(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039876
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】有機物分解装置及び有機物分解方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20220303BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20220303BHJP
【FI】
B01J19/00 301D
B01J19/00 F ZAB
B01J19/00 E
B09B3/00 302E
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020166639
(22)【出願日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】109129656
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】520382570
【氏名又は名称】李輝雄
【氏名又は名称原語表記】LEE,HUI-SHIUNG
【住所又は居所原語表記】1F,No.19,Ln. 100,Hejiang St.,Zhongshan Dist.,Taipei City 10478,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100159916
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】李輝雄
【テーマコード(参考)】
4D004
4G075
【Fターム(参考)】
4D004AA01
4D004AC04
4D004CA26
4D004CA27
4D004CA28
4D004CB02
4D004CB50
4G075AA22
4G075AA44
4G075BA05
4G075CA35
4G075DA02
4G075EA05
4G075EB01
4G075EB33
4G075FB02
4G075FB04
4G075FC07
(57)【要約】
【課題】有機物分解装置及び有機物分解方法を提供する。
【解決手段】反応チャンバーの側壁にエネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニットを少なくとも備え、エネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニットは赤外線材料で構成される。本発明は毎回の分解反応で余分に発生した熱エネルギーを赤外線材料により反射し、赤外線材料が放出した熱エネルギーと結合させ、反応チャンバーの収容空間中の未分解の有機物に再度伝達し、有機物の分解反応を再度継続する。有機物分解装置は能動的に熱を放射して均等な熱効果、エネルギー消費の少なさ、及び分解時間の早さという効果を有する。また、何度も行った後に蓄積した熱エネルギーにより継続的な分解反応を達成し、初期加熱装置から後続の熱エネルギーを供給する必要がない。また、本発明は有機物分解方法を更に提供する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉床(11)と、側壁(12)と、トップカバー(13)と、を含む反応チャンバー(10)を少なくとも有し、
前記側壁(12)の両端は、前記炉床(11)及び前記トップカバー(13)にそれぞれ連接し、
前記炉床(11)、前記側壁(12)、及び前記トップカバー(13)は、共同で収容空間(S)を形成し、
前記側壁(12)は、赤外線材料で構成されるエネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニット(122)を少なくとも備えていることを特徴とする、
有機物分解装置。
【請求項2】
前記赤外線材料は、遠赤外線材料であることを特徴とする、
請求項1に記載の有機物分解装置。
【請求項3】
前記遠赤外線材料は、遠赤外線反射材料及び遠赤外線放射材料を含むことを特徴とする、
請求項2に記載の有機物分解装置。
【請求項4】
前記側壁(12)の内層は、前記エネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニット(122)で構成されることを特徴とする、
請求項3に記載の有機物分解装置。
【請求項5】
前記エネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニット(122)に、前記遠赤外線放射材料で構成される遠赤外線放射層(1221)、及び、前記遠赤外線反射材料で構成される遠赤外線反射層(1222)を内から外に向かって重置することを特徴とする、
請求項3に記載の有機物分解装置。
【請求項6】
前記遠赤外線材料は断熱材料を更に含み、
前記エネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニット(122)に、前記遠赤外線放射層(1221)、前記遠赤外線反射層(1222)、及び前記断熱材料で構成される断熱層(1223)を内から外に向かって重置することを特徴とする、
請求項5に記載の有機物分解装置。
【請求項7】
前記遠赤外線反射材料は、無機非酸化物材料であり、
前記遠赤外線放射材料は、金属酸化物または非金属材料であることを特徴とする、
請求項3に記載の有機物分解装置。
【請求項8】
前記遠赤外線反射材料は、ZrC(炭化ジルコニウム)、TiC(炭化チタン)、TaC(炭化タンタル)、MoC(炭化モリブデン)、WC(炭化タングステン)、B4C(炭化ホウ素)、SiC(炭化ケイ素)、TiSi2(ケイ化チタン)、WSi2(ケイ化タングステン)、MoSi2(二ケイ化チタン)、ZrB2(二ホウ化ジルコニウム)、TiB2(二ホウ化チタン)、CrB2(ホウ化クロム)、ZrN(窒化ジルコニウム)、TiN(窒化チタン)、AlN(窒化アルミニウム)、及びSi3N4(窒化ケイ素)で構成されるグループのうちから少なくとも1つを選択することを特徴とする、
請求項3に記載の有機物分解装置。
【請求項9】
前記遠赤外線放射材料は、MgO(酸化マグネシウム)、CaO(酸化カルシウム)、BaO(酸化バリウム)、ZrO2(二酸化ジルコニウム)、TiO2(二酸化チタン)、Cr2O3(三酸化二クロム)、MnO2(二酸化マンガン)、Fe2O3(酸化鉄)、Al2O3(酸化アルミニウム)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Pt(プラチナ)、Cu(銅)、及びAu(金)で構成されるグループのうちから少なくとも1つを選択することを特徴とする、
請求項3に記載の有機物分解装置。
【請求項10】
前記遠赤外線反射材料は、炭化ケイ素であり、
前記遠赤外線放射材料は、酸化マグネシウムであることを特徴とする、
請求項3に記載の有機物分解装置。
【請求項11】
前記遠赤外線材料は、断熱材料を更に含み、
前記断熱材料は、沸石であることを特徴とする、
請求項10に記載の有機物分解装置。
【請求項12】
前記遠赤外線放射材料の粒径は14μm以下であり、その平均粒径は3.83μmであり、且つ99%の粉末の粒径は11.85μm未満であり、平均遠赤外線放射係数は0.98以上であることを特徴とする、
請求項3に記載の有機物分解装置。
【請求項13】
請求項3に記載の有機物分解装置(1)及び初期加熱装置(40)を提供し、前記初期加熱装置(40)を前記側壁(12)または前記炉床(11)に設置する、有機物分解装置を提供するステップ(S1)と、
有機物を前記収容空間(S)に積み重ねる、有機物を積み重ねるステップ(S2)と、
前記初期加熱装置(40)をオンにして所定の時間継続する、熱源を提供するステップ(S3)と、
前記初期加熱装置(40)をオンにしてから前記所定の時間を経過した後に前記初期加熱装置(40)をオフにする、熱源をオフにするステップ(S4)と、
前記初期加熱装置(40)をオフにした後、前記側壁(12)のエネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニット(122)の前記遠赤外線反射材料が、前記収容空間(S)からの前記有機物の分解反応により発生した熱エネルギーを前記収容空間(S)に反射して戻し、前記有機物の分解反応を行うのに必要な熱エネルギーを再度提供し、前記収容空間(S)に反射して戻した熱エネルギー及び前記遠赤外線放射材料が放射した遠赤外線熱エネルギーが共に前記収容空間(S)にある前記有機物に熱エネルギーを提供して分解反応を継続する、分解を継続するステップ(S5)と、
前記有機物の分解反応がすでに完了したこと、或いは所定の分解程度に達したことを判定するまで前記収容空間(S)の状況を観察する、分解完了ステップ(S6)と、
を順に含むことを特徴とする、
有機物分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分解装置及び分解方法に関し、更に詳しくは、有機物分解装置及び有機物分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の分解装置は、従来の特許文献では、例えば、下記特許文献1の「減容装置(Volume Reduction apparatus)」という記載がある。前記装置は主に反応チャンバー内に有機物を積み重ね、有機物に対し乾燥、炭化、及び灰化等のステップをゆっくりと同時に行う。反応チャンバーは大気に向けて排気ガスを排出するための煙突を有しないため、有機物に対する乾燥、炭化、及び灰化を実現するためには、反応チャンバーの上部空間から排気ガスを取り出すための排気管を設け、排気ガスの後続の処理を行っている。有機物の下端部に対し乾燥、炭化、及び灰化等のステップを長期間継続して行うため、低酸素ガス供給法を採用している。また、ガス供給方式は、反応チャンバー内に向けてガスを供給するガス供給機構(例えば、特許文献2参照)を具備している。ガス供給機構は主管に向けて送風する送風機構及び主管から長さ方向に1回分岐し、反応チャンバー内に空気を吹き入れる複数の分岐管を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
有機物の下端部の乾燥、炭化、及び灰化は、例えば、下記特許文献3の「反応チャンバーの底板上方に粉末状セラミック層、炭火層、鋸屑層、及び有機廃棄物層を順に敷設し、粉末状セラミック層に蓄熱すると共に熱放射作用を達成する」という記載がある。しかしながら、セラミック層は蓄熱しかできず、蓄熱後に熱放射作用を発生する。また、前記特許によると、残留物を排出する際には粉末状セラミック層を削り出さねばならず、残留する粉末状セラミック層の厚さを制御する必要もある。換言すれば、反応チャンバーを次回使用する際に、前回残留した粉末状セラミック層の厚さを考慮し、粉末状セラミック層を再度敷設する必要がある。明らかに操作が困難で不便であり、例えば、毎回時間と労力をかけて異なる位置の粉末状セラミック層の厚さを物差しで測定した後、粉末状セラミック層をスクレーパーで何度も削り落とし、次いで添加する粉末状セラミックの量を計算し、添加後に再度スクレーパーで何度も削り落とし、熱放射が有機廃棄物層に対して均等に熱効果を与えるようにしなければいけなかった。
【0004】
特許文献3には「熱源は反応チャンバーの底部の粉末状セラミック層及び炭火層からのみ得られる」と記載されているが、実際の動作時の有機廃棄物層の厚さはセラミック層及び炭火層の厚さよりもずっと厚く、有機廃棄物を分解する熱エネルギーが反応チャンバーの底部の粉末状セラミック層及び炭火層からのみ得られ、上層の有機廃棄物層に向けて徐々に伝達される。通常知識を有する者ならば、有機廃棄物の熱伝導効果が非常に悪いことを知っており、特許文献3の技術が有機廃棄物層全体の反応を炭化層に変換する時間が非常に長くかかることが分かる。また、この過程では、粉末状セラミック層及び炭火層から上層に向けて伝達する熱エネルギーが反応チャンバーの壁面から反応チャンバーの外に散逸し、粉末状セラミック層及び炭火層が発生させた熱エネルギーを効果的に運用できずに浪費してしまった。
【0005】
そこで、本発明者は上記の欠点が改善可能と考え、鋭意検討を重ねた結果、合理的設計で上記の課題を効果的に改善する本発明の提案に至った。
【0006】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものである。上記課題解決のため、本発明は、有機物分解装置及び有機物分解方法を提供することを主目的とする。すなわち、前記有機物分解装置及び有機物分解方法は能動的に熱を放射する均等な熱効果、エネルギー消費の少なさ、及び分解時間が早いという主な利点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、反応チャンバーを少なくとも備え、前記反応チャンバーは、炉床と、側壁と、トップカバーと、を含む。前記側壁の両端は前記炉床及び前記トップカバーにそれぞれ連接し、前記炉床、前記側壁、及び前記トップカバーが共同で収容空間を形成する。前記側壁は赤外線材料で構成されるエネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニットを少なくとも備えていることを特徴とする有機物分解装置である。
【0008】
また、本発明に係る有機物分解装置において、前記赤外線材料は遠赤外線材料である。
【0009】
また、本発明に係る有機物分解装置において、前記遠赤外線材料は遠赤外線反射材料及び遠赤外線放射材料を含む。
【0010】
また、本発明に係る有機物分解装置において、前記側壁の内層は前記エネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニットで構成される。
【0011】
また、本発明に係る有機物分解装置において、前記エネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニットには前記遠赤外線放射材料で構成される遠赤外線放射層及び前記遠赤外線反射材料で構成される遠赤外線反射層を内から外に向かって重置する。
【0012】
また、本発明に係る有機物分解装置において、前記遠赤外線材料は断熱材料を更に含む。前記エネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニットには前記遠赤外線放射層、前記遠赤外線反射層、及び前記断熱材料で構成される断熱層を内から外に向かって重置する。
【0013】
また、本発明に係る有機物分解装置において、前記遠赤外線反射材料及び/または前記遠赤外線放射材料は非金属材料である。
【0014】
また、本発明に係る有機物分解装置において、前記遠赤外線反射材料はZrC(炭化ジルコニウム)、TiC(炭化チタン)、TaC(炭化タンタル)、MoC(炭化モリブデン)、WC(炭化タングステン)、B4C(炭化ホウ素)、SiC(炭化ケイ素)、TiSi2(ケイ化チタン)、WSi2(ケイ化タングステン)、MoSi2(二ケイ化チタン)、ZrB2(二ホウ化ジルコニウム)、TiB2(二ホウ化チタン)、CrB2(ホウ化クロム)、ZrN(窒化ジルコニウム)、TiN(窒化チタン)、AlN(窒化アルミニウム)、及びSi3N4(窒化ケイ素)で構成されるグループのうちから少なくとも1つを選択する。
【0015】
また、本発明に係る有機物分解装置において、前記遠赤外線放射材料はMgO(酸化マグネシウム)、CaO(酸化カルシウム)、BaO(酸化バリウム)、ZrO2(二酸化ジルコニウム)、TiO2(二酸化チタン)、Cr2O3(三酸化二クロム)、MnO2(二酸化マンガン)、Fe2O3(酸化鉄)、Al2O3(酸化アルミニウム)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Pt(プラチナ)、Cu(銅)、及びAu(金)で構成されるグループのうちから少なくとも1つを選択する。
【0016】
また、本発明に係る有機物分解装置において、前記遠赤外線反射材料は炭化ケイ素であり、前記遠赤外線放射材料は酸化マグネシウムである。
【0017】
また、本発明に係る有機物分解装置において、前記遠赤外線材料は断熱材料を更に含み、前記断熱材料は軽質多孔性無機質材料である。
【0018】
また、本発明に係る有機物分解装置において、前記遠赤外線放射材料の粒径は14μm以下であり、好ましくは、粒径は0.4~14μm(ナノメートル)の間の範囲に分布し、平均粒径は3.83μmであり、且つ99%の粉末の粒径は11.85μm未満であり、平均遠赤外線放射係数は0.98以上である。
【0019】
上記目的を達成するため、本発明の別の態様は、有機物分解方法である。この有機物分解方法は、下記ステップを順に含む。
上述の有機物分解装置及び初期加熱装置を提供し、前記初期加熱装置は前記側壁または前記炉床に設置する有機物分解装置を提供するステップ。
有機物を前記収容空間に積み重ねる有機物を積み重ねるステップ。
前記初期加熱装置をオンにして所定の時間継続する熱源を提供するステップ。
前記初期加熱装置をオンにしてから前記所定の時間経過した後に前記初期加熱装置をオフにする熱源をオフにするステップ。
前記初期加熱装置をオフにした後、前記側壁的エネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニットの前記遠赤外線反射材料が、前記収容空間からの前記有機物の分解反応により発生した熱エネルギーを前記収容空間に反射して戻し、前記有機物の分解反応を行うのに必要な熱エネルギーを再度提供し、前記収容空間に反射して戻された熱エネルギー及び/前記遠赤外線放射材料が放射した遠赤外線熱エネルギーが共に前記収容空間の前記有機物に熱エネルギーを提供して分解反応を継続する分解を継続するステップ。
前記有機物の分解反応がすでに完了したこと、または所定の分解程度に達したことを判定するまで前記収容空間の状況を観察する分解完了ステップ。
【0020】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る有機物分解装置を例示する全体斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る有機物分解装置の反応チャンバーを模式的に示した断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る有機物分解装置の側壁構成を示した概略図(一)。
【
図4】本発明の一実施形態に係る有機物分解装置の側壁構成を示した概略図(二)。
【
図5】本発明の一実施形態に係る有機物分解装置の側壁構成を示した概略図(三)。
【
図6】本発明の一実施形態に係る有機物分解方法を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の有機物分解装置が空気供給ユニットとマイナスイオン発生ユニットを有する全体傾斜概略図である。
【
図8】本発明の有機物分解装置がマイナスイオン発生ユニットを設置する全体傾斜概略図である。
【
図9】本発明の有機物分解装置のマイナスイオン発生ユニットがコイルモジュールを有する構成を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【0023】
まず、
図1と
図2に示されるように、本発明の有機物分解装置(1)は反応チャンバー(10)及び初期加熱装置(40)を少なくとも備えている。前記反応チャンバー(10)は炉床(11)と、側壁(12)と、トップカバー(13)と、を含み、前記側壁(12)の両端は前記炉床(11)及び/前記トップカバー(13)にそれぞれ連接し、前記炉床(11)、前記側壁(12)、及び前記トップカバー(13)が共同で収容空間(S)を形成し、有機物(図示せず)は前記収容空間(S)に積み重ねる。前記側壁(12)は空洞の柱体(または中空柱体と呼ぶ)であり、例えば中空の円柱体、中空の楕円柱体、中空の直方体、中空の正六面体、またはあらゆる断面形状の中空の環状柱体でもよい。当然ながら、前記側壁(12)には観測窓(121)を設け、外界の空気が前記観測窓(121)から前記収容空間(S)に進入して有機物の分解反応を行うための反応環境を破壊しないようにするために、前記観測窓(121)は透明材質(例えば、ガラスや石英)で密封する。作業者は前記観測窓(121)から前記収容空間(S)の状況を観察可能である。前記トップカバー(13)には投入口(131)を設け、前記投入口(131)は前記収容空間(S)と外界とを連通する。操作時には、まず前記投入口(131)の門を開け、有機物を前記投入口(131)の上方から前記投入口(131)を経由して前記収容空間(S)に投入する。次に、前記投入口(131)の門を閉めて外界の空気が前記投入口(131)から前記収容空間(S)に進入して反応環境を破壊しないようにする。前記有機物分解装置(1)は、前記収容空間(S)と外界または排気ガス処理装置(図示せず)を連通するための排出口(14)を更に備えている。前記排出口(14)は前記側壁(12)または前記トップカバー(13)に設け、操作時には、前記反応チャンバー(10)で発生した排気ガスを前記排出口(14)から外界や前記排気ガス処理装置に排出する。
【0024】
図3と
図4を同時に参照すれば、前記側壁(12)はエネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニット(122)を少なくとも備え、前記側壁(12)全体は前記エネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニット(122)で構成される(
図3参照)。または、前記側壁(12)は支持層(123)及び前記支持層(123)に貼着する前記側壁(12)の内層で構成し、前記側壁(12)の内層は前記エネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニット(122)で構成される(
図4参照)。例えば、前記エネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニット(122)は赤外線材料で構成し、前記赤外線材料は0.78nm乃至1000nmの間の範囲の波長の赤外線を放射する。前記側壁(12)は前記赤外線材料で構成し、或いは前記側壁(12)の内層は前記赤外線材料で構成される。前記側壁(12)の内層とは、前記側壁(12)が前記収容空間(S)を構成される表面層を指し、換言すれば、前記側壁(12)の内層は分解反応過程で有機物と接触する。好ましくは、前記赤外線材料は遠赤外線材料であり、前記遠赤外線材料は8nm乃至12nmの間の範囲の波長の遠赤外線を放射する。前記遠赤外線材料は遠赤外線反射材料と、遠赤外線放射材料と、断熱材料と、を含む。前記遠赤外線反射材料は無機非酸化物材料であり、前記遠赤外線反射材料はZrC(炭化ジルコニウム)、TiC(炭化チタン)、TaC(炭化タンタル)、MoC(炭化モリブデン)、WC(炭化タングステン)、B4C(炭化ホウ素)、SiC(炭化ケイ素)、TiSi
2(ケイ化チタン)、WSi
2(ケイ化タングステン)、MoSi
2(二ケイ化チタン)、ZrB
2(二ホウ化ジルコニウム)、TiB
2(二ホウ化チタン)、CrB
2(ホウ化クロム)、ZrN(窒化ジルコニウム)、TiN(窒化チタン)、AlN(窒化アルミニウム)、及びSi
3N
4(窒化ケイ素)で構成されるグループのうちから少なくとも1つを選択する。前記遠赤外線放射材料は金属酸化物である、前記遠赤外線放射材料はMgO(酸化マグネシウム)、CaO(酸化カルシウム)、BaO(酸化バリウム)、ZrO
2(二酸化ジルコニウム)、TiO
2(二酸化チタン)、Cr
2O
3(三酸化二クロム)、MnO
2(二酸化マンガン)、Fe
2O
3(酸化鉄)、及びAl
2O
3(酸化アルミニウム)で構成されるグループのうちのからなくとも1つを選択する。または、前記遠赤外線放射材料は金属材料であり、前記遠赤外線放射材料はTa(タンタル)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Pt(プラチナ)、Cu(銅)、及びAu(金)で構成されるグループのうちから少なくとも1つを選択し、前記遠赤外線放射材料は8nm乃至12nmの間の範囲の波長の遠赤外線を放射する。前記断熱材料は沸石のような軽質多孔性無機質材料でもよい。好ましくは、前記遠赤外線反射材料はSiCであり、前記遠赤外線放射材料はMgOであり、前記断熱材料は沸石である。前記遠赤外線反射材料は前記収容空間(S)から有機物分解反応により発生した熱エネルギーを前記収容空間(S)に反射して戻し、有機物の分解反応に必要な熱エネルギーを再度供給する。前記収容空間(S)に反射して戻した熱エネルギー及び前記遠赤外線放射材料が放射した遠赤外線熱エネルギーは、前記収容空間(S)の有機物に共同で熱エネルギーを供給し、分解反応を継続させ、前述の所謂「エネルギー共鳴」を形成し、均等な熱効果及び分解時間を早める効果を達成する。前記断熱材料は熱エネルギーが前記収容空間(S)から外界環境に散逸するのを防ぎ、有機物分解装置(1)全体が前述の所謂「エネルギー共鳴」及び前記断熱材料の断熱効果により、有機物分解反応過程で前記初期加熱装置(40)をオフにし、エネルギー消費を少なくする効果を達成する。
【0025】
前記遠赤外線放射材料の粒径は14μm以下であり、好ましくは、粒径は0.4~14μmの間の範囲に分布し、その平均粒径は3.83μmであり、且つ99%の粉末の粒径は11.85μm未満であり、平均遠赤外線放射係数は0.98以上である。前記エネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニット(122)の製作では、前記遠赤外線反射材料、前記遠赤外線放射材料、及び前記断熱材料に粘着剤(例えば、無機粘着剤、無機セラミック粉末)を選択的に混合し、その後に焼結を行って形成する。または、
図5に示されるように、前記エネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニット(122)には前記遠赤外線放射材料で構成される遠赤外線放射層(1221)、前記遠赤外線反射材料で構成される遠赤外線反射層(1222)、及び前記断熱材料で構成される断熱層(1223)を内から外に向かって重置し、前記断熱層(1223)は前記支持層(123)の内側に重置する。
【0026】
図2に戻って、前記初期加熱装置(40)は前記側壁(12)または前記炉床(11)に設置し、好ましくは、前記初期加熱装置(40)は前記側壁(12)に設置する。前記初期加熱装置(40)は電熱器、熱風供給機、炭火、或いは他の熱源でもよく、有機物分解反応の初期段階に必要な熱エネルギーを供給する。
【0027】
図6を参照すると、前記有機物分解装置(1)は有機物分解方法により有機物の分解を行う。前記有機物分解方法は下記ステップを順に含む。
前述の前記有機物分解装置(1)を提供する、有機物分解装置を提供するステップ(S1)。
有機物を前記投入口(131)の上方から前記投入口(131)を経由して前記収容空間(S)に投入する等して有機物を前記収容空間(S)に積み重ね、次いで前記投入口(131)の門を閉じて外界の空気が前記投入口(131)から前記収容空間(S)に進入して反応環境を破壊しないようにする、有機物を積み重ねるステップ(S2)。
前記初期加熱装置(40)をオンにし、例えば、前記初期加熱装置(40)として電熱器を採用し、前記初期加熱装置(40)が初期分解熱エネルギーを提供し、例えば、前記初期分解熱エネルギーが有機物の炭素-水素結合(結合エネルギーは約100Kcal/mol)を断裂するための活性化エネルギーを提供し、また、前記初期分解熱エネルギーは無炎燃焼(燻焼或いは低酸素燃焼とも呼ぶ)反応のための活性化エネルギーも提供する、熱源を提供するステップ(S3)。燻焼は放熱反応であるため、放熱反応により放出されたエネルギー(熱エネルギー)の多くは燻焼反応のための活性化エネルギーである前記初期分解熱エネルギーとして供給し、これにより余った熱エネルギーが例えば
図5に示される前記側壁(12)の前記エネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニット(122)に向けて伝達される。前記初期加熱装置(40)をオンにしてこれを所定の時間継続する。
前記初期加熱装置(40)をオンにしてから前記所定の時間経過した後に前記初期加熱装置(40)をオフにする、熱源をオフにするステップ(S4)。
前述の余剰の熱エネルギーを例えば
図5に示される前記側壁(12)の前記エネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニット(122)に向けて伝達し、余剰の熱エネルギーを前記遠赤外線反射層(1222)により反射した後、前記遠赤外線放射層(1221)が放出した熱エネルギーと結合し、前記収容空間(S)中の未分解の有機物に向けて再度伝達することで、有機物の分解反応を再度継続する、分解を継続するステップ(S5)。これにより、毎回分解反応により生じる余剰の熱エネルギーを前記遠赤外線反射層(1222)により反射し、前記遠赤外線放射層(1221)が放出した熱エネルギーと結合することで、前記収容空間(S)中の未分解の有機物に向けて再度伝達し、有機物の分解反応を再度継続する。前記断熱層(1223)は熱エネルギーが前記収容空間(S)から外界に散逸するのを減少または防止する。また、前記遠赤外線反射層(1222)を前記遠赤外線放射層(1221)の外側に設置することで、前記遠赤外線放射層(1221)が放出した熱エネルギーを前記遠赤外線反射層(1222)により更に確実に反射するようにし、内側に向けて前記収容空間(S)中の未分解の有機物に向けて再度伝達する。複数回行った後に蓄積した熱エネルギーが継続的な分解反応を達成させ、即ち連鎖反応を達成させ、前記初期加熱装置(40)から後続の熱エネルギーを供給し続ける必要がなくなる。換言すれば、前述のように、前記初期加熱装置(40)をオフにした後、前記側壁(12)のエネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニット(122)を利用し、前記遠赤外線反射材料が前記収容空間(S)から有機物の分解反応により発生した熱エネルギーを前記収容空間(S)に反射して戻し、有機物の分解反応に必要な熱エネルギーを再度供給する。前記収容空間(S)に反射して戻した熱エネルギー及び前記遠赤外線放射材料が放射した遠赤外線熱エネルギーが共同で前記収容空間(S)の有機物に熱エネルギーを供給し、分解反応を継続して前述の所謂「エネルギー共鳴」を形成し、均等な熱効果及び分解時間を早める効果を達成する。前記断熱材料は熱エネルギーが前記収容空間(S)から外界環境に散逸するのを防止し、前記有機物分解装置(1)全体が前述の所謂「エネルギー共鳴」及び前記断熱材料の断熱効果により、有機物分解反応過程で前記初期加熱装置(40)をオフにして、エネルギー消費を少なくする効果を達成する。
有機物分解反応すでに完了したこと、或いは所定の分解程度に達したことを判定するまで前記観測窓(121)から前記収容空間(S)の状況を観察する、分解完了ステップ(S6)。
【0028】
また、
図7、
図8と
図9に示されるように、前記有機物分解装置(1)は空気供給ユニット(20)及びマイナスイオン発生ユニット(30)を更に備え、前記空気供給ユニット(20)はベローズ(21)、複数の通気管(22)、及び複数の分岐管(23)で構成される。前記ベローズ(21)は前記反応チャンバー(10)の外部に設置し、且つほぼ円柱体の態様を呈する。前記ベローズ(21)は前記反応チャンバー(10)の高さ方向に沿って軸方向に設置し、前記ベローズ(21)はファン(図示せず)を利用して前記通気管(22)及び前記分岐管(23)に向けてガスを供給する。また、前記空気供給ユニット(20)は前記反応チャンバー(10)を巻回すると共に上から下に向かって平行に設置する複数の通気管(22)を含み、前記通気管(22)は前記ベローズ(21)にそれぞれ連接し、前記ベローズ(21)からのガスを受け取る。また、前記通気管(22)は12本の前記分岐管(23)により前記反応チャンバー(10)に連結し、即ち、前記分岐管(23)の両端部は前記通気管(22)及び前記反応チャンバー(10)の前記収容空間(S)にそれぞれ連結し、前記ベローズ(21)からのガスを受け取って前記通気管(22)及び前記分岐管(23)を経由させた後に前記収容空間(S)に進入させている。前記分岐管(23)は鉛直に設置する第一サブパイプ(231)及び水平に設置する第二サブパイプ(232)で構成し、換言すれば、前記第一サブパイプ(231)及び前記第二サブパイプ(232)が互いに直交するように設置する。前記第一サブパイプ(231)の両端部は前記通気管(22)及び前記第二サブパイプ(232)にそれぞれ連結し、前記第二サブパイプ(232)の両端部は前記第一サブパイプ(231)及び前記反応チャンバー(10)の前記収容空間(S)にそれぞれ連結し、且つ前記第二サブパイプ(232)が前記反応チャンバー(10)の前記収容空間(S)に連接する排気口(2321)は斜め開口の態様を呈する。前記マイナスイオン発生ユニット(30)は前記分岐管(23)の端部に設置し、例えば、前記マイナスイオン発生ユニット(30)は鉛直に設置する前記第一サブパイプ(231)に設置し、或いは水平に設置する前記第二サブパイプ(232)に設置する。好ましくは、前記マイナスイオン発生ユニット(30)は水平に設置する前記第二サブパイプ(232)に設置し、マイナスイオンを前記反応チャンバー(10)に直接進入させ、前記マイナスイオン発生ユニット(30)が発生させるマイナスイオンが抵抗を受けないようにする。前記マイナスイオン発生ユニット(30)は回路モジュール(31)及び前記回路モジュール(31)に接続する導線モジュール(32)を備え、回路基板(図示せず)、トリガー回路(図示せず)、変圧器(図示せず)、及び整流回路(図示せず)で複数の電子回路モジュール(31)を形成する。前記トリガー回路、前記変圧器、及び前記整流回路は前記回路基板にそれぞれ設置し、且つ前記回路基板に電気的に接続する。前記回路基板は電源(図示せず)に電気的に接続し、前記トリガー回路、前記変圧器、及び前記整流回路の作動に必要な電気エネルギーを供給する前記電源からの電力を受電する。前記導線モジュール(32)は前記回路モジュール(31)から離間する端部が前記分岐管(23)の前記第二サブパイプ(232)内に延伸すると共に尖端から放電する形式によりマイナスイオンを発生させる。前記マイナスイオン発生ユニット(30)は前記導線モジュール(32)の外部を巻回するコイルモジュール(33)を含み、前記コイルモジュール(33)の一部分にはループ部(331)を形成すると共に前記導線モジュール(32)の外部を巻回し、例えば、ループ部(331)が前記導線モジュール(32)の前段を巻回し、且つ前記コイルモジュール(33)が前記回路モジュール(31)または前記電源に電気的に接続する。
【0029】
上述の実施方式の説明から分かるように、本発明の有機物分解装置及び有機物分解方法と従来の技術とを比較すると、本発明は下記利点を有する。
遠赤外線反射材料が前記収容空間から有機物分解反応により発生した熱エネルギーを前記収容空間に反射して戻し、有機物の分解反応に必要な熱エネルギーを再度供給する。前記収容空間に反射して戻した熱エネルギー及び前記遠赤外線放射材料が放射した遠赤外線熱エネルギーは共同で前記収容空間の有機物に熱エネルギーを供給し、分解反応を継続して「エネルギー共鳴」を形成し、均等な熱効果及び分解時間を早める効果を達成する。前記断熱材料は熱エネルギーが前記収容空間から外界環境に散逸するのを防ぎ、有機物分解装置全体が前述の所謂「エネルギー共鳴」及び前記断熱材料の断熱効果により、有機物分解反応過程で前記初期加熱装置をオフにしてエネルギー消費を少なくする効果を達成する。
【0030】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
1 有機物分解装置
10 反応チャンバー
11 炉床
12 側壁
121 観測窓
122 エネルギー共鳴/反射/エネルギー貯蔵ユニット
1221 遠赤外線放射層
1222 遠赤外線反射層
1223 断熱層
123 支持層
13 トップカバー
131 投入口
14 排出口
20 空気供給ユニット
21 ベローズ
22 通気管
23 支管
231 第一サブパイプ
232 第二サブパイプ
2321 排気口
30 マイナスイオン発生ユニット
31 回路モジュール
32 導線モジュール
33 コイルモジュール
331 ループ部
40 初期加熱装置
S 収容空間
S1 有機物分解装置を提供するステップ
S2 有機物を積み重ねるステップ
S3 熱源を提供するステップ
S4 熱源をオフにするステップ
S5 分解を継続するステップ
S6 分解完了ステップ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】台湾特許出願公開第TWI698292号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第CN104456574B号明細書
【特許文献3】台湾特許出願公開第TW200602134号明細書