(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039911
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】眼鏡補正方法と眼鏡補正用測定装置と眼鏡
(51)【国際特許分類】
G02C 7/10 20060101AFI20220303BHJP
G02C 13/00 20060101ALI20220303BHJP
A61B 3/06 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
G02C7/10
G02C13/00
A61B3/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021014033
(22)【出願日】2021-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2020142805
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】394019543
【氏名又は名称】株式会社ホプニック研究所
(71)【出願人】
【識別番号】503164487
【氏名又は名称】池田 順治
(74)【代理人】
【識別番号】100155550
【弁理士】
【氏名又は名称】田嶋 諭
(72)【発明者】
【氏名】松田 隼己
(72)【発明者】
【氏名】冨山 晃義
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 則彦
(72)【発明者】
【氏名】池田 順治
【テーマコード(参考)】
2H006
4C316
【Fターム(参考)】
2H006BE05
2H006DA05
4C316AA14
4C316AA19
4C316AA21
4C316AA30
4C316AB06
4C316FC21
4C316FC28
4C316FY02
4C316FY10
(57)【要約】
【課題】測定することより対象者に適した眼鏡を提供するための眼鏡補正方法と眼鏡補正用測定装置を提供すること。
【解決手段】照明の光の波長を変化させて視覚を測定する測定工程と、上記視覚の測定結果から眼鏡に付着させる付着膜を選定する選定工程と、上記付着膜を上記眼鏡に形成させる付着工程と、を有する眼鏡補正方法を用いる。また、複数の対象物を見せて色覚と、上記対象物の色数値とを測定する測定工程と、上記視覚の測定結果から眼鏡に付着させる付着膜を選定する選定工程と、上記付着膜を上記眼鏡に形成させる付着工程と、を有する眼鏡補正方法を用いる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明の光の波長を変化させて視覚を測定する測定工程と、
前記視覚の測定結果から眼鏡に付着させる付着膜を選定する選定工程と、
前記付着膜を前記眼鏡に形成させる付着工程と、を有する眼鏡補正方法。
【請求項2】
複数の対象物を見せて色覚と、前記対象物の色数値とを測定する測定工程と、
前記視覚の測定結果から眼鏡に付着させる付着膜を選定する選定工程と、
前記付着膜を前記眼鏡に形成させる付着工程と、を有する眼鏡補正方法。
【請求項3】
前記測定工程での照明は、使用場所に応じた照明である請求項2記載の眼鏡補正方法。
【請求項4】
前記測定工程は、目の動きの測定を行なう請求項1または3のいずれか1項に記載の眼鏡補正方法。
【請求項5】
前記測定工程は、脳波または脳血流の測定を行なう請求項1から3のいずれか1項に記載の眼鏡補正方法。
【請求項6】
前記測定工程で、複数の光の波長に対して行い、前記波長は、430~770nmの範囲を超えて測定する請求項1に記載の眼鏡補正方法。
【請求項7】
前記付着膜は、前記測定工程の結果を反映し、ある波長領域で吸収率を、他の波長領域より増加させる膜である請求項1~6のいずれか1項に記載の眼鏡補正方法。
【請求項8】
前記付着工程は、前記付着膜の外形を加工し、眼鏡のレンズへ貼り付ける請求項1~7のいずれか1項に記載の眼鏡補正方法。
【請求項9】
前記付着工程は、液を眼鏡のレンズへ塗布し、前記付着膜を形成する請求項1~7のいずれか1項に記載の眼鏡補正方法。
【請求項10】
薬局又は眼鏡販売店で、照明の波長を変化させて視覚を測定する、又は、複数の対象物を見せて色覚と、前記対象物の色数値とを測定する測定工程と、
前記測定工程のデータを製造会社へ送信する送信エ程と、
前記製造会社で、前記データに応じた付着膜を選定する選定工程と、
前記選定工程の付着膜を眼鏡に形成する、又は、前記付着膜を、前記薬局又は前記眼鏡販売店へ送る付着工程と、を含む眼鏡補正方法。
【請求項11】
自宅で、インターネットを介して、照明の波長を変化させて視覚を測定する、又は、複数の対象物を見せて色覚と前記対象物の色数値とを測定する測定工程と、
前記製造会社で、前記想定工程のデータに応じた付着膜を選定する選定工程と、
前記選定工程の付着膜を眼鏡に形成する、又は、前記付着膜を、前記薬局又は前記眼鏡販売店へ送る付着工程と、を含む眼鏡補正方法。
【請求項12】
前記付着工程では、インクジェットにより、前記眼鏡のレンズに前記付着膜を形成する請求項1~11のいずれか1項に記載の眼鏡補正方法。
【請求項13】
さらに、測定工程の結果を経時的に記録する記録工程がある請求項1~12のいずれか1項に記載の眼鏡補正方法。
【請求項14】
対象者に測定画像を見させるデイスプレイと、
前記測定画像を操作する制御部と、
前記対象者の目の動きを検出する検出部と、
特定の光の波長を照射する照明部と、を有し、
前記測定画像を、複数の光の波長の下で、前記対象者に見させる眼鏡補正用測定装置。
【請求項15】
フレームと、
前記フレームに支えられた2つのレンズと、
前記レンズの表面に配置され、使用者の視覚に応じ、ある波長領域の吸収率が、他の波長領域より高い付着膜と、を含む眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡補正方法と眼鏡補正用測定装置と眼鏡とに関する。特に、眼鏡に付着膜を形成する眼鏡補正方法と、そのために目の測定をする眼鏡補正用測定装置とその結果できた眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、色付き眼鏡を作製する方法は、特許文献1,2などに記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-109442号公報
【特許文献2】特開2002-72155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、色付き眼鏡を作製するために、対象者に合わせた測定がされていなかった。
そこで、本願の発明の課題は、測定することより対象者に適した眼鏡を提供するための眼鏡補正方法と眼鏡補正用測定装置と眼鏡とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、照明の光の波長を変化させて視覚を測定する測定工程と、上記視覚の測定結果から眼鏡に付着させる付着膜を選定する選定工程と、上記付着膜を上記眼鏡に形成させる付着工程と、を有する眼鏡補正方法を用いる。
また、複数の対象物を見せて色覚と、上記対象物の色数値とを測定する測定工程と、上記視覚の測定結果から眼鏡に付着させる付着膜を選定する選定工程と、上記付着膜を上記眼鏡に形成させる付着工程と、を有する眼鏡補正方法を用いる。
【0006】
また、薬局又は眼鏡販売店で、照明の波長を変化させて視覚を測定する、又は、複数の対象物を見せて色覚と、上記対象物の色数値とを測定する測定工程と、上記測定工程のデータを製造会社へ送信する送信エ程と、上記製造会社で、上記データに応じた付着膜を選定する選定工程と、上記選定工程の付着膜を眼鏡に形成する、又は、上記付着膜を、上記薬局又は上記眼鏡販売店へ送る付着工程と、を含む眼鏡補正方法を用いる。
【0007】
また、自宅で、インターネットを介して、照明の波長を変化させて視覚を測定する、又は、複数の対象物を見せて色覚と、上記対象物の色数値とを測定する測定工程と、上記製造会社で、上記想定工程のデータに応じた付着膜を選定する選定工程と、上記選定工程の付着膜を眼鏡に形成する、又は、上記付着膜を、上記薬局又は上記眼鏡販売店へ送る付着工程と、を含む眼鏡補正方法を用いる。
【0008】
対象者に測定画像を見させるデイスプレイと、上記測定画像を操作する制御部と、上記対象者の目の動きを検出する検出部と、特定の光の波長を照射する照明部と、を有し、上記測定画像を、複数の光の波長の下で、上記対象者に見させる眼鏡補正用測定装置を用いる。
フレームと、上記フレームに支えられた2つのレンズと、上記レンズの表面に配置され、使用者の視覚に応じ、ある波長領域の吸収率が、他の波長領域より高い付着膜と、を含む眼鏡を用いる。
【発明の効果】
【0009】
本願発明の眼鏡補正方法と眼鏡補正用測定装置では、対象者の個々人の視覚にあった眼鏡を実現できる。また、視力を補正した現在所有の眼鏡に対して補正ができる。
本願発明の個々人に合った視覚補正された眼鏡により、コントラスト感度向上、色覚能力向上、不快グレア感低減の補正を可能にできる。また、視覚補正レンズとして提供することで、あらゆる年齢の人々の日常生活の質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)~(b)実施の形態1の対象者に見せる画像、(c)~(d)実施の形態1の目の位置を示す図、(e)~(f)実施の形態1の対象者に見せる画像
【
図2】(a)実施の形態1の測定結果から決定された波長と吸収率の関係を示す図、(b)実施の形態1で用いる吸収材料の吸収特性
【
図3】(a)従来の眼鏡の断面図、(b)実施の形態1の眼鏡の断面図
【
図4】(a)実施の形態2の測定装置の断面を示す図、(b)実施の形態2の測定装置のデイスプレイを示す図、(c)実施の形態2の測定装置での測定結果示す図
【
図6】実施の形態4の測定装置の人の部分を示す側面図
【
図8】(a)実施の形態6の測定装置の断面図、(b)~(c)実施の形態6の測定装置のデイスプレイの画像の正面図
【
図10】実施の形態6の色彩計の付着膜の特性を示す図
【
図11】実施の形態6の色彩計のデータ変換を示す図
【
図13】実施の形態8の眼鏡が製造されるシステムを示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を用いて説明するが、発明は以下には限定されない。
<視覚の定義>
視覚とは、視力も含め、コントラスト感度、又は、色覚能力、又は、グレア感、又は、それらの組み合わせなど広い概念であり、目でモノを見る時の感覚である。グレア感とは、不快感や物の見えづらさを生じさせるような「まぶしさ」のことである。グレアとなりうるか否かは、照明とその周辺との明るさのバランスなどに依存する。そこで、照明の光の波長を変えた時の見え方を、波長覚として、実施の形態1で扱う。
【0012】
また、コントラスト感度は、対象物の色の識別力である色覚に依存する。色覚として、実施の形態6で扱う。
<付着膜の定義>
付着膜は、フィルム、または、膜であり、付着固定するものだけでなく、シート状で取り外しできるものも含む。
【0013】
(実施の形態1)照明の波長を変えて測定(波長覚)
実施の形態1を、まず、
図1で説明する。実施の形態1では、照明の光の波長に対する視覚(波長覚)を検討する。日常の生活の中で、視覚は、照明など、その場の光の波長の影響を大きく受ける。従来は、単に、対象物の色に対して、色覚能力があるかを測定されていた。この実施の形態では、照明の光の波長(色)を変えて、対象物が見えるかどうかを測定する。つまり、光の波長を変えて、対象物からの反射に対しての見え方の評価である。より実生活に近い測定である。
【0014】
実施の形態1の眼鏡補正方法は、眼鏡に付着膜を張り付ける、または、付着膜を単体で形成する方法である。実施の形態1の眼鏡補正方法は、以下を含む。
(1)照明の光の波長を変化させて、波長覚を測定する(測定工程)。
(2)波長覚の測定結果から眼鏡に付着させる付着膜を選定する(選定工程)。
(3)付着膜を眼鏡に付着させる(付着工程)。
上記工程を有する眼鏡補正方法である。
【0015】
以下でそれぞれを説明する。
(1)測定工程
<測定(1)>
波長覚を測定する方法としては、ある波長の照明(光)で照らされた下で、目の動きの測定を行なう。さらに、目の動きを、複数の光の波長ごとに測定する。
対象者の目の動きを、各波長毎に、測定し、目の動きの速度に応じて、ランク付けする。
【0016】
目の動きを測定する方法を
図1(a)~
図1(d)で説明する。
図1(a)の画像15(マーク10)を対象者に見せる。この時の対象者の目11は、
図1(c)である。その後、マーク10が移動した
図1(b)の画像15を対象者に見せる。対象者の目11は、
図1(d)となる。
【0017】
この時、
図1(c)から
図1(d)へ目11が移動する速度を測定する。
照明(周辺)の光の波長(300nm~1000nmまで)を変化させて、上記目11の移動速度を測定する。目11の移動速度が遅いと、その波長に対して、波長覚が弱っている。少なくとも、400nm~900nmの範囲の波長の光の下で、20~50nm波長幅ごとに測定する。この波長幅は、以下で説明する吸収材料の吸収する波長幅である。
測定装置としては、ジャパンフォーカス株式会社のアイナック(商標)を使用できる。他の装置でもよい。
【0018】
なお、各色の波長は、青(430-490nm)、緑(490-550nm)、黄(550-590nm)、橙(590-640nm)、赤(640-770nm)であるが、今回の光の波長は、430~770nmの範囲を超えて測定する。これは、自然光の波長を考慮するためである。また、色自体の見方を測定するのではなく、照射される光の波長の下での見え方に対して評価する。
なお、測定(1)に限定されず、以下の別の測定方法でもよい。
【0019】
<測定(2)>
別の方法として、複数の各波長に対して、画像を対象者に見せ、脳血流測定(NIRS)を測定する方法も利用できる。目の動きで脳血流の信号が変化する。その結果に応じて、各波長での波長覚を評価する。
図6の実施の形態4で、詳細に説明する。脳波を測定してもよい。照明の光の波長は、測定(1)と同等とできる。
【0020】
<測定(3)>
上記波長ごとに以下の方法で測定してもよい。測定(1)と同様に目11の動きを測定する。
眩目反射:急に強い光を目に当てることで眼をつむる速度を見る測定をする。眼の光への反射を測定できる。眼をつむる速度で判定できる。
対光反射:強い光を目に当てたときの瞳孔の移動速度を測定する。光に反応がなければ、瞳孔は動かない。瞳孔の動きの速度で判定できる。対光反射とは、瞳孔反射の一つで瞳孔の直径を光の強さにより変化させ、網膜に届く光の量を調節する反射である。それにより様々な明るさに対し網膜を適応させる。強い光に対して瞳孔は小さくなるのに対し、弱い光では瞳孔は大きくなる。つまり対光反射は瞳に入る光の量を調節している。
【0021】
<測定の全体として>
なお、上記測定では、通常の視力検査(開口の方向の認識試験)で矯正した眼鏡をかけて実施する。そして、その眼鏡、または、別に作製した眼鏡に、以下で付着膜を形成、または、張り付ける。
図1(e)に、対象者に見せる画像の例を示す。
図1(e)では、ラインの間隔が右ほど狭くなっている。どこまで、ラインとして見えるかで評価してもよい。コントラストの評価に対応できる。
【0022】
図4(a)~
図4(c)で説明するが、スポット照明により、対象者の目に点光源の照明を照射して上記測定をしてもよい。グレアの評価により対応できる。
図1(f)に、対象者に見せる画像の例を示す。
図1(f)では、複数の丸印がある。1つを点灯、又は、表示、又は、色、模様を変える。対象者をその丸印を見るので、対象者の目の動きを評価できる。上記測定(1)(
図1(a)~
図1(d)と同様に)で使用できる。
測定は上記の少なくとも1つ以上する。
【0023】
(2)選定工程:上記波長覚の測定結果から眼鏡に付着させる付着膜を選定し作製する選定工程について、
(1)での測定結果から、波長ごとに吸収率を決定する。その吸収率に応じて、眼鏡に付着させる付着膜の組成や厚さなどを決定する。そして、その組成の材料で、付着膜を作製する。または、眼鏡に膜形成する。
【0024】
1つの例として、(1)の目の移動速度(測定(1))から、6段階として、吸収率を0、20,40,60,80、100%となる。目の移動速度が遅いと高い吸収率、早いと低い吸収率に、補正することができる。
【0025】
図2(a)に、(1)の測定結果から決定されたその例を示す。(1)の測定の結果、ある波長(450,675nm)で、目の移動速度が遅い場合、その波長の光を吸収させるようにする。この場合、450nm、750nmの波長の光を、それぞれ20,60%の吸収率にする。それぞれの波長を吸収する材料の量を上記吸収率に基づき決定する。その吸収材料を含む付着膜を作製し、レンズに張り付ける。または、レンズに吸収材を含むインクを塗布して、付着膜を形成してもよい。
【0026】
<波長と機能>
ここで、各波長領域をカットした場合の効果ついて説明する。
1:400nm~2:420nm付近の光ついて
LED特有の高エネルギー光付近で眩しさを感じる。黄斑まで到達することで眼の負荷が大きいためである。眩しさを抑え、視力低下を抑制することができる。
3:450nm付近の光について
いわゆるブルーライト域で睡眠に影響を及ぼすため、眩しさを抑制し、S錐体の極大、S・L錐体交差部付近カットにより青色減、黄色を強調させることができる。
【0027】
4:470nm付近
M・L錐体交差部付近カットにより青色減少させ、赤・緑・黄色を強調させることができる。
5:500nm付近
S・M錐体交差部付近カットにより、青・緑色を強調させることができる。
6:530nm付近
M錐体極大付近カットにより、眩しさを抑え、青・赤を強調させることができる。
7:550nm付近、580nm付近(ネオコントラスト)
M・L錐体交差部付近カットにより眩しさを抑え、緑・赤色を強調させることができる。
8:600nm付近
L錐体極大付近カットにより、青・緑色を強調させることができる。
9:700nm付近
赤外線による網膜の炎症を防ぐことができる。近赤外域カットにより青・緑色を強調させることができる。
【0028】
今回の場合、450nm、750nmの光をカットしているので、眩しさを抑制し、青色減、黄色を強調させることができる。また、赤外線による網膜の炎症を防ぐことができる。近赤外域カットにより青・緑色を強調させることができる。
なお、目の移動速度からレベルを設定したが、脳血流測定、または、脳波測定から、レベルを設定してもよい。
【0029】
<付着膜の形成>
図2(a)と
図2(b)で、付着膜の形成を説明する。カットする波長に応じた色素材を、樹脂に混ぜ、ペーストとして、付着膜を形成する。または、そのペーストで眼鏡に付着膜を形成する。たとえば、特許第4767177号、第3843394号、第577819号の材料、形成方法を使用できる。
山田化学工業株式会社の吸収材料(色素材)を用いることができる。300nm~1000nmで20~50nm波長幅ごとに材料がある。20~50nmの波長幅の領域で、光を吸収する付着膜が形成できる。
図2(b)に示すような吸収材料を用いることができる。
図2(b)では、2つの吸収材料の吸収特性を示している。半値幅が、20~50nmの波長幅のものを用いるのが好ましい。このことで正確に、ある波長の光をカットできる。
【0030】
吸収率を高くするには、色素材を多く入れる。吸収率を低くするには、色素材を少なく入れるとよい。
ただし、あらかじめ、各波長をカットする付着膜をシート状に形成し、それらを眼鏡に張り付けてもよい。複数枚の付着膜を積層してもよい。
必要な複数の吸収材料を溶剤と混ぜ、1枚の付着膜として、それをレンズに張り付けてもよい。
【0031】
(3)付着工程:付着膜を眼鏡へ付着する付着工程
付着工程を
図3(a)、
図3(b)で説明する。付着工程は、付着膜の外形を加工し、眼鏡へ付着膜を貼り付ける。または、インクやペーストをレンズに塗布して、レンズの表面に付着膜を形成する。視力がよく眼鏡をしない人は、度のない眼鏡に付着膜を形成する。
【0032】
図3(a)は、従来の眼鏡のレンズの断面図である。
図3(b)は、実施の形態のレンズ31の断面図である。レンズ31に付着膜32を形成している。
付着膜32をレンズ31に付着されるには、熱可塑性の付着膜の附形技術(特許第6203987号を用いることができる。金型と非接触加熱の真空・加圧の圧力差により付着膜32を附形し、金型の転写でなく光学的に優れた球面の3次元附形付着膜の製造を可能にする技術である。
【0033】
波長覚を補正する付着膜を別途作製し、非接触による3次元附形を行った後、レンズ31に被覆する際に、付着膜・レンズの片方もしくは両方からシリコン、ゴム等の柔軟素材で印圧する。囲まれた空間内で付着膜を介して真空、加圧状態をつくりだし付着膜の表層からレンズ側に対し加圧被覆するもしくは真空により付着膜をレンズ31に真空被覆することにより、付着膜32のレンズ被覆化を実現できる。
【0034】
<効果>
(1)照明の光を変えて、対象物の見え方を測定するので、対象者の個々人の波長覚にあった眼鏡ができる。
(2)眼鏡に付着膜を形成するので、通常の視力を補正した現在所有の眼鏡に対して、波長覚の補正ができる。
【0035】
(3)実施の形態の個々人に合った波長覚が、補正された眼鏡により、まぶしいと感じる波長の光をカットできる。その結果、グレア感の低減ができる。
あらゆる年齢の人々の日常生活の質を向上させることができる。
特に、年齢が進むにつれて、ある波長領域の光に影響を受けやすく、その影響を実施の形態1(
図1(a)~
図3(b))の方法で防げることができる。
【0036】
(実施の形態2)測定装置
実施の形態2として、目の波長覚を測定する測定装置40を
図4(a)に示す。説明しない事項は、上記実施の形態と同じである。
測定装置40は、対象者22に測定画像を見させるためのデイスプレイ24と、上記測定画像を操作する制御部25と、対象者22の目の動きを検出する検出部としてのカメラ21と、特定波長の光を放出できる照明23と、を含み、上記測定画像を、複数の光の波長を変更しつつ、対象者22に見せ、その見え方を測定する眼鏡測定装置である。
【0037】
照明23には、さらに、スポット照明23cを設けるとよい。グレアの評価として用いることができる。スポット照明23cは、点光源の照明である。例えば、LED電球を用いることができる。光の波長は、照明23と合わせる。
照明23は、ケイエルブイ株式会社が販売、Isteq社製造の波長可変照明XWS-M(190nm~2500nm)を使用できる。波長を変化できる。特定の波長の光を出すため、他の波長の光をカットしてもよい。
【0038】
デイスプレイ24は、対象者へ見せるマーク10(
図1(a)、
図1(b)など)を表示する。
制御部25は、マーク10の移動など、デイスプレイ24を制御する。また、カメラ21なども制御する。
【0039】
カメラ21は、対象者22の目の動き(
図1(c)、
図1(d)など)を撮影し目の移動速度を制御部25で計算する。赤外線カメラを利用できる。
なお、目の移動速度からレベルを設定したが、カメラ21を使用せず、脳血流測定から、レベルを設定してもよい。
【0040】
測定装置40で、測定画像を、複数の光の波長の下で、対象者22に見させ、測定する。
実施の形態1で説明したように、照明の波長ごとにレベルを決定できる。そして、付着膜の作製ができる。波長ごとに、対象者の個々人に適合した測定ができる。
<別の例>
別の例を
図4(b)で説明する。上記では、目の動き、まぶたの動きを測定するものであった(実施の形態1の測定(1)、測定(3)、
図1(a)~
図1(d)、
図1(f))。この例では、表示を見比べて、目の評価をする。
【0041】
図4(b)に、デイスプレイ24の正面図を示す。左右で分けて、それぞれにそれぞれの照明23a、23bから異なる波長の光を照射する。左右のマーク10の見やすさで目を評価する。人の感覚で評価してもよいし、測定(2)(
図6)のように、脳波を測定して評価してもよい。マーク10は、表示以外のマークでもよい。
たとえば、左に300nmの光を照射し、右に375nmの光を照射する。両者を比較して見えやすさを評価する。次に、左を固定し、右の光の波長を75nmずつ大きくしてゆき、右との対比を評価する。
【0042】
結果の例を
図4(c)にまとめる。◎は、波長300nmの時と同じレベルで見ることができる。〇は、波長300nmの時より少し見にくい。△は、波長300nmの時より見にくい。×波長300nmの時よりかなり見にくい。××は、波長300nmの時よりまったくみにくい。
結果、
図2(a)と同様の結果を得ることができる。
この方法は、実施の形態1の目を観察する方法と比較して、カメラ21が不要である。対象者22の心理的な本質的な意思を反映するので、より正確に測定できる。
【0043】
(実施の形態3)眼鏡
実施の形態3を
図5(a)、
図5(b)で説明する。
<張替可能>
実施の形態3は、上記の実施の形態に付け加えて、付着膜62を眼鏡53に張り付けるものである。説明しない事項は実施の形態1~2と同様である。説明しない事項は、上記実施の形態と同じである。
【0044】
図5(a)に実施の形態3の眼鏡53の斜視図を示す。実施の形態3の眼鏡53は、フレーム63と、上記フレーム63に支えられた2つのレンズ31と、レンズ31に使用者の波長覚に応じ、光の波長により吸収率が異なる、脱着可能な付着膜62と、を有する眼鏡53である。脱着可能な付着膜62は、太陽光、又は、LEDなどの光をカットする。
【0045】
この付着膜62は、シリコンなどを含み、脱着が可能である。上記実施の形態の付着膜62に、さらに、別の付着膜62を、その上から張り付けることができる。
例えば、ゴルフ、海などへ行く時に太陽の光がまぶしい時に、この付着膜62を眼鏡53に張り付けることもできる。太陽光線を吸収するファイル62である。脱着が可能なように、眼鏡53のレンズ31より一部が小さくなっている。使い捨てにしてもよい。再利用にしてもよい。
夜の自動車の運転者用に、LEDの光をカットした付着膜62を用いてもよい。
【0046】
<測定用>
別の例として、上記の測定工程において、その結果が正しいかどうか確認するための眼鏡55である。
その眼鏡55を、
図5(b)に示す。眼鏡55は、フレーム63と、フレーム63に保持される左右のレンズとを含む。レンズ64は、2重構造となっており、その2重構造の隙間65に複数毎の付着膜62を入れることができる。
付着膜62は、波長領域をカットできる約15種類ある。測定工程が終了し、その結果が正しいかどうかを調べるため、測定結果で、カットすべき波長に応じた付着膜62を選び、隙間65に入れる。眼鏡55をかけて、測定結果が正しいかを上記
図4(a)の測定装置40で確認できる。
【0047】
(実施の形態4)脳波測定
実施の形態4を
図6で説明する。
図4(a)の装置では、目の動きを測定していた。実施の形態4では、脳の働きを測定する。説明しない事項は実施の形態1~3と同様である。
図6は、
図4(a)の装置の対象者22の部分を示す側面である。説明しない事項は、
図4(a)と同様である。
【0048】
測定具71(
図6)の例は、株式会社プロアシストの脳波センサを利用できる。脳波の波形を測定できる。PGV株式会社の脳波センサでも同様に測定できる。株式会社リトルソフトウェアの生体情報(脳の情報)を測定するしくみも利用できる。
図6では、対象者22の目の動きを検出する検出部としてのカメラ21(
図4(a))が不要である。その代わりに、脳波を測定し、波長ごとの脳波を判断する。どの波長で脳波が異常となるかを判断する。
【0049】
図2と同様に、照明23(
図4(a))の各波長ごとに、脳波を測定し、変化を測定する。異常な波長を特定する。対象者22が見る対象物は、実施の形態1(
図1(a)、
図1(b)、
図1(e)、
図1(f))と同様でよい。他のものとして、文章、画像などでもよい。
その後は、実施の形態1と同様である。
【0050】
<脳波の場合>
脳波は、以下の種類がある。
β波は、イライラしている時、心配している時、複雑な計算をしている時、いやな事をしている時、にでる。俗に、ストレス波とも言う。14~23Hzの脳波のことである。
α波は、3種類ある。α3は、せかせかした度合いで、12~13Hzの脳波である。α2は、何かに没頭している時、リラックスしている時、気分が良い時、心が安定していてアイデアがでやすい度合いであり、9~11Hzの脳波である。α1は、眠い度合いで、7~8Hzの脳波である。
【0051】
θ波は、まどろみ、浅い睡眠、夢見の状態。4~6Hzの脳波である。
対象者22の脳波を測定し、β波が大きくなった時は、見にくいと判断できる。一方、α波が大きい時は、よく見えていると判断できる。なお、α波とβ波の比で判断した方がよく明確に判断できる。
脳波以外に脳血流や、眼電位を測定してもよい。
【0052】
<脳血流の場合>
脳血流を測定してもよい。対象者22の脳血流を測定し、脳血流量が増えると、対象物がよく見えている。一方、脳血流量が減ると、対象物が見えにくくなると判断できる。
<眼電位の場合>
眼電位から目の動きがわかる。対象者22の眼電位の変化が速い時は、対象物がよく見えている、対象者22の眼電位の変化が遅い時は、対象物がよく見えていないと、判断できる。
【0053】
(実施の形態5)インクジェット
図7に実施の形態5の塗布装置88の側面図を示す。
この塗布装置88は、レンズ31にヘッド80a~80dからインクを塗布する装置である。説明しない事項は実施の形態1~5と同様である。
上記の実施の形態により、レンズ31に形成すべき膜が決定される。その膜をこの実施の形態6では、塗布装置88で形成する。
【0054】
<塗布装置(
図7)>
塗布装置88には、複数のヘッド80a~80dと、ヘッドを支えヘッド移動を可能とする軸84と、軸84の下部で、レンズ31を保持し、移動するステージ83と、ステージ83の下部でステージを移動可能にするレール82と、ヘッドの移動、インクからのインク吐出、ステージ83の移動などを制御する制御部85と、を含む。
【0055】
ステージ83は、レール82上の一方向へ移動可能であり、ヘッド80a~80dは、それと垂直方向に、軸84に沿って移動可能である。
結果、ステージ83上にセットされたレンズ31の上面に、ヘッド80a~80dからインクを吐出できる。なお、軸84か、レール82などに上下機構を設けると、ヘッド80a~80dとレンズ31との間隔を変更できる。
【0056】
または、ヘッドを2方向、レール82を上下方向へ移動可能にしてもよい。
ヘッド80a~80dには、異なるインクが保持され、レンズ31へ塗布される。
インクは、吸収材料と溶剤と樹脂との混合物を用いることができる。樹脂としてUV硬化樹脂を用いて、インク塗布後、UV光照射で硬化させるのが好ましい。短時間で、レンズ31へ熱によるダメージを与えないためである。吸収率に従い重ねて塗布するとよい。
【0057】
<インク>
山田化学工業株式会社の吸収材料を用いることができる。吸収材料は、20~50nmごとに吸収する材料が存在する。400nm~1000nmの範囲で存在する。これらの吸収材料を溶剤に分散させ、上記塗布装置88で、または、塗布装置88のヘッド80a~80dをデイスペンサーに変えて、レンズ31へ塗布する。
【0058】
<方法>
上記の実施の形態1(
図2(a)、
図2(b))の<付着膜の作製>で、カットすべき波長のインクを用いて塗布装置88で、レンズ31へ塗布する。
複数の波長領域をカットする場合、複数のインクを塗布する。積層構造となる。
【0059】
なお、複数の吸収材料を溶剤と混合し、デイスペンサーまたは上記塗布装置88で塗布してもよい。この場合、ヘッドは1つとなり、1層の付着膜32をレンズ31に形成する。その他のプロセスは、実施の形態1(
図1(a)~
図3(b))と同様である。
なお、レンズ31を用いず、ステージ83上に板上の基板を配置し、その上に上記インクを塗布し、付着膜を形成できる。付着膜を基板からはがし、単独のフィルムとして、眼鏡に張り付けることができる。
【0060】
(実施の形態6)色覚
図8(a)~
図12を用いて、実施の形態6を説明する。
上記の実施の形態では、主に、照明23の波長を変えて、波長覚の評価をした。しかし、照明の光の波長による特性以外に、対象物の色(波長)に関する色覚の問題も大きい。色覚は、コントラストの評価にも対応している。
眼鏡の製法、測定方法など、説明しない事項は、上記実施の形態と同様であり、また、上記の実施の形態を組み合わせることができる。
【0061】
<測定装置>
図8(a)に測定装置40の断面図を示す。
図4(a)、
図6と同様の測定装置である。違いを説明する。
1:色彩計72を有する。
色彩計72は、デイスプレイ24の表示を数値化する。色度と明度で数値化する。
図9に色度と明度の関係を示す。上下が明度Lで、断面が色度ab(色座標)である。
a軸、b軸は、色の方向を示しており、a軸+は赤方向、a軸-は緑方向、そしてb軸+は黄方向、b軸-は青方向を示している。数値が大きくなるに従って色あざやかになり、中心になるに従ってくすんだ色になる。色としては、Labで示す。Labは、Lは、Luminosity(明度)を意味する。a、bは色座標の値を示す。JIS Z 8729に規定されている。{\displaystyle {\sqrt {{\Delta L^{*}}^{2}+{\Delta a^{*}}^{2}+{\Delta b^{*}}^{2}}}}
【0062】
なお、上記の数値化は、一例であり、他の方式の数値化でもよい。
照明23や、デイスプレイ24の種類によりデイスプレイ24の表示の数字は変わるので、測定ごとにデイスプレイの表示を数値化するのが好ましい。
【0063】
2:照明23
照明23は、自然の光に類似するように、LED光を制御して照明とする。
ここで、一例として、LED光は、JIS Z 9112(蛍光ランプ・LEDの照明色及び演色性による区分)で定められているものを使用する。具体的には、相関色温度と呼ばれる数値で、電球色(2800K)、温白色(3500K)、白色(4200K),昼白色5000K)、昼光色(6500K)である。
実際の使用環境下での色覚を測定できる。人の生活空間、作業場所の照明に合わせることができる。照明23の範囲は、430~770nmの範囲を超えて測定できる。
【0064】
実際の使用例として、
1.アウトドアモード(晴天時、屋外での作業やスポーツ時を想定):昼光色(6500K)で測定する。
2.オフィスモード(一般的なオフィスでのデスクワーク時を想定):昼白色5000K)で測定する。
3.リビングモード(一般的なリビングルームでの読書やテレビ鑑賞時を想定):白色(4200K)で測定する。
4.サンセットモード(夕方の屋外および曇天時を想定):温白色(3500K)で測定する。
5.ナイトモード(夜間の屋外、ナイトドライブでの使用を想定):電球色(2800K)で測定する。
【0065】
標準の使用例としては、リビングモードの白色(4200K)で測定する。
複数の使用例として、照明23を変えて複数測定し、総合的に、眼鏡を作製してもよい。また、それぞれに応じた眼鏡を複数作製する。または、一方に合わせて1つの眼鏡を作製し、他方に合わせたレンズまたは、付着膜を、その眼鏡のレンズに貼る、または、レンズを交換してもよい。
【0066】
<方法>
(1)色覚を測定する(測定工程)。
(2)色覚の測定結果から眼鏡に付着させる付着膜を選定する(選定工程)。
(3)付着膜を眼鏡に付着させる(付着工程)。
ここで色覚とは、視力でなく、色度と明度との組み合わせなどである。
以下でそれぞれを説明する。
【0067】
(1)測定工程:視覚を測定する測定工程について、
色覚を測定する方法としては、ある波長の照明(光)を選択し、その照明23で照らされた下で、実施の形態1(
図1(a)~
図1(f))と同様にできる。例えば、目の動きの測定を行なう。または、脳波を観測するなどである。
照明23は、作業環境、または、補正したい環境に合わせてセットされる。例えば、夜間の車の運転での補正したい場合には、相関色2800Kの照明を利用する。野外で昼の作業が多い人は、6500Kの照明で評価する。夕方から夜の作業には、2800Kの照明で評価する。
【0068】
デイスプレイ24には、例えば、
図8(b)、又は、
図8(c)を用いることができる。
図8(b)は、デイスプレイ24を示す。デイスプレイ24には、マーク10と背景90とがある。両者間で色座標を少しずつ変化させ、測定する。例えば、表1のように、b値を変える。両者の差異がわかりにくい場合、そのb値の認識力が弱いとわかる。
同様にa値を変えたデイスプレイ24により評価をする。
なお、色覚の測定時に、色彩計72でデイスプレイ24の色座標を測定する。
【表1】
【0069】
図8(c)は、デイスプレイ24を示す。デイスプレイ24には、マーク10a~10gがある。マーク10a~10gへ進むにつれて色座標を少しずつ変化させている。隣接するマーク間で色の違いを認識できるかで測定する。点線で示されたマーク10cとマーク10d間で、色の違いがわかるかを測定する。色の例は、表2のように、b値を変える。両者の差異がわかりにくい場合、その時のb値の認識力が弱いとわかる。
同様にa値を変えたデイスプレイ24により評価をする。
【表2】
【0070】
なお、対象者22が、操作して、
図8(b)の場合、背景90に対して、最もあうマーク10を抽出することで、評価してもよい。
図8(c)の場合なら、マーク10a~10gで、最も変化がある場所、または、変化がない場所を抽出してもらうことで評価してもよい。対象者22が全体から自分の意志で抽出するのでより正確に測定できる。
【0071】
<色彩計72>
ここで、色彩計72として、株式会社パパラボの色彩計(特開2014-109562号公報)を使用するのが好ましい。
色彩計72は、
図10に示す通り、XYZ等色関数と等価な線形変換である三つの分光感度(S1(λ),S2(λ),S3(λ))に従って三つの画像情報として画像を撮像する撮像装置である。
【0072】
色彩計72の分光感度はルータ条件を満たすものであって、その分光感度(S1(λ),S2(λ),S3(λ))は、
図10に示す通り、XYZ等色関数から、負の値を持たず、単独ピークを持つ山形であり、それぞれの分光感度曲線のピーク値が等しく、かつ分光感度の曲線の重なりはできるだけ少なくするという条件から等価変換したものである。分光感度(S1(λ),S2(λ),S3(λ))は具体的には以下の特性を持つ。
【0073】
記
ピーク波長 半値幅 1/10幅
S1 582nm 523~629nm 491~663nm
S2 543nm 506~589nm 464~632nm
S3 446nm 423~478nm 409~508nm
上記の分光特性S1のピーク波長を580±4nm、分光特性S2のピーク波長を543±3nm、分光特性S3のピーク波長を446±7nmとして取り扱うこともできる。
三つの分光感度(S1(λ),S2(λ),S3(λ))は
図11を用いて求められるものである。分光特性自体についての詳細は特開2005-257827号公報を参照されたい。
【0074】
色彩計72は、撮影レンズと、この撮影レンズの後方に配置された三つの光学フィルタと、光学フィルタの後方に配置された撮像素子(CCD、CMOSなど)と、を備えている。色彩計72の三つの分光感度(S1(λ),S2(λ),S3(λ))は、光学フィルタの分光透過率と撮像素子の分光感度との積により与えられるものである。
この色彩計72によれば、従来のRGBカメラに対して、より広い色座標を測定できる。
図12は、色座標である。従来のRGBカメラでは、三角形の領域75しか測定できなかった。上記色彩計72では、広く人が認識できる領域74まで測定できる。
【0075】
(2)選定工程:上記色覚の測定結果から眼鏡に付着させる付着膜を選定し作製する選定工程
(1)での測定結果から、認識が弱い、明度、色度がわかる。明度の場合、全体の光吸収度を調整する。色度の場合、付着膜に使用する色素材料を調合する。例えば、
図9で、認識が弱い領域76がわかる。この場合、赤色の光が、緑色の光より吸収しない膜とする。つまり、緑色の染料を入れた膜を形成する。事前に計算で、使用する染料の波長からの計算の結果(波長と吸収率とのグラフ)で、吸収できる波長を確認できる。そして、その組成の材料で、付着膜を作製する。または、眼鏡に膜形成する。
【0076】
(3)は、上記実施の形態と同様である。
<確認、品質>
上記の実施の形態では、色覚の評価をし、眼鏡を作製する。しかし、その眼鏡で、正しく見えるか不明である。そこで、さらに品質確認工程があると好ましい。
上記の測定で、認識が弱い領域76があった場合、その領域76で、再度測定する。
この例では、上記測定で求められた結果にしたがった付着膜を付着された眼鏡、または、仮に、付着膜を眼鏡にセットされ、測定される。
なお、実施の形態1(
図4),実施の形態6(
図6)の少なくとも1方をするのがよい。
【0077】
(実施の形態7)記録
上記の実施の形態では、種々の方法で色覚、又は、波長覚を測定した。さらに上記測定の結果を記録する記録工程があることが好ましい。測定結果のデータを記録しておけば、次に、眼鏡を作製する場合に参考になる。
【0078】
年齢を重なるごとに、視力は、徐々に変化することがよくある。原則、悪い方向へ進行する。表3に例を示す。上記実施の形態での測定結果を年齢ごとに記録したデータである。例えば、70歳の時に、上記測定をする時、50、60歳のデータがあると、より簡単に評価ができる。
なお、補正する場合、新たに眼鏡を作る方法があるが、以前の眼鏡に付着膜をさらに重ねて張り付けることで、補正してもよい。色覚、波長覚の少なくともいずれかの測定結果を、記録するのが好ましい。
【0079】
【表3】
(実施の形態8)システム
実施の形態8のシステムを
図13で説明する。説明しない事項は、実施の形態1~7(
図1(a)~
図12)と同様である。実施の形態8は、眼鏡53が作製されるまでのシステムである。実施の形態1、6の測定工程、選定工程、付着工程を利用する。
対象者が患者41の場合、患者41は、医院43に相談する。医院43は、薬局44、又は、眼鏡販売店45を紹介する。
【0080】
対象者が、一般人42の場合、一般人42は、薬局44,眼鏡販売店45、インターネット46のいずれかへ相談する。
薬局44,眼鏡販売店45では、測定装置40を利用して、実施の形態1、6の測定工程を行う。その結果を、製造会社52へ送り、選定工程、付着工程を行い、眼鏡53を作製する。
インターネット46では、ネットを介して、製造会社52とやり取りする例である。この場合を以下に説明する。
【0081】
(1)測定工程
一般人42が、自宅などでネットを介して、製造会社52とやり取りする。例えば、ネットのサイトで、オンラインで測定工程を行う。
ネットを介して、測定する場合の例を以下で説明する。実施の形態1又は6の測定(1)~測定(3)を、ネットを介してする。実施の形態1の場合を説明する。
【0082】
<測定(1)>(
図1(a)~
図1(d))
測定(1)では、以下のように、測定する。
一般人42の部屋の照明を切り、環境を暗くする。デイスプレイ上で画像15(
図1(a)、
図1(b))を一般人42に見せる。別途用意したネットカメラで、一般人42の目の動き(
図1(c)、
図1(d))を、製造会社52側で測定する。照明の光の波長は、製造会社52で変える。ネットを介して、一般人42が自分のパソコンのデイスプレイを見ることで、
図4(a)と同様の状態を構築する。製造会社52は、ネットカメラで、一般人の目を観察する。
【0083】
<測定(2)>(
図6)
測定(2)では、以下のように測定する。
測定(1)の場合と同様、複数の各波長に対して、デイスプレイで画像を対象者、一般人42に見せ、脳血流測定(NIRS)、脳波などを測定する。測定具71は、別途、一般人42へ事前に郵送しておく必要がある。測定データを測定具71から、測定具71に保存し、測定具71が製造会社52に戻りしだい、データを取り出す。または、測定具71から、ブルーツース(商標)を介して、又は、ネットを介して、製造会社52へ測定データを送ってもよい。
【0084】
<測定(3)>((
図1(c)、
図1(d))
測定(3)は、測定(1)と同様である。
(2)選定工程(
図2(a)、
図2(b))と(3)付着工程(
図3)
製造会社52で、上記測定結果のデータに応じた付着膜32を決定し、上記眼鏡53に上記付着膜32を貼り付ける、または、眼鏡53に付着膜32を形成する。
眼鏡53を事前に製造会社52へ郵送しておく必要がある。
(4)上記形成工程でできた眼鏡53を一般人42へ送る。または、付着膜32を一般人42へ送り、一般人42が眼鏡に付着膜32を張り付ける。
【0085】
なお、実施の形態6の場合も同様である。対象者22は自宅などで、デイスプレイを通して、測定される。色彩計72など測定装置40は、製造会社52にある。製造会社52のオペレータが、操作する。
<効果>
実施の形態8では、実施の形態1の効果に加え、補正された眼鏡を、よりスムーズに提供することができる。
【0086】
(全体として)
上記の実施の形態は組み合わせすることができる。実施の形態は、それぞれ組み合わせることができる。測定では、実施の形態1と6の両方の測定をしてもよい。なお、上記は、目の病気を検査するものではない。目の視力を直すものでもない。医療行為ではない。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本願発明の眼鏡補正方法と眼鏡補正用測定装置と眼鏡は、眼鏡店、代理店などで実施できる。
【符号の説明】
【0088】
10 マーク
11 目
12a、12b 色マーク
15 画像
21 カメラ
22 対象者
23,23a、23b 照明
24 デイスプレイ
25 制御部
26 測定室
31 レンズ
32 付着膜
40 測定装置
41 患者
42 一般人
43 医院
44 薬局
45 眼鏡販売店
46 インターネット
51 代理店
52 製造会社
53、55 眼鏡
54 仕様
62 付着膜
63 フレーム
64 レンズ
65 隙間
71 測定具
72 色彩計
73 色座標
74、75 領域
76 認識が弱い領域
80a、80b、80c、80d ヘッド
82 レール
83 ステージ
84 軸
85 制御部
88 塗布装置
90 背景