(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039854
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】スノードーム
(51)【国際特許分類】
A63H 9/00 20060101AFI20220303BHJP
A63H 23/08 20060101ALI20220303BHJP
A63H 23/10 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
A63H9/00 A
A63H23/08 Z
A63H23/10 Z
A63H9/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020153347
(22)【出願日】2020-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】521472357
【氏名又は名称】任 建安
(72)【発明者】
【氏名】戸田 一男
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150AA25
2C150BC05
(57)【要約】
【課題】 この発明は、注水後の閉栓の作業時に、気泡を上手に抜いて栓をすることが出来るようなスノードームの提供を課題とする。
【解決手段】 透明なガラス製のドーム1は底板21を有する。底板21には水3を注入したり気泡を抜いたりするための注入口22が設けられている。底板21のドーム1内の面には、注入口22に向かう溝部23が刻設されて、この溝部23に気泡30が捕捉されて注入口22へと運ばれることになる。注入口22はその外側から栓26で液密に閉じることが出来るようになっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドームと、該ドームに設けられた液体注入用の口と、該口を閉じて前記ドームを密閉するための栓とを備え、前記ドーム内側の前記液体注入用の口がある壁面に、前記液体注入用の口に通じる気泡案内用の溝が設けられていることを特徴とする、スノードーム。
【請求項2】
前記気泡案内用の溝が、前記壁面の前記液体注入用の口の近傍にのみ設けられている、請求項1に記載のスノードーム。
【請求項3】
前記気泡案内用の溝が複数条設けられている、請求項1に記載のスノードーム。
【請求項4】
前記壁面が、気泡を前記液体注入用の口へ向かわせる傾斜面である、請求項1に記載のスノードーム。
【請求項5】
前記ドーム内に景物を設置するための台座を備えており、前記液体注入用の口と前記気泡案内用の溝とが前記台座の下を潜るように設けられている、請求項1に記載のスノードーム。
【請求項6】
前記液体注入用の口の外側を取り囲む第1の壁を有すると共に、この第1の壁の外側を取り囲む第2の壁を有し、この第2の壁は前記第1の壁と同じ高さか前記第1の壁よりも高く設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のスノードーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスノードームの組み立てに於いて、ドームに栓をして密閉するに際し、ドームを満たす液体中から気泡を抜く作業を楽に行うことが出来るようにした、スノードームに関する。
【背景技術】
【0002】
スノードーム(スノーグローブとも呼ぶ)は19世紀のヨーロッパを発祥として米国で一般化した。スノードームの構造は、主にガラス製の透明な容器をドーム状や球状に形成して、内部に風景などの写真やミュチュア(景物)を配して、雪に見立てた粉末を納めた後に、スノードームの底部に設けた注入口からグリセリンや水などの透明な液体を注入して満たし、注入口に栓をしたものである。このように構成されたスノードームを手に持って逆さまにしたりすることで、風景に雪を降らせて遊ぶことが出来る。この景物としてはエッフェル塔や摩天楼などのご当地の風物が用いられるため、世界で土産物としての需要が多い。
【0003】
実用新案登録第3171324号のスノードーム型カレンダー(1)の考案は、上部を半球形に形成したドーム型の透明容器(2)に透明な液体(3)を充填し、液体(3)の内部に微小な装飾片(4)を多数収容すると共に、透明容器(2)の底部(2a)に設けた開口部(8)から上方へ向けて、透明容器(2)内の液体(3)から隔絶された状態で所定幅のスリット(5)を形成する枠部材(5a)を設け、スリット(5)にカレンダー等の表示片(6)を交換可能に挿入すると共に、透明容器(2)の底部(2a)を受ける受台(7)によってスリット(5)の開口部(8)を閉じるようにした。なお透明容器(2)への液体(3)の充填は底部(2a)に設けた注入口(9)から行われ、充填した後の透明容器(2)の密閉は注入口(9)を栓部材(10)で閉じることで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3171324号公報(
図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確かに実用新案登録第3171324号のスノードーム型カレンダーは良く設計されている。しかしながら欠点もある。上述したように透明容器(2)への液体(3)の充填は底部(2a)に設けた注入口(9)から行われ、また充填した後の透明容器(2)の密閉は注入口(9)を栓部材(10)で閉じることで行われる。ところが液体(3)には気泡が含まれているものであり、この気泡を取り除かないと透明容器(2)の壁面に取り付いたり、液体(3)内で装飾片(4)鑑賞の目障りになったりする。また小さな気泡が時間と共に集まってより大きな空気の塊になり、液体(3)の上部に溜ったりすると言う不都合を生じる。大きな空気の塊は出しやすくもあるが、ちょっとした振動でまた小さな泡に細分化すると言う性質がある。気泡は動いてしまいやすく、注入口(9)を設けた壁面の注入口(9)の回りをさまよって中々注入口(9)に出て来てくれない。気泡はドーム部(2b)と底部(2a)との境目にあっては、水の表面張力によるものか、気泡は部材の境目に捉えられやすく、この境目に沿って移動するのみで注入口(9)の方に移動しにくい性質が見られる。こうして気泡が残っていると、スノードームを手に持って逆さまにしたりする時に、どうしても泡が気になってしまうし、製品としての完成度も問われてしまう。なお上記注入口(9)と栓部材(10)との構成によれば慎重に作業しても注入口(9)に栓部材(10)を嵌め合わせる段階で透明容器(2)の液体(3)の中に、せっかく出したはずの気泡が紛れ込むことがある。
【0006】
そこで当発明者は閉栓の作業が楽にスピーディーに行えて、気泡が残りにくくなるような構成手段はないものかと思考した。すなわちこの発明は気泡が抜きやすく且つ残りくいようなスノードームの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため本発明では、ドームと、該ドームに設けられた液体注入用の口と、該口を閉じて前記ドームを密閉するための栓とを備え、前記ドーム内側の前記液体注入用の口がある壁面に、前記液体注入用の口に通じる気泡案内用の溝が設けられている、スノードームとした。
【0008】
上述したように従来製品では、気泡を抜く最終段階で気泡は動いてしまいやすく、液体注入用の口を設けた壁面のその口の回りをさまよって中々その口に出て来てくれなかったり、ドーム側の部材と口側の部材との境目にあっては、気泡は部材の境目に捉えられやすく、この境目に沿って移動するのみで口の方には来にくいのであるが、本発明によれば、気泡案内用の溝があることによってこの溝に捕捉され案内される形で気泡が液体注入用の口まで出て来るのである。従って気泡を抜く作業がやりやすいものとなり、気泡を抜くために要する時間が大幅に短縮されると言う効果を奏する。
【0009】
このような気泡案内用の溝は、液体注入用の口がある壁面の、液体注入用の口の近傍にのみ設けられているものとしても良い。例えば上部を半球形に形成したドーム型透明容器の底部に平らな受台があるスノードームであれば、受台の中央部に開口した液体注入用の口から、平らな受台の端部すなわち透明容器のドーム壁面に至る部位まで、気泡案内用の溝を設けるのでも良いのであるが、そうではなくて液体注入用の口の近傍にのみ設けるようにしたのである。上述したように気泡は動いてしまいやすく、液体注入用の口を設けた壁面のその口の回りをさまよっていて中々その口から出て来てくれない。しかしながら口の回りをさまようものであるから、気泡案内用の溝をその部位にのみ設けるようにしただけでも気泡を捕捉することが可能になる。一方、上述したようにドーム側の部材と口側の部材との境目にあっては、気泡は部材の境目に捉えられやすく、この境目に沿って移動するのみで口の方には来にくいわけであるが、それでもドーム側や、口がある壁面側を指先などで叩くことによって、気泡が部材の境目から離脱してくることがある。こうした時に水の表面張力によるものか気泡案内用の溝がその気泡を捕捉するのである。溝が上記部材との境目まで設けられている場合に比べれば気泡は出し難くはあるが、溝には気泡案内の作用が確かに見られるのである。
【0010】
また気泡案内用の溝が複数条設けられているものとしても良い。例えば上記受台の中央部に開口した液体注入用の口へは、気泡案内用の溝が1条設けられていれば所要の効果を奏することが分かっているが、溝が複数条であると気泡抜きがより効率的なものとなる。なお溝が複数条であって、各々の溝の長短が異なるような構成もまた可能である。
【0011】
また上記壁面が、気泡を前記液体注入用の口へ向かわせる傾斜面であるものとすることが出来る。例えば上述した底部に平らな受台があるスノードームであれば、平らな受台にこの発明の構成を適用して、気泡案内用の溝を設けるだけで所要の効果を発揮するのであるが、更に受台を気泡を前記液体注入用の口へ向かわせる傾斜面を有するものとすることで、気泡抜きがより効率的なものとなる。
【0012】
また上記ドーム内に、風景などの写真やミニチュアと言った景物を設置するための台座を備えており、前記液体注入用の口と前記気泡案内用の溝とが前記台座の下を潜るように設けられているものとしても良い。要は景物を設置するための台座があるとしても、この潜る気泡の通路と気泡案内用の溝とが設けられていれば、気泡は景物の台座に邪魔されることなく、液体注入用の口へ向かうことが出来る。
【0013】
さて前記液体注入用の口の外側を取り囲む第1の壁を有すると共に、この第1の壁の外側を取り囲む第2の壁を有し、この第2の壁は前記第1の壁と同じ高さか前記第1の壁よりも高く設けられているように構成しても良い。
【0014】
この構成によれば、液体注入用の口がその外側を取り囲む第1の壁と、更にその外側を取り囲む第2の壁とを有すると共に、第2の壁が第1の壁と同じ高さでまたは第2の壁が第1の壁よりも高く設けらており、液体注入用の口を閉じる栓は第1の壁に囲まれた口に栓をするように構成されている。そこでこの口からドームの中に液体を注入する時に液体を第1の壁から溢れ出させて第2の壁の中に入れ、第1の壁が液体に沈むようにするのである。このことが可能なのは第1の壁の外側を取り囲む第2の壁があることによる。
【0015】
第2の壁が第1の壁と同じ高さに設けられている場合では、第2の壁の高さいっぱいに液体を入れると、液体はその表面張力で盛り上がるので、第1の壁は液体の中に沈むようになる。第2の壁が第1の壁よりも高く設けらている場合では、第1の壁が沈むようにして第2の壁の中に液体を入れることが出来る。その何れの場合であっても第1の壁が液体の中に沈むようになる。従って第1の壁に囲まれた液体注入用の口に栓をする時に、この栓は第2の壁の液体の中に入ってから液体注入用の口を閉じるようになる。この栓が液体注入用の口に到達する前に第2の壁の中の液体に入り込むようになる。すなわち従来のように栓がいきなり液体注入用の口を閉じる場合ではこの栓が空気や気泡を捲き込みやすいのであるが、これに対して本発明によれば、この栓が空気や気泡を捲き込んで液体注入用の口を閉じるようなことは極めて起こりづらいものとなっている。
【0016】
なお本発明の実施に際しては、好適には第2の壁を第1の壁よりも高く設けるようにする。このようにすればこの栓にまつわる空気の影響を、第2の壁の中の液中で十分に除外することが可能になり、作業に余裕が生まれる。
【0017】
なお上述した動的に雪を降らせることを楽しむいわゆるスノードームでなくとも本発明を適用することが可能である。例えば水中花を液体中に配した静的なるドームや、比重が異なる幾種類かの色水を封入して、ドームを傾けることで色水が混ざり合うものの、静かに放置しておくことで色の層に分かれるような動的なドームや、水圧を変化させ得る機構を備え、水圧の脈動的な変化により模型の魚の鰭を動作させて、魚が恰も自然に泳いでいるかのように見せる水槽など、任意のドームに適用することが可能である。またこれ等のドームに照明器具を組み合わせたりすることなども、任意設計事項である。すなわちこれ等は本発明の権利範囲内にある。
【発明の効果】
【0018】
本発明のスノードームは、ドーム内側の液体注入用の口がある壁面に、液体注入用の口に通じる気泡案内用の溝が設けられているものである。気泡案内用の溝があることによりこの溝に捕捉され案内される形で気泡が液体注入用の口まで出て来るようになる。従って気泡を抜く作業がやりやすいものとなり、気泡を抜くために要する時間が大幅に短縮されると言う効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】 実施例1のドーム1の横断面を平面視した説明図である。
【
図5】 実施例2の天地を反して断面図で表した説明図である。
【
図8】 実施例4のドーム6の横断面を平面視した説明図である。
【
図9】 実施例5のドーム7の横断面を平面視した説明図である。
【
図10】 実施例6のドーム8の横断面を平面視した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では本発明の実施例6種を図面に基づいて説明するが、本発明はこれ等に限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内で工夫される種々変形例もまた本発明の権利範囲に含まれるものである。例えば例えば後述の水3をグリセリンなどに変更することが出来る。また気泡案内用の溝が1条と言う場合に、溝は直線でなくても曲線であっても良い。
【実施例0021】
図1乃至
図3で本実施例のスノ―ドームを表す。透明なガラス製のドーム1は、球体の下端部に円筒状の開口部10を有する形状を呈して、この開口部10には台座2が、その填め込み突起20によってしっかりと填め込まれている。この台座2は傾斜状の底板21を備えている。底板21の傾斜はドーム1との境目から中心部分にある注入口22の内筒27に向けて下っており、この間の底板21の4回対称の位置に溝部23が設けられている。この溝部23は気泡の通り道となる部位である。図中符号24は壇部を指しており、壇部24は支柱25によって底板21に立設されており、この上に景物を置くことが可能である。なお注入口22の内筒27はその外側から栓26で液密に閉じることが出来るようになっている。
【0022】
なお注入口22の端部(第2の壁に相当)は、この注入口22の内筒27の端部(第1の壁に相当)よりも外側(
図2の上方)に在るように構成されている。
【0023】
本実施例の使用法であるが、
図1の天地を反した
図2の体勢にして、注入口22の内筒27から栓26を外し、注入口22からドーム1の中に水3を注入する。この時に水3が内筒27から溢れて注入口22を満たす(溢水31)まで行うようにすると良い。この時までにドーム1内に気泡30が残っていたとする。気泡30は上昇して来る性質を有するが、ドーム1の壁面や底板21や、両者の境目に止まるものが出て来る。これ迄であればドーム1を指先で軽く叩くなどして、気泡30を注入口22からドーム1の外に出そうとしたのであるが、既述の通りなかなかうまく行かないのが実状であった。ところが本実施例によれば、気泡30は底板21の表面を彷徨う内に、あるいはドーム1と底板21との境目に沿って移動する内に溝部23に至り、注入口22の内筒27方向に傾斜状態の溝部23を伝って内筒27へと案内されることになる。このようにして気泡30が抜けたならば、内筒27を栓26で止めれば良い。
【0024】
なお次に本実施例の付随的な特徴について説明しておく。上述したように水3は注入口22の内筒27から溢れて、注入口22の中で溢水31となり注入口22の縁に達している。すなわち内筒27は溢水31に水没している。この内筒27を栓26で止めるに際して、栓26を内筒27に近づけて行くと栓26は最初に溢水31に触れるが、この時に栓26を操って栓26の先に気泡が着いていないようにするのである。そしてドーム1内に気泡30が残らず栓26にも気泡が付着していない状態で、栓26を進めて内筒27に栓26をするのである。
本実施例の使用法は上述した実施例1の使用法に倣う。本実施例に於いても気泡30は底板51の表面を彷徨う内に、あるいはドーム4と底板51との境目に沿って移動する内に、溝部53に至り、注入口52方向に傾斜した状態の溝部53を伝って注入口52へと案内されることになる。このようにして気泡30が抜けたならば、注入口52を栓56で液密に止めれば良い。この際に注入口52(第1の壁に相当)が溢水31に水没するように、予め注水するに当たり水3が注入口52から溢れて開口部40内に満つようにしておくとなお良い。