置されるように、枠体200、外側二次コイル9及び内側二次コイル8に取り付けられる。第1カバー部10a及び第2カバー部10bの周囲には、円筒形の鉄心(図示略)が設けられる。
【0028】
図2は、左上方向から視認したコイルボビン2の略示斜視図、
図3は、右上方向から視認したコイルボビン2の斜視図、
図4は、コイルボビン2の略示平面図、
図5は、コイルボビン2の略示左側面図、
図6は、
図5に示すVI-VI線を切断線とした略示正面断面図、
図7は、
図4のVII線で囲った部分の略示部分拡大平面図、
図8は、
図7に示すVIII-VIII線を切断線とした略示部分拡大左側面図である。
【0029】
壁2cの上部20は、前面部2ca及び後面部2cbを備える。
図6に示すように、正面視において、前面部2caは、右辺及び左辺を上底及び下底とした台形状をなす。前面部2caの上辺は右側に向かうに従って下降傾斜する。前面部2caの下辺は、枠体200の内周に沿って、左右に延びる。
図4に示すように、前面部2caの前面右部は、右側部分が左側部分よりも後に位置するように、僅かに傾斜している。即ち、前面部2caの右部分の前後幅は、右側に向かうに従って短くなる。
【0030】
後面部2cbは、左右に延びる矩形状をなし、前面部2caの後面に対向するように配置されている。後面部2cb及び前面部2caは、前後に適長離れている。後面部2cbの右端部分は、前面部2caよりも右側に延び、傾斜面2ccに連なる。傾斜面2ccは、右側部分が左側部分よりも前に位置するように、傾斜する。後面部2cbの右端部分及び傾斜面2ccの前側に、前面部2caは配置されていない。
【0031】
後面部2cbの左部分における上縁部分に切欠状の凹部2eが形成されている。
図2~
図4、
図6及び
図7に示すように、凹部2eは、底面2fと、傾斜面2gと、垂直面2hとを備える。
【0032】
底面2fは左右に延びる。底面2fの右端に傾斜面2gは連なる。傾斜面2gは右側に向かうに従って上昇傾斜する。垂直面2hは、底面2fの左端に連なり、底面2fから略垂直に上側に延びる。
図7に示すように、垂直面2hは底面2fよりも前側に延び、前面部2caの後面の左辺に連なる。
【0033】
前面部2ca及び後面部2cbの間に、左右に延びる案内面2kが形成されている。案内面2kは右側に向かうに従って下降傾斜する。案内面2kは、前面部2caの上辺よりも下側に配置され、前面部2caの上辺に略平行である。案内面2kの左端は垂直面2hの前部に連なる。
【0034】
図4に示すように、案内面2kは、右側部分が左側部分よりも前に位置するように、傾斜している。即ち、案内面2kは右側に向かうに従って、前面部2caの前面に近づくように、下降傾斜する。案内面2kは、前面部2caの右辺よりも右側に延び、傾斜面2ccの下辺に連なる。
【0035】
左右方向、換言すれば、枠体200の周方向における垂直面2hの位置を第1位置P1とし、傾斜面2ccの位置を第2位置P2とした場合、案内面2kは、第1位置P1及び第2位置P2の間に形成される(
図6参照)。また、枠体200の径方向において、垂直面2hは壁2cの最外周位置に配され、傾斜面2ccの下辺は壁2cの最内周位置に配されている。即ち、案内面2kは、壁2cの最外周位置及び最内周位置の間に形成されている。
図6に示すように、枠体200の右上隅部は、正面視において、径方向外向きに突出した円弧形に湾曲しており、案内面2kは、前記円弧形の接線方向に延びる。
【0036】
傾斜面2ccよりも右側及び垂直面2hよりも左側において、壁2cは、単一の壁を構成する。即ち、壁2cの上部20は、前後に並んだ前面部2ca及び後面部2cbを有し、二重壁構造を形成するが、壁2cの他の部分は二重構造を形成しない。
【0037】
壁2cの後面と壁2bの前面との間に、径方向外側が開口した第1室21が形成されている。壁2cの前面と、溝2dの前側面2dbとの間に、径方向外側が開口した第2室22が形成されている。凹部2eは第1室21に連なる。案内面2kは、凹部2e及び第2室22に連なる。即ち、凹部2e及び案内面2kは、第1室21及び第2室22を前後に連通させる。前面部2ca、後面部2cb、凹部2e及び案内面2kは、案内部に含まれる。
【0038】
第1室21に一次コイル5が取り付けられた後、一次コイル5の最外周位置の巻線は、凹部2e、案内面2k及び傾斜面2ccによって、第2室22に案内され、第2室22の底面に至り、壁2cの前面に沿って配置される。第2室22にて、巻線は巻回され、一次コイル6が取り付けられる。案内面2kは、前面部2ca及び後面部2cbの間に挟まれているので、案内面2kに配置された巻線、即ち、隣合う二つの一次コイル5及び6を接続する接続線は、一次コイル6に接触しない。即ち、接続線は一次コイル6から絶縁される。
【0039】
一次コイル5の最高電位と、一次コイル6の最高電位との差は、場合によって、2000Vにもなるが、上述のように、案内部によって、前記接続線と一次コイル6との絶縁を確実に行うことができる。
【0040】
なお、壁2a及び壁2bそれぞれの上部にも、前面部2ca、後面部2cb、凹部2e及び案内面2k等と同様な構成が形成されているが、その詳細な説明を省略する。隣合う二つの一次コイル3及び4を接続する接続線は一次コイル4から絶縁され、隣合う二つの一次コイル4及び5を接続する接続線は一次コイル5から絶縁される。
【0041】
また、一次コイル3及び4を接続する接続線は、壁2aの前面に沿うように、溝2dの底面に案内される。また一次コイル4及び5を接続する接続線は、壁2bの前面に沿うように、溝2dの底面に案内される。
【0042】
また壁2cの上部20にのみ、前面部2ca、後面部2cb、凹部2e及び案内面2kを形成することにより、案内部の構造が簡素化され、金型によるコイルボビン2の製造がしやすくなる。なお壁2cの上部20は、正面視矩形をなす壁2cの辺部の一例であり、壁2cの右部、左部又は下部に、前面部2ca、後面部2cb、凹部2e及び案内面2kを形成してもよい。
【0043】
実施の形態1に係る変成器1及びコイルボビン2にあっては、第1室21と第2室22との間に案内部を設けてあるので、第1室21又は第2室22に接続線は配置されず、第1室21及び第2室22に巻線を整列させることができる。また接続線の絶縁を確保することができる。
【0044】
また案内部によって、前面部2ca及び後面部2cbの間に接続線は配置されるので、接続線の絶縁を確保することができる。また凹部2e及び案内面2kを介して、第1室21から第2室22に接続線を案内することができる。
【0045】
また周方向における第1位置P1、及び該第1位置P1から離れた第2位置P2に亘って案内部を形成しているので、第1室21及び第2室22の間における接続線の案内は徐々に行われる。そのため、機械を使用して自動的に巻線を取り付ける場合でも、失敗し難い。
【0046】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係る変成器1を示す図面に基づいて説明する。実施の形態2に係る構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図9は、左上方向から視認したコイルボビン2の略示斜視図、
図10は、コイルボビン2の略示左側面図、
図11は、コイルボビン2の略示平面図、
図12は、
図10に示すXII-XII線を切断線とした略示正面断面図、
図13は、
図10に示すXIII-XIII線を切断線とした略示断面図、
図14は、
図10に示すXIV-XIV線を切断線とした略示断面図、
図15は、コイルボビン2の略示部分拡大斜視図である。
【0047】
壁2cの左部23の縁部分に、切欠状の凹部2Eが形成されている。
図13に示すように、凹部2Eは壁2cの後部に形成されている。以下、壁2cにおける凹部2Eが形成された部分を、後面部2c2と称し、凹部2Eが形成されていない前部を前面部2c1と称する。
【0048】
図12に示すように、凹部2Eの上下方向中央部から、壁2cの上部20に亘って、案内面2c3が形成されている。案内面2c3は、第1案内面31、第2案内面32及び第3案内面33を備える。
図14に示すように、第1案内面31は、左部23において、後面部2c2の前側部分に形成されている。第1案内面31は上下に延び、上側部分が下側部分よりも右に位置するように、傾斜する。第1案内面31は、前面部2c1及び後面部2c2の間に配置される。
【0049】
第2案内面32は、左部23及び上部20の連結部分に形成されている。第2案内面32は左右に延び、第2案内面32の左端は第1案内面31の上端に連なる。第2案内面32は、右側に向かうに従って上昇傾斜する。
【0050】
上部20は後面部2c2に連なる。上部20の前面における左右方向中央部に、傾斜面20aが形成されている。傾斜面20aは、右側部分が左側部分よりも前に位置するように、傾斜する。第3案内面33は上部20に形成されている。第3案内面33は左右に延び、第3案内面33の左端は第2案内面32の右端に連なり、第3案内面33の右端は傾斜面20aの左端に連なる。
【0051】
前面部2c1は、凹部2Eの下端と、傾斜面20aの左端との間に配置され、正面視逆L形をなす。
図9に示すように、前面部2c1の右端は、上部20に連結しない。
図9、
図14及び
図15に示すように、案内面2c3は、左部23及び上部20に亘って、前面部2c1と後面部2c2との間に形成され、正面視逆L形をなす。
【0052】
凹部2Eの底面における第1案内面31の基端位置、換言すれば、第1案内面31の下端位置を第1位置P1とし、前面部2c1の右端位置、換言すれば、第3案内面33の右端位置を第2位置P2とした場合、案内面2c3は、枠体200の周方向における第1位置P1及び第2位置P2の間に形成される(
図11及び
図12参照)。また枠体200の径方向において、凹部2Eの底面は、壁2cの最外周よりも僅かに内周側に配置され、第3案内面33の右端は壁2cの最内周位置に配置されている。即ち、案内面2c3は、壁2cの最外周位置及び最内周位置の間に形成されている。前面部2c1、後面部2c2、凹部2E及び案内面2c3は、案内部に含まれる。
【0053】
第1位置P1及び第2位置P2の間において、壁2cは、案内面2c3を挟んで前後に離れた前面部2c1及び後面部2c2を有し、即ち、二重壁構造を形成するが、壁2cの他の部分は二重構造を形成しない。
【0054】
第1室21に一次コイル5が取り付けられた後、一次コイル5の最外周位置の巻線は、凹部2E、案内面2c3及び傾斜面20aによって、第2室22に案内され、第2室22の底面に至り、壁2cの前面に沿って配置される。第2室22にて、巻線は巻回され、一次コイル6が取り付けられる。案内面2c3は、前面部2c1及び後面部2c2の間に挟まれているので、案内面2c3に配置された巻線、即ち、隣合う二つの一次コイル5及び6を接続する接続線は、一次コイル6に接触しない。即ち、接続線は一次コイル6から絶縁される。
【0055】
なお、壁2a及び壁2bそれぞれの上部にも、前面部2c1、後面部2c2、凹部2E及び案内面2c3等と同様な構成が形成されているが、その詳細な説明を省略する。隣合う二つの一次コイル3及び4を接続する接続線は一次コイル4から絶縁され、二つの一次コイル4及び5を接続する接続線は一次コイル5から絶縁される。
【0056】
実施の形態2に係る変成器にあっては、壁2cの左部23及び上部20に亘って、また、周方向における第1位置P1、及び該第1位置P1から離れた第2位置P2に亘って、案内部を形成しているので、第1室21及び第2室22の間における接続線の案内は徐々に行われる。そのため、機械を使用して自動的に巻線を取り付ける場合でも、失敗し難い。
【0057】
なお壁2cの上部20及び左部23は、正面視矩形をなす壁2cの辺部の一例であり、壁2cの連続する二つの辺部に亘って、前面部2c1、後面部2c2、凹部2E及び案内面2c3を形成してもよい。連続する二つの辺部は、例えば、左部及び下部、右部及び上部、右部又は下部である。また、壁2cの連続する三つの辺部に亘って、前面部2c1、後面部2c2、凹部2E及び案内面2c3を形成してもよい。連続する三つの辺部は、例えば、右部、左部及び上部、右部、左部及び下部、上部、下部及び左部、又は上部、下部及び右部である。上述の実施の形態1及び2に係る変成器1は、枠体200の径内側及び外側に、二次コイル8、9を設けた三重コイル構造であるが、枠体200の外側にのみ二次コイル9を設けた二重コイル構造又は枠体200の内側にのみ二次コイル8を設けた二重コイル構造でもよい。
【0058】
上述の実施の形態において、四つの一次コイル3~6が設けられているが、一次コイルの数は複数であればよく、二つ、三つ又は五つ以上の一次コイルを設けてもよい。
【0059】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1 変成器 2 コイルボビン 2a~2c 壁 2e、2E 凹部(案内部)
2k、2c3 案内面(案内部) 3~6 一次コイル(巻線) 21 第1室
22 第2室 P1 第1位置 P2 第2位置 31 第1案内面
32 第2案内面 33 第3案内面 200 枠体