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特開2022-39979新規なヘリセン誘導体およびその前駆体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022039979
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】新規なヘリセン誘導体およびその前駆体
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/14 20060101AFI20220303BHJP
   C07D 487/22 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
C07D403/14 CSP
C07D487/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021114757
(22)【出願日】2021-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2020143075
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
(71)【出願人】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182073
【弁理士】
【氏名又は名称】萩 規男
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼瀬 雅祥
(72)【発明者】
【氏名】宇野 英満
(72)【発明者】
【氏名】古池 啓介
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】石川 真一
【テーマコード(参考)】
4C050
4C063
【Fターム(参考)】
4C050PA20
4C063AA05
4C063BB06
4C063CC06
4C063DD04
4C063EE10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来材料とは異なる骨格を有し、且つ特異的な光学特性を発現する材料を提供する、さらに詳しくは、特徴的なキラリティーを有し、高い円偏光発光性を有する材料およびその前駆体を提供する。
【解決手段】例えば、下記式(II-1)で示される化合物を用いる。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)および一般式(2)で表される光学活性ヘリセン誘導体又はラセミ体混合物。
【化35】
【化36】
(一般式(1)および一般式(2)中、
、R、RおよびRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルコキシ基、炭素数6~40の置換もしくは無置換のアリール基、または炭素数4~40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、隣接するRとRは、互いに結合して環を形成してもよく、
AおよびBは、各々独立して、炭素数6~40の置換もしくは無置換の芳香族環、または炭素数4~40の置換もしくは無置換の芳香族ヘテロ環を表す。)
【請求項2】
上記一般式(1)および一般式(2)において、AおよびBが、各々独立して、下記X-1、X-2、X-3、X-4及びX-5からなる群より選ばれる構造である、請求項1に記載の光学活性ヘリセン誘導体又はラセミ体混合物。
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【請求項3】
上記一般式(1)および一般式(2)において、RおよびRが、各々独立して、置換もしくは無置換のフェニル基である、請求項1又は請求項2に記載の光学活性ヘリセン誘導体又はラセミ体混合物。
【請求項4】
下記一般式(3)で表されるヘキサアミノベンゼン誘導体。
【化42】
(一般式(3)中、
、R、RおよびRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルコキシ基、炭素数6~40の置換もしくは無置換のアリール基、または炭素数4~40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、隣接するRとRは、互いに結合して環を形成してもよく、
AおよびBは、各々独立して、炭素数6~40の置換もしくは無置換の芳香環、または炭素数4~40の置換もしくは無置換の芳香族ヘテロ環を表す。)
【請求項5】
下記式(4)または下記式(5)で表される、光学活性ヘリセン誘導体、又はこれらのラセミ体混合物。
【化43】
【化44】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なヘリセン誘導体およびその前駆体に関するものであり、その誘導体を利用した円偏光発光材料に関するものである。本発明における新規なヘリセン誘導体は、特異的なキラリティーの性質を有し、例えば、三次元ディスプレイや光通信、セキュリティ分野への応用が期待される。
【背景技術】
【0002】
円偏光発光(CPL)は、高輝度ディスプレイ用の偏光光源やセキュリティ分野などの次世代光情報技術への応用が期待されている。しかしながら、現在用いられているCPL光源は、CPL特性を持たない、直線変更を発する発光材料に円偏光透過フィルターを組み合わせたものであることから、製造工程が複雑かつ高コストであり、エネルギー効率も悪い。そのため、高輝度・高円偏光発光材料の設計指針の確立が重要である。
このような観点から、従来金属イオンを用いた物質が主に開発されている(例えば、特許文献1)が、安価で環境負荷の少ない元素から構成される材料開発が求められている。
【0003】
ベンゼン環がらせん状に縮環したヘリセンは、キラル化合物として知られ、円偏光発光材料への応用展開が期待されている。
例えば、特許文献2は、少なくとも5つの芳香族環が縮合してなるヘリセン化合物が電荷輸送材料、発光材料及び波長変換材料等として好適であると述べている。また、特許文献3は、アザヘリセン系化合物が、有機EL素子、蛍光材料、非線形光学材などへの応用に期待が持てると述べている。更に、特許文献4にはシアノ基が置換したヘリセン化合物が例示されているが、円偏光発光特性については調べられていない。
また、7個のベンゼン環が縮環した[7]ヘリセンは一般に蛍光量子収率が低く、実用化に向けて更なる改良が必要であり、非特許文献1~2などの検討が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-57367号公報
【特許文献2】特開2000-195673号公報
【特許文献3】特開2013-40145号公報
【特許文献4】特開2018-177647号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Angewandte Chemie international Edition,vol.56,3906-3910,2017
【非特許文献2】Organic Letters vol.15,Issue9,2104-2107,2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来材料とは異なる骨格を有し、且つ特異的な光学特性を発現する材料を提供することにある。更に詳しくは、特徴的なキラリティーを有し、高い円偏光発光性を有する材料およびその前駆体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、一般式(1)および一般式(2)で表される光学活性ヘリセン誘導体が特異的なキラリティーを有し、高い円偏光発光性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明は、一般式(1)および一般式(2)で表される光学活性ヘリセン誘導体、又はこれらのラセミ体混合物とその用途に関し、以下の発明に係る。
[1]下記一般式(1)および一般式(2)で表される光学活性ヘリセン誘導体又はラセミ体混合物。
【化1】
【化2】
(一般式(1)および一般式(2)中、
、R、RおよびRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルコキシ基、炭素数6~40の置換もしくは無置換のアリール基、または炭素数4~40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、隣接するRとRは、互いに結合して環を形成してもよく、
AおよびBは、各々独立して、炭素数6~40の置換もしくは無置換の芳香族環、または炭素数4~40の置換もしくは無置換の芳香族ヘテロ環を表す。)
[2]上記一般式(1)および一般式(2)において、AおよびBが、各々独立して、下記X-1、X-2、X-3、X-4及びX-5からなる群より選ばれる構造である、[1]に記載の光学活性ヘリセン誘導体又はラセミ体混合物。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
[3]上記一般式(1)および一般式(2)において、RおよびRが、各々独立して、置換もしくは無置換のフェニル基である、[1]又は[2]に記載の光学活性ヘリセン誘導体又はラセミ体混合物。
[4]下記一般式(3)で表されるヘキサアミノベンゼン誘導体。
【化8】
(一般式(3)中、
、R、RおよびRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルコキシ基、炭素数6~40の置換もしくは無置換のアリール基、または炭素数4~40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、隣接するRとRは、互いに結合して環を形成してもよく、
AおよびBは、各々独立して、炭素数6~40の置換もしくは無置換の芳香環、または炭素数4~40の置換もしくは無置換の芳香族ヘテロ環を表す。)
[5]下記式(4)または下記式(5)で表される、光学活性ヘリセン誘導体、又はこれらのラセミ体混合物。
【化9】
【化10】
【発明の効果】
【0009】
本発明の光学活性ヘリセン誘導体又はこれらのラセミ体混合物、ヘキサアミノベンゼン誘導体は、従来材料とは異なる骨格を有し、且つ特異的な光学特性を発現する材料であり、更に、特徴的なキラリティーを有し、高い円偏光発光性を有する材料およびその前駆体である。このため、工業的に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】合成例1で製造した化合物(I-1)のH-NMR測定チャートであり、X軸(横軸)は化学シフト(単位はppm)を示し、Y軸(縦軸)は強度(単位は任意)を示す。図1中には拡大図を示す(単位は同じ)。
図2】実施例1で製造した化合物(II-1)のH-NMR測定チャートであり、X軸(横軸)は化学シフト(単位はppm)を示し、Y軸(縦軸)は強度(単位は任意)を示す。図2中には拡大図を示す。
図3】実施例2で製造した化合物(III-1)のH-NMR測定チャートであり、X軸(横軸)は化学シフト(単位はppm)を示し、Y軸(縦軸)は強度(単位は任意)を示す。図3中には拡大図を示す。
図4】実施例2で製造した化合物(III-1)のLDI TOF-MS測定チャートであり、X軸(横軸)はイオンの質量(あるいは質量電荷比であって、図中、「m/z」と表記)を示し、Y軸(縦軸)は強度(単位は任意)を示す。図4中には拡大図が示されており、上段は実測値、下段は計算値に基づく(単位は同じ)。
図5】実施例2で製造した化合物(III-1)のHPLC測定チャート(光学分割、(ダイセルキラルパックIAを備えたHPLC装置))であり、X軸(横軸)は溶出時間(単位は分)を示し、Y軸(縦軸)はピークの相対強度(単位は任意)を示す。図中の数字は、ピークの保持時間(単位は分)を示す。
図6】実施例2で製造した化合物(III-1)のUV-vis吸収スペクトルおよび発光スペクトルであり、X軸(横軸)は波長(単位はnm)を示し、Y軸(縦軸)左は強度(「ε」(モル吸光係数)と表記し、単位はM-1cm-1)、Y軸(縦軸)右は規格化された発光強度(単位は最大ピークを1とした)を示す。吸収スペクトルは塩化メチレン溶液、室温での測定であり、図中には実線で示した。発光スペクトルは塩化メチレン溶液(1.48×10-5M)、室温、励起光:430nmでの測定であり、図中には破線で示した。
図7】実施例2で製造した化合物(III-1)の高速液体クロマトグラフィーによる光学分割によって取得した化合物(III-1P)と化合物(III-1M)の円偏光二色性(CD)の測定チャートであり、X軸(横軸)は波長(単位はnm)を示し、Y軸(縦軸)はモル楕円率(Δε、単位はM-1cm-1)を示す。
図8】実施例2で製造した化合物(III-1)の高速液体クロマトグラフィーによる光学分割によって取得した化合物(III-1P)と化合物(III-1M)の円偏光発光(CPL)の測定チャートであり、図中、X軸(横軸)は波長(単位はnm)、Y軸(縦軸)はΔI(単位は任意)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一般式(1)および一般式(2)で表される光学活性ヘリセン誘導体は新規化合物であり、一般式(1)および一般式(2)で表される光学活性ヘリセン誘導体の混合物であるラセミ体混合物もまた新規化合物である。
【0012】
上記の一般式(1)および一般式(2)において、R、R、RおよびRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~18の直鎖若しくは分岐若しくは環状のアルキル基、炭素数1~18の直鎖若しくは分岐若しくは環状のアルコキシ基、炭素数6~40の置換若しくは無置換のアリール基、または炭素数4~40の置換若しくは無置換のヘテロアリール基であることが好ましい。従ってR及びRは、それぞれ、これらの置換基と同一または異なっていても良く、隣接するRとRは、互いに結合して環を形成しても良い。
【0013】
、R、RおよびRにおいて、炭素数1~18の直鎖若しくは分岐若しくは環状アルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ステアリル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1,3-シクロヘキサジエニル基、2-シクロペンテン-1-イル基等を挙げることができる。
【0014】
炭素数1~18の直鎖若しくは分岐若しくは環状アルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等を挙げることができる。
【0015】
炭素数6~40の置換若しくは無置換のアリール基としては、具体的には、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、2-アントリル基、9-アントリル基、2-フルオレニル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、ペリレニル基、ピセニル基、4-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、2-メチルフェニル基、4-エチルフェニル基、3-エチルフェニル基、2-エチルフェニル基、4-n-プロピルフェニル基、4-イソプロピルフェニル基、2-イソプロピルフェニル基、4-n-ブチルフェニル基、4-イソブチルフェニル基、4-sec-ブチルフェニル基、2-sec-ブチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、3-tert-ブチルフェニル基、2-tert-ブチルフェニル基、4-n-ペンチルフェニル基、4-イソペンチルフェニル基、2-ネオペンチルフェニル基、4-tert-ペンチルフェニル基、4-n-ヘキシルフェニル基、4-(2-エチルブチル)フェニル基、4-n-ヘプチルフェニル基、4-n-オクチルフェニル基、4-(2-エチルヘキシル)フェニル基、4-tert-オクチルフェニル基、4-n-デシルフェニル基、4-n-ドデシルフェニル基、4-n-テトラデシルフェニル基、4-シクロペンチルフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、4-(4-メチルシクロヘキシル)フェニル基、4-(4-tert-ブチルシクロヘキシル)フェニル基、3-シクロヘキシルフェニル基、2-シクロヘキシルフェニル基、4-エチル-1-ナフチル基、6-n-ブチル-2-ナフチル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、2,4-ジエチルフェニル基、2,3,5-トリメチルフェニル基、2,3,6-トリメチルフェニル基、3,4,5-トリメチルフェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、2,5-ジイソプロピルフェニル基、2,6-ジイソブチルフェニル基、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル基、2,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、4,6-ジ-tert-ブチル-2-メチルフェニル基、5-tert-ブチル-2-メチルフェニル基、4-tert-ブチル-2,6-ジメチルフェニル基、9-メチル-2-フルオレニル基、9-エチル-2-フルオレニル基、9-n-ヘキシル-2-フルオレニル基、9,9-ジメチル-2-フルオレニル基、9,9-ジエチル-2-フルオレニル基、9,9-ジ-n-プロピル-2-フルオレニル基、4-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、2-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、3-エトキシフェニル基、2-エトキシフェニル基、4-n-プロポキシフェニル基、3-n-プロポキシフェニル基、4-イソプロポキシフェニル基、2-イソプロポキシフェニル基、4-n-ブトキシフェニル基、4-イソブトキシフェニル基、2-sec-ブトキシフェニル基、4-n-ペンチルオキシフェニル基、4-イソペンチルオキシフェニル基、2-イソペンチルオキシフェニル基、4-ネオペンチルオキシフェニル基、2-ネオペンチルオキシフェニル基、4-n-ヘキシルオキシフェニル基、2-(2-エチルブチル)オキシフェニル基、4-n-オクチルオキシフェニル基、4-n-デシルオキシフェニル基、4-n-ドデシルオキシフェニル基、4-n-テトラデシルオキシフェニル基、4-シクロヘキシルオキシフェニル基、2-シクロヘキシルオキシフェニル基、2-メトキシ-1-ナフチル基、4-メトキシ-1-ナフチル基、4-n-ブトキシ-1-ナフチル基、5-エトキシ-1-ナフチル基、6-メトキシ-2-ナフチル基、6-エトキシ-2-ナフチル基、6-n-ブトキシ-2-ナフチル基、6-n-ヘキシルオキシ-2-ナフチル基、7-メトキシ-2-ナフチル基、7-n-ブトキシ-2-ナフチル基、2-メチル-4-メトキシフェニル基、2-メチル-5-メトキシフェニル基、3-メチル-4-メトキシフェニル基、3-メチル-5-メトキシフェニル基、3-エチル-5-メトキシフェニル基、2-メトキシ-4-メチルフェニル基、3-メトキシ-4-メチルフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基、2,5-ジメトキシフェニル基、2,6-ジメトキシフェニル基、3,4-ジメトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、3,5-ジエトキシフェニル基、3,5-ジ-n-ブトキシフェニル基、2-メトキシ-4-エトキシフェニル基、2-メトキシ-6-エトキシフェニル基、3,4,5-トリメトキシフェニル基、4-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、2-ビフェニリル基、4-(4-メチルフェニル)フェニル基、4-(3-メチルフェニル)フェニル基、4-(4-メトキシフェニル)フェニル基、4-(4-n-ブトキシフェニル)フェニル基、2-(2-メトキシフェニル)フェニル基、4-(4-クロロフェニル)フェニル基、3-メチル-4-フェニルフェニル基、3-メトキシ-4-フェニルフェニル基、ターフェニル基、3,5-ジフェニルフェニル基、10-フェニルアントリル基、10-(3,5-ジフェニルフェニル)-9-アントリル基、9-フェニル-2-フルオレニル基、4-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、2-フルオロフェニル基、4-クロロフェニル基、3-クロロフェニル基、2-クロロフェニル基、4-ブロモフェニル基、2-ブロモフェニル基、4-クロロ-1-ナフチル基、4-クロロ-2-ナフチル基、6-ブロモ-2-ナフチル基、2,3-ジフルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、2,5-ジフルオロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、3,4-ジフルオロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、2,3-ジクロロフェニル基、2,4-ジクロロフェニル基、2,5-ジクロロフェニル基、3,4-ジクロロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、2,5-ジブロモフェニル基、2,4,6-トリクロロフェニル基、2,4-ジクロロ-1-ナフチル基、1,6-ジクロロ-2-ナフチル基、2-フルオロ-4-メチルフェニル基、2-フルオロ-5-メチルフェニル基、3-フルオロ-2-メチルフェニル基、3-フルオロ-4-メチルフェニル基、2-メチル-4-フルオロフェニル基、2-メチル-5-フルオロフェニル基、3-メチル-4-フルオロフェニル基、2-クロロ-4-メチルフェニル基、2-クロロ-5-メチルフェニル基、2-クロロ-6-メチルフェニル基、2-メチル-3-クロロフェニル基、2-メチル-4-クロロフェニル基、3-クロロ-4-メチルフェニル基、3-メチル-4-クロロフェニル基、2-クロロ-4,6-ジメチルフェニル基、2-メトキシ-4-フルオロフェニル基、2-フルオロ-4-メトキシフェニル基、2-フルオロ-4-エトキシフェニル基、2-フルオロ-6-メトキシフェニル基、3-フルオロ-4-エトキシフェニル基、3-クロロ-4-メトキシフェニル基、2-メトキシ-5-クロロフェニル基、3-メトキシ-6-クロロフェニル基、5-クロロ-2,4-ジメトキシフェニル基、4-トリフルオロメチルフェニル基、3-トリフルオロメチルフェニル基、3、5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
炭素数4~40の置換若しくは無置換のヘテロアリール基としては、酸素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる少なくとも一つのヘテロ原子を含有する芳香環基であり、例えば、4-キノリル基、4-ピリジル基、3-ピリジル基、2-ピリジル基、3-フリル基、2-フリル基、3-チエニル基、2-チエニル基、2-オキサゾリル基、2-チアゾリル基、2-ベンゾオキサゾリル基、2-ベンゾチアゾリル基、2-ベンゾイミダゾリル基等の複素環基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
さらに、隣接するRとRについては、互いに結合して環を形成しても良い。RとRが互いに結合して環を形成した場合の具体例としては、例えば、下記(Y-1)、(Y-2)および(Y-3)に示す例を挙げることができるが、これらに限定されるものでは無い。
【化11】
【化12】
【化13】
(式中、R~Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子で置換されても良い炭素数1~18の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルキル基、ハロゲン原子で置換されても良い炭素数1~18の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルコキシ基を示し、n、m、lは0もしくは1以上の整数である。)
【0018】
上記一般式(1)および一般式(2)における芳香族環または芳香族ヘテロ環を有する構造であるAおよびBは、各々独立して、炭素数6~40の置換もしくは無置換の芳香環、または炭素数4~40の置換もしくは無置換の芳香族ヘテロ環を表す。AおよびBはそれぞれ同一であっても異なっていても良いが、合成の煩雑さを考慮すると、同一であることが好ましい。
【0019】
芳香族環としては、特に限定されるものでは無いが、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、トリフェニレン環、ピレン環、ビフェニル、ターフェニル等を挙げることでき、芳香族ヘテロ環としては、特に限定されるものでは無いが、具体的には、ピリジン環、ピリミジン環、キノリン環、イソキノリン環、チオフェン環、フラン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環等を挙げることができる。
【0020】
更に、一般式(1)および一般式(2)における芳香族環または芳香族ヘテロ環を有する構造であるAおよびBが、以下のX-1、X-2、X-3、X-4及びX-5からなる群より選ばれる構造であることがより好ましい。
【0021】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【0022】
一般式(1)および一般式(2)は、芳香族環または芳香族ヘテロ環を有する構造であるAおよびBの重なり方によって、らせんのキラリティーを有する。一般式(1)に示すように右巻きらせん構造を有する場合にはPヘリシティー、一般式(2)に示すように左巻きらせん構造を有する場合にはMヘリシティーをそれぞれ有する。
以下に更に、一般式(1)および一般式(2)の具体的構造式を例示するが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0023】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【0024】
本発明の一般式(3)で表されるヘキサアミノベンゼン誘導体は、新規化合物であり、一般式(1)および一般式(2)で表される光学活性ヘリセン誘導体およびラセミ体混合物の重要な前駆体である。
【0025】
【化25】
(一般式(3)中のR、R、RおよびRは、各々独立して、水素原子、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルキル基、炭素数1~18の直鎖もしくは分岐もしくは環状のアルコキシ基、炭素数6~40の置換もしくは無置換のアリール基、または炭素数4~40の置換もしくは無置換のヘテロアリール基であり、隣接するRとRは、互いに結合して環を形成してもよく、
AおよびBは、各々独立して、炭素数6~40の置換もしくは無置換の芳香環、または炭素数4~40の置換もしくは無置換の芳香族ヘテロ環を表す。)
上記の一般式(3)において、R、R、RおよびRは、一般式(1)および一般式(2)において、R、R、RおよびRについて例示したものと同様である。
【0026】
以下に更に、一般式(3)の具体的構造式を例示するが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0027】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【0028】
<本発明に係る光学活性ヘリセン誘導体およびラセミ体混合物の製造方法>
一般式(1)および一般式(2)で示される光学活性ヘリセン誘導体およびラセミ体混合物は、特に限定するものではないが、以下に示す工程から製造することが可能である。
即ち、工程1(前駆体(テトラピロロジハロベンゼン誘導体)の合成工程)、工程2(一般式(3)で表されるヘキサアミノベンゼン誘導体の合成工程)、式(1)、工程3(一般式(3)で表されるヘキサアミノベンゼン誘導体から一般式(1)および一般式(2)の混合物であるラセミ体を合成する工程)および工程4(一般式(1)および一般式(2)の混合物から各々の光学活性体を光学分割する工程)からなる。
【0029】
工程1)前駆体(テトラピロロジハロベンゼン誘導体)の合成工程
還流装置を具備する反応容器に、反応試剤である3,4-位に置換基を有しても良いピロール誘導体および水素化ナトリウムなどの塩基を加え、窒素等の不活性ガス雰囲気とした後、ジメチルホルムアミドなどの溶媒を加え、撹拌等をして反応させる。反応温度は目的の前駆体が得られる条件であれば特に限定されず、また反応時の圧力も加圧下、常圧下、減圧下のいずれも選択できる。反応温度としては、例えば、-30℃~50℃程度とするとよい。反応時間は反応試剤の反応性に依るが、通常は1分から1日、好ましくは5分~10時間、さらに好ましくは、10分~2時間反応させればよい。
上記とは別の反応容器に、1,2-ジハロゲノ-3,4,5,6-テトラフルオロベンゼンをジメチルホルムアミド等の溶媒に溶解し、上記の反応容器に窒素等の不活性ガス雰囲気下、あるいは開放系で加える。なお、上記化合物のハロゲン原子は臭素またはヨウ素原子から選択できる。
反応時間は反応原料の反応性によるが、通常は10分~3日、好ましくは30分~1日、さらに好ましくは、1時間~1日反応させれば良い。反応温度としては、例えば、-80℃~50℃程度とするとよく、反応性と選択性の両立のためには、-10℃~30℃とすることがより好ましい。
反応終了後、反応生成物が溶解できる溶媒、例えば水を加え、さらに酢酸エチル等の非水溶媒により抽出するとよい。さらに有機層を公知の処方で洗浄、例えば、水および飽和食塩水で洗浄し、その後、硫酸ナトリウム等の乾燥剤により乾燥させ、エバポレーター等の通常用いられる装置により濃縮させて前駆体を得ることができる。
得られた前駆体は、元素分析、NMR、質量分析等の、本技術分野で公知の方法による分析によって、構造、物性、精製度等を確認することができる。
【0030】
工程2)ヘキサアミノベンゼン誘導体の合成工程
還流装置を具備する反応容器に、インドールなどの反応試剤および水素化ナトリウムなどの塩基を加え、窒素等の不活性ガス雰囲気とした後、ジメチルホルムアミドなどの溶媒を加え、撹拌等をして反応させる。反応温度は目的の前駆体が得られる条件であれば特に限定されず、また反応時の圧力も加圧下、常圧下、減圧下のいずれも選択できる。反応温度としては、例えば、-50℃~50℃程度とするとよい。反応時間は反応試剤の反応性に依るが、通常は1分から1日、好ましくは5分~10時間、さらに好ましくは、10分~2時間反応させればよい。
上記とは別の反応容器に、前記した前駆体をジメチルアセトアミド等の溶媒に溶解し、
上記の反応容器に窒素等の不活性ガス雰囲気下、あるいは開放系で加える。反応時間は反応原料の反応性によるが、通常は10分~3日、好ましくは30分~1日、さらに好ましくは、1時間~1日反応させれば良い。反応温度としては、例えば、0℃~100℃程度とするとよく、反応性と選択性の両立のためには、10℃~50℃とすることがより好ましい。
反応終了後、反応生成物が溶解できる溶媒、例えば水を加え、さらに酢酸エチル等の非水溶媒により抽出するとよい。さらに有機層を公知の処方で洗浄、例えば、水および飽和食塩水で洗浄し、その後、硫酸ナトリウム等の乾燥剤により乾燥させ、エバポレーター等の通常用いられる装置により濃縮させてヘキサアミノベンゼン誘導体を得ることができる。
得られたヘキサアミノベンゼン誘導体は、元素分析、NMR、質量分析等の、本技術分野で公知の方法による分析によって、構造、物性、精製度等を確認することができる。
【0031】
工程3)一般式(1)および一般式(2)の混合物であるラセミ体を合成する工程
本発明の一般式(1)および一般式(2)の混合物であるラセミ体を合成する工程は、前記のヘキサアミノベンゼン誘導体の酸化的カップリング反応によって製造される。
酸化的カップリングの具体的な方法としては、酸化剤触媒を用いる方法があげられ、安価かつ容易に得る手段として好ましい。これらの酸化剤触媒としては、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化モリブデン、塩化タングステン、塩化スズ等の化合物があげられる。
還流装置を具備する反応容器に、前記のヘキサアミノベンゼン誘導体などの反応試剤およびニトロメタン、ジクロロメタンなどの溶媒と共に、塩化鉄などの酸化剤触媒を加え、撹拌等をして反応させる。
反応温度は目的のラセミ体が得られる条件であれば特に限定されず、また反応時の圧力も加圧下、常圧下、減圧下のいずれも選択できる。反応温度としては、例えば、0℃~100℃程度とするとよい。反応時間は反応試剤の反応性に依るが、通常は1分から1日、好ましくは5分~10時間、さらに好ましくは、10分~5時間反応させればよい。
反応終了後、固形物を濾過等により濾別して、エバポレーター等の通常用いられる装置により濃縮させる。更に、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の通常用いられる精製手段で、また塩化メチレン/n-ヘキサンといった通常用いられる移動相用の溶媒を用いて、精製すると良い。
得られたラセミ体は、元素分析、NMR、質量分析等の、本技術分野で公知の方法による分析によって、構造、物性、精製度等を確認することができる。
【0032】
工程4)一般式(1)および一般式(2)の混合物から各々の光学活性体を光学分割する工程
一般式(1)および一般式(2)の混合物であるラセミ体を光学分割することにより製造できる。その光学分割方法としては、例えば、光学異性体分離用高速液体クロマトグラフィー用カラムを利用することにより、(R)光学異性体と(S)光学異件体とに分割することができる。光学異性体分離用高速液体クロマトグラフィー用カラムは、特に限定するものでは無いが、一般に市販されており、例えば、ダイセル化学工業株式会社製造・販売のキラルパックアイシー(CHIRALPAK IC)、キラルパックアイエイ(CHIRALPAK IA)、キラルパックエーディーエイチ(CHIRALPAK AD-H)又はキラルパックオーディーエイチ(CHIRALPAK OD-H) 等を使用することができる。
光学分割で使用される溶媒としては、へキサン又はヘプタン等の脂肪族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール又はブタノール等のアルコール類、ジクロロメタン又はクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類、ジエチルアミン等のアミノ類、酢酸、トリフルオロ酢酸、水、或いはこれらの混合溶媒を例示することができる。
光学分割における温度及び時間は、広範囲に変化することができる。一般的には温度は-20~60℃であって、好ましくは5~50℃である。時間は、0.05時間~50時間であって、好ましくは、0.1時間~5時間である。
【実施例0033】
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0034】
なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
[元素分析]
元素分析計:Jサイエンスラボ製 MICRO CORDER JM10T
[質量分析]
質量分析装置:日本電子製 JMS-700V型(FAB-MS分析)
島津製作所製 GC-2010(DI-MS分析)
日本電子株式会社製 JMS-S3000(LDI分析)
[NMR測定] 測定装置:日本電子製 JNM-AL400S
[CD測定] 測定装置:日本分光製 J-820
[吸収スペクトル測定] 測定装置:日本分光製 V-570
[発光スペクトル測定] 測定装置:島津製作所製 RF-6000
[絶対量子収率測定] 測定装置:浜松ホトニクス製 C-9920
[CPL測定] 測定装置:日本分光製 CPL-200
【0035】
[合成例1]化合物(I-1)の合成
【化32】
還流装置を装着した100mL三つ口フラスコに、水素化ナトリウム 810mg(60%ミネラルオイル分散(20.3mmol))を加え、窒素置換した後、3,4-ジ-(4-トリフルオロメチルフェニル)-1H-ピロール 4.80g(13.5mmol)の脱水DMF溶液(30mL)を撹拌しながら0℃で滴下し、30分間撹拌した。
この溶液を、別の反応容器に調製した1,2-ジブロモ-3,4,5,6-テトラフルオロベンゼン 0.464mL(3.37mmol)の脱水DMF溶液 (15mL) に-10 ℃で20分かけて滴下し、2時間撹拌した。水を加えて反応を止めた後、酢酸エチルで抽出し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。その後、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、エバポレーターで濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン/n-ヘキサン) により精製し、化合物(I-1)の白色固体 5.24gを収率94%で得た。
【0036】
分析結果は以下の通りであった。
H-NMR(CDCl、25℃、400MHz)δ7.55(d、J=8.2Hz、8H、CFPh)、7.46(d、J=8.2Hz、8H、CFPh)、7.28(d、J=8.1Hz、2H、CFPh)、7.06(d、J=8.1Hz、8H、CFPh)、6.89(s、4H、Py-α)、6.47(s、4H、Py-α)
13C-NMR(CDCl、25℃、100MHz)δ137.64、137.39、137.05、134.07、129.73、129.63、129.30、129.08、128.98、128.48、128.15、127.30、125.69、125.34、125.06、122.76、122.63、122.00、120.81、120.06、119.90
19F-NMR(CDCl、376MHz)δ-62.37、-62.80
MS(FAB-MS) m/z 1649([M+3]
Anal.Calcd.for C78H40Br2F24N4・C6H14:C 58.15%、H 3.14%、N 3.23%
Found:C 58.25%、H 3.20%、N 3.27%
【0037】
また、H-NMR測定チャートを図1に示す。
【0038】
[実施例1]化合物(II-1)の合成
【化33】
還流装置を装着した50mL三つ口フラスコに、水素化ナトリウム 19.6mg(60%ミネラルオイル分散(0.491mmol))を加え、窒素置換した後、3-メチルインドール 48.0mg(0.368mmol)の脱水DMF溶液(2mL)を撹拌しながら、0℃で滴下し、30分間撹拌した。
この溶液を、別の反応容器に調製した1,2-ジブロモ-3,4,5,6-テトラ[3,4-ジ-(トリフルオロメチルフェニル)]ピロリルベンゼン(化合物(I-1)) 202.4mg(0.123mmol)の脱水DMF溶液 (3mL) に0 ℃で5分かけて滴下し、室温で2時間撹拌した。
水を加えて反応を止めた後、酢酸エチルで抽出し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。その後、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、エバポレーターで濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン/n-ヘキサン) により精製し、化合物(II-1)の単黄色固体 68.8mgを収率32%で得た。
【0039】
分析結果は以下の通りであった。
H-NMR(テトラクロロエタン-d2、100℃、400MHz)δ7.59(d、J=8.4Hz、1.1H、Ind)、7.55(d、J=8.0Hz、8H、CFPh)、7.53(d、J=8.2Hz、0.9H、Ind)、7.46(d、J=7.8Hz、8H、CFPh)、7.22(d、J=8.0Hz、8H、CFPh)、7.20-7.05(m、5H、Ind)、6.94(t、J=7.7Hz、1H、Ind)、6.91-6.87(m、8H、CFPh)、6.78(s、2.3H、Py-α)、6.77(s、1.7H、Py-α)、6.69(br s、0.9H、Ind-α)、6.55(br s、1.1H、Ind-α)、6.36(s、2.3H、Py-α)、6.35(s、1.7H、Py-α)、2.26(s、2.6H、Ind-CH)、2.22(s、3.4H、Ind-CH
MS(FAB-MS) m/z 1749([M+1]
【0040】
また、H-NMR測定チャートを図2にそれぞれ示す。
【0041】
[実施例2]ラセミ体化合物(III-1)の合成
【化34】
化合物(III-1)を、化合物(III-1P)と化合物(III-1M)との混合物であり、ラセミ体(III-1)と定義する。
還流装置を装着した500mL四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、1,2,3,4-テトラ[3,4-ジ-(トリフルオロメチルフェニル)]ピロリル-5,6-(3-メチル)インドリルベンゼン 364mg(0.208mmol)の脱水塩化メチレン溶液(250mL)、塩化第二鉄 502mg(3.10mmol)のニトロメタン溶液(5mL)を入れ、撹拌しながら2時間還流した。
ヒドラジン一水和物を加えて反応を止めた後、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した。その後、硫酸ナトリウムを用いて乾燥させ、エバポレーターで濃縮した。残渣をアルミナカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン/n-ヘキサン) により精製し、更にトルエンとヘキサンの混合溶媒から再結晶して、化合物(III-1)30.4mgを収率8%で取得した。
【0042】
分析結果は以下の通りであった。
H-NMR(テトラクロロエタン-d2、100℃、400MHz)δ7.61(d、J=8.5Hz、4H、CFPh)、7.52(d、J=7.8Hz、4H、CFPh)、 7.39(d、J=8.4Hz、2H、Ind)、7.10-7.00(m、12H、CFPh)、6.96(t、J=7.5Hz、2H、Ind)、6.90(d、J=8.5Hz、4H、CFPh)、6.81-6.66(m、10H、CFPh+Ind)、6.50(d、J=8.4Hz、2H、Ind)、1.76(s、6H)
MS(MALDI) calcd.for C96H46F24N6:1738.3401、Found:1738.3343
【0043】
また、H-NMR測定チャートを図3に、LDI TOF-MS測定チャートを図4にそれぞれ示す。
【0044】
なお、化合物(III-1)を、ダイセルキラルパックIA及びヘキサン/クロロホルム/エタノール(95/3/2=v/v/v)混合液を用いて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析したところ、化合物(III-1P、溶出時間27分)と化合物(III-1M、溶出時間29分)との混合物として構成されるラセミ体化合物であることを確認した。分析チャートを図5に示した。
更に、化合物(III-1)の塩化メチレン溶液の紫外-可視吸収ペクトルと発光スペクトル(励起光:430nm)を図6に示した。蛍光量子収率ΦFL=0.10であり、蛍光寿命=4.7nsであった。
また、化合物(III-1)の高速液体クロマトグラフィーによる光学分割によって取得した化合物(III-1P)と化合物(III-1M)のCDおよびCPLを室温、塩化メチレン溶液において測定し、図7および図8((励起光:370nm)に示した。キラリティーを変えることで、符号の異なる円偏光発光を観測し、その異方性因子(glum)は3.7×10-2と高い値であり、優れた円偏光特性を有することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のヘリセン誘導体によれば、特異なキラリティーの性質を有し、例えば、三次元ディスプレイや光通信、セキュリティ分野への応用が期待でき、産業上の利用が可能である。
図1
図2
図3
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図6
図7
図8