(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040160
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】生きた有機体を定量化するための方法および装置、ならびに装置の使用
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20220303BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
C12M1/34 D
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021208109
(22)【出願日】2021-12-22
(62)【分割の表示】P 2020509152の分割
【原出願日】2017-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】519383256
【氏名又は名称】マイクロワイズ アンパーツゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス デイビッド ブラックバーン
(72)【発明者】
【氏名】ピア-オーベ ポウルスン
(72)【発明者】
【氏名】キアステン エンゲル-サアアンスン
(72)【発明者】
【氏名】ピーア ボーディル ヘッキー
(57)【要約】
【課題】液体試料中の生きた有機体を定量化するための費用効率の高い技術を提供すること。
【解決手段】開示されているのは、液体試料(2)中の生きた有機体を定量化するための方法において、・チャンバ内に液体試料(2)を誘導するステップと、・チャンバ(3)内部の試料のピクチャを分析して、試料(2)中の自力で移動する有機体(4)の数を検出するステップと、・チャンバ(3)内部の試料(2)中の蛍光を発する有機体(1)の数を検出する間に青紫色スペクトルの少なくとも一部分内の光で試料(2)を照射するステップと、・青紫色スペクトルの少なくとも一部分内の光で試料(2)を照射する間にチャンバ(3)内部の試料(2)のピクチャを分析して、自力で移動するとともに蛍光を発する有機体(1、4)の数を検出するステップと、を含む方法である。生きた有機体(1、4)を定量化するための装置および装置(15)の使用も同様に開示されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料(2)中の生きた有機体を定量化するための方法において、
・ チャンバ(3)内に前記液体試料(2)を誘導するステップと、
・ 前記チャンバ(3)内部の前記試料(2)のピクチャを分析して、前記試料(2)中の自力で移動する有機体(4)の数を検出するステップと、
・ 前記チャンバ(3)内部の前記試料(2)中の蛍光を発する有機体(1)の数を検出する間に青紫色スペクトルの少なくとも一部分内の光で前記試料(2)を照射するステップと、
・ 青紫色スペクトルの少なくとも一部分内の光で前記試料(2)を照射する間に前記チャンバ(3)内部の前記試料(2)のピクチャを分析して、自力で移動するとともに蛍光を発する有機体(1、4)の数を検出するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
蛍光有機体(1)の数が、前記チャンバ(3)内部の前記試料(2)の1つ以上のピクチャを分析することによって検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上のピクチャが、青紫色スペクトルの少なくとも前記一部分内の光を遮断するかまたは減衰させるように配設された光フィルタ(5)を通して記録される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記光フィルタ(5)が、650nm未満、好ましくは600nm未満、最も好ましくは550nm未満の波長で光を遮断するかまたは減衰させるように配設されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
自力で移動する有機体(4)の数を検出するために使用される前記ピクチャが、前記試料を照射する間に記録される、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
自力で移動する有機体(4)の数を検出するために使用される前記ピクチャが、青紫色スペクトルの前記少なくとも一部分内の光を発生させる青紫色光源(7)とは異なる二次光源(6)で前記試料(2)を照射する間に記録される、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
自力で移動する有機体(4)の数を検出するために使用される前記ピクチャが記録されている間、前記二次光源(6)がオフ切換えされる、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記試料(2)が白色光によって照射される、請求項5ないし7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記ピクチャの少なくともいくつかを記憶装置(8)上に記憶するステップをさらに含む、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
自力で移動する有機体(4)の数を検出するために使用される前記ピクチャを分析して前記自力で移動する有機体(4)のサイズを検出するステップをさらに含む、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記試料(2)中の前記蛍光有機体(1)のサイズを検出するステップをさらに含む、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
蛍光を発する前記有機体(1)が自己蛍光有機体(1)である、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
青紫色スペクトルの前記一部分が、100~600nm、好ましくは300~470nmそして最も好ましくは400~440nmの波長の光である、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
自力で移動する有機体(4)の数が検出されたときおよび蛍光を発する有機体(1)の数が検出されたときに前記チャンバ(3)から外に前記液体試料(2)を誘導するステップをさらに含む、請求項1ないし13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
自力で移動する有機体(4)の数が検出される前に前記液体試料(2)が前記チャンバ(3)の内部で沈殿できるようにするステップをさらに含む、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記ピクチャは、動作追跡を用いて前記試料(2)中の自力で移動する有機体(4)の数を検出するために分析される、請求項1ないし15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
自力で移動するとともに蛍光を発する前記有機体(1、4)は、蛍光を発する有機体(1)の数を検出する間に前記試料(2)中の自力で移動する有機体(4)の数を検出することによって識別される、請求項1ないし16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記液体試料(2)中の前記生きた有機体(1、4)は、蛍光を発する有機体(1)の検出数に自力で移動する有機体(4)の検出数を加算して、中間結果を得、次に、前記中間結果から自力で移動するとともに蛍光を発する有機体(1、4)の検出数を減算することにより定量化される、請求項1ないし17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記チャンバ(3)内部の前記試料(2)のピクチャを分析して、前記試料(2)中の自力で移動する有機体(4)の数を検出するステップ、および前記チャンバ(3)内部の前記試料(2)中の蛍光を発する有機体(1)の数を検出する間、青紫色スペクトルの少なくとも一部分内の光で前記試料(2)を照射するステップは、2つの別個の連続した活動として行なわれる、請求項1ないし18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記蛍光有機体の検出と、自力で移動するとともに蛍光を発する有機体(1、4)の数の検出とが、実質的に同じプロセス内で行なわれる、請求項1ないし19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
液体試料(2)中の生きた有機体(1、4)を定量化するための装置(15)において、
前記試料(2)を保持するためのチャンバ(3)と、
前記試料(2)を前記チャンバ(3)内に誘導する誘導用手段(9)と、
前記チャンバ(3)内部の前記試料(2)のピクチャを記録するように配設されたカメラ(10)と、
前記ピクチャを分析して前記試料(2)中の自力で移動する有機体(4)の数を計数するように配設された分析用手段(11)と、
青紫色スペクトルの少なくとも一部分内の光で前記試料(2)を照射するように配設された青紫色光源(7)と、
前記チャンバ(3)内部の前記試料(2)中の蛍光を発する有機体(1)の数を計数するように配設された検出手段(12)と、
自力で移動するとともに蛍光を発する有機体(1、4)の数を識別するように配設された識別手段(13)と、
を含む装置(15)。
【請求項22】
青紫色スペクトルの少なくとも前記部分内の光を遮断するかまたは減衰させるための手段を含む光フィルタ(5)をさらに含む、請求項21に記載の装置(15)。
【請求項23】
前記光フィルタ(5)が前記カメラ(10)と前記チャンバ(3)の間に配設されている、請求項22に記載の装置(15)。
【請求項24】
前記誘導用手段(9)がポンプを含む、請求項21ないし23のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項25】
前記検出手段(12)に応答して前記青紫色光源(7)を制御するように配設された制御手段(16)を含む、請求項21ないし24のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項26】
二次光源(6)を含む、請求項21ないし25のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項27】
前記分析用手段(11)に応答して前記二次光源(6)、前記青紫色光源(7)および/または前記検出手段(12)を制御するように配設された制御手段(16)を含む、請求項21ないし26のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項28】
前記識別手段(13)が、自力で移動するとともに蛍光を発する有機体(1)の同時検出のための手段を含む、請求項21ないし27のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項29】
蛍光を発する有機体(1)の検出数に自力で移動する有機体(4)の検出数を加算し、前記識別手段(13)によって識別された数を減算するように配設された定量化手段(14)をさらに含む、請求項21ないし28のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項30】
前記生きた有機体(1、4)が請求項1ないし16のいずれか1項に記載の方法を用いて定量化される、請求項21ないし29のいずれか1項に記載の装置(15)。
【請求項31】
船舶のバラスト水の液体試料(2)中の生きた有機体(1、4)を定量化するための、請求項21ないし30のいずれか1項に記載の装置(15)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンバ内に液体試料を誘導するステップおよびチャンバ内部の試料のピクチャを分析するステップを含む、液体試料中の生きた有機体を定量化するための方法に関する。本発明は同様に、液体試料中の生きた有機体を定量化するための装置および装置の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
多くの場合、例えば調査、環境監視等に関連して液体試料中の生きた有機体を検出しその数を定量化する必要性が存在する。例えば、船舶内のバラスト水に関連して、海洋環境保護委員会が提案したバラスト水管理システムの承認向け指針は、処理後のバラスト水が、10~50μmのサイズ画分において1mlあたり多くても10個の細胞、そして50μm超のサイズ画分において1m3あたり多くても10個の細胞を含むものとするということを規定している。
【0003】
液体試料中の生きた有機体の数を定量化するための明白な方法は、顕微鏡下に試料を置き、次に細胞が生きているか否かを手作業で検出し、そのサイズを手作業で検出し、関連する細胞を手作業で定量化することである。しかしながら、このようなプロセスには時間と費用がかかる。
【0004】
特許文献1(米国特許第5,093,866号明細書)から、画像検出装置上で媒質を通して透過された光を画像化し細胞内で蛍光を誘起し、同様にこの光を画像検出装置上で画像化することによって流体媒質内の細胞、細菌および粒子の運動性および他の特性に関する情報を生成することが知られている。しかしながら、この方法はコストが高く不精確である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,093,866号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、液体試料中の生きた有機体を定量化するための費用効率の高い技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、液体試料中の生きた有機体を定量化するための方法において、
・ チャンバ内に液体試料を誘導するステップと、
・ チャンバ内部の試料のピクチャを分析して、試料中の自力で移動する有機体の数を検出するステップと、
・ チャンバ内部の試料中の蛍光を発する有機体の数を検出する間に青紫色スペクトルの少なくとも一部分内の光で試料を照射するステップと、
・ 青紫色スペクトルの少なくとも一部分内の光で試料を照射する間にチャンバ内部の試料のピクチャを分析して、自力で移動するとともに蛍光を発する有機体の数を検出するステップと、
を含む方法を提供する。
【0008】
例えばバラスト水の所与のいかなる水試料も、死んでいるかまたは生きている、自力で移動する能力を有するかまたは有していない、そして青紫色スペクトル内の光に曝露された場合に蛍光を発するかまたは発しない、多くの異なる従属栄養および独立栄養の有機体を保持するものである。
【0009】
有機体内部のクロロフィルは、青紫色スペクトル内の光で有機体を照射した後の有機体の蛍光によって検出され得、細胞の損傷後にクロロフィルは極めて急速に消滅することから、クロロフィルの存在は生きた独立栄養細胞を標示するものである。同様にして、自力で移動する能力を有する有機体も同様に生きているということが認識されている。
【0010】
したがって、運動性有機体を検出する特殊プロセスおよび蛍光有機体を検出する別の特殊プロセスにより液体試料中の生きた有機体を定量化することが有利である。しかしながら、一部の有機体は運動性と蛍光性の両方を有し、したがって、生きた有機体のさらに優れたより効率の良い定量化を達成できるように、これらの有機体も検出することによって方法の精度を増大させることが有利である。
【0011】
方法ステップが所与の順序で列挙されていても、クレームの範囲は、異なる方法ステップがこの順序で行なわれることに限定されないという点を指摘しておくべきである。例えば、蛍光を発する有機体の数の検出は、自力で移動する有機体が検出される前に行なわれても全く問題無い。
【0012】
これに関連して、「有機体」(organism、生物体)なる用語は、あらゆる種類の従属栄養有機体、例えば動物性プランクトン、原虫、細菌他、そしてあらゆる種類の独立栄養および混合栄養有機体、例えば植物性プランクトン、藍色細菌他、または任意の他の種類の単一の細胞または多細胞微生物または病原菌として理解されるべきである。
【0013】
これに関連して、「チャンバ」(chamber)なる用語は、分析中液体試料を保持するのに好適である任意の種類の容器、キュベット、空間、等として理解されるべきである。試料はほとんどの場合においてチャンバの外側に位置設定された機器を用いて分析されることから、チャンバの1つ以上の側面が透明であるのが有利である。
【0014】
同様に、これに関連して「自力で移動する有機体」(organisms moving by themselves)なる用語は、あらゆる種類の運動性有機体、自走有機体、自動有機体またはプロセスにおいてエネルギを消費しながら自発的にかつ積極的に移動する能力を有する他のあらゆる種類の有機体として理解されるべきである。この用語は、1つの物体の移動させられる能力を記述する可動性と混同されてはならない。
【0015】
さらに、これに関連して「蛍光を発する(蛍光性の)」(fluorescent)なる用語は、光または他の電磁放射線を吸収した時点で光を発出する能力を有する有機体として理解されるべきである。すなわち、これらの有機体は、1つの波長で光に曝露された場合、多少の差こそあれ瞬時に、典型的には別の波長で光を発出することになる。蛍光は、ルミネセンスの一形態であり、放射線が停止した後一定の時間光の発出が続行するリン光とは異なり、蛍光有機体は、放射線源が停止した直後に光の発出をやめる。このような有機体は自己蛍光有機体とも呼ばれる。
【0016】
本発明の一態様において、蛍光有機体の数は、チャンバ内部の試料の1つ以上のピクチャを分析することによって検出される。
【0017】
以上で説明した通り、生きた蛍光有機体は、青紫色スペクトルの少なくとも一部分内の光に曝露された場合に、光を発する。したがって、この曝露中にピクチャを撮ることで、生きた蛍光有機体を容易に識別し計数できるようにすることが可能になる。
【0018】
本発明の一態様において、ピクチャは、青紫色スペクトルの一部分内の光を遮断するかまたは減衰させるように配設された光フィルタを通して記録される。
【0019】
青紫色スペクトル内の光は同様に、他の有機体による反射、散乱、屈折他も受けることになり、水自体は光を屈折し、光は試料中の他の物体他によって反射されることになる。したがって、雑音を削減し、より精確な定量化を可能にするためには、蛍光有機体由来の光をより精確に検出できるように青紫色スペクトル内の光を遮断するかまたは減衰させるように配設された光フィルタを通してピクチャを記録することが有利である。
【0020】
本発明の一態様において、光フィルタは、650nm未満、好ましくは600nm未満、最も好ましくは550nm未満の波長で光を遮断するかまたは減衰させるように配設されている。
【0021】
光フィルタが過度に高い波長未満の光を遮断するかまたは減衰させるように配設されている場合、この光フィルタは過度に多くの光を遮断することになり、光フィルタが過度に低い波長未満の光を遮断するかまたは減衰させるように配設されている場合、光フィルタの効果は削減されることになる。したがって、当該波長は、機能との関係において有利である。
【0022】
本発明の一態様において、自力で移動する有機体の数を検出するために使用されるピクチャは、試料を照射する間に記録される。
【0023】
運動性有機体を検出するために使用されるピクチャを記録する間に試料を照射することによって、有機体およびその動作はより容易に検出される。
【0024】
本発明の一態様において、自力で移動する有機体の数を検出するために使用されるピクチャは、青紫色スペクトルの少なくとも一部分内の光を発生させる光源とは異なる二次光源で試料を照射する間に記録される。
【0025】
運動性有機体を検出するために使用されるピクチャを記録する間に二次光源で試料を照射することは、それによってより好適な照明を所与のタスクに提供することが可能になるという点で、有利である。
【0026】
本発明の一態様において、二次光源は、蛍光有機体の数を検出するために使用されるピクチャが記録されている間オフ切換えされている。
【0027】
蛍光有機体を検出する間二次光源をオフ切換えすることは、二次光が蛍光有機体の検出を妨げるリスクがこれにより削減されるという点において有利である。
【0028】
本発明の一態様において、試料は白色光によって照射される。
【0029】
運動性有機体を検出する間にフルスペクトル白色光(例えば紫外線および/または赤外線光も含む)で試料を照射することは、それによりピクチャをさらに優れた、より高いコントラストを有するものにすることができるという点において有利である。
【0030】
本発明の一態様において、該方法はさらに、ピクチャの少なくともいくつかを記憶装置上に記憶するステップを含む。
【0031】
記憶装置(例えばROM、フラッシュドライブ、ハードドライブ他)上にピクチャの少なくともいくつかを記憶することは、これにより定量化を確認しトレースできるという点において有利である。
【0032】
本発明の一態様において、該方法はさらに、自力で移動する有機体の数を検出するために使用されるピクチャを分析して、自力で移動する有機体のサイズを検出するステップを含む。
【0033】
いくつかの規則によると、所与の液体体積は、一定サイズを超える、一定サイズより小さい、または一定のサイズ範囲内の生きた有機体を一定数を超えて含有してはならない。したがって、運動性有機体のサイズも検出することが有利である。
【0034】
本発明の一態様において、該方法はさらに、試料中の蛍光有機体のサイズを検出するステップを含む。
【0035】
いくつかの規則によると、所与の液体体積は、一定サイズを超える、一定サイズより小さい、または一定のサイズ範囲内の生きた有機体を一定数を超えて含有してはならない。したがって、蛍光有機体のサイズも検出することが有利である。
【0036】
本発明の一態様において、蛍光を発する有機体は自己蛍光有機体である。
【0037】
有機体は、例えばフルオロフォアを用いて蛍光性をもたせることができるが、フルオロフォアの取扱いおよびそれが有機体に対してもたらす影響はしばしば問題の多いものである。例えば、染色プロセスには時間がかかり、コストは増大し、時として有機体はフルオロフォアを吸収せず、したがってこれらの有機体は検出されない。そして、添加されたフルオロフォアは多くの場合液体中で蛍光を誘起し、これにより精度も低下する。したがって、自己蛍光有機体のみを検出することが有利である。
【0038】
本発明の一態様において、青紫色スペクトルの一部分は、100~600nm、好ましくは300~470nmそして最も好ましくは400~440nmの波長の光である。
【0039】
青紫色光の波長範囲が過度に広い場合、光が蛍光波長と一致するリスクが大きくなり、青紫色光の波長範囲が過度に狭い場合、有機体内で蛍光効果を励起しないリスクが大きくなる。したがって、該波長範囲は、機能との関係において有利な関係を有する。
【0040】
本発明の一態様において、該方法はさらに、自力で移動する有機体の数が検出された時点および蛍光を発する有機体の数が検出された時点でチャンバから外に液体試料を誘導するステップを含む。
【0041】
運動性および蛍光有機体を検出した後にチャンバから外に液体試料を誘導することは、こうしてチャンバを別の試験のために再利用することができるという点において有利である。
【0042】
本発明の一態様において、該方法はさらに、自力で移動する有機体の数が検出される前に液体試料がチャンバの内部で安定化(沈殿、settle)できるようにするステップを含む。
【0043】
運動性有機体は、ピクチャシーケンス内のその位置を検出することによって検出され、試料がチャンバに導かれた後(運動性有機体を検出する前)に安定化(沈殿)できない場合、精度は低下する。
【0044】
本発明の一態様において、ピクチャは、動作追跡を用いて試料中の自力で移動する有機体の数を検出するために分析される。
【0045】
試料中の後続する画像内の特定の有機体の位置を追跡することは、運動性有機体を検出するための単純で効率の良い方法を提供する。動作追跡は、動作分析、動作キャプチャ等としても知られている。
【0046】
本発明の一態様において、自力で移動するとともに蛍光を発する有機体は、蛍光を発する有機体の数を検出する間に試料中の自力で移動する有機体の数を検出することによって識別される。
【0047】
同様に、蛍光有機体について動作追跡を行なうことは、自力で移動するとともに蛍光を発する有機体を検出する単純で速い方法である。
【0048】
本発明の一態様において、液体試料中の生きた有機体は、蛍光を発する有機体の検出数に自力で移動する有機体の検出数を加算して中間結果を得、次にこの中間結果から自力で移動するとともに蛍光を発する有機体の検出数を減算することにより定量化される。
【0049】
運動性試験中に検出された有機体の合計および蛍光試験中に検出された有機体の合計から運動性と蛍光性の両方を有する有機体を差引くことは、これにより反復を回避することができ生きた有機体のより正確な数を達成できるという点において有利である。
【0050】
本発明の一態様において、チャンバ内部の試料のピクチャを分析して試料中の自力で移動する有機体の数を検出する方法ステップおよびチャンバ内部の試料中の蛍光を発する有機体の数を検出する間青紫色スペクトルの少なくとも一部分内の光で試料を照射する方法ステップは、2つの別個の連続した活動として行なわれる。
【0051】
蛍光有機体の検出プロセスとは別個の運動性有機体検出プロセスを行なうことは、これにより、各プロセスをより良くかつ/またはより効率良く行なうことができるようにする条件(例えば照明条件、カメラフレーム速度および/または解像度、光フィルタ他)下で各プロセスを行なうことが可能であるという点において、有利である。
【0052】
本発明の一態様において、蛍光有機体の検出および自力で移動するとともに蛍光を発する有機体の数の検出は、実質的に同じプロセス内で行なわれる。
【0053】
運動性と蛍光性の両方を有する有機体も同様に検出する間に蛍光有機体を検出することは、より速くより効率の良い方法を提供する。
【0054】
本発明はさらに、液体試料中の生きた有機体を定量化するための装置を提供する。該装置は、試料を保持するためのチャンバと、試料をチャンバ内に誘導する誘導用手段とを含む。装置はさら、チャンバの内部の試料のピクチャを記録するように配設されたカメラと、ピクチャを分析して試料中の自力で移動する有機体の数を計数するように配設された分析用手段とを含む。装置は同様に、青紫色スペクトルの少なくとも一部分内の光で試料を照射するように配設された青紫色光源と、チャンバ内部の試料中の蛍光を発する有機体の数を計数するように配設された検出手段とを含む。その上、装置は、自力で移動するとともに蛍光を発する有機体の数を識別するように配設された識別手段とを含む。
【0055】
運動性有機体、蛍光有機体および運動性と蛍光性の両方を有する有機体を検出できるような形で装置を形成することは、これにより、単純かつ費用効率の高い形で試料中の生きた有機体の数を比較的精確に定量化することが可能になるという点において有利である。
【0056】
これに関連して、「誘導用手段」なる用語は、例えば、液体試料をチャンバ内に誘導する能力を有する1つ以上のポンプおよび/またはバルブと結び付けた形のあらゆる種類の導管、管、流路他として理解すべきものである。
【0057】
同様にこれに関連して、「分析用手段」なる用語は、例えば、液体試料のピクチャを分析して液体試料中の自力で移動する有機体の数を計数するのに好適なPCまたは他のあらゆる種類の分析装置を含めた、あらゆる種類の画像認識システム、視覚システム、視覚センサシステム、動作追跡システムとして理解すべきものである。
【0058】
さらに、これに関連して、「検出手段」なる用語は、チャンバ内部の液体試料中の蛍光を発する有機体の数を計数するのに好適であるあらゆる種類の画像認識システム、視覚システム、視覚センサシステムまたは他のあらゆる種類の検出器として理解すべきものである。
【0059】
さらには、これに関連して、「識別手段」なる用語は、例えば、液体試料中の自力で移動するとともに蛍光を発する有機体の数を識別するのに好適である、或る種のデータ記憶設備またはあらゆる種類の識別装置を含めたあらゆる種類のパソコン、論理回路、電子計算システム、として理解すべきものである。
【0060】
本発明の一態様において、該装置はさらに、青紫色スペクトルの少なくとも一部分内の光を遮断するかまたは減衰させるための手段を含む光フィルタを含む。
【0061】
青紫色スペクトルの少なくとも一部分内の光を遮断するかまたは減衰させることにより、蛍光有機体をより精確に検出することが可能になる。
【0062】
本発明の一態様において、光フィルタは、カメラとチャンバの間に配設されている。
【0063】
これにより、本発明の有利な実施形態が達成される。
【0064】
本発明の一態様において、誘導用手段はポンプを含む。
【0065】
少なくとも1つのポンプを伴って誘導用手段を形成することは、これによりチャンバに対して試料を迅速かつ効率良く導くことが可能になるという点において有利である。
【0066】
本発明の一態様において、装置は、検出手段に応答して青紫色光源を制御するように配設された制御手段を含む。
【0067】
検出手段に応答して青紫色光源を制御することは、これにより、検出手段が活動状態にある場合にのみ光を発するように青紫色光源を制御することができ、こうして青紫色光による有機体の損傷のリスクが低減するという点において、有利である。
【0068】
本発明の一態様において、該装置は二次光源を含む。
【0069】
装置に二次光源を具備することは、これにより、他の特性、例えば動作追跡のためにより好適である特性を有する光で試料を照射することが可能になるという点において、有利である。
【0070】
本発明の一態様において、該装置は、分析用手段に応答して、二次光源、青紫色光源、および/または検出手段を制御するように配設された制御手段を含む。
【0071】
分析用手段に応答して光源および/または検出手段を制御するように配設された制御手段を提供することは、それが試料中の自力で移動する有機体のより速く効率の良い計数を可能にするという点において、有利である。
【0072】
本発明の一態様において、識別手段は、自力で移動するとともに蛍光を発する有機体の同時検出のための手段を含む。
【0073】
自力で移動するとともに蛍光を発する有機体の同時検出のための識別手段を提供することは、それが速く効率の良い検出を提供するという点において有利である。
【0074】
本発明の一態様において、該装置はさらに、蛍光を発する有機体の検出数に自力で移動する有機体の検出数を加算し、識別手段によって識別された数を減算するように配設された定量化手段を含む。
【0075】
分析用手段および検出手段により検出された有機体の合計から識別手段により検出された有機体を差引くことは、これにより、反復を回避でき、より精確な生きた有機体の数を達成できるという点において有利である。
【0076】
これに関連して、「定量化手段」なる用語は、例えば、自力で移動する有機体の検出数を蛍光を発する有機体の検出数に加算し、識別手段により識別された有機体の数を減算するのに好適である或る種のデータ記憶設備または他のあらゆる種類の定量化装置を含めた、あらゆる種類のパソコン、論理回路、電子計算システムとして理解すべきものである。
【0077】
本発明の一態様において、チャンバは、カメラおよび/または光学部品の視野にしたがって整形されている。
【0078】
チャンバの側面の少なくともいくつかがカメラおよび/または光学部品の視野の広がりに対応するような形でチャンバを整形することは、これにより、カメラはチャンバの内部の試料全体を見ることができ、こうして全試料を一度に試験することができるようになるという点において、有利である。
【0079】
本発明の一態様において、生きた有機体は、先に論述した方法のいずれかに係る方法を用いて定量化される。
【0080】
さらには、本発明は、船舶のバラスト水の液体試料中の生きた有機体を定量化するための先に説明した装置のいずれかに係る装置の使用を提供する。
【0081】
バラスト水は典型的に、異なるタイプおよびサイズの有機体を含有し、したがって本発明に係る装置を用いてバラスト水中の生きた有機体を定量化することが極めて有利である。
【0082】
以下では、図面を参照しながら、本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【
図1】上面から見た、液体試料中の生きた有機体を定量化するための装置の簡略化した実施形態を例示する。
【
図2】側面から見た、蛍光有機体を検出する装置を例示する。
【
図3】側面から見た、運動性有機体を検出する装置を例示する。
【
図4】側面から見た、チャンバの特殊な実施形態を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0084】
図1は、上面から見た、液体試料2中の生きた有機体1、4を定量化するための装置15の簡略化した実施形態を例示している。
【0085】
この実施形態において、装置は、試験すべき特定の量の液体が内部に充填される液体容器17を含む。しかしながら、別の実施形態では、液体を供給源(すなわち、検査すべき貯水槽、湖、海洋他)から直接引き込むこともできると考えられる。
【0086】
液体容器17から、液体は、当該実施形態においてはチャンバ3の速く効率の良い充填を保証するパイプおよびポンプを含んでいる誘導用手段9を用いて、チャンバ3に導かれる。液体容器17との関係におけるチャンバ3のサイズは、この例示中では正しいものではない。好ましい実施形態において、液体容器17の体積はチャンバ3の体積よりも何倍も大きいものである。
【0087】
チャンバ3内で、液体試料2はこの実施形態においてまず、試料中の運動性有機体4を検出しその数を計数するため分析用手段11によって「オンザフライ」(on-the-fly)で分析される多くの連続するピクチャをカメラ10が記録している間に白色光を生成する二次光源6によって照射される。しかしながら、別の実施形態では、二次光源6は、別のタイプのものであり得ると考えられ、あるいは二次光源6を省略し、動作追跡を自然照明下すなわち太陽光の下で行なうこともできると考えられる。
【0088】
この動作検出がひとたび終了すると、二次光源6はオフ切換えされ、青紫色スペクトル内の光を発出するように配設された青紫色光源7はオンに切換えされ、その間カメラ10は、試料2中の蛍光を発する有機体1を検出しその数を計数する検出手段12によって「オンザフライ」で分析される少なくとも1つのピクチャを記録している。しかしながら、別の実施形態においては、運動性有機体4の検出および蛍光有機体1の検出を逆の順序で行なうことができると考えられる。
【0089】
この実施形態において、装置15は、同様に、二次光源6がオフ切換えされ青紫色光源7がオン切換えされている間、すなわちこの実施形態では、蛍光有機体1の検出が行なわれているのと実質的に同時に、蛍光有機体1について動作追跡を行なうことによって、運動性と蛍光性の両方を有する有機体1、4の数を識別するように配設された識別手段13も含んでいる。しかしながら、別の実施形態では、運動性と蛍光性の両方を有する有機体1、4を検出し計数するためのプロセスは、試料2中の蛍光を発する有機体1を検出しその数を計数するプロセスとの関係において別個の連続するプロセスとして(任意の順序で)行なわれる。
【0090】
この実施形態において、青紫色光源7は、380~450ナノメートルの波長を有する強い光を発出する能力を有するLEDである。しかしながら、別の実施形態では、青紫色光源7の波長範囲は、より狭いかまたは少なくともわずかにより広いものであり得、かつ/または光源は別のタイプのもの、例えば白熱電球、ネオン管他であり得、かつ/または装置15は2つ以上の青紫色光源7を含み得ると考えられる。
【0091】
同様にして、この実施形態において、二次光源6は、380~760ナノメートルの実質的に全可視光スペクトル上の波長を有する強い白色光を発出する能力を有するLEDである。しかしながら、別の実施形態において、二次光源6の波長範囲は、より狭いものであり得るかまたは赤外線範囲、紫外線範囲他の少なくともいくつかを含み得ると考えられ、かつ/または光源6は、別のタイプのもの、例えば白熱電球、ネオン管他であり得、かつ/または装置15は2つ以上の二次光源6を含み得ると考えられる。
【0092】
この実施形態において、装置15は同様に、自力で移動する有機体4の検出数を蛍光を発する有機体1の検出数に加算することにより液体試料中の生きた有機体1、4を定量化し、その後識別手段13により識別された数を減算するように配設された定量化手段14を含んでいる。
【0093】
この実施形態において、誘導用手段9は同様に、生きた有機体1、4が定量化された時点で、チャンバ3から外に液体試料2を導くために配設されたパイプおよびポンプも含んでいる。
【0094】
この実施形態において、装置15は同様に、カメラ10および分析用手段11に応答して青紫色光源7、二次光源6および誘導用手段9のポンプを、そして検出手段12、識別手段13、定量化手段14を制御するように配設された制御手段16も含んでいる。すなわち、この実施形態においては、実質的に定量化プロセス全体が制御手段16によって制御されているが、別の実施形態では、プロセスのいくつかは自律的であり、かつ/またはこれらのプロセスは互いに制御し合い、かつ/または、制御は複数の制御手段16に分割されると考えられ、かつ/またはプロセスのいくつかは手動で制御されると考えられる。
【0095】
この実施形態において、分析用手段11、検出手段12、識別手段13、定量化手段14および制御手段16は全てコンピュータを用いて(すなわちカメラ10、誘導用手段9および光源6、7に接続されているコンピュータ上で実行する1つ以上のソフトウエアプログラムの形で)有効化される。しかしながら、別の実施形態においては、分析用手段11、検出手段12、識別手段13、定量化手段14および制御手段16によって行なわれるプロセスの少なくともいくつかは、他の電子装置を通して有効化され得ると考えられる。例えば、分析用手段11、検出手段12および/または識別手段13は、より速くより効率の高い分析を可能にするため、カメラ10に内蔵されたプロセッサにより有効化され得、かつ/または誘導用手段9および光源6、7の作動は、
図1に示されている別個のスイッチボックスによって制御され得ると考えられる。
【0096】
同様に、別の実施形態においては、ピクチャの少なくともいくつかがオンザフライで分析されず、その代り記憶され後で分析されると考えられる(例えば、分析用手段11、検出手段12、識別手段13、定量化手段14がカメラ10との関係において遠隔に配設されている場合)。
【0097】
該方法には、好適に寸法決定された光学部品18を使用して光学チャンバ3内の有機体1、4を検分するステップが関与する。この実施形態において、10~50μmの有機体1、4の画分は、1600×1200画素の高解像度カメラ10で2倍の倍率を必要とする。典型的なカメラ10は、4.4μmの画素サイズを有し、これは、各画素がおよそ2.2μm角で、視野が3.5mm×2.6mmであることを意味している。被写界深度は、アパーチャの選択により0.7mmに設定され得、これにより6μlのチャンバ体積が得られる。検出限界は単一の細胞1、4であり、統計的結果はチャンバ体積の分析回数に依存する。50μm超の有機体画分を検分するための光学チャンバ3についての寸法は、おおよそ70mm×50mm×20mm(L×W×H)であり、70mlのチャンバ体積が得られる。以上のものと同じカメラ解像度を使用すると、画素サイズは40μmであり、検出限界は同様に、単一の細胞1、4である。m3あたり10という低い濃度を検出するためには、1000倍の濃度を達成するための50μmのマスク(図示せず)を通した濾過が有利であり得るが、当該方法は未濾過試料2の試験をなおも可能にする。両方のサイズ画分について、統計的により精度が高い結果を得るために、同じ試料3から多くのチャンバ体積を分析できると考えられる。すなわち、本発明の一態様においては、より小さい有機体1、4の定量化は、より小さいチャンバ3内で行なわれ、より大きな有機体1、4はより大きいチャンバ3内で行なわれると思われる。
【0098】
ほとんどの従属栄養細胞1、4そして事実上全ての鞭毛虫および繊毛虫は、運動性である。この観察事実は、両方のサイズ画分にあてはまる。チャンバ3の内容物は、この実施形態において、カメラ10が接続されているコンピュータ11、12、13、14によって実時間で、毎秒10~25フレームのタイムベースで分析される。各フレームが分析され、個別の細胞1、4が検出され測定される。各細胞の運動は、コンピュータ11、12、13、14によりフレームからフレームまで経時的に追跡される。このようにして、各細胞1、4がサイズ範囲内にあるか否か、および運動性であるか否かを立証することができる。この実施形態において、シーケンスは同様に、後の文書化のためのビデオファイルとして、コンピュータハードドライブ上にセーブされる。
【0099】
独立栄養細胞1、4の中にはクロロフィルを含有し非運動性であるものもあれば、クロロフィルを含有しかつ運動性でもあるものもある。細胞の損傷後クロロフィルはかなり急速に消滅することから、クロロフィル単独の存在は、独立栄養細胞が生きていることの標示である。細胞1、4内部のクロロフィルは、この実施形態において、およそ420μmの波長で紫色光を用いて有機体1を刺激した後蛍光を検分することによって検出される。チャンバ3とカメラ10の間におよそ500μm超の高域フィルタの形をした光フィルタ5を挿入することは、実質的に蛍光のみがカメラ10により観察されることを意味する。クロロフィルは、細胞1全体を通して均一に分布しており、したがって、互いにまとまって単一の蛍光性物体を形成するクロロフィル細胞小器官の全体的サイズによって細胞サイズを決定することができる。50μmを超える独立栄養種は比較的少なく、したがってこの方法は主に、10~50μm画分に関連している。この方法は、なおも暗い背景に接している細胞の検出およびサイズ決定、ならびに、同様に蛍光有機体1についての動作追跡を行なうことによる運動性蛍光細胞1の検出を可能にする。
【0100】
異なる国の異なる規則によると、液体全量に比べて、より高い統計的確度を提供するために一定量の液体(すなわち複数の試料)を分析する必要がある。これを達成するために、誘導用手段9には、この実施形態において、チャンバ3を速く効率良く充填するため液体容器17(例えば試験すべき液体の全量を格納する)とチャンバ3との間に、そしてチャンバ3から試験済みの試料を速く効率よくドレンするために出口19にも同様に位置設定されたポンプが具備される。
【0101】
試料の流れと分析の間の同期化は、この実施形態において、コンピュータにより有効化される制御手段16によって行なわれる。
【0102】
システム15は、単一の細胞1、4を検出できるが、測定の精度は、以下のものに左右される:
・ チャンバ3の体積
・ 所与の液体量について分析されるチャンバ3の数
・ 検出される有機体1、4の濃度。
【0103】
10~50μmの画分についての分析はこの実施形態において、より大きな体積から無作為に小さい体積が取上げられるポワソンプロセスに似ており、有機体1、4の予想数は、多くともチャンバ1つあたり1個である。10~50μm画分のための各小体積についてのチャンバ分析の実際的な数は、50の領域内であり、その場合、測定仕様は、6μlのチャンバ体積を仮定して95%の信頼性で10±10(±100%)となる。この精度は、チャンバサイズが大きくなるにつれて(そしてカメラ10および光学部品18の解像度が高くなるにつれて)、かつ/または小体積あたりの分析回数が多くなるにつれて改善する。一例として、チャンバ体積を5倍、分析回数を2倍に増大させると、95%の信頼性で測定仕様は10±32%となる。全ての統計的推定値は、単一の体積測定における検出の確率が、有機体濃度をC、体積をVとしてC・Vであるシミュレーションに基づくものである。シミュレーションはその後、所与の数の体積についての無作為に生成された検出事象に基づく。次に、各シミュレーションを1000回以上反復して、95%の信頼性間隔を見い出すことのできる分布がレンダリングされる。
【0104】
50μm超の画分について1リットル以上の液体を分析することができる。チャンバ3は各充填とその後の分析の間で完全に空にされ、こうして、1リットルの液体の全体積が実際に分析される。これにより、より小さい画分のものに比べて異なる統計的成果が得られ、その精度は、試料がどのように収集され濾過されたかにさらに一層左右される。50μmのフィルタを通して濾過することにより、1m3の液体体積を1000倍濃縮させることが望ましいと思われる。この実施形態における解像度は、他の形では存在すると考えられる50μmより小さい細胞1、4を検出できるものの精確には測定しないようなものであることから、濾過によって光学システムによる精度も増大すると考えられる。
【0105】
図2は、側面から見た、蛍光有機体1を検出する装置15を例示する。
【0106】
この実施形態において、チャンバ3内部の試料2は青紫色光源7での照射を受け、こうして蛍光有機体1が発光し典型的に600~800μmの波長で光を発出することが可能になる。
【0107】
したがって、この実施形態において、装置15には同様に、500nm未満の波長の光を実質的に遮断するように設計された光フィルタ5が具備されており、したがってカメラ10は実質的に試料2内の輝く蛍光有機体1のみを見ることになり、実質的に全ての雑音が選別されてしまっていることから、これらの有機体1を定量化することが容易になる。
【0108】
蛍光有機体1が検出されさえすれば、生きた蛍光有機体1の数はピクチャ上の輝くドットの数を単純に計数することによって検出され得るという点において、カメラによる単一のピクチャで原則的に充分である。しかしながら、この実施形態においては、運動性と蛍光性の両方を有する有機体1、4の数も検出しなければならないことから、カメラ10はこの実施形態では、独自の動作によって動いている蛍光有機体1、4も同様に識別され得るように、記録し続ける。
【0109】
図3は、側面から見た、運動性有機体4を検出する装置15を例示する。
【0110】
この実施形態では、青紫色光源7はすでにオフ切換えされており、チャンバ3内部の試料2は今や二次光源6による照射を受けており、これによってカメラ10は、試料中の実質的に全ての有機体1、4(少なくとも特定のサイズより大きい全ての有機体4)を見ることができ、こうして後続する画像分析により生きた運動性有機体4の数を識別することができるようになる。
【0111】
図4は、側面から見たチャンバ3の特殊な実施形態を例示する。
【0112】
例えば、バラスト水中の生きた有機体1、4の定量化に関連して、(いくつかの国のいくつかの規則によると)、全体積中の生きた有機体1、4の数を立証/推定するためには、例えば一定の百分率体積または一定体積(例えば1立米)を引き出し、その後この百分率体積または定体積の全てを試験すべきであることが求められている。検出すべき運動性有機体4のいくつかは、カメラ10が検出しない可能性のあるチャンバ3の縁部まで逃げる傾向を有するという点において、このことは問題となり得る。
【0113】
こうして、本発明の一実施形態によると、チャンバ3は、カメラ10および光学部品18の視野の広がりに応じて整形される。すなわちこの実施形態において、チャンバ3の側面は、当該カメラ10および光学部品18の設計の視野と極めて精確に対応するように傾斜して形成されている。
【0114】
本発明は、チャンバ3、光源6、7、生きた有機体15を定量化するための装置他の特定の実施例に関連して、以上で例証されてきた。しかしながら、本発明は、以上で説明された特定の実施例に限定されず、クレーム中で規定されている本発明の範囲内で多種多様な形で設計され改変され得るものであることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0115】
1. 蛍光有機体
2. 液体試料
3. チャンバ
4. 運動性有機体
5. 光フィルタ
6. 二次光源
7. 青紫色光源
8. 記憶装置
9. 誘導用手段
10. カメラ
11. 分析用手段
12. 検出手段
13. 識別手段
14. 定量化手段
15. 生きた有機体を定量化するための手段
16. 制御手段
17. 液体容器
18. 光学部品
19. 出口
【手続補正書】
【提出日】2022-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料(2)中の生きた有機体を定量化するための方法において、
・ チャンバ(3)内に前記液体試料(2)を誘導するステップと、
・ 前記チャンバ(3)内部の前記試料(2)のピクチャを分析して、前記試料(2)中の自力で移動する有機体(4)の数を検出するステップと、
・ 前記チャンバ(3)内部の前記試料(2)中の蛍光を発する有機体(1)の数を検出する間に青紫色スペクトルの少なくとも一部分内の光で前記試料(2)を照射するステップと、
・ 青紫色スペクトルの少なくとも一部分内の光で前記試料(2)を照射する間に前記チャンバ(3)内部の前記試料(2)のピクチャを分析して、自力で移動するとともに蛍光を発する有機体(1、4)の数を検出するステップと、
を含む方法。
【外国語明細書】