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特開2022-40181ヒトBTNL3タンパク質、核酸、および抗体、ならびにそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040181
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】ヒトBTNL3タンパク質、核酸、および抗体、ならびにそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220303BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20220303BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20220303BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220303BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220303BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220303BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20220303BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220303BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220303BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220303BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220303BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220303BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20220303BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220303BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K16/00
C07K14/705
C12N15/63 Z
C12N15/12
C12N15/13
C12P21/02 C
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P37/02
A61P29/00
A61K38/17
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P1/04
A61P17/06
A61P11/06
A61P43/00 105
A61P35/00
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61P31/00
A61K39/00 A
A61P37/04
A61P3/10
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021214198
(22)【出願日】2021-12-28
(62)【分割の表示】P 2019228946の分割
【原出願日】2013-07-18
(31)【優先権主張番号】61/673,639
(32)【優先日】2012-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500203709
【氏名又は名称】アムジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ヘザー エー. アーネット
(72)【発明者】
【氏名】サビーン エス. エスコバー
(72)【発明者】
【氏名】ライアン エム. スワンソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョアン エル. バイニー
(57)【要約】
【課題】BTNL3タンパク質およびそのバリアント、それらをコードする核酸、ならびにそれらに結合する抗体を提供する。
【解決手段】本明細書に記載のBTNL3タンパク質は、単離されたタンパク質および/または可溶性タンパク質であり得る多量体タンパク質および/または融合タンパク質である。BNTL3タンパク質は、細胞の表面に結合し、かつ/または細胞の表面で発現し得る。抗BTNL3抗体を含むBTNL3タンパク質、ならびにBTNL3のアンタゴニストおよびアゴニストの使用も提供される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の組成物等。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年7月19日に出願された米国仮出願第61/673,639号の利益を主張するものであり、当該仮出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本発明は、ブチロフィリン様タンパク質、ならびにその断片、バリアント、および誘導体、そのようなタンパク質をコードする核酸、これらのタンパク質に結合する抗体、ならびにこれらのタンパク質のアゴニストおよびアンタゴニストに関する。そのような分子を含む薬学的組成物およびそれらを含有するそのような分子または組成物の使用も企図される。
【背景技術】
【0003】
免疫応答または炎症応答の調節は、様々な治療状況において有益であり得る。免疫応答または炎症応答の下方調節は、様々な種類の自己免疫疾患または炎症性疾患の治療において望ましくあり得る。任意の免疫応答の強化は、例えば、ワクチンに含まれる抗原、および/または癌細胞、線維症を媒介する細胞、もしくは病原体上で優先的に発現した抗原等の特定の抗原への応答を増幅するのに有益であり得る。したがって、免疫応答または炎症応答を調節することができる分子は、様々な病理学的状況において治療的価値を有する可能性がある。本発明は、不適切である、不十分である、かつ/または正常ではない炎症および/または免疫応答を特徴とする疾患を診断および治療するための治療薬を提供する。これらのうちの薬剤のいくつかは、免疫応答を刺激することができる。他の薬剤は、炎症および/または免疫応答を阻害することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、BTNL3タンパク質およびそのバリアント、それらをコードする核酸、ならびにそれらに結合する抗体を提供する。より具体的には、本明細書に記載のBTNL3タンパク質は、単離されたタンパク質および/または可溶性タンパク質であり得る多量体タンパク質および/または融合タンパク質である。BNTL3タンパク質は、細胞の表面に結合し、かつ/または細胞の表面で発現し得る。抗BTNL3抗体を含むBTNL3タンパク質、ならびにBTNL3のアンタゴニストおよびアゴニストの使用も提供される。
【0005】
一実施形態において、本発明は、(a)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチド、および(b)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチドを含む、単離された多量体BTNL3タンパク質、任意に、可溶性タンパク質、またはマイクロビーズ等の表面に結合したBTNL3タンパク質もしくは細胞表面上で発現したBTNL3タンパク質を包含し、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166との(a)および(b)のポリペプチドのアミノ酸配列アライメントウィンドウは、少なくとも50、60、70、80、または100アミノ酸長であり、BTNL3タンパク質は、少なくとも二量体、三量体、または四量体であり、BTNL3タンパク質は、非ヒト宿主細胞によって産生されており、多量体BTNL3タンパク質は、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる。わずかに異なる実施形態において、本発明は、(a)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチド、および(b)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチドを含む、単離された多量体BTNL3タンパク質、任意に、可溶性タンパク質を提供し、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166との(a)および(b)のポリペプチドのアミノ酸配列のアライメントウィンドウは、少なくとも50、60、70、80、または100アミノ酸長であり、BTNL3タンパク質は、(a)の単量体ポリペプチドの分子量の少なくとも約2、3、もしくは4倍の分子量、および/または(a)の単量体ポリペプチドの分子量の少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、もしくは16倍の分子量を有し、BTNL3タンパク質は、非ヒト宿主細胞によって産生されており、多量体BTNL3タンパク質は、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる。これらの実施形態のいずれかの代替として、またはこれに加えて、(a)および(b)のポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と比較して、単一アミノ酸の20、15、12、10、8、または5個を超えない挿入、欠失、または置換を有する配列を含み得る。いくつかの実施形態において、多量体BTNL3タンパク質は、(a)の単量体ポリペプチドの重量の3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16倍を超えない重量であり得る。これらの実施形態のいずれかにおける多量体BTNL3タンパク質は、少なくとも二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、十量体、および/またはより高次の多量体でもあり得、これは、多量体BTNL3タンパク質が、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、十量体、および/またはより高次の多量体であり得ることも意味する。いくつかの実施形態において、多量体BTNL3タンパク質は、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、または十量体を超えないものであり得る。多量体BTNL3タンパク質は、配列番号2のアミノ酸18、19、20、21、22、もしくは23~234、235、236、237、もしくは238のアミノ酸配列、または配列番号9のアミノ酸18、19、20、21、22、もしくは23~164、165、166、167、もしくは168のアミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施形態において、(a)および(b)のポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸237~259も配列番号9のアミノ酸167~189も含まず、いくつかの実施形態において、これらのアミノ酸配列は、さらなるアミノ酸配列、例えば、Fcポリペプチドのアミノ酸配列を含み得る。そのようなFcポリペプチドは、(i)天然ヒトFc領域のアミノ酸配列または(ii)天然ヒトFc領域のアミノ酸配列と比較して、単一アミノ酸の15、10、または5個を超えない挿入、欠失、または置換を有する天然ヒトFc領域のアミノ酸配列と実質的に類似したアミノ酸配列を含み得る。天然ヒトFcは、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4を含むIgG、IgA、IgD、IgM、またはIgEアイソタイプのものであり得る。多量体BTNL3タンパク質は、ホモ二量体、ホモ三量体、ホモ四量体、ホモ五量体、ホモ六量体、ホモ七量体、ホモ八量体、ホモ九量体、ホモ十量体、より高次のホモ多量体、ヘテロ多量体、または種の混合物であり得る。多量体BTNL3タンパク質は、(a)または(b)のポリペプチドの分子量の約4倍の分子量、(a)のポリペプチドの分子量の2倍と(b)のポリペプチドの分子量の2倍の約合計、(a)のポリペプチドの分子量の3倍と(b)のポリペプチドの分子量の約合計、または(a)のポリペプチドの分子量と(b)のポリペプチドの分子量の3倍の約合計を有し得る。そのような多量体BTNL3タンパク質をコードする核酸、ならびにこれらの核酸を含むベクターならびにこれらのベクターおよび/またはこれらの核酸を含む宿主細胞も提供される。
【0006】
別の実施形態において、本発明は、(a)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド(配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166とのBTNL3融合タンパク質のアミノ酸配列のアライメントウィンドウは、少なくとも80アミノ酸長である)、および(b)第1のポリペプチドのアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有し、少なくとも20アミノ酸長の配列番号2のアミノ酸237~466の配列の断片を含まない第2のポリペプチドを含むBTNL3融合タンパク質を提供し、このBTNL3融合タンパク質は、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる。この融合タンパク質は、単離され得、かつ/または可溶性タンパク質であり得る。第2のポリペプチドは、Fcポリペプチドであり得、このFcポリペプチドは、天然ヒトFc領域のアミノ酸配列と同一であるか、または実質的に類似したアミノ酸配列を有し、天然ヒトFc領域と比較して、単一アミノ酸の5、10、15、または20個を超えない挿入、欠失、または置換を含む。天然ヒトFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4を含むIgG、IgA、IgD、IgE、またはIgMアイソタイプのものであり得る。BTNL3融合タンパク質は、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166を含み得る。BTNL3融合タンパク質は、配列番号7と実質的に類似したアミノ酸配列を含み得、このアミノ酸配列は、配列番号7と比較して、単一アミノ酸の5、10、15、または20個を超えない挿入、欠失、または置換を含み、かつ/またはBTNL3融合タンパク質は、配列番号7を含み得る。BTNL3融合タンパク質は、少なくとも二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、または十量体であり得る。いくつかの実施形態において、BTNL3融合タンパク質は、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、または十量体を超えないものであり得る。BTNL3融合タンパク質は、リンカーを含み得る。いくつかの実施形態において、BTNL3融合タンパク質は、リンカーを含まない。そのようなBTNL3融合タンパク質は、多量体であり得、この多量体は、単量体BTNL3融合タンパク質の分子量の少なくとも約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16倍の分子量を有し得る。別の態様において、いくつかのそのような多量体は、単量体BTNL3融合タンパク質の分子量の約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16倍を超えない分子量を有し得る。そのようなBTNL3融合タンパク質をコードする核酸、ならびにこれらの核酸を含むベクターならびにこれらのベクターおよび/またはこれらの核酸を含む宿主細胞も提供される。
【0007】
別の実施形態において、本発明は、配列番号2、6、もしくは9の約25~131位から伸びる配列番号2の断片のアミノ酸配列、または配列番号2、6、もしくは9のアミノ酸25~131と比較して、単一アミノ酸の5もしくは10個を超えない挿入、欠失、または置換を含むそのバリアントを含む、BTNL3タンパク質、任意に、可溶性タンパク質、またはマイクロビーズ等の表面に結合したBTNL3タンパク質もしくは細胞表面上で発現したBTNL3タンパク質を提供し、このBTNL3タンパク質は、配列番号2の約132~236位から伸びる配列番号2の断片のアミノ酸配列も、配列番号2のアミノ酸132~236と比較して、単一アミノ酸の20、15、10、10、もしくは5個を超えない挿入、欠失、または置換を含むそのバリアントも含まず、BTNL3タンパク質は、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる。BTNL3タンパク質は、非ヒトまたは哺乳類宿主細胞において作製され得る。このBTNL3タンパク質、またはマイクロビーズ等の表面に結合したBTNL3タンパク質もしくは細胞表面上で発現したBTNL3タンパク質は、配列番号2、6、または9のアミノ酸25~131と比較して、単一アミノ酸の5個を超えない挿入、欠失、または置換を含み得る。または、別の態様において、可溶性BTNL3タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸25~131と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であり得る。この可溶性BTNL3タンパク質、またはマイクロビーズ等の表面に結合したBTNL3タンパク質もしくは細胞表面上で発現したBTNL3タンパク質は、少なくとも二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、または十量体であり得る。そのようなBTNL3タンパク質、またはマイクロビーズ等の表面に結合したBTNL3タンパク質もしくは細胞表面上で発現したBTNL3タンパク質は、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、十量体、より高次の多量体、またはこれらの種の混合物でもあり得る。別の態様において、この可溶性BTNL3タンパク質、またはマイクロビーズ等の表面に結合したBTNL3タンパク質もしくは細胞表面上で発現したBTNL3タンパク質は、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、または十量体を超えないものであり得る。そのような可溶性BTNL3タンパク質、またはマイクロビーズ等の表面に結合したBTNL3タンパク質もしくは細胞表面上で発現したBTNL3タンパク質は、多量体であり得、この多量体は、単量体可溶性BTNL3タンパク質の分子量の少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16倍の分子量を有する。別の態様において、そのような可溶性BTNL3タンパク質、またはマイクロビーズ等の表面に結合したBTNL3タンパク質もしくは細胞表面上で発現したBTNL3タンパク質は、多量体であり得、これは、単量体可溶性BTNL3タンパク質の分子量の約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16倍を超えない分子量を有する。そのような可溶性BTNL3タンパク質、またはマイクロビーズ等の表面に結合したBTNL3タンパク質もしくは細胞表面上で発現したBTNL3タンパク質は、例えば、抗体のFc断片および/またはリンカー等の別のポリペプチドをさらに含み得る。そのような可溶性BTNL3タンパク質をコードする核酸、ならびにこれらの核酸を含むベクターならびにこれらのベクターおよび/またはこれらの核酸を含む宿主細胞も提供される。
【0008】
あるいは、BTNL3タンパク質、任意に、可溶性タンパク質、またはマイクロビーズ等の表面に結合したBTNL3タンパク質もしくは細胞表面上で発現したBTNL3タンパク質は、配列番号2もしくは6の約132~236位から伸びる配列番号2もしくは6の断片のアミノ酸配列、または配列番号2もしくは6のアミノ酸132~236と比較して、単一アミノ酸の20、15、10、もしくは5個を超えない挿入、欠失、または置換を含むそのバリアントを含み得、このBTNL3タンパク質は、配列番号2もしくは6の25~131位から伸びる配列番号2の断片のアミノ酸配列も、配列番号2もしくは6のアミノ酸25~131と比較して、単一アミノ酸の10個を超えない挿入、欠失、または置換を含むそのバリアントも含まず、BTNL3タンパク質は、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる。BTNL3タンパク質は、非ヒトまたは哺乳類宿主細胞において作製され得る。そのような可溶性BTNL3タンパク質、またはマイクロビーズ等の表面に結合したそのようなBTNL3タンパク質もしくは細胞表面上で発現したそのようなBTNL3タンパク質は、少なくとも二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、十量体、またはより高次の多量体であり得る。別の態様において、可溶性BTNL3タンパク質、またはマイクロビーズ等の表面に結合したBTNL3タンパク質もしくは細胞表面上で発現したBTNL3タンパク質は、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体、十量体を超えないものであり得る。そのようなBTNL3タンパク質、またはマイクロビーズ等の表面に結合したそのようなBTNL3タンパク質もしくは細胞表面上で発現したそのようなBTNL3タンパク質は、例えば、抗体のFc断片および/またはリンカー等の別のポリペプチドをさらに含み得る。そのような可溶性BTNL3、またはマイクロビーズ等の表面に結合したそのようなBTNL3タンパク質もしくは細胞表面上で発現したそのようなBTNL3タンパク質は、多量体であり得、この多量体は、単量体可溶性BTNL3タンパク質の分子量の少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16倍の分子量を有する。加えて、可溶性BTNL3タンパク質、またはマイクロビーズ等の表面に結合したBTNL3タンパク質もしくは細胞表面上で発現したBTNL3タンパク質は、多量体であり得、この多量体は、単量体可溶性BTNL3タンパク質の分子量の約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16倍を超えない分子量を有する。そのようなBTNL3融合タンパク質をコードする核酸、ならびにこれらの核酸を含むベクターならびにこれらのベクターおよび/またはこれらの核酸を含む宿主細胞も提供される。
【0009】
さらなる実施形態において、DNAによってコードされるBTNL3融合タンパク質が提供され、このDNAは、(a)ポリペプチドをコードするDNAと(このDNAは、(i)配列番号1のヌクレオチド52、55、58、もしくは61~696、699、702、705、もしくは708、または配列番号8のヌクレオチド52、55、58、もしくは61~486、489、492、495、もしくは498のヌクレオチド配列からなるか、あるいは(ii)ストリンジェントな条件下で(i)のDNAにハイブリダイズする)、(b)配列番号1または配列番号8の配列からなるポリヌクレオチドをハイブリダイズせず、(a)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドとインフレームで別のポリペプチドをコードする別のDNAとを含み、この融合タンパク質は、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる。BTNL3融合タンパク質は、リンカー配列を含み得、単離され得、かつ/または可溶性タンパク質であり得る。そのようなBTNL3融合タンパク質は、多量体であり得、この多量体は、単量体BTNL3融合タンパク質の分子量の少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16倍の分子量を有する。さらなる態様において、そのようなBTNL3融合タンパク質は、多量体であり得、この多量体は、単量体BTNL3融合タンパク質の分子量の約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16倍を超えない分子量を有する。そのようなBTNL3融合タンパク質をコードする核酸、ならびにこれらの核酸を含むベクターならびにこれらのベクターおよび/またはこれらの核酸を含む宿主細胞も提供される。
【0010】
上または下で論じられるBTNL3タンパク質のうちのいずれも、単離され得、かつ/または可溶性であり得、BTNL3タンパク質の複数の分子を含む多量体または凝集種を含み得る。多量体または凝集体に含まれる単量体BTNL3タンパク質種の分子量は、還元条件下でのゲル電気泳動または還元条件下で行われるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定され得る。多量体または凝集種の分子量は、非還元条件下で行われるゲル電気泳動および/またはSECによって測定され得る。いくつかの実施形態において、多量体または凝集体は、単量体種の分子量の少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16倍の分子量を有する。いくつかの実施形態において、多量体または凝集体は、単量体種の分子量の約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16倍を超えない分子量を有する。そのような多量体または凝集体の単量体BTNL3タンパク質は、(a)配列番号2のアミノ酸18、19、20、21、22、もしくは23~234、235、236、237、もしくは238、または配列番号9のアミノ酸18、19、20、21、22、もしくは23~164、165、166、167、もしくは168のアミノ酸のアミノ酸配列を含むポリペプチド、(b)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%、95%、97%または99%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチド(配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9の18~166との(b)のポリペプチドのアミノ酸配列のアライメントウィンドウは、少なくとも50、60、70、80、90、または100アミノ酸長である)、または(c)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166の配列のような配列を有するポリペプチド(これが、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と比較して、単一アミノ酸の20、15、10、または5個を超えない挿入、欠失、または置換を含み得ることを除く)を含む。
【0011】
別の態様において、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%または95%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む単離されたバリアントBTNL3タンパク質が本明細書に記載され、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166とのアミノ酸配列のアライメントウィンドウは、少なくとも80アミノ酸長であり、このタンパク質は、配列番号2のアミノ酸18~236も配列番号9のアミノ酸18~166のアミノ酸配列も含まず、このタンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列を含むBTNL3タンパク質による固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖の阻害を拮抗することができる。
【0012】
多量体、融合、およびバリアントBTNL3タンパク質を含む本明細書に記載のBTNL3タンパク質のうちのいずれかをコードする単離されたDNAも本明細書に記載され、このDNAは、エクソン配列を含まない。
【0013】
別の態様において、BTNL3タンパク質を含む融合タンパク質および別のポリペプチドをコードするDNAが提供され、このDNAは、(a)(i)配列番号1のヌクレオチド52、55、58、もしくは61~696、699、702、705、もしくは708、または配列番号8のヌクレオチドもしくは52、55、58、もしくは61~486、489、492、495、もしくは498のDNA配列からなるか、または(ii)ストリンジェントな条件下で(i)のDNAにハイブリダイズするDNA、および(b)配列番号1または配列番号8の配列からなるDNAにハイブリダイズせず、(a)のDNAによってコードされるポリペプチドとインフレームで別のポリペプチドをコードする別のDNAを含み、この融合タンパク質は、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる。これらのDNAを含むベクターならびにこのベクターおよび/またはこのDNAを含む宿主細胞も企図される。
【0014】
本発明は、多量体BTNL3タンパク質、BTNL3融合タンパク質、および可溶性もしくはバリアントBTNL3タンパク質、またはマイクロビーズ等の表面に結合したBTNL3タンパク質もしくは細胞表面上で発現したBTNL3タンパク質を含む上述のBTNL3タンパク質のうちのいずれかを作製する方法を提供し、この方法は、DNAの発現に好適な条件下でBTNL3タンパク質をコードする核酸を含む宿主細胞を培地中で培養することと、細胞集団または培養培地からのこの発現したBTNL3タンパク質を回収することとを含む。このDNAは、宿主細胞に導入され得る。
【0015】
さらに別の態様において、自己免疫疾患または炎症性疾患を有する患者を治療する方法が提供され、この方法は、患者に、治療的に有効な用量の以下のうちのいずれか1つを投与することを含む:(1)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166のアミノ酸配列を含む任意のBTNL3タンパク質、(2)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を含むか、あるいは配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166のアミノ酸配列と比較して、単一アミノ酸の5、10、15、もしくは20個を超えない挿入、欠失、または置換を有するアミノ酸配列を含むそのバリアント(このBTNL3バリアントタンパク質は、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる)、あるいは(3)アゴニスト抗BTNL3抗体等のBTNL3アゴニストまたは抗BTNL3抗体に対する抗イディオタイプ抗体。あるいは、そのような治療は、エクスビボで行われ得る。さらなる代替案として、BTNL3タンパク質またはアゴニストは、ナノ粒子での投与等のインビボまたはエクスビボ投与のために小粒子に結合し得る。この方法は、配列番号7のアミノ酸配列を含むBTNL3タンパク質によるT細胞増殖の阻害を拮抗することができるBTNL3バリアントタンパク質を除く、この方法を実践するために上および下で論じられる多量体BTNL3タンパク質、BTNL3融合タンパク質、またはBTNL3タンパク質のうちのいずれかの使用を含む。自己免疫疾患または炎症性疾患は、数ある中でもとりわけ、関節炎(リウマチ性関節炎、若年性特発性関節炎、および乾癬性関節炎を含む)、アジソン病、喘息、多腺性内分泌障害症候群、全身性エリテマトーデス、慢性活動性肝炎、甲状腺炎、リンパ球性腺下垂体炎、早発閉経、特発性副甲状腺機能低下症、悪性貧血、糸球体腎炎、自己免疫性好中球減少症、グッドパスチャー症候群、重症筋無力症、強皮症、原発性シェーグレン症候群、多発性筋炎、自己免疫性溶血性貧血、炎症性腸疾患、例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎、乾癬、皮膚炎、サルコイドーシス、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、1型および2型糖尿病、移植関連状態、例えば、組織不適合性または移植片対宿主病、痛風および関連炎症性結晶沈着症、または線維症、例えば、アテローム性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肝硬変症、強皮症、腎移植線維症、腎同種移植ネフロパシー、肺線維症(特発性肺線維症を含む)、自己免疫性血小板減少性紫斑病、尋常性天疱瘡、急性リウマチ熱、混合本態性クリオグロブリン血症、ならびに温式自己免疫性溶血性貧血であり得る。
【0016】
さらなる態様において、T細胞増殖を阻害するための方法が提供され、この方法は、T細胞に、(1)配列番号2のアミノ酸18、19、20、21、22、もしくは23~234、235、236、237、もしくは238、または配列番号9のアミノ酸18、19、20、21、22、もしくは23~164、165、166、167、もしくは168のアミノ酸配列を含む任意のBTNL3タンパク質、または(2)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含むか、あるいは配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166のアミノ酸配列と比較して、単一アミノ酸の5、10、15、または20個を超えない挿入、欠失、または置換を有するアミノ酸配列を含むそのバリアントを添加することを含み、このBTNL3タンパク質は、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる。この方法は、T細胞増殖を阻害するための上および下で論じられる可溶性多量体BTNL3タンパク質、BTNL3融合タンパク質、または可溶性BTNL3タンパク質の使用を包含する。このT細胞増殖の阻害は、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで生じ得る。
【0017】
別の態様において、制御性T(「T reg」)細胞を増大させるための方法が提供され、この方法は、T細胞に、(1)配列番号2のアミノ酸18、19、20、21、22、もしくは23~234、235、236、237、もしくは238、または配列番号9のアミノ酸18、19、20、21、22、もしくは23~164、165、166、167、もしくは168のアミノ酸配列を含むBTNL3タンパク質、または(2)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含むか、あるいは配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166のアミノ酸配列と比較して、単一アミノ酸の5、10、15、または20個を超えない挿入、欠失、または置換を有するアミノ酸配列を含むそのバリアントを添加することを含み、このBTNL3タンパク質またはバリアントBTNL3タンパク質は、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる。この方法は、T reg細胞を増大させるために上および下で論じられるプレートもしくはビーズ等の表面に結合したBTNL3タンパク質または細胞表面上で発現したBTNL3タンパク質、多量体であり得る可溶性BTNL3タンパク質、またはBTNL3融合タンパク質もしくは可溶性BTNL3タンパク質の使用を包含する。このT reg細胞の増大は、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで生じ得る。この方法は、T細胞集団を本明細書に記載の有効な量のBTNL3タンパク質、融合タンパク質、またはアゴニストと接触させることを含む。T reg細胞の「増大」は、T reg細胞(CD3FOXP3)の、全体としてのT細胞(CD3FOXP3)に対する比率がより大きくなることを意味する。この比率は、当技術分野で周知の方法である抗体を用いて細胞タンパク質を検出するFACS分析によって決定され得る。例えば、関連部分が参照により本明細書に組み込まれる、Swanson et al.(2013),J.Immunol.190:2027-2035を参照されたい。
【0018】
別の実施形態は、自己免疫疾患または炎症性疾患を有する患者を治療するための方法を含み、この方法は、患者に、治療的に有効な用量の抗BTNL3抗体を投与することを含み、この抗BTNL3抗体は、天然BTNL3タンパク質によるT細胞の増殖の阻害をアゴナイズし、抗BTNL3抗体は、配列番号2のアミノ酸18~236のアミノ酸配列からなるタンパク質に結合する。
【0019】
別の実施形態は、自己免疫疾患または炎症性疾患を有する患者を治療するための方法を含み、この方法は、患者に、治療的に有効な用量の抗BTNL3抗体を投与することを含み、抗BTNL3抗体は、配列番号2のアミノ酸18~236のアミノ酸配列からなるタンパク質に結合することができる。いくつかの実施形態において、抗BTNL3抗体は、細胞表面BTNL3タンパク質に結合し、BTNL3、例えば、好中球発現BTNL3のB30.2ドメインを介して細胞内シグナル伝達カスケードを誘導することができる。そのような細胞内シグナル伝達は、BTNL3を発現する細胞の増殖を阻害するか、またはある場合には、細胞死を引き起こすことができる。自己免疫疾患または炎症性疾患には、例えば、うっ血性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む)、ならびに痛風および関連炎症性結晶沈着症等の過剰な好中球活性を特徴とする疾患が含まれる。
【0020】
さらなる方法は、癌患者の治療を含み、この方法は、患者に、配列番号2のアミノ酸18~236からなるBTNL3タンパク質または配列番号2のアミノ酸18~236と少なくとも90%もしくは95%同一のBTNL3タンパク質に結合する治療的に有効な量の抗体を投与することを含む。いくつかの実施形態において、そのような抗BNTL3抗体は、10-8、10-9、10-10、または10-11Mを超えない平衡解離定数(K)で、本明細書に記載のヒトBTNL3タンパク質に結合することができる。いくつかの実施形態において、そのような抗BTNL3抗体は、配列番号2および/または配列番号9と少なくとも90%、95%、97%、98%、または100%同一のアミノ酸配列を含むBTNL3タンパク質に結合することができ、配列番号2および/または9とのアライメントウィンドウは、少なくとも50、60、70、80、または100アミノ酸長であり、任意に、BTNL3タンパク質は、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる。いくつかの実施形態において、抗BTNL3抗体は、配列番号2および/または9のアミノ酸配列の断片を含むタンパク質に結合することができる。この抗体は、BTNL3によるT細胞増殖の抑制を拮抗するアンタゴニスト抗BTNL3抗体であり得る。あるいは、この抗体は、癌細胞上で発現したBTNL3に結合し、それによりその増殖を阻害するか、ある場合には、細胞死を引き起こすように癌細胞にシグナル伝達することができる。癌は、例えば、急性または慢性白血病、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、リンパ球性白血病、リンパ球性または皮膚リンパ腫、癌腫、腺癌、肉腫、胸腺腫、縦隔新生物、乳癌、前立腺癌、頭頸部癌、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、様々な種類の皮膚癌、膀胱癌、悪性神経膠腫、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝胆道新生物、小腸癌、結腸癌、または直腸癌、腎臓癌または尿管癌、睾丸癌、尿道癌または陰茎癌、婦人科腫瘍、卵巣癌、骨肉腫、内分泌系癌、皮膚黒色腫、眼内黒色腫、中枢神経系新生物、および形質細胞腫であり得る。いくつかの実施形態において、抗体は、癌細胞上で発現したBTNL3に結合するアゴニスト抗体であり得、B30.2ドメインを介する細胞内シグナル伝達を引き起こす。
【0021】
癌患者を治療する方法がさらに提供され、この方法は、患者に、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%または95%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む治療的に有効な量のバリアントBTNL3タンパク質を投与することを含み、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166とのアミノ酸配列のアライメントウィンドウは、少なくとも80アミノ酸長であり、バリアントBTNL3タンパク質は、配列番号2のアミノ酸18~236も配列番号9のアミノ酸18~166のアミノ酸配列も含まず、バリアントBTNL3タンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列を含むBTNL3タンパク質による固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖の阻害を拮抗することができる。癌は、腺癌であり得る。
【0022】
別の態様において、病原体に感染した患者を治療する方法が本明細書に提供され、この方法は、患者に、配列番号2のアミノ酸18~236および/または配列番号9のアミノ酸18~166からなるアミノ酸配列のBTNL3タンパク質、または配列番号2のアミノ酸18~236および/または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%または95%同一の配列からなるアミノ酸配列のBTNL3タンパク質に結合する治療的に有効な量の抗体を投与することを含み、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166とのアミノ酸配列のアライメントウィンドウは、少なくとも80アミノ酸長である。この抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むBTNL3タンパク質による固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖の阻害を拮抗することができるアンタゴニスト抗体であり得る。
【0023】
さらなる態様において、病原体に感染した患者を治療する方法が本明細書に記載され、この方法は、患者に、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%または95%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む治療的に有効な量のバリアントBTNL3タンパク質を投与することを含み、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166とのアミノ酸配列のアライメントウィンドウは、少なくとも80アミノ酸長であり、バリアントBTNL3タンパク質は、配列番号2のアミノ酸18~236も配列番号9のアミノ酸18~166のアミノ酸配列も含まず、バリアントBTNL3タンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列を含むBTNL3タンパク質による固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖の阻害を拮抗することができる。
【0024】
別の態様において、自己免疫状態または炎症性状態を有する患者を治療するための方法が本明細書に記載され、この方法は、(a)患者からT細胞を取り出すステップと、(b)抗CD3抗体およびBTNL3タンパク質を含むタンパク質の組み合わせでT細胞を刺激するステップと(BTNL3タンパク質は、(i)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166のアミノ酸配列、(ii)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%または95%同一のアミノ酸配列(配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166とのアミノ酸配列のアライメントウィンドウは、少なくとも80アミノ酸長である)、または(iii)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166のアミノ酸配列と比較して、単一アミノ酸の20個を超えない挿入、欠失、または置換を有するアミノ酸配列を含む)、(c)刺激されたT細胞を収集するステップと、(d)患者に収集されたT細胞を戻すステップとを含み、BTNL3タンパク質は、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる。BTNL3タンパク質は、(b)(iii)のBTNL3タンパク質であり得、このアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166のアミノ酸配列と比較して、単一アミノ酸の5または10個を超えない挿入、欠失、または置換を有する。BTNL3タンパク質は、(b)(i)のBTNL3タンパク質であり得る。自己免疫状態または炎症性状態は、数ある中でもとりわけ、関節炎(リウマチ性関節炎、若年性特発性関節炎、および乾癬性関節炎を含む)、アジソン病、喘息、多腺性内分泌障害症候群、全身性エリテマトーデス、慢性活動性肝炎、甲状腺炎、リンパ球性腺下垂体炎、早発閉経、特発性副甲状腺機能低下症、悪性貧血、糸球体腎炎、自己免疫性好中球減少症、グッドパスチャー症候群、重症筋無力症、強皮症、原発性シェーグレン症候群、多発性筋炎、自己免疫性溶血性貧血、炎症性腸疾患、例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎、乾癬、皮膚炎、サルコイドーシス、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、1型および2型糖尿病、移植関連状態、例えば、組織不適合性または移植片対宿主病、痛風および関連炎症性結晶沈着症、または線維症、例えば、アテローム性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肝硬変症、強皮症、腎移植線維症、腎同種移植ネフロパシー、肺線維症(特発性肺線維症を含む)、自己免疫性血小板減少性紫斑病、尋常性天疱瘡、急性リウマチ熱、混合本態性クリオグロブリン血症、ならびに温式自己免疫性溶血性貧血からなる群から選択され得る。
【0025】
患者に例えば癌または病原体に対するワクチンを接種するための方法が提供され、この方法は、患者に、抗原と、(a)(i)BTNL3タンパク質(このアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166からなる)、または(ii)BTNL3タンパク質(このアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%または95%同一のアミノ酸配列からなり、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166とのアミノ酸配列のアライメントウィンドウは、少なくとも80アミノ酸長である)に結合するアンタゴニスト抗体、または(b)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%または95%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含むバリアントBTNL3タンパク質(配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166とのアミノ酸配列のアライメントウィンドウは、少なくとも80アミノ酸長であり、バリアントBTNL3タンパク質は、配列番号2のアミノ酸18~236も配列番号9のアミノ酸18~166のアミノ酸配列も含まず、バリアントBTNL3タンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列を含むBTNL3タンパク質による固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖の阻害を拮抗することができる)を投与することを含む。この抗原は、癌抗原または病原体に対する免疫応答を誘発することができる抗原であり得る。アンタゴニスト抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含むBTNL3タンパク質による固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖の阻害を拮抗することができる。そのような方法において、アンタゴニスト抗BNTL3抗体またはバリアントBTNL3タンパク質は、この抗原の前に、それと同時に、またはその後に投与され得る。アンタゴニスト抗BTNL3抗体またはバリアントBTNL3タンパク質および抗原を含むワクチンが本明細書で企図される。
本発明は、例えば、以下の項目も提供される。
(項目1)
単離された多量体BTNL3タンパク質であって、
(a)配列番号2のアミノ酸18~236と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、
(b)配列番号2のアミノ酸18~236と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドと、を含み、
配列番号2のアミノ酸18~236との前記(a)および(b)のポリペプチドのアミノ酸配列のアライメントウィンドウが、少なくとも80アミノ酸長であり、
前記BTNL3タンパク質が、少なくとも二量体であり、
前記BTNL3タンパク質が、非ヒト宿主細胞によって産生されており、
前記多量体BTNL3タンパク質が、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる、単離された多量体BTNL3タンパク質。
(項目2)
単離された多量体BTNL3タンパク質であって、
(a)配列番号2のアミノ酸18~236と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドと、
(b)配列番号2のアミノ酸18~236と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドと、を含み、
配列番号2のアミノ酸18~236との前記(a)および(b)のポリペプチドのアミノ酸配列のアライメントウィンドウが、少なくとも80アミノ酸長であり、
前記BTNL3タンパク質が、(a)のポリペプチドの分子量の少なくとも約2倍の分子量を有し、
前記BTNL3タンパク質が、非ヒト宿主細胞によって産生されており、
前記多量体BTNL3タンパク質が、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる、単離された多量体BTNL3タンパク質。
(項目3)
前記(a)および(b)のポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸18~236と少なくとも95%同一である、項目1または2に記載の多量体BTNL3タンパク質。
(項目4)
前記(a)および(b)のポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸18~236と少なくとも97%同一である、項目3に記載の多量体BTNL3タンパク質。(項目5)
前記(a)および(b)のポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸18~236のアミノ酸配列を含む、項目4に記載の多量体BTNL3タンパク質。
(項目6)
前記(a)および(b)のアミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸237~259を含まない、項目1~5のいずれか一項に記載の多量体BNTL3タンパク質。
(項目7)
前記(a)および(b)のポリペプチドがそれぞれ、配列番号2のアミノ酸18~236と少なくとも90%同一の前記アミノ酸配列に加えてさらなるアミノ酸配列を含む、項目1~6のいずれか一項に記載の多量体BTNL3タンパク質。
(項目8)
前記(a)および(b)の前記さらなるアミノ酸配列がFcポリペプチドのアミノ酸配列である、項目7に記載の多量体BTNL3タンパク質。
(項目9)
(i)前記Fcポリペプチドが天然ヒトFcポリペプチドのアミノ酸配列を含むか、または
(ii)前記Fcポリペプチドが、天然ヒトFc領域のアミノ酸配列と比較して、単一アミノ酸の15個を超えない挿入、欠失、または置換を有するアミノ酸配列を含む、項目8に記載の多量体BTNL3タンパク質。
(項目10)
前記(ii)のFcポリペプチドの前記アミノ酸配列が、前記天然ヒトFc領域のアミノ酸配列と比較して、単一アミノ酸の10個を超えない挿入、欠失、または置換を有する、項目9に記載の多量体BTNL3タンパク質。
(項目11)
前記(ii)のFcポリペプチドが、前記天然ヒトFc領域のアミノ酸配列と比較して、単一アミノ酸の5個を超えない挿入、欠失、または置換を有する、項目10に記載の多量体BTNL3タンパク質。
(項目12)
前記多量体BTNL3タンパク質が、ヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合することができる、項目8~11のいずれか一項に記載の多量体BTNL3タンパク質。
(項目13)
前記天然ヒトFc領域のアミノ酸配列を含む、項目12に記載の多量体BTNL3タンパク質。
(項目14)
前記天然ヒトFc領域がIgG1アイソタイプのものである、項目9~13のいずれか一項に記載の多量体BTNL3タンパク質。
(項目15)
前記天然ヒトFc領域がIgG2アイソタイプのものである、項目9~13のいずれか一項に記載の多量体BTNL3タンパク質。
(項目16)
前記天然ヒトFc領域がIgG4アイソタイプのものである、項目9~13のいずれか一項に記載の多量体BTNL3タンパク質。
(項目17)
ホモ三量体またはより高次のホモ多量体である、項目1~16のいずれか一項に記載の多量体BTNL3タンパク質。
(項目18)
ホモ四量体またはより高次のホモ多量体である、項目17に記載の多量体BTNL3タンパク質。
(項目19)
ヘテロ多量体である、項目1~16のいずれか一項に記載の多量体BTNL3タンパク質。
(項目20)
前記多量体BTNL3タンパク質が、
前記(a)または(b)のポリペプチドの分子量の約4倍の分子量、
前記(a)のポリペプチドの分子量の2倍と前記(b)のポリペプチドの分子量の2倍の約合計、
前記(a)のポリペプチドの分子量の3倍と前記(b)のポリペプチドの分子量の約合計、または
前記(a)のポリペプチドの分子量と前記(b)のポリペプチドの分子量の3倍の約合計を有する、項目1~19のいずれか一項に記載の多量体BTNL3タンパク質。
(項目21)
BTNL3融合タンパク質であって、
(a)配列番号2のアミノ酸18~236と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドであって、配列番号2のアミノ酸18~236との前記BTNL3融合タンパク質のアミノ酸配列のアライメントウィンドウが、少なくとも80アミノ酸長である、第1のポリペプチドと、
(b)前記第1のポリペプチドのアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有し、少なくとも20アミノ酸長の配列番号2のアミノ酸237~466の配列の断片を含まない、第2のポリペプチドと、を含み、
前記BTNL3融合タンパク質が、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる、BTNL3融合タンパク質。
(項目22)
前記第2のポリペプチドがIgG Fcポリペプチドである、項目21に記載のBTNL3融合タンパク質。
(項目23)
前記Fcポリペプチドが、天然ヒトFc領域のアミノ酸配列と比較して、単一アミノ酸の15個を超えない挿入、欠失、または置換を含むアミノ酸配列を有する、項目22に記載のBTNL3融合タンパク質。
(項目24)
前記Fcポリペプチドが、前記天然ヒトFc領域のアミノ酸配列と比較して、単一アミノ酸の10個を超えない挿入、欠失、または置換を含むアミノ酸配列を有する、項目23に記載のBTNL3融合タンパク質。
(項目25)
前記Fcポリペプチドが、前記天然ヒトFc領域のアミノ酸配列と比較して、単一アミノ酸の5個を超えない挿入、欠失、または置換を含むアミノ酸配列を有する、項目24に記載のBTNL3融合タンパク質。
(項目26)
前記BTNL3融合タンパク質がFcRnに結合することができる、項目23~25のいずれか一項に記載のBTNL3融合タンパク質。
(項目27)
前記天然ヒトFc領域のアミノ酸配列を含む、項目26に記載のBTNL3融合タンパク質。
(項目28)
前記天然ヒトFc領域がIgG1アイソタイプのものである、項目23~27のいずれか一項に記載のBTNL3融合タンパク質。
(項目29)
前記天然ヒトFc領域がIgG2アイソタイプのものである、項目23~27のいずれか一項に記載のBTNL3融合タンパク質。
(項目30)
前記天然ヒトFc領域がIgG4アイソタイプのものである、項目23~27のいずれか一項に記載のBTNL3融合タンパク質。
(項目31)
前記第1のポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸18~236と少なくとも95%同一である、項目21~30のいずれか一項に記載のBTNL3融合タンパク質。
(項目32)
前記第1のポリペプチドのアミノ酸配列が配列番号2のアミノ酸18~236を含む、項目31に記載のBTNL3融合タンパク質。
(項目33)
配列番号7と実質的に類似したアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列が、配列番号7と比較して、単一アミノ酸の20個を超えない挿入、欠失、または置換を含む、項目21~32のいずれか一項に記載のBTNL3融合タンパク質。
(項目34)
前記アミノ酸配列が、配列番号7と比較して、単一アミノ酸の15個を超えない挿入、欠失、または置換を含む、項目33に記載のBTNL3融合タンパク質。
(項目35)
前記アミノ酸配列が、配列番号7と比較して、単一アミノ酸の10個を超えない挿入、欠失、または置換を含む、項目34に記載のBTNL3融合タンパク質。
(項目36)
前記アミノ酸配列が、配列番号7と比較して、単一アミノ酸の5個を超えない挿入、欠失、または置換を含む、項目35に記載のBTNL3融合タンパク質。
(項目37)
前記アミノ酸配列が配列番号7の配列を含む、項目36に記載のBTNL3融合タンパク質。
(項目38)
非還元条件下での前記BTNL3融合タンパク質の分子量が、前記BTNL3融合タンパク質の単量体種の分子量の少なくとも約4倍である、項目21~37のいずれか一項に記載のBTNL3融合タンパク質。
(項目39)
非還元条件下での前記BTNL3融合タンパク質の分子量が、前記BTNL3融合タンパク質の単量体種の分子量の約4倍である、項目38に記載のBTNL3融合タンパク質。
(項目40)
単離された多量体BTNL3タンパク質であって、
(a)配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドと、
(b)配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチドと、を含み、
配列番号9のアミノ酸18~166との前記(a)および(b)のポリペプチドのアミノ酸配列のアライメントウィンドウが、少なくとも80アミノ酸長であり、
前記多量体BTNL3タンパク質が、少なくとも二量体であり、
前記多量体BTNL3タンパク質が、非ヒト宿主細胞によって産生されており、
前記多量体BTNL3タンパク質が、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる、単離された多量体BTNL3タンパク質。
(項目41)
単離された多量体BTNL3タンパク質であって、
(a)配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドと、
(b)配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を有する第2のポリペプチドと、を含み、
配列番号9のアミノ酸18~166との前記(a)および(b)のポリペプチドのアミノ酸配列のアライメントウィンドウが、少なくとも80アミノ酸長であり、
前記多量体BTNL3タンパク質が、(a)のポリペプチドの分子量よりも約3倍大きい分子量を有し、
前記多量体BTNL3タンパク質が、非ヒト宿主細胞によって産生されており、
前記多量体BTNL3タンパク質が、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる、単離された多量体BTNL3タンパク質。
(項目42)
前記(a)および(b)のポリペプチドのアミノ酸配列が、配列番号9のアミノ酸18~166と比較して、単一アミノ酸の10個を超えない挿入、欠失、または置換を含む、項目40または41に記載の多量体BTNL3タンパク質。
(項目43)
DNAによってコードされるBTNL3融合タンパク質であって、前記DNAが、
(a)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、前記ポリヌクレオチドが、
(i)配列番号1のヌクレオチド52~708のヌクレオチド配列もしくは配列番号8のヌクレオチド52~498のヌクレオチド配列からなるか、または
(ii)ストリンジェントな条件下で前記(i)のポリヌクレオチドにハイブリダイズする、ポリヌクレオチドと、
(b)配列番号1もしくは配列番号8の配列からなるポリヌクレオチドにハイブリダイズせず、前記(a)のポリヌクレオチドによってコードされた前記ポリペプチドとインフレームでポリペプチドをコードする、別のポリヌクレオチドと、を含み、
前記融合タンパク質が、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる、BTNL3融合タンパク質。
(項目44)
リンカー配列を含む、項目1~43のいずれか一項に記載の多量体BTNL3タンパク質またはBTNL3融合タンパク質。
(項目45)
前記タンパク質の分子量が、前記タンパク質の単量体種の分子量の約4倍である、項目44に記載の多量体BTNL3タンパク質またはBTNL3融合タンパク質。
(項目46)
配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む単離されたバリアントBTNL3タンパク質であって、
配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9の18~166との前記アミノ酸配列のアライメントウィンドウが、少なくとも80アミノ酸長であり、
前記バリアントBTNL3タンパク質が、配列番号2のアミノ酸18~236も配列番号9のアミノ酸18~166のアミノ酸配列も含まず、
前記バリアントBTNL3タンパク質が、配列番号7のアミノ酸配列を含むBTNL3タンパク質による固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖の阻害を拮抗することができる、単離されたバリアントBTNL3タンパク質。
(項目47)
前記ポリペプチドが、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、項目46に記載のバリアントBTNL3タンパク質。
(項目48)
項目1~47のいずれか一項に記載の多量体BTNL3タンパク質、BTNL3融合タンパク質、またはバリアントBTNL3タンパク質をコードする単離されたDNAであって、前記DNAがエクソン配列を含まない、単離されたDNA。
(項目49)
BTNL3タンパク質および別のポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする単離されたDNAであって、前記DNAが、
(a)ポリペプチドをコードするDNAであって、前記DNAが、
(i)配列番号1のヌクレオチド52~708のヌクレオチド配列もしくは配列番号8のヌクレオチド52~498のヌクレオチド配列からなるか、または
(ii)ストリンジェントな条件下で前記(i)のDNAにハイブリダイズする、DNAと、
(b)配列番号1または配列番号8の配列からなるポリヌクレオチドにハイブリダイズせず、前記(a)のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドとインフレームでポリペプチドをコードする、別のDNAと、を含み、
前記融合タンパク質が、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる、単離されたDNA。
(項目50)
項目48または49に記載のDNAを含む、ベクター。
(項目51)
項目48または49に記載のDNAまたは項目50に記載のベクターを含む、非ヒト宿主細胞。
(項目52)
BTNL3タンパク質を作製する方法であって、
項目51に記載の宿主細胞を、前記核酸の発現に好適な条件下で、培地中で培養することと、
前記細胞または前記培養培地から前記発現したタンパク質を回収することと、を含む、方法。
(項目53)
自己免疫疾患または炎症性疾患を有する患者を治療する方法であって、前記患者に、治療的に有効な用量のBTNL3タンパク質を投与することを含み、前記治療的に有効な用量のBTNL3タンパク質が、
(a)配列番号2のアミノ酸18~236のアミノ酸配列または配列番号9のアミノ酸18~166のアミノ酸配列、
(b)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%同一のアミノ酸配列であって、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166との前記アミノ酸配列のアライメントウィンドウが少なくとも80アミノ酸長である、アミノ酸配列、または
(c)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166の配列と比較して、単一アミノ酸の20個を超えない挿入、欠失、または置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記BTNL3タンパク質が、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる、方法。
(項目54)
前記自己免疫疾患または炎症性疾患が、全身性エリテマトーデス、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患、移植関連状態、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬、サルコイドーシス、喘息、または線維症からなる群から選択される、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記自己免疫疾患または炎症性疾患がクローン病である、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記自己免疫疾患または炎症性疾患が潰瘍性大腸炎である、項目54に記載の方法。
(項目57)
前記自己免疫疾患または炎症性疾患が線維症である、項目54に記載の方法。
(項目58)
T細胞増殖を阻害するための方法であって、前記T細胞にBTNL3タンパク質を添加することを含み、前記BTNL3タンパク質が、
(a)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166のアミノ酸配列、
(b)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%同一のアミノ酸配列であって、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166との前記アミノ酸配列のアライメントウィンドウが少なくとも80アミノ酸長である、アミノ酸配列、または
(c)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166の配列と比較して、単一アミノ酸の20個を超えない挿入、欠失、または置換を有するアミノ酸配列を含み、
前記BTNL3タンパク質が、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる、方法。
(項目59)
前記阻害が、インビトロまたはエクスビボで生じる、項目58に記載の方法。
(項目60)
前記阻害がインビボで生じる、項目58に記載の方法。
(項目61)
癌患者を治療する方法であって、前記患者に、配列番号2のアミノ酸18~236および/または配列番号9のアミノ酸18~166からなるBTNL3タンパク質に結合する治療的に有効な量の抗体を投与することを含む、方法。
(項目62)
前記抗体がアンタゴニスト抗体である、項目61に記載の方法。
(項目63)
前記癌が腺癌である、項目61または62に記載の方法。
(項目64)
癌患者を治療する方法であって、前記患者に、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む治療的に有効な量のバリアントBTNL3タンパク質を投与することを含み、
配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166との前記アミノ酸配列のアライメントウィンドウが、少なくとも80アミノ酸長であり、
前記タンパク質が、配列番号2のアミノ酸18~236も配列番号9のアミノ酸18~166のアミノ酸配列も含まず、
前記タンパク質が、配列番号7のアミノ酸配列を含むBTNL3タンパク質による固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖の阻害を拮抗することができる、方法。
(項目65)
前記癌が腺癌である、項目64に記載の方法。
(項目66)
病原体に感染した患者を治療する方法であって、前記患者に、配列番号2のアミノ酸18~236および/または配列番号9のアミノ酸18~166からなるBTNL3タンパク質に結合する治療的に有効な量の抗体を投与することを含む、方法。
(項目67)
前記抗体がアンタゴニスト抗体である、項目66に記載の方法。
(項目68)
病原体に感染した患者を治療する方法であって、前記患者に、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む治療的に有効な量のバリアントBTNL3タンパク質を投与することを含み、
配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166との前記アミノ酸配列のアライメントウィンドウが、少なくとも80アミノ酸長であり、
前記バリアントBTNL3タンパク質が、配列番号2のアミノ酸18~236も配列番号9のアミノ酸18~166のアミノ酸配列も含まず、
前記バリアントBTNL3タンパク質が、配列番号7のアミノ酸配列を含むBTNL3タンパク質による固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖の阻害を拮抗することができる、方法。
(項目69)
患者に抗原に対するワクチンを接種するための方法であって、前記患者に、前記抗原と、
(a)配列番号2のアミノ酸18~236および/または配列番号9のアミノ酸18~166からなるタンパク質に結合するアンタゴニスト抗体、または
(b)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含むバリアントBTNL3タンパク質と、を投与することを含み、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166との前記アミノ酸配列のアライメントウィンドウが、少なくとも80アミノ酸長であり、前記バリアントBTNL3タンパク質が、配列番号2のアミノ酸18~236も配列番号9のアミノ酸18~166のアミノ酸配列も含まず、前記バリアントBTNL3タンパク質が、配列番号7のアミノ酸配列を含むBTNL3タンパク質による固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖の阻害を拮抗することができる、方法。
(項目70)
前記抗原が癌抗原である、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記抗原が、病原体に対する免疫応答を誘発することができる、項目69に記載の方法。
(項目72)
前記抗原が、前記アンタゴニスト抗体の前に、それと同時に、またはその後に投与され得る、項目69~71のいずれか一項に記載の方法。
(項目73)
自己免疫状態または炎症性状態を有する患者を治療するための方法であって、
(a)前記患者からT細胞を取り出すステップと、
(b)抗CD3抗体を含むタンパク質とBTNL3タンパク質の組み合わせで前記T細胞を刺激するステップであって、前記BTNL3タンパク質が、
(i)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166のアミノ酸配列、
(ii)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%同一のアミノ酸配列であって、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166との前記アミノ酸配列のアライメントウィンドウが、少なくとも80アミノ酸長である、アミノ酸配列、または
(iii)配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166の配列と比較して、単一アミノ酸の20個を超えない挿入、欠失、または置換を有するアミノ酸配列を含む、刺激するステップと、
(c)前記刺激されたT細胞を収集するステップと、
(d)前記患者に前記収集されたT細胞を戻すステップと、を含み、
前記BTNL3タンパク質が、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる、方法。
(項目74)
前記BTNL3タンパク質が、前記(b)(iii)のBTNL3タンパク質であり、前記アミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166の配列と比較して、単一アミノ酸の10個を超えない挿入、欠失、または置換を有する、項目73に記載の方法。
(項目75)
前記アミノ酸配列が、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166の配列と比較して、単一アミノ酸の5個を超えない挿入、欠失、または置換を有する、項目74に記載の方法。
(項目76)
前記BTNL3タンパク質が、前記(b)(i)のBTNL3タンパク質である、項目73に記載の方法。
(項目77)
前記自己免疫状態または炎症性状態が、全身性エリテマトーデス、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬、サルコイドーシス、喘息、移植関連状態、1型もしくは2型糖尿病、または線維症からなる群から選択される、項目73~76のいずれか一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】ブチロフィリン様(BTNL)タンパク質ファミリー(BTNL2、BTNL3、BTNL8、BTNL9、ERMAP、およびMOG)の一部であるヒトタンパク質のドメイン構造、ならびに関連ブチロフィリンおよびB7ファミリーの一般構造が図示される。各楕円または円は、タンパク質ドメインを表す。これらのドメインは、以下のように示される:
【化1】

特定のドメイン構造で識別されていない領域は、水平線で示される。
図2】健常なドナーの血液由来の様々な一次ヒト免疫細胞中に存在するBTNL3 mRNAの相対量を示す。縦軸は、ROSETTA RESOLVER(登録商標)を用いて生成されたBTNL3 mRNAの発現の強度値を示す。試験したこれらの様々な細胞型は、x軸に沿って、1:末梢血単核球、2:T細胞、3:CD4T細胞、4:CD8T細胞、5:B細胞、6:単球、7:マクロファージ、8:好中球、9:好酸球、10:ナチュラルキラー(NK)細胞で示される。レーン8の水平線とエラーバーは、好中球におけるBTNL3の発現のために得られた平均強度値と標準偏差を示す。方法は、実施例1で詳細に説明される。
図3】以下のx軸で識別される正常なヒト組織から抽出されたRNAの次世代RNAシーケンシングによって測定されたBTNL3の発現量を示す:1:副腎(別途特定されず)、2:動脈(大動脈)、3:血液、4:骨髄(別途特定されず)、5:脳(前帯状)、6:脳(小脳)、7:脳(前頭葉)、8:脳(別途特定されず)、9:乳房、10:気管支、11:上行結腸、12:結腸(別途特定されず)、13:S状結腸、14:十二指腸、15:食道、16:腹部脂肪、17:心臓(別途特定されず)、18:心臓(心室)、19:心臓(左室)、20:島細胞、21:腎臓(皮質)、22:腎臓(髄質)、23:腎臓(別途特定されず)、24:肝臓、25:肺、26:腸間膜リンパ節、27:リンパ節(別途特定されず)、28:骨格筋(別途特定されず)、29:視神経、30:卵巣、31:膵臓頭部、32:膵臓(別途特定されず)、33:末梢血単核球、34:前立腺、35:直腸、36:網膜、37:皮膚(別途特定されず)、38:小腸(十二指腸)、39:小腸(回腸)、40:小腸(空腸)、41:脊髄(頸部)、42:脊髄(腰部)、43:脊髄(胸部)、44:脾臓、45:胃(腹部)、46:胃(別途特定されず)、47:胃(幽門)、48:睾丸、49:甲状腺、50:舌、および51:膀胱(排尿筋)。y軸は、発現量を示し、1細胞当たりのBTNL3転写物の数として示される。
図4】様々なヒト疾患組織の試料の次世代RNAシーケンシング分析によって測定されたBTNL3の発現量を示す。x軸は、以下の各試料の性質を示す:1:転移性腺癌、2:腺癌(転移性結腸癌)、3:腺癌(転移性胃癌)、4:腺癌(中程度分化型)、5:腺癌(別途特定されず)、6:腺癌(低分化)、7:小細胞癌腫(別途特定されず)、8:小細胞癌腫(燕麦細胞)、9:癌腫(分化されていない)、10:II型糖尿病試料、11:急性骨髄性白血病、12:急性骨髄白血病、13:悪性黒色腫、および14:悪性転移性黒色腫。y軸は、発現量を示し、1細胞当たりのBTNL3転写物の数として示される。
図5】y軸は、ある場合には、マイクロタイター皿上で固定化されたタンパク質で、場合によっては溶液中の様々な他のタンパク質の存在下で活性化されたマウスCD4T細胞の増殖レベルを示す。x軸に沿って印をつけたレーンは、以下のように処理した試料を表す:レーン1:固定化活性化タンパク質または他のタンパク質の使用なし、レーン2:細胞を活性化するために固定化抗CD3抗体を使用(反応にヒトIgGを含めた)、レーン3:細胞を活性化するために固定化抗CD3抗体を使用(反応に組換えB7-2.Fcを含めた)、レーン4:細胞を活性化するために固定化抗CD3抗体を使用(反応に組換えBTNL2.Fcを含めた)、レーン5:細胞を活性化するために固定化抗CD3抗体を使用(反応に組換えBTNL3.Fcを含めた)、レーン6:細胞を活性化するために固定化ヒトIgGを使用(反応に組換えBTNL2.Fcを含めた)、およびレーン7:細胞を活性化するために固定化ヒトIgGを使用(反応に組換えBTNL3.Fcを含めた)。
図6】この図において、各黒色の点は、マウスCD4T細胞における特定の配列のRNA発現のデータを反映し、そこでの配列の発現は、細胞が供される刺激物によって有意に上方または下方制御される。刺激物の影響を受けなかった発現の配列は、この図には示されない。x軸は、アレイ分析で検出された各特定の配列の刺激していない細胞と刺激した細胞の両方のシグナル強度平均のlog10を示す。y軸は、24時間培養した刺激していない細胞における同一の配列の発現と比較した、24時間刺激した後の発現の比率のlog10を示す。用いた刺激は、以下の通りである:左:抗CD3抗体のみで刺激、中央:抗CD3抗体とマウスBTNL2.Fc融合タンパク質で刺激、および右:抗CD3抗体とヒトBTNL3.Fc融合タンパク質で刺激。
【発明を実施するための形態】
【0027】
配列表の簡単な説明
配列番号1:ヒトBTNL3コーディング領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号2:ヒトBTNL3のアミノ酸配列
配列番号3:IgKシグナル配列のアミノ酸配列
配列番号4:ヒト成長ホルモンのシグナル配列のアミノ酸配列
配列番号5:ヒトBTNL3.Fc融合タンパク質をコードする全長ヌクレオチド配列
配列番号6:ヒトBTNL3融合タンパク質の全長アミノ酸配列
配列番号7:成熟BTNL3.Fcのアミノ酸配列(シグナル配列なし)
配列番号8:BTNL3のスプライスバリアントをコードするヌクレオチド配列
配列番号9:配列番号8によってコードされるアミノ酸配列
配列番号10:ペプチドリンカー
配列番号11:ペプチドリンカー
配列番号12:ペプチドリンカー
配列番号13:ペプチドリンカー
配列番号14:ペプチドリンカー
配列番号15:ペプチドリンカー
配列番号16:ペプチドリンカー
配列番号17:ペプチドリンカー
配列番号18:ペプチドリンカー
【0028】
(詳細な説明)
本発明は、BTNL3タンパク質、またはBTNL3タンパク質のアンタゴニストもしくはアゴニスト、例えば、抗BTNL3抗体、および/またはBTNL3タンパク質のバリアント形態の使用を提供する。本発明は、多量体、融合タンパク質、およびそのバリアントを含むBTNL3タンパク質、そのようなタンパク質の使用、ならびに上述のすべてをコードする核酸を提供する。BTNL3タンパク質は、T細胞活性化、増殖、およびサイトカイン産生を低減させることによってT細胞の機能を変化させることができる。そのような効果は、数ある中でもとりわけ、炎症性腸疾患および線維障害等のT細胞媒介性自己免疫疾患または炎症性疾患の効果的な治療につながり得る。BTNL3のアンタゴニストは、BTNL3がT細胞活性化、増殖、およびサイトカイン分泌を阻害しないように阻止または拮抗するように機能することができ、したがって、T細胞活性化の全体的な増加につながり得る。そのような効果は、癌等の疾患の治療またはワクチンの有効性向上に有用であり得る。さらに、BTNL3のアゴニストは、例えば、BTNL3タンパク質をクラスター化することによって、免疫細胞機能を、その機能を遮断することなく変化させることができ得る。そのようなアゴニストは、例えば、増殖および/またはサイトカイン分泌を増加または減少させることによって、そのような細胞の活性を調節し得るB30.2ドメインを介したBTNL3を発現する細胞への細胞内シグナル伝達を媒介し得る。BTNL3が好中球およびいくつかの種類の癌細胞上で発現するため、そのような細胞内シグナル伝達は、そのような細胞によって媒介される疾患の経過を調節し得る。
【0029】
定義
「配列番号7のアミノ酸配列を含むBTNL3タンパク質による固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖の阻害を拮抗する」ことができるBTNL3アンタゴニストの生物学的活性は、実施例4に記載のT細胞増殖アッセイを行い、かつ配列番号7のアミノ酸配列を含むBTNL3タンパク質の活性に影響を及ぼすかを決定するように制御された様式で試料のうちのいくつかにアンタゴニストを添加することによって決定され得る。同様の試験によって、T細胞によるT細胞増殖の阻害を増加させるアゴニスト抗体の活性がアッセイされ得る。
【0030】
「抗体」は、本明細書で意図される場合、免疫グロブリンの重鎖可変領域および/または免疫グロブリンの軽鎖可変領域を含む。抗体は、軽鎖可変領域(V)、軽鎖定常領域(C)、重鎖可変領域(V)、第1の重鎖定常領域(C1)、ヒンジ領域、第2の重鎖定常領域(C2)、および第3の重鎖定常領域(C3)を含む全長の四量体抗体、例えば、IgG、IgA、IgD、IgM、またはIgE抗体であり得る。あるいは、抗体は、Fab断片等の断片、または任意に、scFv断片等の組換え断片であり得る。VまたはV領域のいずれかの単一可変領域を含む単一ドメイン抗体も、本明細書で意図される抗体である。単一ドメイン抗体は、米国特許出願公開第US2006/0062784号に記載されており、単一ドメイン抗体を記載する部分は、参照により本明細書に組み込まれる。さらに、一価の様々な形態(一本鎖抗体、例えば、scFv、Fab、scFv-Fc、ドメイン抗体、および例えば、記述部分が参照により本明細書に組み込まれる、国際出願第WO2009/089004号および米国特許第5,837,821号に記載の様々な形式を含む)、ならびに多価分子(F(ab)、ならびに例えば、記述部分が参照により本明細書に組み込まれる、国際出願第WO2009/089004号および米国特許第5,837821号に記載のもの等)が、「抗体」の意味に包含される。
【0031】
本明細書の複数の箇所において、タンパク質の多量体種が、タンパク質の単量体種の分子量の「少なくとも約」2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16倍の分子量を有すると述べられている。この意味は明白であるが、この表現は、単量体の約4、5、6倍等の種を含み、そのような種とより大きい種との組み合わせ、またはより大きい種のみだけではない。同様に、複数の箇所において、多量体が、「少なくとも」二量体、三量体、四量体等であることが述べられている。この表現は、二量体、三量体、四量体等の種を含み、述べられた種とより大きい種との組み合わせ、またはより大きい種のみではないことが明確に意図されている。さらに、本明細書の複数の箇所において、多量体種は、タンパク質の単量体種の分子量の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16倍「を超えない」分子量を有することが述べられている。この意味は明白であるが、この表現は、単量体の約4、5、6倍等の種を含み、そのような種とより小さい種との組み合わせ、またはより小さい種のみではないことが明確に意図されている。同様に、複数の箇所において、多量体が、二量体、三量体、四量体等「超えない」ことが述べられている。この語句は、二量体、三量体、四量体等の種を含み、述べられた種とより小さい種との組み合わせ、またはより小さい種のみだけではないことが明確に意図されている。
【0032】
「BTNL3タンパク質」には、本明細書で意図される場合、BTNL3遺伝子の天然に存在する対立遺伝子バリアントによってコードされるタンパク質を含む、全長ヒトBTNL3タンパク質ならびにその断片および/またはバリアント、ならびに天然に存在するBTNL3タンパク質と比較していくつかの配列変化を含み得る組換え的に産生されたBTNL3タンパク質、すなわち、非ヒトまたは哺乳類宿主細胞等の宿主細胞で産生されたタンパク質が含まれる。細胞外領域のほとんどまたはすべてを含む全長ヒトBTNL3タンパク質の可溶性断片を含み、かつ膜貫通領域を含まないタンパク質が具体的に企図される。そのようなタンパク質は、ビーズまたはマイクロタイタープレート等の表面に結合する。
【0033】
患者は、患者が同一の一般時間枠中に、任意に全く同時に、2つ以上の分子を受ける場合、例えば治療薬またはワクチン成分であり得る2つ以上の分子で「同時」治療を受ける。例えば、患者に1日1回1つの分子が継続的に投与され、かつ月に1回別の分子も継続的に投与される場合、患者は、これらの2つの分子を同時に受けていることになる。同様に、それぞれ2週間毎に投与されるが、同日には投与されない2つの異なる分子が投与される患者は、これら2つの分子での同時治療を受けていることになる。さらに、1つの分子を継続的に1週間に1回受け、かつ別の分子を3日間のみ1日1回受ける患者は、これら2つの分子で短期間同時治療を受けていることになる。
【0034】
「scFv」は、抗体の重鎖可変領域(V)および軽鎖可変領域(V)を含み、定常領域を含まない一本鎖抗体である。いくつかの実施形態において、scFvは、重鎖可変領域と軽鎖可変領域との間の可変長のリンカーも含み得る。scFvは他のアミノ酸配列に融合することができるが、scFvと称されるタンパク質の一部は、好ましくは、V領域、V領域、および任意に、これらの配列を連結するリンカー以外のいかなる相当量のアミノ酸配列も含まない。
【0035】
「Fcポリペプチド」は、本明細書で意図される場合、C2およびC3ドメインならびにヒンジ領域のすべてもしくは一部を含む抗体重鎖の断片、またはそのような断片のバリアントである。Fcポリペプチドは、C1ドメインもVドメインも含まない。例えば、Kuby,Immunology,Second Edition,p.110-11,W.H.Freeman and Co.,New York(1994)を参照されたい。Fcポリペプチドは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4または他のサブタイプを含む、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgAアイソタイプのものであり得る。Fcポリペプチドは、多量体、ある場合には二量体であり得る。そのような多量体Fcポリペプチドは、本明細書において「Fc領域」と称される。いくつかのFcポリペプチド、例えば、IgMまたはIgA Fcポリペプチドは、より高次の多量体を形成し得る。多量体Fc領域内の単一ポリペプチド鎖は、「Fcポリペプチド」と称される。Fcポリペプチドのバリアントは、本明細書で意図される場合、天然に存在するFcポリペプチドと比較して、単一アミノ酸の1~30個(具体的には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以下等を含む)の挿入、欠失、または置換を含み得る。天然に存在するFcポリペプチドまたは「天然」Fcポリペプチドは、生存生物、例えば、ヒトまたはマウスFcポリペプチドに自然に出現する配列を有する。したがって、「天然ヒト」Fcポリペプチドは、天然に存在するヒトFcポリペプチドに見られるアミノ酸配列を有する。機能に影響を及ぼすことなく変形が許容され得る場所に関する指針は、当技術分野において見出され得る。例えば、関連部分が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,807,706号および国際出願第WO2009/089004号で特定されるアミノ酸残基の変化は、ホモ二量体形成と比較して、ヘテロ二量体形成を促進するために用いられ得る。同様に、新生児Fc受容体FcRnの結合を阻止しないFcポリペプチドは、本明細書で意図されるFcバリアントに生じ得る変化に包含される。FcポリペプチドのFcRnへの結合は、約pH6でBiacore 3000等のBiacore計器を用いて確認され得る。ヒトFcRnは、標準の化学反応を用いてCM5チップにカップリングされ得る。Fc含有タンパク質は、移動相の一部であり得、応答は、共鳴装置で測定され得る。Fcポリペプチドの変化は、例えば、関連部分が参照により本明細書に組み込まれる、国際特許出願公開第WO97/34631号に記載されている。あるいは、例えば、種内および種間のIgG配列の比較は、高度に保存されたアミノ酸を配置することができ、それらのアミノ酸の変化が構造および/または機能に影響を及ぼし得ることを当業者に示唆する。ヒンジ配列の多数のアライメント、C2およびC3領域(これらは一緒になってFc領域を形成する)は、例えば、関連部分が参照により本明細書に組み込まれる、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,National Institutes of Health,Publication No.91-3242,1991で入手可能である。その一方で、様々なIgGによって異なるアミノ酸は、機能に影響を及ぼすことなく変形が許容される可能性のある部位である。同様に、補体固定につながる抗体依存性細胞傷害性および/またはC1q結合を含むエフェクター機能の増加または減少等の他の所望の特性を有するFcバリアントは、Fcバリアントが意味することに包含される。
【0036】
「全長抗体」という用語は、ほとんどの天然に存在する抗体、例えば、IgG抗体の構造に類似した分子、すなわち、2つの全重鎖および2つの全軽鎖を含む分子を指す。例えば、天然に存在する抗体の構造の考察については、Kabat et al.(上記参照)、またはKuby,Immunology,Second Edition,p.109-32,W.H. Freeman and Co.,New York(1994)を参照されたい。全長抗体の構造を記載する参考文献の部分は、参照により本明細書に組み込まれる。「全長抗体」には、完全な重鎖(多くの場合、異常に長いCDR3領域を有する)を2つのみ含み、軽鎖を含まない天然に存在するヒトコブラクダ抗体の構造に類似した抗体も含まれる。Muldermans et al.(2001),J.Biotechnol.74:277-302、Desmyter et al.(2001),J.Biol.Chem.276:26285-26290。これらのヒトコブラクダ抗体の構造を記載する参考文献の部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
多量体BTNL3タンパク質等の「多量体」タンパク質は、2つ以上のポリペプチド鎖を含むタンパク質である。「多量体」という用語は、多量体がいくつのポリペプチド鎖を含むかを明示する「二量体」、「三量体」、または「四量体」等の用語を包含する。「ホモ多量体」は、同一のポリペプチド鎖の2つ以上のコピーからなり、任意の異なるポリペプチド鎖を含まない。同様に、「ホモ二量体」は、同一のポリペプチド鎖の2つのコピーからなり、「ホモ三量体」は、同一のポリペプチド鎖の3つのコピーからなる。「ヘテロ多量体」は、少なくとも2つの異なるポリペプチド鎖を含む。ヘテロ多量体が3つ以上のポリペプチド鎖を有する場合、それらのうちのいくつかは、少なくとも1つがその他と異なる限り、互いに同一であり得る。タンパク質が「少なくとも三量体」であると言われる場合、それが三量体またはより高次の多量体であることを意味する。同様の意味が、「少なくとも四量体」、「少なくとも五量体」等に帰される。同様に、三量体「を超えない」の多量体タンパク質は、三量体または二量体である。
【0038】
「Fab断片」は、VおよびC領域を含む軽鎖、ならびにVおよびC1領域を含む重鎖の部分を含む抗体断片である。Fab断片は、C2もC3領域も含まない。Fab断片が何であるかの考察については、例えば、Kuby,Immunology,Second Edition,pp.110-11 W.H.Freeman and
Co.,New York(1994)を参照されたい。異なる種類のFab断片は、ヒンジ領域を含まないか、ヒンジ領域の一部を含むか、または全ヒンジ領域を含むかのいずれかであり得る。
【0039】
「scFv-Fc」は、本明細書で使用する場合、scFvとFcポリペプチドとの融合物である組換えタンパク質である。Li et al.(2000),Cancer Immunol.Immunother.49:243-252、Powers et al.(2001),J.Immunol.Methods 251:123-135、Gilliland et al.(1996),Tissue Antigens 47:1-20を参照されたい。scFv-Fcは、二量体であり得る。
【0040】
本明細書で意図される場合、「非還元条件」は、ジスルフィド架橋が破壊されるようにタンパク質内のジスルフィド架橋が還元されない条件である。
【0041】
「組換え」タンパク質または抗体は、遺伝子操作のプロセスに由来するものである。「遺伝子操作」という用語は、上昇したレベルもしくは低下したレベルで遺伝子を発現するか、または遺伝子の変異体形態を発現する細胞を作成するために用いられる組換えDNAもしくはRNA方法を指す。言い換えれば、細胞は、組換えポリヌクレオチド分子でトランスフェクト、形質転換、または形質導入され、それにより細胞に所望のポリペプチドの発現を変化させるように変化している。
【0042】
可溶性分泌タンパク質および細胞表面上で発現したタンパク質は、多くの場合、真核細胞の小胞体(ER)と結合した膜を通るタンパク質の挿入を媒介する疎水性配列であるN末端「シグナル配列」を含む。I型膜貫通タンパク質も、シグナル配列を含む。「シグナル配列」は、本明細書で意図される場合、ER膜を通してERの内腔にタンパク質の一部またはすべてを挿入した後に通常酵素的に除去されるアミノ末端疎水性配列である。したがって、シグナル配列は分泌または膜貫通タンパク質の前駆体形態の一部として存在し得るが、タンパク質の成熟形態では一般に不在であることが当技術分野で既知である。タンパク質がシグナル配列を含むと言われる場合、タンパク質の前駆体形態がシグナル配列を含むが、タンパク質の成熟形態がシグナル配列を含まない可能性が高いことを理解すべきである。シグナル配列は、切断部位に隣接し、かつすぐ上流に残基を含み(1位)、3位に別の残基を含み、これらは、この酵素的切断に重要である。一部がシグナル配列およびそれらの特定方法を記載する、Nielsen et al.(1997),Protein Eng.10(1):1-6、von Heijne(1983)、Eur.J.Biochem.133:17-21、von Heijne(1985),J.Mol.Biol.184:99-105は、参照により本明細書に組み込まれる。シグナル配列は、Nielsenら(上記参照)によって説明されるように特定され得る。哺乳類宿主細胞において機能的なシグナルペプチドまたは配列の例として、米国特許第4,965,195号に記載のインターロイキン-7(IL-7)のシグナル配列、Cosman et al.((1984),Nature 312:768)に記載のインターロイキン-2受容体のシグナル配列、欧州特許第0 367 566号に記載のインターロイキン-4受容体シグナルペプチド、米国特許第4,968,607号に記載のI型インターロイキン-1受容体シグナル配列、欧州特許第0 460 846号に記載のII型インターロイキン-1受容体シグナルペプチド、ヒトIgKのシグナル配列(METDTLLLWVLLLWVPGSTG;配列番号3)、およびヒト成長ホルモンのシグナル配列(MATGSRTSLLLAFGLLCLPWLQEGSA;配列番号4)が挙げられる。これらの参考文献の関連部分は、参照により本明細書に組み込まれる。多くの他のシグナル配列が当技術分野で既知である。
【0043】
「免疫グロブリン様」(Ig様)ドメインは、本明細書で意図される場合、主にその三次構造によって区別される。例えば、Bork et al.(1994),J.Mol.Biol.242:309-20、Hunkapiller and Hood(1989),Adv.Immunol.44:1-63、Williams and Barclay(1988),Ann.Rev.Immunol.6:381-405を参照されたい。しかしながら、可変および定常免疫グロブリン様ドメインは、それらの一次アミノ酸配列内の保存された位置に出現する、いくつかの高度に保存されたアミノ酸を実際含む。例えば、Kabat et al.(1991),Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Dept.of Health and Human Services,Public Health ServiceNational Institutes of HealthNIH Publication No.91-3242を参照されたい。可変領域ならびにC1およびC2定常領域のそのような保存されたアミノ酸は、例えば、Harpaz and Chothia(1994),J.Mol.Biol.238:528-39、およびWilliams and Barclay(1988),Ann.Rev.Immunol.6:381-405に詳細に説明されている。そのような保存された残基を論じるこれらの参考文献の部分は、参照により本明細書に組み込まれる。適切な間隔で出現するそのような高度に保存されたアミノ酸またはその保存的バリアントの存在は、IgC様またはIgV様ドメインの存在を示し得る。
【0044】
2つのアミノ酸または2つの核酸配列のパーセント同一性は、コンピュータプログラムGAP、すなわち、Genetics Computer Group(GCG;Madison,WI)Wisconsinパッケージバージョン10.0プログラムGAP(Devereux et al.(1984),Nucleic Acids Res.12:387-95)を用いて配列情報を比較することによって決定され得る。GAPプログラムの好ましいデフォルトパラメータには、以下のものが含まれる:(1)ヌクレオチドの単項比較マトリックス(同一性には値1、非同一性には値0を含む)のGCG実装、およびAtlas of Polypeptide Sequence and Structure,Schwartz and Dayhoff,eds.,National Biomedical Research Foundation,pp.353-358(1979)に記載のGribskov and Burgess((1986)Nucleic Acids Res.14:6745)の加重アミノ酸比較マトリックスまたは他の同等の比較マトリックス、(2)各ギャップにペナルティ8およびアミノ酸配列の各ギャップにおける各シンボルにさらなるペナルティ2、または各ギャップにペナルティ50およびヌクレオチド配列の各ギャップにおける各シンボルにさらなるペナルティ3、(3)エンドギャップにはペナルティなし、および(4)長いギャップには最大ペナルティなし。
【0045】
ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列同一性を決定するための比較に関連して、「アライメントウィンドウ」とは、本明細書に記載のパラメータを用いたコンピュータプログラムGAP(Devereux et al.(1984),Nucleic Acids Res.12:387-95)によって別のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと部分的または全体的に一致したポリヌクレオチドまたはポリペプチドの一部を意味する。例えば、20個のアミノ酸のポリペプチドが著しくより長いタンパク質とアライメントされ、第1の10個のアミノ酸がこの長いタンパク質と正確に一致する一方で、最後の10個のアミノ酸がこの長いタンパク質と全く一致しない場合、アライメントウィンドウは、10個のアミノ酸である。その一方で、20個のアミノ酸のポリペプチドの最初および最後のアミノ酸がこの長いタンパク質と一致し、8個の他の一致がそれらの間に散乱する場合、アライメントウィンドウは、20アミノ酸長である。しかしながら、本明細書で意図される場合、例えば少なくとも25個のアミノ酸または75個のヌクレオチドの同一のアミノ酸もしくは保存的に置換されたアミノ酸または同一のヌクレオチドを有しないいずれかのアライメントされた鎖における長いストレッチは、アライメントウィンドウのエンドポイントを構成する。配列比較のためのアライメントウィンドウは、少なくとも約25、50、60、75、80、90、100、150、200、225、300、400、450、500、もしくは600アミノ酸長またはヌクレオチド長であり得る。
【0046】
2つのポリペプチドまたはヌクレオチド配列は、それらが上述のGAPプログラムを用いて決定されるときに少なくとも90%同一である場合、「実質的に類似している」と見なされ、類似の生物学的活性を有する。本明細書に記載のBTNL3タンパク質またはそのバリアントの場合、2つの配列が実質的に類似しているかを決定するときに試験される生物学的活性は、固定化抗CD3抗体によって活性化されたT細胞の増殖を阻害するか、またはある特定のアンタゴニストBTNL3バリアントタンパク質のそのような阻害を拮抗する能力であり得る。
【0047】
BTNLファミリー
BTNL3は、そのドメイン構造に基づいてタンパク質のブチロフィリン様(BTNL)ファミリーに属している。例えば、Arnett et al.(2008),Current Immunology Reviews 4:43-52およびArnett et al.(2009),Cytokine 46:370-75を参照されたい。BTNLファミリーにおけるヒトタンパク質には、BTNL2、BTNL3、BTNL8、BTNL9、ERMAP、およびMOGが含まれ、これらのタンパク質のドメイン構造が、図1で図式的に示される。図1から明らかであるように、BTNL2は、その細胞外領域に4つの免疫グロブリン様(Ig様)ドメイン(2つのIgV様および2つのIgC様ドメイン)を有する唯一のファミリーメンバーである。MOGおよびERMAPはそれぞれ、Ig様ドメインを1つのみ有する。BTNL3、BTNL8、およびBTNL9は、明らかにIgV様またはIg様ドメインおよびIg様ドメインに類似した多くの特性を有する別のドメインである細胞外ドメインも1つ有するが、これらのドメインは、実際には、Ig様に分類されない。すべてのBTNLファミリーメンバーは、膜貫通ドメインを有する。BTNL2およびMOGが短い細胞内領域を有する一方で、BTNL3、BTNL8、BTNL9、およびERMAPは、B30.2ドメインを含むより長い細胞内領域を有する。細胞内B30.2の機能は知られていないが、いくつかのタンパク質のB30.2ドメインにおける変異は、ある特定の疾患と関連づけられている。Henry et al.(1998),Mol.Biol.Evol.15:1696-1705を参照されたく、この関連開示は、参照により本明細書に組み込まれる。加えて、いくつかのB30.2ドメインの結合パートナー、具体的には、BTN1A1 B30.2ドメインに結合するキサンチンオキシドレダクターゼ(XOR)が特定されている。例えば、Jeong et al.(2009),J.Biol.Chem.284:22444-22456を参照されたい。Jeongらが仮説するように、XORとBTN1A1との相互作用は、BTN1A1の受容体または細菌表面との会合後に抗菌特性を有する反応性酸素および窒素種を生成することによって先天性免疫系において役割を果たし得る(同文献の11ページ)。反応性酸素および窒素種は、下流標的にも作用して遺伝子発現を制御し得る(同文献)。加えて、BTN3A1のB30.2ドメインは、BTN3A1の細胞外ドメインの三次構造へのその影響によってγδT細胞活性化において役割を果たすと仮説されている。Palakodeti et al.(2012),J.Biol.Chem.287:32780-32790。加えて、アゴニスト抗BTN3抗体は、BTN3Aのリン酸化と相関した作用であるBNT3を発現するリンパ球による増殖およびサイトカイン産生を減少させた。これらの結果は、観察されたリンパ球への作用が細胞内シグナル伝達に起因しており、これにはB30.2ドメインが関与し得ることを示唆した。Yamashiro et al.(2010),J.Leuk.Biol.88:757-767。
【0048】
ヒトBTNL3によってBTNLファミリーの他のヒトメンバーと共有される配列同一性の程度が以下に示される。
【表1】

図1に示されるように、BTNL3、BTNL8、およびBTNL9は、類似したドメイン構造を有する。BTNL3のアミノ酸配列は、他のBTNLタンパク質のアミノ酸配列よりもBTNL8のアミノ酸配列にはるかに類似している。
【0049】
配列同一性のレベルを超えて、BTNLタンパク質ファミリー内のある特定の部位は、以下の表2に示されるように高度に保存され、これは、6個すべてのヒトBTNL様タンパク質のアライメントである。アライメントの真下に、コンセンサス配列(「ALL」とラベル付けされたもの)がある。コンセンサスアミノ酸(複数可)が、アミノ酸が出現するアライメントの一部にアミノ酸配列が及ぶすべてのタンパク質に出現する場合、太字で示される。コンセンサスアミノ酸(複数可)が、配列がアライメントのその一部に及ぶタンパク質のうちの1つを除くすべてに出現する場合、通常のフォントで現れる。ある部位があらゆる場合において2つ以上のアミノ酸(それぞれ、他方の保存的変異である)のうちの1つを有する場合、これらのアミノ酸は、太字フォントでその位置の下に列記される。ある部位がアライメントのその一部に及ぶ配列のうちの1つを除くすべてに2つ以上のアミノ酸(それぞれ、他方の保存的変異である)のうちの1つを有する場合、これらのアミノ酸は、通常のフォントでその位置の下に列記される。表2のアライメント上の番号付けは、配列番号2の番号付けであり、これは、配列番号2の17位で終わるシグナル配列を含むヒトBTNL3の全長アミノ酸配列である。
【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】

当業者であれば、これらのタンパク質間のコンセンサス配列が、これらのタンパク質の構造または機能に重要であり得る特徴を反映することを理解する。それらの様々な発現パターンを考慮すると、これらのタンパク質が同一の機能を有しない可能性が高く、したがって、各タンパク質の機能に重要なすべてのアミノ酸がこのファミリー内に保存される可能性は低い。しかしながら、これらの保存アミノ酸の多くは、言うまでもなく機能に必要な適切な構造の維持に重要である。多くの部位で、互いに保存的変異である2つ以上のアミノ酸のうちの1つは、BTNLファミリーのすべてまたはほとんどのメンバーに出現する。当業者であれば、BTNL3におけるそのような保存的変異が機能に悪影響を及す可能性が低いことを理解する。例えば、配列番号2の36位(上の表2のアライメントと同一の番号付けを有する)で、BTNLファミリーの様々なメンバーは、3つの異なる疎水性アミノ酸、アラニン(BTNL3、BTNL8、およびERMAP)、イソロイシン(BTNL2)、またはバリン(BTNL3およびMOG)のうちの1つを有する。当業者であれば、BTNL3アミノ酸配列のこの位置でのバリンからアラニンまたはイソロイシンへの変化が機能に影響を及ぼす可能性が低いことを理解する。保存的変異がこのファミリー内に出現する部位のすべてに同様の考察が適用される。したがって、BTNL3タンパク質は、本明細書で意図される場合、配列番号2を含むタンパク質またはその断片を含み、この配列は、保存的変異がBTNLファミリーのメンバー間に出現する部位で保存的変異によって変化し得、このタンパク質は、以下の実施例に記載の方法によって測定されるときにT細胞の増殖を阻害することができる。そのような部位には、例えば、配列番号2の3、16、20、28、30、32、34、35、36、38、42、48、53、55、63、64、66、67、68、69、72、79、81、82、87、88、89、91、97、98、100、101、104、112、116、128、165、189、191、195、197、201、204、223、255、258、272、276、277、283、284、287、290、291、303、308、311、316、318、323、326、328、329、331、332、340、349、350、352、355、357、360、369、371、375、386、391、394、398、401、406、407、409、418、421、426、430、436、および444位が含まれる。さらに、機能に影響を及ぼすことなくBTNL3内の他の部位での変異も許容され得る。例えば、保存されていない位置での保存的置換は、機能に影響を及ぼす可能性が低い。
【0050】
したがって、BTNL3タンパク質には、本明細書で意図される場合、(1)天然に存在する多型または組換え的に導入されたアミノ酸変化を有し、(2)配列番号2および/または配列番号2のアミノ酸18~236および/または配列番号9のアミノ酸18~166と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であり、かつ(3)本明細書に記載の方法によって測定されるときにT細胞増殖を低減させるか、または天然BTNL3の阻害剤として作用する能力を保持するタンパク質が含まれる。いくつかのそのような多型は、T細胞増殖を阻害するBTNL3タンパク質の能力を強化し得、かつ/または商業生産プロセスにおけるBTNL3タンパク質の産生をより容易にし得る。他のそのような多型は、天然BTNL3の阻害剤を産生し得る。これらの多型は、例えば、22、25、26、27、29、37、39、41、43、45、46、47位、および表2で保存されていないと示される任意の他の部位等の保存されていないBTNL3内の部位に出現し得る。
【0051】
BTNLタンパク質の発現パターンおよび生物学的機能は、一部の事例である程度調査されているが、別の事例では調査されていない。ERMAPは、赤血球の表面上で発現し、特定の生物学的機能を割り当てられていない。MOGは、髄鞘の成分である。ERMAPとMOGは、いずれも免疫系において役割を果たすと考えられていないが、MOGに対する抗体が、多くの場合、多発性硬化症を有する患者から検出される。BTN1は、MOGと相同であり、BTN1は、牛乳に含まれている。ヒトによる牛乳の消費がヒトMOGと交差反応するBTN1に対する抗体の発生につながり、それ故に多発性硬化症等の自己免疫疾患につながり得るという仮説が立てられている。Guggenmos et al.(2004),J.Immunol.172:61-68を参照されたい。BTNL2は、T細胞増殖およびサイトカイン分泌を阻害するが、B細胞増殖を阻害しないことが示されている。したがって、BTNL2は、T細胞媒介事象の負の共制御因子として作用すると考えられている。例えば、関連部分が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,244,822号を参照されたい。BTNL2の多型は、明らかにサルコイドーシスに関連づけられており、BTNL2がこの疾患の開始もしくは媒介またはこの疾患への寄与もしくは応答のいずれかにおいて役割を果たし得ることを示唆する。Valentonyte et al.(2005),Nature Genetics 37(4):357-64。様々なBTNL2多型と、潰瘍性大腸炎、リウマチ性関節炎、突発性封入体筋炎、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、類結核癩、および抗原特異的IgE応答性との間により仮説的な関連が導き出されている。Arnett et al.(2009),Cytokine 46:370-75。
【0052】
様々な細胞型および組織における様々なBTNLタンパク質をコードするRNAのレベルが報告されている。BTNL3は、回腸、小腸、結腸、肝臓、肺、骨髄、および脾臓で発現する。Arnett et al.(2009),Cytokine 46:370-375。BTNL3発現について試験された免疫機能に関連した様々な細胞型のうち、BTNL3 RNAは、主に好中球で発現する。Arnett et al.(2009),Cytokine 46:370-75。免疫機能に関与する細胞におけるBTNL3 RNAの発現は、BTNL3が、炎症応答の駆動または発赤後の応答の緩和のいずれかによって免疫機能において役割を果たし得ることを示唆する。
【0053】
BTNL3タンパク質
本発明は、ナノ粒子、ビーズ、またはマイクロタイタープレート等の表面への結合によって任意に固定化され得るBTNL3の可溶性分泌バージョン、ならびに細胞表面上で発現することができる膜貫通ドメインを含むバージョンを包含する。そのようなBTNL3タンパク質は、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる。いくつかのバリアントBTNL3タンパク質もこの活性を有するが、この阻害を拮抗するバリアントも企図される。そのようなタンパク質は、単離することができ、すなわち、BTNL3タンパク質が調製物に存在するタンパク質の少なくとも80%または少なくとも90%を構成する精製タンパク質調製物の一部となることができる。本発明は、以下に記載のBTNL3核酸によってコードされるBTNL3タンパク質をさらに含む。BTNL3タンパク質は、本明細書で意図される場合、上および下で論じられる融合タンパク質および多量体を含む、配列番号2、6、7、または9のアミノ酸配列、ならびにその断片、誘導体、およびバリアントを含むタンパク質を包含する。配列番号2、6、および9のアミノ酸配列は、1位で始まり、約15位~約20位、任意に、17位で終わるシグナル配列を含む。したがって、成熟BTNL3のアミノ酸配列は、配列番号2、6、または9の約16位~約21位で始まる。任意に、BTNL3の成熟アミノ酸配列は、配列番号2、6、または9の18位で始まる。
【0054】
BTNL3のシグナル配列の後に、配列番号2、6、または9の約25位から約131位まで伸びるIg様ドメインが続く。その後の領域である配列番号2または6の約132位~約236位は、BTNL2のIgC様ドメインとアライメントするが、一般にIgCl様ドメインに見られる特徴的な配列特性のうちのいくつかを欠く。例えば、Williams and Barclay(1988),Ann.Rev.Immunol.6:381-405、Peach et al.(1995),J.Biol.Chem.270(36):21181-21187を参照されたい。このドメインは、配列番号9のアミノ酸配列で実質的に短縮され、これは、BTNL3のスプライスバリアントによってコードされるアミノ酸配列である。BTNL3の膜貫通ドメインは、配列番号2の約237位または配列番号9の約167位で始まり、配列番号2の約259位または配列番号9の約189位で終わる。BTNL3の細胞内部分は、配列番号2の約260位で始まり、466位で終わるか、または配列番号9の約190位で始まり、432位で終わる。この細胞内領域は、配列番号2の約288位から約445位または配列番号9の約254位から411位まで伸びるB30.2ドメインを含む。B30.2ドメインは、約170個のアミノ酸の球状ドメインである。Henryら(上記参照)は、B30.2ドメインについてある程度詳細に論じており、いくつかのB30.2ドメインのアライメントおよびこのアライメントに由来するコンセンサス配列を提供している。B30.2ドメインが何であるかを(配列比較によって)示し、かつ説明する、Henry et al.(1998),Mol.Biol.Evol.15(12):1696-1705の一部は、参照により本明細書に組み込まれる。B30.2ドメインは、BTNL9、BTNL8、およびERMAPでも見られ、これらはすべて、本明細書に記載のタンパク質のブチロフィリン様ファミリーのメンバーである。上の表2の約288位~445位のBTNLタンパク質のアライメントは、高度の相同性を呈し、Henryら(上記参照)によってアライメントされたより異種の集団のB30.2ドメインを含むタンパク質間で観察される相同性よりも確実に高い。
【0055】
同様に、配列番号9のアミノ酸配列を有するタンパク質は、1位で始まり、約15位~約20位、任意に17位で終わるシグナル配列を含む。したがって、成熟タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号2の約16位~約21位で始まる。任意に、成熟アミノ酸配列は、配列番号9の18位で始まる。この後に、配列番号9の約25から131まで伸びるIgV様ドメインが続く。配列番号2に存在するその後のドメインの大半は、配列番号9で欠損している。膜貫通ドメインは、配列番号9の約167位で始まり、配列番号9の約189位まで伸びる。膜貫通ドメインを超えて約10個のアミノ酸で始まる配列番号9は、配列番号2には見られない一続きの36個のアミノ酸を含む。B30.2ドメインは、配列番号9の約254位で始まり、配列番号9の約411位で終わる。
【0056】
BTNL3タンパク質は、本明細書で意図される場合、少なくとも2つのBTNL3タンパク質を含むヘテロ多量体およびホモ多量体を含む。いくつかの実施形態において、生物学的に活性な多量体は、ホモ多量体であり得る。そのようなホモ多量体の大きさは、非還元条件下におけるポリアクリルアミドゲル電気泳動またはサイズ排除クロマトグラフィーによって決定され得る。そのような多量体に含まれる単量体BTNL3タンパク質の大きさは、還元条件下における多量体のポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定され得る。そのような条件は、ジスルフィド架橋を破壊し、かつ水素結合または電荷相互作用等の非共有結合相互作用を妨害すると予想される。したがって、ジスルフィド結合または非共有結合相互作用によって一緒に結合される多量体は、還元条件下で単量体まで低減すると予想される。いくつかの実施形態において、生物学的に活性なBTNL3ホモ多量体の大きさは、単量体BTNL3タンパク質の大きさの少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16倍であり得る。いくつかの実施形態において、そのようなホモ多量体の大きさは、単量体BTNL3タンパク質の大きさの約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16倍を超えないものであり得る。
【0057】
BTNL3タンパク質は、本明細書において意図される場合、全長BTNL3 mRNAのスプライスバリアントによってコードされるタンパク質も含む。BTNL3のcDNAコーディング配列は、配列番号1の1位から1401位まで伸び、最後の3つのヌクレオチドは、終止コドンである。このコーディング配列は、第1のエクソン内で始まる。最も一般的なスプライスバリアントは、8個のエクソン、すなわち配列番号2のアミノ酸1~16をコードするエクソン1、配列番号2のアミノ酸17~132をコードするエクソン2、配列番号2のアミノ酸133~224をコードするエクソン3、配列番号2のアミノ酸225~262をコードするエクソン4、配列番号2のアミノ酸263~269をコードするエクソン5、配列番号2のアミノ酸270~278をコードするエクソン6、配列番号2のアミノ酸279~287をコードするエクソン7、およびアミノ酸288~466をコードするエクソン8を含む。しかしながら、代替のスプライシングは、異なるエクソンを含む異なるメッセージを生成することができる。これらのうちの1つは、Shibuiおよび同僚によってクローニングされた。Shibui et al.(1999),J.Hum.Genet.44:249-252。Shibuiらが報告したクローンColF4100からのアミノ酸配列は、参照により本明細書に組み込まれる。GenBank受入番号AB020625のこのアミノ酸配列をコードするcDNA配列も参照により本明細書に組み込まれる。このスプライスバリアントによってコードされるタンパク質は、第3および第4のエクソンによってコードされる配列番号2の一部を欠く。したがって、コードされたタンパク質は、成熟BTNL3タンパク質の第2のIg様ドメインの大半を欠損している。配列番号2と配列番号9を比較されたい。さらに、配列番号9の細胞内領域は、配列番号2には見られない配列(配列番号9の残基200~235)を含む。このスプライスバリアントにおける余分なアミノ酸の挿入および欠失は両方ともに、非標準スプライス部位の使用の結果である。配列番号2と同様に、配列番号9は、配列番号9の残基16~21、任意に残基17で終わるシグナル配列を含む。
【0058】
他のスプライスバリアントが形成され得る。例えば、2つの細胞外ドメインのいずれかをコードするエクソンのうちの1つであるエクソン2またはエクソン3のいずれかを欠損するスプライスバリアントが企図される。同様に、エクソン5、6、7、または8のうちのいずれかを欠損するスプライスバリアントも企図される。BTNL3タンパク質は、本明細書で意図される場合、様々なエクソンを欠損しているスプライスバリアントによってコードされ得る。加えて、スプライスバリアントは、隠れたスプライス部位を用いる。
【0059】
いくつかの実施形態において、BTNL3タンパク質は、配列番号2もしくは配列番号9を含む全長膜貫通タンパク質の可溶性断片またはそのバリアントであり得る。いくつかの実施形態において、BTNL3タンパク質は、配列番号2または配列番号9の残基12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30から、配列番号2または配列番号9の残基120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、もしくは140まで伸びる免疫グロブリン様ドメインを含むBTNL3の断片を含む。そのような実施形態は、配列番号2の残基121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、または140から、配列番号2の残基230、231、232、233、234、235、236、237、または238まで伸びるその後のドメインをすべて含み得るか、または含み得ない。例えば、配列番号9は、配列番号2の158位~227位に存在するアミノ酸を欠く。このドメイン他の部分を欠くバリアントも企図される。さらなる実施形態において、BTNL3タンパク質は、配列番号2の残基121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、または140から、配列番号2の残基220、221、222、223、234、235、236、237、238、239、230、231、232、233、234、235、236、237、または238まで伸びる断片を含み得る。そのような実施形態は、配列番号2の残基12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30から伸びる残基から、配列番号2の残基120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、または140まで伸びるその前のドメインを含み得るか、または含み得ない。BTNL3タンパク質は、BTNL3の細胞外領域のほとんどまたはすべてを含む断片を含み得る。そのようなタンパク質は、配列番号2の残基12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30から、配列番号2の残基220、221、222、223、234、235、236、237、238、239、230、231、232、233、234、235、236、237、または238まで、任意に、配列番号2の約残基18から約残基236まで伸びるアミノ酸配列を含み得る。あるいは、可溶性BTNL3タンパク質は、配列番号9の残基12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30から、配列番号9の残基155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170まで伸びる細胞外領域のほとんどまたはすべてを含む断片を含み得る。これらの断片はすべて、以下で論じられるように、配列番号2または配列番号9と比較して、変異を含み得、配列番号2または配列番号9と比較して、単一アミノ酸の規定数の置換、挿入、または欠失を含み得る。これらの実施形態は、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができる。配列番号2のアミノ酸18~236も配列番号9のアミノ酸18~166のアミノ酸配列も含まないいくつかのBTNL3タンパク質バリアントは、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖の阻害を拮抗することができる。
【0060】
本発明は、本明細書において免疫原性断片と称される抗体の生成に有用なBTNL3タンパク質のエピトープを包含する。免疫原性断片は、好ましくは、少なくとも10アミノ酸長であり、配列番号2または配列番号9の連続アミノ酸を含み得る。そのようなエピトープは、特異的スプライスバリアントによってコードされるタンパク質への特異的結合の利点を有し得るスプライス接合によってコードされるBTNL3タンパク質の領域に及び得る。いくつかの実施形態において、エピトープは、BTNL3の細胞外領域内に位置し、これは、配列番号2の約アミノ酸18位から約236位まで、または配列番号9の約残基18から約残基166まで伸びる。エピトープは、第1の免疫グロブリン可変領域様ドメイン内に部分的にまたは完全に存在し得、これは、配列番号2または配列番号9の約アミノ酸25位から131位まで伸びる。あるいは、エピトープは、その後のドメイン内に部分的にまたは完全に存在し得、これは、配列番号2の約アミノ酸132位から236位まで伸びる。配列番号9において、実質的に短縮されるこのドメインは、配列番号9の約132位から166位まで伸びる。この短縮されたドメインは、抗体が結合するエピトープの一部またはすべても含み得る。
【0061】
BTNL3タンパク質は、本明細書で意図される場合、配列番号2もしくは配列番号9、または上述の配列番号2もしくは配列番号9の断片もしくは一部のうちの1つと比較して、単一アミノ酸の1個以上の挿入、欠失、または置換を含み得る。いくつかの実施形態において、BTNL3タンパク質は、配列番号2もしくは配列番号9と比較して、または上述の配列番号2もしくは配列番号9の断片のうちの1つと比較して、単一アミノ酸の20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1個を超えない置換、挿入、または欠失を含む。本発明の範囲内のそのようなBTNL3タンパク質バリアントは、T細胞増殖を低減させる能力を保持し得るか、または本明細書に記載の方法によってアッセイされるときに変化していないBTNL3タンパク質によるこのT細胞増殖の低減の阻害剤もしくはアンタゴニストとして作用し得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、置換は、保存的アミノ酸置換であり得る。生物学的活性に影響を及ぼす可能性の低い保存的アミノ酸置換の例として、アラニンのセリンへの置換、バリンのイソロイシンへの置換、アスパラギン酸塩のグルタミン酸塩への置換、トレオニンのセリンへの置換、アラニンのグリシンへの置換、アラニンのトレオニンへの置換、セリンのアスパラギンへの置換、アラニンのバリンへの置換、セリンのグリシンへの置換、チロシンのフェニルアラニンへの置換、アラニンのプロリンへの置換、リジンのアルギニンへの置換、アスパラギン酸塩のアスパラギンへの置換、ロイシンのイソロイシンへの置換、ロイシンのバリンへの置換、アラニンのグルタミン酸塩への置換、アスパラギン酸塩のグリシンへの置換、およびこれらの逆の変化が挙げられる。例えば、関連部分が参照により本明細書に組み込まれる、Neurath et al.,The Proteins,Academic Press,New York(1979)を参照されたい。さらに、ある群内の1つのアミノ酸の同一の群内の別のアミノ酸との交換は、保存的置換であり、これらの群は、(1)アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、ノルロイシン、およびフェニルアラニン、(2)ヒスチジン、アルギニン、リジン、グルタミン、およびアスパラギン、(3)アスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩、(4)セリン、トレオニン、アラニン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびシステイン、ならびに(5)グリシン、プロリン、およびアラニンである。上で論じられるように、BTNLファミリーメンバーがアライメントされる(表2)ときに保存的置換が存在する部位は、保存的置換が機能に影響を及ぼす可能性が特に低い部位である。同様に、高度に保存された残基、例えば、とりわけ、配列番号2の残基2、40、57、および65は、置換に対する耐性が低い可能性が高い。
【0063】
BTNL3タンパク質またはそのバリアントは、配列番号2または配列番号9と少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であり得、アライメントウィンドウは、少なくとも50、60、75、80、90、または100アミノ酸長であり、BTNL3タンパク質は、固定化抗CD3抗体で活性化されたT細胞の増殖を阻害することができる。上で論じられるように、他のヒトBTNLファミリーメンバーとの配列ミスマッチは、当業者にとって、機能に影響を及ぼすことなく配列番号2または配列番号9の配列のどこで修飾を行うことができるかの指針となり得る。いくつかの実施形態において、挿入、欠失、または置換は、ヒトBTNLファミリーメンバー間で保存されていない残基で、またはそれに隣接して出現し得る。表2を参照されたい。いくつかの実施形態において、これらの変化は、配列番号2の保存されていない残基:22、25~27、29、37、39、41、43、45~47、49、50、56、58~62、71、73~76、80、86、93、94、96、102、103、105~107、109、111、113、115、117~123、126、127、130、132~137、139~158、160~162、164、166~187、190、192~194、196、198~200、202~203、205~217、219~222、および/または224~236のうちの1つ以上の残基で(欠失または置換の場合)、またはその残基に隣接して(挿入の場合)出現する。配列番号9における類似の部位(そのような類似の部位が存在する場合)での変化も企図される。あるいは、BTNL3タンパク質は、配列番号2または配列番号9と比較して、1、2、3、4、5、6、8、10、15、20、25、または30個を超えないアミノ酸置換、欠失、または挿入を含み得る。上述のタンパク質は、本明細書で意図される場合、固定化抗CD3抗体によって活性化されたT細胞の増殖を阻害するか、または配列番号7のアミノ酸配列を含むBTNL3タンパク質によるそのような阻害を拮抗することができる限り、BTNL3タンパク質またはそのバリアントである。
【0064】
BTNL3タンパク質は、様々な程度にグリコシル化され得るか、またはグリコシル化され得ない。例として、BTNL3タンパク質は、配列番号2または配列番号9を含むタンパク質にすでに見られるものに加えて、1つ以上のNまたはO結合グリコシル化部位を含み得る。配列番号2は、103位および368位に2つの潜在的N結合グリコシル化部位を含む。配列番号9は、103位および334位に潜在的N結合グリコシル化部位を含む。配列番号2または9の103位の潜在的N結合グリコシル化部位は、BTNL3に最も密接に関連するBTNLタンパク質であるBTNL8にも存在する。したがって、このグリコシル化部位は、BTNL3の機能または構造において役割を果たしている可能性がある。当業者であれば、配列Asn Xxx Ser/Thr(式中、Xxxは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)の一部であるアスパラギン残基が、N-グリカンへの付加の部位としての機能を果たし得ることを認識する。加えて、O結合グリコシル化部位としての機能を果たし得る多くのセリンおよびトレオニン残基が存在する。グリコシル化は、インビボ半減期を増加させ得るか、または生物学的活性を変化させ得る。BTNL3タンパク質のバリアントは、結果として生じるタンパク質がT細胞の増殖を阻害することができる限り、配列番号2に存在するNおよび/またはO結合グリコシル化部位よりも1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個多くのNおよび/またはO結合グリコシル化部位を含むタンパク質も含む。BTNL3タンパク質のバリアントは、固定化抗CD3抗体で活性化されたT細胞の増殖を阻害するか、または変異していないバージョンのBTNL3タンパク質がそうする能力を阻害することができる限り、配列番号2に存在するNおよび/またはO結合グリコシル化部位よりも1、2、3、4、または5個少ないNおよび/またはO結合グリコシル化部位を有するタンパク質も含む。
【0065】
BTNL3タンパク質は、本明細書で意図される場合、(上述の)配列番号2または配列番号9のバリアントおよび/または断片であるアミノ酸配列を含み得る少なくとも1つのBTNL3ポリペプチド、ならびに少なくとも1つの他の部分を含む融合タンパク質であり得る。他方の部分は、BTNL3タンパク質以外のポリペプチドであり得る。他方の部分は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)部分、または細胞傷害性、細胞増殖抑制性、発光性、および/もしくは放射性部分等の非タンパク質部分であり得る。
【0066】
PEGの結合は、少なくともいくつかのタンパク質のインビボ半減期を増加させることが示されている。さらに、細胞傷害性、細胞増殖抑制性、発光性、および/もしくは放射性部分が、診断または治療目的で、例えば、抗体が結合し得る細胞を配置するか、その増殖を阻害するか、またはそれを死滅させるために抗体に融合させられている。同様に、そのような部分に融合するBTNL3タンパク質を用いて、BTNL3が結合し得る細胞、例えば、免疫応答に関与する細胞を見つけるか、その増殖を阻害するか、またはそれを死滅させることができる。そのような細胞傷害性、細胞増殖抑制性、発光性、および/もしくは放射性部分には、例えば、メイタンシン誘導体(DM1等)、エンテロトキシン(ブドウ球菌エンテロトキシン等)、ヨウ素同位体(ヨウ素125等)、テクネチウム同位体(Tc-99m等)、シアニン蛍光色素(Cy5.5.18等)、リボソーム不活性化タンパク質(ボウガニン、ゲロニン、またはサポリン-S6等)、およびカリケアマイシン、商標MYLOTARG(商標)(Wyeth-Ayerst)名で販売される製品の一部である細胞傷害性物質がある。
【0067】
BTNL3以外の様々なポリペプチドを、様々な目的で、例えば、タンパク質のインビボ半減期を増加させるため、タンパク質の特定、単離、および/または精製を促進するため、タンパク質の活性を増加させるため、かつタンパク質のオリゴマー化を助長するためにBTNL3ポリペプチドに融合させることができる。
【0068】
多くのポリペプチドは、それらが一部である組換え融合タンパク質の特定および/または精製を促進することができる。例として、ポリアルギニン、ポリヒスチジン、または固定化金属イオンに対して高い親和性を有する非隣接ヒスチジン残基の天然に存在する配列であるHAT(商標)(Clontech)が挙げられる。これらのポリペプチドを含むBTNL3タンパク質は、例えば、固定化ニッケルまたは固定化コバルトイオンを含むTALON(商標)樹脂(Clontech)を用いた親和性クロマトグラフィーによって精製され得る。例えば、Knol et al.(1996),J.Biol.Chem.27(26):15358-15366を参照されたい。ポリアルギニンを含むポリペプチドは、イオン交換クロマトグラフィーによる効果的な精製を可能にする。他の有用なポリペプチドは、例えば、米国特許第5,011,912号およびHopp et al.(1988),Bio/Technology 6:1204に記載の抗原性特定ペプチドを含む。そのようなペプチドの1つに、FLAG(登録商標)ペプチドがあり、高度に抗原性であり、かつ特異的モノクローナル抗体によって可逆的に結合されたエピトープを提供し、発現した組換え融合タンパク質の迅速なアッセイおよび容易な精製を可能にする。4E11と指定されるマウスハイブリドーマは、米国特許第5,011,912号に記載のある特定の二価金属カチオンの存在下でFLAG(登録商標)ペプチドに結合するモノクローナル抗体を産生する。4E11ハイブリドーマ細胞株は、受入番号HB9259でAmerican Type Culture Collectionに寄託されている。FLAG(登録商標)ペプチドに結合するモノクローナル抗体を親和性試薬として用いて、FLAG(登録商標)ペプチドを含むポリペプチド精製試薬を回収することができる。他の好適なタンパク質タグおよび親和性試薬は、1)固定化グルタチオンに対するグルタチオン-S-トランスフェラーゼ融合タンパク質の親和性を利用するGST-Bind(商標)系(Novagen)に記載のもの、2)モノクローナル抗体に対するT7遺伝子10タンパク質のアミノ末端11アミノ酸の親和性を利用するT7-TAG(登録商標)親和性精製キット(Novagen)に記載のもの、または3)タンパク質タグに対するストレプトアビジンの操作された形態の親和性を利用するSTREP-TAG(登録商標)システム(Novagen)に記載のものである。上述のタンパク質タグ、ならびに他のタンパク質タグのうちのいくつかは、Sassenfeld(1990),TIBTECH 8:88-93,Brewer et al.,in Purification and Analysis of Recombinant Proteins,pp.239-266,Seetharam and Sharma(eds.),Marcel Dekker,Inc.(1991)、およびBrewer and Sassenfeld,in Protein Purification Applications,pp.91-111,Harris and Angal(eds.),Press,Inc.,Oxford England(1990)に記載されている。タンパク質タグを記載するこれらの参考文献の部分は、参照により本明細書に組み込まれる。さらに、例えば、FLAGタグとポリヒスチジンタグの融合物等の上述のタグのうちの2つ以上の融合物は、本発明のBTNL3タンパク質に融合することができる。
【0069】
BTNL3以外のポリペプチドを含む組換え融合タンパク質は、例えば、二量体、三量体、もしくはより高次の多量体を形成する傾向、増加したインビボ半減期、および/または増加した生物学的活性等の他の種類の特有の利点を有し得る。「より高次の多量体」は、例えば「二量体」とともに用いられるとき、2つを超えるポリペプチド鎖を含む多量体を意味する。「三量体またはより高次の多量体」等の表現で用いられる場合、より高次の多量体は、3つを超えるポリペプチド鎖を含む。したがって、より高次の多量体は、比較される多量体よりも多くのポリペプチド鎖を有する多量体である。融合タンパク質を調製するための技法が知られており、例えば、国際出願第WO99/31241号およびCosman et al.((2001).Immunity 14:123-133)に記載されている。
【0070】
例として、抗体、任意にIgG抗体のFc領域を含むポリペプチド、または実質的に類似したタンパク質は、BTNL3ポリペプチドまたはその断片に融合することができる。抗体のFc領域は、ヒンジおよびC2、ならびに抗体からのC3ドメインまたはこれらと実質的に類似した免疫グロブリンドメインの大部分またはすべてを含むポリペプチドである。考察については、Hasemann and Capra,Immunoglobulins:Structure and Function,in William E.Paul,ed.,Fundamental Immunology,Second Edition,212-213(1989)を参照されたい。Fc断片は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc等のヒトIgG Fcであり得る。Fc断片は、天然ヒトまたは動物Fc断片であり得る。Fc領域の切断された形態、すなわち、二量体化を助長するヒンジ、C2、および/またはC3ドメインのある部分を欠損する形態も用いられ得る。抗体および他の免疫グロブリンアイソタイプの他の部分も用いられ得る。抗体のFc領域を含む組換え融合タンパク質は、二量体またはより高次の多量体を形成する可能性が高い。抗体由来タンパク質の様々な部分を含む融合タンパク質は、関連部分が参照により本明細書に組み込まれる、Ashkenazi et al.((1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:10535-39)、Byrn et al.((1990),Nature 344:677-70)、Hollenbaugh and Aruffo(Current Protocols in Immunology,Suppl.4,pp.10.19.1-10.19.11(1992))、Baum et al.((1994),EMBO J.13:3992-4001)、ならびに米国特許第5,457,035号および国際出願第WO93/10151号に記載されている。いくつかの実施形態において、変化したFc領域は、野生型Fc領域よりも低いFc受容体に対する親和性を有する利点を有し得る。これは、免疫エフェクター細胞によってそのような組換え融合タンパク質が結合する細胞の溶解を緩和させ得るため、利点であり得る。Fc領域に対するそのような変化は、関連部分が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,457,035号および国際特許出願第WO93/10151号に記載されている。以下の実施例2は、ヒトBTNL3の細胞外領域およびヒトIgG1抗体のFc領域を含む融合タンパク質の産生を説明する。
【0071】
あるいは、BTNL3融合タンパク質は、本明細書に記載のBTNL3ポリペプチドおよび融合タンパク質(例えば、血清アルブミンタンパク質、任意に、ヒトタンパク質、もしくはその断片、または血清アルブミンに結合するタンパク質、もしくはその断片等)の半減期を増加させる効果を有する非Fcポリペプチドのすべてまたは一部を含み得る。いくつかの実施形態において、このさらなるポリペプチドは、任意にヒトタンパク質であるフィブロネクチンタンパク質のすべてまたは一部であり得る。
【0072】
BTNL3タンパク質を含む組換え融合タンパク質は、ロイシンジッパーを含むポリペプチドを含み得る。既知のロイシンジッパー配列には、二量体化を助長する配列および三量体化を助長する配列がある。例えば、関連部分が参照により本明細書に組み込まれる、Landschulz et al.(1988),Science 240:1759-64を参照されたい。ロイシンジッパーは、多くの場合、他のアミノ酸が散在した4個または5個のロイシン残基を有する反復的な7アミノ酸繰り返しを含む。ロイシンジッパーの使用および調製は、当技術分野で周知である。BTNL3融合タンパク質は、1つ以上のペプチドリンカーを含み得る。概して、ペプチドリンカーは、複数のポリペプチドと結合して多量体を形成し、かつタンパク質の結合部分の所望の機能に必要とされる可撓性または剛性を提供する機能を果たす一続きのアミノ酸である。典型的には、ペプチドリンカーは、約1~30アミノ酸長である。ペプチドリンカーの例として、--Gly-Gly--、GGGGS(配列番号10)、(GGGGS)n(配列番号NO:11)、GKSSGSGSESKS(配列番号NO:12)、GSTSGSGKSSEGKG(配列番号NO:13)、GSTSGSGKSSEGSGSTKG(配列番号NO:14)、GSTSGSGKSSEGKG(配列番号NO:15)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号16)、EGKSSGSGSESKEF(配列番号17)、およびGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号18)が挙げられるが、これらに限定されない。結合部分は、例えば、Huston,J.S.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-83(1988)、Whitlow,M.,et al,Protein Engineering 6:989-95(1993)、Newton,D.L.,et al.,Biochemistry 35:545-53(1996)、ならびに米国特許第4,751,180号および同第4,935,233号に記載されている。これらの参考文献の関連部分、すなわち、リンカーを説明する部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
あるいは、配列番号7のアミノ酸配列を含むBTNL3タンパク質による固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖の阻害を拮抗することができるBTNL3バリアントタンパク質が本明細書に記載される。そのようなBTNL3バリアントは、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9の18~166と少なくとも約90%、95%、または98%同一のアミノ酸配列を含み得、かつ/あるいは配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と比較して、単一アミノ酸の20、15、10、8または5個を超えない挿入、欠失、または置換を含むアミノ酸配列を含み得る。そのようなバリアントは、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166と同一のアミノ酸配列を含まない。
【0074】
組換えBTNL3融合タンパク質は、その通常のシグナル配列を欠くが、代わりにそれを置換する異なるシグナル配列を有するBTNL3タンパク質を含み得る。シグナル配列の選択は、組換えタンパク質が産生される宿主細胞の種類に依存し、異なるシグナル配列が、天然シグナル配列を置換することができる。哺乳類宿主細胞において機能的なシグナル配列の例として、米国特許第4,965,195号に記載のインターロイキン-7(IL-7)のシグナル配列、ヒトIgKのシグナル配列(METDTLLLWVLLLWVPGSTG;配列番号3)、ヒト成長ホルモンのシグナル配列(MATGSRTSLLLAFGLLCLPWLQEGSA;配列番号4)、Cosman et al.((1984),Nature 312:768)に記載のインターロイキン-2受容体のシグナル配列、欧州特許第0 367 566号に記載のインターロイキン-4受容体シグナルペプチド、米国特許第4,968,607号に記載のI型インターロイキン-1受容体シグナルペプチド、および欧州特許第0 460 846号に記載のII型インターロイキン-1受容体シグナルペプチドが挙げられる。これらのシグナル配列を記載するこれらの参考文献の部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
BTNL3核酸
本発明は、例えば、配列番号2または配列番号9のアミノ酸配列を含むタンパク質ならびにその断片および/またはバリアントを含む本明細書に記載のBTNL3タンパク質をコードするDNAおよびRNAを含む単離された核酸を包含する。そのような核酸は、エクソン配列を含まないDNAを含む。これらの核酸は、とりわけ、組換えタンパク質の産生および例えば診断用途のための組織試料中のBTNL3核酸の存在の検出に有用である。そのような核酸は、ゲノムDNAまたはcDNAであり得る。当技術分野で知られているように、cDNA配列は、ゲノムDNAに存在し得るエクソン配列を含まない。核酸は、BTNL3タンパク質をコードする中断されていないオープンリーディングフレームを含み得る。本発明の核酸分子は、DNAおよびRNA(一本鎖形態と二本鎖形態の両方)、ならびに対応する相補配列を含む。「単離された核酸」は、天然に存在する源から単離された核酸の場合、核酸が単離された生物のゲノムに存在する隣接した遺伝子配列から分離された核酸である。オリゴヌクレオチド等の化学的に合成された核酸の場合、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)産物もしくはcDNA等の鋳型から酵素的に合成された場合、そのようなプロセスに由来する核酸が単離された核酸であることが理解される。単離された核酸分子は、別個の断片の形態の核酸分子またはベクター等のより大きい核酸構築物の成分としての核酸分子を指す。
【0076】
さらに、本発明は、(1)当技術分野で周知のいくつかの方法、例えば、サザンブロット法およびノーザンブロット法、ドットブロット法、コロニーハイブリダイゼーション、アレイへのハイブリダイゼーション等によってBTNL3核酸を検出するためのプローブ、(2)BTNL3核酸を増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー、または(3)例えば、アンチセンス核酸(ペプチド核酸を含む)、リボザイム、トリプルヘリックス形成分子、もしくは干渉RNAでの発現の阻害によって、BTNL3核酸の発現を制御する手段としての機能を果たすことができるBTNL3タンパク質をコードする核酸の断片を包含する。これらのRNAのうちのいずれかをコードするDNAも、本明細書で意図されるBTNL3核酸である。PCRプライマーは、BTNL3核酸配列に加えて、増幅された核酸の使用を促進する制限酵素切断部位等の他の配列を含み得る。PCRは、例えば、以下の参考文献:Saiki et al.(1988),Science 239:487-91、PCR Technology,Erlich,ed.,Stockton Press,(1989)に記載されている。以下で説明されるように、PCRは、BTNL3 mRNAの過剰発現または過小発現の検出に有用であり得、PCRプライマーは、BNTL3遺伝子の様々な部分から採取され、異なるスプライスバリアントを区別するようにも選択され得る。アンチセンスRNA(およびそれらをコードするDNA)、DNA、または合成ヌクレオチド、ならびに発現を制御するためのこれらの使用は、当技術分野で周知であり、例えば、Izant and Weintraub(1984),Cell 36(4):1007-15、Izant and Weintraub(1985),Science 229(4711):345-52、Harel-Bellan et al.(1988),J.Exp.Med.168(6):2309-18、Sarin et al.(1988),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(20):7448-51、Zon(1988),Pharm.Res.5(9):539-49、Harel-Bellan et al.(1988),J.Immunol.140(7):2431-35、Marcus-Sekura et al.(1987),Nucleic Acids Res.15(14):5749-63、Gambari(2001),Curr.Pharm.Des.7(17):1839-62、およびLemaitre et al.(1987),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84(3):648-52に記載されている。核酸を用いて遺伝子発現を調節する技法を記載するこれらの参考文献の部分は、参照により本明細書に組み込まれる。同様に、干渉RNA(およびそれらをコードするDNA)ならびに選択された遺伝子の発現を阻害するためのこれらの使用が当技術分野で周知であり、例えば、Fjose et al.(2001),Biotechnol.Ann.Rev.7:31-57、Bosher and Labouesse(2000),Nature Cell Biol.2:E31-E36に記載されている。これらの参考文献の関連部分は、参照により本明細書に組み込まれる。さらに、リボザイムまたはDNAザイムは、例えば、Lewin and Hauswirth(2001),Trends Mol.Med.7(5):221-28、Menke and Hobom(1997),Mol.Biotechnol.8(1):17-33、Norris et al.(2000),Adv.Exp.Med.Biol.465:293-301、Sioud(2001),Curr.Mol.Med.1(5):575-88、およびSantiago and Khachigian(2001),J.Mol.Med.79(12):695-706に記載されるように、特異的RNAを切断するように標的化され、それ故に遺伝子発現を阻害するために用いられ得る。遺伝子発現を調節する方法を記載するこれらの参考文献の部分は、参照により本明細書に組み込まれる。BTNL3発現を制御することができるそのような核酸は、BTNL3機能のインビボもしくはインビトロ研究に、または治療薬、任意に、遺伝子治療薬として用途を見出すことができる。
【0077】
本発明は、配列番号1もしくは配列番号8の配列を含む核酸、例えば、DNA、またはその断片、あるいは中程度にストリンジェントな条件下で、任意に、高度にストリンジェントな条件下で、配列番号1もしくは配列番号8のヌクレオチド配列を含む核酸にハイブリダイズする核酸(BTNL3 cDNA)も含み、核酸は、固定化抗CD3抗体で活性化されたT細胞の増殖を阻害することができるタンパク質をコードする。ハイブリダイゼーション技法は、当技術分野で周知であり、関連部分が参照により本明細書に組み込まれる、Sambrook,J.,E.F.Fritsch,and T.Maniatis(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,chapters 9 and 11,(1989))、およびCurrent Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,John Wiley&Sons,Inc.,sections 2.10 and 6.3-6.4(1995))によって説明されている。概して、フィルターハイブリダイゼーションの中程度にストリンジェントな条件は、約50%ホルムアミド、約42℃~55℃の温度の6×SSC、および約60℃での0.5×SSC、0.1%SDS中の洗浄におけるハイブリダイゼーションを含む。概して、高度にストリンジェントな条件は、約68℃での0.2×SSC、0.1%SDS中の洗浄以外は上述のハイブリダイゼーション条件と定義される。SSPE(1×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaHPO、および1.26mM EDTA(pH7.4)である)を、ハイブリダイゼーションおよび洗浄緩衝液中でSSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mMクエン酸ナトリウムである)の代わりに用いることができ、洗浄、任意に少なくとも2回の洗浄は、ハイブリダイゼーションが完了した後に15分間行われる。
【0078】
当業者に知られており、かつ以下でさらに記載される(例えば、Sambrook et al.(上記参照)を参照のこと)ハイブリダイゼーション反応および二本鎖の安定性を支配する基本原理を適用することによって所望の程度のストリンジェンシーを達成するために、洗浄温度および洗浄塩濃度を必要に応じて調節することができることを理解されたい。既知の配列の核酸がハイブリダイズされるとき、ハイブリッドの長さは、その核酸の配列をアライメントし(例えば、GAPを用いて)、かつ最適な配列相補性の領域(複数を含む)を特定することによって決定され得る。上述の条件とは若干異なる条件を、長さが比較的短いハイブリッドに適用することができる。50塩基対長未満であると予想されるハイブリッドのハイブリダイゼーション温度は、このハイブリッドの融解温度(Tm)よりも5~10℃低くなければならず、Tmは、以下の等式に従って決定される。18塩基対長未満のハイブリッドの場合、Tm(摂氏温度)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)。18塩基対長を超えるハイブリッドの場合、Tm(摂氏温度)=81.5+16.6(log10[Na])+0.41(%G+C)-(600/N)であり、式中、Nは、ハイブリッド中の塩基の数であり、[Na]は、ハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオンの濃度である。そのようなハイブリダイズ核酸はそれぞれ、少なくとも15ヌクレオチド長、または少なくとも18ヌクレオチド長、または少なくとも20ヌクレオチド長、または少なくとも25ヌクレオチド長、または少なくとも30ヌクレオチド長、または少なくとも40ヌクレオチド長、または少なくとも50ヌクレオチド長、または少なくとも100ヌクレオチド長を有し得る。Sambrook et
al.(上記参照)。
【0079】
cDNA等のBTNL3核酸は、以下のポリヌクレオチドを含む核酸を含む:(1)配列番号1または配列番号8のすべてまたは断片(この断片は、T細胞の増殖を阻害することができるBTNL3タンパク質をコードする)、(2)配列番号1または配列番号8と少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、または99.7%同一のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド(アライメントウィンドウは、少なくとも100、125、150、175、200、225、250、300、400、500、600、800、1000、または1200ヌクレオチド長であり、この配列は、固定化抗CD3抗体で活性化されたT細胞の増殖を阻害することができるか、またはそのような阻害を拮抗することができるBTNL3タンパク質をコードする)、(3)本発明のBTNL3タンパク質をコードする核酸の検出または増幅、あるいはBTNL3 mRNAおよび/またはタンパク質の発現の制御に有用な配列番号1もしくは配列番号8または実質的に類似した配列の断片、(4)配列番号1または配列番号8と比較して、単一ヌクレオチドの1、2、3、4、6、8、10、15、20、25、または30個を超えない変化(複数可)を含むポリヌクレオチド(変化は、単一ヌクレオチドの挿入、欠失、または置換であり得、このポリヌクレオチドは、固定化抗CD3抗体で活性化されたT細胞の増殖を阻害することができるか、またはそのような阻害のアンタゴニストとしての機能を果たすことができるBTNL3タンパク質をコードする)、ならびに(5)ヒトBTNL3タンパク質の断片、誘導体、およびバリアントを含む本明細書に記載のBTNL3タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0080】
BTNL3タンパク質および抗BTNL3抗体を作製する方法
多量体BTNL3タンパク質もしくはバリアントBTNL3タンパク質を含むBTNL3タンパク質、または抗BTNL3抗体(もしくは抗イディオタイプ抗体)は、以下のように作製され得る。本明細書に記載されるようにBTNL3タンパク質または抗BTNL3抗体をコードする核酸、例えば、DNAは、哺乳類細胞であり得る宿主細胞、例えば、非ヒト宿主細胞に導入され得るベクターに導入され得る。BTNL3タンパク質または抗BTNL3抗体をコードするDNA等の核酸を含むベクターおよび宿主細胞は、本発明によって包含される。BTNL3タンパク質または抗BTNL3抗体をコードする核酸を含む宿主細胞は、BTNL3タンパク質または抗BTNL3抗体が発現することができるような条件下で培養され得る。その後、発現したBTNL3タンパク質または抗BTNL3抗体は、その細胞が培養される培地から、またはその細胞から得られ、当技術分野で既知の多くの適切な手段のうちのいずれかによって精製され得る。加えて、BTNL3タンパク質を産生するための遺伝子操作方法は、既知の方法に従う、無細胞発現系、細胞宿主、組織、および動物モデルにおけるポリヌクレオチド分子の発現を含む。
【0081】
ベクターは、宿主における増殖のために選択可能なマーカーおよび複製起点を含み得る。ベクターは、BTNL3タンパク質または抗BTNL3抗体をコードする核酸に作動可能に連結された哺乳類、微生物、ウイルス、または昆虫遺伝子等由来の好適な転写物または翻訳制御配列をさらに含み得る。そのような制御配列の例として、転写プロモーター、オペレーター、またはエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、および転写および翻訳を制御する適切な配列が挙げられる。ヌクレオチド配列は、制御配列が標的タンパク質をコードするDNAに機能的に関連するときに作動可能に連結される。したがって、プロモーターヌクレオチド配列は、プロモーターヌクレオチド配列が抗BTNL3抗体をコードする配列またはBTNL3タンパク質をコードする配列の転写を指向する場合、核酸配列に作動可能に連結される。BTNL3タンパク質が融合タンパク質である場合、その融合タンパク質の一部をコードする核酸配列、例えば、シグナル配列は、ベクターの一部であり得、抗BTNL3抗体またはBTNL3タンパク質をコードする核酸は、付加されたシグナル配列および抗BTNL3抗体を含むタンパク質またはBTNL3タンパク質がベクターによってコードされるようにベクターに挿入され得る。
【0082】
BTNL3タンパク質または抗BTNL3抗体の発現に好適な宿主細胞は、原核細胞、例えば、細菌、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞、および高等真核細胞(哺乳類細胞を含む)を含むヒトおよび非ヒト細胞を含む。ベクター中の制御配列は、それらが宿主細胞中で作動可能なように選択される。好適な原核宿主細胞は、エシェリキア属、バシラス属、およびサルモネラ属、ならびにシュードモナス属、ストレプトミセス属、およびスタヒロコッカス属のメンバーの細菌を含む。原核細胞、例えば、大腸菌における発現の場合、BTNL3タンパク質または抗BTNL3抗体をコードするポリヌクレオチド分子は、好ましくは、組換えポリペプチドの発現を促進するためにN末端メチオニン残基を含む。N末端メチオニンは、発現したポリペプチドから任意に切断され得る。好適な酵母宿主細胞は、サッカロマイセス・セレビシエおよびピキア・パストリス等の種を含む、サッカロミセス属、ピチア属、およびクルイベロミセス属を含む細胞を含む。昆虫宿主細胞における好適な発現系は、例えば、関連部分が参照により本明細書に組み込まれる、Luckow and Summersによる総説((1988),BioTechnology 6:47)に記載されている。好適な哺乳類宿主細胞は、サル腎臓細胞のCOS-7株(Gluzman et al.(1981)Cell 23:175-182)、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Puck et al.(1958),PNAS USA 60:1275-1281)、CV-1(Fischer et al.(1970),Int.J.Cancer 5:21-27)、ヒト腎臓由来の293細胞(American Type Culture Collection(ATCC(登録商標))カタログ番号CRL-10852(商標))、およびヒト頸部癌腫細胞(HELA)(ATCC(登録商標)CCL 2)を含む。この段落で言及されるこれらの参考文献の関連部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0083】
細胞宿主で用いるための発現ベクターは、概して、1つ以上の選択可能な表現型マーカー遺伝子を含む。そのような遺伝子は、例えば、抗生物質に対する耐性を与えるタンパク質または栄養要求要件を供給するタンパク質をコードする。多種多様のそのようなベクターは、商業的供給源から容易に入手可能である。例として、pGEM(登録商標)ベクター(Promega)、pSPORT(商標)ベクター、およびpPROEX(商標)ベクター(InVitrogen、Life Technologies,Carlsbad,CA)、Bluescriptベクター(Stratagene)、ならびにpQEベクター(Qiagen)が挙げられる。酵母ベクターは、多くの場合、2μ酵母プラスミド由来の複製起点配列、自己複製配列(ARS)、プロモーター領域、ポリアデニル化のための配列、転写終結のための配列、および選択可能なマーカー遺伝子を含む。酵母と大腸菌の両方で複製可能なベクター(シャトルベクターと称される)を用いることもできる。酵母ベクターの上述の特徴に加えて、シャトルベクターは、大腸菌における複製および選択のための配列も含む。酵母宿主で発現した標的ポリペプチドの直接分泌は、BTNL3または抗体をコードするヌクレオチド配列の5’末端で酵母α因子リーダー配列をコードするヌクレオチド配列の包含によって達成され得る。Brake(1989),Biotechnology 13:269-280。
【0084】
哺乳類宿主細胞における使用に好適な発現ベクターの例として、pcDNA3.1/Hygro(Invitrogen)、pDC409(McMahan et al.(1991),EMBO J.10:2821-2832)、およびpSVL(Pharmacia Biotech)が挙げられる。哺乳類宿主細胞で用いるための発現ベクターは、ウイルスゲノム由来の転写物および翻訳制御配列を含み得る。BTNL3 RNAを発現させるために用いられ得る一般に用いられるプロモーター配列およびエンハンサー配列には、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)、アデノウイルス2、ポリオーマウイルス、およびシミアンウイルス40(SV40)由来の配列が含まれるが、これらに限定されない。哺乳類発現ベクターを構築するための方法は、例えば、Okayama and Berg((1982)Mol.Cell.Biol.2:161-170)、Cosman et al.((1986)Mol.Immunol.23:935-941)、Cosman et al.((1984)Nature 312:768-771)、欧州特許第A-0367566号、および国際公開第WO91/18982号に開示されている。これらの参考文献の関連部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
抗BTNL3抗体
本明細書に記載のBTNL3タンパク質に特異的に結合する抗体、抗BTNL3抗体に結合する抗イディオタイプ抗体、およびこれらの抗体の使用が本明細書に記載される。抗BTNL3抗体は、ポリペプチドに結合することができ、このポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号2のアミノ酸18~236または配列番号9のアミノ酸18~166からなる。本明細書で使用される場合、第1の抗体によるBTNL3タンパク質上のエピトープの特異的結合は、第1の抗体が、第1の抗体と競合する別の抗体によってBTNL3タンパク質から置き換えられ得るが、結合において第1の抗体と競合しない他の抗BTNL3抗体によっては置き換えられ得ないことを意味する。多数の競合的結合アッセイが当技術分野で既知である。
【0086】
典型的には、結合における抗体の競合を、蛍光活性化細胞選別(FACS)アッセイによって評価することができる。目的とする抗体は、ビオチニル化され得る。ビオチニル化された抗体は、抗体が結合する抗原を発現することで知られている細胞と合わせられる。ビオチニル化された抗体が予想通り細胞に結合する場合、蛍光色素に接合されるストレプトアビジンからなる二次物を用いて蛍光強度のシフトが観察されるはずである。非標識バージョンの同一の抗体との細胞のプレインキュベーションは、観察された蛍光シフトを完全に排除するはずである。異なる非標識抗体とのプレインキュベーションは、蛍光シフトを完全にまたは部分的に排除し得るか、または影響を及ぼし得ない。後者の場合、非標識抗体が標識抗体と競合しないとの結論が下される。前者の場合、抗体は、結合において実際に競合し、本明細書で意図される場合、エピトープが完全にまたは部分的に、のいずれかで重なり合っているとの結論が下される。あるいは、非標識抗体は、標識抗体によって結合されるエピトープの立体構造を変化させることによって競合し得る。企図される抗体には、任意の特異的に提供された抗BTNL3抗体と完全にまたは部分的に、のいずれかで競合する抗体がある。
【0087】
いくつかの実施形態において、抗BNTL3抗体は、10-8、10-9、10-10、または10-11Mを超えない平衡解離定数(K)でヒトBTNL3タンパク質に結合することができる。Kは、一般に、Biacore Life Sciences,Piscataway,New Jerseyが販売する計器等の表面プラズモン共鳴を用いてリアルタイムでタンパク質間の相互作用を検出することができる特殊な計器の使用によって一般に決定される。いくつかの実施形態において、抗BTNL3抗体は、配列番号2および/または配列番号9と少なくとも90%、95%、97%、98%、または100%同一のアミノ酸配列を含むBTNL3タンパク質に結合することができ、配列番号2および/または9とのアライメントウィンドウは、少なくとも50、60、70、80、または100アミノ酸長であり、任意に、BTNL3タンパク質は、固定化抗CD3抗体によって刺激されたT細胞の増殖を阻害することができるか、または配列番号7のアミノ酸配列を含むBTNL3タンパク質によるそのような阻害を拮抗することができる。いくつかの実施形態において、抗BTNL3抗体は、配列番号2および/または9のアミノ酸配列の断片を含むタンパク質に結合することができる。
【0088】
加えて、BTNL3タンパク質の存在下または不在下での抗CD3活性化T細胞の活性化に対する抗BTNL3抗体の影響は、抗体の機能特性についてのさらなる有用な情報を提供し得る。具体的には、BTNL3が抗CD3活性化T細胞の増殖を阻害するその通常の役割を果たすことを阻止または阻害する抗体が企図される。あるいは、BTNL3による抗CD3活性化T細胞の増殖の阻害をアゴナイズまたは強化する抗体が企図される。したがって、抗体は、BTNL3のアンタゴニストまたはアゴニストのいずれかであり得る。BTNL3が細胞内B30.2ドメインを含むため、その細胞外ドメインが天然に存在するリガンドまたはアゴニスト抗体等のアゴニストによって結合されるときに、それが発現する細胞にシグナルを形質導入し得る。この種のアゴニスト抗体は、T細胞の増殖の阻害を強化する抗体とははっきりと異なり得る。本発明は、それぞれBTNL3の特定のエピトープに結合するモノクローナル抗体および結合においてこれらと競合するモノクローナル抗体を含む。抗体は、ヒト、ヒト化、またはキメラ抗体であり得、様々な形態であり得る。
【0089】
BTNL3タンパク質上のエピトープは、連続アミノ酸を含み得、非連続アミノ酸も含み得る。エピトープは、タンパク質断片またはペプチドライブラリの使用、アラニンスキャニング、エピトープ抽出、エピトープ除去、またはX線結晶学を含む当技術分野で既知の方法によって特定され得る。例えば、Leinonen et al.(2002),Clin.Chem.48(12):2208-16、Kroger et al.(2002),Biosens.Bioelectron.17(11-12):937-44、Zhu et al.(2001),Biochem.Biophys.Res.Commun.282(4):921-27、Obungu et at.(2009),Biochemistry 48:7251-60を参照されたい。これらの参考文献の関連部分、すなわち、エピトープマッピングの方法を記載する部分は、参照により本明細書に組み込まれる。加えて、BTNL3がIgV様ドメイン等の周知の三次構造のドメインをいくつかを含むといった事実を特に考慮して、既知の三次構造の類似物によって生成されたBTNL3の三次構造は、エピトープの決定を助けるものとして用いられ得る。
【0090】
抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体であり得、当技術分野で周知の方法によって産生され得る。例えば、Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses,Kennet et al.(eds.),Plenum Press,New York(1980)、およびAntibodies:A Laboratory Manual,Harlow and Land(eds.),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,(1988),Kohler and Milstein(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,77:2197、Kozbor et al.(1984),J.Immunol.133:3001-3005(ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を記載する)、Cole et al.,Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77-96(1985)(EBVハイブリドーマ技術を記載する)、Kuby,Immunology,Second Edition,p.162-64,W.H.Freeman and Co.,New York(1994)を参照されたく、これらの参考文献の関連部分は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に記載のBTNL3タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株も本明細書に企図される。そのようなハイブリドーマ株は、従来の技術によって産生および特定され得る。抗BTNL3抗体を産生するハイブリドーマは、インビトロまたはインビボで培養され得る。さらに、抗BTNL3抗体は、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、VERO、BHK、Cos、MDCK、293、3T3、骨髄腫(例えば、NSO、NSI)、またはWI38細胞、酵母細胞、昆虫細胞、および例えば大腸菌を含む細菌細胞を含む他の培養細胞において産生され得る。そのような抗体は、この抗体をコードするDNA等の核酸および所望の宿主細胞でのこれらの核酸の発現を可能にする核酸を導入することによって産生され得る。その後、これらの抗体は、これらの核酸が導入される細胞を培養することによって産生され得る。モノクローナル抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDを含む任意の免疫グロブリンクラス、および任意のそのサブクラス、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4等のものであり得る。
【0091】
抗BTNL3抗体は、多くの哺乳類種に見られる抗体等の2つの重鎖および2つの軽鎖を含む全長四量体抗体であり得る。そのような全長抗体は、IgA、IgD、IgG、IgM、またはIgEアイソタイプのものであり得る。これがIgG抗体である場合、これは、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体であり得る。あるいは、抗BTNL3抗体は、重鎖および軽鎖可変領域を含み、任意に、1つ以上の定常領域様ドメインも含む一本鎖抗体(米国特許第4,946,778号、Bird et al.(1988),Science 242:423-26、Huston et al.(1988),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-83)、二量体または多価抗体(例えば、Lantto et al.(2002),J.Gen.Virol.83:2001-05、Hudson and Souriau(2001),Expert Opin.Biol.Ther.1(5):845-55を参照のこと)、四量体抗体(例えば、Janeway et al.,Immunobiology:The Immune System in Health and Disease,Fifth Edition,Part II,Ch.3,Garland Publishing(2001)を参照のこと)、キメラ抗体(Hudson and Souriau(上記参照)、Boulianne et al.(1984),Nature 312:643-46、Morrison et al(1984),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-55、Takeda et al.(1985),Nature 314:452-54、Neuberger et al.(1985),Nature 314:268-70)、非ヒトトランスジェニック哺乳動物において産生された(例えば、米国特許第6,150,584号に記載されるもの)か、またはインビトロ選択によって産生された(米国特許出願第2002/0058033号)完全なヒト抗体、あるいはヒト化抗体(Morrison et al.(上記参照)、Takeda et al.(上記参照)、Boulianne et al.(上記参照))であり得る。さらに、抗体は、変化した特性、例えば、それが結合するエピトープに対するより高い親和性等を有する抗体を産出するインビトロ選択スキームによって「成熟」し得る。例えば、Jackson et al.(1995),J.Immunol.154(7):3310-19、Pini and Bracci(2000),Curr.Protein Pept.Sci.1(2):155-69、Ellmark et al.(2002),Mol.Immunol.39(5-6):349、O’Connell et al.(2002),J.Mol.Biol.321(1):49-56、Huls et al.(2001),Cancer Immunol.Immunother.50:163-71、Hudson and Souriau(上記参照)、Adams and Schier(1999),J.Immunol.Methods 231(1-2):249-60、Schmitz et al.(2000),Placenta 21 Suppl.A:S106-12を参照されたい。あるいは、本発明のBTNL3タンパク質に特異的に結合することができる抗体の断片、例えば、Fab断片、F(ab’)断片、または一本鎖Fv断片(scFv’s)等も、抗BTNL3抗体として本明細書で意図されるものに包含される。FabおよびFv断片の考察については、Kuby(上記参照),pp.109-112、およびJaneway et al.(上記参照)を参照されたい。本発明は、BTNL3タンパク質に特異的に結合する抗体に特異的に結合し、かつBTNL3タンパク質の作用を模倣する抗イディオタイプ抗体も包含する。そのような抗イディオタイプ抗体は、BTNL3タンパク質と同一の用途を見出す。抗イディオタイプ抗体を生成するための方法は、当技術分野で周知である。例えば、Kuby et al.(上記参照、371-72)を参照されたい。本発明のBTNL3タンパク質および別のタンパク質に特異的に結合することができる様々な種類の組換えおよび非組換え二重特異的抗体も企図される。様々な種類の二重特異的抗体およびこれらを作製するための方法は、例えば、米国特許第4,474,893号、同第6,060,285号、および同第6,106,833号に記載されている。
【0092】
抗BTNL3抗体は、2つの完全な重鎖および2つの完全な軽鎖を含む全長四量体二重特異的抗体、または例えば重鎖および軽鎖およびFc領域を含む多量体一価抗体を含む多量体抗体であり得る。そのような多量体抗体は、ヘテロ二量体の形成を促進するある特定の変異をそれらのFc領域に含み得る。そのような抗体および変異は、国際特許公開第国際出願第WO2009/089004号および米国出願第2007/0105199号に記載されており、そのような抗体および変異を記載する部分は、参照により本明細書に組み込まれる。そのような抗体のFc領域は、天然ヒト配列または他の種にとって自然である配列を有し得る。あるいは、または加えて、そのような抗体のFc領域は、Fc領域に対する様々なFc受容体の親和性を増加または減少させることによってエフェクター機能を増加または減少させる変異をそれらのFc領域に含み得る。いくつかのそのようなFc変化は、関連部分が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,457,035号および国際特許出願公開第WO93/10151号に記載されている。
【0093】
抗BTNL3抗体は、抗体が結合することができる細胞を見つけるか、その増殖を阻害するか、またはそれを死滅させるために用いられ得る部分に複合体化され得る。そのような細胞傷害性、細胞増殖抑制性、発光性、および/または放射性部分には、例えば、メイタンシン誘導体(DM1等)、エンテロトキシン(ブドウ球菌エンテロトキシン等)、ヨウ素同位体(ヨウ素125等)、テクネチウム同位体(Tc-99m等)、シアニン蛍光色素(Cy5.5.18等)、リボソーム不活性化タンパク質(ボウガニン、ゲロニン、またはサポリン-S6等)、およびカリケアマイシン、商標MYLOTARG(商標)(Wyeth-Ayerst)名で販売される製品の一部である細胞傷害性物質がある。
【0094】
抗体は、米国特許出願第2004/058820号に記載されるように、任意に抗体の別の部分に融合する単一の重鎖または軽鎖可変領域のみを含み得、これらの単一ドメイン抗体を記載する部分は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0095】
ラクダおよびラマにおいて見出されているいくつかの天然に存在する抗体は、2つの重鎖からなり、軽鎖を含まない二量体である。これらの抗体の構造を記載する部分が参照により本明細書に組み込まれる、Muldermans et al.,2001,J.Biotechnol.74:277-302、Desmyter et al.,2001,J.Biol.Chem.276:26285-90。この構造を有する抗BTNL3抗体は、本発明の抗BTNL3抗体のものである。
【0096】
抗BTNL3抗体は、様々な活性および用途を有し得る。抗BTNL3抗体は、例えば、T細胞増殖のBTNL3依存性阻害を遮断または拮抗することによって、BTNL3の生物学的機能を遮断または阻害するアンタゴニスト抗体であり得、これを本明細書の実施例に記載の方法によってアッセイすることができる。抗体は、アゴニスト抗体であることもできる。いくつかの実施形態において、アゴニスト抗体は、BTNL3逆構造(counterstructure)に結合し、かつBTNL3結合を模倣して、T細胞の活性化または増殖を阻害することができる。アゴニスト抗体は、抗BTNL3抗体に結合し、かつ/またはBTNL3逆構造にも結合し、BTNL3の活性を模倣する抗イディオタイプ抗体であってもよく、すなわち、これらは、本明細書に記載されるようにT細胞の増殖を阻害する。そのようなアゴニスト抗BTNL3抗体は、BTNL3タンパク質と同一の用途で用いられ得る。抗BTNL3抗体は、例えば、可能性として他のタンパク質と組み合わせて、細胞表面上でBTNL3タンパク質を安定化または撹乱することによって、アゴニスト性またはアンタゴニスト性を示し得る。例えば、アゴニスト抗体は、BTNL3の膜貫通形態を安定化するか、または細胞表面上でBTNL3タンパク質と他のBTNL3タンパク質または異なるタンパク質との相互作用を安定化することによって、あるいは細胞表面上でBTNL3タンパク質をクラスター化することによって、BTNL3の活性を強化し得る。さらに、アンタゴニスト抗体は、BTNL3の膜貫通形態を不安定化するか、あるいは細胞の細胞表面上でBTNL3の複数の分子間の相互作用またはBTNL3と他のタンパク質との相互作用を不安定化することによってBTNL3活性を阻害し得る。アゴニスト抗BNTL3抗体は、BTNL3の膜貫通形態にも結合して、それが発現する細胞に生物学的シグナルを形質導入させることができる。そのようなシグナルは、例えば、BTNL3を発現する免疫細胞、例えば、好中球の免疫機能を減少または増加させ得る。いくつかの実施形態において、アゴニスト抗BTNL3抗体は、増殖の減少または癌細胞もしくは好中球等のBTNL3を発現する細胞の細胞死を引き起こし得る。アンタゴニスト抗BTNL3抗体を用いて、免疫応答を強化することができる。したがって、アンタゴニスト抗BNTL3抗体は、例えば、癌治療に、またはワクチン、例えば、癌特異的抗原に対する応答を誘導するためのワクチンに用途を見出すことができる。
【0097】
抗BTNL3抗体は、細胞傷害性、細胞増殖抑制性、発光性、および/または放射性部分に複合体化され得る。そのような抗体を用いて、BTNL3を発現する細胞見つけるか、その増殖を阻害するか、またはそれを死滅させることができる。いくつかの癌細胞がBTNL3を発現するため、そのような抗体複合体を用いて、そのような癌を治療することができる。同様に、好中球がBTNL3を発現するため、そのような抗体複合体を用いて、過剰な数の好中球または過剰な好中球活性を特徴とする状態、例えば、喘息、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む炎症性腸疾患、COPD、ならびに痛風および関連炎症性結晶沈着症を治療することができる。そのような細胞傷害性、細胞増殖抑制性、発光性、および/または放射性部分には、例えば、メイタンシン誘導体(DM1等)、エンテロトキシン(ブドウ球菌エンテロトキシン等)、ヨウ素同位体(ヨウ素125等)、テクネチウム同位体(Tc-99m等)、シアニン蛍光色素(Cy5.5.18等)、リボソーム不活性化タンパク質(ボウガニン、ゲロニン、またはsaporin-S6等)、およびカリケアマイシン、商標MYLOTARG(商標)(Wyeth-Ayerst)名で販売される製品の一部である細胞傷害性物質がある。
【0098】
本発明の抗体を、インビトロまたはインビボのいずれかで本発明のBTNL3タンパク質の存在を検出するためのアッセイにおいて用いることもできる。これらの抗体は、免疫親和性クロマトグラフィーによって本発明のBTNL3タンパク質を精製する際に用いることもできる。
【0099】
BTNL3ポリペプチドのアゴニストおよびアンタゴニスト
アンタゴニストまたはアゴニスト抗体に加えて、アフィボディ等のBTNL3タンパク質を特異的に結合することができる他の抗体関連分子(Ronnmark et al.
(2002),J.Immunol.Methods 261(1-2):199-211(アフィボディを記載する部分は、参照により本明細書に組み込まれる))、および国際出願第WO00/24782号に記載のBTNL3に特異的に結合し、かつBTNL3タンパク質の生物学的活性を阻害することができる生物学的に活性なペプチド(これらのペプチドを記載する部分は、参照により本明細書に組み込まれる)が、本発明に包含される。さらに、BTNL3アンタゴニストは、BTNL3タンパク質および/またはmRNA、例えば、干渉RNA(もしくはそれらをコードするDNA)またはアンチセンスRNAもしくはDNA等の発現の調節に有用な上述の核酸を含む。
【0100】
アンタゴニストは、BTNL3またはその受容体に結合するようにインビトロで選択されたアミノ酸配列を含み、かつ任意にBTNL3とその受容体との相互作用を妨害し得るタンパク質をさらに含む。いくつかの実施形態において、そのようなタンパク質は、BTNL3の通常の活性を欠き、かつデコイとして本質的に作用するBTNL3のバリアント形態であり得る。あるいは、そのようなタンパク質は、BTNL3の生物学的機能を助長または模倣するBTNL3アゴニストであり得る。BTNL3またはその受容体に結合するタンパク質は、BTNL3とその受容体との相互作用を妨害するそれらの能力についてスクリーニングされ得るか、またはあるいは、そのようなタンパク質を直接得るための選択が設計され得る。あるいは、BTNL3アンタゴニストは、野生型BTNL3タンパク質の生物学的活性を妨害するバリアントBTNL3タンパク質、例えば、野生型BTNL3とその受容体との相互作用を遮断する可溶性で生物学的に不活性のBTNL3バリアントであり得る。
【0101】
タンパク質は、例えば、ファージディスプレイまたは細菌表面のディスプレイ等のいくつかの方法によって選択され得る。例えば、Parmley and Smith(1989),Adv.Exp.Med.Biol.251:215-218、Luzzago et al.(1995),Biotechnol.Annu.Rev.1:149-83、Lu et al.(1995),Biotechnology(NY)13(4):366-372を参照されたい。これらの方法において、結合ドメインのライブラリの各メンバーを個々のファージ粒子または細菌細胞上に提示することができ、選択された条件下で目的とするタンパク質に結合する細菌またはファージを選択することができる。選択された結合ドメインをコードする核酸は、選択されたファージまたは細菌を増殖させ、かつそれらから核酸を単離することによって得ることができる。
【0102】
あるいは、タンパク質は、完全にインビトロで選択され得る。例えば、潜在的結合ドメインのライブラリ中のそれぞれの個々のポリペプチドは、それをコードする核酸に付着することができ、選択された条件下で目的とするタンパク質に結合するものが選択され得る。ポリペプチドがそれらをコードする核酸に付着されているため、効果的な結合ドメインをコードする核酸の増幅、クローニング、またはシーケンシング等のその後の作業が促進される。抗体-リボソーム-mRNA粒子、リボソームディスプレイ、共有結合性RNA-ペプチド融合物、または共有結合性DNA-RNA-ペプチド融合物を含むそのような選択の様々なスキームが当技術分野で既知である。He and Taussig(1997),Nucleic Acids.Res.25(24):5132-5134、Hanes and Pluckthun(1997),Proc.Natl.Acad.Sci.94:4937-4942、Roberts and Szostak(1997),Proc.Natl.Acad.Sci.94:12297-12302、Lohse and Wright(2001),Curr.Opin.Drug Discov.Devel.4(2):198-204、Kurz et al.(2000),Nucleic Acids Res.28(18):E83、Liu et al.(2000),Methods Enzymol.318:268-93、Nemoto et al.(1997),FEBS Lett.414(2):405-08、米国特許第6,261,804号、国際出願第WO00/32823号、および同第WO00/34784号。そのような選択がどのように行われ得るかを記載するこれらの出版物の部分は、参照により本明細書に組み込まれる。そのようなタンパク質は、アンタゴニストまたはアゴニストであるように選択され得る。
【0103】
治療的用途
本明細書において、BTNL3.Fc融合タンパク質が活性化T細胞の増殖を阻害することができることが実証される。実施例4の図5を参照されたい。BTNL3は、変化した遺伝子発現プロファイルに反映されるように、固定化抗CD3抗体に応答してCD4T細胞の活性化状態も低減させる。実施例5の図6を参照されたい。また、本明細書において、BTNL3が好中球およびいくつかの種類の癌細胞上で比較的高度に発現することが示される。図2および4。いくつかの状況において、好中球上で発現するBTNL3の多型形態は、免疫ホメオスタシスを変化させる可能性があり得る。したがって、BTNL3、またはBTNL3経路をアゴナイズする能力を有する分子は、T細胞または好中球によって媒介される自己免疫疾患または炎症性疾患を治療する治療薬として有用であり得る。これらの疾患には、数ある中でもとりわけ、例えば、関節炎(リウマチ性関節炎、若年性特発性関節炎、および乾癬性関節炎を含む)、アジソン病、喘息、多腺性内分泌障害症候群、全身性エリテマトーデス、慢性活動性肝炎、甲状腺炎、リンパ球性腺下垂体炎、早発閉経、特発性副甲状腺機能低下症、悪性貧血、糸球体腎炎、自己免疫性好中球減少症、グッドパスチャー症候群、重症筋無力症、強皮症、原発性シェーグレン症候群、多発性筋炎、自己免疫性溶血性貧血、炎症性腸疾患、例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎、乾癬、皮膚炎、サルコイドーシス、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、1型および2型糖尿病、移植関連状態、例えば、組織不適合性または移植片対宿主病、痛風および関連炎症性結晶沈着症、または線維症、例えば、アテローム性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肝硬変症、強皮症、腎移植線維症、腎同種移植ネフロパシー、肺線維症(特発性肺線維症を含む)、自己免疫性血小板減少性紫斑病、尋常性天疱瘡、急性リウマチ熱、混合本態性クリオグロブリン血症、ならびに温式自己免疫性溶血性貧血が含まれる。
【0104】
BTNL3経路を遮断または阻害するBTNL3アンタゴニストは、腫瘍学状況に用途を見出すことができる。上で説明されるように、BTNL3アンタゴニストは、例えば、細胞膜およびそれらの受容体上で発現する内因性BTNL3タンパク質の結合を妨害するBTNL3タンパク質の抗BTNL3抗体またはバリアント形態を含む。以下に示されるように、BTNL3は、ある特定の癌細胞において比較的高度に発現する。実施例3の図4。これは、T細胞の活性化を阻害するBTNL3の能力が免疫系による除去を逃れる癌細胞の能力において役割を果たし得ることを示唆する。
【0105】
BTNL3またはその受容体のいずれかに結合し、かつこれらの分子間の相互作用を遮断または阻害することができる抗体を癌治療の治療薬として用いることができる。上述のBTNL3の他のアンタゴニストを用いることもできる。BTNL3経路遮断剤で治療することができる様々な癌のうちのいくつかには、多くの他の癌の中でもとりわけ、急性または慢性白血病、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、リンパ球性白血病、リンパ球性または皮膚リンパ腫、癌腫、腺癌、肉腫、胸腺腫、縦隔新生物、乳癌、前立腺癌、頭頸部癌、肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、様々な種類の皮膚癌、膀胱癌、悪性神経膠腫、胃腸系癌(食道癌、胃癌、小腸癌、結腸癌、または直腸癌を含む)、膵臓癌、腺癌、肝胆道新生物、腎臓癌または尿管癌、睾丸癌、尿道癌または陰茎癌、婦人科腫瘍、卵巣癌、骨肉腫、内分泌系癌、皮膚黒色腫、眼内黒色腫、中枢神経系新生物、および形質細胞腫が含まれる。
【0106】
同様に、抗BTNL3抗体を含むBTNL3アンタゴニストを、多種多様の病原体による感染症を治療するための治療薬として用いることができる。これは、病原体がT細胞応答を抑制する場合、特に重要であり得る。BTNL3アンタゴニストで治療することができる病原性感染症には、数ある中でもとりわけ、制限なく、ウイルス、細菌、真菌、および様々な真核性病原体(マラリア、すなわち、マラリア原虫種、リーシュマニア種、線虫、および蠕虫、例えば、回虫種のメンバーを含む)による感染症が含まれる。いくつかの実施形態において、BTNL3アンタゴニストは病原体のすべてもしくは一部であるか、またはそれが病原体に対する免疫応答を誘発することができる程度に病原体のすべてもしくは一部と十分に類似した抗原の投与の前に、投与と同時に、または投与の後に投与され得る。
【0107】
BTNL3アンタゴニストは、ワクチンをより効果的にする薬剤として用途を見出すこともできる。BTNL3をワクチンとともに用いて、任意の抗原に対する応答を誘導することができる。これらの抗原には、上述の癌由来の細胞等の癌細胞上で高度に発現した抗原がある。これらの癌抗原には、以下のヒトタンパク質がある:WT1、MUC1、LMP2、EGFRvIII、HER-2/neu、MAGE-A3、NY-ESO-1、PSMA、GM2/GD2シンターゼ、CEA、MLANA/MART1、gp100、スルビビン、前立腺特異的抗原(PSA)、テロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、肉腫転座切断点、EPHA2、前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)、アポトーシスの黒色腫阻害剤(ML-IAP)、α-フェトプロテイン(AFP)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、ERG、NA17.A2ペプチド(VLPDVFIRC)、ペアードボックス3(PAX3)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)、アンドロゲン受容体、サイクリンB1、ポリシアル酸、Rho関連GTP結合タンパク質RhoC、v-myc骨髄球腫症ウイルス関連癌遺伝子(MYCN)、TRP-2、GD3ガングリオシド、フコシルGM1、メソテリン、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、MAGE-A1、CYP1B1、PLAC1、GM3、BORIS、テトラネクチン(TN)、ETV6-AML1(特に切断点を含むペプチド)、NY-BR-1、RGS5、SART3、STn、炭酸脱水酵素IX、PAX5、プロアクロシン結合タンパク質sp32前駆体(OY-TES-1)、精子タンパク質17(Sp17)、LCK、高分子量メラノーマ関連抗原(HMWMAA、別名メラノーマコンドロイチン硫酸プロテオグリカン)、AKAP-4、SSX2、XAGE-1、B7H3(別名CD276)、レグマイン、TIE2、前立腺関連遺伝子4タンパク質(PAGE-4)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、プロタミン2(別名MAD-CT-1)、glomulin(別名FAP)、PDGFR-β、SSX2、SSX5、Fos関連抗原1、CD20、インテグリンανβ3、5T4癌胎児性抗原、CA IX、CD5、CD19、CD22(別名Siglec-2)、CD30(別名TNFRSF1)、CD33(別名Siglec-3)、CD40、CD44V6、CD55、CD56(別名NCAM)、CTLA-4(別名CD152)、EGFR、GD2、HER2、HLA-DR10(MHC II)、IGF1R、IL-6、シアリルルイスY、TAG-72、TAL6、TRAILR2、VEGF、CD52(別名CAMPATH-1)、CD4、CD73、CA125(別名MUC16)、CD66e、CD80(別名B7-1)、PDGFRβ、前立腺特異的膜抗原(数ある中でもとりわけ、PSMA、別名グルタミン酸カルボキシペプチダーゼ2)。癌抗原は、ヒトヘルペスウイルス4タンパク質LMP2、ヒト乳頭腫ウイルスタンパク質E6およびE7、ならびにグリコセラミドグロボH(グロボHを記載する部分が参照により本明細書に組み込まれる、Gilewski et al.(2001),Proc.Natl.Acad.Sci.98(6):3270-3275に記載のもの)、α4β1およびα4β7インテグリンのα4サブユニット、α4β7インテグリン、BAFF、APRIL、CD2、CD3、CD20、CD52、CD73、CD80、CD86、C補体タンパク質、IgE、IL-1β、IL-5、IL-6R、IL-12、IL-23、および腫瘍壊死因子α(TNFα)も含む。
【0108】
BTNL3アンタゴニスト、例えば、抗BTNL3抗体は、ワクチンをより効果的にするために用いられるとき、抗原の前に、それと同時に、またはその後に投与され得る。この抗原は、上述の癌抗原の一部またはすべてであり得る。抗原は、病原体の一部もしくはすべて、または病原体の一部もしくはすべてに類似した分子、疾患を媒介する任意の細胞の表面で特異的に発現した分子の一部もしくはすべて、細胞から分泌された可溶性抗原、または病原体に対する免疫応答を誘発することができる分子でもあり得る。
【0109】
BTNL3を介して細胞内シグナル伝達をアゴナイズする分子は、癌細胞がBTNL3を発現する癌の治療薬としての機能を果たし得る。同様に、BTNL3を発現する免疫細胞、例えば、好中球によって媒介される炎症性疾患は、BTNL3を介する細胞内シグナル伝達をアゴナイズする分子で治療され得る。そのようなアゴニストは、抗BTNL3抗体であり得、細胞内シグナル伝達は、BTNL3のB30.2ドメインを介して媒介され得る。
【0110】
したがって、好中球上で発現したBTNL3に結合し、それにより好中球の増殖を下方制御または阻害することができる分子は、過剰な好中球または過度の好中球活性が存在する状態、例えば、うっ血性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む)、ならびに痛風および関連炎症性結晶沈着症における有用な治療薬であり得る。そのような分子には、抗BTNL3抗体が含まれ得る。
【0111】
その一方で、好中球の増殖を促進する分子は、感染しやすい好中球減少症を有する患者において有用であり得る。そのような患者には、癌の化学療法または放射線治療を受けた患者、有毒な化学物質または薬物に曝露された患者、またはある特定の自己免疫疾患を有する患者が含まれる。増殖の下方制御または阻害の細胞内シグナルを阻止する様式で好中球の表面上でBTNL3に結合する分子は、そのような患者に有用な治療薬であり得る。そのような分子には、抗BTNL3抗体が含まれ得る。さらに、デコイとして作用し、それにより好中球上で発現したBTNL3と、BTNL3に通常結合することによってBTNL3が発現する好中球の増殖を下方制御または阻害するリガンドとの相互作用を阻止する分子は、そのような状態の治療薬であり得る。そのような分子には、BTNL3タンパク質またはそのバリアントが含まれ得る。
【0112】
加えて、上述の細胞傷害性、細胞増殖抑制性、発光性、および/または放射性部分に複合体化される抗体を用いて、癌細胞がBTNL3を発現する癌を治療することができか、または好中球数の増加を特徴とする炎症性または自己免疫疾患、例えば、喘息、COPD、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む)、ならびに痛風および関連炎症性結晶沈着症を治療することができる。
【0113】
本明細書で言及される任意の疾患の「治療」は、疾患の少なくとも1つの症状の緩和、疾患の重症度の軽減、またはある場合には、疾患と同時に起こり得るか、または少なくとも他の疾患につながり得るより重度の症状への疾患進行の遅延もしくは予防を包含する。治療は、疾患が完全に治癒されることを意味する必要はない。有用な治療薬は、疾患の重症度を低減させるか、疾患もしくはその治療に関連した1つ以上の症状の重症度を低減させるか、または治療された状態の後にある頻度で生じ得るより重度の症状もしくはより重度の疾患の発症を遅延させることのみを必要とする。例えば、疾患が炎症性腸疾患である場合、治療薬は、内臓内の明らかな炎症部位の数、冒された内臓の全範囲を減少させ、痛みおよび/もしくは腫れを軽減し、下痢、便秘、もしくは嘔吐等の症状を軽減し、かつ/または内臓の穿孔を予防し得る。患者の状態は、バリウム注腸もしくは注腸後に行われるX線、内視鏡検査、大腸内視鏡検査、および/または生体検査等の標準の技法によって評価され得る。好適な手順は、患者の状態および症状により異なる。
【0114】
疾患を治療するために用いられる薬物の「治療的に有効な量」とは、疾患の重症度を低減させるか、疾患もしくはその治療に関連した1つ以上の症状の重症度を低減させるか、または治療された状態の後にある頻度で生じ得るより重度の症状もしくはより重度の疾患の発症を遅延させる量である。
【0115】
本発明は、数ある中でもとりわけ、関節炎(リウマチ性関節炎、若年性特発性関節炎、および乾癬性関節炎を含む)、アジソン病、喘息、多腺性内分泌障害症候群、全身性エリテマトーデス、慢性活動性肝炎、甲状腺炎、リンパ球性腺下垂体炎、早発閉経、特発性副甲状腺機能低下症、悪性貧血、糸球体腎炎、自己免疫性好中球減少症、グッドパスチャー症候群、重症筋無力症、強皮症、原発性シェーグレン症候群、多発性筋炎、自己免疫性溶血性貧血、炎症性腸疾患、例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎、乾癬、皮膚炎、サルコイドーシス、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、1型および2型糖尿病、移植関連状態、例えば、組織不適合性または移植片対宿主病、痛風および関連炎症性結晶沈着症、または線維症、例えば、アテローム性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肝硬変症、強皮症、腎移植線維症、腎同種移植ネフロパシー、肺線維症(特発性肺線維症を含む)、自己免疫性血小板減少性紫斑病、尋常性天疱瘡、急性リウマチ熱、混合本態性クリオグロブリン血症、ならびに温式自己免疫性溶血性貧血等の炎症性疾患を治療する方法を包含する。
【0116】
そのような治療は、特定の障害の重症度もしくはその障害によって引き起こされる症状の重症度を反映する指標のベースラインを超える持続的改善を誘導するか、あるいはある場合またはあらゆる場合において治療された状態に続くより重度の疾患の発症を遅延させるか、または予防するのに十分な期間、治療的に有効な量のBTNL3タンパク質、またはBTNL3もしくはその受容体に結合するアゴニスト抗体を用いることを伴う。本発明の治療は、一般に用いられる問題となっている障害の他の治療の前、治療の後、または治療の最中に用いられ得るか、または他の治療なしで用いられ得る。例えば、クローン病および潰瘍性大腸炎は、スルファサラジン、5-アミノサリチル酸、またはコルチコステロイドで一般に治療される。これらの治療は、BTNL3タンパク質またはそのアゴニストもしくはアンタゴニストを用いる治療の前、治療の最中、または治療の後に用いられ得る。
【0117】
同様に、癌は、多くの場合、化学治療薬で治療され、そのような薬剤は、本明細書に記載の抗BTNL3抗体等のBTNL3アンタゴニスト治療薬とともに用いられ得る。いくつかの実施形態において、BTNL3アンタゴニストは、化学治療薬の前に、それと同時に、またはその後に投与され得る。化学治療薬には、例えば、当技術分野で既知の数ある中でもとりわけ、以下の治療薬:アルキル化剤(例えば、ブスルファン、テモゾロマイド、シクロホスファミド、ロムスチン(CCNU)、メチルロムスチン、ストレプトゾトシン、シス-ジアンミンジ-クロロ白金、アジリジニルベンゾ-キノン、およびチオテパ)、無機イオン(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン)、ナイトロジェンマスタード(例えば、塩酸メルファラン、イホスファミド、クロラムブシル、およびメクロレタミンHCl)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン(BCNU))、抗腫瘍性抗生物質(例えば、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、ダウノマイシン、マイトマイシンC、ダウノルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、およびブレオマイシン)、植物誘導体(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンデシン、VP-16、およびVM-26)、代謝拮抗物質(例えば、ロイコボリンを有するか、または有しないメトトレキサート、ロイコボリンを有するか、または有しない5-フルオロウラシル、5-フルオロデオキシウリジ、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-アザシチジン、ヒドロキシウレア、デオキシコホルマイシン、ゲムシタビン、およびフルダラビン)、ポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、イリノテカン、およびトポテカン)、ならびにアクチノマイシンD、ダカルバジン(DTIC)、mAMSA、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ペンタメチルメラミン、L-アスパラギナーゼ、およびミトキサントロンが含まれる。例えば、関連部分が参照により本明細書に組み込まれる、Cancer:Principles and Practice of Oncology,4th Edition,DeVita et al.,eds.,J.B. Lippincott Co.,Philadelphia,PA(1993)を参照されたい。
【0118】
癌を、放射線の様々な形態を用いて一般に様々な方法で治療される。本明細書において、癌患者へのBTNL3アンタゴニストの投与が、放射線治療または任意の他の抗腫瘍性治療の前に、それと同時に、またはその後に起こり得ることが企図される。
【0119】
自己免疫状態または炎症性状態の場合、T細胞を、例えばアフェレーシスを介して患者から取り出し、T細胞が制御性または阻害性表現型を得るように任意に他のタンパク質とともにBTNL3を用いてエクスビボで刺激することができる。その後、このT細胞を患者に戻して移すことができる。制御性または阻害性表現型を得るようにT細胞を刺激するために、それらを、表面の存在下で、例えば、ビーズとともに、またはTGF-βおよびIL-2の存在下でヒトT細胞アゴニスト抗CD3抗体、rBTNL3.Fc、およびrB7-1.FcもしくはrB7-2.Fcでコーティングされるマイクロタイタープレートのウェル内でインキュベートすることができる。あるいは、表面を、rBTNL3もしくはBTNL3.Fcを含むタンパク質とアゴニスト抗CD3抗体の組み合わせ、またはこれらのタンパク質のみを含む組み合わせでコーティングすることができる。一実施形態において、アゴニスト抗CD3抗体、rBTNL3.Fc、およびrB7-1.FcまたはrB7-2.Fcは、例えば、2:10:2.5の分子量比であり得る。TGF-βおよびIL-2は、例えば、TGF-βの場合、約0.05~5ng/mL、IL-2の場合、約0.5~10ng/mL等の適切な濃度であり得る。これは、T細胞が阻害性または制御性になるようにプログラムして、制御性T(「T reg」)細胞の「拡大」をもたらす。T reg細胞の「拡大」とは、T reg細胞(CD3FOXP3)の全体としてのT細胞(CD3FOXP3)に対する比率がより高くなることを意味する。この比率は、当技術分野で周知の方法である細胞タンパク質を検出するための抗体を用いたFACS分析によって決定され得る。例えば、関連部分が参照により本明細書に組み込まれる、Swanson et al.(2013),J.Immunol.190:2027-2035を参照されたい。T細胞は、そのような状況下で例えば3~7日間インキュベートされ、その後、収集され、同一の患者に戻して送達され得る。任意に、T細胞は、約3、4、5、6、または7日間インキュベートされ得る。いくつかの実施形態において、T細胞を静置させ、すなわち、例えばIL-2の存在下でT細胞受容体または共刺激刺激物なしで培養し、その後、上述のように1~4回以上再刺激することもできる。そのようなレジームで治療可能な自己免疫状態または炎症性状態には、数ある中でもとりわけ、例えば、関節炎(リウマチ性関節炎、若年性特発性関節炎、および乾癬性関節炎を含む)、アジソン病、喘息、多腺性内分泌障害症候群、全身性エリテマトーデス、慢性活動性肝炎、甲状腺炎、リンパ球性腺下垂体炎、早発閉経、特発性副甲状腺機能低下症、悪性貧血、糸球体腎炎、自己免疫性好中球減少症、グッドパスチャー症候群、重症筋無力症、強皮症、原発性シェーグレン症候群、多発性筋炎、自己免疫性溶血性貧血、炎症性腸疾患、例えば、クローン病または潰瘍性大腸炎、乾癬、皮膚炎、サルコイドーシス、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患、喘息、1型および2型糖尿病、移植関連状態、例えば、組織不適合性または移植片対宿主病、痛風および関連炎症性結晶沈着症、または線維症、例えば、アテローム性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肝硬変症、強皮症、腎移植線維症、腎同種移植ネフロパシー、肺線維症(特発性肺線維症を含む)、自己免疫性血小板減少性紫斑病、尋常性天疱瘡、急性リウマチ熱、混合本態性クリオグロブリン血症、ならびに温式自己免疫性溶血性貧血が含まれる。
【0120】
上述の治療薬のうちのいずれも、組成物の形態で投与され得、すなわち、生理学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤等の1つ以上のさらなる成分とともに投与され得る。例えば、組成物は、本明細書に記載の可溶性BTNL3タンパク質、抗BTNL3抗体、またはBTNL3アゴニストもしくはアンタゴニスト、ならびに緩衝液、抗酸化物質、例えば、アスコルビン酸、低分子量のポリペプチド(10個未満のアミノ酸を有するもの等)、タンパク質、アミノ酸、炭水化物(グルコース、スクロース、もしくはデキストリン等)、キレート剤(EDTA等)、グルタチオン、ならびに/または他の安定剤、賦形剤、および/もしくは防腐剤を含み得る。この組成物は、液体または凍結乾燥物として製剤化され得る。薬学的製剤に用いられ得る成分のさらなる例は、関連部分が参照により本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th Ed.,MackPublishing Company,Easton,Pa.,(1980)に提示されている。
【0121】
上述の治療用分子を含む組成物は、非経口、局所、経口、経鼻、膣内、直腸、または肺(吸入)投与を含むが、これらに限定されない任意の適切な手段によって投与され得る。注入される場合、組成物(複数可)は、ボーラス注入または持続輸注によって関節内、静脈内、動脈内、心筋内、腹腔内、または皮下投与され得る。局所的投与、すなわち、疾患部位での投与が企図され、インプラント、皮膚用パッチ剤、または坐薬からの経皮送達および持続放出も同様に企図される。吸入による送達には、例えば、経鼻または経口吸入、噴霧器の使用、エアロゾル形態での吸入等が含まれる。体腔に挿入される坐薬を介する投与は、例えば、選択された体腔に組成物の固体形態を挿入し、それを溶解させることによって達成され得る。他の代替案には、点眼薬、経口調製物、例えば、丸剤、トローチ剤、シロップ剤、およびチューインガム、ならびに局所調製物、例えば、ローション、ゲル、噴霧剤、および軟膏が含まれる。多くの場合、ポリペプチドである治療用分子は、局所的に、または注入もしくは吸入によって投与され得る。
【0122】
上述の治療用分子は、治療される状態の治療に効果的であり得る任意の投与量、頻度、および期間、投与され得る。投与量は、治療用分子の分子的性質および治療される障害の性質に依存する。治療は、所望の結果を達成するのに必要な限り続けられ得る。治療の周期性は、全治療期間を通して一定である場合があるか、一定でない場合がある。例えば、治療は、最初は週間隔で起こり、後に隔週で起こり得る。数日間、数週間、数ヶ月、または数年の治療が本発明に包含される。治療は、中断され、その後、再開され得る。維持用量は、初期治療後に投与され得る。
【0123】
投与量は、体重1キログラム当たりのミリグラム(mg/kg)もしくは皮膚表面1平方メートル当たりのミリグラム(mg/m)として、または身長もしくは体重にかかわらず固定用量として測定され得る。これらは、当技術分野における標準の投与量単位である。ヒトの皮膚表面積は、標準の式を用いて身長および体重から計算される。例えば、BTNL3またはその受容体に結合する治療用BTNL3タンパク質または抗体は、約0.05mg/kg~約10mg/kgまたは約0.1mg/kg~約1.0mg/kgの用量で投与され得る。あるいは、約1mg~約500mgの用量が投与され得る。または、約5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、100mg、200mg、もしくは300mgの用量が投与され得る。
【0124】
本発明は、特定の実施例を参照して以下で説明される。これらの実施例は、いかなる形でも本発明を制限するようには意図されていない。本開示の目的のために、十分に本発明の範囲内である様々な変更および修正が本発明に加えられ得ることが理解される。多数の他の変更を加えることもでき、これらは、それら自体が当業者に容易に提案し、かつ本明細書に開示され、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の精神に包含される。
【実施例0125】
実施例1:ヒト免疫細胞におけるヒトBTNL3タンパク質をコードするmRNAの発現
一次ヒト免疫細胞におけるヒトBTNL3をコードするmRNAの発現に関する情報を集めるために以下の実験を行った。
【0126】
Stem Cell Sciences(Palo Alto,California)またはMiltenyi Biotech(Germany)の様々な商業的に利用可能な選択方法を用いて、一次免疫細胞を全血またはLeukopakから単離した。例えば、EASYSEP(登録商標)ヒトT細胞濃縮キットおよび/またはCD4T細胞濃縮キット(これら両方ともにStem Cell Sciencesのもの)を用いてCD4T細胞を単離し、Miltenyi単球単離キットIIを用いて単球を単離した。そのような市販の試薬を用いたそのような細胞分離は、当技術分野において慣習的である。負に選択された単球の7日間のエクスビボ成熟によってマクロファージを得た。蛍光活性化細胞選別(FACS)によって各単離された細胞集団を分析して、単離された細胞集団が予想した細胞表面タンパク質を発現しているかを決定した。RNAを単離し、Affymetrixアレイ(Affymetrix GENECHIP(商標)HG-U1333 Plus 2.0)によって評価した。ヒトBTNL3転写物検出のためのデータ正規化および分析を、ROSETTA RESOLVER(登録商標)ソフトウェア(Rosetta Biosoftware,Cambridge,MA,USA)を用いて行った。
【0127】
これらの分析の結果が図2に示される。試験した細胞型には、末梢血単核球、T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、B細胞、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、およびNK細胞が含まれた。試験した細胞型のうち、好中球(図2のレーン8)が最高量のBTNL3を発現した。
【0128】
実施例2:ヒトBTNL3.Fcの調製
以下は、ヒトBTNL3の細胞外領域、リンカー、およびヒトIgG1抗体のFc部分を含む融合タンパク質がどのように作製されたかを説明する。リンカーおよびヒトIgG1 Fc断片に融合した配列番号2のアミノ酸1~236であるヒトBTNL3の細胞外ドメインをコードする適切なベクターのcDNAを構築した。配列番号5は、このcDNAの配列を提供し、配列番号6は、シグナル配列を含むこのcDNAによってコードされるBTNL3.Fcタンパク質のアミノ酸配列を提供する。シグナル配列を欠く成熟BTNL3.Fcタンパク質配列が配列番号7に提供される。Cos PKB細胞を、LIPOFECT AMINE(商標)2000(Invitrogen)を用いてBTNL3.Fc哺乳類発現構築物でトランスフェクトし、0.5%低Ig血清を有する完全ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で培養した。これらの方法は、Ettehadieh et al.,OVEREXPRESSION OF PROTEIN KINASE Bα ENHANCES RECOMBINANT PROTEIN EXPRESSION IN TRANSIENT SYSTEMS in Animal Cell Technology:From Target to Market:Proceedings of the 17th ESACT Meeting,Tylosand,Sweden,June 10-14,2001,Vol.1,Lindner-Olsson et al.,eds.,pp.31-35,Springer,2001で詳細に説明されている。組換えタンパク質の作製方法を記載するこの参考文献の部分は、参照により本明細書に組み込まれる。トランスフェクションの7日後、上清を収集し、BTNL3.Fcタンパク質をタンパク質Aカラムクロマトグラフィー(MABSELECT(商標)SuRe column,GE Healthcare)によって精製した。
【0129】
結果として生じたタンパク質の大きさを、ゲル電気泳動およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって決定した。C3領域間の非共有結合相互作用およびヒンジ領域間に形成されたジスルフィド結合の結果、二量体化を引き起こすFc領域が存在したため、このタンパク質が二量体であることが予想された。このタンパク質が二量体である場合、その予想される分子量は、様々なグリコシル化のため、約120kDを超える可能性が高い。同様に、それが単量体であると予想された還元条件下におけるその予想された分子量は、少なくとも約60kDである。還元ゲル上でいくつかの帯を観察し、これらの帯の大半は、約50~64kDであった。非還元条件下でSECによって観察された主なピークの分子量は、約140kDであったが、より高い分子量種およびより低い分子量種も観察された。これらのデータは、タンパク質が非還元条件下で少なくとも二量体であり、より高次の多量体も形成する可能性が高いことを示す。
【0130】
実施例3:ヒト正常組織および腫瘍組織におけるBTNL3の発現
ヒト正常組織および腫瘍組織におけるRNAレベルでのBTNL3の発現レベルを決定するために、RNAを単離し、次世代シーケンシング分析によって評価した。具体的には、TruSeq(登録商標)(Illumina,Inc.,San Diego,California)試薬を用いて、HiSeq(登録商標)2000(Illumina,Inc.,San Diego,California)シーケンシング系内で処理した試料および反応物を調製した。データを分析して、1細胞当たりのBTNL3 RNAの数を定量した。正常なヒト組織についてのこの分析の結果が図3に示される。BTNL3発現が大半の組織でほとんどまたはまったく検出されなかったが、より高いレベルの発現が結腸および小腸由来の試料で検出された。したがって、BTNL2様のBTNL3は、主に消化管で発現する。
【0131】
同様の方法を用いて、様々なヒト腫瘍組織試料におけるBTNL3 RNA発現のレベルを決定した。これらの結果が図4に示される。中程度のレベルのBTNL3発現がいくつかの異なる腺癌試料で検出されたが、すべての腫瘍組織で検出されたわけではなかった。加えて、中程度のレベルおよび高レベルのBTNL3発現がII型糖尿病患者由来のいくつかの試料で検出され、BTNL3がある場合においてこの疾患を媒介するか、またはこの疾患に応答する役割を果たし得ることを示唆する。
【0132】
実施例4:マウスCD4T細胞増殖のインビトロ分析
以下の実験を行って、インビトロでのマウスCD4T細胞の増殖へのヒトBTNL3:Fc融合タンパク質の影響を決定した。
【0133】
1回の実験につき少なくとも5匹の雌C57BL/6マウスから収集した脾臓から調製した単一細胞脾細胞懸濁液を用いて、マウスEASYSEP(商標)CD4ネガティブ選択キット(Stem Cell Sciences)でCD4T細胞を精製した。CD4T細胞の純度は、FACS分析で評価したとき、90%を超えた。組織培養処理マイクロタイタープレートを、様々な濃度の抗マウスCD3モノクローナル抗体(Clone 2C11,BD Biosciences Pharmingen,San Diego,CA、USA)および図5の簡単な説明において示されるFc融合タンパク質でコーティングした。ヒトIgG(Sigma)を用いて各ウェルの全タンパク質含有量を均等化した。すべてのコーティング/希釈をPBS中で行った。プレートを一晩インキュベートした。その後、ウェルをPBSで洗浄し、次いで、1~2×10精製CD4脾細胞/ウェルを添加した。CD4T細胞の増殖を、72時間培養の最後の6時間中にH-チミジン(1μCi/ウェル)組み込みによって決定した。ヒトIgGを負の対照として用いた。正の対照として、T細胞増殖の阻害を以前に示したマウスBTNL2.Fc、およびT細胞の正の共刺激分子として既知のヒトB7-2-Fc(R&D Biosystems)も含んだ。
【0134】
結果が図5に示される。図5のレーン1は、固定化タンパク質もさらなるタンパク質も含まない負の対照アッセイを表す。レーン2および3は、固定化抗マウスCD3抗体と、ヒトIgG(レーン2)またはヒトB7-2-Fcタンパク質のいずれかを含む正の対照アッセイの結果を示す。レーン4は、固定化抗マウスCD3抗体と負の共刺激分子であるマウスBTNL2.Fcを含むアッセイの結果を示す。レーン5は、固定化抗マウスCD3抗体とヒトBTNL3.Fcを含むアッセイの結果を示す。レーン6および7は、固定化ヒトIgGと、マウスBTNL2.Fc(レーン6)またはヒトBTNL3.Fc(レーン7)のいずれかを用いたアッセイの結果を示す。これらのデータは、マウスT細胞増殖へのヒトB7-2-Fcの刺激作用およびマウスBTNL2.Fcの阻害作用を裏付け、ヒトBTNL3.FcがマウスT細胞増殖を阻害することができることを示す。これらのデータは、ヒトBTNL3.Fc融合タンパク質が、マウスT細胞に、マウスBNTL2.Fc融合タンパク質を用いて観察された作用と同様の作用を有し得ることを示唆する。さらに、これらのデータは、近接したヒトBTNL3のマウスホモログが単離されなかったという事実にもかかわらず、ヒトBTNL3がマウスT細胞上の受容体と相互作用することができることを示唆する。
【0135】
実施例5:マウスCD4+T細胞の遺伝子発現へのBTNL3.Fcの効果
標準の抗CD3増殖アッセイにおいて、マウスCD4T細胞を上述のように単離し、固定化抗CD3抗体と、さらなるタンパク質なし、固定化マウスBTNL2.Fc、または固定化ヒトBTNL3.Fcで刺激した。増殖をH-チミジン組み込みによって測定した。24時間刺激した後、RNAを細胞から単離し、Affymetrix cDNAチップを用いて分析して、多くの種類の配列の発現レベルを決定した。結果が図6および以下の表4に示される。固定化抗CD3抗体でのマウスCD4+細胞の刺激は、予想通り、多くの免疫制御および炎症遺伝子の発現を上方制御した。マウスBTNL2.FcまたはヒトBTNL3.Fcの包含は、この応答を弱めた。
【0136】
図6において、黒色の点は、刺激していない細胞と比較した、刺激した細胞で観察された特定の配列の発現の相対量を表す。刺激した細胞と刺激していない細胞との間に有意な発現差のない配列は、図6に示されていない。図6において、左側のパネルは、抗CD3抗体のみで刺激した細胞のデータを示し、中央のパネルは、抗CD3抗体とマウスBTNL2.Fc融合タンパク質で刺激した細胞のデータを示し、右側のパネルは、抗CD3抗体とヒトBTNL3.Fc融合タンパク質で刺激した細胞を示す。これらのデータは、抗CD3抗体で24時間刺激することによって多くの遺伝子の発現が有意に上方または下方制御されることを示す。しかしながら、マウスBTNL2.FcまたはヒトBTNL3.Fcのいずれかの添加は、この遺伝子数を実質的に減少させる。これらのデータは、BTNL2.Fcが負の共刺激分子であることを裏付け、BTNL3.Fcも負の共刺激分子であることを示す。したがって、これらの結果は、これら両方の分子が抗CD3抗体によるマウスCD4T細胞の活性化を阻害することを示す。
【0137】
以下の表4は、この実験のさらなる数値データを提供する。アッセイした45,060個の配列のうち、多くの(26,530個の)配列の発現は、抗CD3抗体のみでの刺激によっては統計的に有意な様式で変化しなかった。しかしながら、8,631個および9,899個の配列の発現は、抗CD3抗体のみでの刺激時に、それぞれ、有意に上方または下方制御された。これらの数は、マウスBTNL2.FcまたはヒトBTNL3.Fcのいずれかを添加したときに有意に減少した。したがって、BTNL2およびBTNL3は両方ともに、T細胞の活性化を阻害する。
【表4】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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【外国語明細書】