(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039831
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】アスベスト統合管理システム
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20220303BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20220303BHJP
【FI】
B09B5/00 M
G06Q50/10 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145068
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】520262881
【氏名又は名称】株式会社アスマップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 泰啓
【テーマコード(参考)】
4D004
5L049
【Fターム(参考)】
4D004AA31
4D004AB05
4D004DA16
5L049CC11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アスベストの分析を行う対象構造物のサンプルの採取場所、サンプル、及びサンプルの分析データの対応を確実にして管理するアスベスト統合管理システムを提供する。
【解決手段】アスベスト統合管理システムは、対象構造物のアスベストの含有情報を統合的に管理する情報管理サーバとラベル印刷機とを備え、前記情報管理サーバは、対象構造物に固有の識別IDとともに対象構造物の情報を保存する対象構造物登録部と、対象構造物から採取したサンプルに含まれるアスベストの分析データを、対象構造物の情報及びサンプルを採取した場所と関連付けて保存する分析データ管理部と、ユーザ端末にアスベストの分析データを提供する分析データ提供部とを有し、前記ラベル印刷機は、前記識別IDを含み、サンプル毎に異なるコードデータを受信して、サンプルの採取場所とサンプル容器にそれぞれ貼り付ける少なくとも2枚の1次元又は多次元コードラベルを印刷する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象構造物のアスベストの含有情報を統合的に管理する情報管理サーバとラベル印刷機とを備えるアスベスト統合管理システムであって、
前記情報管理サーバは、対象構造物に固有の識別IDを発行して対象構造物の情報と関連付けして保存する対象構造物登録部と、対象構造物から採取したサンプルに含まれるアスベストの分析データの入力を受けて、前記分析データを、対象構造物の情報及び対象構造物のサンプルを採取した場所と関連付けて保存する分析データ管理部と、ユーザ端末からの要求に対応してアスベストの分析データを提供する分析データ提供部とを有し、
前記ラベル印刷機は、作業者端末又は前記情報管理サーバから対象構造物に固有の識別IDを含み、サンプル毎に異なるサンプルコードを含むコードデータを受信して前記コードデータを含む1次元又は多次元コードラベルをサンプル毎に少なくとも2枚印刷し、
前記少なくとも2枚の1次元又は多次元コードラベルの1枚はサンプルの採取場所に貼り付けるものであり、1枚は採取したサンプルを収納するサンプル容器に貼り付けるものであることを特徴とするアスベスト統合管理システム。
【請求項2】
前記採取したサンプルに含まれるアスベストの分析を行う分析機関の分析管理端末をさらに備え、
前記分析管理端末は、
前記サンプル容器に貼り付けられた1次元又は多次元コードラベルの読み取りデータに基づき分析機関内で使用する新たな1次元又は多次元コードを生成し、前記採取したサンプルを新たな分析サンプルとして前記新たな1次元又は多次元コードに関連付けて登録する分析サンプル登録部と、
前記新たな1次元又は多次元コードに関連付けられた新たな分析サンプルの分析データを集約して管理する分析データ集約管理部と、
集約された新たな分析サンプルの分析データに前記新たな1次元又は多次元コードを含めて出力する分析データ出力部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のアスベスト統合管理システム。
【請求項3】
前記ユーザ端末からの要求は、サンプルの採取場所に貼り付けた1次元又は多次元コードラベルを前記ユーザ端末により読み込むことにより行われることを特徴とする請求項1に記載のアスベスト統合管理システム。
【請求項4】
前記対象構造物登録部は、対象構造物の構造データの入力を受け前記識別IDと関連付けして保存し、
前記分析データ提供部は、サンプルの採取場所がわかるように対象構造物の構造データをマップとして前記ユーザ端末に提供し、ユーザがサンプルの採取場所を選択すると選択した採取場所の分析データを前記ユーザ端末に提供することを特徴とする請求項1に記載のアスベスト統合管理システム。
【請求項5】
前記ラベル印刷機は、前記作業者端末を介してまたは直接に前記情報管理サーバから対象構造物に固有の識別IDを受信して対象構造物の入口に貼り付ける1次元又は多次元コードを印刷し、
前記分析データ提供部は、ユーザが前記ユーザ端末により入口に貼り付けられた前記対象構造物コードラベルを読み取ると、対象構造物のサンプルの採取場所を含む全体構造を示すマップを前記ユーザ端末に提供することを特徴とする請求項4に記載のアスベスト統合管理システム。
【請求項6】
前記分析データ提供部は、対象構造物の一覧データまたは位置を示すマップ情報をWebページ上で選択可能に提供し、ユーザが対象構造物を選択すると選択された対象構造物のサンプルの採取場所を含む全体構造を示すマップ及び/又はサンプルの採取場所の分析データを前記ユーザ端末に提供することを特徴とする請求項1に記載のアスベスト統合管理システム。
【請求項7】
前記分析データ提供部は、前記ユーザ端末の位置情報を取得し、前記ユーザ端末の位置が対象構造物の所定の距離範囲内にあると判断した場合、前記ユーザ端末に当該対象構造物のサンプルの採取場所を含む全体構造を示すマップを表示可能に送信することを特徴とする請求項4または6に記載のアスベスト統合管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベスト統合管理システムに関し、特にアスベストの分析を行う対象構造物のサンプルの採取場所と採取したサンプルの容器のそれぞれに貼り付けるサンプル固有の1次元又は多次元コードを印刷するラベル印刷機を備え、サンプル、サンプルの採取場所、及びサンプルの分析データの対応を確実にして管理することを可能とするアスベスト統合管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
アスベストは耐熱性や断熱性などの熱特性が優れるとともに絶縁性などの電気的特性も安定して良好であることから、過去には建築構造物に盛んに使用されていた。しかし、アスベストの繊維が非常に細く、アスベストを取り扱う現場の作業者にアスベストの粉塵を吸い込んでしまったことにより肺線維症や肺がんなどの健康被害が多く発生することが明らかになり、吹付けアスベストの禁止を始め多くの法律でアスベストの使用禁止や取り扱いの制限が規定され、現在では新たな建築構造物には使用されていない。
【0003】
しかし過去に建築され、現存する建築構造物にはアスベストを含有するものが数多く含まれ、その数は数百万棟に上るともいわれている。こうしたアスベストを含有する建築構造物を解体する際、アスベストを含む粉塵が発生することから、作業者の健康被害を防ぐための多くの規制が定められている。
アスベストに関する規制は今後さらに強化される見込みであり、建築構造物の解体や改修前に事前調査を行ってその結果を報告することが義務化されることも検討されている。建築構造物の解体や改修を行う業者にとっては、報告の義務如何に拘わらず、対象となる構造物のどこにどのように、或はどれだけの量のアスベストが含まれているかを事前に把握することは、作業者の安全を確保する上で必須のニーズである。
【0004】
現状では解体や改修の対象構造物の事前調査は、解体や改修を行う業者が個別にサンプルを採取して分析機関に分析を依頼する形で行われている。ビルのような大きな対象構造物の場合、複数箇所で分析用のサンプルを採取することになるが、分析を依頼する際や分析機関で分析する間にサンプルの取違いが発生する可能性がある。もし、アスベストを含むエリアとアスベストを含まないエリアとのデータを取り違えてしまうと、作業者が気付かずにアスベストを含む粉塵にさらされる危険が発生してしまう。
【0005】
アスベスト廃棄物発生場所で発生したアスベスト廃棄物の管理に関しては、特許文献1に、関連する技術が開示されている。特許文献1には、アスベスト廃棄物発生場所にて情報記録表示手段にアスベストの種類や含有率などのアスベスト廃棄物情報を記録表示し、アスベスト廃棄物を収納する容器に情報記録表示手段を装着し、これを受領したアスベスト廃棄物溶融処理場所にて情報記録表示手段のアスベスト廃棄物情報を読み取り、読み取られたアスベスト廃棄物情報に基づき、溶融装置の運転条件を決定する方法が記載されている。
【0006】
特許文献1に記載の技術は、アスベスト廃棄物の情報を、現物のアスベスト廃棄物と対応付ける上では有効であるが、これは廃棄物が発生した後の課題であって、建築構造物の解体や改修前に、どのエリアにどのようにアスベストが含まれるかというアスベスト情報の管理には向いていない
建築構造物の解体や改修前の事前調査において、アスベストの分析のためのサンプルの採取場所と、採取したサンプルと、採取したサンプルの分析データとを確実に関連付けして、実際の解体や改修工事やそれに伴う役所への報告などにも有効なアスベスト情報の管理システムが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来のアスベスト管理における問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、アスベストの分析を行う対象構造物のサンプルの採取場所と採取したサンプルの容器のそれぞれに貼り付けるサンプル固有の1次元又は多次元コードを印刷するラベル印刷機を備え、サンプル、サンプルの採取場所、及びサンプルの分析データの対応を確実にして管理することを可能とするアスベスト統合管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明によるアスベスト統合管理システムは、対象構造物のアスベストの含有情報を統合的に管理する情報管理サーバとラベル印刷機とを備えるアスベスト統合管理システムであって、前記情報管理サーバは、対象構造物に固有の識別IDを発行して対象構造物の情報と関連付けして保存する対象構造物登録部と、対象構造物から採取したサンプルに含まれるアスベストの分析データの入力を受けて、前記分析データを、対象構造物の情報及び対象構造物のサンプルを採取した場所と関連付けて保存する分析データ管理部と、ユーザ端末からの要求に対応してアスベストの分析データを提供する分析データ提供部とを有し、前記ラベル印刷機は、作業者端末又は前記情報管理サーバから対象構造物に固有の識別IDを含み、サンプル毎に異なるサンプルコードを含むコードデータを受信して前記コードデータを含む1次元又は多次元コードラベルをサンプル毎に少なくとも2枚印刷し、前記少なくとも2枚の1次元又は多次元コードラベルの1枚はサンプルの採取場所に貼り付けるものであり、1枚は採取したサンプルを収納するサンプル容器に貼り付けるものであることを特徴とする。
【0010】
前記採取したサンプルに含まれるアスベストの分析を行う分析機関の分析管理端末をさらに備え、前記分析管理端末は、前記サンプル容器に貼り付けられた1次元又は多次元コードラベルの読み取りデータに基づき分析機関内で使用する新たな1次元又は多次元コードを生成し、前記採取したサンプルを新たな分析サンプルとして前記新たな1次元又は多次元コードに関連付けて登録する分析サンプル登録部と、前記新たな1次元又は多次元コードに関連付けられた新たな分析サンプルの分析データを集約して管理する分析データ集約管理部と、集約された新たな分析サンプルの分析データに前記新たな1次元又は多次元コードを含めて出力する分析データ出力部と、を有することが好ましい。
【0011】
前記ユーザ端末からの要求は、サンプルの採取場所に貼り付けた1次元又は多次元コードラベルを前記ユーザ端末により読み込むことにより行われることが好ましい。
前記対象構造物登録部は、対象構造物の構造データの入力を受け前記識別IDと関連付けして保存し、前記分析データ提供部は、サンプルの採取場所がわかるように対象構造物の構造データをマップとして前記ユーザ端末に提供し、ユーザがサンプルの採取場所を選択すると選択した採取場所の分析データを前記ユーザ端末に提供することが好ましい。
前記ラベル印刷機は、作業者端末を介してまたは直接に前記情報管理サーバから対象構造物に固有の識別IDを受信して対象構造物の入口に貼り付ける1次元又は多次元コードラベルである対象構造物コードラベルを印刷し、前記分析データ提供部は、ユーザが前記ユーザ端末により入口に貼り付けられた前記対象構造物コードラベルを読み取ると、対象構造物のサンプルの採取場所を含む全体構造を示すマップを前記ユーザ端末に提供することが好ましい。
【0012】
前記分析データ提供部は、対象構造物の一覧データまたは位置を示すマップ情報をWebページ上で選択可能に提供し、ユーザが対象構造物を選択すると選択された対象構造物のサンプルの採取場所を含む全体構造を示すマップ及び/又はサンプルの採取場所の分析データを前記ユーザ端末に提供することが好ましい。
前記分析データ提供部は、前記ユーザ端末の位置情報を取得し、前記ユーザ端末の位置が対象構造物の所定の距離範囲内にあると判断した場合、前記ユーザ端末に当該対象構造物のサンプルの採取場所を含む全体構造を示すマップを表示可能に送信することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るアスベスト統合管理システムによれば、アスベストの分析を行う対象構造物のサンプルの採取場所と採取したサンプルとを関連付けるサンプル固有の1次元又は多次元コードが、サンプルの採取場所とサンプルの容器のそれぞれに貼り付ける1次元又は多次元コードラベルとして印刷され、情報管理サーバではサンプルの分析データを、対象構造物の情報及び対象構造物のサンプルを採取した場所と関連付けて保存されるため、サンプルの採取場所に貼り付けられた1次元又は多次元コードラベルを読み込むことにより、そのサンプルの採取場所から採取されたサンプルの分析データにアクセスすることができ、対象構造物の現場においてサンプルを採取したエリアごとのアスベストの含有状況が容易に把握できる。
【0014】
本発明に係るアスベスト統合管理システムによれば、分析機関に分析を依頼するサンプルの容器にはサンプルの採取場所と同じ1次元又は多次元コードラベルが貼り付けられ、分析機関ではサンプル容器に貼り付けられた1次元又は多次元コードラベルの読み取りデータに基づいて生成された新たな1次元又は多次元コードに関連付けられて分析データが取得され、最終的に集約されて出力される分析データにも新たな1次元又は多次元コードが含まれるため、分析サンプルと分析データとの取違いを防止することができる。
【0015】
また、本発明に係るアスベスト統合管理システムによれば、サンプルの採取場所がわかるように、対象構造物の構造データが、マップとしてユーザに提供され、ユーザがサンプルの採取場所を選択すると、選択した採取場所の分析データがユーザに提供されるので、ユーザにとって非常に使い勝手の良いシステムである。
【0016】
さらに、本発明に係るアスベスト統合管理システムによれば、対象構造物に固有の識別IDを含む1次元又は多次元コードラベルである対象構造物コードラベルが印刷されて、対象構造物の入口に貼り付けられ、対象構造物コードラベルを読み取ることで、対象構造物のサンプルの採取場所を含む全体構造を示すマップがユーザに提供されるので、ユーザは対象構造物の構造及びサンプルの採取場所の位置関係を視覚的に容易に把握することが可能となる。
【0017】
本発明に係るアスベスト統合管理システムによれば、ユーザ端末が位置情報を取得可能に設定しておけば、ユーザが対象構造物に接近した際に、ユーザ端末には位置情報に対応して対象構造物のサンプルの採取場所を含む全体構造を示すマップが提供されるため、ユーザは手間をかけずに対象構造物の構造及びサンプルの採取場所の位置関係を視覚的に容易に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態によるアスベスト統合管理システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態による対象構造物の分析用のサンプルの採取場所における2次元コードラベルの印刷と貼付けの状況を説明するための図である。
【
図3】本発明の実施形態による分析機関における新たな2次元コードラベルの印刷と使用方法を説明するための図である。
【
図4】本発明の実施形態による対象構造物のサンプルの採取場所を含む全体構造を示すマップの一例を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態による情報管理サーバによるアスベスト統合管理方法を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態による分析機関の分析管理端末のサンプル管理及び分析データ処理方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係るアスベスト統合管理システムを実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態によるアスベスト統合管理システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【0020】
図1を参照すると、本発明の実施形態によるアスベスト統合管理システム1は、ネットワーク5を介して接続される情報管理サーバ10、作業者端末20、ユーザ端末40、及びネットワーク5を介して直接に、または作業者端末20を介して間接的に情報管理サーバ10に接続されるラベル印刷機30を備える。さらにアスベスト統合管理システム1は、サンプルのアスベスト分析を依頼する分析機関において分析管理端末50と分析管理端末50に接続される2次元コード読取機60及びラベル印刷機65を備える。ここで2次元コード読取機60は、使用するコードに応じて1次元コード読取機、多次元コード読取機としてもよい。
【0021】
本発明の実施形態によるアスベスト統合管理システム1は、解体や改修などの対象となる対象構造物にアスベストが含まれているか否かを調査するため、複数箇所での分析用のサンプル採取の際、サンプルを採取した場所とサンプルとの対応にミスが生じないように、サンプル毎に固有のサンプルコードを引き当てたうえ、当該サンプルコードを含む1次元又は多次元コードラベルを少なくともサンプル毎に2枚ずつ印刷し、1枚は採取したサンプルを収納するサンプル容器に貼り付け、1枚は分析サンプルを採取した場所に貼り付けることで両者の対応関係を明確にしてサンプルの取違いを防止するシステムである。
【0022】
また、採取したサンプルのアスベストの分析を行う分析機関においては、サンプル容器に貼り付けられた1次元又は多次元コードラベルを読取り、読み取ったデータに基づき分析機関内で使用する新たな1次元又は多次元コードを生成して分析用の容器に貼り付けるとともに、採取したサンプルを新たな分析サンプルとして新たな1次元又は多次元コードに関連付けて登録する。これにより、各種分析を行った際の分析データとサンプルの取違いを防止し、最終的に分析したデータを集約してアスベストの分析報告用のデータに纏める際に、新たな1次元又は多次元コードを含めて出力することにより分析サンプルとサンプルを採取した場所との関連性を維持する。アスベスト統合管理システム1は、こうして分析用のサンプルを採取した場所と分析データとの対応関係の間違いを防止するシステムである。
【0023】
さらに、アスベスト統合管理システム1は、情報管理サーバ10にアスベストの分析データを対象構造物毎に集約して保存し、ユーザが分析サンプルの採取場所に貼り付けた1次元又は多次元コードラベルをユーザ端末40により読み込むことにより、その場所に対応した分析データが提供されるため、アスベスト分析データを容易に活用することができるシステムである。
【0024】
また対象構造物の入口には、対象構造物に固有の識別IDを含む1次元又は多次元コードラベルである対象構造物コードラベルを印刷して貼り付け、情報管理サーバ10はユーザが対象構造物コードラベルをユーザ端末40により読み込むことにより、サンプルの採取場所がわかるように対象構造物の構造データをマップで提供し、ユーザがマップの中でサンプルの採取場所を選択すると選択した採取場所の分析データをユーザ端末40に提供するため、アスベスト統合管理システム1は、ユーザが対象構造物の入口で、予めサンプルの採取場所の位置とその場所でのアスベスト分析データを把握することを可能とするシステムである。
【0025】
ユーザ端末40が位置情報を取得できる状態になっている場合、情報管理サーバ10は、ユーザ端末40の位置情報を取得し、ユーザ端末40の位置が対象構造物の所定の距離範囲内にあると判断した場合、ユーザ端末40に当該対象構造物のサンプルの採取場所を含む全体構造を示すマップを表示可能に送信するので、このような場合、ユーザは対象構造物の入口の対象構造物コードラベルを読み込むことなくサンプルの採取場所の位置とその場所でのアスベスト分析データを把握することが可能となる。
【0026】
アスベスト統合管理システム1では、さらに対象構造物の一覧データまたは位置を示すマップ情報をWebページ上で選択可能に提供し、ユーザが対象構造物を選択すると選択された対象構造物のサンプルの採取場所を含む全体構造を示すマップ及び/又はサンプルの採取場所の分析データをユーザ端末40に提供するので、ユーザは対象構造物に赴くことなく対象構造物のどこにどのようにアスベストが含まれているかを確認することが可能となる。
【0027】
このようにアスベスト統合管理システム1は、対象構造物のアスベスト分析データを、分析用のサンプル、サンプルの採取場所、アスベスト分析データを互いに取り違えることなく正確に管理保存するとともに、いつでもどの対象構造物のどこにアスベストが含まれているかを容易に確認することができるアスベスト情報を統合的に管理するシステムである。
【0028】
以下、本発明の実施形態によるアスベスト統合管理システム1の各構成要素について個別に説明する。尚、以下では説明を簡単にするため、1次元又は多次元コードラベルの代表として2次元コードラベルの実施形態について説明する。
情報管理サーバ10は、制御部11、入出力部12、記憶部13、表示部14、対象構造物登録部15、分析データ管理部16、及び分析データ提供部17を備える。
【0029】
対象構造物登録部15は、対象構造物に固有の識別IDを発行して対象構造物の情報と関連付けして保存する。対象構造物の情報は、アスベストの分析を行って管理する対象となる建物である対象構造物の所在地の他、階数や鉄筋か木造かなどの基本構造データを含む情報である。また、建築時の設計図面や改装などを行った場合の改装図面が入手できる場合はこれらの詳細構造データを含む。
【0030】
アスベスト統合管理システム1は、複数の対象構造物のアスベスト分析データを一括して管理するシステムであるので、対象構造物登録部15は、対象構造物の新規登録の際、対象構造物を区別して管理するために、対象構造物に固有の識別IDを発行する。発行した識別IDは、対象構造物登録部15により、対象構造物の情報に関連付けられ、ともに記憶部13に保存されるので、対象構造物登録部15は、識別IDをキーに対象構造物の情報を呼び出すことができる。
【0031】
分析データ管理部16は、対象構造物から採取したサンプルに含まれるアスベストの分析データの入力を受けて、分析データを、対象構造物の情報及び対象構造物のサンプルを採取した場所と関連付けて保存する。
アスベストの分析は対象構造物に対して1箇所とは限らない。特に大型のビルや工場プラントなどでは、複数箇所からサンプルを採取して分析する必要があり、分析を行う箇所、即ち分析用のサンプルを採取する場所とそのサンプルの分析結果の対応関係が重要である。そこで分析データ管理部16は、対象構造物に固有の識別IDを含み、サンプル毎に異なるサンプルコードを生成する。サンプルコードは例えば対象構造物に固有の識別IDに連番を組み合わせたような単純なコードでもよいし、さらにサンプルを採取する場所や施設を示す分類コードなどを組み合わせてもよい。
【0032】
サンプルコードは、サンプルコードを含む2次元コードラベルを印刷するためのコードデータとして、ネットワーク5により直接、または作業者端末20を介して間接的にラベル印刷機30に送信され、ラベル印刷機30で分析用のサンプルの採取場所に貼り付けるための2次元コードラベルと、サンプル容器に貼り付けるための2次元コードラベルの少なくとも2枚の2次元コードラベルとして出力される。
【0033】
採取したサンプルはアスベスト分析のために分析機関に送られるが、分析機関の分析管理端末50では後述するように、送付されたサンプル容器に貼り付けられた2次元コードラベルを読取り、読取データに基づき新たな2次元コードを生成して分析サンプルの管理を行う。新たな2次元コードにはサンプルコードを含めるようにすることで、分析機関内においても分析サンプルの採取場所と分析サンプルとの対応関係が維持される。
分析機関から出力されるアスベスト分析報告には新たな2次元コードが含まれるため、アスベスト分析報告を受け取り、情報管理サーバ10へのアスベストの分析データの入力時に、新たな2次元コードを読み込むことにより、サンプルコードと対応付けられた分析データとして保存される。
【0034】
これとは別に、分析データ管理部16は、分析用のサンプルの採取場所の情報を管理する。サンプルの採取場所の情報は、作業者端末20から送信されて入力されるか、情報管理サーバ10に直接入力される。サンプルの採取場所の情報は、例えば「301号室西側壁中央部」のように文字情報として入力してもよいが、実施形態では対象構造物の情報の中に設計図面や改装図面などの図面を含む場合、入力する作業者端末20又は情報管理サーバ10に図面を表示し、入力者は図面上で分析サンプルの採取場所を指定することで、サンプルの採取場所の入力を行う。
【0035】
入力したサンプルの採取場所の情報は、サンプルコードと関連付けられる必要がある。そこでサンプルの採取場所の情報は、作業者端末20から送信されて入力される場合、分析データ管理部16は、作業者端末20からサンプルの採取場所の入力が行われる毎にサンプルコードを発行し、サンプルの採取場所の情報と発行したサンプルコードとを関連付けて保存するとともに、サンプルコードを含むコードデータを2次元コードラベル印刷のために作業者端末20を介して、又はラベル印刷機30に直接送信する。後から確認できるように、印刷した2次元コードラベルを貼り付けたサンプルの採取場所の画像を作業者端末20で取得して情報管理サーバ10に送信し、サンプルの採取場所の情報とともに保存するようにしてもよい。
【0036】
サンプルの採取場所の情報を情報管理サーバ10に直接入力する場合は、作業者がサンプルの採取場所を決めてサンプルの採取を行う際に、作業者端末20から情報管理サーバ10にコードデータの送信を要求し、コードデータを受信して印刷した2次元コードラベルをサンプルの採取場所に貼り付けるとともに、サンプルの採取場所を記録して持ち帰り、サンプルの採取場所の情報を情報管理サーバ10に纏めて入力する。このとき例えばサンプルの採取場所に貼り付けた2次元コードラベルを含む画像を作業者端末20で取得してサンプルの採取場所を記録に含めることで、情報管理サーバ10は当該画像から2次元コードラベルに含まれるサンプルコードを取り出すことができる。これによりサンプルの採取場所の情報と発行したサンプルコードとを関連付けることができる。
さらに分析データ管理部16は、サンプルコードを生成する際、対象構造物に固有の識別IDを含むようにするため、対象構造物登録部15より識別IDに対応する対象構造物の情報も取得して関連付けすることができる。
【0037】
分析データ提供部17は、ユーザ端末40からの要求に対応してアスベストの分析データを提供する。
ユーザ端末40からのアスベストの分析データの要求にはいくつかの形態がある。大別すると、アスベストの分析データの直接的な要求と、一旦対象構造物の構造データのマップを開いた後、指定する場所のアスベストの分析データを求める間接的な要求の2種類がある。
【0038】
第1の形態は、ユーザ端末40による分析用のサンプルの採取場所に貼られた2次元コードラベルの読み取りによるアスベストの分析データの直接的な要求である。これは例えば、ユーザ端末40に予めアプリケーションプログラムをインストールして、2次元コードラベルを読み取ると、2次元コードラベルに含まれるサンプルコードに対応する分析データを情報管理サーバ10に要求するように構成することで実現化される。また2次元コードラベルに、分析データを提供するWebページのアドレスを含めておき、2次元コードラベルを読み取ると分析データを提供するWebページに直接アクセスするように構成してもよい。
【0039】
ユーザ端末40からのデータの要求の第2の形態は、対象構造物の入口近傍に貼られる2次元コードラベルである対象構造物コードラベルの読み取りによる間接的要求である。
対象構造物コードラベルは、対象構造物に固有の識別IDを含んで生成される対象構造物2次元コードをラベル印刷機30で出力したものであり、対象構造物の入口近傍に貼り付けられる。入口が複数ある場合は入口の数に合わせて複数枚を印刷して貼り付けてもよい。
【0040】
ユーザ端末40で対象構造物コードラベルを読み込むことにより、ユーザ端末40から情報管理サーバ10に、対象構造物に固有の識別IDが送信され、情報管理サーバ10では、分析データ提供部17が、識別IDに対応する対象構造物の構造データに分析用のサンプルの採取場所がわかるように示したマップを提供する。構造データはサンプルの採取場所がわかるように示せれば2次元データでも3次元データでも構わない。実施形態では、ユーザが受信したマップ上で確認したいサンプルの採取場所を選択すると、選択した場所に対応した分析データが分析データ提供部17よりユーザ端末40に送信されて表示される。対象構造物に図面による構造データがない場合、サンプルの採取場所は「301号室西側壁中央部」のような文字情報によるリストとして提供され、リストの中から所望の文字情報を選択するとその場所に対応した分析データを提供するようにしてもよい。
【0041】
対象構造物の構造データに分析用のサンプルの採取場所がわかるように示したマップの提供は、ユーザ端末40がGNSSを利用した位置情報を取得できるように設定されている場合は、対象構造物コードラベルを読み込む代わりに、ユーザ端末40の位置情報に基づいて行うこともできる。即ち、実施形態では、分析データ提供部17は、対象構造物登録部15から対象構造物の所在地の提供を受けるとともに、ユーザ端末40の位置情報を取得し、ユーザ端末40が対象構造物から所定の距離範囲内にあると判断した場合、ユーザ端末40に当該対象構造物のサンプルの採取場所を含む全体構造を示すマップを表示可能に送信する。この場合もユーザはマップ上で確認したいサンプルの採取場所を選択することでその場所に対応する分析データを確認することができる。
【0042】
分析データ提供部17は、対象構造物毎のアスベストの分析データをWebページ上でもユーザに提供する。Webページでは、対象構造物の一覧データまたは位置を示すマップ情報を提供し、Webページにアクセスしたユーザが所望する対象構造物を選択すると、選択した対象構造物のサンプルの採取場所を含む全体構造を示すマップ及び/又はサンプルの採取場所の分析データをユーザ端末40に提供する。一実施形態では、対象構造物が小規模であり分析するサンプル数も少ない場合は、対象構造物を選択したユーザに対し、サンプルの採取場所と、その分析データを一緒に表示するように提供し、対象構造物が大規模であり分析サンプル数も多い場合は、対象構造物のサンプルの採取場所を含む全体構造を示すマップを提供し、さらにユーザがマップ上でサンプルの採取場所を選択するとその場所に対応する分析データを提供するようにする。
【0043】
入出力部12は、ネットワーク5を介して作業者端末20やユーザ端末40とデータを送受信するための通信手段を有する。またアスベスト分析データや対象構造物の構造データなどを入力するためのキーボード、タッチパネル、マウスなどの入力手段のいずれかを備える。さらに設計図や改修図面等の2次元データを読み込むためのスキャナなどを外部接続機器として備える。
【0044】
記憶部13は、対象構造物の情報やアスベスト分析データなどの各種データの他、情報管理サーバ10自身の基本動作を制御する制御プログラムなどのプログラムを保存する。記憶部13はメモリ半導体やハードディスクドライブなどの記憶手段で実現化される。
表示部14は、記憶部13に保存した各種データの表示を行う。また必要により制御プログラムなどのプログラムの表示を行う。表示部14は液晶パネルや有機ELパネルなどで実現化される。
制御部11は、制御プログラムに従い、情報管理サーバ10の各構成要素が上記で説明した機能を果たすように制御する。制御部11はマイクロコンピュータなどの半導体装置を含む制御回路により実現化される。
【0045】
作業者端末20は、制御部21、入出力部22、記憶部23、表示部24、及び画像取得部25を備える。
作業者端末20は、対象構造物の分析用のサンプルの採取を行う作業者が携行する端末機器であり、作業者はサンプルの採取を行った場所を、その位置がわかるように作業者端末20に入力する。
【0046】
また、作業者端末20は、ラベル印刷機30を制御する端末として使用することができ、この場合は情報管理サーバ10からサンプルコードを含む2次元コードラベルを印刷するためのコードデータを受信して、ラベル印刷機30にコードデータを送信して少なくとも2枚の2次元コードラベルの印刷を指示する。さらに情報管理サーバ10から対象構造物に固有の識別IDを含んで生成される対象構造物コードラベルを受信して、ラベル印刷機30に対象構造物の入口に貼るための対象構造物コードラベルの印刷を指示する。
【0047】
一実施形態では、サンプルの採取の際、作業者端末20によりサンプルの採取場所に貼り付けた2次元コードラベルを含む分析サンプルの採取場所の撮影を行い、撮影により取得した画像を、サンプルの採取場所の情報とともに情報管理サーバ10に送信する。このとき作業者端末20にて2次元コードラベルの画像から予めサンプルコードを抽出した後、情報管理サーバ10に送信してもよいし、撮影により取得した画像をそのまま情報管理サーバ10に送信し、情報管理サーバ10で受信した画像からサンプルコードを抽出してもよい。これにより情報管理サーバ10ではサンプルの採取場所の情報とサンプルコードとを関連付けすることが可能となる。
【0048】
入出力部22は、分析サンプルの採取場所を入力するためのタッチパネルなどの入力手段を備える。また、入力された分析サンプルの採取場所を情報管理サーバ10に送信したり、情報管理サーバ10から対象構造物の構造データを受信したりするための通信手段を備える。またラベル印刷機30を接続する場合、ラベル印刷機30にデータを送信するための有線又は無線の通信手段を備える。
記憶部23は、入力された分析サンプルの採取場所や撮影した画像データの他、受信した対象構造物の構造データなどのデータを保存する。また、作業者端末20自身の基本動作を制御する制御プログラムなどのプログラムを保存する。
【0049】
表示部24は、受信した対象構造物の構造データを表示したり、必要によりアプリケーションプログラムを始め各種プログラムを表示したりする。
画像取得部25は、貼り付けられた2次元コードラベルを含む分析用のサンプルの採取場所の画像を取得する。画像取得部25は、カメラにより実現される。
制御部21は、作業者端末20の各構成要素が上記で説明した機能を果たすように制御する。
作業者端末20は、スマートフォンやタブレット端末に専用のアプリケーションプログラムを実装することで実現化される。
【0050】
ラベル印刷機30は、制御部31、入出力部32、記憶部33、及びラベル印刷部34を備える。
ラベル印刷機30は、アスベスト分析用のサンプルと、サンプルの採取場所とを関連付ける2次元コードラベルを印刷する。印刷する2次元コードラベルは少なくとも2枚であり、1枚はサンプル容器貼付用であり、1枚はサンプルの採取場所貼り付け用である。作業者端末20以外に、サンプルの採取場所の管理書類を作成する場合、3枚目の2次元コードラベルを印刷して管理書類に貼り付けるとともに、これと対応してサンプルの採取場所を手書きで記入するようにしてもよい。更には貼り付けた2次元コードラベルが汚れたり破けたりして読取不可となる場合を想定して予備用に2次元コードラベルを印刷するようにしてもよい。
また、ラベル印刷機30は、対象構造物に固有の識別IDを含んで生成される対象構造物2次元コードを受信して対象構造物コードラベルを印刷する。
【0051】
ラベル印刷機30が印刷する2次元コードラベルや対象構造物コードラベルの印刷データは、情報管理サーバ10から直接、または情報管理サーバ10から作業者端末20を介して受信する。特にラベル印刷機30が近距離無線通信などのローカルのネットワーク接続手段しか備えない場合は、印刷データは、作業者端末20を介して受信する。
【0052】
入出力部32は、情報サーバ10から直接または作業者端末20を介して印刷データを受信するための通信手段を備える。
記憶部33は、受信した2次元コードラベルや対象構造物コードラベルの印刷データや、ラベル印刷機30自身を制御するプログラムを保存する。
ラベル印刷部34は、プリンタヘッドやプラテンなどラベル印刷に使用する構成要素を含む。ラベルの印刷には感熱式や熱転写式などの方式があり、ラベルの耐久性の面からは熱転写式が好ましいが、2次元コードラベルが印刷できるものであればいずれの印刷方式でも適用は可能である。
制御部31は、ラベル印刷機30の各構成要素が上記で説明した機能を果たすように制御する。
【0053】
ユーザ端末40は、情報管理サーバ10が提供するアスベスト分析データを利用する改修又は解体作業の作業者や、改修又は解体作業の仕様を決定する技術者などのユーザが利用する端末機器であり、制御部41、入出力部42、記憶部43、表示部44、及び画像取得部45を備える。
【0054】
入出力部42は、Webページにアクセスしたり、アスベスト分析データを受信したりするための通信手段を備える。またWebページにアクセスするときの入力や、対象構造物の構造データのマップから所望する分析サンプルの採取場所の選択などの操作の際の入力に使用するタッチパネルなどの入力手段を備える。
記憶部43は、アスベスト分析データなどのデータの他、ユーザ端末40自身の基本動作を制御する制御プログラムなどのプログラムを保存する。
【0055】
表示部44は、受信した対象構造物の構造データのマップやそれに関連するアスベストの分析データなどを表示する。
画像取得部45は、分析用のサンプルの採取場所に貼り付けられる2次元コードラベルや対象構造物の入口に貼り付けられる対象構造物コードラベルの読み取りを行う画像取得手段を備える。画像取得部45は、カメラにより実現化される。
制御部41は、ユーザ端末40の各構成要素が上記で説明した機能を果たすように制御する。
ユーザ端末40は、スマートフォン、タブレット端末などで実現化される。ユーザ端末40は、カメラを備えるノート型のパーソナルコンピュータでもよい。
【0056】
分析管理端末50は、制御部51、入出力部52、記憶部53、表示部54、分析サンプル登録部55、分析データ集約管理部56、及び分析データ出力部57を備える。
分析管理端末50は、アスベストの分析を行う分析機関において、分析サンプルの管理や分析データの集約、出力を行うための管理端末である。
【0057】
分析管理端末50には、2次元コード読取機60とラベル印刷機65が接続され、分析管理端末50は、アスベストの分析のために送付されてくるサンプルのサンプル容器に貼り付けられた2次元コードに基づき、新たな2次元コードを生成して分析機関内で分析サンプルの管理を行う。これにより分析用のサンプルとサンプルの採取場所との対応関係を示す情報を維持した形で分析データの出力を行う。
【0058】
分析サンプル登録部55は、アスベストの分析依頼を受け付け、対象構造物で採取したサンプルが送付されてくると、サンプル容器に貼り付けられた2次元コードラベルの2次元コード読取機60による読み取りデータに基づき、分析機関内で使用する新たな2次元コードを生成し、送付されてきたサンプルを新たな分析サンプルとして、新たな2次元コードに関連付けて登録する。
【0059】
新たな2次元コードは、送付されてきたサンプル容器に貼り付けられた2次元コードと同一でもよいし、サンプル容器に貼り付けられた2次元コードの情報に、分析機関内で使用する分類コードや管理番号などをさらに付加して生成したものでもよい。いずれにしてもサンプル容器に貼り付けられた2次元コードの読み取りデータに基づいて作成するため、新たな2次元コードにはサンプルに固有なサンプルコードが含まれ、分析サンプルの採取場所との対応関係を示す情報が分析機関内においても維持される。
新たな2次元コードは、ラベル印刷機65により貼付用のラベルとして出力され、分析機関内で分析サンプルに使用する分析容器や関連する書類等に貼り付けて使用する。
【0060】
分析データ集約管理部56は、新たな2次元コードに関連付けられた分析サンプルの分析データを集約して管理する。分析に使用する分析装置がLANなどのネットワークによって分析管理端末50に接続されている場合は、分析結果は分析装置から受信し、分析装置が通信可能に接続されていない場合は、分析結果は媒体を介して分析管理端末50に入力される。分析の際は各分析装置、又は各分析装置に対応する図示しない2次元コード読取機にて新たな2次元コードラベルを読み込むことで分析サンプルと分析データとの対応がとられる。
分析データは分析サンプル毎に集約されて記憶部53に保存される。
【0061】
分析データ出力部57は、集約された新たな分析サンプルの分析データに新たな2次元コードを含めて出力する。分析データ集約管理部56により集積された分析データは、分析の依頼元にアスベスト分析報告として紙の書類又は電子データとして出力されるが、分析データ出力部57は、アスベスト分析報告に新たな2次元コードを含めた形で出力する。
そこでアスベスト分析報告を受領した分析の依頼元では、図示しない2次元コード読取機によりアスベスト分析報告に含まれる新たな2次元コードを読み取れば、読み取ったデータの中に分析サンプル固有のサンプルコードが含まれるので、分析サンプルと分析データの対応を間違うことがなく、またサンプルコードに基づき、別に登録した分析用のサンプルの採取場所との対応が取れるため、分析データとサンプルの採取場所の情報を確実に対応付けることができる。
【0062】
入出力部52は、2次元コード読取機60から2次元コードの読み取りデータを受信したり、ラベル印刷機65に印刷のための新たな2次元コードデータを出力したりするための通信手段を備える。分析管理端末50はネットワーク5を介して情報管理サーバ10と接続するようにしてもよく、その場合はネットワーク5に接続するための通信手段を有する。また入出力部52は、分析依頼の受付の際の入力や、オフラインの分析装置から得られる分析データの入力などのためのキーボードやマウスなどの入力手段を備える。
【0063】
記憶部53は、新たな分析サンプルの登録データや分析データなどの各種データを記憶する。この他、記憶部53は、分析管理端末50自身を制御するための制御プログラムなどを保存する。
表示部54は、受け付けた分析依頼の情報や、各種分析データ、アスベスト分析報告などのデータを表示する。
制御部51は、分析管理端末50の各構成要素が上記で説明した機能を果たすように制御する。
最後にネットワーク5は、インターネットで代表される広域のネットワークである。
【0064】
図2は、本発明の実施形態による対象構造物の分析用のサンプルの採取場所における2次元コードラベルの印刷と貼付けの状況を説明するための図である。
図2を参照すると、アスベストの分析用のサンプル86を採取する作業者が作業者端末20及びラベル印刷機30を携行して対象構造物80のサンプルの採取場所に赴いた状況を示す。作業者端末20は遠隔地にある情報管理サーバ10とは無線通信を使用してデータの授受が可能な状態にあり、ラベル印刷機30とは有線接続または近距離無線通信によりデータ授受が可能な状態にある。
【0065】
対象構造物80のサンプルの採取場所において、サンプル86の採取の際、サンプル86の採取場所の情報を文字情報、又は構造データ上の位置指定などの方法により作業者端末20から情報管理サーバ10に送信すると、情報管理サーバ10からサンプルの採取場所及びサンプル86に固有のサンプルコードを含む2次元コードラベル用のコードデータが送信される。このコードデータは、さらにラベル印刷機30に少なくとも2枚の2次元コードラベル(35-1、35-2)を印刷するように送信される。この内1枚の2次元コードラベル35-1はサンプルの採取場所に貼り付けられ、1枚の2次元コードラベル35-2はサンプル86を収納したサンプル容器85に貼り付けられるものである。サンプル容器85はビニル袋のようなものでもよい。
このように分析用のサンプルの採取場所とサンプル86を収納したサンプル容器85には同じ情報の2次元コードラベル(35-1、35-2)が貼り付けられるため、両者の対応関係を間違えることはない。
【0066】
図3は、本発明の実施形態による分析機関における新たな2次元コードラベルの印刷と使用方法を説明するための図である。
図3を参照すると、アスベストの分析を行う分析機関では、分析管理端末50と、接続関係は明示していないが、分析管理端末50と接続される2次元コード読取機60及びラベル印刷機65と、各種のアスベスト分析装置70とを備える。
【0067】
分析管理端末50では、分析用のサンプル86のアスベストの分析依頼を受け付ける。これに伴いサンプル86が送付されてくると、先ず2次元コード読取機60によりサンプル86のサンプル容器85に貼り付けられた2次元コードラベル35-2の読み取りが行われ、読み取りデータは分析管理端末50に送付される。分析管理端末50は受信した2次元コードラベル35-2の読み取りデータに基づき、新たな2次元コードを生成し、ラベル印刷機65に新たな2次元コードラベル(66-1、66-2、66-3)の印刷を指示する。
図3では新たな2次元コードラベル(66-1、66-2、66-3)は3枚印刷するように示すが、これは一例にすぎず、印刷する枚数は必要数が足りれば、3枚より多くても少なくても構わない。
【0068】
印刷した新たな2次元コードラベル(66-1、66-2、66-3)は、各アスベスト分析装置70で使用する分析用の容器に貼り付ける。これ以外にもサンプル86に関する分析依頼などの書類やフォルダーなどに必要であれば2次元コードラベルを印刷して貼り付けてもよい。
【0069】
各種のアスベスト分析装置70で分析して得られた分析データは、分析管理端末50に入力されて分析サンプル毎のデータとして集約される。最終的に集約された分析データはアスベスト分析報告75として分析管理端末50より出力されるが、アスベスト分析報告75には新たな2次元コード66を含むようにして出力される。
【0070】
図4は、本発明の実施形態による対象構造物のサンプルの採取場所を含む全体構造を示すマップの一例を示す図である。
図4を参照すると、本発明の実施形態による対象構造物80のサンプルの採取場所を含む全体構造を示すマップ90は、対象構造物80の構造を示す3次元表示の図に、アスベスト分析用のサンプルの採取場所が2次元コードラベル35-1を示すシンボルによって示される。
図4の例ではサンプルの採取場所5か所にシンボルが表示されている。また一実施形態では、それぞれのシンボルの下にはサンプル毎に固有のサンプルコード36が表示される。前述のようにサンプルコード36には対象構造物80に固有の識別IDを含むが、
図4の例では識別IDの部分は省略して示す。
実施形態ではマップ90の中でサンプルの採取場所を選択してクリックすることで、情報管理サーバ10は選択したサンプルの採取場所に対応する分析データを表示するように提供する。
【0071】
図4に示すシンボルやサンプルコード36は1例であって、シンボルの形状やパターンはサンプルの採取場所がわかるように表示できればどのようなものでも構わない。またサンプルコード36の桁数や英数字の組み合わせなども固有に識別ができればどのようなコードでも構わない。またマップ90自体もサンプルの採取場所がわかるように表示できれば2次元のデータであっても構わない。
【0072】
図5は、本発明の実施形態による情報管理サーバによるアスベスト統合管理方法を説明するためのフローチャートである。
図5を参照すると、段階S100にて情報管理サーバ10に対象構造物の情報を入力する。対象構造物の情報は、対象構造物の所在地、基本構造データの他、設計や改装などの図面がある場合は図面などの詳細構造データを含む。
【0073】
情報管理サーバ10は入力された対象構造物の情報に対して対象構造物に固有の識別IDを発行し、対象構造物の情報と識別IDとを関連付けて登録し保存する(段階S110)。
段階S110と段階S100の順番は逆であっても構わない。即ち対象構造物の情報の入力に先立ち識別IDを発行し、発行した識別IDに対して対象構造物の情報を入力して両者を関連付けてもよい。
【0074】
次いで段階S120にて分析用のサンプルを採取する作業者は、分析用のサンプルの採取場所の情報を入力する。サンプルの採取場所の入力は、作業者端末20に文字情報として入力するか、作業者端末20に表示した対象構造物の構造データ上で採取場所を指定して入力するかした後、その情報を情報管理サーバ10に送信することにより入力を行う。
【0075】
サンプルの採取場所の入力を受けて、情報管理サーバ10は識別IDを含みサンプルに固有のサンプルコードを含む2次元コードラベル用のコードデータを出力する(段階S130)。これに伴い、情報管理サーバ10はサンプルの採取場所をサンプルコードと対応付けして保存する。
【0076】
次に段階S140にて、分析機関より出力される分析サンプルのアスベスト分析報告に基づき、サンプルの採取場所ごとの分析データを入力する。分析データの入力に際しては、アスベスト分析報告に含まれる分析機関内で生成された新たな2次元コードを読み取ることにより、新たな2次元コードに含まれるサンプルコードを確認して、分析データと予め保存したサンプルの採取場所とが確実に対応するように関連付けることができる。
【0077】
最後に段階S150にて、情報管理サーバ10は、サンプルの採取場所を含み、分析データを確認可能なマップを生成して出力する。分析データはユーザがマップ上のサンプルの採取場所を選択するとそれに対応して表示するようにしてもよいし、分析点数が少なければ、マップ上でサンプルの採取場所と対応して分析データを直接一緒に表示するようにしてもよい。
【0078】
図5ではサンプルの採取場所の情報は、作業者端末20から入力するように示したが、情報管理サーバ10に直接入力する場合は、先にサンプルコードを生成して2次元コードラベルを印刷して貼り付け、後から2次元コードラベルの画像データとともにサンプルの採取場所の情報を入力してサンプルコードとサンプルの採取場所との関連付けを行うようにしてもよい。
【0079】
図6は、本発明の実施形態による分析機関の分析管理端末のサンプル管理及び分析データ処理方法を説明するためのフローチャートである。
図6を参照すると、分析機関の分析管理端末50は、段階S200にて、アスベストの分析依頼を受け付け、分析依頼情報を入力する。分析依頼情報は、分析依頼元、分析依頼元の連絡先、対象構造物などの分析用のサンプルに関する情報、分析の内容などを含む。
【0080】
分析依頼の対象のサンプルを受領すると、2次元コード読取機60により、サンプル容器に貼られた2次元コードラベルの読み取りが行われ、読み取られた2次元コードラベルのデータが分析管理端末50に入力される(段階S210)。
次いで分析管理端末50は、入力された2次元コードラベルのデータに基づき、分析機関内で分析サンプルの管理に使用する新たな2次元コードを生成し、ラベル印刷機65に新たな2次元コードをラベルとして印刷するように指示する(段階S220)。印刷した新たな2次元コードラベルは、分析サンプルを分析装置に掛ける際の分析容器に貼り付け、分析サンプルの取違を防止するのに使用する。
【0081】
新たな2次元コードを生成後、分析管理端末50は、段階S230にて新たな2次元コードを、入力済みの分析依頼情報と関連付けして分析サンプルの登録を行い、これらの情報を保存する。
分析依頼に対応して必要な項目の分析が行われ、各分析装置から出力される分析データが分析管理端末50に入力され、分析サンプル毎に集約される(段階S240)。各分析装置で分析する際、分析容器に貼り付けられた新たな2次元コードラベルを読み取ることにより、分析サンプルの確認及び分析データとの関連付けを行うことができ、集約の際もこの関連付けを利用することができる。
集約された分析データをアスベスト分析報告として出力する際、分析管理端末50はアスベスト分析報告に段階S220で生成した新たな2次元コードを含めるようにして出力する(段階S250)。
【0082】
このように、本発明の実施形態によるアスベスト統合管理システム1では、アスベスト分析用サンプルの採取の際に、サンプルとその採取場所との対応を取るために生成する2次元コードの情報が、アスベストの分析を行う分析機関においても新しい2次元コードの形で維持され、最終的にサンプルの採取場所と分析データとが確実に対応付けられ、使いやすいマップ情報として提供されるため、アスベスト統合管理システム1は、正確なアスベスト含有状況を容易に確認して活用することができるシステムである。
【0083】
ここまで本発明の実施形態で使用される1次元又は多次元コードラベルとして、2次元コードラベルの場合の実施形態について説明してきたが、情報量が少なく1次元コードでも必要な情報が盛り込めれば、2次元コードラベルの代わりに1次元コードラベルとしてもよく、又情報量が多い場合は2次元コードに更に色情報を盛り込んだコードなど、2次元コードラベルよりも情報量を増やした多次元コードラベルとしてもよい。
【0084】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 アスベスト統合管理システム
5 ネットワーク
10 情報管理サーバ
11、21、31、41、51 制御部
12、22、32、42、52 入出力部
13、23、33、43、53 記憶部
14、24、44、54 表示部
15 対象構造物登録部
16 分析データ管理部
17 分析データ提供部
20 作業者端末
25、45 画像取得部
30、65 ラベル印刷機
34 ラベル印刷部
35-1、35-2、66-1,66-2、66-3 2次元コードラベル
36 サンプルコード
40 ユーザ端末
50 分析管理端末
60 2次元コード読取機
66 2次元コード
70 アスベスト分析装置
75 アスベスト分析報告
80 対象構造物
85 サンプル容器(袋)
86 サンプル
90 マップ