(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040148
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】庫内異物検出装置と方法、及び扉閉制御システムと方法
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20220303BHJP
E04H 6/14 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
E04H6/18 601F
E04H6/14 601H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206727
(22)【出願日】2021-12-21
(62)【分割の表示】P 2020093864の分割
【原出願日】2020-05-29
(71)【出願人】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】西村 賢貴
(72)【発明者】
【氏名】中村 健一
(57)【要約】
【課題】人が介在せずに、乗降室内の人、動物及び車両以外の物品(「異物」)を確実に検出することができる庫内異物検出手段を提供する。
【解決手段】乗降室2の内側全域を死角なくリアルタイムに検出可能な室内全域センサ12と、室内全域センサ12の検出データから異物Fを検出するデータ処理装置14と、を備える。室内全域センサ12は、1又は複数の3次元レーザーレーダー12Aである。3次元レーザーレーダー12Aは、乗降室2の内壁及び床面との間に異物Fが侵入できないように設置され、かつ車両が駐車する定位置を間に挟んで位置する。データ処理装置14は、乗降室2の内側に異物Fが存在しないときの検出データdである無人データd1を記憶し、室内全域センサ12の検出データdから無人データd1、又は無人データd1と車両検出データd2を除去して、除去後の検出物を異物Fとして検出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降室の内側全域を死角なくリアルタイムに検出可能な室内全域センサと、
前記室内全域センサの検出データから異物を検出するデータ処理装置と、を備え、
前記データ処理装置は、前記乗降室の内側に前記異物が存在しないときの前記検出データである無人データを記憶し、
前記室内全域センサの前記検出データから前記無人データ、又は前記無人データと車両検出データを除去して、除去後の検出物を前記異物として検出する、庫内異物検出装置。
【請求項2】
前記室内全域センサは、前記乗降室の内側の全域にレーザ光を水平走査及び垂直走査してその反射位置の3次元座標を検出する1又は複数の3次元レーザーレーダーである、請求項1に記載の庫内異物検出装置。
【請求項3】
複数の前記3次元レーザーレーダーは、前記乗降室の内壁及び床面との間に前記異物が侵入できないように設置され、かつ車両が駐車する定位置を間に挟んで位置する、請求項2に記載の庫内異物検出装置。
【請求項4】
1又は複数の前記3次元レーザーレーダーは、前記乗降室の前記内側全域を俯瞰可能な位置に設置される、請求項2に記載の庫内異物検出装置。
【請求項5】
乗降室の内側全域を死角なくリアルタイムに検出可能な室内全域センサにより、前記乗降室の内側に異物が存在しないときの無人データを予め検出して記憶し、
前記室内全域センサにより、前記内側全域の検出データをリアルタイムに取得し、
前記室内全域センサの前記検出データから前記無人データ、又は前記無人データと車両検出データを除去し、除去後の検出物を前記異物として検出する、庫内異物検出方法。
【請求項6】
出庫時に、前記室内全域センサの前記検出データから前記無人データを除去し、除去後の検出物を前記異物として検出する、請求項5に記載の庫内異物検出方法。
【請求項7】
入庫時に、前記室内全域センサの前記検出データから前記無人データと前記検出データに含まれる車両検出データを除去し、除去後の検出物を前記異物として検出する、請求項5に記載の庫内異物検出方法。
【請求項8】
請求項1に記載の庫内異物検出装置と、
前記乗降室の出入口扉の周辺に位置する前記異物を検出する扉周辺センサと、
前記出入口扉を開閉する扉開閉装置と、
前記扉開閉装置を制御する扉制御装置と、を備え、
前記扉制御装置は、
(A)前記出入口扉の閉指令信号を受信し、かつ前記庫内異物検出装置及び前記扉周辺センサが前記異物を検出しないときに、前記扉開閉装置に閉動作信号を出力し、
(B)前記出入口扉が閉動作を開始した後、前記庫内異物検出装置及び前記扉周辺センサの検出信号を継続して受信し、
(C)前記出入口扉が全閉する前に、前記庫内異物検出装置又は前記扉周辺センサが前記異物を検出したときに、前記扉開閉装置に停止信号又は開動作信号を出力し、
(D)前記(A)~(C)を繰り返す、扉閉制御システム。
【請求項9】
請求項1に記載の庫内異物検出装置と、
前記乗降室の出入口扉の周辺に位置する前記異物を検出する扉周辺センサと、
前記出入口扉を開閉する扉開閉装置と、
前記扉開閉装置を制御する扉制御装置と、を準備し、
前記扉制御装置により、
(A)前記出入口扉の閉指令信号を受信し、かつ前記庫内異物検出装置及び前記扉周辺センサが前記異物を検出しないときに、前記扉開閉装置に閉動作信号を出力し、
(B)前記出入口扉が閉動作を開始した後、前記庫内異物検出装置及び前記扉周辺センサの検出信号を継続して受信し、
(C)前記出入口扉が全閉する前に、前記庫内異物検出装置又は前記扉周辺センサが前記異物を検出したときに、前記扉開閉装置に停止信号及び開動作信号を出力し、
(D)前記(A)~(C)を繰り返す、扉閉制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車装置の乗降室の庫内異物検出手段と、出入口扉を閉鎖する扉閉制御手段に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式駐車装置(例えば、エレベータ方式、垂直循環方式、等)には、車両(例えば乗用車)が入出庫(入庫又は出庫)する乗降室と、乗降室へ車両が出入するための出入口扉が設けられている。
機械式駐車装置が作動する際は、安全性を確保するために、人、動物及び車両以外の物品(以下、単に「異物」と呼ぶ)が乗降室内に残っていないことを確認し、出入口扉を全閉する必要がある。
従来この確認は、光電センサー又は人感センサによる異物検出や、管理人による目視確認によって実施されていた。
【0003】
また、管理人が常駐しない機械式駐車装置の場合、ユーザーが入庫時又は出庫時に、乗降室内を確認して出入口扉(以下、単に「扉」と呼ぶ)を全閉する運用が実施されていた。
しかしこの場合、あるユーザーが乗降室内にいるときに、他のユーザーが誤って扉を閉じてしまう可能性があった。
そこで、かかる問題を解決するため手段として例えば特許文献1が提案されている。
【0004】
特許文献1の「機械式立体駐車場の制御方法」は、第1認証処理、第2認証処理、照合処理、及び閉扉処理を有する。第1認証処理において、車庫装置の出入口扉を開く前に、ユーザーによる第1の認証操作に基づいてユーザーの認証を行う。第2認証処理において、出入口扉を閉じる前にユーザーによる第2の認証操作に基づいてユーザーの認証を再度行う。照合処理において、第1認証処理における認証情報と第2認証処理における認証情報とが一致しているか否かを照合する。閉扉処理において、照合処理における照合結果が一致した場合にのみ出入口扉を閉じるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1により、あるユーザーが乗降室内にいるときに、他のユーザーが誤って扉を閉じてしまうことを回避することができる。しかし、特許文献1の手段には以下の課題があった。
【0007】
(1)乗降室から車両に乗り出庫したユーザーが、扉を閉じずにそのまま自分の目的地に向かってしまう可能性がある。
その場合、他のユーザーが操作しても認証情報が一致しないため、扉を閉じることも、駐車装置を作動させることもできなくなる。この場合、扉が開いた状態のまま長時間放置され、他の利用者が使えない問題が発生する。
(2)光電センサ又は人感センサによる庫内異物検出では、センサの死角が発生する。
(3)人が運転しない自動運転車の普及に伴い、出入口扉を人が介在せずに閉じる場合が発生する。この場合でも、上述した問題を発生させることなく、より高い安全性を確保する必要がある。
【0008】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の第1の目的は、人が介在せずに、乗降室内の人、動物及び車両以外の物品(「異物」)を確実に検出することができる庫内異物検出手段を提供することにある。また、第2の目的は、乗降室内に異物が残っていないことを確認し、出入口扉を安全に閉鎖することができる扉閉制御手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、乗降室の内側全域を死角なくリアルタイムに検出可能な室内全域センサと、
前記室内全域センサの検出データから異物を検出するデータ処理装置と、を備え、
前記データ処理装置は、前記乗降室の内側に前記異物が存在しないときの前記検出データである無人データを記憶し、
前記室内全域センサの前記検出データから前記無人データ、又は前記無人データと車両検出データを除去して、除去後の検出物を前記異物として検出する、庫内異物検出装置が提供される。
【0010】
また本発明によれば、乗降室の内側全域を死角なくリアルタイムに検出可能な室内全域センサにより、前記乗降室の内側に異物が存在しないときの無人データを予め検出して記憶し、
前記室内全域センサにより、前記内側全域の検出データをリアルタイムに取得し、
前記室内全域センサの前記検出データから前記無人データ、又は前記無人データと車両検出データを除去し、除去後の検出物を前記異物として検出する、庫内異物検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、乗降室の内側全域を死角なく検出可能な室内全域センサにより、乗降室の内側に異物が存在しないときの無人データを予め検出して記憶する。従って、無人データには、異物が存在しないときの乗降室の内側全域の壁、柱、機器等の位置データ(例えば3次元座標)が含まれる。
【0012】
また、室内全域センサにより、内側全域の検出データをリアルタイムに取得するので、取得した検出データには、異物が存在しないときの無人データと異物の位置データが含まれる。
【0013】
さらに、室内全域センサによりリアルタイムに検出された検出データから無人データ、又は無人データと車両検出データを除去するので、除去後のデータを異物として検出することができる。
【0014】
従って、人が介在せずに、乗降室内の人、動物及び車両以外の物品(「異物」)をリアルタイムに確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】庫内異物検出装置の第1実施形態を示す図である。
【
図3】庫内異物検出装置の第2実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0017】
図1は、庫内異物検出装置10の第1実施形態を示す図である。
図1(A)は、乗降室2の平面図である。この図において、庫内異物検出装置10は、室内全域センサ12とデータ処理装置14とを備える。
【0018】
乗降室2は、この例で機械式駐車装置1の入出庫フロアである。入出庫フロアは、この例では壁2aで四方が囲まれた矩形平面であり、車両4が入出庫する出入口2bを有する。また、出入口2bを開閉する出入口扉3が設けられている。
機械式駐車装置1は、例えばエレベータパーキングであるが、乗降室2を有する他の機種、例えば、垂直循環方式であってもよい。
【0019】
室内全域センサ12は、乗降室2の内側の全域を死角なくリアルタイムに検出可能なセンサである。リアルタイムとはセンサの検出サイクル毎にの意味である。検出サイクルは、例えば100ms以下であり、人又は動物を確実に検出できる短い時間であることが好ましい。
【0020】
図1(A)において、室内全域センサ12は、複数(この例で2台)の3次元レーザーレーダー12Aである。
3次元レーザーレーダー12Aは、乗降室2の内側全域にレーザ光6を水平走査及び垂直走査して照射し、その反射位置の3次元座標を検出する。
【0021】
図1(B)は3次元レーザーレーダー12Aの平面図である。
この図に示すように、レーザ光6の水平走査範囲(水平走査角度θ)は、正面(θ=0)から少なくとも-45度~+45度、好ましくは-75度~+75度であるのがよい。
また3次元レーザーレーダー12Aの検出距離Lは、乗降室2の間口及び奥行以上(例えば8m以上)であるのがよい。
【0022】
図1(A)において、複数(2台)の3次元レーザーレーダー12Aは、それぞれ車両4が駐車する定位置を間に挟んで位置する。
すなわち、2以上の3次元レーザーレーダー12Aは、全体で乗降室内全域を検出できる位置に配置されている。
車両4が駐車する定位置は、乗降室2の中央に設定され、この例では定位置に車両4を載せるパレット5が位置する。
またこの例で、2台の3次元レーザーレーダー12Aはパレット5の中心に向けて互いに対向して図でA,Bの位置に配置されている。なお、図でC,Dの位置に配置しても、3以上の位置に配置してもよい。
【0023】
図1(C)は3次元レーザーレーダー12Aの側面図である。
この図において、レーザ光6の垂直走査範囲(垂直走査角度α)は、水平(α=0)に対し好ましくは-5度~+35度であるのがよい。
【0024】
図1(A)と
図1(C)において、複数の3次元レーザーレーダー12Aは、乗降室2の内壁(壁2a)及び床面2cとの間に異物Fが侵入できないように設置されている。
【0025】
図1(C)において、3次元レーザーレーダー12Aは、乗降室2の床面2cとの間に異物Fが侵入できない高さに設置されている。
異物Fのうち乗降室内を自分で移動する可能性がある人(例えば3歳児)と動物(犬、猫)を想定し、それらの最小全高より低い高さ(例えば200mm)に3次元レーザーレーダー12Aのレーザ光6の照射高さhを設定する。
この構成により、3次元レーザーレーダー12Aの照射範囲の人(例えば3歳児)と動物(犬、猫)を確実に検出することができる。
この場合、レーザ光6の照射高さh(例えば200mm)よりも全高が低く、かつレーザ光6の照射位置の直近にある静止物品は、検出できない場合があるが、これは安全上支障がないため対象外である。
【0026】
また
図1(A)において、2台の3次元レーザーレーダー12Aは、乗降室2の内壁との間に異物Fが侵入できない位置に設置されている。
3次元レーザーレーダー12Aの背面に、異物Fのうち乗降室内を自分で移動する可能性がある人(例えば3歳児)と動物(犬、猫)の最小幅より内壁から近い位置(例えば200mm)に3次元レーザーレーダー12Aのレーザ光6の設置位置を設定する。
この構成により、3次元レーザーレーダー12Aの背面に人(例えば3歳児)や動物(犬、猫)が侵入するのを防ぐことができる。
なお、3次元レーザーレーダー12Aの背面に、人や動物が侵入できないように侵入防止措置(例えば、仕切り壁等)を設置してもよい。
【0027】
また、室内全域センサ12は、乗降室2の内側全域を死角なくリアルタイムに検出できる限りで、上述の例に限定されない。
例えば、室内全域センサ12は、乗降室2の内側全域を俯瞰可能な位置に設置された1又は複数の3次元レーザーレーダー12Aであってもよい。
【0028】
図1(A)において、データ処理装置14は例えばコンピュータ(PC)であり、室内全域センサ12の検出データdから異物Fを検出する。
データ処理装置14は、入力装置14a、出力装置14b、記憶装置14c、及び演算装置14dを有する。
データ処理装置14は、乗降室2の内側に異物Fが存在しないときの検出データdである無人データd1を記憶装置14cに記憶する。
またデータ処理装置14は、車両4の出庫時に、室内全域センサ12の検出データdから無人データd1を除去して、除去後の検出物を異物Fとして検出する。
さらにデータ処理装置14は、車両4の入庫時に、室内全域センサ12の検出データdから無人データd1と検出データdに含まれる車両検出データd2を除去して、除去後の検出物を異物Fとして検出する。車両検出データd2は、入庫の際に車両4が定位置に位置するときに記憶することができる。
【0029】
図2は、庫内異物検出方法のフロー図であり、S1~S5の各ステップ(工程)を有する。
【0030】
ステップS1では、上述した室内全域センサ12により、乗降室2の内側に異物Fが存在しないときの無人データd1を予め検出して記憶装置14cに記憶する。
ステップS2では、室内全域センサ12により、乗降室2の内側全域の検出データdをリアルタイムに取得する。
【0031】
出庫時、例えば、車両4の出庫後の出入口扉3の閉動作中において、ステップS3で室内全域センサ12の検出データdから無人データd1を除去し、ステップS5において、除去後の検出物を異物Fとして検出する。
【0032】
また、入庫時、例えば、車両4の入庫後の出入口扉3の閉動作中において、ステップS4で室内全域センサ12の検出データdから無人データd1と検出データdに含まれる車両検出データd2を除去し、ステップS5において、除去後の検出物を異物として検出する。
【0033】
図3は、庫内異物検出装置10の第2実施形態を示す図であり、
図1(A)と同様の平面図を示している。
この図において、乗降室2は、大小2つの矩形範囲(大部屋と小部屋)が連結された形状であり、下方に示す小さい矩形範囲(小部屋)に出入口2bを有する。また、出入口2bを開閉する出入口扉3が設けられている。
【0034】
また、この例で、4基の3次元レーザーレーダー12Aが設けられ、そのうち2基(1対)は、大部屋の乗降室2の内側全域にレーザ光6を水平走査及び垂直走査して照射し、その反射位置の3次元座標を検出する。この構成は、第1実施形態と同様である。
【0035】
さらにこの例では、別の2基(1対)の3次元レーザーレーダー12Aが、小部屋の乗降室2の内側全域にレーザ光6を水平走査及び垂直走査して照射し、その反射位置の3次元座標を検出する。この場合、2台の3次元レーザーレーダー12Aは小部屋の中心に向けて互いに対向して配置されている。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
【0036】
また、3次元レーザーレーダー12Aの配置はこの例に限定されず、乗降室2の内側全域を死角なく検出可能な限りで、乗降室2の形状に合わせて任意に設定するのがよい。
例えば、室内全域センサ12は、乗降室2の内側全域を俯瞰可能な位置に設置された1又は複数の3次元レーザーレーダー12Aであってもよい。
【0037】
上述した実施形態によれば、乗降室2の内側全域を死角なく検出可能な室内全域センサ12により、乗降室2の内側に異物Fが存在しないときの無人データd1を予め検出して記憶する。従って、無人データd1には、異物Fが存在しないときの乗降室2の内側全域の壁、柱、機器等の位置データ(例えば3次元座標)が含まれる。
【0038】
また、室内全域センサ12により、内側全域の検出データd1をリアルタイムに取得するので、取得した検出データd1には、異物Fが存在しないときの無人データd1と異物Fの位置データが含まれる。
【0039】
さらに出庫時に、室内全域センサ12の検出データdから無人データd1を除去するので、除去後のデータを異物Fとして検出することができる。
同様に、入庫時に、室内全域センサ12の検出データdから無人データd1と検出データdに含まれる車両検出データd2を除去するので、除去後の検出物を異物Fとして検出することができる。
【0040】
図4は、実施例を示す乗降室2の平面図である。
乗降室2は、この例で機械式駐車装置1の入出庫フロアである。機械式駐車装置1は、例えばエレベータパーキングであるが、乗降室を有する他の機種であってもよい。
入出庫フロアは、この例で壁2aで四方が囲まれた矩形平面であり、車両4が入出庫する出入口2bを有する。また、出入口2bを開閉する出入口扉3が設けられている。
また、この図において、7a,7bは、機械式駐車装置1を構成する柱とガイドである。さらに、乗降室2には図示しない非常用扉が設けられている。
【0041】
図4において、扉閉制御システム100は、さらに、扉周辺センサ20、扉開閉装置30、及び扉制御装置40を備える。
【0042】
扉周辺センサ20は、乗降室2の出入口扉3の周辺に位置する異物Fを検出する。出入口扉3の周辺とは、少なくとも平面視で出入口扉3の作動範囲を含む。
この例で、扉周辺センサ20はレーザースキャナーであり、出入口2bの外側上部に下向きに設置され、出入口2bの前面に位置する異物Fをリアルタイムに検出するようになっている。扉周辺センサ20の設置高さは、出入口2bの全高より高い位置(例えば2500mm以上)であり、自立歩行する幼児又は動物の最小全高(例えば200mm)を検出できることが好ましい。
扉周辺センサ20による検出範囲21は、例えば図の斜線範囲であり、出入口扉3の扉芯から1000mm以上、幅の両端から150mm以上外側までの範囲であることが好ましい。
【0043】
扉開閉装置30は、出入口扉3を開閉する。すなわち、扉開閉装置30は、出入口扉3を駆動する駆動機構を備え、開動作信号a1を受信して出入口扉3を開く開動作と、閉動作信号b1を受信して出入口扉3を閉じる閉動作を実施する。また、扉開閉装置30は、出入口扉3が全開した位置で扉開限信号a2を出力し、出入口扉3が全閉した位置で扉閉限信号b2を出力する。
【0044】
出入口扉3は、高速扉と低速扉の2枚上開き扉、又は高速扉、中速扉、及び低速扉の3枚上開き扉であるのがよい。この場合、高速扉は200mm/s以下、低速扉は100mm/s以下に設定されている。
この構成により、扉の速度を落とすことで、衝撃の緩和とセンサ検出後の停止距離を短くすることで危害のひどさと発生率を低減することができる。
【0045】
扉制御装置40は、例えばコンピュータ(PC)であり、扉開閉装置30を制御する。
【0046】
図5は、上述した扉閉制御システム100を用いた扉閉制御方法の全体フロー図である。
扉閉制御方法では、上述した庫内異物検出装置10、扉周辺センサ20、扉開閉装置30、及び扉制御装置40を事前に準備する。
次いで、扉閉制御方法は、T1~T11の各ステップ(工程)を有する。
【0047】
扉制御装置40が出入口扉3の閉指令信号c1を受信すると、庫内異物検出装置10及び扉周辺センサ20が作動し、並行して扉閉操作ガイダンス(ステップT1)が行われる。
庫内異物検出装置10及び扉周辺センサ20はステップT6a,T7aにおいてリアルタイムに繰り返し実施され、扉閉操作ガイダンス(T1)の終了までに異物Fを検出しないとき(YES)に、扉開閉装置30に閉動作信号b1を出力する。
【0048】
ステップT2において、閉動作信号b1を受信し、出入口扉3の閉動作を開始する。この場合、高速扉は200mm/s以下に設定されている。
ステップT2において、出入口扉3の閉動作を開始した後、ステップT6b,T7bにおいて庫内異物検出装置10及び扉周辺センサ20の作動を継続し、扉制御装置40は庫内異物検出装置10及び扉周辺センサ20の検出信号を継続して受信する。
【0049】
ステップT6b,T7bにおいて庫内異物検出装置10及び扉周辺センサ20が異物Fを検出しないとき(YES)は、ステップT3において出入口扉3は閉限で停止する。
【0050】
ステップT4において、非常用扉が閉であることを確認し(YES)、ステップT5において機械起動を許可して、扉閉制御を終了する。
【0051】
上述したT1~T5のステップは、扉閉制御が正常な場合である。以下、異常が発生する場合を説明する。
【0052】
ステップT6a,T7aにおいて、庫内異物検出装置10又は扉周辺センサ20が異物Fを検出した場合(NO)は、ステップT8aにおいて、出入口扉閉の開始からの経過時間を設定時間n分と比較する。「n分」は、3~10分の範囲で予め設定する。
ステップT8aにおいて、経過時間がn分未満(NO)の場合は、開始状態に戻り、ステップT1,T6a,T7aを繰り返す。
一方、ステップT8aにおいて、経過時間がn分以上(YES)の場合は、ステップT9aで異常と判断し、異常表示をガイダンスし(ステップT10)、異常復旧作業(ステップT11)を実施する。
異常復旧作業は、許可された者(例えば保守員)が原因を除去したあと、操作盤で安全確認操作を行う。
【0053】
ステップT6b,T7bにおいて、出入口扉3が全閉する(ステップT3)の前に、庫内異物検出装置10又は扉周辺センサ20が異物Fを検出したとき(NO)は、扉開閉装置30に停止信号及び開動作信号を出力し、出入口扉3を停止させ反転させる。
【0054】
並行して、ステップT8bにおいて、出入口扉起動中の検出回数を設定回数mと比較する。設定回数mは、1~10の範囲で予め設定する。
ステップT8bにおいて、検出回数が設定回数m未満の場合(NO)には、開始状態に戻る。
ステップT8bにおいて、検出回数が設定回数m以上の場合(YES)には、ステップT9bで異常と判断し、異常表示をガイダンスし(T10)、異常復旧作業(T11)を実施する。
【0055】
ステップT4において、非常用扉が閉でない場合(NO)、ステップT9cにおいて非常用扉開検知異常を操作盤に表示し、ステップT5の機械起動許可をバイパスして、扉閉制御を終了する。異常復旧作業(T11)の終了後も、同様にステップT5の機械起動許可をバイパスして、扉閉制御を終了する。
【0056】
上述した実施形態によれば、扉制御装置40が、出入口扉3の閉指令信号c1を受信し、かつ庫内異物検出装置10及び扉周辺センサ20が異物F(人、動物又は車両4以外の物品)を検出しないときに、扉開閉装置30に閉動作信号b1を出力する。
【0057】
従って、あるユーザーが乗降室内にいるときには、庫内異物検出装置10及び扉周辺センサ20が異物F(ユーザー)を検出するので、閉指令信号c1を受信しても閉動作信号b1が出力されず、他のユーザーが誤って扉を閉じてしまうことを回避することができる。
【0058】
また、乗降室2から車両4に乗って出庫したユーザーが、扉を閉じずにそのまま自分の目的地に向かってしまう場合でも、出入口扉3の閉指令信号c1を受信し、かつ異物Fを検出しないときに、閉動作信号b1が出力されるので、正常に扉を閉じることができる。
【0059】
また、出入口扉3が閉動作を開始した後、庫内異物検出装置10及び扉周辺センサ20の検出信号を継続して受信し、出入口扉3が全閉する前に、庫内異物検出装置10又は扉周辺センサ20が異物Fを検出したときに、扉開閉装置30に開動作信号a1を出力する。
従って、人が介在せずに、人、動物及び車両4以外の物品(「異物F」)が乗降室内に残っていないことを確認し、機械式駐車装置1の出入口扉3を安全に閉鎖することができる。
【0060】
また、扉開閉装置30に開動作信号a1が出力され、出入口扉3が全開した後に、人が介在せずに、安全が確認されるまで扉を開いて待機するので、新たな閉指令なしに、安全が確認された後に出入口扉3を安全に閉鎖することができる。
【0061】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
a1 開動作信号、a2 扉開限信号、b1 閉動作信号、
b2 扉閉限信号、c1 閉指令信号、c2 停止指令信号、
d 検出データ、d1 無人データ、d2 車両検出データ、
F 異物(人、動物、車両以外の物品)、h 照射高さ、
L 検出距離、1 機械式駐車装置、2 乗降室、2a 壁、
2b 出入口、2c 床面、3 出入口扉、4 車両、
5 パレット、6 レーザ光、7a 柱、7b ガイド、
10 庫内異物検出装置、12 室内全域センサ、
12A 3次元レーザーレーダー、14 データ処理装置、
14a 入力装置、14b 出力装置、14c 記憶装置、
14d 演算装置、20 扉周辺センサ、21 検出範囲、
30 扉開閉装置、40 扉制御装置、100 扉閉制御システム