(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039966
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】焼結鉱の製造方法および焼結鉱の製造設備
(51)【国際特許分類】
C22B 1/20 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
C22B1/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021103805
(22)【出願日】2021-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2020144514
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 博史
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA02
4K001CA33
4K001CA39
4K001CA42
4K001CA43
4K001GA10
(57)【要約】
【課題】粒度条件や成分の条件によらず、また、高度な操業管理を必要とすることなく、焼結工場での焼結原料装入層の通気性を改善して、焼結鉱の焼成速度を向上させることによって生産性に優れた焼結鉱の製造方法と製造設備を提案すること。
【解決手段】鉄含有原料、副原料および凝結材を配合して配合原料とする配合工程と、前記配合原料を造粒機にて造粒して造粒焼結原料を主とする装入原料とする造粒工程と、前記装入原料を焼結機に装入して点火を行う点火工程と、前記点火工程の後に、装入原料を焼結して焼結鉱を製造する焼結工程と、を経て焼結鉱を製造する方法において、前記造粒工程と前記点火工程との間に、前記装入原料の温度を測定する温度測定工程と前記装入原料を加熱装置にて加熱する加熱工程とを設け、前記温度測定工程で測定された前記装入原料の温度をもとに前記加熱装置にて該装入原料を加熱することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄含有原料、副原料および凝結材を配合して配合原料を得る配合工程と、
前記配合原料を造粒機にて造粒して造粒焼結原料を主とする装入原料を得る造粒工程と、
前記装入原料を焼結機に装入して点火をする点火工程と、
前記点火工程の後に、前記装入原料を焼結して焼結鉱を製造する焼結工程と、
を経て焼結鉱を製造する方法において、
前記造粒工程と前記点火工程との間に、前記装入原料の温度を測定する温度測定工程と前記装入原料を加熱装置にて加熱する加熱工程とを設けて、
前記温度測定工程で測定された前記装入原料の温度をもとに前記加熱装置にて該装入原料を加熱することを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【請求項2】
前記加熱工程では、前記装入原料の温度を所定範囲に維持するように加熱することを特徴とする請求項1に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項3】
前記配合工程での粉コークス量の調整を省略することを特徴とする請求項1または2に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項4】
前記加熱工程は、ドラムミキサーやロータリーキルンである回転式加熱装置を用いて加熱することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項5】
前記加熱装置による加熱は、前記装入原料の加熱装置入側温度よりもその出側の温度が10~50℃高くなるように行うことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項6】
前記加熱装置は、熱水、水蒸気、水蒸気を除く他の気体蒸気、高周波加熱から選ばれる1種以上の加熱媒体を用いることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項7】
鉄含有原料、副原料および凝結材を配合して配合原料とする配合機と、
前記配合原料を造粒機にて造粒し、造粒焼結原料を主とする装入原料とする造粒機と、
前記装入原料を焼結するための点火装置を備える焼結機とを有し、
さらに、前記造粒機と前記焼結機の点火装置との間に、前記装入原料の温度を測定する温度測定装置と前記装入原料を加熱する加熱装置とを配設して、
前記温度測定装置で測定された前記装入原料の温度をもとに、前記加熱装置にて該装入原料を予め加熱するようにしてなることを特徴とする焼結鉱の製造設備。
【請求項8】
前記加熱装置は、回転式装置であることを特徴とする、請求項7に記載の焼結鉱の製造設備。
【請求項9】
前記加熱装置は、熱水、水蒸気、水蒸気以外の気体、高周波加熱から選ばれる1種以上を供給して加熱するものであることを特徴とする、請求項7または8に記載の焼結鉱の製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結配合原料を造粒して得られる焼結用造粒原料を焼結機にて焼結する焼結鉱の製造方法と焼結鉱の製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄プロセスでは、高炉に装入される原料として焼結鉱が使われる。焼結鉱は、昨今の原料事情の変化により使用量が増える傾向にある。その焼結鉱は、一般にはドワイトロイド式焼結機(以下、単に「焼結機」という)等を用いて製造される。その焼結鉱の生産量は、焼結機に装入される焼結原料装入層(焼結ベッド)の通気性の影響を大きく受けることが知られている。というのも、焼結原料装入層の通気性が悪いと、該焼結原料装入層内を通過する風量の低下を招き、焼結原料の焼成速度が低下するからであり、その結果、焼結鉱生産量の低下を招くことになる。
【0003】
焼結機のパレット上に装入された焼結原料装入層の通気性を改善する技術としては、下記の特許文献1-3に記載された方法などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-169780号公報
【特許文献2】特開2019-123919号公報
【特許文献3】国際公開第2019/16788号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および特許文献2に記載された方法は、焼結配合原料を造粒機にて造粒して製造される焼結用造粒原料について、水分調整や予備加熱を通じて焼結原料装入層の通気性の改善や湿潤帯領域を抑制して焼結鉱生産量の向上や強度の向上を図る技術である。しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載されたこれらの特定の粒度、バインダー成分の下でしか効果を享受することができず、他の焼結配合原料の造粒にまでは対応しきれないケースがあった。
【0006】
また、特許文献3に記載された方法は、水蒸気によって加熱し加湿して製造した焼結用造粒原料についての提案であり、加湿する分だけ焼結原料装入層内の湿潤帯の縮小作用が減殺される虞れがあり、焼結操業が難しくなるという課題があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、粒度の条件や成分の条件によらず、また、高度な操業管理を必要とすることなく、焼結工場での焼結原料装入層の通気性を改善し、焼結鉱の焼成速度を向上させることによって生産性に優れた焼結鉱を製造する方法と製造設備を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来技術が抱えている前述の課題を解決し、上記の目的を実現するべく、鋭意研究を進めた結果、発明者らは、以下に説明する本発明を開発した。即ち、本発明は、基本的に、鉄含有原料、副原料および凝結材を配合して配合原料を得る配合工程と、前記配合原料を造粒機にて造粒して造粒焼結原料を主とする装入原料を得る造粒工程と、前記装入原料を焼結機に装入して点火する点火工程と、前記点火工程の後に、前記装入原料を焼結して焼結鉱を製造する焼結工程と、を経て焼結鉱を製造する方法において、前記造粒工程と前記点火工程との間に、前記装入原料の温度を測定する温度測定工程と前記装入原料を加熱装置にて加熱する加熱工程とを設けて、前記温度測定工程で測定された前記装入原料の温度をもとに前記加熱装置にて該装入原料を加熱することを特徴とする焼結鉱の製造方法である。
【0009】
また、本発明に係る前記焼結鉱の製造方法においては、
(1)前記加熱工程では、前記装入原料の温度を所定範囲に維持するように加熱すること、
(2)前記配合工程での粉コークス量の調整を省略すること、
(3)前記加熱工程は、ドラムミキサーやロータリーキルンである回転式加熱装置を用いて加熱すること、
(4)前記加熱装置による加熱は、前記装入原料の加熱装置入側温度よりもその出側の温度が10~50℃高くなるように行うこと、
(5)前記加熱装置は、熱水、水蒸気、水蒸気を除く他の気体蒸気、高周波加熱から選ばれる1種以上の加熱媒体を用いること、
がより好ましい実施の形態である。
【0010】
また、本発明は、鉄含有原料、副原料および凝結材を配合して配合原料とする配合機と、前記配合原料を造粒機にて造粒し、造粒焼結原料を主とする装入原料とする造粒機と、前記装入原料を焼結するための点火装置を備える焼結機とを有し、さらに、前記造粒機と前記焼結機の点火装置との間に、前記装入原料の温度を測定する温度測定装置と前記装入原料を加熱する加熱装置とを配設して、前記温度測定装置で測定された前記装入原料の温度をもとに、前記加熱装置にて該装入原料を予め加熱するようにしてなることを特徴とする焼結鉱の製造設備である。
【0011】
なお、本発明に係る焼結鉱の製造設備においては、
(1)前記加熱装置は、回転式装置であること、
(2)前記加熱装置は、熱水、水蒸気、水蒸気以外の気体、高周波加熱から選ばれる1種以上を供給して加熱するものであること、
がより好ましい実施の形態となる。
【発明の効果】
【0012】
前述のように構成してなる本発明によれば、焼結機に形成された原料装入層の通気性を確実に改善して湿潤帯の縮小にも寄与することができ、ひいては強度の高い焼結鉱を高い生産性を確保して製造することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明適用対象となる焼結鉱製造設備の一例を示す略線図である。
【
図2】本発明に係る焼結鉱の製造方法の概念図である。
【
図3】加熱装置による装入原料の本発明に従う加熱方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の適用対象となる焼結鉱の製造に用いられるドワイトロイド式焼結機の略線図である。一般に、焼結鉱の製造工程は、主として、焼結原料を配合して配合原料とする配合工程、その配合原料を造粒して造粒焼結原料を得る造粒工程、得られた造粒焼結原料や返鉱などからなる装入原料を焼結機に装入し焼結して焼結鉱を得る焼結工程とからなるものが普通である。前記配合工程は、粉鉄鉱石などの鉄含有原料に、石灰粉などの副原料や、粉コークスなどの凝結材を所定の割合で配合して、所定の配合原料とする工程である。前記造粒工程は、前記配合原料を、ドラムミキサーやペレタイザーなどの造粒機を用いて、所定の大きさの粒子状に造粒して造粒焼結原料すなわち装入原料とする工程である。そして、焼結工程は、前記造粒焼結原料を主とする装入原料を焼結機のパレット上に所定の厚みに装入し、得られる焼結原料装入層中の粉コークスに対し、点火装置を使って点火することでこれを焼成し焼結させて焼結鉱とする工程である。なお、焼成後は破砕し整粒し冷却して成品焼結鉱とする。
【0015】
前記ドワイトロイド式焼結機1は、エンドレスに走行するパレット2上に、前記造粒焼結原料等からなる装入原料をサージホッパー5を介して装入し、点火装置3にてパレット2上の焼結原料堆積層(原料装入層)中の凝結材(粉コークス)に点火してこれを燃焼させることにより、その燃焼熱で該装入原料を焼成して、焼結鉱を製造する装置である。
【0016】
前記焼結機は、前記パレット2下にウィンドボックス4が配設してあり、このウィンドボックス4下に接続されているメインガスダクト6、ブロワ7によって焼結機内の空気を上方から下方へ吸引するようにしている。その結果、
図2に示すパレット2上の原料装入層11内の燃焼ガスがウィンドボックス4を介して下方へ吸引される中で、その燃焼ガスが該原料装入層11中の装入原料をパレット2の移動と共に、上方から下方へ吸引されていく過程で該装入原料の焼成が進んでいくのである。即ち、パレット2上の前記装入原料は、上側から下方へと順次に焼成されて焼結鉱となるのである。
【0017】
ここで、パレット2上の原料装入層11の通気性が悪くなると、この原料装入層11を通過する風量の低下を招いて、該原料装入層11の焼成速度が低下する。そして、そうした焼成速度が低下する場合は、通常、エンドレスに走行するパレット2の速度を減速させ、パレット2を通過する風量が減少しないように調整することになる。そのため、パレット2の減速は、焼結鉱生産量の低下につながるのである。
【0018】
前記原料装入層11の通気性を悪化させるもう一つの原因は、該原料装入層11を構成している燃焼溶融帯と、該原料装入層における層厚方向の上部に位置する該燃焼溶融帯より下方に存在する湿潤帯(粉コークスが未だ燃焼していない帯域)との温度差によって生じる多量の水分の存在が挙げられる。一般に、装入原料中には、該装入原料自身の水分の他に造粒の過程で添加された水分もある。そのため、焼成中の前記燃焼溶融帯における装入原料の温度は1000℃以上にもなるが、原料装入層の上下方向の中間よりも下側の、粉コークスが未だ燃焼していない湿潤帯では装入原料の温度は低くかつ水分は多いままである。この状態において、上層の燃焼溶融帯で発生した水分は、下方に吸引される空気の流れに乗ってパレット2の下方に向かい、粉コークスが燃焼していない装入原料に触れ冷却されて水蒸気が水に戻る結果、前記湿潤帯を生成する。この湿潤帯では、水分によって空隙率、すなわち装入原料相互間の隙間の割合が減少し、空気の流れが悪くなるのである。
【0019】
そこで、焼結機のパレット2上に装入される装入原料の温度を限りなく高くすることができれば、水蒸気が水に戻りにくくなり、前記湿潤帯の生成を抑制することができるようになるのである。即ち、湿潤帯の生成を抑制できれば、通過風量を増やすこともでき、その結果、パレットスピードを減速させることがなくなり、焼結鉱の生産量を増やすことができるようになる。
【0020】
従来、装入原料の温度を高くする方法の一つとして、造粒工程において排ガスや水蒸気を吹き込む方法が採用されている。例えば、特許文献3には、造粒機に水蒸気を吹き込んで、造粒焼結原料の温度を高くする方法が開示されている。しかし、特許文献3で開示されている方法では、装入原料(造粒焼結原料)の温度は当初は高くなっていても、該装入原料が焼結機1の点火装置3にまで搬送される間に、その温度が低下してしまい、結果的に焼結鉱生産量の増産が望めないものとなることがある。この状態を回避するために、従来、装入原料の搬送経路上にカバー等の保温手段を設けることがあったが、これとしても、移動距離が長ければ、やはり装入原料の温度低下を招いてしまい抜本的な解決にはなっていなかった。
【0021】
そこで、本発明では、造粒工程と点火工程(焼結機の点火装置)との間に、装入原料の温度を高くするために加熱工程を設け、焼結機のパレット上に装入する装入原料の温度を予め高くなることにした。
図2は、本発明方法およびこの方法を実施するための設備を説明するための図である。
図1、2に示すように、本発明では、造粒工程を経て焼結機へ送られる装入原料を、焼結機1のパレット上に装入の前に該装入原料を予め加熱することにしたのである。そのために、本発明では、前記造粒機と焼結機の点火炉との間に、温度測定装置10と共に加熱装置9とを設置することにしたのである。
【0022】
このように、本発明に係る焼結鉱の製造設備では、造粒機と焼結機の点火装置との間に加熱装置9を設置して、温度測定装置10にて随時に測温しながら装入原料を予め加熱してその温度を高く維持したまま焼結機パレット上の点火装置の位置に送り込むことができるようにしたのである。なお、かかる該加熱装置9は、できるだけ焼結機(点火装置)寄りの位置に配置することが好ましい。また、この加熱装置9を焼結機(点火装置)寄りの位置に配置することにより、該加熱装置9による装入原料の加熱に要するエネルギーを少なくすることができる。
なお、前記加熱装置9から焼結機(点火装置)に到達するまで、装入原料の温度が下がらないように、保温設備を別に設けてもよい。
【0023】
前記加熱装置9としては、熱水や高温蒸気、蒸気以外の高温の気体の他、高周波加熱等の適用が可能な装置を採用する。このうち、コスト、供給量や設備などを考慮すると、高温蒸気などを使用することが好ましい。また、装入原料中の水分量を少なくする点では、高温の気体も有効である。なお、上記加熱手段は複数の組み合わせでも差し支えない。
【0024】
また、前記加熱装置9は、様々な形状の設備が適用可能である。例えば、熱水を用いる場合は、熱水をスプレーにより装入原料に均一に吹きかけることができるものが好ましい。また、蒸気を用いる場合は、装入原料が通る搬送経路上に、この搬送経路を覆う空間を設け、その空間にノズル等により蒸気を供給してもよい。高温の気体の場合も同様である。さらに、高周波が装入原料に直接到達するように、高周波加熱装置を設置してよい。
【0025】
図1に示すように、前記加熱装置9は、回転式の設備であることが好ましい。回転式の設備を用いると、装入原料の温度を均一にすることができるからである。それは、装入原料の温度をできるだけ均一にすることが、焼結鉱の生産上は有利だからである。というのも、装入原料の温度が不均一だと、焼結時の燃焼速度が不均一になり、十分に焼結していない部分が発生するなどして、焼結鉱の品質が安定しないからである。なお、上記の回転式加熱装置の例としては、ロータリーキルンやドラムミキサーなどを例示することができるが、その他の設備でも差し支えない。
【0026】
好ましくは、前記加熱装置9の前後に、温度測定装置10を設置する。温度測定には、放射温度計などの既知の手段を使用し、まず造粒機8の出側すなわち加熱装置9の入側において装入原料の温度を測定して、
図3に示すフローに従い装入原料への加熱条件を決定する。そして、加熱装置9の出側の温度測定装置10によって装入原料の出側温度を測定し、装入原料の温度が適切か判断し、装入原料の温度が不適切な場合は、装入原料の温度が適切になるように前記加熱装置9の制御を行う。以下、一例として、加熱装置9として蒸気を使用する例で説明する。
【0027】
まず、焼結配合原料の搬送経路上に、造粒した装入原料(造粒焼結原料)を一時的に収容し、また回転させながら搬送するドラムミキサーやロータリーキルンなどを、好ましくはその出側の位置から加熱できる加熱装置9を設ける。該加熱装置9としては、蒸気を供給する配管と、その配管には蒸気を吹き込むためのノズルを設置したものを用いる。ここで、吹込み蒸気の圧力は、加熱装置9の形状や大きさ、装入原料の量にもよるが、0.3~1.5MPaを例示することができる。もし、蒸気の圧力が低すぎると、装入原料に対し蒸気が十分に行きわたらず、一方で蒸気の圧力が高すぎると装入原料が破壊されるおそれがあり、さらには装入原料の含有水分量が多くなりすぎる、などの弊害が発生する。
【0028】
前記装入原料を加熱するために蒸気を使用する場合、その吹込み量は、該装入原料の量にもよるが、装入原料に対して、0.5~3質量%の範囲にすることが好ましい。この範囲内であれば、装入原料の含有水分量を適切に管理することができる。
【0029】
具体的には、
図3に示すように、装入原料を製造した後、造粒機8出側およびそれ以降に配設した加熱装置9の入口側において装入原料の温度を計測する。計測された温度をもとに、必要な加熱量を計算して装入原料の加熱を行う。通常、装入原料の製造直後の温度は約30℃である。したがって、加熱装置9の入側での装入原料の温度もおよそ30℃となる。そこで、加熱装置9では、加熱装置出口での装入原料の温度を、入口での温度よりも、所定の温度範囲内となるようにすること、すなわち10~50℃程度高くなるように加熱する。前述したとおり、焼結機のパレット2上の原料装入層11での通気性をよくするためには、装入原料の温度は高いほうが望ましい。しかし、装入原料の温度が高すぎると、搬送設備が損傷するおそれがある。そこで、該加熱装置9の出口側において温度を再度測定し、装入原料が所定の温度になっているかどうかを確認することが好ましく、一方で、装入原料が所定の温度未満の場合は、加熱手段を制御して装入原料の温度を所定範囲内に維持調整する。
【0030】
また、焼結機へ搬送する装入原料の温度を一定にコントロールすることにより、従来では、装入原料の温度変化(気温変化、降雨、積雪等)に対応して、粉コークスの投入量の調整が必要であったところ、装入原料の加熱工程において、その温度を前記の範囲内に維持するように加熱することで、前記粉コークス量の調整をする必要性がなくなり、その結果として品位及び歩留まりの安定化に寄与する効果がある。
【0031】
本発明の他の実施形態としては、造粒焼結原料(装入原料)を製造するための造粒機8に対して温度測定装置10と加熱装置9の両方を配設してもよい。この例では、配合原料の造粒中に温度を計測すると共に、その温度によって、必要に応じ造粒中に該配合原料を熱水や蒸気、高周波加熱などの手段を採用するが、特に蒸気を用いることが好ましい。というのも、造粒工程では、配合原料に水分を添加して造粒焼結原料を製造するので、ここで蒸気を用いれば、加熱と水分調整(添加)を同時に実現することができるからである。
【実施例0032】
造粒機と焼結機との間に、
図1に示す回転式の加熱装置の例であるドラムミキサーを配し、装入原料を所定の位置において加熱してからサージホッパーを介して焼結機のパレット上に装入した。装入原料の加熱はドラムミキサーの出側から水蒸気を吹込む装置を用いた。
装入原料の水分は、装入原料の温度にもよるが、原料装入層の通気性に密接に関係しており、生産率や歩留まりに重要な影響を与える。そこで本実施例では、原料水分を変化させつつ、加熱の有無を検討した。その際、上記実施形態で説明した理由により、設備制約上最大温度である55℃に維持されるように制御した。
【0033】
表1に示す結果から判るように、発明例1~4については、水蒸気の供給量を、装入原料当たり7.4~22.1kg/t-sとして原料水分を変化させた。一方、比較例については、装入原料を蒸気にて加熱することなしに焼結機のパレット上に装入した。それぞれの条件下で、連続6時間の操業を行い、焼結鉱の生産量を比較した。焼結鉱の生産量は、篩目5mmで篩分けを行った後、篩上に残った焼結鉱の量とした。
【0034】
表1に示す発明例1~4、および比較例1~4の結果から判るように、水分の増加とともに焼成通気性(JPU:Japan Permeability Unit)が増大していく傾向があり、またそれに対し通過風量の増加と共に焼成時間が短縮して歩留まりの低下が発生している。これらの現象により、水分値がある一定の値にて発明例及び比較例は生産率のピークをもつことが分かる。
なお、蒸気による温度昇温による湿潤帯低減効果に関しては、焼成通気性自体が比較例に対して、10%程度改善しており、上記の説明どおり、結果として生産率の改善効果を最大6%を享受できている。
また、温度測定装置を利用し、変動する原料温度に対して6時間追従させて一定の温度(55℃)に温度管理したことにより、熱量が安定したことも歩留まりの向上に寄与しているといえる。
【0035】
従って、本発明に適合する装置を用いた温度管理のもと、水蒸気吹込みによる原料昇温を実施すれば、生産率の改善を実現することが可能になる。
【0036】