(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039799
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】化合物、結晶、イオン伝導体、固体電解質および固体電解質の充填剤
(51)【国際特許分類】
C07D 333/48 20060101AFI20220303BHJP
C07D 335/02 20060101ALI20220303BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
C07D333/48 CSP
C07D335/02
H01B1/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020144994
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 源一郎
(72)【発明者】
【氏名】矢崎 さなみ
【テーマコード(参考)】
5G301
【Fターム(参考)】
5G301CA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】固体電解質として好適に使用可能な、イオン伝導度が高い有機系イオン伝導体に用いることができる新規な化合物、及びそれを用いたイオン伝導体の提供。
【解決手段】式(1-1)で代表される化合物を含む、環状スルホン構造を有する特定の化合物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物。
【化1】
(式中、
Aは、
下記式(2-a)または(2-b):
【化2】
で表される基であり、
Bは、
Bは、下記式(3-a)~(3-d):
【化3】
のいずれかで表される基であり、
Cは単結合、または下記式(4-a)~(4-k):
【化4】
のいずれかで表される基であり、
Dは、下記式(5-a)~(5-f):
【化5】
のいずれかで表される基であり、
R
1~R
4はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、メチル基、メトキシ基を表し、
n+mが6~24の整数であることを条件として、nは1~24の整数であり、mは0~24の整数である。
【請求項2】
下記式(1-1)または(1-2):
【化6】
【化7】
である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物とアルカリ金属塩とを含むことを特徴とする結晶。
【請求項4】
請求項3に記載の結晶を含むことを特徴とするイオン伝導体。
【請求項5】
請求項4に記載のイオン伝導体を含むことを特徴とする固体電解質。
【請求項6】
請求項4に記載のイオン伝導体を含むことを特徴とする固体電解質の充填剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、結晶、イオン伝導体、固体電解質および固体電解質の充填剤に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでリチウムイオン電池の電解質としては、有機溶媒に電解質を溶解させた電解液が用いられているが、液漏れ、発火など安全性に課題がある。また、電解質を固体とすることで、耐久性に優れ、積層による高容量化が可能になるため、固体電解質の開発が試みられている。従来の固体電解質は有機系、無機系、双方の検討が行われている。有機系の電解質はイオン伝導度が低いという課題がある。
【0003】
有機系固体電解質の伝導度を高める技術の一例として、特許文献1には、イオン伝導性を有する双連続キュービック液晶が記載されている。液晶の自己組織化によって、分子内のイオン性部位が一次元的に連なったチャンネルを形成し、このチャンネルが三次元に等方的に配置されており、最大で約10-5S/cmのイオン伝導度を示している。
【0004】
特許文献2には、イオン伝導性固体電解質が記載されている。低分子量の電子供与性有機化合物、環状の対アニオンを持つリチウム塩を含有するイオン伝導性固体電解質であり、この有機化合物は電子供与性を1~3個しか持たず、3座配位以下の弱い相互作用のみでイオン伝導するために固体結晶中で高いイオン伝導性が実現しているとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-37823
【特許文献2】特開2013-214510
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載の化合物は、有機化合物としては比較的高い伝導度を持つものの、二次電池の電解質として利用するためにはイオン伝導性が未だ十分ではなかった。本発明者らは、有機系イオン伝導体について鋭意検討を重ねた結果、固体電解質として好適に使用可能な、イオン伝導度が高い有機系イオン伝導体に用いることができる新規な化合物を提供できる技術に想到した。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは固体電解質として好適に使用可能な、イオン伝導度が高い有機系イオン伝導体に用いることができる新規な化合物、およびそれを用いたイオン伝導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は化合物である。この化合物は、下記一般式(1):
【化1】
(式中、
Aは、
下記式(2-a)または(2-b):
【化2】
で表される基であり、
Bは、
Bは、下記式(3-a)~(3-d):
【化3】
Cは単結合、または下記式(4-a)~(4-k):
【化4】
のいずれかで表される基であり、
Dは、下記式(5-a)~(5-f):
【化5】
のいずれかで表される基であり、
R
1~R
4はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、メチル基、メトキシ基を表し、
n+mが6~24の整数であることを条件として、nは1~24の整数であり、mは0~24の整数である。)
で表される。
【0009】
本発明の他の態様は結晶である。この結晶は上記化合物とアルカリ金属塩とを含む。
【0010】
本発明のさらに他の態様はイオン伝導体である。このイオン伝導体は上記結晶を含む。
【0011】
本発明のさらに他の態様は固体電解質である。この固体電解質は上記イオン伝導体を含む。
【0012】
本発明のさらに他の態様は固体電解質の充填剤である。この充填剤は上記イオン伝導体を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、固体電解質として好適に使用可能な、イオン伝導度が高い有機系イオン伝導体に用いることができる新規な化合物、およびそれを用いたイオン伝導体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態に係る結晶のイオン伝導メカニズムを説明するための概念図である。
【
図2】実施の形態に係るイオン伝導体を用いた二次電池の一例を示す模式的な断面図である。
【
図3】実施例1の化合物とLiFSIとの混合物の示差走査熱量測定結果を示すグラフである。
【
図4】実施例2の化合物とLiFSIとの混合物の示差走査熱量測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0016】
(化合物)
実施の形態に係る化合物は下記一般式(1)で表される。
【化6】
【0017】
式(1)中、Aは、下記式(2-a)または(2-b):
【化7】
で表される基である。式(1)で表されるように、化合物は環状スルホン構造を有する。この化合物とアルカリ金属塩とを混合すると、環状スルホン部分がイオン伝導性部位となり、アルカリ金属イオンのみが移動するホッピング伝導が可能になる。分子自身が移動できない固体状態においては、このホッピング伝導が有利である。
【0018】
Bは、下記式(3-a)~(3-d):
【化8】
のいずれかで表される基である。
【0019】
Cは単結合、または下記式(4-a)~(4-k):
【化9】
のいずれかで表される基である。イオン伝導度をより向上させるためには、Cは単結合であることが好ましい。
【0020】
Dは、下記式(5-a)~(5-f):
【化10】
のいずれかで表される基である。R
1~R
4はそれぞれ独立に水素原子、フッ素原子、メチル基、メトキシ基を表し、n+mが6~24の整数であることを条件として、nは1~24の整数であり、mは0~24の整数である。n+mが6以上であると、疎水性部位と親水性部位が分離しやすいため、イオン伝導部位を集合させやすい。n+mが24以下であると、化合物が高すぎない融点を有し、様々な溶媒に可溶である。体積または重さ当たりのアルカリ金属カチオン濃度を高め、伝導度を向上させるためには、n+mは6~8が特に好ましい。
【0021】
特に好ましい化合物は、下記式(1-1)または(1-2)で表される化合物である。
【化11】
【化12】
式(1-1)で表される化合物は、式(1)において、Aが式(2-a)で表される基であり、Bが式(3-a)で表される基であり、Cが単結合であり、Dが式(5-a)で表される基であり、R
1~R
4が水素原子であり、n=7である化合物に対応する。式(1-2)で表される化合物は、式(1)において、Aが式(2-b)で表される基であり、Bが式(3-a)で表される基であり、Cが単結合であり、Dが式(5-a)で表される基であり、R
1~R
4が水素原子であり、n=7である化合物に対応する。
【0022】
本実施の形態に係る化合物の環状スルホン部分がイオンを伝導する機能を有すると本発明者らは考えている。このメカニズムについて、
図1を参照しながら説明する。
図1には、例として式(1-1)で表される化合物の結晶分子と、リチウムイオンと、アニオンX
-が図示されている。化合物はベンゼン環およびCの硬い骨格とDの柔らかい側鎖とを有することから、層構造を誘起しやすい。また、化合物は環状スルホン部分の極性部位と、式(1)のDに対応する非極性部位(
図1ではベンゼン環に結合したアルキル鎖に対応)とを持つ。極性が同じ部分が集まることから、化合物によって形成された層構造内で極性のイオン伝導部位が集合し、伝導パスが形成される。この伝導パス内で、
図1の矢印で示すように、環状スルホン部分でのリチウムイオンのホッピング伝導が生じる。このホッピング伝導によって、高いイオン伝導性を実現できると考えられる。
【0023】
(結晶)
本実施の形態にかかる結晶は、上記一般式(1)で表される化合物とアルカリ金属塩とを含む。この結晶は、高いイオン伝導性を示す。
【0024】
アルカリ金属塩は、結晶の用途に応じて適宜選択してもよい。アルカリ金属塩は、リチウム塩またはナトリウム塩であるのが好ましい。例えば、リチウム塩としては、LiN(SO2F)2、LiPF6、LiBF4、LiN(C2F5SO2)2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlF4、LiGaF4、LiInF4、LiClO4、LiN(CF3SO2)2、LiCF3SO3、LiSiF6、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)、LiIが挙げられる。例えば、ナトリウム塩としては、NaPF6、NaBF4、NaN(C2F5SO2)2、NaAsF6、NaSbF6、NaAlF4、NaClO4、NaN(CF3SO2)2、NaCF3SO3、NaSiF6、NaN(CF3SO2)(C4F9SO2)、NaIが挙げられる。
【0025】
結晶は、例えば化合物とアルカリ金属塩とを混合し、得られた混合物を加熱して融解させ、室温まで自然冷却することによって製造できる。型内に結晶を充填し、加圧することで、所望の形に成形することが可能である。
【0026】
(イオン伝導体)
本実施の形態にかかるイオン伝導体は、上記結晶を含む。このイオン伝導体は、上述した結晶により、高いイオン伝導性を示す。
【0027】
イオン伝導体をフィルム状に成形することで、電解質フィルムを得ることができる。電解質フィルムは、フィルム型二次電池の電解質として用いることができる。
【0028】
(二次電池)
実施形態に係るイオン伝導体は、二次電池の電解質として用いることができる。以下、リチウムイオン二次電池を例に挙げて説明する。リチウムイオン二次電池の構造は特に限定されないが、通常、
図2に示すように、負電極10及び正電極20と、電解質30とから構成される。
【0029】
負電極10は、負極活物質11と集電体12とからなる。負極活物質11は、リチウムイオンを吸蔵(インターカレート)・放出(デインターカレート)可能なものであれば特に制限されない。例えば、炭素質材料、単体金属、金属合金、金属化合物、リチウム含有金属複合酸化物等が挙げられる。単体金属、金属合金、金属化合物は、リチウム合金を形成する材料であってよい。負極活物質11は、特に、炭素、又はリチウム、ケイ素、スズもしくは鉛の単体、合金、化合物であってよい。活物質として用いる炭素は、例えば、天然あるいは人造の黒鉛、樹脂焼成炭素材料、炭素繊維などから適宜選択すればよい。
【0030】
正電極20は、正極活物質21と集電体22とからなる。正極活物質21は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限されない。例えば、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属燐酸化合物、リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物、リチウム含有遷移金属ホウ酸化合物、炭素などが挙げられる。このような電極を用いることにより、良好な特性のリチウムイオン二次電池を得ることができる。リチウム遷移金属複合酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiV2O4などが挙げられる。
【0031】
集電体12、22の材料は、電池の使用するデバイスの形状やケース内への集電体の配置方法などに応じて、適宜選択すればよい。一般に、負電極10の集電体12には銅、ニッケル等が、正電極20の集電体22にはアルミニウム等が使用される。
【0032】
電解質30は、固体であり、実施形態に係るイオン伝導体を含む。電解質30が固体であることで、安全性が高く、また、正極、電解質、負極の積層が容易で高エネルギー密度化が可能であるなどの利点がある。また、電解質30を構成するイオン伝導体は柔らかい有機物であるため、電解質30と電極との低抵抗な界面の形成が可能である。
【0033】
その他、電解質として任意の固体電解質粒子が用いられている二次電池において、固体電解質粒子の隙間を埋める充填材として実施形態に係るイオン伝導体を用いることもできる。
【実施例0034】
以下、本発明の実施例を説明するが、実施例は本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
【0035】
(実施例1:式(1-1)の化合物)
(式(1-1)の化合物の製造方法)
以下の合成スキーム(S-1)に従い、式(1-1)の化合物を合成した。
【化13】
【0036】
アルゴン雰囲気下、300mlナスフラスコに4-オクチル安息香酸(7.57g,323.3mmol)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(12.3g,32.3mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(16.7ml,96.9mmol),N,N-ジメチルホルムアミド(150ml)を入れて、次いで4-アミノテトラヒドロ-2H-チオピラン1,1-ジオキシド塩酸塩(4.80g,25.8mmol)を入れて、室温で撹拌した。17時間後、ジクロロメタン(250ml)で希釈後、水、1mol/L塩酸で順次洗浄した。硫酸ナトリウムで脱水してろ過後、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムにて精製、8.30g(収率88%,白色固体)の式(1)の化合物を合成した。生成物を1H-NMRにより同定し、式(1-1)の化合物であることを確認した。
1H NMR(500MHz,CDCl3):δ7.65(d,2H),7.26-7.25(m,2H),5.99(d,1H),4.31-4.25(m,1H),3.21-3.09(m,4H),2.65(t,2H),2.44-2.41(m,2H),2.25-2.2-(m,2H),1.63-1.60(m,2H),1.31-1.26(m,10H),0.88(t,3H).
【0037】
(式(1-1)の化合物とリチウム塩の混合方法 モル比4:10)
式(1-1)の化合物(171.7mg,0.470mmol)およびLiFSI(218.7mg,1.169mmol)をスクリュー管に入れ、室温で約10分混ぜた後100℃で、5分間混合した。130℃に昇温し、融解した状態で15分混ぜた後、室温まで自然冷却し、粉状に粉砕した。
【0038】
(式(1-1)の化合物のイオン伝導度の測定結果)
式(1-1)の化合物とリチウム塩の混合物を窒素雰囲気下で、ミックラボ社製二極セルに密閉し、ポテンショスタット(VersaSTAT 4、プリンストンアプライドリサーチ社製)、周波数応答分析器を用いて、交流インピーダンス法により、周波数1MHz-0.1Hz,振幅400mV、25℃の条件で測定した。温度はセルを恒温槽に入れることによって制御した。イオン伝導度は5.27±1.24×10-4S/cm(n=6)であった。
【0039】
(式(1-1)の化合物の相転移挙動)
示差走査熱量測定(DSC8000,Perkin Elmer社製)を用いて式(1-1)の化合物とリチウム塩の混合物の熱挙動を調べた。サンプルは窒素雰囲気下で作製し、10K/minの昇温速度の昇温過程で測定を行った。結果を
図3に示す。100-120℃におよそ2つのピークトップを持つ大きな吸熱ピークが見られ、100℃以下では結晶、120℃以上では液体となっていた。
【0040】
(実施例2:式(1-2)の化合物)
[式(1-2)の化合物の製造方法]
以下の合成スキーム(S-2)および(S-3)に従い、式(1-2)の化合物を合成した。
【化14】
アルゴン雰囲気下、100mlフラスコに3-スルホレン(4.20g,35.5mmol)、28%アンモニア水(12ml,0.18mol)、酸化カルシウム(0.253g,4.51mmol)を入れて80℃にて14時間撹拌した。室温へ冷却して、溶液を吸引濾過し、濾液を減圧留去した。残渣へ塩酸(2ml)を加えてpH=1に調製し、クロロホルム(15ml)にて洗浄し、水層を分取した。溶媒を減圧留去してaminothiolane3.95g(収率65%,白色固体)を得た。生成物を
1H-NMRにより同定し、aminothiolaneであることを確認した。
1H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ8.50(brs,3H),4.02-3.99(m,1H),3.54-3.50(m,1H),3.47-3.40(m,1H),3.22-3.16(m,2H),2.60-2.45(m,1H),2.22-2.10(m,1H).
【0041】
【化15】
次に、アルゴン雰囲気下、100mlフラスコに無水N,N-ジメチルホルムアミド(43ml)、4-オクチル安息香酸(6.75g,28.8mmol)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(10.9g,28.8mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(15.0ml,86.3mmol)を入れて、3-aminothiolane(3.95g,23.0mmol)を加え、室温にて22.5時間撹拌した。反応液を酢酸エチルで希釈して、飽和食塩水(90ml)、塩酸(180ml)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムにて脱水し、溶媒を減圧留去した。粗生成物をシリカゲルカラムにて精製し、式(1-2)の化合物5.57g(収率55%,白色固体)を得た。生成物を
1H-NMRにより同定し、式(1-2)の化合物であることを確認した。
1H NMR(500MHz,DMSO-d6):δ8.64(d,1H),7.77(d,2H),7.29(d,2H),4.71-4.67(m,1H),3.49(dd,1H),3.38-3.34(m,1H),3.29-3.17(m,1H),3.06(dd,1H),2.62(t,2H),2.48-2.41(m,1H),2.24-2.20(m,1H),1.60-1.57(m,2H),1.28-1.25(m,10H),0.85(t,3H).
【0042】
(式(1-2)の化合物とリチウム塩の混合方法 モル比4:10)
式(1-2)の化合物(233.6mg,0.665mmol)およびLiFSI(299.0mg,1.598mmol)をスクリュー管に入れ、室温で約10分混ぜた後100℃で、5分間混合した。130℃に昇温し、融解した状態で15分混ぜた後、室温まで自然冷却し、粉状に粉砕した。
【0043】
(式(1-2)の化合物のイオン伝導度の測定結果)
式(1-2)の化合物とリチウム塩の混合物を窒素雰囲気下で、ミックラボ社製二極セルに密閉し、ポテンショスタット(VersaSTAT 4、プリンストンアプライドリサーチ社製)、周波数応答分析器を用いて、交流インピーダンス法により、周波数1 MHz-0.1Hz,振幅400mV、25℃の条件で測定した。温度はセルを恒温槽に入れることによって制御した。イオン伝導度は1.95±0.98×10-4S/cm(n=2)であった。
【0044】
(式(1-2)の化合物の相転移挙動)
示差走査熱量測定(DSC8000,Perkin Elmer社製)を用いて式(1-2)の化合物とリチウム塩の混合物の熱挙動を調べた。サンプルは窒素雰囲気下で作製し、10K/minの昇温速度の昇温過程で測定を行った。結果を
図4に示す。75-90℃におよそ2つのピークトップを持つ大きな吸熱ピークが見られた。75℃以下では結晶、90℃以上では液体となっていた。