(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040107
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20220303BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/00 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139455
(22)【出願日】2021-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2020143341
(32)【優先日】2020-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521425652
【氏名又は名称】株式会社ゼロボード
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】渡慶次 道隆
(72)【発明者】
【氏名】本間 真
(72)【発明者】
【氏名】坂本 洋一
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G066AA04
5L049CC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】希望の電力調達を容易にする情報処理装置を提供する。
【解決手段】管理サーバ2は、発電設備を裏付けとした、発電設備の所有権及びオフテイク権を表すトークンをブロックチェーンにおいて発行させるトークン発行部と、発電設備から調達したい電力の需要量を需要者から受け付ける需要量入力部と、トークンの需要者への販売に係る処理を行う販売処理部と、需要量に応じた量のトークンを需要者のウォレットに移転させるトークン移転部と、保有予定トークン量に応じて発電電力量の予測値及び実績を分割して出力する発電計画出力部と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電設備を裏付けとした、前記発電設備の所有権及びオフテイク権を表すトークンをブロックチェーンにおいて発行させるトークン発行部と、
前記発電設備から調達したい電力の需要量を需要者から受け付ける需要量入力部と、
前記トークンの前記需要者への販売に係る処理を行う販売処理部と、
前記需要量に応じた量の前記トークンを前記需要者のウォレットに移転させるトークン移転部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記発電設備による発電電力量の予測値を取得する発電予測取得部と、
前記需要者ごとに、前記需要者の保有予定トークン量に応じて前記発電電力量の予測値を分割して出力する発電計画出力部と、
をさらに備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報処理装置であって、
前記発電設備に設けられているスマートメータから前記発電設備により発電された発電電力量の実績値を取得する発電実績取得部と、
前記実績値を保有予定トークン量に応じて分割した分割発電実績値及び前記予測値を出力する発電実績出力部と、
をさらに備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置であって、
前記需要量入力部は、前記需要量とともに前記発電設備についての条件の指定を受け付け、
前記情報処理装置は、
複数の前記発電設備のそれぞれについて、前記発電設備に関する資産情報を記憶する資産情報記憶部と、
前記条件にマッチする前記資産情報を検索するマッチング処理部と、
をさらに備え、
前記トークン移転部は、マッチした前記資産情報に対応する前記発電設備のウォレットから、前記需要者のウォレットから前記需要量に応じた量の前記トークンを移転させること、
を特徴とする情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
事業者が自身の所有する発電設備を用いて発電した電力を、送配電ネットワークを介して他の場所にある当該事業者の設備に送電する自己託送が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発電設備の所有には、通常では多額の初期投資を必要し、所有のハードルは高い。
【0005】
本発明は上記課題解決のためになされたものであり、希望の電力調達を容易にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、情報処理装置であって、発電設備を裏付けとした、前記発電設備の所有権及びオフテイク権を表すトークンをブロックチェーンにおいて発行させるトークン発行部と、前記発電設備から調達したい電力の需要量を需要者から受け付ける需要量入力部と、前記トークンの前記需要者への販売に係る処理を行う販売処理部と、前記需要量に応じた量の前記トークンを前記需要者のウォレットに移転させるトークン移転部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、希望の電力調達を容易にする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】従来の太陽光パネルの共同所有形態を説明する図である。
【
図3】発電設備13の共同所有形態を説明する図である。
【
図4】発電電力量の分配について説明する図である。
【
図5】電力調達システムにおける取引の概要を示す図である。
【
図6】電力調達システムの全体構成例を示す図である。
【
図7】管理サーバ2のハードウェア構成例を示す図である。
【
図8】管理サーバ2のソフトウェア構成例を示す図である。
【
図9】本実施形態の電力調達システムにおける送電処理の流れを示す図である。
【
図10】本実施形態の電力調達システムにおける発電設備の持分の流通の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の電力調達システムの実施形態について説明する。
【0011】
本実施形態の電力調達システムでは、発電設備(例えば、太陽光パネルを想定するが、これに限らず、火力発電設備であってもよいし、蓄電池等であってもよい)を証券トークン(ST,Security Token)により小口化して区分所有可能とすることにより、発電設備保有の初期投資を抑制可能としている。また、本実施形態の電力調達システムは、利用時のみトークンを保有する高頻度売買を可能とするマーケットプレイスを実現する。これにより、例えば、発電設備の有給状態を解消するとともに、発電設備のセカンダリー市場での値付けを行い、流動性を確保することで、発電設備の価値向上も実現することができる。電力の需要者は、発電設備を区分所有することにより、自己託送制度を利用して電力需要設備に区分所有している発電設備からの送電を行うことができる。
【0012】
自家発電設備は、通常ある事業者や個人が単体で保有するのが一般的である。本実施形態では、1つの発電設備を複数の需要家が共同保有するモデルを採用する。
【0013】
従来型の大型発電設備(太陽光に限らず火力、風力なども)は初期投資に費用が掛かり、一事業者での保有は負担が大きい。また、発電設備によっては日中のピークカットに利用するのみで、稼働していない時間も多く、稼働率を上げたいというニーズがある。あるいは、短時間の出力調整が難しい発電設備の場合、需要設備が稼働していないタイミングでは発電電力量が過剰となり、経済性の成り立たない価格であっても他社に売電するしか選択肢が無いなどの課題を持つ。経済性を向上させるにも、例えば設備の区分所有権を売却し、購入者が自己託送制度を利用可能とすることでより流動性を高める仕組みは存在しない。また、共同保有を実際に行うとしても、所有区分を物理的に切り分け、各区分にメーターを設置し発電電力量を計測できる太陽光発電設備ぐらいしか適用可能な発電設備は存在せず、実施したとしてもメータの複数設置などで経済性が悪化することが予想される。また、仮に大型の太陽光発電設備を物理的に分割して保有した場合、場所によって日射量の違い、パネルの劣化の違いがあるため、同一面積のパネルを保有していたとしても計測地点によって発電電力量が違い、不公平が生じていた。また、このように物理的に切り分ける方式は、それ以外の発電設備(火力、水力、風力、地熱、バイオマス、原子力、その他発電方法及び蓄電池)に広げることが困難であった。そもそも、太陽光パネルの場合は保有にかかる形態がパネル単位と物理的に切り分けできるものの、他の発電設備はこのような物理的な切り分けが困難であった。
【0014】
そこで、本実施形態の電力調達システムでは、発電設備を物理的にではなく仮想的に分割し、その分割した区分をブロックチェーンのトークンにより表章し、分割した単位での所有権を発電設備の利用者が保有できるようにした。これにより、高額な発電設備を少額で一部保有することが可能となり、また仮想的に分割するため、分割に物理的な制約がある太陽光発電以外の発電設備でも分割での保有を可能としている。
【0015】
また、本実施形態の電力調達システムでは、発電設備の発電電力量を計測し、一定の時間帯(30分毎など)毎に保有した割合に応じ電力量(kWh)を自己託送の形で供給するようにしている。
【0016】
また、本実施形態の電力調達システムでは、発電設備を保有している割合を電子的に記録することで売買容易性を高めており、所有権及びそれに紐づく電力量(kWh)のオフテイク権を売買できるプラットフォームを用意することで資産の流動性を高めるとともに、同時に既存設備も当該プラットフォームに載せることで設備の稼働率を向上させることを可能としている。
【0017】
このようにして、本実施形態の電力調達システムによれば、トークンの分割により、少額からの初期投資で発電設備を所有することができる。
【0018】
また、本実施形態の電力調達システムによれば、高頻度のトークン売買プラットフォームを実現するために、発電設備を利用しない時間帯のみ売却するような運用を行うことができる。これにより、硬直的だった発電設備の保有形態に売却、あるいは一時的な売却という選択が追加されることで資産の投資活発化が期待される。よって、資産の流動性を確保および資産価値を向上させることができる。
【0019】
また、本実施形態の電力調達システムによれば、実際の発電設備を物理的に分けるのではなく(太陽光パネル以外はそもそも物理的に分けることが困難である。)、トークンによる仮想的に区分した所有権と電力(kWh)のオフテイク権を組み合わせる仕組みを実現することができる。したがって、共同で保有できる発電設備に制限がなく、火力、水力、風力、地熱、バイオマス、原子力、その他発電方法すべて及び蓄電池に適用が可能である。
【0020】
また、本実施形態の電力調達システムによれば、例えば、工場などで特定の季節、時間帯しか利用されていない発電設備などについても、利用していない時間について一時的な売却を行うこともできる。したがって、電力負荷が非稼働な時間帯が存在しても、発電設備を常時稼働させながら収益を享受することができる。これにより設備の稼働率向上が見込まれ、付随効果として日本トータルでの発電にかかるオペレーションコスト低減や発電設備を持つ経済性が向上する(ピークカットなど短期的な電力調達を必要とする需要家も、需要の大小を問わず利用できるため、通常の電力会社への売電よりも高値で売れる可能性がある)。
【0021】
また、発電設備を仮想的に分割保有することで、各パネルの劣化や日射量の違いによる発電電力量の違いによる所有者間の不公平さが発生しなくなる。これにより、例えば従来のコミュニティソーラーのように、太陽光パネル間での発電電力量のブレによる不公平をなくすことができる。
【0022】
<電力調達の概要>
図1は、第1実施形態における電力調達の概要を説明する図である。需要者10(企業A)は、需要設備11を有しており、需要設備11で利用するための電力を調達するあたり、マーケットプレイス12から発電設備13を仮想的に分割した区分131を調達する。発電設備13により発電された電力は、発電設備13の持分に応じて分割されて、自己託送により発電設備13から需要設備11に供給される。実際には送電事業者により送電されるところ、仮想的に発電設備13からの発電電力量の一部が需要設備11に送電されたと看做されることになる。自己託送とは、自家用発電設備を設置する者が、当該自家用発電設備を用いて発電した電気を一般送配電事業者が維持し運用する送配電ネットワークを介して、当該自家用発電設備を設置する者の別の場所にある工場等に送電する際に、当該一般送配電事業者が提供するサービスのことをいう。マーケットプレイス12の存在により発電設備13(の区分)の流動性が確保されているため、需要者10は、必要なときに必要な割合の持分を取得して自家発電設備13からの自己託送を行うことが可能となる。
【0023】
図2は、従来の太陽光パネルの共同所有形態を説明する図である。従来太陽光パネルを共同所有しようとする場合には、区分所有者は発電設備13(太陽光パネル)を物理的に分割した単位で所有することになり、物理的な区分131ごとにスマートメータ14を設置して、区分131の発電電力量を管理するようにしていた。
【0024】
図3は、第1実施形態に係る発電設備13の共同所有形態を説明する図である。
図3の例では、発電設備13には1つのスマートメータ14のみが設置され、発電設備13全体による発電電力量が計測される。ここで発電設備13についてSTにより100トークンが発行されたものとする。発電設備13は、A社、B社、C社、D社の4社により共有されており、持分がそれぞれ60%、10%、20%、10%であるものとすると、A社は60トークン、B社は10トークン、C社は20トークン、D社は10トークンを保有し、持分割合を証することができる。この割合に応じて、発電設備13が発電した電力量(スマートメータ14により計測される。)も分割されて、各社に自己託送されたものと看做される。ここで、別の時間帯においては、A社は30トークンを売却し、B社は30トークンを追加購入し、C社は10トークンを売却し、E社が10トークンを購入した場合にも、このトークンの保有割合に応じて発電設備13の発電電力量は仮想的に分割されて各社に自己託送されたものと看做すことができる。なお、電力量は、所定時間(例えば、30分とすることができる。)の長さの時間帯ごとに計測されて配分されるようにすることができる。なお、時間帯の長さは、市場により異なる長さとすることもできる。
【0025】
図4は、発電電力量の分配について説明する図である。
図4の例では、発電設備13からの発電電力量の推移が曲線141により示されている。12:00(から30分の時間帯)には発電設備13が30kWhの発電を行い、A社が100トークン中の60トークン、B社が100トークン中の10トークンを保有していたとすると、A社が調達した電力量は30kWh×60/100=18kWhとなり、B社が調達した電力量は30kWh×10/100=3kWhとなる。同様に、18:00に発電設備13が20kWhの発電を行い、その時間帯においてA社が30トークン、B社が40トークン保有していたとすると、A社の調達した電力量は20kWh×30/100=6kWh、B社の調達した電力量は20kWh×40/100=8kWhになる。
【0026】
図5は、第1実施形態の電力調達システムにおける取引の概要を示す図である。マーケットプレイス12(取引プラットフォーム)では、設備提供者15により発電設備13の情報が登録されるとともに、トークンが発行される(資産登録)。そして、トークンの売却者となる需要者11が売却したい条件を登録し、トークンの購入者となる需要者11が購入したい発電設備13の発電タイプ(PV、風力etc)や、電力量、価格、時間帯、地域などの条件(条件の優劣なども設定可能である。)を設定して、マーケットプレイス12において発電設備13の区分131のマッチング121が行われる。マッチングは現在以降の30分毎(現在の電力計測の単位時間、単位時間が変わった場合は新たな規定単位時間にもとづくものとする)の各スロットにおいて行われ(売買の予約)、実日付が当該スロットの時間になった際に売却者から購入者に対して発電設備13の区分131の所有権(及びオフテイク権)が移転され、区分131の持分割合に応じた量のトークンが購入者の需要者10のウォレットに移転することにより、所有権(及びオフテイク権)の移転が証明されることになる。また、マーケットプレイス12では、発電電力量(予測値、実績値)及びトークンの保有割合に応じた電力(kWh)のオフテイク量を自動計算するとともに、発電電力量を記録し(発電予測、実績)、電力広域的運営推進機関(OCCTO)、トークンの保有者に対するレポートを作成することができる(レポート作成)。マーケットプレイス12からの情報はAPIにより取得可能であり、例えば、OCCTOのシステム(広域機関システム16)は、APIを介して計画値などのレポートを取得可能であり、この連携により、自己託送の規制上の義務付けられている通知データ、報告データの作成、連携を自動化することができる。また、小売事業者17も、需要者10と同様にマーケットプレイス12においてトークンの売買を行うことができる。これにより、小売事業者17は、顧客向けのメニューとして、トークンを活用した自己託送による電力調達を提供し、小売事業者自身の電力調達手段としても活用することができる。APIを用いることにより小売事業者の利用しているシステムとも連携することができる。また、電力需給のサービス提供会社18も、需要者10と同様にマーケットプレイス12においてトークンの売買を行うことができる。これにより、サービス提供会社18は、例えば、ピークカットなど顧客の電力サービスメニューの一環としてトークン売買を活用することができる。APIをもちいることにより、サービス会社18の利用しているシステムとも連携が可能である。
【0027】
<システムの概要>
図6は、電力調達システムの全体構成例を示す図である。本実施形態の電力調達システムは、管理サーバ2を含んで構成される。管理サーバ2は、ユーザ端末1と通信ネットワーク3を介して通信可能に接続される。通信ネットワーク3は、たとえばインターネットであり、公衆電話回線網や携帯電話回線網、無線通信路、イーサネット(登録商標)などにより構築される。管理サーバ2はまた、ブロックチェーンネットワーク(以下、ブロックチェーン4という。)に接続されている。ブロックチェーン4は、複数のコンピュータ(ノード)により構成され、分散台帳を管理する。
【0028】
ユーザ端末1は、需要者10が操作するコンピュータであり、例えば、スマートフォンやタブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータとすることができる。なお、広域機関システム16もユーザ端末1に含まれうる。小売事業者17や、小売事業者サービス提供会社18のシステムもユーザ端末1に含まれうる。需要者10(OCCTOや小売事業者17、サービス提供会社18)は、ユーザ端末1により管理サーバ2にアクセスすることができる。
【0029】
管理サーバ2は、マーケットプレイス12を実現するコンピュータである。管理サーバ2は、例えばワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、あるいはクラウド・コンピューティングによって論理的に実現されてもよい。
【0030】
<管理サーバ2>
図7は、管理サーバ2のハードウェア構成例を示す図である。なお、図示された構成は一例であり、これ以外の構成を有していてもよい。管理サーバ2は、CPU201、メモリ202、記憶装置203、通信インタフェース204、入力装置205、出力装置206を備える。記憶装置203は、各種のデータやプログラムを記憶する、例えばハードディスクドライブやソリッドステートドライブ、フラッシュメモリなどである。通信インタフェース204は、通信ネットワーク3に接続するためのインタフェースであり、例えばイーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタ、公衆電話回線網に接続するためのモデム、無線通信を行うための無線通信機、シリアル通信のためのUSB(Universal Serial Bus)コネクタやRS232Cコネクタなどである。入力装置205は、データを入力する、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、ボタン、マイクロフォンなどである。出力装置206は、データを出力する、例えばディスプレイやプリンタ、スピーカなどである。なお、後述する管理サーバ2が備える各機能部は、CPU201が記憶装置203に記憶されているプログラムをメモリ202に読み出して実行することにより実現され、管理サーバ2が備える各記憶部は、メモリ202及び記憶装置203が提供する記憶領域の一部として実現される。
【0031】
図8は、管理サーバ2のソフトウェア構成例を示す図である。管理サーバ2は、資産登録部211、トークン発行部212、需要量入力部213、売却量入力部214、マッチング処理部215、販売処理部216、トークン移転部217、発電予測取得部218、発電実績取得部219、レポート作成部220、API処理部221、資産情報記憶部231を備える。
【0032】
資産情報記憶部231は、発電設備13のそれぞれについて、発電設備13に関する情報(以下、資産情報という。)を記憶する。資産情報には、例えば、発電設備13の種類、出力、設置場所などを含めることができる。
【0033】
資産登録部211は、資産情報を資産情報記憶部231に登録する。資産登録部211は、設備提供者15のユーザ端末1から資産情報を受信し、受信した資産情報を資産情報記憶部231に書き込むことができる。また、資産登録部211は、発電設備13の所有者(当初は設備提供者15)に関する情報(以下、所有者情報)を登録することもできる。本実施形態では、所有者情報はブロックチェーン4の台帳に管理するものとし、資産登録部211は、所有者情報を登録するためのトランザクションをブロックチェーン4に発行することができる。
【0034】
トークン発行部212は、発電設備13を裏付けとした、発電設備13の所有権及びオフテイク権を表すトークンをブロックチェーン4において発行させる。トークンの発行は一般的なSTO(Security Token Offering)に採用されている技術を用いるものとして、詳細な説明は省略する。トークン発行部212は、任意の数のトークンを発行することができる。
図3及び
図4の例では1つの発電設備13について100トークン発行するものとしたが、これに限らず、10トークンや2000トークンなど任意の数のトークンを発行することができる。発行されたトークンは、発電設備13の所有者(設備提供者15)のウォレットに入れられる。
【0035】
需要量入力部213は、発電設備13から調達したい電力の需要量を需要者10から受け付ける。需要量入力部213は、例えば、発電設備13の区分133を取得するための購入リクエストに需要量を設定して、需要者10のユーザ端末1から受信することができる。需要量入力部213は、需要量とともに発電設備についての条件の指定を受け付けるようにしてもよい。購入リクエストには、発電設備13の発電タイプ(太陽光発電、風力発電等)、需要量(調達したい電力量)、時間帯が指定され得る。購入リクエストには、個別の発電設備13を特定する情報や、特定の発電所を特定する情報、発電設備13が配置されている地域などの指定を設定するようにしてもよい。また、購入リクエストには、購入したい金額を指し値として設定するようにしてもよい。また、複数の条件を設定して、条件の優先度を設定するようにしてもよい。
【0036】
売却量入力部214は、トークンを売却したい売却者(設備提供者15又は需要者10)から、売却したいトークンの指定を受け付ける。売却量入力部214は、例えば、売却者のユーザ端末1から売却リクエストを受信することができる。売却リクエストには、売却対象となるトークンとその売却価格を設定することができる。売却価格は最低価格を設定することができる。売却価格には、最低価格から最高価格までの範囲を指定することもできる。
【0037】
マッチング処理部215は、売却リクエストと、購入リクエストとをマッチングさせることができる。マッチング処理部215は、購入リクエストに指定された条件にマッチする資産情報を検索することができる。また、マッチング処理部215は、マッチした資産情報が示す発電設備13を裏付けとしたトークンの売却リクエストを特定して、特定した売却リクエストに係るトークンを当該購入者に割り当てることができる。マッチング処理部215は、例えば、購入リクエストを受信した順に、受信した購入リクエストの条件に応じて売却リクエストを割り当てることができる。また、マッチング処理部215は、一定期間に受信した購入リクエストと売却リクエストとをまとめて割当てを行うようにすることもできる。マッチング処理部215は、例えば、株式市場における販売処理と同様のマッチング処理を行うようにすることができる。
【0038】
販売処理部216は、トークンの需要者10への販売に係る処理を行う。販売処理部216は、トークンの購入者からの支払を受け付けて、売却者に支払う処理を行うことができる。販売処理部216は、購入者が支払った金額から手数料を減じて売却者に対して支払を行うようにしてもよい。
【0039】
トークン移転部217は、販売される発電設備13の持分に応じた量のトークンを需要者のウォレットに移転させる。トークンの移転は、実際の日時が各スロット(例30分毎)の日時に到達した際にブロックチェーン上のプログラムによって自動で実施される。トークン移転部217は、売却者のウォレットから購入者のウォレットに販売されたトークンを移転させるためのトランザクションをブロックチェーン4に発行することができる。これにより、トークン移転部217は、需要者10の需要量に応じた量のトークンを需要者のウォレットに移転させることができる。
【0040】
発電予測取得部218は、発電設備13による発電電力量の予測値を取得する。発電予測取得部218は、自ら発電電力量の予測を行ってもよいし、発電電力量の予測を行った外部のコンピュータから予測値を取得するようにしてもよい。発電予測取得部218は、例えば、太陽光発電に係る発電設備13について、日射量の予測を行うことができる。発電予測取得部218は、発電設備13の所有者又は提供者15のユーザ端末1から発電電力量の予測値を受信するようにしてもよい。
【0041】
発電実績取得部219は、発電設備13に設けられているスマートメータ14から発電設備13により発電された発電電力量の実績値を取得することができる。
【0042】
レポート作成部220は、発電計画に関するレポートを出力することができる。レポート作成部220は、発電設備13の発電電力量の予測値を、需要者10のウォレットに保有されているトークンの量と将来スロットにおけるマッチング済みの移動予定トークン量の合計トークン量(以下、保有予定トークン量)に応じて分割し、分割した発電電力量の予測値を需要者10毎に発電計画に含めることができる。また、レポート作成部220は、発電実績に関するレポートを出力することができる。レポート作成部220は、スマートメータ14から取得した実績値を、需要者10の保有予定トークン量に応じて案分し、案分した発電電力量(分割発電実績値)を発電実績に含めることができる。レポート作成部220は、発電実績に、発電計画において予測した予測値を含めるようにしてもよい。
【0043】
レポート作成部220は、発電設備13の設備提供者15や購入者、売却者に向けて、自身の保有する発電設備13に関する情報(資産情報)を閲覧することのできるGUI(閲覧画面)を提供することができる。閲覧画面には、発電電力量の予測値、発電設備13の保有割合、発電設備13の基本情報などを含めることができる。
【0044】
レポート作成部220は、電力広域的運営推進機関(OCCTO)向けの計画書を作成することができる。レポート作成部220はまた、広域基幹システム16に対して計画書を自動提出することができる。レポート作成部220は、資産情報や発電電力量の予測値、スマートメータ14から取得した発電電力量の実績値などに基づいて、発電設備13の保有者、運営者が系統連携する際に求められる情報を記載した帳票を作成することができる。
【0045】
API処理部221は、管理サーバ2の外部装置に対してAPIを提供することができる。APIは、例えば、RESTとすることができ、API処理部221は、外部装置からのリクエストに応じて、管理サーバ2及びブロックチェーン4で管理されている情報から必要な情報を抽出して提供することができる。APIを用いて管理サーバ2は、広域機関システム16とデータ連携を行うことができる。API処理部221は、小売事業者や一般送配電事業者向けに提出すべき書類について、管理サーバ2及びブロックチェーン4で管理されているデータをもとに追加で帳票を作成若しくはシステム連携を行うことができる。また、APIを介して、小売事業者や需要家向けサービスを提供する会社が自身のシステムを介して売買条件を連携、取引できる仕組みを提供することができる。
【0046】
<動作>
図9は、本実施形態の電力調達システムにおける送電処理の流れを示す図である。
【0047】
管理サーバ2は、発電設備13の資産情報を受け付けて資産情報記憶部231に記録する(S301)。資産情報には、発電設備13の種類や、出力、設置場所などが含まれうる。管理サーバ2は、発電設備13を裏付けとしたトークンを発行(STO)する(S302)。トークンの発行後、管理サーバ2は、発電設備13の区分所有者の希望者を募ることができる。電力の需要者10はトークンを保有することで発電設備13の区分所有権とその発電設備13から発生する電力量(kWh)のオフテイク権とを持つことになる。
【0048】
管理サーバ2は、トークンの保有者(最初は設備提供者15)の所有者情報をブロックチェーン4の台帳に記録することができる(S303)。管理サーバ2は、発電設備13が発電した電力量をスマートメータ14などの計測機器から取得し、30分値など一定の基準の時間(測定時間は任意に設定することができる。)での発電電力量(kWh)を集計することができる(S304)。管理サーバ2は、トークンの保有量(含む将来スロットにおけるマッチング済みの移動予定トークン)に応じて区分所有者に発電電力量を割り当て(S305)、自己託送の形で電力供給させることができる(S306)。
【0049】
管理サーバ2は、ユーザが保有しているトークンを売買できるための取引プラットフォームを提供する。また、管理サーバ2は、発電の前日(前日市場)以前から発電者が許す限りの前期間での売買を可能とする取引プラットフォームを提供する。
図10は、本実施形態の電力調達システムにおける発電設備の持分の流通の流れを示す図である。
【0050】
管理サーバ2は、トークン(含む将来スロットにおけるマッチング済みの移動予定トークン)の保有割合に応じて、需要者10の発電電力量(kWh)のオフテイク量を算出する(S321)。管理サーバ2は、条件を設定した購入リクエストを購入者から受け付ける(S322)。上述したように、購入リクエストには、発電タイプ(太陽光、風力など)、電力量、価格、時間帯、地域、条件の優劣などを設定することができる。条件にはこれ以外にも、株式の取引プラットフォームの条件に類似した内容(指値、逆指値、一定価格になった場合の条件付き売買など)を設定することができる。
【0051】
管理サーバ2は、売却リクエストを受け付け(S323)、購入リクエストに設定された条件に基づいて、売却リクエストにより指定されているトークンを購入リクエストにマッチングさせる(S324)。
【0052】
マッチング処理では、購入者及び売却者に関し、条件設定を電力の取引実態に合わせる形できめ細かく行うことができる。例えば、販売価格を定めずに(若しくは価格にレンジを持たせるか成り行きにして)、指定した条件(太陽光など)に該当する発電設備13から一定の電力量(kWh)に達するまで販売又は売却を実行し続けることができる。また、購入リクエストに地域を指定し、指定された地域に設置されている1つ又は複数の発電設備13から一定の電力量(kWh)や購入価格の合計値が一定額に達するまで買い続けるようにすることもできる。また、購入価格のみを指定して、電力量(kWh)の指定をせずに購入又は販売し続けるようにすることもできる。また、購入リクエストに時間帯のみを指定して、指定された時間帯内であれば一定の電力量(kWh)に達するまで販売又は売却し続けるようにすることができる。なお、条件を設定しなくてもよく、または、条件に優先度をつけるようにしてもよい。
【0053】
売買に失敗した場合(S325:の)、管理サーバ2は、売却者からのトークンは移転させず(したがって、所有権及びオフテイク権は移転させず)、当該発電設備13からの電力は、卸電力取引所に販売するようにすることができる(S326)。なお、卸売市場ではなく、相対取引で小売事業者に販売するようにしてもよい。
【0054】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0055】
例えば、本実施形態では、ブロックチェーン4が発行するトークンを利用して発電設備13の所有権及びオフテイク権の所在を管理するものとしたが、必ずしもブロックチェーンの技術を用いてしなくてもよく、例えば、データベースに所有権及びオフテイク権を管理するようにし、データベースの管理者(管理サーバ2の運営者)が内容の真性を保証するようにすることもできる。
【0056】
また、本実施形態では、発電設備13の所有者に関する所有者情報はブロックチェーン4の台帳に管理するものとしたが、管理サーバ2が所有者情報を記憶する所有者情報記憶部を備えるようにしてもよい。
【0057】
<開示事項>
なお、本開示には、以下のような構成も含まれる。
[項目1]
発電設備を裏付けとした、前記発電設備の所有権及びオフテイク権を表すトークンをブロックチェーンにおいて発行させるトークン発行部と、
前記発電設備から調達したい電力の需要量を需要者から受け付ける需要量入力部と、
前記トークンの前記需要者への販売に係る処理を行う販売処理部と、
前記需要量に応じた量の前記トークンを前記需要者のウォレットに移転させるトークン移転部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
[項目2]
項目1に記載の情報処理装置であって、
前記発電設備による発電電力量の予測値を取得する発電予測取得部と、
前記需要者ごとに、前記需要者の保有予定トークン量に応じて前記発電電力量の予測値を分割して出力する発電計画出力部と、
をさらに備えることを特徴とする情報処理装置。
[項目3]
項目1又は2に記載の情報処理装置であって、
前記発電設備に設けられているスマートメータから前記発電設備により発電された発電電力量の実績値を取得する発電実績取得部と、
前記実績値を保有予定トークン量に応じて分割した分割発電実績値及び前記予測値を出力する発電実績出力部と、
をさらに備えることを特徴とする情報処理装置。
[項目4]
項目1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置であって、
前記需要量入力部は、前記需要量とともに前記発電設備についての条件の指定を受け付け、
前記情報処理装置は、
複数の前記発電設備のそれぞれについて、前記発電設備に関する資産情報を記憶する資産情報記憶部と、
前記条件にマッチする前記資産情報を検索するマッチング処理部と、
をさらに備え、
前記トークン移転部は、マッチした前記資産情報に対応する前記発電設備のウォレットから、前記需要者のウォレットから前記需要量に応じた量の前記トークンを移転させること、
を特徴とする情報処理装置。
【符号の説明】
【0058】
1 ユーザ端末
2 管理サーバ
3 通信ネットワーク
4 ブロックチェーン
10 需要者
11 需要設備
12 マーケットプレイス
13 発電設備
14 スマートメータ
15 設備提供者
16 広域機関システム
17 小売事業者
18 サービス提供会社
131 区分
211 資産登録部
212 トークン発行部
213 需要量入力部
214 売却量入力部
215 マッチング処理部
216 販売処理部
217 トークン移転部
218 発電予測取得部
219 発電実績取得部
220 レポート作成部
221 API処理部
231 資産情報記憶部