(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040000
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】帯電防止コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 133/00 20060101AFI20220303BHJP
C09D 157/06 20060101ALI20220303BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
C09D133/00
C09D157/06
C09D5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128891
(22)【出願日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2020142745
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】松本 光史
(72)【発明者】
【氏名】秋月 伸介
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 裕行
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG001
4J038CG142
4J038GA03
4J038KA03
4J038KA12
4J038MA14
4J038NA05
4J038NA07
4J038NA20
4J038PB07
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】撥水性の反応型汚染防止剤を帯電防止コーティング成分との相溶性が良いものとして、かつ撥水性が長期間持続する塗膜を提供する、帯電防止コーティング組成物を提供する。
【解決手段】アクリルポリオール樹脂(A)、ポリイソシアネート硬化剤(B)、反応型汚染防止剤(C)および帯電防止剤(D)を含む帯電防止コーティング組成物である。前記反応型汚染防止剤(C)は特定のシロキサンモノマー(a)、ポリイソシアネート硬化剤と反応し得る官能基を有するモノマー(b)およびその他共重合可能なモノマー(c)の共重合体であり、モノマー(a)は、反応型汚染防止剤(C)100重量部に対し、30~60重量部の量で含まれ、前記反応型汚染防止剤(C)が、アクリルポリオール樹脂(A)100重量部に対して、1~50重量部の量で含有される帯電防止コーティング組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルポリオール樹脂(A)、ポリイソシアネート硬化剤(B)、反応型汚染防止剤(C)および帯電防止剤(D)を含む帯電防止コーティング組成物であり、
前記反応型汚染防止剤(C)は、下記式I:
【化1】
[式中、Meはメチル基を示し、R
1は水素原子またはメチル基を示し、R
2は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を示し、R
3は酸素原子が介在することもある炭素数1~6のアルキル基を示し、nは0または1以上の整数を表す。]、
で表されるシロキサンモノマー(a)、ポリイソシアネート硬化剤と反応し得る官能基を有するモノマー(b)およびその他共重合可能なモノマー(c)の共重合体であり、モノマー(a)は、反応型汚染防止剤(C)100重量部に対して、20~70重量部の量で含み、
前記反応型汚染防止剤(C)が、アクリルポリオール樹脂(A)100重量部に対して、0.5~50重量部の量で含有することを特徴とする、帯電防止コーティング組成物。
【請求項2】
前記反応型汚染防止剤(C)中のポリイソシアネート硬化剤と反応し得る官能基が水酸基であり、前記反応型汚染防止剤が、水酸基価50~300mgKOH/gおよび数平均分子量5,000~80,000を有する、請求項1記載の帯電防止コーティング組成物。
【請求項3】
上記帯電防止剤(D)は、帯電防止コーティング組成物中に1.0~10重量%含有する、請求項1または2記載の帯電防止コーティング組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の帯電防止コーティング組成物を用いて形成した塗膜が純水の接触角85度以上を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の帯電防止コーティング組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の帯電防止コーティング組成物を用いて形成した塗膜の帯電防止性能について表面抵抗率が9.0×1010Ω/□未満であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の帯電防止コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止コーティング組成物、特に汚れが付着しにくい塗膜を形成する帯電防止コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場や自動車等からの排出ガスによって大気中に油性の汚染物質が浮遊している状況である。このような汚染物質が建築物や土木構造物等の表面に付着すると、例えば、降雨時に黒い筋状の汚れ(雨筋汚染)となって現れ、建築物や土木構造物等の美観性を低下させるという問題が生じている。また、自動車においては、道路に散布されている無機塩類、樹液、鳥の糞なども塗膜の汚れとなり美観性を低下させている。
【0003】
付着した汚れに対しては、塗膜に撥水性を持たせることで、雨水などによる洗浄効果によりある程度、除去が可能となる。例えば、特許文献1(特開2009-191130号公報)には、アルキルトリアルコキシシランおよび/またはアルキルトリクロロシランの
アルキル鎖長の異なるものの混合物の加水分解物および硬化触媒を含有する自動車塗装面用コーティング剤組成物が記載されている。このコーティング剤組成物から得られた塗膜は、撥水性の効果があるものの、機械的な方法で、物体表面を一度擦ればその効果が薄れるなどの問題がある。また、特許文献1のように低分子量のポリシロキサン化合物を塗料に配合する際には種々の問題が生じる。具体的には、ポリシロキサン化合物は通常「ハジキ」と呼ばれる塗膜の重大な欠陥の原因物質とされており、塗料組成物とポリシロキサン化合物との間に充分な相溶性がない場合には、塗膜の欠陥を誘発することになる。更に、塗料組成物とポリシロキサン化合物との間に相溶性があっても、単純な混合体である場合には、撥水性を発現する物質であるポリシロキサン化合物が経時的に塗膜表面から溶出し、撥水性が短時間で持続しなくなるという問題を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、撥水性の反応型汚染防止剤をコーティング成分との相溶性の良いものにして、かつ撥水性が長期間無くならない塗膜を提供する帯電防止コーティング組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は以下の態様を提供する:
[1]アクリルポリオール樹脂(A)、ポリイソシアネート硬化剤(B)、反応型汚染防止剤(C)および帯電防止剤(D)を含む帯電防止コーティング組成物であり、
前記反応型汚染防止剤(C)は、下記式I:
【化1】
[式中、Meはメチル基を示し、R
1は水素原子またはメチル基を示し、R
2は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を示し、R
3は酸素原子が介在することもある炭素数1~6のアルキル基を示し、nは0または1以上の整数を表す。]、
で表されるシロキサンモノマー(a)、ポリイソシアネート硬化剤と反応し得る官能基を有するモノマー(b)およびその他共重合可能なモノマー(c)の共重合体であり、モノマー(a)は、反応型汚染防止剤(C)100重量部に対して、20~70重量部の量で含み、
前記反応型汚染防止剤が、アクリルポリオール樹脂(A)100重量部に対して、0.5~50重量部の量で含有することを特徴とする、帯電防止コーティング組成物。
[2]前記反応型汚染防止剤(C)中のポリイソシアネート硬化剤と反応し得る官能基が水酸基であり、前記汚染防止剤が、水酸基価50~300mgKOH/gおよび数平均分子量5,000~80,000を有する、[1]の帯電防止コーティング組成物。
[3]上記帯電防止剤(D)は、帯電防止コーティング組成物中に1.0~10重量%含有する、[1]または[2]の帯電防止コーティング組成物。
[4]上記の帯電防止コーティング組成物を用いて形成した塗膜が純水の接触角85度以上を有することを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の帯電防止コーティング組成物。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の帯電防止コーティング組成物を用いて形成した塗膜の帯電防止性能について表面抵抗率が9.0×10
10Ω/□未満であることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の帯電防止コーティング組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、反応型汚染防止剤がポリマー形態を取っていて、しかもイソシアネート硬化剤と反応して帯電防止コーティング組成物のマトリックス中に組み込まれるので、撥水性を示すポリシロキサン部分が相溶性を問題にしないで塗膜中に存在し、ハジキなどの相溶性に起因する欠点が生じない。また、撥水性が塗膜中の全ての部分に均質に存在するので、撥水性が塗膜の擦り傷などで毀損されず、撥水性効果が長期間無くならない。更に、自動車塗装面用コーティング膜に利用する場合、最近強く噴射した水の力で洗浄することも行われるが、そのような洗浄方法でも撥水効果が無くならない。本発明の帯電防止コーティング組成物から得られた塗膜は、撥水性が高く、付着した汚れの洗浄性能が高くなる。そのため、自動車外装用のコーティングに適している。
【0008】
本発明の帯電防止コーティング組成物は、アクリル樹脂を基本とするもので、アクリル系塗膜が形成されるが、アクリル系塗膜は帯電しやすく、埃や塵が付着しやすい。帯電防止剤を組成物中に配合することにより、この帯電に起因する埃や塵の付着も防止できるので、本発明では例えば大気中に漂う塵、火山灰、黄砂の付着による汚れも有効に防止することができる。
【0009】
尚、本明細書では、「汚染」という文言は、帯電による汚れ(即ち、帯電により埃や塵を引き付けて汚れること)を含まないものと考える。帯電による汚れは、本発明の帯電防止コーティング組成物中に含まれる「帯電防止剤」の存在により、防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の帯電防止コーティング組成物は、アクリルポリオール樹脂(A)、ポリイソシアネート硬化剤(B)、反応型汚染防止剤(C)および帯電防止剤(D)を含むものであり、かつ反応型汚染防止剤(C)が、下記式I
【化2】
[式中、Meはメチル基を示し、R
1は水素原子またはメチル基を示し、R
2は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を示し、R
3は酸素原子が介在することもある炭素数1~6のアルキル基を示し、nは0または1以上の整数を表す。]
で表されるシロキサンモノマー(a)、ポリイソシアネート架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(b)およびその他共重合可能なモノマー(c)の共重合体であり、モノマー(a)は、反応型汚染防止剤(C)100重量部に対して、20~70重量部の量で含み、
前記反応型汚染防止剤(C)が、アクリルポリオール樹脂(A)100重量部に対して、0.5~50重量部の量で含有することを特徴とする、帯電防止コーティング組成物である。成分(A)のアクリルポリオール樹脂から順番に説明する。
【0011】
<アクリルポリオール樹脂(A)>
アクリルポリオール樹脂(A)は、本発明の帯電防止コーティング組成物のマトリックスを構成する樹脂で、(メタ)アクリルモノマー、水酸基含有アクリルモノマー、そして他の共重合性モノマーなどの、アクリル樹脂の調製において通常用いられる不飽和モノマーを1種または2種以上用いて調製することができる。本明細書中で「(メタ)アクリル」または「(メタ)アクリレート」とはアクリル、メタクリルのいずれかまたは両方、アクリレートまたはメタクリレートのいずれかまたは両方を意味する。
【0012】
上記(メタ)アクリルモノマーとしては特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n、iまたはt-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどのアルキルエステル類;(メタ)アクリルアミドなどのアミド類;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル類などが挙げられる。
【0013】
水酸基含有アクリルモノマーとしては特に限定されず、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキルエステル類が挙げられる。更にその他の共重合性モノマーとしては、アクリルモノマーと共重合するモノマーであって、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン類;酢酸ビニルなどのビニル化合物などを含む。
【0014】
上記アクリルポリオール樹脂(A)の製造方法としては特に限定されず、例えば、通常のラジカル重合などの溶液重合などにより行うことができる。
【0015】
上記アクリルポリオール樹脂(A)は、数平均分子量が1000~20000であるのが好ましい。数平均分子量が上記範囲内であることによって、帯電防止コーティング組成物の粘度および得られる塗膜の耐候性などの塗膜物性のバランスを良好な範囲に保つことができる。
【0016】
<ポリイソシアネート硬化剤(B)>
ポリイソシアネート硬化剤は、通常塗料に配合されるものが使用される。ポリイソシアネート硬化剤とは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネート硬化剤は、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートおよびこれらポリイソシアネートの誘導体などを挙げることができる。
【0017】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナ
トメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネート、例えば、リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタンなどの脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0018】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、例えば、1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタンなどの脂環族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0019】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネートまたはその混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-または1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物などの芳香脂肪族ジイソシアネート、例えば、1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼンなどの芳香脂肪族トリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0020】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4’-または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン-4,4’,4’’’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエンなどの芳香族トリイソシアネート、例えば、4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネートなどの芳香族テトライソシアネートなどを挙げることができる。
【0021】
また、ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート硬化剤のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)およびクルードTDIなどを挙げることができる。
【0022】
上記ポリイソシアネート硬化剤は、通常ブロック剤でイソシアネート基をブロックされて使用する。ブロック剤は、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得る。ブロック剤は、活性水素基を有する化合物(例えば、アルコール類、オキシム類等)が挙げられる。ブロック剤の例としては、n-ブタノール、n-ヘキシルアルコール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの一価のアルキル(または芳香族)アルコール類;エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルなどのセロソルブ類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールフェノールなどのポリエーテル型両末端ジオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどのジオール類と、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸などのジカルボン酸類から得られるポリエステル型両末端ポリオール類;パラ-t-ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール類;ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;およびε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタムに代表されるラクタム類が好ましく用いられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはそのヌレート体をブロック剤によりブロックしたブロックイソシアネート化合物がより好ましく用いられる。
【0023】
本発明の帯電防止コーティング組成物において、アクリルポリオール樹脂(A)とポリイソシアネート硬化剤(B)との混合比は、塗膜の硬化性や組成物の安定性などの観点から、ポリイソシアネート硬化剤(B)のイソシアネート基当量/アクリルポリオール樹脂(A)の水酸基当量の比が0.6~3.0、好ましくは0.8~1.5の量で配合する。ポリイソシアネート硬化剤(B)のイソシアネート基当量/アクリルポリオール樹脂(A)の水酸基当量の比が0.6より小さいと架橋性が不十分になり、3.0より大きいと熱による黄変が生じやすくなる。
【0024】
<反応型汚染防止剤(C)>
本発明の帯電防止コーティング組成物において、反応型汚染防止剤(C)は下記式I:
【化3】
[式中、Meはメチル基を示し、R
1は水素原子またはメチル基を示し、R
2は水素原子または炭素数1~4のアルキル基を示し、R
3は酸素原子が介在することもある炭素数1~6のアルキル基を示し、nは0または1以上の整数を表す。]、
で表されるシロキサンモノマー(a)、ポリイソシアネート硬化剤と反応し得る官能基を有するモノマー(b)およびその他共重合可能なモノマー(c)の共重合体である。
【0025】
上記シロキサンモノマー(a)は下記式II:
【化4】
で表されるポリシロキサンの末端にあるアルコール基と(メタ)アクリル酸との反応物である。上記式I中、R
1は(メタ)アクリル酸から誘導される基であり、水素原子またはメチル基を示す。上記式Iおよび式II中において、R
2は水素原子または炭素数1~4のアルキル基であり、Meはメチル基である。R
3は炭素数1~6のアルキル基である。nは0または1以上の整数あり、nは好ましくは6~300である。
【0026】
上記式(I)を有するシロキサン基含有モノマー(a)は、より具体的には、信越化学工業社(変性シリコーンオイルシリーズ)、チッソ社(「サイラプレーン」シリーズ)等の会社から市販されており、チッソ社製のFM-0711、FM-0721、FM-0725(以上、商品名)、信越化学社製のX-24-8201、X-22-174DX、X-22-2426(以上、商品名)等が挙げられる。
【0027】
シロキサン基含有モノマー(a)の数平均分子量は、離型性の効果から、500~50000が好ましく、700~3000が特に好ましい。
【0028】
上記ポリイソシアネート硬化剤と反応し得る官能基を有するモノマー(b)において、ポリイソシアネート硬化剤と反応し得る官能基とは、活性水素を有する官能基であり、具体的には水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト等が挙げられる。モノマー(b)の例としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセリンモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリンジメタクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート類;ジエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、テトラエテレングリコールモノアクリレート、ヘキサエチレングリコールモノアクリレート、オクタエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、テトラエチレングリコールモノメタクリレート、ヘキサエチレングリコールモノメタクリレート、オクタエチレングリコールモノメタクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマー;アミノエチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピルアクリレート、アミノプロピルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アミノプロピルアクリルアミド、アミノプロピルメタクリルアミド等のアミノ基含有モノマー等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートが好ましく、具体的にはヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセリンモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリンジメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、テトラエテレングリコールモノアクリレート、ヘキサエチレングリコールモノアクリレート、オクタエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、テトラエチレングリコールモノメタクリレート、ヘキサエチレングリコールモノメタクリレート、オクタエチレングリコールモノメタクリレート等が挙げられる。
【0029】
その他共重合可能なモノマー(c)としては、上記モノマー(a)および(b)と共重合可能なモノマーであればよく、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、グリシジルアクリレート、フルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、(モノ(プロピレングリコールモノメタクリレート)ホスフェート、メチルビニルケトン、酢酸ビニル等を挙げることができる。
【0030】
反応型汚染防止剤(C)の原料モノマー中におけるモノマー(a)の割合は、反応型汚染防止剤(C)100重量部に対して、20~70重量部、好ましくは30~60重量部、より好ましくは45~55重量部である。モノマー(a)の量が少ないと、撥水性能が十分に発揮できず、本発明の帯電防止コーティング組成物の効果が不十分になる。逆に、モノマー(a)の量が多くても、添加量に応じた効果の増加がみられず、塗膜の他の性能が悪くなる。
【0031】
反応型汚染防止剤(C)の原料モノマー中におけるポリイソシアネート硬化剤と反応し得る官能基を有するモノマー(b)の割合は、反応型汚染防止剤(C)100重量に対して、5~50重量部、好ましくは10~40重量部、より好ましくは15~30重量部である。モノマー(b)の量が少ないと、ポリシロキサンが帯電防止コーティング組成物中に十分に分散せず、撥水性が塗膜全域に行き渡らない。逆に、モノマー(b)の量が多くても、添加量に応じた効果の増加がみられず、塗膜の他の性能が悪くなる。
【0032】
反応型汚染防止剤(C)は、モノマー(a)~(c)の共重合体であり、共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体、およびグラフト共重合体のいずれであってもよい。共重合体の製造方法には特別の制限はなく、例えば、ラジカル重合、イオン重合、光重合等の公知の方法を用いることができる。また、反応型汚染防止剤(C)である共重合体を製造する際の温度や反応時間は、モノマーの種類に応じて適宜設定することができる。
【0033】
反応型汚染防止剤(C)は水酸基価50~300mgKOH/g、好ましくは70~200mgKOH/g、より好ましくは80~150mgKOH/gを有し、数平均分子量5,000~80,000、好ましくは20,000~70,000、より好ましくは40,000~60,000を有するのが好ましい。水酸基価が50mgKOH/gより少ないと、架橋が十分に起こらず塗膜性能が出ない欠点を有し、300mgKOH/gを超えると水酸基による極性により、添加する際に樹脂との相溶性が悪く白濁する傾向にある。反応型汚染防止剤(C)の数平均分子量が5000より小さいと、一部架橋しなかったものがブリードアウトしやすくなり、80,000を超えると、粘性が非常に高くハンドリングが悪くなったり、均一に溶けなくなる。
【0034】
反応型汚染防止剤(C)の帯電防止コーティング組成物中の配合量は、アクリルポリオール樹脂(A)100重量部に対して、0.5~50重量部、好ましくは1~30重量部、より好ましくは3~15重量部である。反応型汚染防止剤(C)がアクリルポリオール樹脂(A)100重量部に対して0.5重量部より少ないと、汚染防止効果、即ち撥水効果が得られない。逆に、反応型汚染防止剤(C)の量がアクリルポリオール樹脂(A)100重量部に対して50重量部より多くても、効果の向上がみられず、塗膜性能が悪くなっていく。
【0035】
<帯電防止剤(D)>
本発明の帯電防止コーティング組成物には、帯電防止剤(D)が配合される。アクリル系の塗膜は帯電性能が高いので、埃や塵が付着しやすい。本発明の帯電防止コーティング組成物中に帯電防止剤(D)を帯電防止コーティング組成物中に配合すると、この帯電に起因する埃や塵の付着も防止できるので、例えば大気中に漂う塵、火山灰、黄砂の付着による汚れも有効に防止することができる。
【0036】
帯電防止剤(D)として金属塩及び/又は有機塩からなるイオン性化合物から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。金属塩としては例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。有機塩としては例えば、アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ピペリジニウム塩、ピロリジニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。これらの中でも、帯電防止剤(D)としては、樹脂との相溶性の点、腐食防止性の点から、アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ピペリジニウム塩、ピロリジニウム塩等の窒素含有カチオンからなるオニウム塩やホスホニウム塩からなるイオン性化合物を含有することが好ましく、特に好ましくはアンモニウム塩、更に好ましくはアンモニウムカチオンとトリフルオロメタンスルホニルイミドアニオンからなるアンモニウム塩である。市販品としては、メチルトリ-n-ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(3M社製)が好ましく用いられる。
【0037】
上記帯電防止剤(D)は、帯電防止コーティング組成物中に1.0~10重量%、好ましくは1.5~8重量%、より好ましくは2.0~7重量%(固形分)である。1.0重量%より少ないと、帯電防止効果がされず、埃や塵が付着しやすくなる。10重量%を超えても、添加量の増大による効果の増大がみられず、塗膜性能が悪くなる。
【0038】
<帯電防止コーティング組成物>
本発明の帯電防止コーティング組成物は、上記帯電防止コーティング組成物を構成する各成分を、通常用いられる手段によって混合することによって、調製することができる。上記帯電防止コーティング組成物組成物は、必要に応じて、顔料、表面調整剤(消泡剤、レベリング剤等)、顔料分散剤、可塑剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、静電助剤、熱安定剤、光安定剤、溶剤(水、有機溶剤)その他の添加剤を含有してもよい。
【0039】
上記帯電防止コーティング組成物が顔料を含む場合における顔料含有率としては、適用用途に応じて通常設定される範囲とすればよい。例えば、上記水性ベース帯電防止コーティング組成物中の樹脂および硬化剤の合計固形分および顔料の合計100質量部に対する顔料の質量%(PWC:Pigment Weight Concentration)として、0.1~50質量%とすることが好ましい。
【0040】
<塗膜形成方法>
本発明の帯電防止コーティング組成物は、通常、撥水効果があるので、最外層の塗膜として使用される。被塗物上に塗膜を形成する場合、下塗り塗膜、中塗り塗膜、上塗り塗膜、およびクリヤー塗膜を形成することが多い。通常、被塗物上に、電着塗料かその他の防錆性塗料を塗布して下塗り塗膜を形成し、次いで中塗り塗料組成物および上塗り塗料組成物を順次被塗物に塗装して、中塗り塗膜および上塗り塗膜を形成する。更に、上記上塗り塗膜の上に、本発明の帯電防止コーティング組成物を塗装して、硬化工程を経て、最外層塗膜を形成するのが好ましい。
【0041】
本発明の帯電防止コーティング組成物は、被塗物上に塗布した後、好ましくは70~170℃、より好ましくは70~160℃、さらに好ましくは70~150℃で硬化する。
【0042】
<被塗物>
上記方法における被塗物として、鉄、鋼、ステンレス、アルミニウム、銅、亜鉛、スズなどの金属およびこれらの合金などの鋼板;ポリエチレン樹脂、EVA樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂など)、塩化ビニル樹脂、スチロール樹脂、ポリエステル樹脂(PET樹脂、PBT樹脂などを含む)、不飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリルスチレン(AS)樹脂、ポリアミド樹脂、アセタール樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド(PPO)などの樹脂;および、有機-無機ハイブリッド材などが挙げられる。これらは成形された状態であってもよい。本発明の帯電防止コーティング組成物は、特にポリエチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂など)、スチロール樹脂、ポリエステル樹脂(PET樹脂、PBT樹脂などを含む)、ポリカーボネート樹脂などの帯電しやすい材料や、FRP、CFRPに用いる不飽和ポリエステル樹脂の時に効果を発揮する。
【0043】
上記鋼板は、必要に応じて、化成処理が施された後に電着塗膜が形成された状態であってもよい。化成処理として、例えば、リン酸亜鉛化成処理、ジルコニウム化成処理、クロム酸化成処理などが挙げられる。また電着塗膜として、カチオン電着塗料組成物またはアニオン電着塗料組成物を用いた電着塗装によって得られる電着塗膜が挙げられる。
【0044】
上記樹脂は、必要に応じて、有機溶媒を用いた蒸気洗浄が行われていてもよく、または中性洗剤を用いた洗浄が行われていてもよい。さらに、必要に応じたプライマー塗装が施されていてもよい。
【0045】
本発明の帯電防止コーティング組成物の塗装は、通常用いられる塗装方法によって塗装することができる。例えば、本発明の帯電防止コーティング組成物を自動車車体に塗装する場合は、得られる塗膜の外観を高めるために、エアー静電スプレー塗装による多ステージ塗装、好ましくは2ステージで塗装するか、または、エアー静電スプレー塗装と、通称「μμ(マイクロマイクロ)ベル」、「μ(マイクロ)ベル」あるいは「メタベル」等と言われる回転霧化式の静電塗装機とを組み合わせた塗装方法などを用いることができる。
【0046】
本発明の帯電防止コーティング組成物から形成される塗膜の膜厚は、乾燥膜厚として例えば5~50μmであるのが好ましく、10~40μmであるのがさらに好ましい。
【0047】
本発明の帯電防止コーティング組成物の帯電防止性能としては、本発明の上記帯電防止コーティング組成物を塗工したサンプルを実施例に記載する表面抵抗率測定装置を用いて測定する。この方法で測定された表面抵抗値は、好ましくは9.0×1010Ω/□未満、より好ましくは1.0×1010Ω/□未満、さらに好ましくは5.0×109Ω/□未満である。表面抵抗が高すぎると、摩擦によって帯電した電気を除電することが出来ず、塵やホコリが付着し汚れの原因となる。表面抵抗値は低いほど除電にかかる時間は短くなるため、低いほど付着による汚れを防止できる。
【0048】
本発明の帯電防止コーティング組成物を塗工したサンプルの接触角は、実施例に記載の接触角測定装置を用いて接触角を測定する。この方法で得られた接触角値は、好ましくは85度以上、より好ましくは90度以上、さらに好ましくは95度以上である。接触角が高いほど、水滴が球状であり、振動などでコロコロと水滴が転がり、サンプルからの水切れが良い。
【実施例0049】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
【0050】
(製造例1)
アクリルポリオール樹脂(A)の製造
温度調節器、攪拌翼、還流管、窒素導入口を備えた2Lのセパラブルフラスコに、酢酸ブチル444.27gを仕込み、フラスコ内部を窒素雰囲気下にした後、温度を130℃に昇温して一定に保った。一方、スチレン(ST)255g、メタクリル酸(MAA)8.5g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)394.4g、アクリル酸2-エチルヘキシル(EHA)117.47g、メタクリル酸イソブチル(iBMA)74.72g、およびカヤエステルO 102gの混合液を滴下ロートに入れて、3時間かけて滴下した。
【0051】
次いで、1時間反応を継続した後、後開始剤として、酢酸ブチル204g、カヤエステルO 20.4gの混合液を30分間かけて滴下し、更に1時間反応を継続して固形分60%になるように酢酸ブチルで希釈を行い、アクリルポリオール樹脂(A)を得た。
【0052】
(製造例2)
反応型汚染防止剤(C)の合成
温度調節器、攪拌翼、還流管、窒素導入口を備えた0.5Lのセパラブルフラスコに、酢酸ブチル30重量部を仕込み、フラスコ内部を窒素雰囲気下にした後、温度を120℃に昇温して一定に保った。一方、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)20.88重量部、メタクリル酸イソブチル(iBMA)49.12重量部、ポリシロキサン基含有アクリルモノマー(信越化学社製:X-22-174ASX)30重量部およびカヤエステルO 0.88重量部の混合液を滴下ロートに入れて、3時間かけて滴下した。
【0053】
次いで、1時間反応を継続した後、後開始剤として、酢酸ブチル2重量部、カヤエステルO 0.5重量部の混合液を30分間かけて滴下し、更に1時間反応を継続して固形分50%の反応型汚染防止剤(C)を得た。
【0054】
<水酸基価(OHV)>
水酸基価は、JIS K 0070に記載されている水酸化カリウム水溶液を用いる中和滴定法により求めた。
【0055】
<数平均分子量>
数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定した値であり、ポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0056】
(実施例1~2および比較例1~3)
塗料および塗膜の作成
アクリルポリオール樹脂(A)、ポリイソシアネート硬化剤(B)、反応型汚染防止剤(C)および帯電防止剤(D)を表1に記載した配合割合で配合し、酢酸ブチルを用いて樹脂分を50質量%に希釈した帯電防止コーティング組成物を、アプリケーターを用いて、乾燥膜厚が30μmになるように、ポリプロピレン基材上に塗装し、試験片は、温度20±5℃、相対湿度78%以下の塗装環境下で7分間放置した。
【0057】
次いで、熱風乾燥機を用いて140℃下で、30分間乾燥及び加熱硬化させて、基材と塗膜とを有する試験片を得た。得られた塗膜に関する特性、即ち表面抵抗値および水接触角について下記に記載のように測定し、結果を表1に示す。表1には、各配合成分(アクリルポリオール樹脂(A)、ポリイソシアネート硬化剤(B)、反応型汚染防止剤(C)および帯電防止剤(D))の特性(分子量や水酸基価など)と配合量を記載した。
【0058】
尚、実施例および比較例で用いたアクリルポリオール樹脂(A)の水酸基価は160mgKOH/gであり、反応型汚染防止剤(C)の水酸基価は90mgKOH/gであり、ポリイソシアネート硬化剤(B)として、N3600(コベストロ社製、NCO%=23)、帯電防止剤(D)として、メチルトリ-n-ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(融点27.5℃(メーカー公表値)(3M社製、「FC-4400」))を用いた。
【0059】
<表面抵抗値の測定>
三菱化学アナリテック社製、製品名:ハイレスタを用い、電圧250V、膜厚設定30μmで、測定時間10秒後の表面抵抗値を測定した。
【0060】
<接触角の測定>
協和界面科学社製のDMo-701型接触角計を用い、25℃、55%RHの雰囲気下で、約1μLの蒸留水を塗膜表面に着滴させ、10秒後の液滴と塗膜表面とのなす角をθ/2法にて算出した。
【0061】
実施例および比較例で得られた塗膜の本発明で強調したい特性を以下に記載のように評価し、結果を表2に示す。
【0062】
<静電気によるホコリの付着性>
晴れの日の大気中の塵・ホコリ汚れを想定
ポリプロピレン(PP)板に上記帯電防止コーティング組成物を塗工したサンプルについて、ウエスを用い10往復塗面を擦り付け帯電させた。直後に、塵・ホコリ代替として、JIS11種ダストを2g塗膜に振りかけたのち、塗膜を垂直にし、帯電により付着していないダストを落とし、その塗膜の目視外観と表面抵抗値の値から次の評価基準にて判断した。表面抵抗値の値は低いほど、擦り付けにより帯電した電気を素早く除電する。
○…塗膜にダストが付くことなく落ちていく。また、表面抵抗値が1.0×1010Ω/□未満である。
△…塗膜に殆どダストが付くことなく落ちていく。また、表面抵抗値が1.0×1010Ω/□以上~9.0×1010Ω/□未満である。
×…塗膜にダストが付着しており、表面抵抗値が1
以上
【0063】
<塗膜の撥水性評価>
塗膜の表面を目視観察し、下記の基準で評価した。
○:付着した水滴が玉のように纏まっており、撥水性がよい(接触角が90度以上)
×:液滴がまとまらず、新車感がない(接触角が90度未満)
【0064】
<泥・土汚れの洗浄性>
雨の日の泥水等を想定
JIS試験用ダスト11種とイオン交換水を5:95wt%の割合で配合し、JIS試験用ダスト11種5wt%懸濁液を汚染物質分散液とし、汚染物質分散液を、霧吹きにて塗板から約20cm離し、塗板に均一に液滴が存在するように噴霧した。得られた汚れ物質の液滴がのった試験片を、熱風乾燥機に(60℃で1時間)乾燥させたものを評価試験片とし、評価試験片を70-90度の角度で立てかけ、スプレーを用いてイオン交換水で汚染物質が落ちなくなるまで噴霧したものを目視判断した。
○…乾燥した水滴の跡が残らず、塗膜に汚れが残っていない。
×…乾燥した水滴の跡が残っている。汚れが付着している。
【0065】
<塗膜の透明性・外観>
実施例・比較例によって得られた塗膜について、塗膜の透明性・外観を目視により判断した。
◎…塗膜が透明かつ艶があり高級感がある。
○…塗膜が透明である。
△…塗膜が白濁している。
【0066】
【0067】
【0068】
表1および表2から明らかなように、実施例1および2では、本発明の範囲にある帯電防止コーティング組成物から得られた塗膜が、撥水性や洗浄性、更には塗膜透明性等が優れていることが理解できる。比較例1では、反応型汚染防止剤(C)を配合していない例で、塗膜の撥水性や泥・土汚れの洗浄性が悪い。比較例2では、実施例1の帯電防止コーティング組成物で帯電防止剤(D)を含まない例であり、静電気によるホコリの付着性が悪い。比較例3では、反応型汚染防止剤(C)および帯電防止剤(D)を共に含まない例で、透明性や外観のみ優れているが、他の性能が悪いことが解る。