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  • 特開-歯磨剤組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039864
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】歯磨剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20220303BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
A61K8/44
A61Q11/00
A61K8/31
A61K8/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020154161
(22)【出願日】2020-08-27
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(72)【発明者】
【氏名】笠井 彩音
(72)【発明者】
【氏名】イム ヒョンソオク
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA112
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB222
4C083AB242
4C083AB282
4C083AB472
4C083AC031
4C083AC032
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC432
4C083AC552
4C083AC621
4C083AC622
4C083AC712
4C083AC782
4C083AC862
4C083AD042
4C083AD262
4C083AD272
4C083AD282
4C083AD352
4C083AD392
4C083AD532
4C083BB23
4C083CC41
4C083DD22
4C083DD27
4C083EE07
4C083EE31
(57)【要約】
【課題】口腔用組成物の嗜好性を向上させるために汎用されるシトラス系香料の主要成分であるリモネンとトラネキサム酸を併用した場合に、トラネキサム酸残存量が経時とともに減少する。
【解決手段】(A)トラネキサム酸、(B)リモネン、および(C)増粘性シリカ4~10質量%を含有する歯磨剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)トラネキサム酸
(B)リモネン
(C)増粘性シリカ4~10質量%
を含有する歯磨剤組成物。
【請求項2】
前記(A)成分の含有量が0.01~0.3質量%、
前記(B)成分の含有量が0.001~1質量%である、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項3】
前記(C)の平均粒子径が20μm以下、かつ吸油量が1.5~5mL/gである、請求項2に記載の歯磨剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯磨剤組成物におけるトラネキサム酸の安定性向上に関する。
【背景技術】
【0002】
トラネキサム酸などの抗プラスミン剤は抗炎症や止血に優れた効果を有し、歯周疾患の予防に対し有効であることが知られており、例えば特許文献1では、口腔用組成物への配合が検討、提案されている。
【0003】
トラネキサム酸は保存時の安定性に課題があり、経時とともに製剤中の残存量が低下することが知られており、例えば特許文献2には、酸化チタンなどの粉体、シリコーンオイル、シリコーン系界面活性剤などを含む油中水型乳化組成物中でトラネキサム酸の量が長期間維持される旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9-95429号公報
【特許文献2】特開2019-6712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、歯磨剤組成物においてトラネキサム酸を安定的に配合する方法については未だ提案されておらず、歯磨剤組成物の嗜好性を向上させるために汎用されるシトラス系香料の主要成分であるリモネンとトラネキサム酸を併用した場合に、トラネキサム酸残存量が経時とともに減少していくという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、驚くべきことに、(A)トラネキサム酸および(B)リモネンを含有する歯磨剤組成物に対して、(C)増粘性シリカをさらに配合することで上記課題を解決し得ることを見出した。
【0007】
本発明は、例えば以下に記載の発明を包含する。
項1.
(A)トラネキサム酸、(B)リモネン、(C)増粘性シリカ4~10質量%を含有する歯磨剤組成物。
項2.
前記(A)成分の含有量が0.01~0.3質量%、前記(B)成分の含有量が0.001~1質量%である、項1に記載の歯磨剤組成物。
項3.
前記(C)の平均粒子径が20μm以下、かつ吸油量が1.5~5mL/gである、項2に記載の歯磨剤組成物。
【発明の効果】
【0008】
トラネキサム酸を含有し、経時によるトラネキサム酸量の減少が抑制された歯磨剤組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】トラネキサム酸定量試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。なお、本発明は歯磨剤組成物、特に、(A)トラネキサム酸、(B)リモネン、および(C)増粘性シリカを含有する歯磨剤組成物等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本発明は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0011】
本発明で用いられる(A)トラネキサム酸は、医薬品、医薬部外品、化粧品で通常用いられているものであれば特に制限されず用いることができる。トラネキサム酸とは、トランス-4-アミノメチルシクロヘキサン-1-カルボン酸であり、市販品としては「日本薬局方トラネキサム酸」(丸善製薬株式会社)等が挙げられる。トラネキサム酸の他、トラネキサム酸塩(マグネシウム,カルシウム,ナトリウム,カリウム等の金属塩類、リン酸塩、塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩等)、トラネキサム酸エステル(ビタミンAエステル,ビタミンEエステル,ビタミンCエステル等のビタミンエステル、アルキルエステル)、トラネキサム酸アミド、トラネキサム酸の二量体等を用いることもできる。
【0012】
(A)トラネキサム酸の配合量は、組成物全量に対して0.01~0.3質量%が好ましい。配合量が0.01質量%未満であれば、抗プラスミン効果が発揮されない場合がある。一方、配合量が0.3%を超えると、トラネキサム酸特有の苦みにより組成物の使用感が低下するおそれがある。(A)トラネキサム酸の配合量はより好ましくは0.02~0.2質量%、さらに好ましくは0.03~0.1質量%、最も好ましくは0.05質量%である。また、(A)成分の配合量は0.02、0.04、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.25質量%であってもよい。
【0013】
本発明に用いられる(B)リモネンは、d-リモネンであり医薬品、医薬部外品、化粧品で通常用いられているものであれば特に制限されず用いることができる。これは単品でも精油でも好適に使用することができ、単品では化学合成、あるいは植物から精製したものを用い、また精油としては、d-リモネンを含有するレモン油、オレンジ油、グレープフルーツ油などを用いることができる。
【0014】
(B)リモネンの配合量は、組成物全量に対して0.001~1質量%が好ましい。(B)リモネンの配合量はより好ましくは0.01~0.5質量%、さらに好ましくは0.05~0.3質量%、最も好ましくは0.2質量%である。また、(B)リモネンの配合量は0.003、0.005、0.02、0.03、0.04、0.06、0.08、0.1、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1質量%であってもよい。
【0015】
本発明に用いられる(C)増粘性シリカは、増粘作用を有する公知の成分であり、通常の研磨性シリカとして歯磨組成物に用いられるシリカより吸油量が大きいものである。(C)増粘性シリカの吸油量は通常1.5mL/g以上であり、好ましくは1.5~5mL/g、さらに好ましくは2~4mL/gである。また、(C)増粘性シリカの平均粒子径は、通常20μm以下であり、好ましくは1~18μmであり、より好ましくは1.5~15μmである。なお、吸油量とは、シリカが担持できる油量を示したものであり、測定方法はJISK5101-13-2(2004年制定)の方法により、吸収される煮あまに油の量により特定される値を意味する。
【0016】
(C)増粘性シリカの配合量は、組成物全量に対して4~10質量%が好ましく、より好ましくは5~8質量%である。また、(C)増粘性シリカの配合量は4.5、5.5、6、6.5、7、8、9、10質量%であってもよい。
【0017】
本発明の歯磨剤組成物は常法により製造することができる。また、本発明の歯磨剤組成物は医薬部外品、化粧品として用いることができる。
【0018】
本発明の歯磨剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に口腔用組成物に配合し得る公知の任意成分を、単独で又は2種以上組み合わせて、さらに配合してもよい。
【0019】
このような公知の任意成分としては、例えば、界面活性剤、殺菌剤、研磨剤、湿潤剤、増粘剤、甘味剤、防腐剤、着色剤、pH調整剤、安定化剤、矯味剤、収斂剤、香料、他の薬効成分等が挙げられる。
【0020】
界面活性剤として、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、または両性界面活性剤を配合することができる。具体的には、アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸塩、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルタウリン塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸モノグリセライド硫酸塩、アルキルスルホ酢酸塩等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグリコシド、セバシン酸ジエチル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N-アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N-アルキルアミノエチルグリシン等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.1~5質量%である。
【0021】
殺菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン等のカチオン性殺菌剤、酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、またはニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、トデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン等の非イオン性殺菌剤などが挙げられる。これらの殺菌剤は、単独または2種以上を組み合わせてさらに配合してもよい。
【0022】
研磨剤として、例えば、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水和物、リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、無水ケイ酸、シリカゲル、ケイ酸アルミニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、第3リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ポリメタクリル酸メチル、ベントナイト、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂等が挙げられる。これらの研磨剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0023】
湿潤剤として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、パラチニット、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの湿潤剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0024】
防腐剤として、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等が挙げられる。これらの防腐剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0025】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等が挙げられる。これらのpH調製剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0026】
安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸カルシウム、ラノリン、トリアセチン、ヒマシ油、硫酸マグネシウム等が挙げられる。これらの安定化剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0027】
矯味剤としては、例えば、チャエキス、チャ乾留液、プロポリスエキス、グルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0028】
収れん剤としては、例えば、重曹、乳酸アルミニウム等が挙げられる。
【0029】
他の薬効剤としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ素化合物;デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素;ε-アミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルリチン酸類、グリチルレチン酸、ビサボロール、グリセロリン酸、クロロフィル、グルコン酸銅、塩化ナトリウム、水溶性無機リン酸化合物;酢酸ピリドキシン、アスコルビン酸またはその塩等のビタミン類が挙げられる。
【0030】
さらに、本発明は、(C)増粘性シリカにより、(B)リモネン存在下における(A)トラネキサム酸の残存量の減少を抑制する方法も包含する。この場合においても、各成分の配合量は上述の範囲であることが好ましい。
【実施例0031】
以下に実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0032】
<被験組成物の調製および保存>
表1に示す配合に従い、常法にて被験組成物を調製した。各被験組成物25gを高密度ポリエチレンからなる肩部を有するアルミラミネートチューブ(胴部直径:22mm)に充填し、65℃で5日間保存した。5日間経過後、各歯磨剤組成物をラミネートチューブから被験組成物2gずつを分取し、液体クロマトグラフィー法によりトラネキサム酸を定量した。本実施例で用いた増粘性シリカはSorbosil TC15(PQ Corporation社製)であり、その平均粒子径は17μm以下、吸油量は2.1~3.4mL/gである。
【0033】
<トラネキサム酸の定量法>
被験組成物2gに水を加えて100mLとし、試料溶液とした。また、標準溶液として標品トラネキサム酸を量り、水を加えて正確にメスアップしたものを用いた。
【0034】
<高速液体クロマトグラフィー測定条件>
検出器:移動相及び反応試薬送液用の二つのポンプ、試料導入部、カラム、反応ユニット、検出器並びに記録装置よりなり、反応ユニットは恒温に保たれるものを用いた。
装置:蛍光光度計(励起波長:348nm、蛍光波長:456nm)
カラム:液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲル
カラム温度:40℃
移動相:過塩素酸ナトリウム混液
反応試薬:o-フタルアルデヒド試薬
【0035】
<トラネキサム酸減少量の算出>
その後、各歯磨剤組成物の調製時におけるトラネキサム酸の配合量を基準(100%)として、保存後の各歯磨剤組成物におけるトラネキサム酸の減少量(%)を算出した。
【0036】
以下、表1および図1に本発明の実施例および上記トラネキサム酸定量試験の結果を示す。
【表1】
【0037】
表1に示す通り、トラネキサム酸およびリモネンに加えて増粘性シリカを一定量含有させることで、65℃で5日間保存した際のトラネキサム酸量の減少が抑制された。
【0038】
以下、表2~表5に、本発明の口腔用組成物の処方例を示す。
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
図1