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特開2022-39909ポリカーボナートポリオール及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039909
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】ポリカーボナートポリオール及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/02 20060101AFI20220303BHJP
   G01R 33/46 20060101ALI20220303BHJP
   G01N 24/08 20060101ALI20220303BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20220303BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
C08G64/02
G01R33/46
G01N24/08 510P
C08G18/44
C08G18/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021004177
(22)【出願日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】109129641
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】598131258
【氏名又は名称】大連化学工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DAIREN CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】7F., No.301, Songkiang Rd., Zhongshan.Dist.Taipei City,Taiwan 104
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】謝維綸
(72)【発明者】
【氏名】王興運
【テーマコード(参考)】
4J029
4J034
【Fターム(参考)】
4J029AA09
4J029AB02
4J029AC01
4J029AC02
4J029AD10
4J029AE11
4J029AE13
4J029AE17
4J029BA01
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029BA07
4J029BA08
4J029BA09
4J029BA10
4J029GA01
4J029GA02
4J029HA01
4J029HC04A
4J029HC05A
4J029HC05B
4J034BA03
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DC50
4J034DF02
4J034DF16
4J034DF27
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034KA01
4J034KB01
4J034KB02
4J034KC16
4J034KC17
4J034KD02
4J034KD04
4J034KE02
4J034QB08
4J034QB14
4J034QC08
4J034RA02
4J034RA03
4J034RA06
4J034RA10
4J034RA12
4J034RA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い機械的強度、高い耐摩耗性、及び高い透過率を同時に含むエラストマーの調製に使用できる、ポリカーボナートポリオールを提供する。
【解決手段】本発明のポリカーボナートポリオールは、下記式(I)により表される繰り返し単位、及び末端ヒドロキシルを含む。

(式(I)中、Rは置換又は無置換C-C202価脂肪族ヒドロカルビルである。)ポリカーボナートポリオールのH-NMRスペクトルは、4.00ppmから4.50ppmのシグナルの積分値A、及び0.90ppmから1.10ppmのシグナルの積分値Dを有し、D及びAの比(D/A)は0.03から1.45である。溶媒として重水素化クロロホルム、標準物質としてテトラメチルシランを用い、H-NMRスペクトルが測定される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)により表される繰り返し単位、及び末端ヒドロキシルを含むポリカーボナートポリオールであって、
【化1】
式(I)中、Rは置換又は無置換C-C202価脂肪族ヒドロカルビルであり、
前記ポリカーボナートポリオールのH-NMRスペクトルは、4.00ppmから4.50ppmのシグナルの積分値A、及び0.90ppmから1.10ppmのシグナルの積分値Dを有し、
D及びAの比(D/A)は0.03から1.45であり、
前記H-NMRスペクトルは、溶媒として重水素化クロロホルム、標準物質としてテトラメチルシランを用いて測定されることを特徴とする、
ポリカーボナートポリオール。
【請求項2】
共鳴周波数600MHZ、パルス幅45°、取得時間1秒、スキャン回数128回、及びテトラメチルシランシグナルを0ppmに設定した条件下で、前記ポリカーボナートポリオールを測定するための核磁気共鳴分光計を用い、前記H-NMRスペクトルが得られることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボナートポリオール。
【請求項3】
前記D及びAの比(D/A)は0.10から1.40であることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボナートポリオール。
【請求項4】
前記ポリカーボナートポリオールの前記H-NMRスペクトルは、3.70ppmから3.85ppmのシグナルの積分値Fを有し、F及びAの比(F/A)は0.01以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボナートポリオール。
【請求項5】
前記式(I)により表される繰り返し単位は、下記式(I-1)により表される繰り返し単位、下記式(I-2)により表される繰り返し単位、及び下記式(I-3)により表される繰り返し単位の少なくとも1つを含み、
【化2】
式中、RはC-C12直鎖2価脂肪族ヒドロカルビルであり、Rは第3級炭素原子を有し、第4級炭素原子を有さないC-C122価脂肪族ヒドロカルビルであり、Rは第4級炭素原子を有するC-C122価脂肪族ヒドロカルビルであることを特徴とする、請求項1に記載のポリカーボナートポリオール。
【請求項6】
前記式(I)により表される繰り返し単位は、下記式(I-1)により表される繰り返し単位、下記式(I-2)により表される繰り返し単位、及び下記式(I-3)により表される繰り返し単位の少なくとも1つを含み、
【化3】
式中、RはC-C12直鎖2価脂肪族ヒドロカルビルであり、Rは第3級炭素原子を有し、第4級炭素原子を有さないC-C122価脂肪族ヒドロカルビルであり、Rは第4級炭素原子を有するC-C122価脂肪族ヒドロカルビルであることを特徴とする、請求項2に記載のポリカーボナートポリオール。
【請求項7】
前記式(I)により表される繰り返し単位は、下記式(I-1)により表される繰り返し単位、下記式(I-2)により表される繰り返し単位、及び下記式(I-3)により表される繰り返し単位の少なくとも1つを含み、
【化4】
式中、RはC-C12直鎖2価脂肪族ヒドロカルビルであり、Rは第3級炭素原子を有し、第4級炭素原子を有さないC-C122価脂肪族ヒドロカルビルであり、Rは第4級炭素原子を有するC-C122価脂肪族ヒドロカルビルであることを特徴とする、請求項3に記載のポリカーボナートポリオール。
【請求項8】
前記式(I)により表される繰り返し単位は、下記式(I-1)により表される繰り返し単位、下記式(I-2)により表される繰り返し単位、及び下記式(I-3)により表される繰り返し単位の少なくとも1つを含み、
【化5】
式中、RはC-C12直鎖2価脂肪族ヒドロカルビルであり、Rは第3級炭素原子を有し、第4級炭素原子を有さないC-C122価脂肪族ヒドロカルビルであり、Rは第4級炭素原子を有するC-C122価脂肪族ヒドロカルビルであることを特徴とする、請求項4に記載のポリカーボナートポリオール。
【請求項9】
前記式(I-2)により表される繰り返し単位、及び前記式(I-3)により表される繰り返し単位の少なくとも1つを含む、請求項5に記載のポリカーボナートポリオール。
【請求項10】
前記式(I-2)により表される繰り返し単位、及び前記式(I-3)により表される繰り返し単位の少なくとも1つを含む、請求項6に記載のポリカーボナートポリオール。
【請求項11】
前記式(I-2)により表される繰り返し単位、及び前記式(I-3)により表される繰り返し単位の少なくとも1つを含む、請求項7に記載のポリカーボナートポリオール。
【請求項12】
前記式(I-2)により表される繰り返し単位、及び前記式(I-3)により表される繰り返し単位の少なくとも1つを含む、請求項8に記載のポリカーボナートポリオール。
【請求項13】
前記式(I-1)により表される繰り返し単位を更に含む、請求項9に記載のポリカーボナートポリオール。
【請求項14】
前記式(I-1)により表される繰り返し単位を更に含む、請求項10に記載のポリカーボナートポリオール。
【請求項15】
前記式(I-1)により表される繰り返し単位を更に含む、請求項11に記載のポリカーボナートポリオール。
【請求項16】
前記式(I-1)により表される繰り返し単位を更に含む、請求項12に記載のポリカーボナートポリオール。
【請求項17】
はC-C10直鎖2価脂肪族ヒドロカルビルであり、Rは第3級炭素原子を有し、第4級炭素原子を有さないC-C102価脂肪族ヒドロカルビルであり、Rは第4級炭素原子を有するC-C102価脂肪族ヒドロカルビルであることを特徴とする、請求項5に記載のポリカーボナートポリオール。
【請求項18】
はC-C10直鎖2価脂肪族ヒドロカルビルであり、Rは第3級炭素原子を有し、第4級炭素原子を有さないC-C102価脂肪族ヒドロカルビルであり、Rは第4級炭素原子を有するC-C102価脂肪族ヒドロカルビルであることを特徴とする、請求項6に記載のポリカーボナートポリオール。
【請求項19】
請求項1に記載のポリカーボナートポリオール、
及び任意の鎖延長剤を含む、
エラストマー前駆体組成物。
【請求項20】
請求項19に記載のエラストマー前駆体組成物から調製される、
エラストマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本願は、2020年8月28日に出願された台湾特許出願109129641の利益を主張し、その対象は全体が本明細書に援用される。
【0002】
本願は、ポリカーボナートポリオール、特にポリカーボナートジオールを提供する。また、本願は、ポリカーボナートポリオールを用いて得られるエラストマー前駆体組成物及びエラストマーを提供する。
【背景技術】
【0003】
ポリカーボナートポリオールは、良好な耐加水分解性、耐光性、酸化劣化耐性、及び耐熱性を有する物質である。ポリカーボナートポリオールは、エラストマー、塗料、被覆材又は接着剤の調製に有用である。エラストマーの調製において、特定の分岐鎖アルコールは、ポリカーボナートポリオールに取り込まれて、ポリカーボナートポリオールから調製されるエラストマーの透過率を高めることが可能である。しかしながら、分岐鎖アルコールの取り込みは、エラストマーの機械的強度を減少させるため、このエラストマーは高い機械的強度を必要とする製品を調製できない(例、スポーツ用具)。
【0004】
従って、高い機械的強度、高い耐摩耗性、及び高い透過率を同時に含むエラストマーの調製に使用できるポリカーボナートポリオールの必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【0005】
本願は、ポリカーボナートポリオール、ポリカーボナートポリオールを用いて得られるエラストマー前駆体組成物、及びエラストマー前駆体組成物を用いて調製されるエラストマーを提供する。
本願は、従来のポリカーボナートポリオールが、高い機械的強度、高い耐摩耗性、及び高い透過率を同時に有するエラストマーを提供することができない問題を解決する。本願の技術手段は、これらの特定の条件を満たすポリカーボナートポリオールを使用することであり、これによりエラストマーの透過率に影響することなく、ポリカーボナートポリオールから調製されるエラストマーの機械的強度及び耐摩耗性を著しく向上させる。従って、本願は下記の発明の目的を含む。
【0006】
本願の目的は、下記式(I)により表される繰り返し単位、及び末端ヒドロキシルを含むポリカーボナートポリオールを提供することである。
【0007】
【化1】
【0008】
式(I)中、Rは置換又は無置換C-C202価脂肪族ヒドロカルビルである。
ポリカーボナートポリオールのH-NMRスペクトルは、4.00ppmから4.50ppmのシグナルの積分値A、及び0.90ppmから1.10ppmのシグナルの積分値Dを有し、D及びAの比(D/A)は0.03から1.45である。H-NMRスペクトルは、溶媒として重水素化クロロホルム、標準物質としてテトラメチルシランを用いて測定される。
【0009】
本願のいくつかの実施形態において、共鳴周波数600MHZ、パルス幅45°、取得時間1(一)秒、スキャン回数128回、テトラメチルシランシグナルを0ppmに設定した条件下で、ポリカーボナートポリオールを測定するための核磁気共鳴分光計を用い、H-NMRスペクトルが得られる。
【0010】
本願のいくつかの実施形態において、D及びAの比(D/A)は0.10から1.40である。
【0011】
本願のいくつかの実施形態において、ポリカーボナートポリオールのH-NMRスペクトルは、3.70ppmから3.85ppmのシグナルの積分値Fを有し、F及びAの比(F/A)は0.01以下である。
【0012】
本願のいくつかの実施形態において、式(I)により表される繰り返し単位は、下記式(I-1)により表される繰り返し単位、下記式(I-2)により表される繰り返し単位、及び下記式(I-3)により表される繰り返し単位の少なくとも1つを含む。
【0013】
【化2】
【0014】
式中、RはC-C12直鎖2価脂肪族ヒドロカルビルであり、Rは第3級炭素原子を有し、第4級炭素原子を有さないC-C122価脂肪族ヒドロカルビルであり、Rは第4級炭素原子を有するC-C122価脂肪族ヒドロカルビルである。
【0015】
本願のいくつかの実施形態において、ポリカーボナートポリオールは、式(I-2)により表される繰り返し単位、及び式(I-3)により表される繰り返し単位の少なくとも1つを含む。
【0016】
本願のいくつかの実施形態において、ポリカーボナートポリオールは式(I-1)により表される繰り返し単位を更に含む。
【0017】
本願のいくつかの実施形態において、式(I-1)中のRは、C-C10直鎖2価脂肪族ヒドロカルビルであり、式(I-2)中のRは、第3級炭素原子を有し、第4級炭素原子を有さないC-C102価脂肪族ヒドロカルビルであり、式(I-3)中のRは、第4級炭素原子を有するC-C102価脂肪族ヒドロカルビルである。
【0018】
本願の別の目的は、上記ポリカーボナートポリオール、及び任意の鎖延長剤を含む、エラストマー前駆体組成物を提供することである。
【0019】
本願の更に別の目的は、上記エラストマー前駆体組成物から調製されるエラストマーを提供することである。
【0020】
上記本願の目的、技術的特徴及び利点をより明らかにするため、本願を以下のいくつかの実施形態に関して、詳細に記載する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本願のいくつかの実施形態を詳細に記載する。しかしながら、本願の趣旨を逸脱することなく、本願は様々な実施形態に包含されてよく、本明細書に記載される実施形態に限定されるべきではない。
【0022】
更なる説明がない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載される「a」、「the」などの表現は単数形及び複数形の両方を含むべきである。
【0023】
本明細書で使用するとき、「第3級炭素原子」という用語は、3つの炭素原子に結合する炭素原子を指し、「第4級炭素原子」という用語は、4つの炭素原子に結合する炭素原子を指す。
【0024】
本明細書で使用するとき、「H-NMR(プロトン核磁気共鳴)スペクトル」は、溶媒として重水素化クロロホルム、標準物質としてテトラメチルシランを用いて得られるスペクトルであり、テトラメチルシランのシグナルは、スペクトルの開始点(0ppm)として設定する。
【0025】
本明細書で使用するとき、「末端ヒドロキシル」という用語は、ポリマー主鎖の末端に連結するヒドロキシル(-OH)を指す。
【0026】
1.ポリカーボナートポリオール
本願はポリカーボナートポリオールを提供し、これは耐摩耗性、高い機械的強度及び高い透過率を同時に含むエラストマーを提供するのに使用できる。本願のいくつかの実施形態において、ポリカーボナートジオールを提供する。
【0027】
1.1.ポリカーボナートポリオールの性質
本願のポリカーボナートポリオールは以下の特徴を有する。ポリカーボナートポリオールのH-NMRスペクトルは、4.00ppmから4.50ppmのシグナルの積分値A、及び0.90ppmから1.10ppmのシグナルの積分値Dを有し、積分値D及び積分値Aの比(D/A)は0.03から1.45である。本願のいくつかの実施形態において、積分値D及び積分値Aの比(D/A)は0.10から1.45である。例えば、積分値D及び積分値Aの比(D/A)は、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.40、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.50、0.51、0.52、0.53、0.54、0.55、0.56、0.57、0.58、0.59、0.60、0.61、0.62、0.63、0.64、0.65、0.66、0.67、0.68、0.69、0.70、0.71、0.72、0.73、0.74、0.75、0.76、0.77、0.78、0.79、0.80、0.81、0.82、0.83、0.84、0.86、0.87、0.88、0.89、0.90、0.91、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99、1.00、1.01、1.02、1.03、1.04、1.05、1.06、1.07、1.08、1.09、1.10、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.20、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.30、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.40、1.41、1.42、1.43、又は1.44、或いは本明細書に記載する任意の2つの値間の範囲でよい。ポリカーボナートポリオールのD/A値が本願の指定範囲内であるとき、これから調製されるエラストマーは、より良好な透過率及び機械的強度を備えることができる。
【0028】
本願のポリカーボナートポリオールのH-NMRスペクトルは、ポリカーボナートポリオールを測定するための核磁気共鳴分光計を用いて得られ、重水素化クロロホルムを溶媒として、テトラメチルシランを標準物質として用いる。より詳細には、本願のポリカーボナートポリオールのH-NMRスペクトルは、共鳴周波数600MHZ、パルス幅45°、取得時間1(一)秒、スキャン回数128回、及びテトラメチルシランのシグナルを0ppmに設定した条件下で、ポリカーボナートポリオールを測定するための核磁気共鳴分光計を用いて得られる。
【0029】
本願のいくつかの実施形態において、ポリカーボナートポリオールのH-NMRスペクトルは、3.70ppmから3.85ppmのシグナルの積分値Fを有し、積分値F及び積分値Aの比(F/A)は、0.0099以下、0.0098以下又は0.0097以下など、0.01以下である。ポリカーボナートポリオールのF/A値が本願の指定範囲内であるとき、これから調製されるエラストマーはより良好な引張強度を備えることができる。
【0030】
1.2.ポリカーボナートポリオールの構造
本願のポリカーボナートポリオールは、下記式(I)により表される繰り返し単位、及び末端ヒドロキシルを含む。式(I)中、Rは置換又は無置換C-C202価脂肪族ヒドロカルビルである。
【0031】
【化3】
【0032】
-C202価脂肪族ヒドロカルビルの例としては、C-C20アルキレン、C-C20アルケンジイル、及びC-C20アルキンジイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
-C20アルキレンの例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、トリデシレン、テトラデシレン、ペンタデシレン、ヘキサデシレン、ヘプタデシレン、オクタデシレン、ノナデシレン、エイコシレン、イソプロピレン、イソブチレン、sec-ブチレン、tert-ブチレン、イソペンチレン、neo-ペンチレン、tert-ペンチレン、イソへキシレン、イソヘプチレン、イソオクチレン、イソノニレン、イソデシレン、イソウンデシレン、イソドデシレン、イソトリデシレン、イソテトラデシレン、イソペンタデシレン、イソヘキサデシレン、イソヘプタデシレン、イソオクタデシレン、イソノナデシレン、イソエイコシレン、1-メチル-1-エチルプロピレン、2-メチル-2-エチルプロピレン、2,2-ジメチルブチレン、2-メチルペンチレン、3-メチルペンチレン、2,2-ジエチルプロピレン、1-メチル-1-プロピルプロピレン、2-メチル-2-プロピルプロピレン、1-メチル-1-エチルブチレン、2-メチル-2-エチルブチレン、2,2-ジメチルペンチレン、3,3-ジメチルペンチレン、2,3-ジメチルペンチレン、1-エチルペンチレン、2-エチルペンチレン、3-エチルペンチレン、2-メチルへキシレン、3-メチルへキシレン、1-メチル-1-ブチルプロピレン、2-メチル-2-ブチルプロピレン、1-メチル-2-ブチルプロピレン、1-ブチル-2-メチルプロピレン、1-エチル-1-プロピルプロピレン、2-エチル-2-プロピルプロピレン、1-エチル-2-プロピルプロピレン、1-プロピル-2-エチルプロピレン、1,1-ジエチルブチレン、2,2-ジエチルブチレン、1,2-ジエチルブチレン、1-メチル-1-プロピルブチレン、2-メチル-2-プロピルブチレン、1-メチル-2-プロピルブチレン、1-プロピル-2-メチルブチレン、1-プロピルペンチレン、2-プロピルペンチレン、3-プロピルペンチレン、2,2-ジメチルへキシレン、3,3-ジメチルへキシレン、2,3-ジメチルへキシレン、2,4-ジメチルへキシレン、1-エチルへキシレン、2-エチルへキシレン、3-エチルへキシレン、1-エチル-1-ブチルプロピレン、2-エチル-2-ブチルプロピレン、1-エチル-2-ブチルプロピレン、1-ブチル-2-エチルプロピレン、1-エチル-1-プロピルブチレン、2-エチル-2-プロピルブチレン、1-エチル-2-プロピルブチレン、1-プロピル-2-エチルブチレン、1-エチル-3-プロピルブチレン、1-プロピル-3-エチルブチレン、2-エチル-3-プロピルブチレン、1-メチル-1-ブチルブチレン、2-メチル-2-ブチルブチレン、1-メチル-2-ブチルブチレン、1-ブチル-2-メチルブチレン、1-メチル-3-ブチルブチレン、1-ブチル-3-メチルブチレン、1-ブチルペンチレン、2-ブチルペンチレン、3-ブチルペンチレン、1,1-ジエチルペンチレン、2,2-ジエチルペンチレン、3,3-ジエチルペンチレン、1,2-ジエチルペンチレン、1,3-ジエチルペンチレン、2,3-ジエチルペンチレン、2,4-ジエチルペンチレン、1-プロピルへキシレン、2-プロピルへキシレン、3-プロピルへキシレン、1-メチル-1-エチルへキシレン、2-メチル-2-エチルへキシレン、3-メチル-3-エチルへキシレン、1-メチル-2-エチルへキシレン、1-メチル-3-エチルへキシレン、2-メチル-3-エチルへキシレン、1-エチルヘプチレン、2-エチルヘプチレン、3-エチルヘプチレン、及び4-エチルヘプチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
-C20アルケンジイルの例としては、ビニレン、ビニリデン、プロペン-1,2-ジイル、プロペン-1,3-ジイル、ブテン-1,2-ジイル、ブテン-1,3-ジイル、ブテン-1,4-ジイル、ペンテン-1,2-ジイル、ペンテン-1,3-ジイル、ペンテン-1,4-ジイル、ペンテン-1,5-ジイル、ヘキセン-1,2-ジイル、ヘキセン-1,3-ジイル、ヘキセン-1,4-ジイル、ヘキセン-1,5-ジイル、ヘキセン-1,6-ジイル、ヘプテン-1,2-ジイル、ヘプテン-1,3-ジイル、ヘプテン-1,4-ジイル、ヘプテン-1,5-ジイル、ヘプテン-1,6-ジイル、ヘプテン-1,7-ジイル、オクテン-1,2-ジイル、オクテン-1,3-ジイル、オクテン-1,4-ジイル、オクテン-1,5-ジイル、オクテン-1,6-ジイル、オクテン-1,7-ジイル、オクテン-1,8-ジイル、ノネン-1,2-ジイル、ノネン-1,3-ジイル、ノネン-1,4-ジイル、ノネン-1,5-ジイル、ノネン-1,6-ジイル、ノネン-1,7-ジイル、ノネン-1,8-ジイル、ノネン-1,9-ジイル、デセン-1,2-ジイル、デセン-1,3-ジイル、デセン-1,4-ジイル、デセン-1,5-ジイル、デセン-1,6-ジイル、デセン-1,7-ジイル、デセン-1,8-ジイル、デセン-1,9-ジイル、及びデセン-1,10-ジイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
-C20アルキンジイルの例としては、エチニレン、プロピン-1,2-ジイル、プロピン-1,3-ジイル、ブチン-1,2-ジイル、ブチン-1,3-ジイル、ブチン-1,4-ジイル、ペンチン-1,2-ジイル、ペンチン-1,3-ジイル、ペンチン-1,4-ジイル、ペンチン-1,5-ジイル、ヘキシン-1,2-ジイル、ヘキシン-1,3-ジイル、ヘキシン-1,4-ジイル、ヘキシン-1,5-ジイル、ヘキシン-1,6-ジイル、へプチン-1,2-ジイル、へプチン-1,3-ジイル、へプチン-1,4-ジイル、へプチン-1,5-ジイル、へプチン-1,6-ジイル、へプチン-1,7-ジイル、オクチン-1,2-ジイル、オクチン-1,3-ジイル、オクチン-1,4-ジイル、オクチン-1,5-ジイル、オクチン-1,6-ジイル、オクチン-1,7-ジイル、オクチン-1,8-ジイル、ノニン-1,2-ジイル、ノニン-1,3-ジイル、ノニン-1,4-ジイル、ノニン-1,5-ジイル、ノニン-1,6-ジイル、ノニン-1,7-ジイル、ノニン-1,8-ジイル、ノニン-1,9-ジイル、デシン-1,2-ジイル、デシン-1,3-ジイル、デシン-1,4-ジイル、デシン-1,5-ジイル、デシン-1,6-ジイル、デシン-1,7-ジイル、デシン-1,8-ジイル、デシン-1,9-ジイル、及びデシン-1,10-ジイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本願のいくつかの実施形態において、式(I)により表される繰り返し単位は、下記式(I-1)により表される繰り返し単位、下記式(I-2)により表される繰り返し単位、及び下記式(I-3)により表される繰り返し単位の少なくとも1つを含む。
【0037】
【化4】
【0038】
式(I-1)から式(I-3)において、RはC-C12直鎖2価脂肪族ヒドロカルビルであり、Rは第3級炭素原子を有し、第4級炭素原子を有さないC-C122価脂肪族ヒドロカルビルであり、Rは第4級炭素原子を有するC-C122価脂肪族ヒドロカルビルである。本願の好ましい実施形態において、RはC-C10直鎖2価脂肪族ヒドロカルビルであり、Rは第3級炭素原子を有し、第4級炭素原子を有さないC-C102価脂肪族ヒドロカルビルであり、Rは第4級炭素原子を有するC-C102価脂肪族ヒドロカルビルである。
【0039】
-C12直鎖2価脂肪族ヒドロカルビルの例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、ビニレン、プロペン-1,3-ジイル、ブテン-1,4-ジイル、ペンテン-1,5-ジイル、ヘキセン-1,6-ジイル、ヘプテン-1,7-ジイル、オクテン-1,8-ジイル、ノネン-1,9-ジイル、デセン-1,10-ジイル、プロピン-1,3-ジイル、ブチン-1,4-ジイル、ペンチン-1,5-ジイル、ヘキシン-1,6-ジイル、へプチン-1,7-ジイル、オクチン-1,8-ジイル、ノニン-1,9-ジイル、及びデシン-1,10-ジイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
第3級炭素原子を有し、第4級炭素原子を有さないC-C122価脂肪族ヒドロカルビルの例としては、イソプロピレン、イソブチレン、sec-ブチレン、イソへキシレン、イソヘプチレン、イソオクチレン、イソノニレン、イソデシレン、イソウンデシレン、イソドデシレン、2-メチルペンチレン、3-メチルペンチレン、1-エチルペンチレン、2-エチルペンチレン、3-エチルペンチレン、2-メチルへキシレン、3-メチルへキシレン、1-プロピルペンチレン、2-プロピルペンチレン、3-プロピルペンチレン、1-エチルへキシレン、2-エチルへキシレン、3-エチルへキシレン、1-ブチルペンチレン、2-ブチルペンチレン、3-ブチルペンチレン、1-プロピルへキシレン、2-プロピルへキシレン、3-プロピルへキシレン、1-エチルへプチレン、2-エチルへプチレン、3-エチルへプチレン、及び4-エチルへプチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
第4級炭素原子を有するC-C122価脂肪族ヒドロカルビルの例としては、tert-ブチレン、neo-ペンチレン、tert-ペンチレン、1-メチル-1-エチルプロピレン、2-メチル-2-エチルプロピレン、2,2-ジエチルプロピレン、1-メチル-1-プロピルプロピレン、2-メチル-2-プロピルプロピレン、1-メチル-1-エチルブチレン、2-メチル-2-エチルブチレン、2,2-ジメチルペンチレン、3,3-ジメチルペンチレン、2,3-ジメチルペンチレン、1-メチル-1-ブチルプロピレン、2-メチル-2-ブチルプロピレン、1-メチル-2-ブチルプロピレン、1-ブチル-2-メチルプロピレン、1-エチル-1-プロピルプロピレン、2-エチル-2-プロピルプロピレン、1-エチル-2-プロピルプロピレン、1-プロピル-2-エチルプロピレン、1,1-ジエチルブチレン、2,2-ジエチルブチレン、1,2-ジエチルブチレン、1-メチル-1-プロピルブチレン、2-メチル-2-プロピルブチレン、1-メチル-2-プロピルブチレン、1-プロピル-2-メチルブチレン、2,2-ジメチルへキシレン、3,3-ジメチルへキシレン、2,3-ジメチルへキシレン、2,4-ジメチルへキシレン、1-エチル-1-ブチルプロピレン、2-エチル-2-ブチルプロピレン、1-エチル-2-ブチルプロピレン、1-ブチル-2-エチルプロピレン、1-エチル-1-プロピルブチレン、2-エチル-2-プロピルブチレン、1-エチル-2-プロピルブチレン、1-プロピル-2-エチルブチレン、1-エチル-3-プロピルブチレン、1-プロピル-3-エチルブチレン、2-エチル-3-プロピルブチレン、1-メチル-1-ブチルブチレン、2-メチル-2-ブチルブチレン、1-メチル-2-ブチルブチレン、1-ブチル-2-メチルブチレン、1-メチル-3-ブチルブチレン、1-ブチル-3-メチルブチレン、1,1-ジエチルペンチレン、2,2-ジエチルペンチレン、3,3-ジエチルペンチレン、1,2-ジエチルペンチレン、1,3-ジエチルペンチレン、2,3-ジエチルペンチレン、2,4-ジエチルペンチレン、1-メチル-1-エチルへキシレン、2-メチル-2-エチルへキシレン、3-メチル-3-エチルへキシレン、1-メチル-2-エチルへキシレン、1-メチル-3-エチルへキシレン、及び2-メチル-3-エチルへキシレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本願のいくつかの実施形態において、式(I)により表される繰り返し単位の総モルに基づくと、式(I-1)により表される繰り返し単位、式(I-2)により表される繰り返し単位、及び式(I-3)により表される繰り返し単位の含有量は、独立して0mol%から100mol%、例えば1mol%、2mol%、3mol%、4mol%、5mol%、6mol%、7mol%、8mol%、9mol%、10mol%、11mol%、12mol%、13mol%、14mol%、15mol%、16mol%、17mol%、18mol%、19mol%、20mol%、21mol%、22mol%、23mol%、24mol%、25mol%、26mol%、27mol%、28mol%、29mol%、30mol%、31mol%、32mol%、33mol%、34mol%、35mol%、36mol%、37mol%、38mol%、39mol%、40mol%、41mol%、42mol%、43mol%、44mol%、45mol%、46mol%、47mol%、48mol%、49mol%、50mol%、51mol%、52mol%、53mol%、54mol%、55mol%、56mol%、57mol%、58mol%、59mol%、60mol%、61mol%、62mol%、63mol%、64mol%、65mol%、66mol%、67mol%、68mol%、69mol%、70mol%、71mol%、72mol%、73mol%、74mol%、75mol%、76mol%、77mol%、78mol%、79mol%、80mol%、81mol%、82mol%、83mol%、84mol%、85mol%、86mol%、87mol%、88mol%、89mol%、90mol%、91mol%、92mol%、93mol%、94mol%、95mol%、96mol%、97mol%、98mol%、又は99mol%、或いは本明細書に記載する任意の2つの値間の範囲内である。
【0043】
より具体的には、式(I)により表される繰り返し単位の総モルに基づくと、式(I-1)により表される繰り返し単位の含有量は、0mol%から75mol%でよく、式(I-2)により表される繰り返し単位の含有量は、0mol%から60mol%でよく、式(I-3)により表される繰り返し単位の含有量は、0mol%から90mol%でよい。
【0044】
本願のいくつかの実施形態において、ポリカーボナートポリオールは、式(I-2)により表される繰り返し単位、及び式(I-3)により表される繰り返し単位の少なくとも1つを含む。本願のいくつかの実施形態において、ポリカーボナートポリオールは、式(I-2)により表される繰り返し単位、及び式(I-3)により表される繰り返し単位の少なくとも1つを含み、式(I-1)により表される繰り返し単位を含む。本願のいくつかの実施形態において、ポリカーボナートポリオールは、式(I-1)により表される繰り返し単位、式(I-2)により表される繰り返し単位、及び式(I-3)により表される繰り返し単位を含む。
ポリカーボナートポリオールが式(I-1)により表される繰り返し単位、式(I-2)により表される繰り返し単位、及び式(I-3)により表される繰り返し単位を含む場合、式(I)により表される繰り返し単位の総モルに基づくと、式(I-1)により表される繰り返し単位の含有量は、3mol%から75mol%でよく、式(I-2)により表される繰り返し単位の含有量は、4mol%から60mol%でよく、式(I-3)により表される繰り返し単位の含有量は、6mol%から75mol%でよいが、本願はこれらに限定されない。
【0045】
本願のいくつかの実施形態において、式(I)により表される繰り返し単位は、式(I-2)により表される繰り返し単位を含み、式(I-2)中のRは3-メチルペンチレンである(つまり、式(I-2)により表される繰り返し単位は3-メチル-1,5-ペンタンジオールに由来する)。式(I)により表される繰り返し単位の総モルに基づくと、式(I-2)により表される繰り返し単位の含有量は0mol%超、70mol%以下であり、このポリカーボナートポリオールから調製されるエラストマーは、好適な耐摩耗性及び透過率を備えることができる。
【0046】
また、本願のポリカーボナートポリオールは、エーテルグリコールの構造を更に含むことができる。エーテルグリコールの構造の例としては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エトキシ化-1,3-プロパンジオール、プロポキシ化-1,3-プロパンジオール、エトキシ化-2-メチル-1,3-プロパンジオール、プロポキシ化-2-メチル-1,3-プロパンジオール、エトキシ化-1,4-ブタンジオール、プロポキシ化-1,4-ブタンジオール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコール、エトキシ化-1,5-ペンタンジオール、プロポキシ化-1,5-ペンタンジオール、エトキシ化ペンチルグリコール、プロポキシ化ペンチルグリコール、エトキシ化-1,6-ヘキサンジオール、及びプロポキシ化-1,6-ヘキサンジオールからなる群から選択される化合物由来の構造が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
1.3.ポリカーボナートポリオールの調製
1.3.1.カーボナート及びポリオールのエステル交換反応
ポリカーボナートポリオールは、カーボナート及びポリオールをエステル交換反応に付すことにより得ることができる。本願のいくつかの実施形態において、ポリカーボナートポリオールは、触媒の存在下、カーボナート及びポリオールをエステル交換反応に付すことにより得られる。
【0048】
ポリカーボナートポリオールの調製に使用できる触媒の例としては、金属、金属塩、金属アルコキシド、金属酸化物、金属水素化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、金属アミド、及び金属ホウ酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。上記金属の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、タリウム、鉛、ビスマス、及びイッテルビウムが挙げられるが、これらに限定されない。ポリカーボナートジオールを調製する観点から、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛、及びイッテルビウムの群から選択される金属が好ましい。
【0049】
触媒の具体的な例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、チタン酸テトラエチル、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラn-ブチル、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ラウリン酸ジブチルスズ、酸化ジブチルスズ、ジメトキシジブチルスズ、チタンテトラブトキシド、及びジルコニウムテトラブトキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
本願のポリカーボナートポリオールの調製において、ポリオールの総重量に基づくと、触媒の含有量は、1ppmから5000ppmでよく、例えば50ppm、100ppm、150ppm、200ppm、250ppm、300ppm、350ppm、400ppm、450ppm、500ppm、550ppm、600ppm、650ppm、700ppm、750ppm、800ppm、850ppm、900ppm、950ppm、1000ppm、1250ppm、1500ppm、1750ppm、2000ppm、2250ppm、2500ppm、2750ppm、3000ppm、3250ppm、3500ppm、3750ppm、4000ppm、4250ppm、又は4500ppmである。
【0051】
エステル交換反応は、70℃から250℃、好ましくは95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、150℃、155℃、160℃、165℃、170℃、175℃、180℃、185℃、190℃、195℃、200℃、205℃、210℃、215℃、220℃、又は225℃など、90℃から230℃の温度下で実施できる。
【0052】
エステル交換反応は、標準圧(つまり、760トル)又は標準圧より低い圧力下で実施できる。標準圧より低い圧力は、750トル、700トル、650トル、600トル、550トル、500トル、450トル、400トル、350トル、300トル、250トル、200トル、150トル、100トル、95トル、90トル、85トル、80トル、75トル、70トル、65トル、60トル、55トル、50トル、45トル、40トル、35トル、30トル、25トル、20トル、15トル、10トル、5トル、又は1トルでよい。
【0053】
また、この反応で生じる軽沸生成物は、エステル交換反応中に蒸留により除去しなければならないため、窒素、アルゴン、又はヘリウムなどの不活性ガスを反応器に通して、エステル交換反応中の蒸留を促進できる。
【0054】
本願のポリカーボナートポリオールの調製に使用できるカーボナートは、ポリオールとエステル交換反応できさえすれば、限定されない。カーボナートの例としては、ジアルキルカーボナート、ジアリールカーボナート、及びアルキレンカーボナートが挙げられるが、これらに限定されない。ジアルキルカーボナートの例としては、ジメチルカーボナート、ジエチルカーボナート、ジ-n-プロピルカーボナート、ジイソプロピルカーボナート、ジ-n-ブチルカーボナート、ジイソブチルカーボナート、メチルプロピルカーボナート、メチルブチルカーボナート、エチルブチルカーボナート、及びプロピルブチルカーボナートが挙げられるが、これらに限定されない。ジアリールカーボナートの例としては、ジフェニルカーボナート、ジナフチルカーボナート、ジ(n-ブチルフェニル)カーボナート、ジ(イソブチルフェニル)カーボナート、ジ(n-ペンチルフェニル)カーボナート、ジ(n-ヘキシルフェニル)カーボナート、及びジ(シクロヘキシルフェニル)カーボナートが挙げられるが、これらに限定されない。アルキレンカーボナートの例としては、エチレンカーボナート、プロピレンカーボナート、ブチレンカーボナート、ペンチレンカーボナート、及びトリメチレンカーボナートが挙げられるが、これらに限定されない。添付の実施例においては、ジメチルカーボナートが用いられる。
【0055】
本願のポリカーボナートポリオールの調製において、ポリオール1(一)molに基づくと、カーボナートの含有量は、0.6mol、0.7mol、0.8mol、0.9mol、1.0mol、1.1mol、1.2mol、1.3mol、1.4mol、1.5mol、1.6mol、1.7mol、1.8mol、1.9mol、2.0mol、2.1mol、2.2mol、2.3mol、又は2.4molなどの0.5molから2.5mol、或いは本明細書に記載する任意の2つの値間の範囲内でよい。
【0056】
本明細書で使用するとき、ポリオールはジオール、トリオール、又はテトラオールなど少なくとも2つのヒドロキシル(-OH)を有するアルコールである。本願のいくつかの実施形態において、ジオールはポリカーボナートポリオールの調製に用いられる。
【0057】
一般的にジオールは構造に応じて、側鎖を有さないジオール、側鎖を有するジオール、及び環状ジオールに分類できる。側鎖を有さないジオールの例としては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、及び1,15-ペンタデカンジオールが挙げられるが、これらに限定されない。側鎖を有するジオールの例としては、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-プロピル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,4-ブタンジオール、2,2-ジエチル-1,4-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、及び2,2-ジエチル-1,5-ペンタンジオールが挙げられるが、これらに限定されない。環状ジオールの例としては、1,4-シクロヘキサンジオール、トリシクロデカンジメタノール、及び2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
トリオールの例としては、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及びヘキサントリオールが挙げられるが、これらに限定されない。テトラオールの例としては、ペンタエリトリトールが挙げられるが、これに限定されない。
【0059】
本願のポリカーボナートポリオールにおいて、式(I)により表される繰り返し単位の構造におけるR部分、式(I-1)により表される繰り返し単位の構造におけるR部分、式(I-2)により表される繰り返し単位の構造におけるR部分、及び式(I-3)により表される繰り返し単位の構造におけるR部分は、ジオールに由来する。本願のいくつかの実施形態において、式(I-1)により表される繰り返し単位は、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、及び1,8-オクタンジオールからなる群から選択される1つ又は複数の化合物から得ることができる。式(I-2)により表される繰り返し単位は、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、及び3-メチル-1,5-ペンタンジオールからなる群から選択される1つ又は複数の化合物から得ることができる。式(I-3)により表される繰り返し単位は、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-プロピル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,4-ブタンジオール、2,2-ジエチル-1,4-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、及び2,2-ジエチル-1,5-ペンタンジオールからなる群から選択される1つ又は複数の化合物から得ることができる。
【0060】
1.3.2.他の調製方法
本願のポリカーボナートポリオールは、上記エステル交換反応に加えて、他の調製方法を用いて調製することもできる。他の調製方法としては、二酸化炭素-エポキシド交互共重合が挙げられるが、これに限定されない。
簡潔に、二酸化炭素-エポキシド交互共重合の実施方法は、1つ又は複数のアルケンオキシドが、触媒の存在下で1つ又は複数のH機能性出発物質に添加されて、ポリカーボナートポリオールが調製されることを含む。触媒の例としては、複金属シアン化物触媒、並びに金属亜鉛及び/又はコバルトに基づく金属錯体触媒が挙げられるが、これらに限定されない。二酸化炭素-エポキシド交互共重合の詳細については、それが本願の要点ではなく、対象となる明細書の開示及び一般知識に基づき当業者が容易に実施できることを考慮して、本明細書に詳細に記載しない。
【0061】
2.エラストマー前駆体組成物及びエラストマー
本願のポリカーボナートポリオールは、エラストマーを調製するのに使用できる。従って、本願はエラストマー前駆体組成物、及びエラストマー前駆体組成物から調製されるエラストマーも提供し、エラストマー前駆体組成物は上記ポリカーボナートポリオール及び任意の鎖延長剤を含む。
【0062】
エラストマーの例としては、ポリウレタン及びポリエステル(例えば、熱可塑性ポリエステルエラストマー)が挙げられるが、これらに限定されない。ポリウレタンの調製を例示的実施形態として添付の実施例で説明する。添付の実施例からわかるように、ポリウレタンは、本願のポリカーボナートポリオールをポリイソシアナート及び任意の鎖延長剤と反応させることにより調製できる。本願のポリカーボナートポリオールから調製されるポリウレタンは、優れた機械的強度、耐摩耗性及び透過率を備えることができる。調製したポリウレタンは、自動車製品、食品包装、医療機器、スポーツ用具、電子製品、建築材料、家具等の分野で広く使用できる。
【0063】
3.実施例
3.1.試験方法
本願を以下の実施形態により更に説明する。試験機器及び方法は以下の通りである。
H-NMRスペクトル測定]
ポリカーボナートポリオールを重水素化クロロホルム(CDCl、アルドリッチから入手)に溶解して、6g/ml濃度の溶液を得る。テトラメチルシランを化学シフト参照のための標準物質として溶液に添加し、核磁気共鳴分光計(型:ECZ600R、日本電子株式会社から入手)を用いて溶液を測定し、H-NMRスペクトルを得る。測定条件は、共鳴周波数600MHZ、パルス幅45°、収集時間1(一)秒、スキャン回数128回、テトラメチルシランシグナルを0ppmに設定する。
【0064】
[100%モジュラス及び引張強度試験]
ポリカーボナートポリオールから調製されるポリウレタン薄膜を長さ100mm、幅10mm、厚さ0.1mmの試料に切断する。JIS K6301に従い、万能引張機を用いてポリウレタン試料を試験し、100%モジュラス及び引張強度を得る。100%モジュラス及び引張強度の単位はどちらもMPaである。
【0065】
[耐摩耗性試験]
ポリカーボナートポリオールから調製されるポリウレタン薄膜を長さ100mm、幅100mm、厚さ3mmの試料に切断した後、試料を計量する。次に、ポリウレタン試料をASTM D4060に従い、ロータリー摩耗試験機(型:5135、テーバーから入手)を用いて試験し、耐摩耗性を得る。試験条件はCS-10 Calibrase摩耗輪の使用、回転速度62rpm、500回転である。
試験後にポリウレタン試料をもう一度計量し、ポリウレタンの重量損失を計算する。耐摩耗性は以下の通りに評価する。重量損失≦2mgは、耐摩耗性が良好であることを意味し、結果は「A」と記録する。重量損失>2mg及び≦4mgは、耐摩耗性が許容範囲であることを意味し、結果は「B」と記録する。重量損失>4mgは、耐摩耗性が悪いことを意味し、結果は「C」と記録する。
【0066】
[透過率試験]
ポリカーボナートポリオールから調製されるポリウレタン薄膜を長さ50mm、幅50mm、厚さ0.2mmの試料に切断する。その後、ポリウレタン試料をASTM D 1003-13に従い、透過率計(型:ヘイズガードi4775、BYKガードナーから入手)を用いて試験し、透過率を得る。透過率は以下のように評価する。測定された≧90%の透過率は、透過率が良好であることを意味し、結果は「A」と記録する。測定された≧80%及び<90%の透過率は、透過率が許容範囲であることを意味し、結果は「B」と記録する。測定された<80%の透過率は、透過率が悪いことを意味し、結果は「C」と記録する。
【0067】
3.2.ポリカーボナートジオールの調製
[合成例1]
以下の原料:ジメチルカーボナート1004g、1,4-ブタンジオール556g、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール251g、3-メチル-1,5-ペンタンジオール58g、チタンテトラブトキシド(触媒)0.1gを精留塔、スターラー、温度計及び窒素注入管を備えた丸底ガラスフラスコに添加した。その後、これらの原料を標準圧及び窒素通気下で撹拌して、エステル交換反応を8時間実施し、同時にメタノール及びジメチルカーボナートの混合物を共に蒸留により除去する。
エステル交換反応中、反応温度を95℃から150℃までゆっくりと上昇させ、蒸留物の構成をメタノール及びジメチルカーボナートの共沸構成に変化させた。その後、圧力をゆっくりと100トルまで低下させ、撹拌及び150℃下で更にエステル交換反応を1(一)時間実施し、同時にメタノール及びジメチルカーボナートの混合物を共に蒸留により除去した。次に、圧力を10トルまで更に低下させて、5時間反応させた。反応終了後、生成物を室温まで冷却して、ポリカーボナートジオールが得られた。合成例1のポリカーボナートジオールは、重量が1055g、水酸基価が54.19mgKOH/gであった。
【0068】
[合成例2]
以下の原料:ジメチルカーボナート829g、1,4-ブタンジオール312g、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール477g、3-メチル-1,5-ペンタンジオール57g、及びチタンテトラブトキシド(触媒)0.24gを代わりに用いたことを除いて、合成例1の調製手順により、合成例2のポリカーボナートジオールを調製した。合成例2のポリカーボナートジオールは、重量が1032g、水酸基価が54.77mgKOH/gであった。
【0069】
[合成例3]
以下の原料:ジメチルカーボナート745g、1,4-ブタンジオール120g、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール759g、3-メチル-1,5-ペンタンジオール30g、及びチタンテトラブトキシド(触媒)0.15gを代わりに用いたことを除いて、合成例1の調製手順により、合成例3のポリカーボナートジオールを調製した。合成例3のポリカーボナートジオールは、重量が1108g、水酸基価が55.75mgKOH/gであった。
【0070】
[合成例4]
以下の原料:ジメチルカーボナート1046g、2-メチル-1,3-プロパンジオール451g、1,4-ブタンジオール267g、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール81g、及びチタンテトラブトキシド(触媒)0.14gを代わりに用いたことを除いて、合成例1の調製手順により、合成例4のポリカーボナートジオールを調製した。合成例4のポリカーボナートジオールは、重量が975g、水酸基価が55.59mgKOH/gであった。
【0071】
[合成例5]
以下の原料:ジメチルカーボナート1155g、2-メチル-1,3-プロパンジオール101g、1,4-ブタンジオール692g、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール90g、及びチタンテトラブトキシド(触媒)0.19gを代わりに用いたことを除いて、合成例1の調製手順により、合成例5のポリカーボナートジオールを調製した。合成例5のポリカーボナートジオールは、重量が1077g、水酸基価が57.18mgKOH/gであった。
【0072】
[合成例6]
以下の原料:ジメチルカーボナート1120g、2-メチル-1,3-プロパンジオール50g、1,4-ブタンジオール390g、ネオペンチルグリコール451g、及びチタンテトラブトキシド(触媒)0.19gを代わりに用いたことを除いて、合成例1の調製手順により、合成例6のポリカーボナートジオールを調製した。合成例6のポリカーボナートジオールは、重量が1086g、水酸基価が54.41mgKOH/gであった。
【0073】
[合成例7]
以下の原料:ジメチルカーボナート1124g、2-メチル-1,3-プロパンジオール110g、1,6-ヘキサンジオール367g、ネオペンチルグリコール519g、チタンテトラブトキシド(触媒)0.18gを代わりに用いたことを除いて、合成例1の調製手順により、合成例7のポリカーボナートジオールを調製した。合成例7のポリカーボナートジオールは、重量が1215g、水酸基価が57.01mgKOH/gであった。
【0074】
[合成例8]
以下の原料:ジメチルカーボナート734g、1,6-ヘキサンジオール185g、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール713g、3-メチル-1,5-ペンタンジオール30g、及びチタンテトラブトキシド(触媒)0.31gを代わりに用いたことを除いて、合成例1の調製手順により、合成例8のポリカーボナートジオールを調製した。合成例8のポリカーボナートジオールは、重量が1132g、水酸基価が54.98mgKOH/gであった。
【0075】
[合成例9]
以下の原料:ジメチルカーボナート695g、2-メチル-1,3-プロパンジオール48g、1,4-ブタンジオール32g、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール809g、及びチタンテトラブトキシド(触媒)0.24gを代わりに用いたことを除いて、合成例1の調製手順により、合成例9のポリカーボナートジオールを調製した。合成例9のポリカーボナートジオールは、重量が1084g、水酸基価が55.16mgKOH/gであった。
【0076】
[合成例10]
以下の原料:ジメチルカーボナート618g、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール609g、3-メチル-1,5-ペンタンジオール184g、及びチタンテトラブトキシド(触媒)0.23gを代わりに用いたことを除いて、合成例1の調製手順により、合成例10のポリカーボナートジオールを調製した。合成例10のポリカーボナートジオールは、重量が967g、水酸基価が54.42mgKOH/gであった。
【0077】
[合成例11]
以下の原料:ジメチルカーボナート720g、1,4-ブタンジオール17g、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール871g、3-メチル-1,5-ペンタンジオール74g、及びチタンテトラブトキシド(触媒)0.26gを代わりに用いたことを除いて、合成例1の調製手順により、合成例11のポリカーボナートジオールを調製した。合成例11のポリカーボナートジオールは、重量が1173g、水酸基価が54.88mgKOH/gであった。
【0078】
[比較合成例1]
チタンテトラブトキシド(触媒)0.15g並びに以下の反応物:ジメチルカーボナート830g、及び1,6-ヘキサンジオール836gを精留塔、スターラー、温度計及び窒素注入管を備えた丸底ガラスフラスコに添加した。その後、反応物を標準圧及び窒素通気下で撹拌して、エステル交換反応を8時間実施し、同時にメタノール及びジメチルカーボナートの混合物を共に蒸留により除去した。
エステル交換反応中、反応温度を95℃から180℃までゆっくりと上昇させ、蒸留物の構成をメタノール及びジメチルカーボナートの共沸構成に変化させた。その後、圧力をゆっくりと100トルまで低下させ、180℃で撹拌することによりエステル交換反応を1(一)時間更に実施し、同時にメタノール及びジメチルカーボナートの混合物を共に蒸留により除去した。次に、圧力を10トルまで更に低下させて、5時間反応させた。反応終了後、生成物を室温まで冷却して、ポリカーボナートジオールが得られた。比較合成例1のポリカーボナートジオールは、重量が1022g、水酸基価が56.48mgKOH/gであった。
【0079】
[比較合成例2]
以下の原料:ジメチルカーボナート1113g、1,4-ブタンジオール813g、及びチタンテトラブトキシド(触媒)0.20gを代わりに用いたことを除いて、合成例1の調製手順により、比較合成例2のポリカーボナートジオールを調製した。比較合成例2のポリカーボナートジオールは、重量が991g、水酸基価が57.32mgKOH/gであった。
【0080】
[比較合成例3]
以下の原料:ジメチルカーボナート660g、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール904g、及びチタンテトラブトキシド(触媒)0.19gを代わりに用いたことを除いて、合成例1の調製手順により、比較合成例3のポリカーボナートジオールを調製した。比較合成例3のポリカーボナートジオールは、重量が1102g、水酸基価が55.47mgKOH/gであった。
【0081】
[比較合成例4]
以下の原料:ジメチルカーボナート681g、1,4-ブタンジオール21g、ネオペンチルグリコール194g、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール596g、及びチタンテトラブトキシド(触媒)0.18gを代わりに用いたことを除いて、合成例1の調製手順により、比較合成例4のポリカーボナートジオールを調製した。比較合成例4のポリカーボナートジオールは、重量が989g、水酸基価が54.93mgKOH/gであった。
【0082】
[比較合成例5]
以下の原料:ジメチルカーボナート827g、1,4-ブタンジオール355g、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール476g、及びチタンテトラブトキシド(触媒)0.24gを代わりに用いたことを除いて、合成例1の調製手順により、比較合成例5のポリカーボナートジオールを調製した。比較合成例5のポリカーボナートジオールは、重量が1013g、水酸基価が55.53mgKOH/gであった。
【0083】
[比較合成例6]
以下の原料:ジメチルカーボナート950g、1,6-ヘキサンジオール920g、及びチタンテトラブトキシド(触媒)0.12gを精留塔、スターラー、温度計及び窒素注入管を備えた丸底ガラスフラスコに添加した。その後、これらの原料を標準圧及び窒素通気下で撹拌して、エステル交換反応を8時間実施し、同時にメタノール及びジメチルカーボナートの混合物を共に蒸留により除去した。
エステル交換反応中、反応温度を95℃から150℃までゆっくりと上昇させ、蒸留物の構成をメタノール及びジメチルカーボナートの共沸構成に変化させた。その後、圧力をゆっくりと100トルまで低下させ、エステル交換反応を撹拌及び150℃下で1(一)時間更に実施し、同時にメタノール及びジメチルカーボナートの混合物を共に蒸留により除去した。次に、圧力を10トルまで更に低下させて、5時間反応させた。反応終了後、生成物を室温まで冷却して、ポリカーボナートジオールが得られた。比較合成例6のポリカーボナートジオールは、重量が1122g、水酸基価が52.41mgKOH/gであった。
【0084】
合成例1~11及び比較合成例1~6におけるポリカーボナートジオールのH-NMRスペクトルを上記試験方法に従って評価した。積分値D及び積分値Aの比(D/A)、並びに1000を乗じた積分値F及び積分値Aの比((F×10)/A)を計算し、結果を表1にまとめた。表1において、合成例8における積分値F及び積分値Aの比として「N.D」と示しているが、これは、機器が3.70ppmから3.85ppmの任意のシグナルを検出できないため、積分値Fを計算できないことを意味する。
【0085】
【表1】
【0086】
3.3.ポリウレタンの調製
合成例1~11及び比較合成例1~6におけるポリカーボナートジオールを用いて、対応する実施例1~11及び比較例1~6のポリウレタンを調製した。調製方法を以下に記載する。まず、0.1molのポリカーボナートジオールを予め70℃に加熱した。次に、予熱した0.1molのポリカーボナートジオール、0.2molの1,4-ブタンジオール、ジラウリン酸ジブチルスズ1(一)滴、及びジメチルホルムアミド(溶媒)600gをセパラブルフラスコに添加し、各成分が溶媒に溶解するように55℃で均一に撹拌した。その後、0.3molのメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)をフラスコに添加し、80℃で8時間反応させて、固形分30%のポリウレタン溶液が得られた。ポリウレタン溶液をドクターブレードでポリエチレンフィルムに塗布した後、80℃で乾燥させてポリウレタンフィルムを得た。
【0087】
実施例1~11及び比較例1~6におけるポリウレタンの100%モジュラス、引張強度、耐摩耗性及び透過率を含む性質を上記試験方法に従って評価し、結果を表2に列挙する。
【0088】
【表2】
【0089】
表2に示すように、本願のポリカーボナートジオールから調製される各ポリウレタンは、優れた機械的強度、良好な耐摩耗性、及び少なくとも80%の透過率を備える。具体的に、実施例1~11は、ポリカーボナートジオールのH-NMRスペクトルから得られる積分値D及び積分値Aの比(D/A)が指定範囲内でありさえすれば、ジオールの種類に関わらず、調製されたポリウレタンが優れた機械的強度、良好な耐摩耗性、及び少なくとも80%の透過率を有することが可能であることを示す。
【0090】
一方、表2に示すように、本願のポリカーボナートジオール以外のポリカーボナートジオールを用いて調製されるポリウレタンは、優れた機械的強度、良好な耐摩耗性、及び少なくとも80%の透過率を同時に有さない。
比較例1、2、及び6については、ポリカーボナートジオールのH-NMRスペクトルから得られる積分値D及び積分値Aの比(D/A)が指定範囲より低い場合、調製されたポリウレタンは80%未満の透過率及び不十分な耐摩耗性を有することを示す。比較例3及び4については、ポリカーボナートジオールのH-NMRスペクトルから得られる積分値D及び積分値Aの比(D/A)が指定範囲より高い場合、これから調製されたポリウレタンは引張強度が不十分であることを示す。また、比較例5及び6については、ポリカーボナートジオールのH-NMRスペクトルから得られる積分値F及び積分値Aの比(F/A)が指定値より高い場合、調製されたポリウレタンは引張強度が不十分であることを示す。
【0091】
上記実施例は、本願の原理及び効果を説明し、その発明の特徴を示すのに用いられるが、本願の範囲を限定しない。当業者は本発明の原理及び趣旨から逸脱することなく、記載する本発明の開示及び示唆に基づき、様々な変更及び置換えを行うことができる。従って、本願の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に定義される通りである。