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▶ 小林 唯史の特許一覧

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  • 特開-擦弦楽器の運弓の習得を補助する装置 図1
  • 特開-擦弦楽器の運弓の習得を補助する装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039869
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】擦弦楽器の運弓の習得を補助する装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 15/00 20060101AFI20220303BHJP
   G10D 3/16 20200101ALI20220303BHJP
【FI】
G09B15/00 Z
G10D3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020154984
(22)【出願日】2020-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】520357268
【氏名又は名称】小林 唯史
(72)【発明者】
【氏名】小林 唯史
【テーマコード(参考)】
5D002
【Fターム(参考)】
5D002AA01
5D002EE03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】擦弦楽器の運弓を習得するためには弓が楽器に対してどのような状態にあるかを演奏者が把握し正しい状態との差異を認識することが重要であるが、鏡を用いるなどの従来の方法は理想的とはいえず、また矯正器具には改善の余地があるため、それらの欠点を解消し、弓の状態を安全でより直感的かつ分かりやすい方法で把握できるようにし運弓の習得を補助する。
【解決手段】装置は軸2の両側に発光部1を有する構造になっていて、楽器本体9を挟むように取り付けると発光部が低音弦側と高温弦側とで対を成し位置する。正しい位置に取り付けられた発光部の光源3からは運弓でたどるべき正しい軌道上7に向けて光5が発せられ、そこに弓8が位置するときには毛(馬毛)に光が照射される6。正しくない場合は弓の毛に光が照射されない。このことにより、正しい軌道上を運弓できているか否かの認識が容易になり、演奏者は弓の状態を直感的に把握することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光部(1)が軸(2)の両側に固定された、擦弦楽器の運弓の習得を補助する装置。
【請求項2】
発光部に光源(3)が内蔵され、それを点灯させる電気回路と電源等(4)が搭載された請求項1に記載の装置。
【請求項3】
軸(2)が伸縮するなどの機構を有し、発光部を楽器本体(9)に固定することができる請求項1の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擦弦楽器の運弓の習得を安全かつ効果的に補助する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
擦弦楽器の演奏において、弓を駒に対して常に平行な正しい軌道上を動かす運弓方法は奏法の基本で、演奏経験が浅いうちは難しく習得するには長期間に渡る繰り返しの練習が必要となる。
【0003】
正しい運弓を習得する方法のひとつが器具を用いての矯正。多くは楽器に取り付ける弓のガイド状の器具で、弓を一定方向にしか動かないように制限することで正しい運弓を身につけさせるのが目的となっている。
【0004】
他の方法としては、演奏者が自身の演奏を鏡に映して視認する、第三者に観察および助言してもらう、などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-166678(P2001-166678A)
【特許文献2】特開2002-62867(P2002-62867A)
【特許文献3】特開2004-93883(P2004-93883A)
【特許文献4】特開2008-116886(P2008-116886A)
【特許文献5】特開2009-139901(P2009-139901A)
【非特許文献】
【0006】
【実用新案文献1】
実用新案登録第3177694号(U3177694)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
擦弦楽器の正しい運弓を習得するためには、演奏者が演奏中に自分の弓の軌道と正しい軌道との差異を認識することが重要であるが、容易ではない。その一因は、演奏時の視点では弓が駒に平行で正しい軌道上にあるかを正しく直感的に把握するのが困難なことにある。
【0008】
矯正器具を用いる場合、物理的に器具と弓が接触することが多々あるため練習中に弓を傷つける、破損するなどの恐れがある。また、駒や弦付近に取り付けるものは演奏中視界に入り異物という認識がなされてしまう。あくまでも練習用という範疇を出ず、楽曲演奏時に使うのは限界がある。
【0009】
鏡に自身を映して弓の状態を見る方法は一般的に試みられている。バイオリンやビオラの場合は、楽器は身体に対して横向きに構えるため顔および視線もそちらに向けるのが一般的であるが、鏡を置く位置は弓の軌道の延長上すなわち身体の正面になり、視線の方向とは異なる。演奏しながら鏡を見るためには、顔を鏡の方に向けざるをえず、自然な演奏姿勢とは異なる姿勢を取る必要があり理想的とは言えない。
【0010】
第三者が協力する場合は、運弓の良し悪しを判断できる位置つまり弓の動きの延長線上に立つ必要があり、その範囲は限られる。また、その助言は客観的な言語などによるものであって、演奏者自身が実際に視認して理解するのとは本質的に異なる。もっともひとりで練習をする場合は第三者がいないためこの方法を行うことができないという問題がある。
【0011】
その他、特開2004-93883の方法はセンサーなどを用いて弓の状態を示す装置であるが、その結果が弓とは離れた部分に記号的に表示されるためその関係性を読み解く必要があり、直感的に分かりやすいとは言い難い。また、表示部が演奏者に向けられているため第三者には見えづらいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る装置は、光源(3)を内蔵した発光部(1)とそれを点灯させる回路類(4)、軸(2)から成る。発光部は軸の両端に対を成し、光(5)を発する。
【0013】
装置は楽器本体(9)をはさむように取り付けられ、発光部が弦を中心に低音弦側(10)と高音弦側(11)とに位置する。発光部は弓の正しい軌道上(7)に向けられていて、光源からそこに向けて光を発する。
【0014】
演奏者が弓を正しい軌道上に位置するように構えたとき、光によって弓(8)の毛(馬毛)に明るく照らされる照射部(6)ができ、演奏者は視界の中で容易にそれを視認できる。弓の毛の先側と元側双方に照射部ができていれば正しい状態にあると認識できる。弓を動かしてもなお常に同様なら正しい軌道上を運弓できていると分かる。逆に、どちらかあるいは両方の照射部がなくなった場合は、同軌道上を運弓できていないことを示している。
【0015】
光源の数と色は、複数対にすることも複数色を用いることも可能。例えば、三対の光源を用い、一対は正しい軌道上に青色、もう一対はそれより指板側に赤色、あと一対は駒側に橙色を照射するように配置すれば、運弓が正しいときは弓の毛の両側が青色に照射されるだけでなく、正しくないときも赤色や橙色の照射光で示すことができ、よりわかりやすい。または正しい軌道上の光源を廃し、正しくないことを示すものだけを採用すれば、正しい運弓で演奏中に余計な光が目に入らず快適、といった展開例も可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、演奏者は自身の弓の状態を自然な演奏姿勢のまま直感的に容易に把握することができるようになり、運弓の効率的な習得に役立てることができる。
【0017】
光による補助は弓と物理的に触れる部位がない非接触の方式なので、それを傷つける恐れはない。激しく弓を動かして弾くような曲でも使用することが出来るため、対象となる層が初心者から上達者までと幅広い。
【0018】
物理的に演奏者の視界を何ら邪魔するものではないため、運弓の練習時と楽曲演奏時との間の感覚の差異がごく小さいことも特長である。
【0019】
第三者は、演奏者に対してどの位置に居ても照射部を見れば運弓の状態を把握できる。それが指導者の場合は、より正しい指導に役立てることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る装置の概要図。
図2】本発明に係る装置の使用状況を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図2に本発明に係る装置を使用する例を示す。装置は楽器本体を挟むように取り付け、発光部が低音弦側と高音弦側とに位置する。
【符号の説明】
【0022】
1 発光部
2 軸
3 光源
4 電気回路、電源、スイッチ
5 光
6 照射部
7 弓の正しい軌道
8 弓
9 楽器本体
10 低音弦側
11 高音弦側
図1
図2