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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039850
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】包装用部材
(51)【国際特許分類】
   B65D 3/28 20060101AFI20220303BHJP
   B65D 3/06 20060101ALN20220303BHJP
【FI】
B65D3/28 A
B65D3/06 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020145134
(22)【出願日】2020-08-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2020145109
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520034174
【氏名又は名称】高野 朗
(72)【発明者】
【氏名】高野 朗
(57)【要約】      (修正有)
【課題】密閉性に優れた包装用部材を提供する。
【解決手段】包装用部材が、紙系素材からなるブランク材30の2つの端部31,32を重ねた状態で該端部を互いに接合した接合部を備えた環状の側壁を有しており、少なくとも一方の前記端部が、前記ブランク材を圧縮した圧縮部8を形成し、且つ、先端に向かって先細りした形状となっている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙系素材からなるブランク材の2つの端部を重ねた状態で該端部を互いに接合した接合部を備えた環状の側壁を有し、
少なくとも一方の前記端部が、前記ブランク材を圧縮した圧縮部を形成し、且つ、先端に向かって先細りした形状となっている、
包装用部材。
【請求項2】
前記圧縮部では、前記ブランク材の圧縮度が前記端部の先端に向かって大きくなっている、
請求項1に記載の包装用部材。
【請求項3】
前記圧縮部は、前記端部の両方に形成されている、
請求項1又は2に記載の包装用部材。
【請求項4】
前記ブランク材の両方の主面における前記圧縮部に対応した領域に傾斜面が形成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の包装用部材。
【請求項5】
前記ブランク材の一方の主面には、前記圧縮部に対応した領域に傾斜面が形成されており、他方の主面は、平坦面となっている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の包装用部材。
【請求項6】
前記圧縮部は、前記端部の両方に形成されており、
前記ブランク材の一方の主面には、前記圧縮部に対応した領域に傾斜平面が形成されており、他方の主面は、平坦面となっており、
前記接合部では、2つの前記端部それぞれに形成された前記傾斜平面が向い合っている
請求項1又は2に記載の包装用部材。
【請求項7】
前記圧縮部は、熱プレス処理により形成されている、
請求項1から6のいずれか1項に記載の包装用部材。
【請求項8】
容器または蓋体として用いられる、
請求項1から7のいずれか1項に記載の包装用部材。
【請求項9】
容器として用いられ、
該容器は、前記側壁の上端に沿って外巻きに形成された環状のカール部と、該カール部に囲まれた開口とを有しており、
前記カール部の外周面に前記圧縮部が露出している、
請求項1から7のいずれか1項に記載の包装用部材。
【請求項10】
蓋体として用いられ、
該蓋体は、前記側壁の内周面に前記圧縮部が露出している、
請求項1から7のいずれか1項に記載の包装用部材。
【請求項11】
紙系素材からなるブランク材の端部の少なくとも一方を圧縮した圧縮部を形成する圧縮工程と、
前記圧縮部を形成した前記ブランク材の2つの前記端部を重ね合させて重なり部を形成するとともに、該重なり部で前記端部を相互に接合して接合部を形成することで環状の側壁を形成する側壁形成工程とを有する、
包装用部材の製造方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用部材及び包装用部材の製造方法に関する。本発明は、特に、環状の側壁を有する包装用部材及び包装用部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーなどの飲料や総菜などの内容物を収容する可撓性を有する容器や、そうした容器に対する蓋体などといった包装用部材として、紙系素材からなる包装用部材が提案されている。
【0003】
容器や蓋体などの包装用部材は、天蓋や底面材の周囲に環状の側壁を備える。環状の側壁としては、帯状の紙片などからなるブランク材から得られたものが提案されている。例えば、ブランク材を環状に丸めてそのブランク材の長手方向に沿って離れた2つの端部を重ね合わせて重なり部を形成し、重なり部で端部同士を接合して接合部を形成することで、側壁が得られる。
【0004】
このような包装用部材については、重なり部でブランク材の端部の位置に形成される段差部を解消して密閉性を向上させることが要請される。例えば、包装用部材となる容器や蓋の側壁において、大きな段差部が生じた場合、蓋を装着された容器においても容器と蓋との密閉性が損なわれてしまう。そして、容器と蓋の密閉性が損なわれると、蓋を装着された容器内から内容物が意図せずにこぼれ出てしまう事態が起こりかねない。また、ブランク材の端部の位置では端面が露出した状態となりやすく、容器の内容物が液体であるような場合には、端面から液体がしみこみやすい。
【0005】
この点、特許文献1には、段差部に樹脂が塗布されることで段差部を埋める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-227170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に提案された技術では、重なり部上に樹脂が塗布されてしまうと、樹脂を塗布された部分とそれ以外の部分との間で側壁の肉厚み差が大きくなることがある点で、包装用部材の密閉性を改善する余地がある。また、特許文献1に提案された技術では、内容物が液体である場合には、樹脂に含まれる様々な成分が液体中に漏れ出すことに配慮する必要が生じる点で、端部からの内容物のしみこみの点でも改善の余地がある。
【0008】
本発明の目的は、密閉性に優れるとともにブランク材の端面からの内容物のしみこみを改善した包装用部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(1)紙系素材からなるブランク材の2つの端部を重ねた状態で該端部を互いに接合した接合部を備えた環状の側壁を有し、少なくとも一方の前記端部が、前記ブランク材を圧縮した圧縮部を形成し、且つ、先端に向かって先細りした形状となっている、包装用部材、
(2)前記圧縮部では、前記ブランク材の圧縮度が前記端部の先端に向かって大きくなっている、上記(1)に記載の包装用部材、
(3)前記圧縮部は、前記端部の両方に形成されている、上記(1)又は(2)に記載の包装用部材、
(4)前記ブランク材の両方の主面における前記圧縮部に対応した領域に傾斜面が形成されている、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の包装用部材、
(5)前記ブランク材の一方の主面には、前記圧縮部に対応した領域に傾斜面が形成されており、他方の主面は、平坦面となっている、上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の包装用部材、
(6)前記圧縮部は、前記端部の両方に形成されており、前記ブランク材の一方の主面には、前記圧縮部に対応した領域に傾斜平面が形成されており、他方の主面は、平坦面となっており、
前記接合部では、2つの前記端部それぞれに形成された前記傾斜平面が向い合っている上記(1)又は(2)に記載の包装用部材、
(7)前記圧縮部は、熱プレス処理により形成されている、上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の包装用部材、
(8)容器または蓋体として用いられる、上記(1)から(7)のいずれか1つに記載の包装用部材、
(9)容器として用いられ、該容器は、前記側壁の上端に沿って外巻きに形成された環状のカール部と、該カール部に囲まれた開口とを有しており、前記カール部の外周面に前記圧縮部が露出している、上記(1)から(7)のいずれか1つに記載の包装用部材、
(10)蓋体として用いられ、該蓋体は、前記側壁の内周面に前記圧縮部が露出している、上記(1)から(7)のいずれか1つに記載の包装用部材、
(11)紙系素材からなるブランク材の少なくとも一方の端部を圧縮した圧縮部を形成する圧縮工程と、前記圧縮部を形成した前記ブランク材の2つの端部を重ね合させて重なり部を形成するとともに、該重なり部で前記端部を相互に接合して接合部を形成することで環状の側壁を形成する側壁形成工程とを有する、包装用部材の製造方法、を要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ブランク材の少なくとも一方の前記端部がブランク材を圧縮した圧縮部を形成し、且つ、先端に向かって先細りした形状となっていることにより、密閉性に優れる包装用部材及びその製造方法を提供することができる。そして、密閉性に優れる包装用部材が得られることで、蓋が装着された容器内から内容物が意図せずにこぼれ出てしまう事態を抑制することが可能となる。また、ブランク材の端部が圧縮され、かつ、端部の端面の面積が抑制されるため、端部からの内容物のしみこみを改善することができる。しかも、圧縮部は、圧縮という物理的工程により実現することができることから、樹脂などの化学物質を新たに用いる場合に懸念される樹脂に含まれる成分の溶出に配慮する必要性を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1の実施形態の一実施例を説明するための斜視図である。
図2図2は、図1のA-A線縦断面の状態を示す縦断面図である。
図3図3は、第1の実施形態の一実施例を説明するための横断面図である。また、一点鎖線で囲まれた領域を拡大した状態を示す部分拡大図である。
図4図4(a)から図4(g)は、重なり部と接合部の状態の一例を示す図である。
図5図5は、第2の実施形態の一実施例を説明するための斜視図である。
図6図6は、第2の実施形態の変形例を説明するための斜視図である。
図7図7は、第2の実施形態の変形例を説明するための平面図(上面図)である。
図8図8は、図7の一点鎖線で囲まれた領域Xの部分の部分拡大図である。
図9図9は、第2の実施形態の変形例にかかる包装用部材(容器)に第1の実施形態にかかる蓋体を取り付けた状態の例を示す断面図である。
図10図10(a)は、第2の実施形態の包装用部材(容器)に蓋体を取り付けた状態を示す断面図である。図10(b)は、第2の実施形態の包装用部材(容器)に蓋体を取り付けた状態を示す要部拡大図である。
図11図11(a)は、第1の実施形態の包装用部材(蓋体)を容器に取り付けた状態を示す断面図である。図11(b)は、第1の実施形態の包装用部材(蓋体)を容器に取り付けた状態を示す要部拡大図である。
図12図12は、第1の実施形態の包装用部材の製造方法の一実施例を説明するための工程断面図である。
図13図13は、ブランク材の端部に圧縮部を形成する工程を説明するための断面図である。
図14図14(a)、14(b)は、第1の実施形態の包装用部材の製造方法の他の実施例を説明するための工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明にかかる一実施例等について図面を参照しながら説明する。なお、説明は以下の順序で行う。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1 第1の実施形態
2 第2の実施形態
3 共通の変形例
4 製造方法
【0014】
以下の説明は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容は、これらの実施の形態等に限定されるものではない。また、以下の説明において、説明の便宜を考慮して前後、左右、上下等の方向を示すが、本発明の内容はこれらの方向に限定されるものではない。図1図2図3図4図5図6図7図9図10図11の例では、Z軸方向を上下方向(上側が+Z方向、下側が-Z方向)、X軸方向を前後方向(前側が+X方向、後ろ側が-X方向)、Y軸方向を左右方向(右側が+Y方向、左側が-Y方向)であるものとし、これに基づき説明を行う。図1から図14の各図に示す各層の大きさや厚みの相対的な大小比率は便宜上の記載であり、実際の大小比率を限定するものではない。
【0015】
本明細書において「包装用部材」とは、例えば飲食物等のような各種の物品を内容物として内部に収容することを目的として使用することができるものを示す。具体的には、包装用部材とは、容器や蓋体その他の包装体を包含する概念である。したがって、包装用部材は、容器又は蓋体のいずれかとして用いるものであってよい。
【0016】
第1の実施形態では、包装用部材が蓋体として用いられるものである場合における一実施例に基づき説明を行う。第2の実施形態では、包装用部材が容器として用いられるものである場合における一実施例に基づき説明を行う。
【0017】
[1 第1の実施形態]
[1-1 構成]
本発明の第1の実施形態にかかる包装用部材は、蓋体1である。蓋体1は、天蓋2と壁材3とを備える。蓋体1は、図1等を用いて後述するように、例えば上端側を開口させた有底の容器Tの開口縁部に対して装着させることができる。このとき、容器Tとしては、特に開口縁部に可撓性を有するものが好適に用いられる。
【0018】
(天蓋)
天蓋2は、容器Tに装着された状態で、容器Tの開口を覆う天面部4と、天面部4の外周縁から上方向に立ち上がる立ち上がり部5とを有している。立ち上がり部5は、壁材3の下端(容器T側に向かうほうの下端)よりも上側の所定位置で、壁材3の内周面側に接合されている。天面部の形状は特に限定されず、容器Tの形状に応じて定められてよい。天面部4の形状としては、図1から図3に示すような円形状の他、楕円形状、矩形状、三角形状、多角形等を例示することができる。
【0019】
天蓋2を構成する材料としては、例えば、パルプ系素材、繊維系素材、合成樹脂系素材、金属系素材、木材系素材、ガラス系素材やこれらの複合体や積層体等が挙げられる。
【0020】
天蓋2は、後述するように、例えば、原反材を打ち抜き加工等することで形成された天蓋形成用のブランク材の成形によって得ることができる。天蓋形成用の原反材としては、その材質等に限定はないが、例えば、紙系素材、織布素材、不織布素材、樹脂フィルム・シート材、アルミ箔等の金属箔、木箔等を適宜選択可能である。環境負荷の観点と取り扱いの容易性の観点からは、天蓋形成用の原反材は紙系素材であることが好ましい。紙系素材としては、植物繊維、その他の繊維を膠着させて製造される、いわゆる紙類の他、化学繊維紙、合成紙、耐水紙、コート紙、代替紙、羊皮紙、羊毛紙、ガラス繊維紙、ストーンペーパー、陶紙等が挙げられる。なお、不織布としては、例えば、空気流によって積繊した粉砕パルプを結合してシート状に形成したいわゆるエアレイドシート、パルプ系素材、天然繊維素材や合成繊維等の繊維の不織布を挙げることができる。樹脂フィルム・シート材としては、例えば、合成樹脂や天然樹脂、生分解性樹脂のフィルムやシートを挙げることができ、中でも生分解性樹脂のフィルムやシートを好ましく用いることができる。
【0021】
(壁材)
蓋体1は、包装用部材の側壁として壁材3を有する。壁材3は、環状に形成されている。壁材3は、所定形状を有する壁材形成用のブランク材30の2つの端部31、32を重ねた重なり部6と、その重なり部6で端部31、32を互いに接合する接合部7とを備える。
【0022】
壁材形成用のブランク材30を形成するための原反材としては、紙系素材が用いられる。したがって、ブランク材30としては、紙系素材が用いられる。紙系素材としては、天蓋形成用の原反材に関して上述したような各種の紙系素材を適宜用いることができる。図1の例では、壁材形成用の原反材として扇形状に形成された紙系素材を用い、紙系素材の円周方向に沿って離間した2つの端部を互いに重ねあわせて重なり部が形成されている。ここにいう端部31、32とは、ブランク材30の端縁から内側方向に向かった所定の位置までの部分を示す。
【0023】
(接合部)
接合部7は、重なり部6の少なくとも一部、好ましくは重なり部6の全体で2つの端部31、32を互いに接合することで形成される。2つの端部31、32の接合方法としては、接着剤やホットメルト接着剤、二液型接着剤、ヒートシール、超音波接合等の方法が挙げられるが、超音波接合が好適である。
【0024】
接合部7は、後述する圧縮部8の形成部分又は該形成部分を含む部分に形成されている。この場合、圧縮部8全体を接合部7に用いることができる。図1から図3図4(b)の例では、圧縮部8の形成部分に接合部7が形成されている。なお、このことは、接合部7が、圧縮部8の形成部分の一部に形成されていることを禁止するものではない。
【0025】
壁材形成用のブランク材30の少なくとも一方の端部(端部31と端部32の少なくとも一方)に、圧縮部8が形成されている。図1から図3図4(b)に示す蓋体1の例では、ブランク材30の2つの端部31、32のうち、側壁となる壁材3の状態で内周面3a側に位置するほうの端部31が圧縮部8となっており、壁材3の内周面3aに圧縮部8が露出している。側壁となる壁材3の状態で外周面3b側に位置するほうの端部32が非圧縮部となっている。図4(b)は、図3における重なり部6を含む部分を抜き出して模式化した図面である。圧縮部8は、重なり部6を形成する端部31の一部に形成されていてもよいが、図4(b)に示すように重なり部6を形成する端部31全体にわたって圧縮部8が形成されていることが好ましい。この場合、ブランク材30の端部31の位置でブランク材30の厚み変化がより緩やかとなり、容器Tとの密着性をより向上させることができる。
【0026】
(圧縮部)
圧縮部8は、壁材形成用のブランク材30を圧縮して形成される部分である。蓋体1においては、圧縮部8は、上述したように、壁材形成用のブランク材30における端部31と端部32の少なくとも一方が圧縮されることで形成される。壁材形成用のブランク材30の圧縮方法としては、例えば、プレス処理等を挙げることができる。プレス処理としては、熱プレス処理や加湿状態でのプレス処理等を挙げることができる。熱プレス処理は、加湿条件下で実施されてもよいし、非加湿条件下で実施されてもよい。このようなプレス処理の中でも、熱プレス処理が好ましい。熱プレス処理が採用されることで、壁材形成用のブランク材30の端部31の厚みを容易に薄くすることができるとともに、ブランク材30の厚みが薄い位置ほど壁材形成用のブランク材30の密度を向上させた状態を形成することができる。
【0027】
蓋体1においては、圧縮部8では、壁材形成用のブランク材30の圧縮度が端部31の先端31aに向かって大きくなっていることが好ましい。これは、壁材形成用のブランク材30の少なくとも一方の端部31を圧縮する際に、端部31の先端31aに近い位置ほど強い力で壁材形成用のブランク材30がプレスされることで具体的に実現することができる。また、図3の例の場合、壁材形成用のブランク材30における端部31の先端31aの密度が高められる。さらに、壁材形成用のブランク材30における端部31の先端31aの端面の面積を小さくすることができる。このため、蓋体1を取り付けられる容器Tの内容物が液体であるような場合に、壁材3を形成するブランク材30の端部31の先端31aの位置に内容物が付着しても、その先端31aから壁材3の内部に向かって内容物がしみこみにくくなる。
【0028】
(圧縮部の形状)
壁材形成用のブランク材30の端部31のうち圧縮部8を形成している方の端部31は、圧縮部8の基端に対応した位置から先端31aに向かって先細りした形状(ブランク材30の肉厚みが先端31aに向かって薄くなる形状)となっている。端部31の先細り形状の状態は特に限定されるものではないが、図1から図3の例については、図4(b)に示すように、ブランク材30の端部において、ブランク材の一方の主面30aには、圧縮部8に対応した領域(圧縮部8を形成したほうの端部31)に傾斜面9aが形成されており、他方の主面30bにおける圧縮部8に対応した領域は、平坦面9bとなっている。図3の例では、ブランク材30の上記した一方の主面30aが、壁材3の内周面3aとなる面であり、ブランク材30の上記した他方の主面30bが、壁材3の外周面3bとなる面である。図4(b)に示す例では、傾斜面9aとして傾斜平面10aが形成されている。なお、ブランク材30の一方の主面30aにおける圧縮部8に対応した領域には、図4(a)に示すように、傾斜面9aとして先端31aに向かって下り傾斜する湾曲面10bが形成されてもよい。図4(a)では、形成される湾曲面10bとして、凸状湾曲面が形成されているが、湾曲面10bとして凹状湾曲面が形成されてもよい。圧縮部8を形成している方の端部31の先端31aは、図4(f)に示す状態よりも、図4(b)に示すように、できるだけ圧縮された状態とすることが好ましい。また、先端31aで端面を有する場合、その形状は曲面状であっても良い。
【0029】
また、図4(e)に示すように、ブランク材30の両方の主面30a、30bにおける圧縮部8に対応した領域に傾斜面9aが形成されていてもよい。
【0030】
壁材3の外観形状は、特に限定されず、上下方向に同口径の筒状に形成されてもよいが、図1から図3に示すように、壁材3により形成された側壁が上方向から下方向に向かって内径が小さくなるような筒型に形成することが好ましく、また蓋体1の下端部における内径が該蓋体1によって閉蓋される容器Tの口部が形成されている上端部の外径よりもやや小さくなるように形成されていることがより好ましい。
一般的に、紙系素材は厚み方向に対しては折れ曲がったりする等の変形がしやすいが、
厚み方向と直交する面方向に対しては変形しにくいといった性質を有している。そのため、本実施の形態にかかる蓋体1のように、天蓋2と壁材3とから形成されていると、天蓋2が有する曲げ方向への変形しやすさと壁材3が有する周方向への変形しにくさとを併せ持たせることができる。
側壁が下方向に向かって内径が小さくなる筒状に形成され、かつ下端部の内径が容器Tの口部の外径よりやや小さくなるように形成された構成を有する蓋体1の場合、容器Tに対しては天蓋2を曲げ変形させるとともに容器Tの口部を変形させながら嵌合させることができる。そのため、蓋体1の下端部の内径が容器Tの上端部の外径よりも小さく形成されているにも関わらず、蓋体1を容器Tに対してスムーズに装着させることができる。また、蓋体1は、圧縮部8を形成することによって、側壁の内側の重なり部6における厚みを大きく低減させているため、閉蓋時における蓋体1の側壁内面側と容器Tの口部との間の密閉性をより大きく向上させることもできる。さらに、蓋体1は、下端部の内径が容器Tの口部の外径よりも小さくなるように形成されていることと、閉蓋時の蓋体1と容器Tとの隙間が低減されていることと相俟って、蓋体1と容器Tとの間から内容物としての液体が漏れ出るおそれが少なく、また例えば不意に蓋体1を装着した状態で容器Tを落下させたような場合であっても、落下時の衝撃に伴って蓋体1が外れるといった事態を低減することもできる。なお、このように蓋体1を装着した場合であっても、使用者が蓋体1を取り外そうとするときは、天蓋2を曲げ変形させながら取り外すことができるので、容易に取り外すことを可能にすることもできる。
【0031】
[1-2 作用効果]
蓋体1が紙系素材で形成されている場合、環境への配慮がなされている一方で、ウレタン素材などの樹脂素材に比べて紙系素材はクッション性が少なく寸法安定性が高い。このため、仮に、蓋体の壁材の重なり部に、ブランク材の厚みに由来する段差が大きく形成されていると、蓋体を取り付けた容器において、この段差の部分から容器の内容物が漏れ出す虞がある。第1の実施形態にかかる包装用部材となる蓋体においては、側壁としての壁材3を形成するブランク材30の端部の少なくとも一方(端部31)が圧縮部8となっていることで、ブランク材30の厚みが端部31で薄くなっている。このため、端部31、32同士を重ね合わせた重なり部6において、ブランク材30の端部31の先端31aの厚みに伴う段差が低減されている。図3の例では、壁材3の内周面3a側において段差が低減されている。なお、本発明において、重なり部6に形成される段差とは、重なり部6を構成する端部31、32の先端31a、32aに形成される段差Gを示す。
【0032】
図3の例では、蓋体1が、その内周面3a側に圧縮部8が露出するように重なり部6を形成している。このため、容器Tとの接合面となる容器Tの外周面側に圧縮部8が向い合うように蓋体1を容器Tに取り付ける場合において、図11(a)、図11(b)に示すように、容器Tの開口縁部の外周面側の部分に対して蓋体1の内周面3aをより密着させることができる。蓋体1と容器Tとの密着性が優れるので、蓋体1を装着した容器Tを傾けても容器Tと蓋体1との間から内容物が意図せずこぼれだす事態を抑制することができる。なお、図11(a)は、蓋体1を容器Tに装着した状態を示し、図11(b)は、蓋体1と容器Tとの接触部を示している。
【0033】
ブランク材30の厚みを端部31で薄くするためには、原反材を斜めに切断してブランク材30の端部31を斜めの切断面とする方法も考えられる。しかしながら、この場合、切断面の面積が大きくなり、ブランク材30の内部の紙の層の露出面積が大きくなる。一般に、ブランク材30を形成するための原反材には、その表面に撥水処理が施されており、原反材を切断してブランク材30を形成した場合においては、ブランク材30の端面は撥水処理の非処理面となっている。したがって、原反材を斜めに切断してブランク材30が得られた場合には、ブランク材30の端部に撥水処理の非処理面が広く露出してしまう。このため、次に述べるように蓋体1を取り付けた容器Tに収容されている内容物が液体である場合に、壁材3を形成するブランク材30の切断面から壁材3内部への液体のしみこみが生じやすくなってしまう。そこで、原反材を斜めに切断してブランク材30の端部を斜めの切断面とする場合には、液体のしみこみを抑制するための対策が新たに要請される。
【0034】
上記したように蓋体1を取り付けた容器Tに収容されている内容物が液体である場合、紙系素材で形成されている蓋体1では、壁材3を形成するブランク材30の端部31の位置から液体がしみこみやすい。この点、第1の実施形態にかかる包装用容器となる蓋体1においては、端部31が圧縮部8となっており、端部31の先端31aほど圧縮率が高められている。このため、ブランク材30は、端部31において繊維密度が高められ、ブランク材30の端部31の位置からブランク材30の内部に向けて液体がしみこみにくい。
【0035】
壁材3を形成するブランク材30の端部31の位置から液体がしみこむことを規制する観点では、端部31の位置に樹脂等をコーティングして樹脂コート部を形成することも考えられるが、樹脂コート部を形成する場合、液体に対して樹脂コート部が接触することになり、樹脂に含まれている成分が液体に漏れ出さないように更なる配慮を行う必要を生じる。しかも、樹脂等をコーティングする際に、壁材3の厚みがさらに上昇して、重なり部6の段差がさらに大きくなる可能性に対する配慮を行う必要もある。これに対して第1の実施形態にかかる包装用容器となる蓋体1においては、端部31の先端31aほど圧縮率が高められていることによって端部31から壁材3内部への液体のしみこみが規制されるため、上記したような配慮を行う必要を軽減することができる。
【0036】
[1-3 変形例]
上記第1の実施形態では、蓋体1は、側壁となる壁材3の内周面3aに圧縮部8が露出しているが、蓋体1の壁材3の外周面3bが容器Tの内周面に対して接合することで容器Tに取り付けられる場合には、蓋体1は、壁材3の外周面3bに圧縮部8が露出するように圧縮部8を形成していてもよい。これは、例えば、図3に示す端部32に圧縮部8を形成することで実現することができる。この場合においても、上記第1の実施形態の作用効果で示したことと同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
[2 第2の実施形態]
[2-1 構成]
本発明の第2の実施形態にかかる包装用部材は、容器50である。容器50は、図5に示すように、側周面を形成する胴材52と、底面を形成する底面材51とを備える。容器50は、底面材51の周囲に胴材52を接合させている。容器50は、胴材52と底面材51とで内部に空間を形成しており、上端側を開口させた有底の構造を有する。容器50としては、特に開口縁部53に可撓性を有するものが好適に用いられる。容器50は、開口縁部53に対して蓋体Cを装着されて用いられる。
【0038】
(底面材)
底面材51は、所定の原反材に対して打ち抜き加工等を施すことにより製造することができる。底面材51を形成するための原反材は、第1の実施形態において説明した天蓋を形成するための原反材と同様のものを用いられてよい。
【0039】
(胴材)
包装用部材の側壁として胴材52を有する。胴材52は、環状に形成されている。胴材52は、所定形状を有する胴材形成用のブランク材90の2つの端部91、92を重ねた重なり部60と、その重なり部60で端部91、92を互いに接合する接合部70とを備える。
【0040】
胴材形成用のブランク材90としては、第1の実施形態で説明した壁材3を形成するためのブランク材30と同様に、紙系素材が用いられる。また、胴材52の重なり部60及び接合部70は、それぞれ第1の実施形態で説明した壁材3の重なり部6及び接合部7と同様に形成されてよい。
【0041】
また、胴材52においては、胴材形成用のブランク材90の少なくとも一方の端部(端
部91と端部92の少なくともいずれか一方)が、圧縮部80を形成している。圧縮部80は、第1の実施形態で説明した圧縮部8と同様に形成されており、第1の実施形態で説明した圧縮部8と同様の構造及び形状を有してよい。図5の例では、端部91が圧縮部80を形成しており、端部91は、先端91aに向かって先細りになる形状に形成されている。圧縮部80の圧縮率は、端部91の先端91aに向かって大きくなっている。また、図5の例では、端部91が、胴材52の外周面52b側に位置しており、端部92は、圧縮部の非形成部となっており、胴材52の内周面52a側に位置している。
【0042】
[2-2 作用効果]
第2の実施形態にかかる包装用容器としての容器50によれば、第1の実施形態と同様に、重なり部60の段差が低減され、容器50に蓋体Cを取り付けた際に、蓋体Cを容器50に対してより密着させることができ、密着性を向上させることができる。図5の例では、胴材52の外周面52b側で重なり部6の段差が軽減されている。容器50に蓋体Cを取り付けた際に、蓋体Cが容器の開口縁部53に対して外側に接合する場合に、蓋体Cを容器50に対してより密着させることができ、密着性を向上させることができる。
【0043】
[2-3 変形例]
第2の実施形態においては、図6に示すように、容器50は、側壁となる胴材52の上端に沿って外巻きに形成された環状のカール部100を有してもよい。この例では、開口縁部53が、カール部100で形成されており、容器50の上端側に、カール部100で囲まれた開口が形成される。
【0044】
図6の例に示す容器50においては、図7図8に示すように、カール部100の外周面に圧縮部8が露出している。これは次のように胴材52を製造することで実現できる。すなわち、胴材形成用のブランク材90として扇形状に形成された紙系素材を用い、紙系素材の円周方向に沿って離間した2つの端部91、92を互いに重ねあわせて重なり部60を形成する。このとき、重なり部60は、圧縮部80を形成した端部92が胴材52の内周面52a側を向くように2つの端部91、92を互いに重ねあわせることで形成される。そして、胴材52の上端側端部を外巻きに巻いてカール部100が形成される。このとき、胴材52の内周面52a側がカール部100の露出面側に位置することとなる。こうして、カール部100の外周面に圧縮部8が露出している状態を実現することができる。なお、図7図8の例では、端部92は、先端92aに向かって先細りになる形状に形成されている。また、カール部100においては、端部91は、カール部100の内側に巻き込まれて隠ぺいされている。
【0045】
上記した第2の実施形態の変形例にかかる包装用容器としての容器50に蓋体Cを取り付けた際には、容器50のカール部100に対して蓋体Cが接触する。ここで、第2の実施形態の変形例によれば、端部92に圧縮部80が形成されていることにより、カール部100における重なり部60の段差が低減される。カール部100における重なり部60の段差が低減されるため、図10(a)、図10(b)に示すように、蓋体Cを容器50に対してより密着させることができ、密着性を向上させることができる。図10(a)は、蓋体Cを容器50に対して装着した状態を示しており、図10(b)は、蓋体Cと容器50との接触部を示す。このとき、容器50には、図9に示すように、第1の実施形態に示す蓋体1が装着されることがより好ましい。この場合、第2の実施形態にかかる容器50に第1の実施形態にかかる蓋体1を密着させた状態が形成される。第2の実施形態にかかる容器50と第1の実施形態にかかる蓋体1のいずれについても、重なり部60、6での段差が低減されているため、容器50と蓋体1との密着性をより向上させることができる。
【0046】
第2の実施形態の変形例にかかる包装用容器としての容器50によれば、第1の実施形態と同様に、ブランク材90の端部92の位置から胴材52の内部に向けて液体がしみこみにくくなる。
【0047】
上記した第1の実施形態と第2の実施形態いずれについても、次に示すような変形例であってもよい。
【0048】
[3 共通の変形例]
(変形例1)
第1の実施形態にかかる包装用部材としての蓋体1の説明において、圧縮部8は、ブランク材30の一方の端部31に形成されていたが、圧縮部8を形成される端部はこれに限定されない。圧縮部8は、図4(c)、図4(d)に示すように、ブランク材30の両方の端部31、32に形成されていてもよい。
【0049】
なお、ブランク材30の両方の端部31、32に圧縮部8が形成されている場合、ブランク材30の一方の主面には、圧縮部8に対応した領域に傾斜面9aが形成されており、他方の主面は、平坦面9bとなっており、且つ、接合部7では、2つの端部31、32それぞれに形成された傾斜面9a、9aが向い合っていることが好ましい。図4(d)に示す例では、端部31については、ブランク材30の一方の主面30aには、圧縮部8に対応した領域に傾斜面9aが形成されており、他方の主面30bは、平坦面9bが形成されている。端部32については、ブランク材30の一方の主面30bには、圧縮部8に対応した領域に傾斜面9aが形成されており、他方の主面30aは、平坦面9bが形成されている。そして、端部31の傾斜面9aと端部32の傾斜面9aが向かい合わせに配置されている。この場合、重なり部6とその周囲とで厚み差が生じにくくなる。
【0050】
図4(c)に示すように、接合部7において、2つの端部31、32それぞれに形成された平坦面9b、9bが向い合っている場合は、端部31、32同士の接合がより容易である。なお、図4(c)の例では、図4(d)の例に対して、端部31、32それぞれにおける傾斜面9aと平坦面9bの形成面が入れ替わっている。
【0051】
上記の変形例1で示したことは、第2の実施形態にかかる包装用部材としての容器50についても、同様である。なお、図4(c)、図4(d)では説明の便宜上、第1の実施形態にかかる包装用部材についてのブランク材30、接合部7、重なり部6、圧縮部8、端部31、32の各符号を付しているが、図4(c)、図4(d)は、各図に付されたブランク材30、接合部7、重なり部6、圧縮部8、端部31、32などの各符号を、それぞれ第2の実施形態にかかる包装用部材についてのブランク材90、接合部70、重なり部60、圧縮部80、端部91、92の符号に置き換えて、第2の実施形態を説明する図面として適用されてよい。このことは、図4(a)、図(b)、図4(e)についても同様である。
【0052】
(変形例2)
上記変形例1では、ブランク材30の一方の主面30aに傾斜面9aが形成され、他方の主面30bが平坦面9bとなっていたが、これに限定されず、図4(e)に示すように、ブランク材30の両方の主面30a、30bにおける圧縮部8に対応した領域に傾斜面9aが形成されていてもよい。
【0053】
(変形例3)
上記変形例1、2で説明した図4(d)と図4(e)に示す例では、傾斜面9aが互いに向かい合っているが、傾斜面9aの全面が互いに向かい合っていてもよいし、傾斜面が側壁の周方向に沿って互いにずれた位置で向かい合っていてもよい。傾斜面9aが互いにずれる方向は、側壁(壁材3、胴材52)の周方向に沿って重なり部6が大きくなる方向(端部31、32同士の重なりが大きくなる方向)でもよいし、側壁(壁材3、胴材52)の周方向に沿って重なり部6が小さくなる方向(端部31、32同士の重なりが小さくなる方向)でもよい。また、図4(g)に示すように、端部31、32の先端31a、32aの端面の大きさに応じて、傾斜面9aが互いにずれていてもよい。この場合、重なり部6の厚み(端部31と端部32の厚みの合計)をブランク材30の厚みに揃えることが容易となる。
【0054】
次に、本発明の包装用部材の製造方法について、詳細に説明する。包装用部材が上記第1の実施形態にかかる包装用部材である場合について、図12を参照しつつ、以下に説明する。図12は、第1の実施形態にかかる包装用部材の製造方法の一実施例を説明するための図である。
【0055】
[4 製造方法]
[4-1 製造方法の内容]
まず、紙系素材からなる原反材を扇形状に打ち抜き加工してブランク材30の形成を行う(図12(a))。
【0056】
次に、紙系素材からなるブランク材30の少なくとも一方の端部31を圧縮した圧縮部8を形成する圧縮工程を行う。圧縮部8は、例えば、ブランク材30の2つの端部31、32のうち少なくとも一方の端部31に熱プレス処理を施すことで実施される。熱プレス処理は、ブランク材30の端部31をローラ110に通じることで実現することができる(図12(b)、図12(c))。ローラ110としては、外周面に凸条部130を設けたものを用いることができる。凸条部130は、表面に傾斜面を形成しており、図13に示すようにローラ110の凸条部130とその受け部110aとで端部31が押圧されることで、端部31に圧縮部8を形成することができる。なお、ローラ110の凸条部130の傾斜面の形状や、ローラ110の表面形状、ローラ110のクリアランスなどの条件を定めることで、ブランク材30の端部31に形成される圧縮部8の形状を所望の形状とすることができ、またブランク材30の端部31の圧縮率を所望の圧縮率とすることができ、またブランク材30の端部31の先端31aに向かって圧縮率を高めることができる(図12(c))。
【0057】
ブランク材30に圧縮部8を形成した後、2つの端部31、32を重ね合させて重なり部6を形成するとともに、重なり部6で端部31,32を相互に接合することで接合部7を形成する(側壁形成工程)。この側壁形成工程により、環状の側壁としての壁材3が形成される(図12(d))。接合部7の形成方法としては、超音波接合等の方法を用いることができる。
【0058】
天蓋形成用の原反材を円形状に打ち抜いて天蓋2のブランク材を形成し、天蓋のブランク材の外周を折り曲げて天面部4と立ち上がり部5を形成し、天蓋2を得る。そして、天蓋2を壁材3の内周面3aの所定位置に配置する(図12(e)、図12(f))。
【0059】
壁材3の内周面3aと立ち上がり部5の外周面を接合処理する。接合処理には、ヒートシールなどを用いることができる。具体的には、立ち上がり部5の外周面に予め接着剤を塗布しておき、天蓋2の立ち上がり部5を壁材3の内周面3aに押し当てた状態で、立ち上がり部5の内周面側からローラ120を押し当てて加熱及び加圧する(図12(g))。ローラ120は、自転しながら立ち上がり部5の内周面側に沿って回動する。このとき、接着剤が溶解され、天蓋2と壁材3とが接合され、包装用部材としての蓋体1が得られる(図12(h))。なお、上記では、天蓋2の立ち上がり部5を壁材3との間に接着剤を塗布しているが、これは実施例の一つであり、製造方法はこれに限定されない。例えば、天蓋のブランク材と壁材のブランク材として樹脂などを表面にコーティングしたものを用いて、天蓋2の立ち上がり部5を壁材3とを直接対面させた状態でローラ120を押し当てて加熱及び加圧して接合するヒートシールによって天蓋2と壁材3とを接合することができる。これらの方法の他にも接合方法は適宜採用されてよい。
【0060】
図12を用いて上記した製造方法の説明においては、図12(b)、図12(c)等にも明らかにされているように、ブランク材30の一方の端部31に熱プレス処理を施す例を記載しているが、両方の端部31,32が熱プレス処理を施されてもよい。この場合、熱プレス処理は、図14(a)、図14(b)に示すように、端部31、32に応じて外周面に凸条部130を設けたローラ110を配置された状態とすることで実現することができる。なお、図14(a)では、ブランク材30の端部31の上側にローラ110が配置され、ブランク材30の端部32の下側にローラ110が配置されている。この場合、ブランク材30の端部31の上面側に傾斜面が形成され、ブランク材30の端部32の下面側に傾斜面が形成される。そして、図4(d)に示すような壁材3を形成することができる。
【0061】
[4-2 作用効果]
上記した包装用部材の製造方法によれば、圧縮部8の形状や圧縮率を制御しつつ重なり部6の端位置での段差が低減された包装用部材を製造することができる。特に、接合部7を形成する前に、圧縮部8を形成することができることから、圧縮部8の大きさや形状を細かく制御することが容易となり、より効果的に重なり部6の端位置での段差を抑制することができるようになる。
【0062】
以上、本開示の実施形態の例について具体的に説明したが、本開示は、上述の実施形態の例に限定されるものではなく、本開示の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0063】
例えば、上述の実施形態の例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値等を用いてもよい。
【0064】
なお、本開示中に例示された効果により本開示の内容が限定して解釈されるものではない。
【符号の説明】
【0065】
1 蓋体(包装用部材)
2 天蓋
3 壁材(側壁)
4 天面部
5 立ち上がり部
6 重なり部
7 接合部
8 圧縮部
9 傾斜平面(傾斜面)
10 湾曲面(傾斜面)
30 ブランク材
31、32 端部
31a、32a 端部の先端
50 容器(包装用部材)
51 底面材
52 胴材
60 重なり部
70 接合部
80 圧縮部
90 ブランク材
100 カール部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2020-10-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙系素材からなるブランク材の2つの端部を重ねた状態で該端部を互いに接合した接合部を備えた環状の側壁を有し、
少なくとも一方の前記端部が、前記ブランク材を圧縮した圧縮部を形成し、且つ、先端に向かって先細りした形状となっており、
前記ブランク材の両方の主面における前記圧縮部に対応した領域に傾斜面が形成されている、
包装用部材。
【請求項2】
前記圧縮部では、前記ブランク材の圧縮度が前記端部の先端に向かって大きくなっている、
請求項1に記載の包装用部材。
【請求項3】
前記圧縮部は、前記端部の両方に形成されている、
請求項1又は2に記載の包装用部材。
【請求項4】
前記圧縮部は、熱プレス処理により形成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の包装用部材。
【請求項5】
容器または蓋体として用いられる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の包装用部材。
【請求項6】
容器として用いられ、
該容器は、前記側壁の上端に沿って外巻きに形成された環状のカール部と、該カール部に囲まれた開口とを有しており、
前記カール部の外周面に前記圧縮部が露出している、
請求項1から4のいずれか1項に記載の包装用部材。
【請求項7】
蓋体として用いられ、
該蓋体は、前記側壁の内周面に前記圧縮部が露出している、
請求項1から4のいずれか1項に記載の包装用部材。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、包装用部材に関する。本発明は、特に、環状の側壁を有する包装用部材に関する
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明は、(1)紙系素材からなるブランク材の2つの端部を重ねた状態で該端部を互いに接合した接合部を備えた環状の側壁を有し、
少なくとも一方の前記端部が、前記ブランク材を圧縮した圧縮部を形成し、且つ、先端に向かって先細りした形状となっており、
前記ブランク材の両方の主面における前記圧縮部に対応した領域に傾斜面が形成されている、
包装用部材、
(2)前記圧縮部では、前記ブランク材の圧縮度が前記端部の先端に向かって大きくなっている、
上記(1)に記載の包装用部材、
(3)前記圧縮部は、前記端部の両方に形成されている、
上記(1)又は(2)に記載の包装用部材、
(4)前記圧縮部は、熱プレス処理により形成されている、
上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の包装用部材、
(5)容器または蓋体として用いられる、
上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の包装用部材、
(6)容器として用いられ、
該容器は、前記側壁の上端に沿って外巻きに形成された環状のカール部と、該カール部に囲まれた開口とを有しており、
前記カール部の外周面に前記圧縮部が露出している、
上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の包装用部材、
(7)蓋体として用いられ、
該蓋体は、前記側壁の内周面に前記圧縮部が露出している、
上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の包装用部材、
を要旨とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明によれば、ブランク材の少なくとも一方の前記端部がブランク材を圧縮した圧縮部を形成し、且つ、先端に向かって先細りした形状となっていることにより、密閉性に優れる包装用部材を提供することができる。そして、密閉性に優れる包装用部材が得られることで、蓋が装着された容器内から内容物が意図せずにこぼれ出てしまう事態を抑制することが可能となる。また、ブランク材の端部が圧縮され、かつ、端部の端面の面積が抑制されるため、端部からの内容物のしみこみを改善することができる。しかも、圧縮部は、圧縮という物理的工程により実現することができることから、樹脂などの化学物質を新たに用いる場合に懸念される樹脂に含まれる成分の溶出に配慮する必要性を抑えることが可能となる。