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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040065
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】電気手術デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20220303BHJP
   A61B 17/3205 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B17/3205
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021137135
(22)【出願日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】2013367.4
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2014541.3
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】594089821
【氏名又は名称】ジャイラス メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リーアム ジョン マカリアー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ロイド
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス アラン ディクソン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF21
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK39
4C160KL01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】RF電気手術部と切断部との間に低減された導電性を提供するように構成される手術機器を提供する。
【解決手段】導電性の低減が、生成されたRF場の効率及び一貫性を改善し、標的となる組織の最も近くでより高い電流密度を伴い、RF電気手術機器の性能を改善する。導電性は、絶縁材料の層、突出した絶縁部、又は絶縁材料から構成された切断部を使用して低下させることができる。更に、滑らかな絶縁層を設けることによって、シェディングが低減され、切断部の使用可能時間を延ばすことができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気手術用エンドエフェクタであって:
使用時に、作動する切断方向に位置する組織を切断することができる切断ブレードが形成された切断部を有する回転可能な管状要素を有する回転シェーバー構成と;
活性電極と;
前記回転可能な管状要素の周りに同心円上に配置された第2の管状要素であって、前記第2の管状要素は、前記回転可能な管状要素の前記切断ブレードがウィンドウ内に位置するように、その壁に形成された切断ウィンドウを有し、前記第2の管状要素の外表面は、戻り電極である、前記第2の管状要素と;
前記第2の管状要素と第1の切断部との間の導電性を低減させるように配置された、前記回転可能な管状要素の遠位端から遠位に突出する絶縁部と;を備える、
電気手術用エンドエフェクタ。
【請求項2】
前記絶縁部は、前記第2の管状要素の内側遠位端と接触し、前記回転可能な管状要素と前記第2の管状要素との間のベアリング面として作用する、
請求項1に記載の電気手術用エンドエフェクタ。
【請求項3】
前記絶縁部は:
セラミック;又は、
ポリマー;のうちの1つである、
請求項1又は請求項2に記載の電気手術用エンドエフェクタ。
【請求項4】
前記絶縁部は、前記第1の切断部の遠位端にオーバーモールドされる、又は堆積される、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電気手術用エンドエフェクタ。
【請求項5】
前記絶縁部は、適切な受容形状に挿入されるプッシュフィット挿入体を備え、
前記適切な受容形状は:
前記第1の切断部の遠位端;又は、
前記第2の管状要素の内側遠位半球;のうちの1つに位置する、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の電気手術用エンドエフェクタ。
【請求項6】
前記絶縁部の材料は、潤滑性である、
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の電気手術用エンドエフェクタ。
【請求項7】
電気手術機器であって:
ハンドピースと;
前記機器を制御する前記ハンドピース上の、ユーザが操作可能な、1つ又は複数のボタンと;
RF電気接続部を有する手術用シャフト、及びエンドエフェクタのための駆動構成要素と;を備え、
前記電気手術機器は、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の電気手術用エンドエフェクタを更に備え、
前記回転シェーバー構成は、使用時に動作するために回転シェーバーを駆動するように前記駆動構成要素に動作可能に接続され、前記活性電極は、前記RF電気接続部に接続される、
電気手術機器。
【請求項8】
電気手術システムであって:
RF電気手術ジェネレータと;
吸引源と;
請求項7に記載の電気手術機器と;を備え、
この構成は、使用時に、前記RF電気手術ジェネレータが、RF電気接続を介して前記活性電極にRF凝固又はアブレーション信号を供給し、組織の凝固又はアブレーションを可能にする、
電気手術システム。
【請求項9】
電気手術用エンドエフェクタであって:
使用時に、作動する切断方向に位置する組織を切断することができる切断ブレードが形成された切断部を有する回転可能な管状要素を有する回転シェーバー構成と;
活性電極と;
前記回転可能な管状要素の周りに同心円状に配置された第2の管状要素であって、前記第2の管状要素は、前記回転可能な管状要素の前記切断ブレードがウィンドウ内に位置するように、その壁に形成された切断ウィンドウを有し、前記第2の管状要素の外表面は、戻り電極である、前記第2の管状要素と;
前記第2の管状要素と第1の切断部との間の導電性を低減するように配置された絶縁層と;を備える、
電気手術用エンドエフェクタ。
【請求項10】
前記絶縁層は:
陽極酸化層のような表面処理層;
ポリマー層;又は、
ダイヤモンドライクカーボン(DLC)層;のうちの1つである、
請求項9に記載の電気手術用エンドエフェクタ。
【請求項11】
前記絶縁層の材料は、潤滑性である、
請求項9又は請求項10に記載の電気手術用エンドエフェクタ。
【請求項12】
前記絶縁層は:
前記回転可能な管状要素;
前記回転可能な管状要素の遠位端;
前記第2の管状要素の内半径;及び/又は、
前記第2の管状要素の外半径;のうちの1つ又は複数を覆う層である、
請求項9~請求項11のいずれか1項に記載の電気手術用エンドエフェクタ。
【請求項13】
前記回転可能な管状要素は、セラミックのような非導電性材料から構成され、前記非導電性材料の表面は、前記絶縁層として作用する、
請求項9に記載の電気手術用エンドエフェクタ。
【請求項14】
電気手術機器であって:
ハンドピースと;
前記機器を制御する前記ハンドピース上の、ユーザが操作可能な、1つ又は複数のボタンと;
RF電気接続部を有する手術用シャフト、及びエンドエフェクタのための駆動構成要素と;を備え、
電気手術機器は、請求項9~請求項13のいずれか1項に記載の電気手術用エンドエフェクタを更に備え、
前記回転シェーバー構成は、使用時に動作するために回転シェーバーを駆動するように前記駆動構成要素に動作可能に接続され、前記活性電極は、前記RF電気接続部に接続される、
電気手術機器。
【請求項15】
電気手術システムであって:
RF電気手術ジェネレータと;
吸引源と;
請求項14に記載の電気手術機器と;を備え、
この構成は、使用時に、前記RF電気手術ジェネレータが、RF電気接続を介して前記活性電極にRF凝固又はアブレーション信号を供給し、組織の凝固又はアブレーションを可能にする、
電気手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載される実施の形態は電気手術デバイスに関し、特に、デバイスの性能を改善するために、導電性を低減する手段が、第1の切断部と、一対の電極との間に提供される、電気手術デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の構成の、米国特許第7,150,747号(B1)は、組織を機械的に切断し切断された組織を凝固させるために使用されるブレード(刃)を有する手術デバイスを記載する。ブレードは電気的に伝導性であり、戻り電極と共にバイポーラ配置で活性電極として機能する。電気エネルギーは、ブレードの遠位領域と、第1の部材を受容するためのルーメンを有する第2の部材との間の電気的接続を通して、ブレードに伝達される。
【発明の概要】
【0003】
本発明の実施の形態は、RF電極のRF場の一貫性を改善するように構成された、改善された電気手術機器を提供し、このことが次にRF凝固及びアブレーションの性能を改善する。バイポーラRF機能と切断作用の両方を提供するシステムでは、エンドエフェクタ(作業をする先端部分)は複雑なレイアウトを有し、これは例えば回転切断エッジのような、電極からエンドエフェクタの他の部分への意図しない経路を電流が進む可能性がある。回転要素への電流経路の伝導性を下げることが重要である。このことが生成されるRF場の一貫性を改善するからである。
【0004】
導電性は、電極と内側切断部材との間に絶縁部又は遮蔽部を設けることによって低下させてもよい。これは、それ自体の絶縁を提供するだけでなく、戻り電極と内側切断部材との間の分離を確実にする、絶縁層又は絶縁突出部の形をとることができる。有益なことに、絶縁部は、内側ブレードと外側ブレードが接触し微細なブレードの破片が生成されるシェディング(脱落)を実質的に低減させることができる。これにより、外科医の視認性及び患者の人体に悪影響を及ぼす可能性がある、手術部位内の望ましくない微粒子の生成を最小限に抑える。
【0005】
上記に鑑みて、本発明は、一態様から電気手術用エンドエフェクタを提供し、エンドエフェクタは:使用時に、作動する切断方向に位置する組織を切断することができる切断ブレードが形成された切断部を有する回転可能な管状要素を有する回転シェーバー構成と;活性電極と;回転可能な管状要素の周りに同心円上に配置された第2の管状要素であって、第2の管状要素は回転可能な管状要素の切断ブレードがウィンドウ内に位置するように、その壁に形成された切断ウィンドウを有し、第2の管状要素の外表面は戻り電極である、前記第2の管状要素と;第2の管状要素と第1の切断部との間の電気的伝導性を低減させるように配置された、回転可能な管状要素の遠位端から遠位に突出する絶縁部と;を備える。
【0006】
このような構成は、RF電流の大部分が活性電極から戻り電極への意図された経路を進むことを確実にすることによって、従来技術の既知のRFシェーバー構成を改善する。回転可能な管状要素への漏れは、導電性の低下によって減少し、アブレーション及び凝固の間、デバイスのRF効率及びRF性能を改善する。電気手術機器の凝固又はアブレーション機能を使用する場合、内側切断部材は、それが静止している(切断動作が行われていない)間、「パーキング(停める)」されてもよい。生成されるRF場は、絶縁された回転可能な内側切断要素の可変位置が活性電極で生成される有用なRF場に大きく影響しないので、内側ブレードの「パーキング角度」のより広い範囲にわたってより一貫性がある。プラズマ発生電極に近接している回転可能な管状要素への導電性を低減することによって、電気的損失が低減される。ハンドピース(手で握る部分)からの軸方向の予荷力(pre-load force)が回転可能な管状要素に加えられる可能性があり、これは、回転可能な管状要素の切断部を、第2の管状要素との密接な機械的及び電気的接触へ強制する。対照的に、回転可能な管状要素の半径((半径内の)放射状の範囲)は、第2の管状要素の半径から間隙(ギャップ)で離間され得る。したがって、回転可能な管状要素の遠位端に絶縁部を配置することは、導電性を低下させる上で最も大きな影響を及ぼす。
【0007】
一実施の形態では、絶縁部が第2の管状要素の内側遠位端に接触し、回転可能な管状要素と第2の管状要素との間のベアリング面として作用する。ベアリング面として作用する際に、絶縁部は、回転可能な管状要素と第2の管状要素との間の接触面積を減少させる。これは、回転可能な管状要素と第2の管状要素との間の唯一の接触が絶縁材料を通してのため、導電性を低下させる。更に、絶縁部は回転可能な管状要素と第2の管状要素との残りの表面間の分離を保証し、絶縁の間隙を提供するように作用する。標準的なRFシェーバーでは、ブレード間の摩擦によって切断ブレードの小片が削り取られるシェディングが発生することがある。回転可能な管状要素と第2の管状要素との間の接触面積を絶縁部だけに減少することによって、シェディングが低減される。このことは、電気手術機器の作業寿命を延ばし、手術中に患者の体内に残る破片の発生を低減する。
【0008】
一実施の形態では、絶縁部は:セラミック又はポリマーのうちの1つである。非金属絶縁部を設けることは、内側ブレードの遠位の半球部分にわたって、切断中の金属同士の接触が無くなり、シェディングを減少させる。
【0009】
加えて、更なる例では、絶縁部が第1の切断部の遠位端にオーバーモールドされる又は堆積される。
【0010】
一実施の形態では、絶縁部が適切な受容形状に挿入されるプッシュフィット(押し込み式の)挿入体であり、適切な受容形状は:第1の切断部の遠位端又は第2の管状要素の内側遠位半球のうちの1つに位置する。プッシュフィット(又はスナップフィット(スナップ式の))挿入体を使用すると、絶縁部を簡単に取り付けることができる。幾何学的形状は、異なる利点を可能にするように選択することができ、例えば、幾何学的形状は、穴、溝、又はスロットを含むことができる。
【0011】
更なる実施の形態では、絶縁部の材料は潤滑性である。潤滑性材料は、絶縁部と第2の管状要素との間の摩擦を減少させる。引っ掛かり(スナッグ)を防止し、回転可能な管状要素が一貫して回転することを可能にすることによって、より一貫した切断作用をもたらすことができ、このことが熱に失われるエネルギーを減少させ、電気手術用エンドエフェクタの効率を更に増加させ得る。潤滑性材料はまた、実質的にシェディングを減少させることができる。更に、切片がつかえたり引っ掛かったりするのを防止するためにより少ない距離が必要とされるところ、切断ブレードと第2の管状要素の切断ウィンドウとの間のより密接な相互作用を可能にする。このことは、より近くより正確な組織切断作用を可能にする。
【0012】
別の例は電気手術機器を説明し、電気手術機器は:ハンドピースと;機器を制御するハンドピース上の、1つ又は複数のユーザが操作可能なボタンと;RF電気接続部を有する手術用シャフト、及びエンドエフェクタのための駆動構成要素と;を備え、電気手術機器は、上記のいずれかによる電気手術用エンドエフェクタを更に備え、回転シェーバー構成は、使用時に動作するために回転シェーバーを駆動するように駆動構成要素に動作可能に接続され、活性電極は、RF電気接続部に接続される。
【0013】
更なる実施の形態は電気手術システムを開示し、電気手術システムは:RF電気手術ジェネレータと;吸引源と;上記による電気手術機器と;を備え、この構成は、使用時に、RF電気手術ジェネレータが、RF電気接続を介して活性電極にRF凝固又はアブレーション信号を供給し、組織凝固又はアブレーションを可能にする。
【0014】
本発明の別の態様は、電気手術用エンドエフェクタを提供し、エンドエフェクタは:使用時に、作動する切断方向に位置する組織を切断することができる切断ブレードが形成された切断部を有する回転可能な管状要素を有する回転シェーバー構成と;活性電極と;回転可能な管状要素の周りに同心円状に配置された第2の管状要素であって、第2の管状要素は回転可能な管状要素の切断ブレードがウィンドウ内に位置するように、その壁に形成された切断ウィンドウを有し、第2の管状要素の外表面は戻り電極である、前記第2の管状要素と;第2の管状要素と第1の切断部との間の導電性を低減するように配置された絶縁層と;を備える。
【0015】
このことは、RF電流の大部分が活性電極から戻り電極への意図された経路を進むことを確実にすることによって、従来技術の既知のRFシェーバー構成を改善する。回転可能な管状素子への漏れは、導電性の低下によって減少し、アブレーション及び凝固の間、デバイスのRF効率及びRF性能を改善する。電気手術機器の凝固又はアブレーション機能を使用する場合、内側切断部材は「パーキング」されてもよい。生成されるRF場は、絶縁された回転可能な内側切断要素の可変位置が活性電極で生成される有用なRF場に大きく影響しないので、内側ブレードの「パーキング角度」のより広い範囲にわたってより一貫性がある。プラズマ発生電極に近接している回転可能な管状要素への導電性を低減することによって、電気的損失が低減される。ハンドピースからの軸方向の予荷力が回転可能な管状要素に加えられる可能性があり、これは、回転可能な管状要素の切断部を、第2の管状要素との密接な機械的及び電気的接触へ強制する。対照的に、回転可能な管状要素の半径は、第2の管状要素の半径から間隙で離間され得る。したがって、第1の切断部と電極との間の絶縁層は、導電性を低下させる上で最も大きな影響を及ぼす。
【0016】
一例では、絶縁層が:陽極酸化などの表面処理層;ポリマー層;又はダイヤモンドライクカーボン(DLC)層;のうちの1つの場合を説明する。
【0017】
別の実施の形態では、絶縁層の材料が潤滑性であるとして記載されている。潤滑性材料は、絶縁層と第2の管状要素の内側遠位端との間の摩擦を減少させ、引っ掛かりを防止し、回転可能な管状要素が一貫して回転することを可能にすることによって、より一貫した切断作用をもたらすことができる。潤滑性材料はまた、シェディングを防止又は低減する。シェディングの機会がより少ないので、回転可能な管状要素及び第2の管状要素はより近接して配置されることができ、これはより正確な切断作用を提供する。
【0018】
更なる例では、絶縁層が:回転可能な管状要素;回転可能な管状要素の遠位端;第2の管状要素の内半径;及び/又は、第2の管状要素の外半径;のうちの1つ又は複数を覆う層である場合を説明する。回転可能な管状素子の表面に絶縁層を設けることは、導電性を低下させる。回転可能な管状要素の遠位端は、第2の管状要素に最も近接しているので、遠位端に絶縁層を設けることにより、必要な絶縁層又はコーティング材料の量を減らすことができ、その一方で、導電性を低下させることができる。回転可能な管状要素上の絶縁層と第2の管状要素との組合せによって、導電性を更に低下させることができる。
【0019】
別の例では、回転可能な管状要素がセラミックなどの非導電性材料から構成され、非導電性材料の表面が絶縁層として作用する場合を説明する。非導電性材料の内側ブレードを構成することにより、ブレードを活性電極から隔離する。有益なことに、別個の絶縁層が不要となり、製造工程が削減される。
【0020】
更なる特徴及び例は、添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
ここで、本発明の実施の形態を、単に例として、添付の図面を参照して更に説明するが、同様の参照番号は同様の部分を指す。
【0022】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る電気手術機器を含む電気手術システムの概略図である。
図2図2は、本発明の一実施の形態に係る電気手術機器の側面図である。
図3図3は、図2の先端の図であり、RF機能が上向きの電気手術用エンドエフェクタを示す。
図4図4は、電気手術用エンドエフェクタの遠位端の断面図である。
図5図5a及び図5bは、中空導電性管及び回転可能なシェーバー要素を示す平面図である。
図6図6は、回転シェーバーブレードの遠位端の図であり、絶縁部を備えている。
図7図7は、回転シェーバーブレードの遠位端の図であり、プッシュフィット又はスナップフィット絶縁部を備えている。
図8図8は、回転シェーバーブレードの側面図であり、絶縁層を備えている。
図9図9は、回転シェーバーブレードの側面図であり、回転シェーバーブレードの遠位端に絶縁層を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図面を参照すると、図1は、電気手術機器12のために接続コード4を介して無線周波数(高周波、RF、radio frequency)出力を提供する出力ソケット2を有する電気手術ジェネレータ1を含む、電気手術装置を示す。機器12は、吸引源10に接続された吸引チューブ14を有する。ジェネレータ1の作動は機器12上のハンドスイッチ(不図示)を介して機器12から実行されてもよく、又は、フットスイッチ接続コード6によってジェネレータ1の後部に別個に接続されたフットスイッチユニット5の手段によって実行されてもよい。図示の実施の形態ではフットスイッチユニット5が、ジェネレータ1の凝固モード、又は、切断又は蒸発(アブレーション)モードをそれぞれ選択するための2つのフットスイッチ5a及び5bを有するが、本明細書に記載の電気手術機器12の実施の形態によっては、以下に更に記載される鋭利な切除部を有する回転管によって機械的に提供される切断と共に、凝固モード又はアブレーションモードのうちの一方又は他方のみを使用することが想定される。ジェネレータのフロントパネルは、アブレーション(切断)又は凝固のパワーレベルをそれぞれ設定するためのプッシュボタン7a及び7bを有し、パワーレベルはディスプレイ8に表示される。プッシュボタン9は、アブレーション(切断)モードと凝固モードの間の選択のための代替手段として提供される。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態の基礎を形成する電気手術機器12を示す。機器12は、近位のハンドル部22と、近位のハンドル部から遠位方向に延在する中空シャフト24と、シャフト外側の遠位端にあるエンドエフェクタアセンブリ(組立部品)26とを含む。パワー接続コード4は機器をRFジェネレータ1に接続し、一方、チューブ14は機器を吸引源10に接続する。機器は、外科医のオペレータがエンドエフェクタの機械的切断機能、又は、この実施の形態において典型的に凝固又はアブレーションを備えるエンドエフェクタの電気手術機能のいずれかを作動させることを可能にするために、作動ボタン(不図示)を更に備えてもよい。
【0025】
図3は、電気手術用エンドエフェクタ26のRF側の一例を示す。機器は、活性電極32、一次吸引チャネル42への開口部、及び外側絶縁シース(鞘)34を備える。
【0026】
図4は、反対側のシェーバー構成を備えるエンドエフェクタアセンブリ26をより詳細に示す。エンドエフェクタは一連の同心円状に配置された管を含み、外側絶縁シース34は、中空導電性管36を含み、その遠位端には、切断ウィンドウ(窓)66として作用するために、その一方の側から切り取られた開口部を有する。切断ウィンドウ66のエッジは、円筒形の回転可能なシェーバー要素40の切断エッジ38に対して使用時にはさみ(シザー)作用を提供するように鋭利にされてもよい。中空導電性管36は戻り電極として作用し、回転可能な円筒形シェーバー要素40を同心円状に取り囲む。「同心円状に取り囲む」とは、シェーバー要素40が管36の内側で同軸であることを意味する。管36の近位部分は、絶縁シース34で覆われている。管36の遠位部分は、切断ウィンドウ66として作用する開口部を有する。シェーバーブレード自体は遠位端でC字形の断面の中空円筒であり、これは遠位端の一部に切り取られた部分を有する中空円筒を意味する。この切り取られた部分は、鋭利に及び鋸歯状にされ、切断エッジ38を形成する。
【0027】
今述べたように、エンドエフェクタの遠位端において、シェーバーブレード40は鋭利な切断エッジ38を有し、これは、鋸歯状であってもよく、又は、切歯を提供するように尖った先に成形されてもよい。使用時において、中空のシェーバーブレード40は、内部吸引ルーメン(内腔)62を画定し、内部吸引ルーメン62は、シャフト24に沿って延在し、最終的には吸引源10に接続する。すなわち、以下で更に説明されるように、シェーバーブレード40は使用時に、機器のシャフトの側部に対して提示され、機器のシャフトの側部への方向に、すなわち、機器の長軸に直交する方向に位置する組織を切断するように動作可能である。活性電極32はシェーバーブレード40の動作方向とは反対の方向に動作可能なように向けられており、その結果、使用時に、ユーザは、電気手術機器を180度回転させて、シェーバー要素を使用して切断された組織を凝固又はアブレーションしてもよい。
【0028】
より詳細には、組織を電気手術的に凝固又はアブレーションするために、ユーザは活性電極32が処置されるべき組織に隣接するように機器12を操作し、ジェネレータ1を作動させて、接続コード4を介して、RFパワーを活性電極32に供給する。供給されるRF信号は、活性電極が単に組織を凝固(乾燥)させるのか、又は、組織をアブレーションするのかに依存し、組織の凝固よりも高いパワーのRF信号が組織のアブレーションに使用される。活性電極32及び戻り電極36は、バイポーラ電極配置で作用する。吸引ルーメン62は、電極32の付近の流体、組織片、気泡、又は他の破片が手術部位から吸引され得るように、吸引源10に接続される。動作中、RF電流全体が活性チップ(先端)32から戻り電極として作用する中空導電性管36へ好ましい経路に沿って流れるのではなく、好ましい経路を進まない、システム性能を低下させる電流が存在し得る。この問題は、上述したように電極及び切断ウィンドウの両方の近傍から破片を除去するように作用する、吸引ルーメン62及び一次吸引チャネル42の位置決めによって悪化する。
【0029】
ラインbbは、活性電極32と戻り電極36との間のより短い優先的なRF追跡経路を示す。ラインcc1は、一次吸引チャネル42を通り内側ブレードエッジへの、より長く、意図しない追跡経路を示す。ラインcc2は一次吸引チャネル42を通り外側ブレードへの、より長く、意図しない追跡経路を示し、依然として電極間を流れながら、これは、電気手術適用のポイントにおける電流密度を減少させる。生成されたRF場(フィールド)の効率性及び一貫性を改善するために、回転可能なシェーバー要素に伝導される電流(経路cc1)、又は、戻り電極へのより長い経路に沿って伝導される電流(経路cc2)を減少させることが好ましい。はさみ作用の性質及び活性電極の位置決めにより、回転可能なシェーバー要素40の遠位端、中空導電性管36、及び活性RF電極32は近接する。このことは、RF電流の一部に、活性チップ32から一次吸引チャネル42を通過して回転可能なシェーバー要素40への経路を提供する。
【0030】
電気手術機器12のRF機能の性能を改善するために、RF場の効率性及び一貫性を増加させることが望ましい。このことは、電極32、36と、回転可能なシェーバー要素40との間の電気伝導性を減少させ、回転可能なシェーバー要素40によって伝導される電流を減少させることによって達成することができる。場合によっては、回転可能なシェーバー要素40へ流れるRF電流を防止又は低減するために、電極32、36と、回転可能なシェーバー要素40との間に電気的遮蔽を提供することを含むことができる。このことは、活性電極32から戻り電極36への所望の経路(bb)を進む、RF電流の割合の増加をもたらす。
【0031】
図5aは、中空導電性管36及び回転可能なシェーバー要素40のみを含むエンドエフェクタアセンブリ26の簡略化された平面図を示す。エンドエフェクタの他の部分はコンセプトの理解を単純化するために、ここでは含まれていない。見て分かるように、回転可能なシェーバー要素36の遠位端は、ポイント402で中空導電性管36と接触する可能性がある、又は、近接する可能性がある。中空導電性管36から回転可能なシェーバー要素40に流れる電流を防止するように、図5bは絶縁部400を含む。この絶縁部400は、ポリマーやセラミック等の絶縁材料で形成される。図6に示すように、絶縁部400は、回転可能なシェーバー要素40の遠位端に取り付けられ、遠位端から遠位側に突出する。あるいは、絶縁部400が中空導電性管36の凹状半球面に取り付けられ、回転可能なシェーバー要素の凸状半球状遠位端に向かって突出するようにしてもよい。絶縁部400は、回転可能なシェーバー要素40の表面上にオーバーモールドされてもよく、又は堆積されてもよい。絶縁部は、回転可能なシェーバー要素40の遠位端と、中空導電性管36の凹状半球状遠位端との間の接触を防止する。それよりむしろ、回転可能なシェーバー要素40と中空導電性管36との間のベアリング面が絶縁部400である。このことは、回転可能なシェーバー要素40と中空導電性管36との間の任意の接触領域が絶縁材料であることを確実にすることにより、導電性を減少させる。
【0032】
先に説明したように、回転可能なシェーバー要素40及び中空導電性管36は電気手術機器12の遠位先端で最も近接しており、その結果、それらは、はさみ作用を提供するように作用することができる。したがって、遠位先端における導電性を減少させることは、電極と回転可能なシェーバー要素との間の全体的な導電性に最も深遠な影響を及ぼすだろう。図5bの実施の形態では、絶縁部400は、遠位端において物理的絶縁分離を提供するとともに、回転可能なシェーバー要素40と中空導電性管36との残りの表面間に間隙(ギャップ)404をもたらす。この間隙は、更なる絶縁メカニズムを提供する。図7は、回転可能なシェーバー要素40の遠位端における穴502(又は、溝又はスロットのような任意の適切な受容形状)に取り付けられるプッシュフィット(又はスナップフィット)挿入体500を示す。これにより、プッシュフィット挿入体500を回転可能なシェーバー要素40の遠位端に容易に位置決めすることができる。これは、上述した絶縁部400と同様の利点をもたらす。
【0033】
図8は、その表面上に設けられた絶縁層600を有する回転可能なシェーバー要素40を示す。これは、遠位に突出する絶縁部400の使用に対する代替技術であり、RF電極と回転可能なシェーバー要素との間の導電性を低下させる。
【0034】
図9は、遠位先端のみに設けられた絶縁層700を有する回転可能なシェーバー要素40を示す。上述したように、電極に近接しているため、回転可能なシェーバー要素40の遠位端に絶縁を設けることは、導電性を低下させる上で最大の効果を有する。有利なことに、これは回転可能なシェーバー要素40のより小さい部分が絶縁層で覆われることを必要とし、必要とされる材料の量を減少させ得る、又は、絶縁層を適用するために必要とされる時間を減少させ得る。
【0035】
回転可能なシェーバー要素40に絶縁層を配置するのではなく、代わりに中空導電性管36に配置してもよい。この層が、中空導電性管36の、回転可能なシェーバー要素40への最も近い部分であるように、中空導電性管36の内部表面のみに適用されてもよく、回転可能なシェーバー要素40を取り囲み、中空導電性管の外部表面が戻り電極として作用することを可能にする。これにより、必要な絶縁材料の量を減らすことができる。あるいは、中空導電性管36の全体にわたって絶縁層を設けてもよい。
【0036】
絶縁層600、700は、回転可能なシェーバー要素の表面に適用されるダイヤモンドライクカーボン(DLC)又はポリマー層であってもよい。あるいは、絶縁層600は陽極酸化表面によって提供されてもよい。
【0037】
回転可能なシェーバー要素40の上に設けられた絶縁材料600、700の層、中空導電性管36の上に設けられた絶縁層、又は回転可能なシェーバー要素40の遠位端に設けられた絶縁部400、500は潤滑性材料であってもよい。潤滑性材料は、摩擦係数を減少させ、潤滑性材料と接触する任意の材料との摩擦力を減少させる。通常の動作、特に、回転可能なシェーバー要素40及び中空導電性管36が金属である場合、シェーバーはシェディングを経験することがある。シェディングは、回転可能なシェーバー要素と中空導電性管との間の接触、ひいては摩擦による微粒子の発生である。これは、回転可能なシェーバー要素40の切断エッジ38を損傷し、組織を切断する能力を低下させる。更に又は代替的に、中空導電性管の切断ウィンドウ36を損傷することもある。滑らかな材料を使用することによって、回転可能なシェーバー要素40と中空導電性管36との間に、より効果的なベアリング面を提供することは、シェディングを減少させ、したがって、電気手術機器の使用可能な寿命を増加させる。
【0038】
代替例では、回転可能なシェーバー要素40がセラミックのような非導電性材料から構成されてもよい。これは、活性電極から回転可能なシェーバー要素40に流れるRF電流を防ぐことになる。
【0039】
本発明者らは、電気手術機器の複数の部分の絶縁層及び絶縁部400に関する上記の例が組合され得る状況を想定している。このことは、電極と回転可能なシェーバー要素との間の導電性を更に低下させるであろう。更に、回転可能な管状要素への伝導を低減する手段は、反対側のシェーバーに関して記載されているが、本発明者らは、絶縁層に関する方法は同じ側の電気手術用エンドエフェクタに適用できると考える。同じ側のエンドエフェクタでは、RF機能がエンドエフェクタの切断ウィンドウと同じ側に配置され、アブレーション/凝固が電気手術機器を動かす必要なしに、切断動作と同時に、又は同じ位置で使用されることを可能にする。
【0040】
特徴の追加、削除、又は置換のいずれによるかにかかわらず、様々な修正が更なる実施の形態を提供するために上述の実施の形態になされてもよく、そのいずれか及びすべては、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】