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特開2022-40143吸収材、ならびにそれを用いた吸収性物品およびペット排泄用シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040143
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】吸収材、ならびにそれを用いた吸収性物品およびペット排泄用シート
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/015 20060101AFI20220303BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20220303BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20220303BHJP
   A61L 9/014 20060101ALI20220303BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20220303BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20220303BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20220303BHJP
   B01J 20/24 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
A01K1/015 A
A61F13/53 100
A61F13/53 300
A61F13/15 141
A61L9/014
A61L9/01 Q
B01J20/30
B01J20/26 D
B01J20/26 C
B01J20/26 G
B01J20/24 B
B01J20/24 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206240
(22)【出願日】2021-12-20
(62)【分割の表示】P 2017013430の分割
【原出願日】2017-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002923
【氏名又は名称】ダイワボウホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519354108
【氏名又は名称】大和紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100107180
【弁理士】
【氏名又は名称】玄番 佐奈恵
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】金子 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】辻本 隆亮
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 誠吾
(72)【発明者】
【氏名】薄井 義治
(57)【要約】
【課題】不揮発性の材料を用いて、排泄物等に起因する悪臭を低減させ得る構成の吸収材を提供する。
【解決手段】吸収材に、樹木の木質部および/または葉から、精油および水分の少なくとも一部が除去された材料を含有させる。吸収材は、例えば、高分子吸収体、粉砕パルプ、繊維集合物、およびフィルムから選択される1つの部材、または複数の部材の組み合わせからなるものであり、前記材料は、前記1つの部材、または前記複数の部材の組み合わせを構成する少なくとも1つの部材に含有させられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収コアと、前記吸収コアを被覆するラップ材とを含む液体吸収材であって、
前記吸収コアは、
高分子吸収体、粉砕パルプ、繊維集合物、フィルム、無機材料、および木質粉末から選択される1つの部材、または複数の部材の組み合わせ、および
樹木の幹から落とされた枝葉から、精油の一部および水分の一部がマイクロ波照射を行いながら減圧蒸留を行うことにより除去された材料からなる粉状物
を含み、
前記ラップ材は、繊維集合物およびフィルムから選択されるものであり、
前記樹木が、ヒノキ科ヒノキ属、ヒノキ科クロベ属、ヒノキ科ビャクシン属、ヒノキ科スギ属、マツ科モミ属、マツ科ヒマラヤスギ属、マツ科トウヒ属、マツ科マツ属、マツ科カラマツ属、マツ科ツガ属、フトモモ科ユーカリ属、コウヤマキ科コウヤマキ属、イチイ科カヤ属、およびヒノキ科アスナロ属から選ばれる少なくとも1種である、
液体吸収材。
【請求項2】
前記粉状物が、吸収コアを構成する材料の0.1質量%~10質量%を占める、請求項1に記載の液体吸収材。
【請求項3】
前記粉状物が、消臭および/または芳香機能を有する、請求項1または2に記載の液体吸収材。
【請求項4】
前記ラップ材が湿式不織布である、請求項1~3のいずれか1項に記載の液体吸収材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の吸収材を含む、ペット排泄用シート。
【請求項6】
高分子吸収体、粉砕パルプ、繊維集合物、フィルム、無機材料、および木質粉末から選択される1つの部材と、樹木の幹から落とされた枝葉から、精油の一部および水分の一部がマイクロ波照射を行いながら減圧蒸留を行うことにより除去された材料が粉砕されてなる粉状物との混合物を準備すること、
前記混合物をラップ材で被覆すること
を含み、
前記樹木が、ヒノキ科ヒノキ属、ヒノキ科クロベ属、ヒノキ科ビャクシン属、ヒノキ科スギ属、マツ科モミ属、マツ科ヒマラヤスギ属、マツ科トウヒ属、マツ科マツ属、マツ科カラマツ属、マツ科ツガ属、フトモモ科ユーカリ属、コウヤマキ科コウヤマキ属、イチイ科カヤ属、およびヒノキ科アスナロ属から選ばれる少なくとも1種である、
液体吸収材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収材、ならびにそれを用いた吸収性物品およびペット排泄用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
トイレトレーに取り付けて用いられるペット排泄用シートなどのペット排泄用吸収性物品には、排泄物に起因する悪臭を消臭するために消臭剤が含まれている場合が多い。例えば、特許文献1には消臭剤として、木材から抽出された精油と、炭素数4~24のアルコール類及びそのモノアルキルエーテルからなる群から選択される1種以上のアルコール類を使用することが提案されている。
【0003】
また、特許文献2には、透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、表面シートと裏面シートとの間に介在する吸収体とを備えているペット排泄用シートであって、木材から抽出された精油をテクトケイ酸塩に担持させた芳香性粉体を含むペット排泄用シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-142014号公報
【特許文献2】特開2008-142006号公報
【特許文献3】特開2015-160154号公報
【特許文献4】国際公開第WO2010/098440号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、不揮発性の材料を用いて、排泄物等に起因する悪臭を低減させ得る構成の吸収材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、樹木の木質部および/または葉から、精油および水分の少なくとも一部が除去された材料を含有する、吸収材を提供する。
当該吸収材は、高分子吸収体、粉砕パルプ、繊維集合物、フィルム、無機材料および木質粉末から選択される1つの部材、または複数の部材の組み合わせをさらに含むものであってよい。
【0007】
また、本発明の別の実施形態は、前記吸収材を含む、吸収性物品を提供する。吸収性物品は、例えば、ペット排泄用シートであってよい。
【0008】
また、本発明のさらに別の実施形態としては、樹木の木質部および/または葉を、減圧蒸留を行うことにより精油および水分の少なくとも一部を除去することを含む、吸収材用の材料の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、樹木の木質部および/または葉から、精油および水分の少なくとも一部が除去された材料が、吸収材を構成する部材と組み合わせて用いられる。この材料は固体状物であり、不揮発性であるので、当該材料を含む吸収材は、当該材料が奏する機能(例えば、消臭効果)を長時間にわたって発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明の一実施形態に至った経緯)
特許文献1および2等で提案されている精油は、天然物由来であることから利用者に安心感を与えやすく、これを消臭剤として用いた吸収材を含む吸収性物品の付加価値を高めることができる。一方で、精油は揮発しやすいという性質を有し、例えば、製品を保管している間に徐々に揮発することがある。あるいは、ペット排泄用シートのように、トイレトレーに広げて取り付けてから、そのままの状態で比較的長時間(例えば、1日ないし2日)放置される場合には、精油の揮発が進行して、取り替え間際には精油による消臭機能が十分に発揮されないこともある。また、精油は所定量の原料から採取できる量が僅かであることから比較的高価であり、これを大量に使用するとコスト上昇を招くことがある。
【0011】
本発明者らは、精油以外の材料であって、精油と同様の消臭機能を吸収材に付与できる材料の有無を検討した。その結果、樹木の木質部および/または葉から精油等を除去した材料が、排泄物の臭い(例えば、アンモニア臭、硫化水素臭、およびメチルメルカプタン臭から選択される少なくとも1つの臭い、特にアンモニア臭)に対して優れた消臭機能を発揮し、また、不揮発性であって、吸収性物品に比較的長時間にわたって消臭効果を付与することを見出し、本実施形態に至った。
【0012】
(精油および水分の少なくとも一部が除去された材料)
本発明の一実施形態は、樹木の木質部および/または葉から、精油および水分の少なくとも一部が除去された材料を含有する、吸収材である。まず、この材料について説明する。
本実施形態で用いる材料は、樹木の木質部および/または葉から、精油および水分の少なくとも一部を除去することにより得られるものであり、精油および水分の少なくとも一部を取り出した後の残渣(または残留物)とも言えるものである。したがって、当該材料においては、それに含まれる液体(一般には、精油および水分)の量が、生木に含まれる液体の量よりも少なく、生木と比較してより乾燥した状態のものである。
【0013】
当該材料は、樹木の木質部および/または葉から精油および水分の少なくとも一部が除去されたものである。当該材料はいずれの方法で得られたものであってよく、例えば、伐採された樹木の木質部および/または葉を減圧下で、精油分(および水分)を蒸留により、除去(すなわち、抽出する)方法で得られたものであってよい。減圧下での蒸留はマイクロ波を照射しながら実施してよい。マイクロ波照射を行いながら減圧下で精油分(および水分)を蒸留、抽出する方法(以下、「減圧水蒸気蒸留法」という)は、マイクロ波が水分子を直接加熱する性質を利用して、素材中に元から含まれている水分のみで精油の抽出を行う方法である。減圧水蒸気蒸留法によって得られた当該材料は、粉砕されやすく、特に機械的な加工で粉砕されやすいため、粉状物として用いるのに適している。減圧水蒸気蒸留法の詳細は、例えば、特許文献3および4に記載されている。
【0014】
あるいは、樹木の木質部および/または葉から精油のみを少なくとも一部除去し、別の工程にて水分を除去する方法、または樹木の木質部および/または葉から精油および水分の少なくとも一部を除去し、別の工程にてさらに水分の少なくとも一部を除去する方法によって、本実施形態で使用する材料を得てもよい。樹木の木質部および/または葉に含まれる水分の一部は、これらを粉状物に加工する前に又は加工している間に、乾燥処理を実施することにより、除去することもできる。
【0015】
本実施形態で用いる材料は、樹木の木質部、即ち、枝、幹および根のいずれか1つまたは複数に由来するものであってよく、あるいは樹木の葉に由来するものであってよく、あるいは樹木の木質部と葉の双方に由来するものであってよい。その意味で、「および/または」という用語が使用されている。樹木の木質部と葉の双方に由来する当該材料は、例えば、製材工程において樹木の幹から落とされた枝葉(枝に葉がついた状態のもの)を減圧水蒸気蒸留法による精油の抽出に付して得られるものであってよい。
【0016】
本実施形態で用いる材料は、少なくとも樹木の葉に由来するものであることがより好ましい。「少なくとも樹木の葉に由来する」とは、当該材料が樹木の葉に由来する成分または部分を含むことをいい、「少なくとも樹木の葉に由来する」材料は、樹木の木質部に由来する成分または部分をさらに含んでよい。当該材料が少なくとも樹木の葉に由来するものであることは、例えば光学顕微鏡で当該材料を観察したときに、葉緑体に由来する緑色または青色の部分が当該材料に含まれていることで確認することができる。当該材料が少なくとも樹木の葉に由来するものである場合には、モノテルペンやセスキテルペン等の成分が多く含まれるため好ましい。
【0017】
樹木は、例えば、ヒノキ科ヒノキ属、ヒノキ科クロベ属、ヒノキ科ビャクシン属、ヒノキ科スギ属、マツ科モミ属、マツ科ヒマラヤスギ属、マツ科トウヒ属、マツ科マツ属、マツ科カラマツ属、マツ科ツガ属、フトモモ科ユーカリ属、コウヤマキ科コウヤマキ属、イチイ科カヤ属、およびヒノキ科アスナロ属から選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0018】
ヒノキ科ヒノキ属の樹木としては、ヒノキ、タイワンヒノキ、ベイヒバ、ローソンヒノキ、チャボヒバ、サワラ、クジャクヒバ、オウゴンチャボヒバ、スイリュウヒバ、イトヒバ、オウゴンヒヨクヒバ、シノブヒバ、オウゴンシノブヒバ、およびヒムロスギ等が挙げられる。ヒノキ科クロベ属の樹木としては、ニオイヒバ、およびネズコ等が挙げられる。ヒノキ科ビャクシン属の樹木としては、ハイビャクシン、ネズミサン、エンピツビャクシン、およびオキナワハイネズ等が挙げられる。ヒノキ科スギ属の樹木としては、スギ、アシウスギ、エンコウスギ、ヨレスギ、オウゴンスギ、セッカスギ、およびミドリスギ等が挙げられる。
【0019】
マツ科モミ属の樹木としては、トドマツ、モミ、ウラジロモミ、シラビソ、オオシラビソ、シラベ、バルサムファー、ミツミネモミ、ホワイトファー、アマビリスファー、アオトドマツ、カリフォルニアレッドファー、グランドファー、およびノーブルファー等が挙げられる。マツ科トウヒ属の樹木としては、アカエゾマツ、およびトウヒ等が挙げられる。マツ科マツ属の樹木としては、アカマツ、ダイオウショウ、ストローブマツ、およびハイマツ等が挙げられる。マツ科カラマツ属の樹木としては、カラマツ等が挙げられる。マツ科ツガ属の樹木としては、ツガ等が挙げられる。フトモモ科ユーカリ属の樹木としては、ユーカリ、ギンマルバユーカリ、カマルドレンシス、およびレモンユーカリ等が挙げられる。コウヤマキ科コウヤマキ属の樹木としては、コウヤマキ等が挙げられる。イチイ科カヤ属の樹木としては、カヤ等が挙げられる。ヒノキ科アスナロ属の樹木としては、ヒバ、アスナロ、ヒノキアスナロ、およびホソバアスナロ等が挙げられる。
【0020】
特に好ましい樹木原料としては、ヒノキ科ヒノキ属の樹木である、ヒノキ、タイワンヒノキ、およびベイヒバ;ヒノキ科スギ属の樹木であるスギ;マツ科モミ属の樹木であるトドマツ、およびモミ;フトモモ科ユーカリ属の樹木であるユーカリ;コウヤマキ科コウヤマキ属の樹木であるコウヤマキ;ヒノキ科アスナロ属の樹木であるヒバが挙げられる。これらの樹木原料は、日本に多く分布しており、入手が容易であることから好ましく用いられる。
【0021】
当該材料は、生木である樹木の木質部および/または葉から精油および水分の少なくとも一部が除去されたものであるが、精油が完全に取り除かれず、一部が当該材料に残っていてもよい。その場合、当該精油は、当該材料の消臭機能に資することがある。
【0022】
当該材料に存在する精油は、モノテルペンやセスキテルペン等の成分が含まれることが好ましく、具体的には、α-ピネン、β-ピネン、カンフェン、サンテン、トリシクレン、β-カリオフィレン、ミルセン、アロオシメン、イソプレン、オシメン、ピロネン、クリプトテネン、β-フェランドレン、2,4(8)-p-メンタジエン、メノゲレン、セスキシトロネン、ジンギベレン、サビネン、3,8(9)-p-メンタジエン、テルピネン-4-オール、シトロネラール、ボルニルアセテート、α-テルピネオール、δ-3-カレン、テルピノレン、γ-テルピネンおよび1,8-シネオールから選ばれる少なくとも1種の成分を含むことが好ましい。
【0023】
当該材料に存在する精油は、好ましくは揮発性が低いおよび/または不揮発性である。揮発性が低いほど、より長い期間にわたって精油の機能(例えば、消臭機能および/または芳香機能)が発揮されるからである。また、精油成分は比較的分子量の大きい成分を含むことが好ましい。分子量が大きいほど、揮発しにくいからである。樹木の木質部等から精油を抽出すると、より分子量が小さい、および/または揮発しやすい精油が優先的に抽出されるため、当該材料には揮発性の低い、および/または分子量のより大きい精油が残る傾向ある。当該材料に残る精油成分はモノテルペンの含有量が少なく、セスキテルペン、ジテルペンまたはテトラテルペンをより多く含むことが好ましい。セスキテルペン、ジテルペンなどの分子量が大きいテルペン類の割合が大きいと、長期間にわたって消臭機能および/または芳香機能を発揮するとともに、様々な消臭機能を発揮すること、すなわち種々の臭いに対応することが可能となる。
【0024】
当該材料は、一般に、消臭機能および/または芳香機能を発揮する。
消臭機能を有する吸収材が排泄用吸収性物品に使用される場合には、排泄物に由来する臭いを軽減することができる。当該材料は、好ましくは、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、酢酸、トルエン、およびホルムアルデヒドから選ばれる少なくとも1種、より好ましくはアンモニア、硫化水素、およびメチルメルカプタンから選ばれる少なくとも1種に由来する臭いを消臭し得る機能を有している。
【0025】
また、当該材料が芳香機能を有する場合には、当該材料からの芳香により臭い(特に排泄物に由来する臭い)がマスキングされて、感覚的に弱められる。特に当該材料は水分で濡らされるとより強い芳香性を示して、より効果的に臭いをマスキングしやすい。したがって、吸収材に含まれる当該材料は、排泄物に含まれる水分によって濡らされると、より効果的に芳香機能を発揮できる。
【0026】
当該材料は、粉状物として吸収材に含まれていてよい。粉状物の当該材料は、より均一に吸収材に分布させることができ、吸収材全体にわたって均等に消臭機能等を発揮させることができる。あるいは、粉状物の当該材料を用いれば、吸収材の位置に応じて当該材料の使用量を調節することが比較的容易となる。例えば、吸収性物品の中央部により多くの当該材料を配置すること、あるいは中央部から周辺部にかけて使用量を漸減させる構成も、粉状物の当該材料を用いればより容易に得られる。さらに、粉状物の当該材料は、繊維とともに抄き込んで湿式不織布を構成するのに適している。
【0027】
当該材料は、例えば、高速気流によるジェットミル、ボールミル、ハンマーミル、高圧水流を用いた湿式微粉砕装置などを用いて粉状物にすることができる。粉状物の平均粒径は1μm~500μmであることが好ましい。なお、粉状物の平均粒径は、レーザー回析・散乱式粒度分布測定装置で計測することができ、メディアン径(D50)で表される。
【0028】
(吸収材)
次に、本発明の一実施形態である、当該材料を含む吸収材を説明する。吸収材は、液体を吸収する部材であり、例えば、当該吸収材の上面に配置される表面材と、当該吸収材の裏面に配置され、一般的には液不透過性である裏面材と組み合わされ、さらに必要に応じて他の部材と組み合わされて吸収性物品を構成する。
【0029】
吸収材は、当該材料のほかに、例えば、高分子吸収体、粉砕パルプ、繊維集合物、およびフィルムから選択される1つの部材、または複数の部材の組み合わせを含んでよい。吸収材は、より具体的には、例えば、
・高分子吸収体(一般に粉状物である)、粉砕パルプ、繊維集合物、およびフィルムから選択される1または複数の部材で構成される吸収コアが、繊維集合物およびフィルムから選択されるラップ材により被覆されたもの
・前記吸収コアのみから成るもの(ラップ材で被覆されていないもの)
として提供されてよい。
【0030】
前記吸収コアは、より具体的には、粉砕パルプと高分子吸収体との組み合わせであってよく、または粉砕パルプのみ、もしくは高分子吸収体のみで構成されていてよい。あるいは、吸収コアは、繊維トウ、織編物、もしくは不織布等の繊維集合物、またはフィルムであってよい。また、吸収コアのみから成る吸収材は、一体化された繊維集合物(特に、不織布)、フィルム、またはこれらの積層体であってよい。吸収コアは、ラップ材の有無にかかわらず、シート状物であってよい。ここで吸収材に関して用いられる「シート状物」とは、厚さに対して比較的広い寸法の主表面を有するものを指し、例えば、厚さが1mm~10mm程度であり、主表面が矩形または正方形である場合には、その一辺が5cm以上であるようなものである。
吸収コアを被覆するラップ材は、例えば、織物、編物、および不織布等の一体化された繊維集合物、またはフィルムであってよく、あるいは二以上の繊維集合物、または繊維集合物とフィルムとを含む積層シートであってよい。
【0031】
吸収コアまたはラップ材は、特に、不織布で構成されてよい。不織布は、吸収性物品を構成する様々な部材として使用されている実績があり、また、繊維の種類や製造方法を適宜選択することにより、所望の構成/特性を有するもの(例えば、所定の吸水性能、厚さ、目付等)を比較的容易に得られることから好ましい。
【0032】
不織布としては、パルプ等の原料を含むティッシュペーパー等の湿式不織布、エアレイド不織布、各種カード法により製造されるウェブを使用するカード不織布、ならびにスパンボンド法およびメルトブロー法により製造される長繊維不織布等が挙げられる。不織布を構成する繊維としては、コットン等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、合成樹脂からなる合成繊維等を任意に使用することができる。
【0033】
本実施形態において、吸収材はいずれの形態であってよく、当該材料は、吸収材を構成する前記部材とともに吸収材に含まれる。当該材料は、吸収材を構成する部材に担持させることが好ましい。ここで、「担持させる」とは、当該材料が吸収材から離脱しない、又は離脱しにくいように、部材と当該材料との位置関係を選択し、ならびに/または部材に当該材料を固定させることをいう。吸収材を構成する部材に当該材料を担持させる形態としては、具体的には、
1)吸収コアを構成する部材と当該材料とを混合して、または吸収コアに当該材料を散布して、吸収材をラップ材により被覆する形態
2)吸収コアがシート状物である場合には、シート状物を構成する素材(特に繊維)に当該材料を混合し、当該素材と当該材料をともにシート化する形態、
3)吸収コアを構成する素材を熱、超音波、または電子線照射等により接着性を示す素材(例えば、接着性繊維)とし、当該材料を当該接着性素材で固定する形態
4)吸収コアに、当該材料を接着剤等により固定する形態
5)吸収コアがシート状物である場合には、当該材料を含む懸濁液を不織布等のシート状物に付与し、必要に応じて液体を蒸発させる方法により、当該材料を吸収コアに担持させる形態
6)ラップ材に、上記2)、3)、4)および5)のいずれかに記載の形態で当該材料を担持させ、当該ラップ材で吸収コアを被覆する形態
等が挙げられる。
【0034】
上記2)の形態として、当該材料を繊維とともに抄き込んで湿式不織布とする形態を特に挙げることができる。当該材料を繊維とともに抄き込むことで、当該材料を不織布に比較的容易に担持させることができ、接着剤または接着性繊維により当該材料を固定しなくとも、当該材料の離脱が有効に防止されやすい。但し、当該材料の平均粒径が小さい場合には、抄き込んだ当該材料の離脱が生じやすくなることがある。このように当該材料を抄き込んだ湿式不織布は吸収コアのラップ材(コアラップシート)として好適に使用することができる。ラップ材もまた吸収材の一形態である。
【0035】
上記5)に関して、懸濁液をシート状物に付与する方法としては、ディップコーター法、スプレーコーター法、フローコーター法、ダイコーター法、ロールコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、バーコーター法、スピンコーター法等、公知のコーティング方法が挙げられる。懸濁液を用いて当該材料をシート状物の吸収コアに担持させる方法は、例えば、上記3)および4)の前処理として実施してもよい。
【0036】
上記1)~6)の形態は、適宜組み合わせてよい。例えば、上記1)と5)の形態を組み合わせて、吸収コアおよびラップ材のいずれにも当該材料が含まれ、かつ当該材料が担持されるようにしてよい。
【0037】
あるいは、吸収材は、当該材料を含む粒状物の形態で提供されてよい。粒状物の吸収材は、例えば、ゼオライトおよびシリカゲル等の多孔質無機材料、ならびにベントナイト等の粘土鉱物等の無機材料、ならびにパルプ、高分子吸収体、および上記材料(木質部および/または葉から、精油および水分の少なくとも一部が除去された材料)以外の木質粉末(例えば、おがくず)等から選択される少なくとも1種と混合された後、所望の形状に成形することにより得られる。粒状物は、例えば、1μm~5000μmの直径および1μm~5000μmの高さを有する円柱状物であってよく、あるいは1μm~5000μmの直径を有する球状物であってよい。あるいはまた、粒状物は形状の如何を問わず、1つあたり0.5μm~100mmの体積を有するものであってよい。
【0038】
いずれの用途で使用する場合でも、当該材料の吸収材に占める割合が小さすぎると、吸収材が吸収する予定の量の液体(特に排泄物)に対して、当該材料が十分な消臭機能等を発揮できないことがある。当該材料の占める割合が大きすぎると、吸収材が所定量の液体(特に排泄物)を吸収できなくなり、吸収材としての機能を奏することができなくなることがある。
【0039】
本実施形態の吸収材は、アンモニアの10分後の消臭性能が80%以上であるような消臭効果を示すものであることが好ましい。アンモニアの10分後の消臭性能は、後述する実施例に記載の方法により測定したアンモニア濃度から、下記式により算出される。なお、式中、Aは経過時間0分時のアンモニア濃度(ppm)、Bは経過時間10分時のアンモニア濃度(ppm)である。
アンモニアの10分後の消臭性能(%)=[(A-B)/A]×100
【0040】
本実施形態の吸収材は、人体に当てて使用する吸収性物品の吸収材として使用することができる。そのような吸収性物品は、具体的には、例えば、乳児用使い捨ておむつ、大人用使い捨ておむつ、生理用ナプキン、パンティーライナー、失禁パッド、陰唇間パッド、母乳パッド、および汗取りシート等である。
【0041】
あるいは、本実施形態の吸収材は、人以外の動物からの排泄物を処理する動物用吸収性物品の吸収材として使用することができる。そのような吸収性物品は、具体的には、例えば、トイレトレー等に広げて設置されるペット排泄用シート、およびペット用使い捨ておむつ等である。これらの動物用の吸収性物品は、家庭内はもちろんのこと、動物病院、ペットショップ、移動用ケージ等においても好適に利用できる。
【0042】
あるいはまた、本実施形態の吸収材は、当該材料を含有する柱状、球状等の粒状物の形態である場合には、例えば、動物用トイレ砂(例えば猫砂)の形態で提供される。
【0043】
本実施形態の吸収材(ラップ材の形態として提供されるものを含む)がシート状物である場合、当該材料は1g/m~50g/mの量で含まれていることが好ましく、3g/m~30g/mの量で含まれていることがより好ましい。当該材料の好ましい含有量は、吸収材全体の量により変わり得るが、吸収材に当該材料が上記範囲内の量で含まれていれば、当該材料を含むことによる効果が良好に発揮されやすい。当該材料の絶対量が小さすぎる場合には、当該材料による消臭効果が十分に得られず、多すぎる場合には、吸収材を構成する他の部材の量が小さくなって、排泄物等の液体を十分に吸収できなくなることがある。
【0044】
本実施形態の吸収材がペット排泄用シートに用いられる場合、当該材料は吸収材全体の0.1質量%~10質量%を占めることが好ましく、1質量%~5質量%を占めることがより好ましい。本実施形態の吸収材が使い捨ておむつ(人体用およびペット用)に用いられる場合、当該材料は吸収材全体の0.1質量%~10質量%を占めることが好ましく、1質量%~5質量%を占めることがより好ましい。本実施形態の吸収材がパッドに用いられる場合、当該材料は吸収材全体の0.1質量%~10質量%を占めることが好ましく、1質量%~5質量%を占めることがより好ましい。
【0045】
本実施形態の吸収材が粒状物である場合、当該材料は、粒状物の1質量%~80質量%を占めることが好ましく、5質量%~70質量%を占めることがより好ましい。粒状物の場合、粒状物の内部に排泄物が取り込まれるため、表面だけではなく内部にも当該材料が含まれると、消臭がより効率的に行われる。そのため、吸収材が粒状物である場合には、例えばペット排泄用シートの場合と比較して、吸収材に占める当該材料の割合をより多くすることが好ましい。
【実施例0046】
(精油および水分の少なくとも一部を除去した材料の粉状物の製造実施例1)
樹木の木質部および/または葉から、精油および水分の少なくとも一部を除去した材料の粉状物を、以下の手順で製造した。
(1)葉のついた状態のトドマツの枝90kgを、圧砕式粉砕機(KYB製作所製)を用いて粉砕し、それぞれ10~20mm程度の寸法を有する小片の集合物を得た後、当該集合物をマイクロ波蒸留装置の蒸留槽内に入れた。次いで、蒸留槽内の圧力を、約15kPaの減圧に保持し、約1時間マイクロ波照射した。発生した蒸気(油分、水分)を減圧ポンプで吸引して、蒸留槽内から除去し、トドマツ処理物を得た。得られたトドマツ処理物の量は68kgであった。
(2)得られたトドマツ処理物を、高速気流によるジェットミルを用いた粉砕処理に付し、精油および水分の少なくとも一部を除去した材料の粉状物(以下、単に粉状物と呼ぶ)を得た。粉状物の平均粒径は、163μmであった。粉状物の平均粒径は、レーザー回析・散乱式粒度分布測定装置を用いて粒度分布を求め、メディアン径(D50)として求めた。また、粉状物を光学顕微鏡で観察すると、緑色または青色の部分が含まれており、葉由来の材料が含まれていることが確認できた。
【0047】
(実施例1)
高分子吸収体と粉状物の製造実施例1で得た粉状物を、木材を原料とする綿状パルプをシート状にしたもの(50g/m)の上に、1mあたりの質量でそれぞれ、高分子吸収体30g/m、トドマツの粉状物3g/mを均質に散布し、その上から更に、綿状パルプをシート状にしたもの(50g/m)で覆い、エンボス加工を行って、133g/mのシート状の吸収材を得た。
【0048】
(比較例1)
トドマツの粉状物を含まないこと以外は、実施例1と同様にして130g/mのシート状の吸収材を得た。
【0049】
(評価)
実施例1、比較例1の吸収材について、以下の評価を行った。
(消臭性)
吸収材から、10cm×10cmの試料を切り出し、1リットルのテドラーバッグに入れた。さらに、テドラーバッグ内の試料に、0.2%アンモニア水を0.4ml(経過時間0分でアンモニア濃度500ppm)滴下し、1)アンモニア濃度、2)6段階臭気強度表示法に基づく臭気強度、および3)9段階快・不快度表示法に基づく快・不快の経時変化を確認した。結果を表1に示す。
なお、アンモニア濃度は検知管を用いて測定した。また、6段階臭気強度表示法に基づく臭気強度、および9段階快・不快度表示法に基づく快・不快の評価基準は以下のとおりである。
【0050】
・6段階臭気強度表示法
0:無臭
1:やっと感知できる
2:何のニオイであるかわかる
3:楽に感知できる
4:強い
5:強烈
【0051】
・9段階快・不快度表示法
-4:極端に不快
-3:非常に不快
-2:不快
-1:やや不快
0:快でも不快でもない
+1:やや快
+2:快
+3:非常に快
+4:極端に快
【0052】
【表1】
【0053】
実施例1と比較例1の結果から、トドマツの粉状物が優れたアンモニア消臭機能を発揮することが確認された。例えば経過時間が10分の時、実施例1のアンモニア濃度は比較例1のアンモニア濃度の約半分となっており、消臭能力が高いことがわかる。経過時間が10分の時、実施例1のアンモニアの消臭性能は88%であり、比較例1のアンモニアの消臭性能は78%であった。また、実施例1の経過時間が10分の時のアンモニア濃度と、比較例1の経過時間が30分の時のアンモニア濃度は同じ6ppmだったが、実施例1の快・不快度は+1であるのに対し、比較例1は-1であった。これはトドマツ粉状物の芳香性によるマスキング効果によると考えられる。
【0054】
(芳香性)
吸収材から10cm×10cmの試料を切り出し、蒸留水0.4mlをサンプル中央に滴下した、湿潤試料を1枚用意し、10リットルのテドラーバッグに入れた。40℃の恒温槽に2時間入れた後の臭気を確認した。9段階快・不快度表示法に基づいて9名のパネラーが臭気確認を行い、下記芳香性評価基準に基づいて各パネラーが付与した点数の平均値を算出した。結果を表2に示す。
【0055】
・芳香性評価基準
0:芳香を全く感知しない
1:芳香をわずかに感知する
2:芳香を感知する
3:芳香を強く感知する
4:芳香を強烈に感知する
【0056】
【表2】
【0057】
実施例1は湿潤させることにより、木材特有の芳香が立ち、「快」度の高いものであった。比較例1は湿潤させても、取り立てて臭気が強くなることはなかった。
【0058】
(実施例2、比較例2)
市販の吸収性物品(商品名 デオシート小型犬用 レギュラー ジャンボパック、ユニ・チャーム株式会社製)を用意し、その表面シートを剥がして、吸収材(目付約50g/m)を露出させ、これを比較例2とした。また、製造実施例1で得た平均粒径が163μmのトドマツの粉状物を用意し、比較例2における吸収材の上に、粉状物の量が3g/mとなるように振りかけて、実施例2の吸収材を得た。
【0059】
(吸液性)
実施例2および比較例2について、下記方法により、吸液時間、ウェットバック量、拡散長を測定した。結果を表2に示す。
【0060】
下記の物品を用意した。
・実施例2および比較例2の吸収材から切り出した、10cm×10cmの試料
・注入筒付きプレート(筒下部の内径2.5cm)
・0.90%生理食塩水(青色染料で着色)
・濾紙(東洋濾紙(株)製ADVANTEC(登録商標)No.2) 寸法10cm×10cm
・重り(3kg) 寸法10cm×10cm
【0061】
(i)吸収材の試料を、表面シートを剥がした面が上を向くように配置して、その上に注入筒付きプレートを乗せた。
(ii)約37℃に温めた生理食塩水30mlを筒から注入した。注入してから生理食塩水が吸収材表面から見えなくなる(液体として生理食塩水が確認されなくなる)までの時間を計測し、吸液時間(秒)とした。
(iii)注入筒付きプレートを外し、10分間静置した。
(iv)濾紙(30枚)を重ねて、その質量を測定した(質量A)。質量を測定後、重ねた濾紙を吸収材試料の上に載せ、その上に3kgの重りを載せて、20秒間そのままの状態とした。その後、重りを取って、濾紙の質量を測定した(質量B)。質量Bと質量Aとの差を、ウェットバック量(g)とした。
(v)生理食塩水の注入から5分後に、生理食塩水を吸収した吸収材の領域を目視で確認し、当該領域の吸収材のタテ方向およびヨコ方向の寸法(cm)を計測し、それらを掛けた値(タテ方向寸法×ヨコ方向寸法)を拡散面積(cm)とした。
(vi)上記(i)に戻り、(i)~(v)を繰り返して測定を行った。吸液時間、ウェットバック量、拡散面積をそれぞれ計2回測定した。
【0062】
【表3】
【0063】
実施例2と比較例2の吸液性には大きな違いがなかった。このことから、トドマツの粉状物を吸収材に含有させた場合でも、ペット排泄用シート等の吸収性物品として使用するのに問題のない吸液性能を確保できることが確認された。
【0064】
(実施例3)
製造実施例1で得た粉状物60重量部とベントナイト粉末40重量部とを混合し、水30重量部を加えて混練し、造粒機で3mmの径の柱状粒体に成形し、乾燥機で乾燥して実施例3の猫砂を得た。実施例3の猫砂について、下記の消臭性評価を行った。
【0065】
(消臭性)
直径10cm、高さ10cmの円筒形容器に、容器の内容量の半分に相当する猫砂を入れ、0.2%アンモニア水を0.5ml滴下し、滴下から30分後の臭いを確認した。
【0066】
実施例3の猫砂について消臭性を確認したところ、不快な臭いは感じられなかった。
【0067】
(実施例4)
製造実施例1で得た粉状物20重量部、水100重量部からなる懸濁液を準備した。目付15g/mの主に木材パルプから成る湿式不織布の表面に前記懸濁液を塗布し、乾燥機で乾燥させて目付20g/mの実施例4のシート状の吸収材を得た。
【0068】
実施例4のシート状吸収材に対し、実施例2と同様の吸液性試験を行ったところ、吸液時間、ウェットバック量、および拡散面積については、吸収性物品として使用するのに問題のない吸液性能を確保できることが確認された。
【0069】
(実施例5)
製造実施例1で得た粉状物10重量部、叩解機にかけた木材パルプ87重量部、ビニロン3重量部を用いて湿式抄紙用スラリーを調製した。このスラリーを、金網抄紙ワイヤーを用いて抄紙することにより、同ワイヤー上に紙層を形成させ、サクションボックスを用いて前記紙層を脱水した後、前記紙層をドライヤーで乾燥させた。これにより、粉状物が抄き込まれた湿式不織布である、実施例5のシート状の吸収材を得た。実施例5のシート状吸収材の目付は、25g/mであった。実施例5のシート状吸収材について、硫化水素、メチルメルカプタンの消臭性評価を以下に示す方法で行った。結果を表4に示す。
【0070】
(消臭性評価)
シート状吸収材を10cm×10cmに切り出し、5リットルのテドラーバッグに入れた。このテドラーバッグ内に、硫化水素を3リットル注入し(経時時間0時間で硫化水素濃度4.0ppm)、表4に示す時間が経過したときに、硫化水素濃度を検知管を用いて測定した。また、硫化水素をメチルメルカプタンに変えて(経時時間0時間でメチルメルカプタン濃度8.0ppm)、同様にメチルメルカプタン濃度の経時変化を測定した。
【0071】
【表4】
【0072】
実施例5の結果から、実施製造例1で製造された粉状物が優れた消臭機能を発揮することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本開示の吸収材は、ペット排泄用シート等、人体および動物からの排泄物および液体等を吸収する物品の吸収材として利用できる。