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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039877
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】薬袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/18 20060101AFI20220303BHJP
   A61J 7/00 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
B65D33/18
A61J7/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020167110
(22)【出願日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】P 2020144738
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】516222060
【氏名又は名称】株式会社メディングCP
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】特許業務法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉村 敏明
【テーマコード(参考)】
3E064
4C047
【Fターム(参考)】
3E064AA01
3E064BA01
3E064EA30
3E064FA01
3E064HA06
3E064HB02
3E064HB03
3E064HM01
3E064HN02
4C047NN05
(57)【要約】
【課題】薬袋の開口端を閉塞可能としつつ、開け易さも両立させた薬袋を提供する。
【解決手段】開口端5の少なくとも中間において、第一シート1の一部が第二シート2から表出されており、開口端5から一定の距離だけ離れた位置に、第一シート1と第二シート2を重ねた状態で折曲するための折り曲げ線3を設けており、第二シート2同士を接触させる方向に折曲することで、折り曲げ線3から開口端5まで折曲片4が形成されて、開口端5を閉塞するよう構成されており、第二シート2から表出された第一シート1の一部は、第一付着層11を備えており、第二シート2は、折曲片4を折り曲げ線3で折曲した状態で、第一付着層11と対応する部位に、第一付着層11と再剥離可能な第二付着層12を備えており、折曲片4を折り曲げ線3で折曲し、第一付着層11と第二付着層12とを付着させた閉塞位置において、折曲片4の隅部が、第二シート2から離間されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視において矩形状とした第一シートと、
前記第一シートと、開口端を除く周囲を連結された、外形を矩形状とする第二シートと、
を備え、
長手方向の一方の端部を開口端とした袋状の薬袋であって、
平面視において前記開口端の少なくとも中間において、前記第一シートの少なくとも一部が、前記第二シートから表出されており、
前記開口端から一定の距離だけ離れた位置に、前記第一シートと第二シートを重ねた状態で折曲するための折り曲げ線を設けており、
前記折り曲げ線でもって、前記第二シート同士を接触させる方向に折曲することで、前記折り曲げ線から前記開口端まで折曲片が形成されて、前記開口端を閉塞するよう構成されており、
前記第二シートから表出された第一シートの一部は、第一付着層を備えており、
前記第二シートは、前記折曲片を前記折り曲げ線で折曲した状態で、前記第一付着層と対応する部位に、前記第一付着層と再剥離可能な第二付着層を備えており、
前記折曲片を前記折り曲げ線で折曲し、前記第一付着層と第二付着層とを付着させた閉塞位置において、前記折曲片の隅部が、前記第二シートから離間されてなる薬袋。
【請求項2】
請求項1に記載の薬袋であって、
前記第二シートは、平面視において前記第一シートの一部を表出させる切り欠きを、開口端縁から形成しており、
前記第一シートは、前記切り欠きから表出された表出領域に、前記第一付着層を設けてなる薬袋。
【請求項3】
請求項2に記載の薬袋であって、
前記切り欠きを、半円状又は矩形状に形成してなる薬袋。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の薬袋であって、
前記切り欠きを、複数、互いに離間させて形成してなる薬袋。
【請求項5】
請求項1に記載の薬袋であって、
前記第一シートは、その開口部における端縁を前記第二シートの開口端縁よりも突出させることで前記第二シートから表出するよう形成されており、
前記突出された第一シートの突出片の一部に、前記第一付着層を設けてなる薬袋。
【請求項6】
請求項5に記載の薬袋であって、
前記突出片の両端を、前記第一付着層を設けない領域としてなる薬袋。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の薬袋であって、
前記第一付着層が、前記第二シートと離間されて、前記第一シートの少なくとも一部に設けられてなる薬袋。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の薬袋であって、
前記第二シートは、該第二シートから前記第一シートが表出される領域に近接して、第三付着層を形成してなる薬袋。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の薬袋であって、
前記第一付着層は、前記第二付着層との間で付着力を発揮させ、前記第二シートの第二付着層を設けていない領域に付着力を発揮させないよう構成してなる薬袋。
【請求項10】
請求項9に記載の薬袋であって、
前記第一付着層及び第二付着層が、アドヘア糊で構成されてなる薬袋。
【請求項11】
請求項9に記載の薬袋であって、
前記第一付着層及び第二付着層が、磁力により付着力を発揮させてなる薬袋。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の薬袋であって、
前記第一シート及び第二シートが、形状記憶素材で構成されてなる薬袋。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の薬袋であって、さらに、
前記第一付着層と第二付着層とを覆う剥離紙を備えてなる薬袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬袋に関し、特に再剥離可能な開口端を有する薬袋に関する。
【背景技術】
【0002】
紙製の薬袋が広く用いられている。処方された薬剤は、通常、食前または食後など1日3回程度、3~14日や30日、90日など一定の期間にわたり複数回に分けて服用される。服用が終わるまでの間は、同じ薬袋が使用され、開口端は何度も開封、封止が繰り返される。
【0003】
しかしながら、薬袋の複数回の使用により、薬袋がへたり、薬袋に入れた薬剤が開口端から意図せず抜け落ちることがあった。これを防止するため、薬袋の開口端を折り曲げることなどが行われているが、折り曲げた状態でも紙の復元力で元に戻ろうとするため、十分な封止とならないことがある。また幾度も折り曲げていると、折り曲げ線がしわになって、薬袋の見栄えも悪くなる。
【0004】
これを防止するため、本願出願人は開口端に接着層を設けた薬袋を開発した(特許文献1)。この薬袋は、表シートが裏シートよりも突出する舌片を有しており、表シートの舌片を裏シートの外表面側に折り返して封止する。この裏シートの外表面に接着層を設けることで、舌片を接着層に粘着させて封止状態を維持する構成としていた。この構成では、接着層が薬袋の表面に表出しているため、ゴミ等の異物が付着し易くなり、粘着力が低下しやすいという問題があった。特に薬袋の開封時には、接着層が薬袋の表面に完全に晒された状態となって、埃やゴミ等を粘着し易くなってしまう。
【0005】
粘着力が低下すると、接着層で舌片を粘着させる力が弱くなり、薬袋を封止状態に維持できなくなる。これを防ぐためには、接着層に粘着力の強いものを使用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭60-27037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、粘着層を強くし過ぎると、今度は薬袋の開口端を開封しにくくなるという問題があった。特に薬袋は一日に何度も開閉する機会があるため、開け難くなると使い勝手が悪化する。このように、薬袋の開口端を閉塞した状態を維持することと、開け易くすることは相反する特性であり、両立させることは困難であった。
【0008】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、その目的の一は、薬袋の開口端を閉塞可能としつつ、開け易さも両立させた薬袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
本発明の第1の側面に係る薬袋によれば、平面視において矩形状とした第一シートと、前記第一シートと、開口端を除く周囲を連結された、外形を矩形状とする第二シートと、を備え、長手方向の一方の端部を開口端とした袋状の薬袋であって、平面視において前記開口端の少なくとも中間において、前記第一シートの少なくとも一部が、前記第二シートから表出されており、前記開口端から一定の距離だけ離れた位置に、前記第一シートと第二シートを重ねた状態で折曲するための折り曲げ線を設けており、前記折り曲げ線でもって、前記第二シート同士を接触させる方向に折曲することで、前記折り曲げ線から前記開口端まで折曲片が形成されて、前記開口端を閉塞するよう構成されており、前記第二シートから表出された第一シートの一部は、第一付着層を備えており、前記第二シートは、前記折曲片を前記折り曲げ線で折曲した状態で、前記第一付着層と対応する部位に、前記第一付着層と再剥離可能な第二付着層を備えており、前記折曲片を前記折り曲げ線で折曲し、前記第一付着層と第二付着層とを付着させた閉塞位置において、前記折曲片の隅部が、前記第二シートから離間されている。上記構成により、薬袋の開口端を、第一シートと第二シートを共に折曲させた状態で第一付着層と第二付着層とを付着させることで確実に閉塞できる。一方で、折曲片を折曲して閉塞位置としたとき、折曲片の隅部を第二シートから離間させることで、利用者は折曲片の隅部の第二シートから浮き上がった部分を指で摘まみやすくなり、容易に折曲片を摘まんで開口端を開放させることができる。
【0010】
また、本発明の第2の側面に係る薬袋によれば、上記構成に加えて、前記第二シートは、平面視において前記第一シートの一部を表出させる切り欠きを、開口端縁から形成しており、前記第一シートは、前記切り欠きから表出された表出領域に、前記第一付着層を設けることができる。上記構成により、第二シートから第一シートを表出させる切り欠きに、使用者が指を掛けることで開口端を開け易くできると共に、この指掛けのための切り欠きに第一付着層を設けることで、開口端の閉塞と、折曲片の隅部の浮き上がりを容易に実現できる。
【0011】
さらに、本発明の第3の側面に係る薬袋によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記切り欠きを、半円状又は矩形状に形成することができる。
【0012】
さらにまた、本発明の第4の側面に係る薬袋によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記切り欠きを、複数、互いに離間させて形成することができる。
【0013】
さらにまた、本発明の第5の側面に係る薬袋によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記第一シートは、その開口部における端縁を前記第二シートの開口端縁よりも突出せることで前記第二シートから表出するよう形成されており、前記突出された第一シートの突出片の一部に、前記第一付着層を設けることができる。上記構成により、第一シートを第二シートよりも突出させた突出片でもって、使用者が開口端を開ける際に指を掛け易くできると共に、この突出片に第一付着層を設けることで、開口端の閉塞と、折曲片の浮き上がりを容易に実現できる。
【0014】
さらにまた、本発明の第6の側面に係る薬袋によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記突出片の両端を、前記第一付着層を設けない領域とすることができる。上記構成により、折曲片の隅部の浮き上がりを容易に実現できる。
【0015】
さらにまた、本発明の第7の側面に係る薬袋によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記第一付着層を、前記第二シートと離間させ、前記第一シートの少なくとも一部に設けることができる。
【0016】
さらにまた、本発明の第8の側面に係る薬袋によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記第二シートは、該第二シートから前記第一シートが表出される領域に近接して、第三付着層を形成することができる。
【0017】
さらにまた、本発明の第9の側面に係る薬袋によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記第一付着層は、前記第二付着層との間で付着力を発揮させ、前記第二シートの第二付着層を設けていない領域に付着力を発揮させないよう構成することができる。上記構成により、開口端の閉塞に必要な部位にのみ付着力を発揮させることが可能となり、開口端を開けにくくすることを回避して、高齢者等でも使い易い薬袋を実現できる。
【0018】
さらにまた、本発明の第10の側面に係る薬袋によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記第一付着層及び第二付着層を、アドヘア糊で構成することができる。上記構成により、アドヘア糊同士の粘着力により付着力を発揮させ、アドヘア糊を設けていない部位とは接着しない。
【0019】
さらにまた、本発明の第11の側面に係る薬袋によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記第一付着層及び第二付着層が、磁力により付着力を発揮させることができる。
【0020】
さらにまた、本発明の第12の側面に係る薬袋によれば、上記いずれかの構成に加えて、前記第一シート及び第二シートを、形状記憶素材で構成することができる。
【0021】
さらにまた、本発明の第13の側面に係る薬袋によれば、上記いずれかの構成に加えて、さらに、前記第一付着層と第二付着層とを覆う剥離紙を備えることができる。上記構成により、使用前に第一付着層と第二付着層が表出して埃やゴミ等の異物が付着し、粘着力が低下する事態を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態1に係る薬袋を示す平面図である。
図2図1の薬袋を示す底面図である。
図3図1の薬袋に薬を入れる様子を示す斜視図である。
図4図3の薬袋の折曲片を折曲して開口端を閉塞する様子を示す斜視図である。
図5図4の薬袋の開口端を閉塞した状態を示す斜視図である。
図6図1の薬袋のVI-VI線における垂直横断面図である。
図7図6の薬袋の折曲片を折曲して開口端を閉塞した様子を示す斜視図である。
図8図7の薬袋の斜視図である。
図9】実施形態2に係る薬袋を示す平面図である。
図10】実施形態3に係る薬袋を示す平面図である。
図11】実施形態4に係る薬袋を示す平面図である。
図12】実施形態5に係る薬袋を示す平面図である。
図13】実施形態6に係る薬袋を示す平面図である。
図14】実施形態7に係る薬袋を示す平面図である。
図15】実施形態8に係る薬袋を示す平面図である。
図16】実施形態9に係る薬袋を示す平面図である。
図17】実施形態10に係る薬袋を示す斜視図である。
図18】実施形態11に係る薬袋を示す平面図である。
図19図18の薬袋に剥離紙を付した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態及び実施例を、図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態及び実施例は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに限定されるものでない。また各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略する。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。さらに、本発明に係る実施形態及び実施例を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。さらに、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」および、それらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。なお、本明細書において「備える」とは、別部材として備えるもの、一体の部材として構成するものの何れをも含む意味で使用する。
[実施形態1]
【0024】
図1図8に、本発明の実施形態1に係る薬袋100を示す。これらの図において、図1は実施形態1に係る薬袋100を示す平面図、図2図1の薬袋100を示す底面図、
図3図1の薬袋100に薬を入れる様子を示す斜視図、図4図3の薬袋100の折曲片4を折曲して開口端5を閉塞する様子を示す斜視図、図5図4の薬袋100の開口端5を閉塞した状態を示す斜視図、図6図1の薬袋100のVI-VI線における垂直横断面図、図7図6の薬袋100の折曲片4を折曲して開口端5を閉塞した様子を示す斜視図、図8図7の薬袋100の斜視図を、それぞれ示している。
(薬袋100)
【0025】
これらの図に示す薬袋100は、紙製で外形を一方向に長い矩形状とし、長手方向の一方の端部を開口端5としている。この薬袋100は、印字面PAとする矩形状の第一シート1と、第一シート1とほぼ同型とした第二シート2とで構成される。これら第一シート1と第二シート2の周囲を、開口端5を除いて連結することで、開口端5を形成している。また、第一シート1と第二シート2を膨らませることで、開口端5と連通した収納空間が形成される。
【0026】
また開口端5から一定の距離だけ離れた位置に、第一シート1と第二シート2を重ねた状態で折曲するための折り曲げ線3を設けている。この折り曲げ線3でもって、図1図7に示すように第二シート2同士を接触させる方向に折曲することで、折り曲げ線3から開口端5まで折曲片4が形成されて、開口端5を閉塞するよう構成されている。折り曲げ線は、第一シート1の上端から、2.5cm~5.0cm程度の位置に設けることが好ましい。
【0027】
折り曲げ線3は、予め薬袋100の該当する位置に折り目を付けたり、実線や破線を印刷して付するなどして、使用者に折り曲げる位置であることを目視で判り易く示すことが好ましい。これによって、薬袋100の正しい位置で折曲片4の折曲させて、第一付着層11と第二付着層12を正しく接合させることができる(詳細は後述)。ただ、折り曲げ線を表示させない構成としてもよい。
(第一シート1)
【0028】
第一シート1は、薬袋100の印字面PAを構成する。印字面PAには、患者の氏名や、この薬袋100に収納する薬剤の服用方法、薬剤を処方した病院名等の情報が印刷される。このため第一シート1は、プリンタで印字しやすいよう平滑な紙で構成する。好ましくは、無地の白色紙で構成し、必要に応じてレーザプリンタやインクジェットプリンタで適宜カラー印刷や白黒印刷が行われる。なお本発明は、第二シート2に印字することを妨げるものでない。
(第二シート2)
【0029】
第二シート2は、第一シート1と対応する大きさの矩形状とする。この薬袋100は、平面視において開口端5の少なくとも中間において、第一シート1の少なくとも一部を、第二シート2から表出させている。また第二シート2から表出された第一シート1の一部は、第一付着層11を備えている。一方第二シート2は、折曲片4を折り曲げ線3で折曲した状態で、第一付着層11と対応する部位に、第一付着層11と再剥離可能な第二付着層12を備えている。このように折曲片4を折り曲げ線3で折曲し、第一付着層11と第二付着層12とを付着させた閉塞位置とすることで、開口端5を閉塞し、内容物の意図しない漏れ落ちを防止できる。
【0030】
加えて、この薬袋100は第一付着層11や第二付着層12を、開口端5の中間に設ける一方、隅部には設けない。このようにすることで、図5図8等に示すように、折曲片4を閉塞位置とした状態で、折曲片4の隅部は完全に閉塞されず、第二シート2の表面からわずかに離間されて隙間GPが形成される。このようにすることで、利用者は折曲片4の隅部の第二シート2から浮き上がった部分を指で摘まみやすくなり、容易に折曲片4を摘まんで開口端5を開放させることができる。例えば薬袋を扱うのが高齢者の場合、薬袋から薬剤が落ちないように開口端を閉塞する閉塞機構が求められるところ、シールなどで再剥離可能な薬袋としても、折曲片4が密着した状態では剥離することが困難となる。そこで、意図的に薬袋の折曲片4の隅部を浮かせやすくした構成とすることで、高齢者等でも扱い易い薬袋を実現できる。
【0031】
具体的に実施形態1に係る薬袋100は、図2に示すように、開口端5側において、第一シート1を、開口端5側で第二シート2よりも長く形成している。言い換えると、第二シート2は、第一シート1よりも開口端5側を短く形成している。そして突出された第一シート1の突出片7の一部に、第一付着層11を設けている。一方で突出片7の両端は、第一付着層11を設けない領域としている。このような構成とすることで、第一シート1を第二シート2よりも突出させた突出片7でもって、使用者が開口端5を開ける際に指を掛け易くできると共に、この突出片7に第一付着層11を設けることで、開口端5の閉塞と、折曲片4の浮き上がりを容易に実現できる。
【0032】
突出片7は、第二シート2の上端よりも1mm~10mm程度突出させることが好ましい。また、使用者が折曲片4に指を掛けやすくするために、いいかえると開封時に滑りにくくするために、折曲片の裏面側に突起部を設けてもよい。このような突起部を設けることで、使用者が指で開口端5を開口する際、指先が突起部に引っ掛かり易くなって、ともすれば静電気等で開口端が貼り付いて開口し難くなる事態を回避できる。このような突起部は、例えばエンボス加工、筋入加工、厚盛加工による突起物形成によって設けることができる。また突起部は、折曲片4の隅部、すなわち第一シート1の突出片7の隅部に設けることが好ましい。
【0033】
第一付着層11は、第一シート1において、第二シート2と重ね合わせる界面から離間させて設けることが好ましい。このように端縁にマージンを設けることで、第二シート2の開口端5に第一シート1の第一付着層11が付着して、開口端5を部分的に閉じてしまう事態を回避できる。図2等の例では、第一付着層11を第二シート2の開口端5からマージンとして1mm程度離間させている。なお、第一付着層や第二付着層に、紙シートとは付着しない、あるいは殆ど付着力を発揮させないアドヘア糊を用いる場合は、このようなマージンを設けなくともよい。
(付着層)
【0034】
第一付着層11や第二付着層12等を構成する付着層は、再剥離可能な糊や両面テープ等の粘着材が利用できる。粘着材は好ましくは、付着層同士を接合させることで粘着力を発揮させ、粘着層を設けていない領域に重ね合わせても粘着力を発揮させない材質とする。これにより、開口端5の閉塞に必要な部位にのみ付着力を発揮させることが可能となり、開口端5を開けにくくすることを回避して、高齢者等でも使い易い薬袋100を実現できる。このような粘着材の材質として、アドヘア糊が挙げられる。
【0035】
また粘着材を、磁力により付着力を発揮させるマグネットシートとしてもよい。例えば樹脂中に磁性体を混入させた可撓性のあるシート上の磁石を接着剤やシールなどで貼付して、便利に使用できる。
【0036】
これら第一付着層11や第二付着層12は、予め第一シート1や第二シート2上に、エンボス加工、厚盛加工、筋入れ加工などを施した上に設けることが好ましい。図6図7の断面図に示す例では、予め第一シート1や第二シート2上にエンボス部8を形成し、各エンボス部8の上に第一付着層11、第二付着層12をそれぞれ設けている。付着層にエンボス加工等の突起を設けることで接着面が小さくなり、開口端を開閉し易くできる。
[実施形態2]
【0037】
第一付着層11や第二付着層12は、開口端5の幅方向の中間に設けることが好ましい。これら第一付着層11や第二付着層12の大きさは、薬袋の大きさや求められる開口端5の閉塞の度合い、付着層の材質や付着力などに応じて適宜設計される。例えば図9に示す実施形態2に係る薬袋200のように、横幅を長く設計することもできる。実施形態2に係る薬袋200は、実施形態1の薬袋100よりも第一付着層11、第二付着層12の長さを長くしており、付着層同士の接合する面積を大きくして、より強固に開口端5を閉塞させる能力を発揮させることができる。なおこの場合でも、開口端5の隅部では上述の通り付着層を設けないことで、折曲片4の隅部を閉塞させずに隙間GPを設けて、使用者が開封時に指を掛け易くしている。第一付着層を設けない領域は、薬袋のサイズに応じて設定され、例えば左右の辺から5mm~50mm程度とする。
[実施形態3]
【0038】
また以上の実施形態では、第一付着層11や第二付着層12を一本の細長い形状とした例を説明したが、本発明はこの構成に限らず、第一付着層や第二付着層を複数に分割してもよい。例えば図10に示す実施形態3に示す薬袋300では、第一付着層11と第二付着層12を長手方向に沿って4つに分割している。このようにすることで、付着層に用いる粘着材の使用量を低減できる。また分割した第二付着層12同士の間は、付着層がないことから折曲片4と第二シート2との間に隙間が生じ易くなり、使用者はこの隙間に指を掛けて開封し易くできる利点も得られる。
[実施形態4]
【0039】
さらに以上の実施形態では、第一付着層11と第二付着層12の大きさや長さを、概ね等しくなるように構成した例を説明したが、本発明はこのような構成に限られない。第一付着層11や第二付着層12を、互いに貼り合わせて開口端を閉塞できる十分な粘着力を発揮できれば足りる。すなわち第一付着層11と第二付着層12の形状や長さを完全に一致させる必要は必ずしもなく、第一付着層11と第二付着層12とを接触させる面積を、十分な粘着力を発揮できる程度に確保できれば足りる。いいかえると、折曲片4を折曲させた状態で、第一付着層11と第二付着層12とが接触しない領域が存在しても問題はない。例えば図11に示す実施形態4に係る薬袋400は、第一付着層11を2分割させつつ、第二付着層12は、分割させずに一本としている。このような構成であっても、第一付着層11と第二付着層12とを貼り合わせて十分な閉塞力を発揮できる。また分割した第一付着層11同士の間に接着力を発揮させない場合は、この部分において折曲片4と第二シート2との間に隙間を生じさせて、使用者がこの隙間に指を掛けて開封し易くできる。
[実施形態5]
【0040】
一方、図12に示す実施形態5に係る薬袋500では逆に、第一付着層11を一本としつつ、第二付着層12を二分割している。この構成でも同様に、第一付着層11と第二付着層12とを貼り合わせて十分な閉塞力を発揮できる。なお、第一付着層や第二付着層の分割数はこの構成に限らず、3分割以上としてもよいことはいうまでもない。また以上の例では第一付着層や第二付着層を長手方向に分割した例を説明したが、これに限らず短手方向に分割してもよい。
[実施形態6]
【0041】
以上の各実施形態では、第一シート1の裏面側に第一付着層11を設けて、第二シート2の裏面側に設けた第二付着層12と付着させる構成を説明した。ただ本発明は、付着層を設ける位置をこの構成に限定せず、さらに付着層を設けてもよい。例えば実施形態6として図13に示す薬袋600では、第一付着層11と第二付着層12に加えて、第三付着層13を、第二シート2の開口端5の周辺に形成している。第三付着層13は、第二シート2から第一シート1が表出される領域に近接して設けられる。また第三付着層13は、第一付着層11と隣接して設けられる。さらに第二付着層12は、折曲片4を折曲した際、第一付着層11と第三付着層13とが対向する位置に設けられる。これによって、折曲片4を折曲した際、第一付着層11を設けた大位置シートの端縁のみならず、第二シート2の開口端5の部分も付着させることができ、より強固に開口端5を閉塞できる。
【0042】
図13の例では、第二付着層12の大きさを、折曲片4を折曲した状態で第一付着層11及び第三付着層13を共に包含できる大きさに形成している。これにより、一の大きな第二付着層12で、第一付着層11と第三付着層13を共に付着できる。ただ、第二付着層を複数に分割したり、あるいは第三付着層と対応する位置に第四付着層を追加してもよいことはいうまでもない。
[実施形態7]
【0043】
また以上の各実施形態では、第一シート1の開口端5側を第二シート2の開口端5側よりも突出させることで、この突出片7を第二シート2から表出させる構成を採用した。ただ本発明は、第一シートの一部を第二シートの開口端側から表出させる構成を、この構造に限定しない。例えば、第二シートを部分的に窪ませることで、第一シートを部分的に表出させてもよい。このような例を実施形態7に係る薬袋700として、図14の平面図に示す。この図に示す薬袋700は、第二シート2の開口端縁に、平面視において第一シート1の一部を表出させる切り欠き6を形成している。また第一シート1は、この切り欠き6から表出された表出領域に、第一付着層11を設けている。このような構成とすることで、薬袋700を開口させ易くする指掛けを、第一付着層11を設ける領域として利用できる。すなわち、第二シート2から第一シート1を表出させる切り欠き6に、使用者が指を掛けることで開口端5を開け易くできると共に、この指掛けのための切り欠き6に第一付着層11を設けることで、開口端5の閉塞と、折曲片4の隅部の浮き上がりを容易に実現できる。
[実施形態8]
【0044】
図14の例では、切り欠き6を半円形状としている。ただ切り欠きは、半円状に限られず、楕円形状やトラック形状、矩形状等、任意の形状とすることができる。一例として、図15に示す実施形態8に係る薬袋800では、面取りした長方形状に切り欠き6Bを形成し、この表出領域に第一付着層11を設けている。
[実施形態9]
【0045】
また図14図15の例では、切り欠きを開口端5の中央部分に一箇所のみ設けている。ただ本発明は、切り欠きの数や設ける位置を、この構成に特定しない。すなわち薬袋の大きさ、特に開口端の幅や長さ、厚さ、収納する薬剤の量等に応じて、指掛けとなる切り欠きを複数形成してもよい。また、その大きさも薬袋のサイズ等に応じて適宜設計することができる。一例として、図16に示す実施形態9に係る薬袋900では、半円形状の切り欠き6Cを第二シート2の開口端5の3箇所に形成している。またこの例では、切り欠き6Cの形状や大きさを同じとしているが、これらを異ならせてもよい。例えば中間の切り欠きを大きく、その両側に設けた切り欠きを一回り小さく形成してもよい。さらに上記の例では、各切り欠き6Cに第一付着層11をそれぞれ設ける例を説明したが、例えば複数の切り欠きの一部にのみ第一付着層を設け、他の切り欠きに第一付着層を設けない構成としてもよい。例えば複数の切り欠きを開口端に設ける構成において、開口端の隅部に形成した切り欠きには、第一付着層を設けないことで、開口端の隅部の浮き上がりを確保することもできる。
[実施形態10]
【0046】
また以上の実施形態では、薬袋として2枚のシートを貼り合わせた袋状の形態を示したが、本発明はこの構成に限らず、他の形態の薬袋にも適用できる。例えば実施形態10として図17に示す薬袋1000では、マチ付きの角底薬袋に対して、表面側の第二シート2の開口端側に形成された指掛け部分の切り欠き6と対応する、裏面側の第一シート1の部位に第一付着層11を、また表面側の第二シート2に第二付着層12を、それぞれ設けた例を示している。このような構成であっても、同様に折り曲げ線3で折曲させて閉塞すると共に、第一付着層11と第二付着層12を接合させて閉塞位置を保持できる。
[実施形態11]
【0047】
さらにマチ付きの角底薬袋に対しても、上述した図2等と同様に、第二シートの開口端側を第一シートよりも突出させて突出片とし、この突出片に第一付着層を設けてもよい。このような例を実施形態11に係る薬袋1100として、図18に示す。この図に示す薬袋1100も、第一シート1と第二シート2を対向させたマチ付きの角底薬袋であり、開口端5において裏面側の第一シート1から突出させた突出片7に、第一付着層11を設けている。また表面側の第二シート2には、破線で示す示す折り曲げ線3の位置で折曲片4を折曲した際に、第一付着層11と対応する部位に、第二付着層12を設けている。
【0048】
加えて、このような付着層に剥離紙を付加してもよい。付着層を剥離紙で覆うことで、埃やゴミ等の異物が使用前に付着層に付着して粘着力が低下する事態を回避でき、また使用者の指などが誤って使用前の付着層に触れた際にベトベト感を感じる事態も回避できる。剥離紙は、平滑面を糊面に貼付して、糊面の表出を避ける既存の部材を適宜利用できる。また剥離紙は、第一付着層や第二付着層にそれぞれ設けてもよいし、一枚の剥離紙でこれら第一付着層と第二付着層を覆うようにしてもよい。例えば図19に示す例では、破線で示すように一枚の剥離紙15でもって第一付着層11と第二付着層12を覆える大きさに形成している。この構成により、薬袋1100の使用時に使用者は一枚の剥離紙15を剥離するだけで薬袋1100を使用できるようになり、第一付着層や第二付着層にそれぞれ個別の剥離紙を貼付する構成と比べ便利に使用できる。特に高齢者においては、面倒な剥離紙の剥離作業を少なくできることで、利便性が向上する。また剥離紙を大きくしたことで、剥離作業も行い易くなる。さらに剥離紙の隅部を、剥離しやすいように予め折曲しておいてもよい。また剥離紙の形状は、図19のような矩形状に限らず、楕円形や六角形、ハート型など、任意の形状とすることができる。
【0049】
また第一シート及び第二シートを構成する紙を、形状記憶素材や形状保持素材で構成し、外力のない状態で、折曲片が折り曲げ線で折曲された状態に近付くようにしてもよい。この構成であれば、自然と折曲片が折曲された状態に戻るようにして、開口端を閉塞する方向に作用させて、薬袋内部の薬剤などのこぼれ落ちを阻止できる。
【0050】
さらに以上の例では、第一シート1及び第二シート2を紙製とする薬袋について説明した。ただ本発明はこの構成に限らず、第一シート及び第二シートを布製や樹脂製としてもよい。布製の薬袋は、織布や不織布を利用できる。樹脂製の薬袋は、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、PETなど、既存の樹脂が利用できる。またこれら布製や樹脂製も、形状記憶素材や形状保持素材で構成し、外力のない状態で、折曲片が折り曲げ線で折曲された状態に近付くようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の薬袋によれば、低コストで開口端を簡単に封止できる一方で、開放も容易に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100…薬袋
1…第一シート
2…第二シート
3…折り曲げ線
4…折曲片
5…開口端
6、6B、6C…切り欠き
7…突出片
8…エンボス部
11…第一付着層
12…第二付着層
13…第三付着層
15…剥離紙
PA…印字面
GP…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
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