(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040222
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】クロマトグラフィ充填媒体の回収
(51)【国際特許分類】
G01N 30/56 20060101AFI20220303BHJP
G01N 30/60 20060101ALI20220303BHJP
G01N 30/50 20060101ALI20220303BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20220303BHJP
B01D 15/20 20060101ALI20220303BHJP
B01D 15/22 20060101ALI20220303BHJP
【FI】
G01N30/56 Z
G01N30/60 A
G01N30/50
B01D15/00 H
B01D15/20
B01D15/22
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022001182
(22)【出願日】2022-01-06
(62)【分割の表示】P 2018564321の分割
【原出願日】2017-06-12
(31)【優先権主張番号】62/348,760
(32)【優先日】2016-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504232044
【氏名又は名称】レプリゲン・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】REPLIGEN CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ワード、トラビス アール.
(72)【発明者】
【氏名】ペイザー、ジェームズ ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】ペンティア、ダナ
(72)【発明者】
【氏名】フランケル、エバン
(57)【要約】
【課題】クロマトグラフィカラムからカラム充填媒体を除去して回収する為の方法とシステムを与える。
【解決手段】入口と出口と充填媒体で充たされる管内のチャンバーを形成するフローディストリビュータ間にあるカラムチューブの壁に配置されたポートアセンブリとを有するクロマトグラフィカラムを備えたシステムを与える。ポートアセンブリは、充填カラムからレジンを除去しやすくし且つクロマトグラフィ分離の為の、カラムの通常使用時の流体の流れ又はカラム内の衛生状態の維持能力に影響を与えることがない。さらに、ポンプとカラムの入口と出口とにチューブを取り付ける工程とポートアセンブリを開く工程とポートアセンブリと第2容器にチューブを取り付ける工程と容器からチャンバーの中に水溶液をポンプで送り込んでポートアセンブリを介して第2容器の中に出すことによって水溶液の流れと共にカラムから充填媒体を除去する工程とからなる方法を与える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め充填されているクロマトグラフィカラムから充填媒体を回収する為の方法において、前記クロマトグラフィカラムはカラム管を備え、前記カラム管は入口と、出口と、ポートアッセンブリであって、充填媒体で充たされたカラム管の内部にチャンバーを形成する第1フローディストリビュータと第2フローディストリビュータの間にて前記カラム管の壁に設置されたポートアセンブリとを備え、
水溶液の第1容器からポンプに、さらに、カラムの前記入口と前記出口に、チューブを取り付ける工程と、
前記ポートアセンブリを開く工程と、
前記ポートアセンブリと第2容器とにチューブを取り付ける工程と、
前記第1容器からカラムの前記入口の内部とカラムの前記出口を介して前記チャンバーの中にポンプで水溶液を送り込んで前記ポートアセンブリを介して前記第2容器の中に排出することにより前記水溶液の流れに沿って前記カラムから充填媒体を除去する工程と、
からなり、
前記ポートアセンブリは、
前記カラム管の壁の開口部を貫通して延びる取り外し可能なポートと、
前記取り外し可能なポートからプラグの取り外しを容易にする、前記取り外し可能なポートの外側に延びる外側端を備える前記プラグと、
前記ポート内に前記プラグを固定する継手と
を含む、方法。
【請求項2】
前記ポートアセンブリを開く工程は、前記ポートアセンブリから前記継手を取り外す工程からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2容器は、前記第1容器と同一である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2容器は、前記第1容器とは異なる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2容器からメッシュを介して前記充填媒体を濾過して回収する工程をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記カラム内で前記充填媒体を懸濁する為に、十分な量及び体積で前記出口から前記クロマトグラフィカラムに空気をポンプで送り込む工程をさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記カラムの前記充填媒体は、5倍カラム体積以下の水溶液で20分以内に除去される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記充填媒体は、アガロース、シリカ、セラミック、又はアクリレートのポリマー又はセルロースをベースとする材料のうちの1つ以上からなる固定相粒子のスラリーを含んでなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
気体を気体源からポンプで前記チャンバー内に送り込んで前記ポートアセンブリから前記第2容器内に出すことにより、前記水溶液の流れと共に前記カラムから充填媒体を除去する工程をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記チャンバーを再度満たして残っている全ての前記充填媒体を懸濁する為に前記第1容器から前記水溶液をポンプで送り込む工程をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
気体を気体源からポンプで送り込む工程と、所望する量の前記充填媒体が前記第2容器の中に送られるまで、前記チャンバーを再度満たす為に溶液をポンプで送り込む工程と、を繰り返す工程をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第1端と第2端を有した円筒形状の壁からなるカラム管と、
前記カラム管の第1端の内部に配置された第1フローディストリビュータと前記カラム管の第2端の内部に配置された第2フローディストリビュータと、
前記第1フローディストリビュータと前記第2フローディストリビュータとが使用中に固定されている部分の間の前記カラム管の壁の開口部と、
前記開口部の内部に固定され、前記第1フローディストリビュータと前記第2フローディストリビュータとの間に形成されたチャンバー内の前記カラム管の内部から流体を除去できるように構成されたポートアセンブリであって、
前記カラム管の壁の前記開口部を貫通して延びる取り外し可能なポートと、
前記取り外し可能なポートからプラグの取り外しを容易にする、前記取り外し可能なポートの外側に延びる外側端を備える前記プラグと、
前記ポート内に前記プラグを固定する継手と
を備える前記ポートアセンブリと
からなる、クロマトグラフィカラム。
【請求項13】
前記継手は、前記カラム管の外側にある、請求項12に記載のクロマトグラフィカラム。
【請求項14】
前記ポートは、前記カラムの壁の前記開口部内に固定される、請求項12又は13に記載のクロマトグラフィカラム。
【請求項15】
前記ポートは、前記カラムの壁の内側表面に傾斜した外縁を有するフランジを備える、請求項12~14のいずれか一項に記載のクロマトグラフィカラム。
【請求項16】
前記ポートの前記フランジは、前記カラムの壁の内側表面を超えて6mm以下で突出する、請求項15に記載のクロマトグラフィカラム。
【請求項17】
前記ポートの前記フランジは、前記カラム内部の流体内に流体アクセスのない領域の形成を防止する、請求項15に記載のクロマトグラフィカラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クロマトグラフィカラムからカラム充填媒体を除去して回収する為の方法とシステムとに関する。
【背景技術】
【0002】
カラムクロマトグラフィは、充填媒体の固定「ベッド」が剛性管に入れられた分離及び/又は精製技術である。充填媒体は、固体(「固定相」)の粒子又は液体固定相でコーティングされた固体担体材料の粒子の形態である。いずれにせよ、充填媒体は、一般的にカラム管の内部容積を満たしている。
【0003】
分離クロマトグラフィでは、液体試料(「移動相」)がカラムを通過する際に、試料中の異なる化合物が固定相(例えば、充填媒体)と異なる様式で結びつき得る為、移動相に対して減速してカラムの中を異なるスピードで進む。したがって、固定相とより強く結びつく化合物は、より弱く結びつくものよりもカラムの中を緩慢に進む為、この速度差によって、化合物は、カラムを通過してカラムを出る際に互いに分離される。異なる結びつきを促進する固定相の特徴は、例えば、イオン電荷(イオン交換クロマトグラフィ)、疎水性(疎水性相互作用クロマトグラフィ)、及び多孔性(サイズ排除クロマトグラフィ)などである。
【0004】
さらに別の種類のカラムクロマトグラフィであるアフィニティクロマトグラフィでは、充填媒体は、液体試料中の1つ以上の所望する化合物又は分子に特異的に結合する結合剤、例えば抗原、抗体、又はリガンドを含む。したがって、液体試料が充填媒体を流れると、所望する化合物又は分子のみがカラムに残る。次に溶出液体を充填媒体に流して、充填媒体に付着した結合剤から所望する化合部物又は分子を分離するか、又は充填媒体から結合剤を分離する。いずれにせよ、所望する化合物又は分子は、カラムからすすぎ出されて溶出液体中に収集される。アフィニティクロマトグラフィは、多用途、例えば、核酸の精製、無細胞抽出物からのタンパク質精製、及び血液からの精製等に使用することができる。
【0005】
クロマトグラフィカラムの主な構成要素は、金属、ガラス、又は高剛性のプラスチック材料から形成されることが多いカラム又は管と、一対のフローディストリビュータとであり、フローディストリビュータは、一般的には、管の両端に挿入されて、両フローディストリビュータ間の管内に充填媒体が充填される空間又はチャンバーを形成する。
【0006】
現場における分離媒体で充填されたクロマトグラフィカラムは、通常、カラムの性能が失われた場合に、再生又は再処理する為に分離媒体を回収する目的で上部のフローアダプタの位置を調節したり取り外すことができる調節可能な上部ディストリビュータを有する。性能は、例えば、不注意で溶液で充たした分離カラムを乾燥状態でポンピングしたり又は処理サイクルを繰り返してポンピングをするなど、異常な工程を経たことで失われ、注入流が分離媒体を汚損する為に徐々に低下する。
【0007】
クロマトグラフィカラムは、開発及び商業的な生物的工程を用いる製造業の需要に基づいて予め充填されて使用される。これらのカラムは、フローディストリビュータがクロマトグラフィ管の内部で不可逆的に配置されるように形成され且つそのベッド高さは固定されている。予め充填されているカラムは、従来の現場では、使用が容易である点や経済的である点で優れているが、分離媒体を回収したり再処理することができない点が欠点である。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、2つのフローディストリビュータの間に配置されたクロマトグラフィカラムに充填媒体回収ポートを設けることによって、クロマトグラフィカラムの充填媒体を簡便かつ迅速に除去することができるという発見に少なくとも部分的に基づいている。加えて、充填媒体回収ポートの特別な設計を用いることによって、クロマトグラフィの流路の断絶やカラム内部におけるデッドゾーンの形成を防止することができる。
【0009】
この発見は、性能が失われた予め充填されているカラムから媒体を回収する工程は、分離媒体にダメージを与えたり汚染させたりすることのない方法で実施しなければならないという認識を含む。予め充填されているカラムに含まれる如何なるポートも、繰り返し使用した際に、クロマトグラフィの分離特性やカラムの衛生状態を維持する能力に影響を与えることがあってはならない。本願のシステム及び方法は、分離媒体を正常に且つ品質を低下させない形式で回収することができ、且つカラムの分離性能に影響を与えないこと、又はカラムの通常の使用時において不要な生物学的な汚染のリスクを増大させることのない充填済みクロマトグラフィカラムを提供する。
【0010】
したがって、本発明は、クロマトグラフィカラム、例えば、充填媒体を簡便に除去することができる予め充填された使い捨て可能なクロマトグラフィカラムについて説明する。第1の態様では、本発明は、例えば、生物学的製造工程での使用用途で出荷されて、生物学的製造工程でそれ以降に使用する為にレジンの適性を保持して回収することができる構造上の構成要素を備えた充填済みクロマトグラフィカラムを提供する。
【0011】
新しい設計には、カラム管と、特別に設計された充填媒体回収ポートと、2つのフローディストリビュータとが含まれ、フローディストリビュータは、例えば、金属、セラミック、又はポリプロピレンなどのプラスチックから形成され、それぞれは、金属又はポリプロピレンなどのプラスチックから形成されたメッシュであって超音波溶接などの溶接によってフローディストリビュータの一方の表面に固定されたメッシュを備える。フローディストリビュータは、ポリプロピレン/複合材料管などのカラム管の中に圧入、又は他の手段で固定され得る。フローディストリビュータは、液体を密封して保持して、管の内部に配置された後フローディストリビュータを固定し続けられるように十分に固定される。圧入することによって、標準的な長さを有する管を用いて様々なベッド高さを形成することができる。
【0012】
別の一般的な態様では、本発明は、本明細書で説明した充填済みクロマトグラフィカラムから充填媒体を回収する方法を提供する。方法は、水溶液の第1容器から、ポンプと、カラムの入口と出口とに管を取り付ける工程と、回収ポートアセンブリを開く工程と、チューブをポートアセンブリと第2容器に取り付ける工程と、第1容器からカラムの入口とカラムの出口を経てチャンバーの中に水溶液を送り込んでポートアセンブリを介して第2容器の中に排出することによってカラムから水溶液と共に充填媒体を取り除く工程と、を備える。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1容器と第2容器とは、同一の容器であるが、別の実施形態では、第2容器は、第1容器とは異なる。
方法は、必要な全体積を抑制し且つレジンスラリーの希釈を抑える為に通過溶液をリサイクルするシステムを形成する第2容器のメッシュを介して充填媒体を濾過して保持する工程をさらに含む。方法は、カラム内で充填媒体を混合するのに十分な量、体積、及び方法で、出口を介してクロマトグラフィカラムの中に空気を送り込んだり指向させたりすることをさらに含み得る。いくつかの実施例では、カラム内の充填媒体は、5倍カラム体積以下、例えば、4,3,2,1倍カラム体積以下の水溶液を用いて、20、10、5,3,2又は1分以下で、例えば2分で取り除かれる。いくつかの実施形態では、充填媒体は、アガロース、シリカ、セラミック、アクリレートのポリマー又はセルロースをベースとする材料のうちの任意の1つ以上からなる固定相粒子からなるスラリーを含む。
【0014】
方法は、気体源からチャンバー内に気体を送り込んでポートアセンブリを介して第2容器の中に排出することによって、水溶液の流れと共にカラムから充填媒体を除去する工程をさらに含む。いくつかの実施例では、方法は、チャンバーを再度満たして残っている全てのレジン粒子を懸濁する為に第1容器から水溶液を送り込む工程を含む。いくつかの実施形態では、方法には、気体源から気体を送り込む工程と第2容器内に所望する量のレジンが送られるまでチャンバーを再度満たすために溶液を送り込む工程を繰り返すことが含まれる。
【0015】
別の一般的な態様では、本発明は、第1端と第2端とを有する円筒壁からなるカラム管と、カラム管の第1端内部に配置された第1フローディストリビュータと、カラム管の第2端内部に配置された第2フローディストリビュータと、使用するときに第1ディストリビュータと第2ディストリビュータが固定されている部分の間にあるカラム管の壁にある開口部と、開口部内に固定されたポートアセンブリと、を含み、ポートアセンブリは、第1フローディストリビュータと第2フローディストリビュータの間に形成されたチャンバー内のカラム管の内部から流体を除去することができるクロマトグラフィカラムを提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、ポートアセンブリは、カラム管の外側に取り外し可能なサニタリー継手を備える。代替的に又は追加的に、ポートアセンブリは、カラムの壁の開口部内部に固定されたポートを備える。いくつかの実施例では、ポートは、チャンバー内部に配置されたポートの内側端にフランジを備え、フランジは、傾斜端を有する。例えば、ポートのフランジは、カラム壁の内側表面を超えて4~6mm以下、例えば、3又は2mm以下で突出しうる。一般に、ポートのフランジは、カラム内部の流体の流動性への影響を最小限にするように設計され、且つカラム内部に流体にデッドゾーンができないように構成されている。
【0017】
本明細書で使用されているように、「密封」及び類似の用語は、2つのチャンバー又は別のシステムの構成要素の結合又は接合が、最大約6.21×105Pa(90psi)の圧力下で結合又は接合部を通過して流体が漏れ無いことを意味する。
【0018】
「回収」又は「回収する」及び類似の用語は、ダメージを与えない方法でレジンをクロマトグラフィカラムから除去することができることを意味する。レジンを回収するのに使用されるポートのデザインは、流体動力学上及び無菌性/清潔性の観点の両方でカラムの性能を変えることがない。
【0019】
「レジン」、「分離媒体」、「クロマトグラフィ媒体」及び「媒体」は、全て、クロマトグラフィカラムを充填するのに使用される液体中に懸濁された粒子を指す。これらのレジンの例には、ガラス、プラスチック、セルロース、アガロース及びその他の物質で形成された材料が含まれる。レジンは、表面が粗い粒子又はビーズであってもよい。ビーズは、単分散性であるか、又は複数の寸法からなる集団であり且つ15~300マイクロメートルの異なる寸法であってよい。レジンは、注入流中のタンパク質や別の物質を分離する為に粒子への結合に影響を与える様々な置換基を含むように修飾することができる。置換基は、陽性又は陰性に帯電させたり、疎水性にしたり、及び特異的なアフィニティ分子(例えば、プロテインA)又はそれらの性質のうちの任意の1つ以上の組み合わせを備えたりすることのうちの少なくとも1つにすることができる。
【0020】
新規システムは、レジンにダメージを与えることなくレジンを効率的且つ迅速に取り除くことを可能にするポートを備える。ポートの重要な性質は、密封時に、最大約6.21×105Pa(90psi)の高圧下で密封可能なカラムにおいて、閉鎖チャンバーを維持できることである。加えて、ポートは、カラムチャンバーの中に延びてカラムが動作している間にクロマトグラフ中の物質流を乱すことが無いように設計されている。
【0021】
本発明は、標準的な生物的製造工程と互換性のある工程でカラムチャンバーからレジンを取り除くための方法も提供する。
この明細書で説明されているポートデザインは、簡単に使用することができ、且つカラムの性能に影響を与えることがなく、カラムが動作している間に標準的な方法を用いて簡単に清浄にして殺菌し得るように密封することができる。ポートが占めるカラム管の内壁の面積が小さいこと及びカラム管内へのポートの突出が最小限であることにより、カラムの性能は、悪影響を受けることなく、カラム管の内側のフランジとガスケットは、ポート周囲の流動性を良好にしてカラム管内部にデッドゾーンが形成されることを防止するように設計されている。加えて、ポートプラグのO-リングは、使用中にポート内部に微生物や汚染物が蓄積する可能性のあるデッドゾーンの形成を防止するように配置され、且つ設計される。プラグの接続部のガスケット、例えば、トリクランプ継手接合等のサニタリー接合部は、レジンを回収する為の流路を衛生的に保つことを可能にし、且つプラグのO-リングが壊れた場合の第2のシールとして機能する。
【0022】
新規のポートデザインは、多くの様々な種類の充填媒体の除去と回収を可能にし、多様な使用者によって使用されているレジン等の多くの異なる種類の充填媒体に適合する。カラムは、レジンを生物的生産工程で再利用する為にレジンの適性を保存する方法で回収する構造上の構成要素を含む。
【0023】
別途定義されていない場合は、この明細書で使用されている全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。この明細書で説明されているものと同一又は均等の方法及び材料は、本願発明の実施又は試験に使用することができるが、適する方法及び材料を以下で説明する。全ての文献、特許出願、特許、及びこの明細書で言及されている引例は、引用によりそのすべてを援用する。一致しない場合には、定義を含めて本明細書に従うものとする。加えて、材料、方法、実施例は、単なる例示であり、限定することを意図したものではない。
【0024】
本発明の別の要素及び有利点は、以下の詳細な説明及び請求項から明白である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】予め充填されるクロマトグラフィカラムを詳細に示す図。
【
図2】
図1のクロマトグラフィカラムを詳細に示す断面図。
【
図3A】充填媒体回収ポートアセンブリを備えるクロマトグラフィカラムを示す断面図。
【
図3B】
図3Aの充填媒体回収ポートアセンブリを備える45cmクロマトグラフィカラムの外観を示す図。
【
図3C】
図3Aの充填媒体回収ポートアセンブリを備える45cmクロマトグラフィカラムの外観を示す図。
【
図4】側断面から
図3Aの一部を拡大して示す図であり、クロマトグラフィカラムの側面に取り付けられた充填媒体回収ポートアセンブリを示す、拡大図。
【
図5】上側から横断してみた時の充填媒体回収ポートアセンブリを詳細に示す断面図。
【
図6】充填媒体回収ポートアセンブリの分解側面図。
【
図7】充填媒体回収ポートを介してクロマトグラフィカラムから充填媒体を回収する為のシステムの一実施形態の流路を示す図。
【
図8】
図7で示されているクロマトグラフィカラムシステムから充填媒体を回収するために使用される工程の一実施形態を示すフローチャート。
【
図9】充填媒体回収ポートアセンブリを介してクロマトグラフィカラムから充填媒体を回収するためのシステムの別の実施形態の流路を示すフローチャート。
【
図10】
図9に示されているようなクロマトグラフィカラムシステムから充填媒体を回収するのに使用される工程の別の実施形態を示すフローチャート。
【
図11】充填媒体回収ポートアセンブリを介してクロマトグラフィカラムから充填媒体を回収するためのシステムの別の実施形態を示すフローチャート。
【
図12】
図11で示されているようなクロマトグラフィカラムシステムから充填媒体を回収するために使用される工程の別の実施形態を示すフローチャート。
【
図13A】充填媒体回収ポートアセンブリの別の実施形態を示す部分図。
【
図13B】充填媒体回収ポートアセンブリの別の実施形態を示す部分図。
【
図13C】充填媒体回収ポートアセンブリの別の実施形態を示す部分図。
【
図13D】充填媒体回収ポートアセンブリの別の実施形態を示す部分図。
【
図13E】充填媒体回収ポートアセンブリの別の実施形態を示す部分図。
【
図13F】充填媒体回収ポートアセンブリの別の実施形態を示す部分図。
【
図14A】圧力テストのためのクロマトグラフィカラムシステムの構成要素を示す図。
【
図14B】圧力テストのためのクロマトグラフィカラムシステムの構成要素を示す図。
【
図14C】圧力テストのためのクロマトグラフィカラムシステムの構成要素を示す図。
【
図14D】圧力テストのためのクロマトグラフィカラムシステムの構成要素を示す図。
【
図15A】標準的な予め充填されているカラムの流動性を示すサイズ排除クロマトグラフィテストの例を示す図。
【
図15B】レジン回収ポートを有するカラムの流動性を示すサイズ排除クロマトグラフィテストの例を示す図。
【
図16A】標準的な予め充填されているカラムにおいてリン酸クリアランスによって計測されるデッドゾーンが無いことを示す図。
【
図16B】レジン回収ポートを有するカラムにおいてリン酸クリアランスによって計測されるデッドゾーンが無いことを示す図。
【
図17A】レジン回収の際に使用されるチューブアセンブリに適合するレジン回収ポートを備えるカラムを示す図。
【
図17B】レジン回収の際に使用されるチューブアセンブリに適合するレジン回収ポートを備えるカラムを示す図。
【
図17C】レジン回収の際に使用されるチューブアセンブリに適合するレジン回収ポートを備えるカラムを示す図。
【
図18A】ポートを有するカラムを通過する流体流のCFDモデルを示す図。
【
図18B】ポートを有するカラムを通過する流体流のCFDモデルを示す図。
【
図18C】ポートを有するカラムと有しないカラムとから流体を流出させる為に必要な体積の比較図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面の類似する参照番号は、類似の要素を示している。図面又は詳細な説明で示されている大きさはいずれも限定を意図したものではなく単なる例示である。
本発明は、特別に設計された充填媒体回収ポートを用いて予め充填されているクロマトグラフィカラムから充填媒体を除去し且つ回収するための新しい方法とシステムとについて説明する。クロマトグラフィカラムは、予め充填されている再利用可能又は使い捨て可能なクロマトグラフィカラムである。このようなカラムの使用者の中には、レジンなどの充填媒体が、使用後に回収することができない充填済みカラムを購入することをためらう者がいる。これは、各カラムに含まれるクロマトグラフィレジンの量が多い為に45cmや60cmカラム等の大きなカラムで最も顕著である。カラム性能が失われてレジンを回収することだけが唯一の対処法である場合には、簡便、迅速かつ衛生的な方法で充填媒体を除去できることにより経済的な損失を軽減することができるであろう。
【0027】
カラム管は、中空状且つ円筒形状の部材であり、一般には、第1端(例えば、上端)から第2端(例えば、下端)に、又は逆に第2端(例えば、下端)から第1端(例えば、上端)に流体(液体等)が流れることを許容する円筒である。管の内径は、管に流体を搬送したり管から流体を除去する為のフローディストリビュータを受承する寸法に形成され且つ構成される。様々なクロマトグラフィカラムの性能の専門性に基づいて、管は、様々な異なる寸法と構成とで形成されて、クロマトグラフィカラムのオプス(OPUS(登録商標))品目(レプリゲン コーポ ウォルマン,マサチューセッツ州(Repligen Corp.Waltham,MA))及び生剤用途に使用されるその他のカラムが含まれる。
【0028】
一般には、管は、約1.28×106パスカル(185psi)(約20,30,40,50,60,75,100,125,150,175,185psi)までの内圧に耐えつつ、システムの誘導された内部の運転圧力下で構造的な完全性を維持することができる寸法にされ且つ構成にされている。いくつかの実施形態では、管は、約10cm~約100cmの内径と約10cm~約100cmの長さとを有する円筒形状の部材である。管は、最初に所望する最終ベッド高さの約2倍になるように選択され、管の性質によって、カラム管内部に両フローディストリビュータが固定されると短く切断される。
【0029】
カラムは、ステンレス鋼などの金属、又はガラス又は剛性ブラスチック、例えば、プラスチック/熱可塑性プラスチック及び複合材料(例えば、ポリプロピレン(PP),ポリエチレン(PE),ポリアミド(様々なナイロンなど),アセタール,又はガラス繊維及び炭素繊維プラスチックなどのガラス充填又は炭素充填プラスチック)、又はエラストマー成分で全体的に形成し得る。カラムの設計では、カラムは、レジン等の様々な種類のクロマトグラフィ充填媒体で、0~50cmの間及びそれ以上の間の有限のベッド高さに充填し得る。内径は、限定ではないが、例えば、10,20,30,40,50,60cm又はそれ以上、80,90,100cm,又はそれ以上にすることができる。
【0030】
上記カラムに使用されるフローディストリビュータは、円盤の中に円盤を通過して液体を流すことができる1つ以上の入口又は出口開口部を備える円筒形状の円盤状の形状を有する。加えて、フローディストリビュータは、フローディストリビュータ円盤の充填媒体側に取り付けられるベッド担体、スクリーン、及びフィルタのうちの少なくともいずれか1つを備えることができる。カラムは、フローディストリビュータとカラム管の内壁との間にO-リングを備えてもよいし、又は備えなくともよい。フローディストリビュータの流路は、標準的な用途及び既知の設計に従って設計することができ、フローディストリビュータ自体は、例えば、管と同一又は類似するプラスチック材料で形成することができるが、金属、セラミック、及びカラムを通過して流される液体及び試薬に対して不活性であるその他の剛性材料等で製造することもできる。
【0031】
クロマトグラフィカラム
図1と
図2に示されているように、クトマトグラフィカラム50は、様々な部品と接続具とを含む。接続具は、流体を搬送する為、又は流体をフローディストリビュータ又はフローディストリビュータが配置されている管から液体を除去する為にフローディストリビュータに締付け又は固定されている機械的な付属品である。流体を搬送する為に、接続具は、その中央軸に沿って接続具を貫通して形成された流体搬送孔を備える。接続具は、フローディストリビュータの接続孔に受承されて接続具を保持する1つ以上の要素をさらに備える。
図2に示されているように、この実施形態では、接続具38Aと38Bとは、フローディストリビュータ24Aと24Bの接続孔に係合する為にねじ切り端40を有する。
【0032】
接続具38Aと38Bとは、接続孔の内部で接続具38A(又は38B)を回転して固定する為の器具(トルクレンチ等)によって把持し得るナット部42も備える。いくつかの実施形態では、接続具38Aと38Bとは、別の種類の連結機構、例えば、接着剤、溶接、バイオネット、又はルアー接続、又はその他の十分な接続技術等も含む。
【0033】
入口接続具38Aは、フローディストリビュータ24Aの上部に配置されて、接続具のねじ切り端の対向端に接続要素を備えることができる。接続要素、例えばホース継手等により、簡便な方法でホース又はチューブを接続具に結合することが可能である。この実施形態では、入口接続具38Aは、衛生的な結合形式(例えば、トリクランプ継手接続、又はカムロック)であるホース継手等のホース継手に受承される寸法に形成され且つ構成された凹部44を形成する。
【0034】
出口接続具38Bは、フローディストリビュータ24Bの下部に接続されて、入口接続具と同一又は異なる形式の接続を備えることができる。この例では、出口接続具38Bは、遠隔性迅速離脱性出口接続具48に出口接続具38Bを油圧式に接続する為にホース46に固定されている。遠隔性迅速離脱性出口接続具48は、使用者が出口接続具38Bよりもより簡便にアクセスできる部分に配置又は設置することができる。
【0035】
クロマトグラフィカラムの構成要素(例えば、カラム管20、フローディストリビュータ24A,24B、接続具38A,38B、及びその他の構成要素)は、任意の構造的又は化学的に適した材料で形成し得る。例えば、構成要素は、熱可塑性プラスチック(例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリル系、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン(PP),ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTEF)、その他の熱可塑性プラスチック、又は複合材料)と熱硬化性プラスチック(例えば、エポキシ樹脂及び繊維強化性型プラスチック)等の様々なプラスチックで形成し得る。材料の選択の検討では、材料の特別な機械特性と材料がシステムの誘導された内部動作圧に耐えられるか否か考慮される。
【0036】
ある特別な実施形態では、カラム管は、有効誘導円周応力を付与する十分な弾性を備える金属、例えばステンレス鋼、ベルリウム銅合金、チタン合金、ニッケル合金、コバルトクロム、他の種類の金属、又は上記又はその他の金属の合金で製造することができる。金属又は他の材料を使用することはできるが、プラスチック材料からチューブを形成することによって、低コストであり、且つ、ある場合には、使い捨て可能なクロマトグラフィカラムを形成することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、構成要素(例えば、管、フローディストリビュータ、及び接続具)の一部、ほとんど、又は全部は、熱可塑性プラスチック及びポリオレフィン材料(例えば、ポリプロピレン(PP),ポリエチレン(PE),ポリアミド、アセタール、又はガラス繊維及び炭素繊維プラスチック等のガラス充填又は炭素充填プラスチック)のうちの少なくともいずれか一つで形成される。管及びフローディストリビュータ等の構成要素のいくつかは、同一種類の熱可塑性プラスチックで形成することができる為、互いに溶接することができる。例えば、ポリプロピレン又は同等のポリマーを使用することができる。クロマトグラフィカラムの構成要素は、当該分野で既知の製造工程、例えば成型、鋳造、機械加工、複合材料テープ貼付、又はその他の方法によって形成し得る。
【0038】
クロマトグラフィカラム50は、底部、例えば、一般に鉛直姿勢に管20とその他の構成要素を適切に支持し且つ位置決めする為の寸法に形成され且つ構成された底部端キャップ52をさらに備える。底部52は、管20の一部(例えば、下部)を受承して固定する為の様々な要素(例えば、孔、又は凹部)を備え得る。下部のフローディストリビュータ24Bは、カラムを充填する為に使用される全スラリーを収容するのに十分な容積を許容する深さまで管の底部に挿入される。この例では、下部のフローディストリビュータ24Bは、管の端部から8cm以上9cm未満の深さに挿入される。これは、下部のフローディストリビュータを
図3Aに示されているようにポート100アセンブリに最大限近接して配置して、媒体又はスラリーを完全に除去すること(排出)を容易にする為である。目標は、排出の為にポートアセンブリ100を下部のフローディストリビュータ24Bの面に近づけることであり、且つポートアセンブリ100を確実に軸方向又は径方向の流路から外すことである。底部52の下面から延びる足状の突起は、クロマトグラフィカラム50に十分な程度の支持表面を付与する為に含めることができる。下端キャップ又は底部52は、簡単に持ち上げたり運んだりすることができないほどカラムの直径が大きい場合にキャスター又は車輪を備えることもできる。底部52は、任意の構造的に適切な材料、例えば、金属、プラスチック、又は複合材料等から形成される。底部は、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS),ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP)、又は、例えば、ガラス繊維及び炭素繊維プラスチック等のガラス充填又は炭素充填プラスチック、複合PPから形成することができる。いくつかの場合には、底部は、安定性を増大させる為に、滑り止め材料又は要素(例えば、軟質ゴムの足状の突起)を備える。
【0039】
クロマトグラフィカラム50は、管20と上部ディストリビュータ24Aを封止する上端キャップ54をさらに備えることができる。上端キャップ54は、管20の一部を受承して固定する要素(例えば、孔、凹部、又は把持要素)を備える。上端キャップ54は、入口接続具38Aと遠隔性迅離脱性出口接続具48とをそれぞれ受承する寸法に形成され且つ構成された入口接続孔56と出口接続孔58とを備える。上端キャップ54は、クロマトグラフィカラム50を持ち上げて運搬する為、又は一体型キャスターを有する又は回転カート又は台車の上に設置されたより大きなカラムを動かしたり又は方向を変えたりする為に使用される1つ以上のハンドル60を備える。上部キャップ54は、任意の構造的に適切な材料、例えば、ハンドルで持ち上げた際にクロマトグラフィカラムの重量を支持することができる金属、プラスチック、又は複合材料などで形成し得る。この例では、上部キャップ54は、アクリロニトリルブタジエンスチレン,ポリエチレン,ポリプロピレン、又は、ガラス繊維プラスチック等のガラス充填プラスチックで形成される。
【0040】
覆い又はサイドガード部材62も、更に含まれる。覆い部材62は、底部52から上端キャップ54まで延びてクロマトグラフィカラム50の内部構成要素の一部(出口接続具38Bを遠隔性出口接続具48に接続するホース46等)を覆う寸法に形成され且つ構成される。覆い62は、金属、プラスチック又は複合材料等の任意の好適な材料で形成し得る。
【0041】
上部及び下部フローディストリビュータ24A,24Bは、カラムを製造して充填する間に管20の上部と下部の中に設置されて(例えば、圧入等)結合又は結合部材(例えば、管20とフローディストリビュータ24A,24B)を壊す以外に簡単に分離できない永久的な結合で固定される。
【0042】
上端では、カラム上部でフローディストリビュータ24Aに導入された入口接続具38Aが追加的な上端キャップ54の入口接続孔56を貫通するように、追加のキャップ(例えば、上端キャップ54)が管20に任意に取り付けられて、固定されて、配置される。主に審美的要素であるそのような任意の上端キャップ54は、締付具、接着剤、管と上端キャップ間の摩擦結合、又はその他の機構等、様々な結合機構を用いて管20に固定し得る。
【0043】
下端では、管20は、任意に下端キャップ(底部)52に取り付けられて固定される。底部52は、締付具、接着剤、管と上端キャップ間の摩擦結合、又はその他の機構等、様々な機構を用いて管20に固定し得る。任意の底部52が使用された場合には、管20の下部でフローディストリビュータ24Bに設置された出口接続具38Bは、任意の底部52の腔所の中に延び、下部フローディストリビュータ24Bから出口接続具38Bに接続されたホース46は、管20の周囲の外側に向かって外方に指向される。図に示されているように、ホース46は、任意の底部52から始まり、カラム50の上部又はその近くに固定された遠隔性迅速離脱性出口接続具48に連結する為に、管の側面に沿って上行する。ホース46を用いること及びカラム50の上部近くに遠隔性出口接続具48を配置することによって、使用者は、管20の下方にアクセスする必要がなくなり、その結果、クロマトグラフィカラム50を迅速に使用することができる。
【0044】
本明細書に記載されているクロマトグラフィカラム50の管は、最終使用者によって特異化されたカラムクロマトグラフィで使用される任意の固定相媒体材料で充填することができる。充填媒体材料の多様性は、基本粒子の組成とその化学的な機能(例えば、アフィニティ、イオン交換、及び疎水性相互作用など)の双方に亘る。充填媒体材料には、溶出溶剤に添加された固定相粒子からなるスラリーが含まれ得る。充填媒体は、様々な粒子寸法のアガロース、シリカ、セラミック、又はアクリレートからなるポリマー又はセルロースをベースとする材料を含み得る。いくつかの実施形態では、充填媒体は、イオン交換基、疎水性と帯電性を有する多機能官能基、金属キレート基、疎水性官能基、又は免疫グロブリンIgGに結合可能なスタフィロコッカス(SpA)ポリペプチドのうちの1つ以上で活性化し得る。溶出液には、脱イオン水、エタノール、アセトンなどの溶液のうちの1つ以上が含まれ得る。
【0045】
充填媒体回収ポート
図3A~3Cを参照する。クロマトグラフィカラム50は、クロマトグラフィカラム50の内部を囲む平滑な円筒形状の外殻又は管20を備える。上部フローディストリビュータ24Aと下部フローディストリビュータ24Bとの間のある高さに管20に貫通孔22があり、回収ポートアセンブリ100が当該貫通孔22に配置される。
図3A~3Cでは、ポートアセンブリ100は、(45cmカラムの)チューブの底部から約21cmの高さのところに示されているが、この高さは、21cm以下であってもよい。目標は、ポートアセンブリ100を下部フローディストリビュータ24Bの近傍に設置することである。
【0046】
図4は、
図3Aの丸で囲んだ画像部分にあるポートアセンブリ100の拡大側面図を示す。
図4は、管20の壁に埋め込まれたポートアセンブリ100を示す。このポートアセンブリ100は、管20の壁に埋め込まれたポート101と、壁から突出した一端(サニタリー継手106を備えるトリクランプ継手)と、壁の内側と管20の内側に(ガスケット102を備える)内部端102とを備える。
【0047】
図5と
図6とは、その内部端において接続具よりも大きな外径を有する、円筒形状のポート101の傾斜フランジ110(
図5に最もよく示されている)を含むポートアセンブリ100を示す。このポート101は、ポリプロピレン等の剛性プラスチックで、機械加工し得る。ポート101の本体は、接続具、例えばトリクランプ継手接合体、の端部からフランジ110までねじ込まれる。
図5に示されているように、フランジ110は、カラムの充填媒体ベッド内部に侵入する程度を最小限にするべく傾斜されており、この傾斜により、カラム管内部の液体は、大きな渦電流を生成することなくポートのそばを滑らかに流れる。
【0048】
図4,5,6に示されているように、ガスケット102、例えばシリコンはとめガスケットが、フランジ110と管20の壁の間に挟まれるようにポート101の本体の周囲に配置される。
【0049】
ポート101は、内部から管20の機械成形された貫通孔22を貫通して挿入される。次に、
図5,6に示されているように、ワッシャ104、例えば、ポリプロピレン又はアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)ワッシャが、貫通孔22を貫通してカラム管20の外部に突き出したポート101の本体上に配置される。次に、ポートアセンブリ100を管20の壁に固定する為に、同じくポリプロプレン又はアクリロニトリルブタジエンスチレンで形成し得るポートナット103が、ポート101の本体上にねじ込まれて締め付けられる。
【0050】
ポート101は、その直径がポートの貫通孔の大きさに一致するように減じられて外部端で端部キャップの大きさに一致するようにポリプロピレン又はその他の剛性ポラスチック等のプラスチックから機械加工されたプラグ105で密封される。溝111は、例えばシリコンで形成されたプラグO-リング108用にトリクランプ継手端に対向するプラグ105の端部に機械成形される。このO-リングは、きれいにすることが困難になる可能性のある領域(例えば、デッドゾーン)を形成に繋がる可能性のある、プラグの内側端からポートの開口部への充填媒体の漏れを防止する。
【0051】
プラグの端部は、ガスケット、例えばシリコン又はエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ガスケット107を用いて、ポート101の外側端で封止される。継手106、例えば、ポリプロピレンクランプ(例えば、1.5”サニシュアクランプ(SaniSure(登録商標))クランプ)は、圧力下でプラグ105がポート101から脱落することを防止する為に、ポート101の接続体にプラグチューブアダプタ105を密封するために使用される。一般に、クロマトグラフィカラム内部の任意の流体に接する全ての材料は、USPクラスIVでなければならない。
【0052】
ポートアセンブリ100は、クロマトグラフィカラム管20の側面の内部に埋め込まれた際に、カラム内部の流体流内へのポートの侵入が最小限になるように設計される。流体流内部へのポートの突出を最小限にすることによって、流体がカラム内部に沿って流れる際にポートによって生成される渦を抑制する。
図5に示されているように、突出は、6mm以下であるが、それよりも少ない又は多い突出も可能である。例えば、クロマトグラフィカラム管20内部へのポートの突出は、8mm以下又は6mm以下、例えば4mm以下又は3mm以下であってもよい。
【0053】
ポートアセンブリ100は、カラムの内部ダイナミクスに影響を与えることがないように設計される。フランジ110及びガスケット102は、ポートアセンブリ100の径方向の設置面積を、例えば、径方向の厚みで5mm以下、又は直径の1.0%以下に減じる為に、厚みが最小限にされている。フローディストリビュータ24A,24Bは、カラム内部に媒体を収容する為に、その面に超音波溶接された有孔性メッシュを備える。メッシュは、フローディストリビュータ24Bの外縁から内側に短い距離、例えば5mmに溶接される為、ポートアセンブリ100は、カラム内部に5.0mm以上突出することはなく、またディストリビュータ24Bの外縁に配置される為、カラム内部の流体のダイナミクスへの影響は、最小限になるであろう。フランジ110の形状も層流を促進するようにされる。流体が滑らかにポートアセンブリ100を横断して通過できるように、フランジ110の外縁には、面取り又は傾斜された部分が形成される。
【0054】
これに加えて、ポートアセンブリ100の設計には、流体流に提示されるフランジ110を傾斜形状にして、カラム内部のポートの形状をなだらかにすることが含まれる。このなだらかな形状は、カラム内部に所望する層流(例えば、乱流や渦流の傾向のない流れ等)を維持することに寄与する。なだらかな形状によって、確実に、カラム内部の流体がバクテリアの増殖を許容する可能性のある「デッドゾーン」(例えば、停滞部位、又は流速ゼロの部位)を形成しないようにする。
【0055】
充填媒体を除去する方法と回収する方法
ポートアセンブリ100は、使用が容易である。クロマトグラフィカラム50の通常の使用時には、継手106が配置され、クロマトグラフィカラム50の内部は、ポートアセンブリ100を通じてチューブ20の外部に連通していない。
図7に関して、使用者は、レジンなどの充填媒体をクロマトグラフィカラム50から除去したい場合は、ポンプ130(例えば、陽性置換ポンプ)を、圧ライン132を介してクロマトグラフィカラム50のカラム入口接続具38Aとカラム出口接続具38B(通常、クロマトグラフフィカラム50を運転している間には使用されている)の双方に取り付ける。その後、使用者は、サニタリー継手106とプラグ105とをポートアセンブリ100から外して、レジンを回収する為のチューブ136を取り付けることができる。チューブ136は、レジン回収タンク120の入口に取り付けられる。
【0056】
ポンプ130は、緩衝液(例えば、水)をクロマトグラフィカラム50の中に送り込んで、圧力下でレジン回収ポートアセンブリ100からレジン回収タンク120の中にレジンを流出させる。
図7に示されているように、緩衝液は、クロマトグラフィカラム50を上と下から同時に洗い出す為に、ポンプ130によって送り込まれて、クロマトグラフィカラム50内の液体を唯一の可能な流路に従って強制的にポートアセンブリ100の外に出す。このポンプによる方法は、例えば5,10,15,20,25又は30リットル/分と速い為、充填カラムの完全性や機能を失わせることなく分単位でカラムを空にすることができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、クロマトグラフィカラム50から使用済みのレジンを最大100%回復させることができる。クロマトグラフィカラム50の洗い出しが完了したら、レジンは、メッシュ122を用いて回収されてレジン回収タンク120から取り出すことができる。メッシュは、回収タンク120の内部、又はその入口に配置することができる。この段階で、レジンは、再利用可能である。
【0058】
いくつかの実施形態では、レジンのクロマトグラフィカラム50を空にする為に使用される緩衝液(排水等)の体積は、緩衝液をリサイクルすることによって抑えることができる。レジンがメッシュ122を介して濾過されると、濾過された水溶性緩衝液は、再びレジン回収タンク120の出口とポンプ130とを介してクロマトグラフィカラム50に戻されて、クロマトグラフィカラム50に還流させられ得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、水溶性緩衝液だけでなく、空気も下部出口接続具38Bからクロマトグラフィカラム50の中に導入される。その結果、泡が形成されて、クロマトグラフカラム50を通過して上昇してレジンを攪拌する為、カラムの底部からの流体の搬送を促進し得る。この技術により、この方法の効率性と速度を向上させることができる。
【0060】
ポートアセンブリ100を介してクロマトグラフィカラム50からレジンを除去する方法の工程が
図8のフローチャートに示されている。工程200では、レジンの回収を始める準備ができたら、使用者は、水溶液の容器から、ポンプ130の後で分岐してカラムの入口接続具38Aと出口接続具38Bとに供給ラインを連結するチューブ132を備えるポンプ130に、チューブを配管する。次に、工程210で、使用者は、ポートアセンブリ100を露出させる為に、もしある場合には、カラムから保護サイドガード62を取り外す。工程220では、使用者は、サニタリー継手106を取り外す。工程230では、使用者は、ポートアセンブリからチューブ136を配管して、メッシュ122でレジンを捕捉する為に水溶液の容器(回収タンク120等)にチューブ136を迂回させる。工程240では、使用者は、レジンが取り除かれてタンク内に回収されるまで、回収タンク120からカラム内に緩衝液をポンプして送る。
【0061】
図9に模式的に示されている代替的な実施形態では、緩衝液の供給することとレジンを回収することの双方で回収タンク120を使用する代わりに、回収タンク120はクロマトグラフィカラム50から取り出したレジンを回収する為だけに使用されて、クロマトグラフィカラム50からレジンを取り除く為の緩衝液を供給する為には貯留タンク140が使用される。この工程は、上述の実施形態の工程と似ているが、緩衝液(例えば、水)は、回収タンク120とクロマトグラフィカラム50を通って還流されることはなく、その代わり、緩衝液(例えば、水)は、溶液タンク140からポンプ130の働きによって吸引ライン134と圧力ライン132とを通ってクロマトグラフィカラム50の中に搬送された後ポートアセンブリ100を介してチューブ136に沿って外に出されて回収タンク120に回収される。
【0062】
図9に示されている構成を用いてポートアセンブリ100を介してクロマトグラフィカラム50からレジンを取り除く工程は、
図10のフローチャートに示されている。工程300では、使用者は、レジンの回収の準備ができたら、水溶液の容器(例えば、貯留タンク140)から、ポンプの後で分岐してカラムの入口ポート38Aと出口ポート38Bとに供給ラインを連結するチューブ132を備えるポンプ130に、チューブを配管する。次に、工程310では、使用者は、ポートアセンブリ100を露出させる為に、もしある場合は、保護サイドガイド62を取り外す。工程320では、使用者は、サニタリー継手106を取り外す。工程335では、使用者は、ポートアセンブリからチューブ136をつないで、十分な寸法で形成された回収タンク120(例えば、クロマトグラフィカラム50の回収した内容物とカラムを洗い流すのに必要な緩衝液を収容するのに十分な容積を有する回収タンク120)にチューブ136を迂回させる。工程230では、使用者は、レジンが、取り除かれて回収タンク120の中に回収されるまで貯留タンク140から緩衝液をポンプで送る。
【0063】
図11に模式的に示されている別の実施形態では、クロマトグラフィカラム50からレジンを除去する為に、緩衝液を供給する貯留タンク140からの緩衝液と空気源150からの空気の双方が使用される。回収タンク120は、クロマトグラフィカラム50から取り出されたレジンを回収する為に使用される。
【0064】
工程は、上述した工程と同様であり、緩衝液は、ポンプ130の働きで貯留タンク140から吸引ライン134と圧力ライン132に沿ってクロマトグラフィカラム50の中に搬送された後、ポートアセンブリ100を通過してチューブ136に沿って外に出されて回収タンク120に回収される。これに加えて、空気又はその他の無菌ガスが、空気源150から供給されて、チューブ152を介してクロマトグラフィカラム50(例えば、カラム出口ポート38B)に搬送される。空気が、カラムの中に送り込まれると、タンク内に残っている緩衝液とレジンの両方がポートアセンブリ100を通過してチューブ136に沿って外に出されて回収タンク120に回収される。所望の場合には、さらなる緩衝液が、クロマトグラフィカラム50を満たすために、貯留タンク140から吸引ライン134と圧力ライン132に沿ってポンプで送り込まれて空気の流れによって乱されたカラム内の微粒子を懸濁する。満たされたら、空気は空気源150から再度ポンプにより送り込まれて、緩衝液とレジンは、強制的にポートアセンブリ100の外にチューブ136に沿って外に出されて回収タンク120に回収される。緩衝液でカラム50を満たして空気でカラム50を排気するこれらの工程は、所望により繰り返すことができる。
【0065】
空気源150から空気は、入口38Aと出口38Bの双方を介して同時にカラム50内に流すことができる。この空気は、各フローディストリビュータ24Aと24Bの中央の孔を通って進行してカラムの中に入る。空気は、次に、以前にポンプで送り込まれた流体と、媒体とを含むチャンバー内部で泡を生じる。泡によって、充填ベッドは乱され、媒体は溶液と混合される為、媒体はサイドポート100から出やすくなる。空気を入れることによってカラム内で攪拌混合してカラム内の粒子と液体の混合を促進することができる。
【0066】
図11に示されている実施形態を用いてポートアセンブリ100を介してクロマトグラフィカラム50からレジンを取り除く工程は、
図12のフローチャートに示されている。工程400では、使用者は、水溶液の容器(例えば、貯留タンク140)から、レジンの回収を始める準備ができたら、ポンプの後で分岐して供給ラインを入口ポート38Aと出口ポート38Bとに連結するチューブ132を備えるポンプ130にチューブを配管する。使用者は、次に、工程410で、ポートアセンブリ100を露出させるために、もしある場合には、カラムから保護サイドガード62を取り外す。工程420では、使用者は、サニタリー継手106を取り外す。工程435では、使用者は、ポートアセンブリからチューブ136を配管して、十分な寸法で形成された回収タンク120(例えば、クロマトグラフィカラム50の回収された内容物とカラムを洗い流すのに必要な緩衝液とを収容するのに十分な大きさの体積を備える回収タンク120)にチューブ136を迂回させる。工程440では、使用者は、レジンが取り除かれて回収タンク120内に回収されるまで貯留タンク140からカラムの中に緩衝液をポンプで送る。
【0067】
次に、工程445では、例えば、空気のジェットとして表現されているように、使用者は、空気源150から空気をカラムの中にポンプして送る。空気は、タンク内の媒体を乱して、工程440でカラム内にポンプで送り込まれた溶液により形成された孔を通過して移動する。空気が送り込まれたら、媒体は、空気が回収タンクに搬送されるまで、ポートを通って外に押し出される。次に、工程450では、ポートの流体路は、閉鎖されて(例えば、バルブで)、カラムは、貯留タンクからの溶液で満たされる。工程455では、満たすことによってカラム内に残っている媒体が再懸濁されたら、ポートが開放されて空気が再度カラムにポンプで送られ、媒体は、ポートを通って外に出される。工程460で回収タンク内のレジンが所望の回収量に達したら(様々な検出器及び診断によって計測される)、工程470において、その工程は、終了される。所望の量に達していない場合には、その後、工程450が繰り返されて、カラムを空気で還流する工程455の後、カラムは媒体で充たされる。工程450と工程455とは、所望の量に達するまで(工程460)繰り返される。いくつかの実施形態では、回収タンク120内のレジンの量は、所望の量に達した時を決定する為に計測される。いくつかの実施形態では、工程450と工程455の反復数(例えば、2回反復、3回反復)、又は使用されたカラム体積の数(例えば、2倍カラム体積、3倍カラム体積)で所望の量が到達した否かが判断される。
【0068】
充填媒体を除去し且つ回収するための別の設計
いくつかの実施形態では、入口/回収ポートを組み合わせることが可能である。ポートは、中央に機械成形された貫通孔を有する再設計されたフローディストリビュータに設けられる。
図13Bに示されているように、ポートが最大限に下方に設置された場合には、流体は、カラムが動作している間のみメッシュを介して押される。レジンの回収は、フローディストリビュータの貫通孔を露出させるために、ポートを後退することによって実施される。これによりレジンは、メッシュを通過することができる。次に、液体が、カラム出口を通過してポンプで送られ、レジンは、後退させた入口ポートを介してカラムの外に流出する。(
図13Cに示されているレジン回収装置)。
【0069】
カラムに対して非破壊的であり且つレジンの汚染を防止するレジンを取り除く別の手段には、フローディストリビュータに取り外し可能なプラグが含まれる(
図13Aに示されているように)。このプラグは、上部又は下部フローディストリビュータに設置し得る。液体は、カラムの入口及び出口のうちの少なくともいずれか一方を通過してポンプで送られ、レジンはポートの外に流し出される。
【0070】
実施例
以下の実施例は、本明細書で説明したシステムと方法の例示であって限定ではない。
実施例1-サイドポートを備えた圧力テストアセンブリ
図14A~Dは、圧力がテストされる孔とサイドポートとを備えるカラムデザインに含まれる構成要素の詳細を示す。下部フローディストリビュータ24Bを、管の中に管の底からフローディストリビュータの面まで計測して9.0mmのところに挿入してアセンブリを形成し、管の側壁にポートを形成した。下部フローディストリビュータは、接着剤を用いて、その壁に取り付けた3つの接着ウェッジで管に取り付けた。
【0071】
上部フローディストリビュータ24Aを管に挿入して、アセンブリを90PSIに加圧した。このテストによって、カラムとサイドポートが一体化していること、及びこのアセンブリの最大の運転圧である45PSIを超えて2倍の安全率(FOS)まで圧力を負荷できることがわかった。
【0072】
実施例2-ポートを具備する45cmカラムとポートを具備しない45cmカラムの流体ダイナミクスの数値シミュレーション
コンピュータ流体力学(CFD)を用いて、側壁にポートを具備するカラムと具備しないカラムの双方の流体流をシミュレーションした。45cmカラムは、この用途においては、最も悪い事例であると考えられた。なぜなら、45cmカラムは、60cmカラムに比べて内径が小さく、内径のより大きな部分をポートが占める為である。これは、45cmカラムでは、ポートが、流体路のより大きな部分に影響を与える可能性があるということを意味する。
【0073】
モデルは、カラムの体積を軸対称であると仮定して、体積を1/2に割って4,516,230個のセルに分割した。液体は、上部のメッシュを通過して入って下部のメッシュから外に出ると仮定した。ベッドは、32.82L(20cmのベッド高さ)の体積の有孔質媒体とし、カラムを通過する流速は、定常状態で100cm/hr(センチメートル/時間)であるとした。このシミュレーションでは、濃度が1からゼロまでカラム内の液体が交換されるのに必要とされる時間を観察した。これは、通常のカラム操作の典型である。
【0074】
図18A,18Bは、カラム空間全体における局所的な流速を示す。このテストでは、カラムを通過する流速を100cm/hrと仮定した。
図18Aは、カラムの断面で流速を示したものである。
図18Bは、カラムの内側でポート周囲の2つの異なる鉛直断面と水平断面とで、流速の詳細を示す。
図18Cは、カラムを洗い流すのに要したカラム体積に対するカラム内の流体の体積比、つまり内部の流体濃度が1から0に変化する為の体積変化量(この場合では、20cmのベッド高さと45cmの直径)を示す対数グラフである。この事例では、濃度は1/100に減少した。この結果は、ポートを具備しないカラムと比べて、レジン回収ポートがカラムの浄化に何ら悪影響を与えないことを示している。
【0075】
ポートは、「栓流(plug flow)」を妨げない為に意図的に平坦をなすように設計されている。カラム内の流体流への影響を小さくするために、ポートの内径周囲のフランジとガスケットに傾斜部が追加されている。
【0076】
実施例3-ポートを具備するカラムとポートを具備しないカラムの流動性
変更を加えていないカラムに比べて、ポートのデザインとカラムチューブ内部での配置によって、流動性とクロマトグラフィ性能は変化しなかった。これは、標準的な充填カラムの効率テスト方法、つまり理論段と非対称性を決定することにより示された。カラムの性能をさらに確認する為に分子量マーカーを用いてサイズ排除能テストも行った。内径45cmと高さ20cmを有する、充填ポートを具備するオプス(OPUS(登録商標))カラムと充填ポートを具備しないオプス(OPUS(登録商標))カラムに、セファロース(Sepharose(登録商標))6FFレジンを充填した。効率テストは、1%ベッド体積の2%アセトン水溶液を注入することにより行った。移動相は、0.1MNaClからなり、直線速度100cm/hrで実施した。
【0077】
【表1】
サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)の分子量マーカーとして、高分子量デキストラン(ブルーデキストラン(BlueDextran)-シグマカタログ番号D5751)と、牛血清アルブミン(BSA)と、アセトンとを用いた。デキストランは、排除される割合を示し、BSAは、部分的に含まれる割合を示し、アセトンは完全に含まれる体積を示す。それぞれ、ベッド体積の1%のリン酸緩衝生理食塩水又は水を注入して、30cm/hrの直線速度で流出した。
図15Aは、標準的なデザインのカラムのサイズ排除クロマトグラフィの流出プロフィルを示す。流出ピークの分解能は、以下の表2に示されている。
【0078】
【表2】
図15Bと以下の表3とは、側面に回収ポートを具備するカラムのサイズ排除クロマトグラフィの結果である。表3は、側面にレジン回収ポートを具備したOPUSカラムのサイズ排除クロマトグラフィのプロフィルから計算した分子量マーカー間の分解能を示す。
【0079】
【表3】
1.5より大きな分解能は、ベースライン分解能であると考えられ、2つのピーク間の分離がベースライン程度であることを意味している。分解能は、回収カラムのサイドポートにより悪影響を受けていなかった。
【0080】
実施例4-リン酸クリアランスにより計測したデッドゾーンの欠如
充填済みカラムの衛生的なデザインは、非常に重要な特徴である。この実験により、カラム管内の回収ポートのデザインや配置が、分子、化学物質、微生物が捕捉されて時間をかけて侵出可能にするデッドゾーンを生成しないことが確認できた。この効果は、トレーサー分子として無機リン酸を用いて調べた。充填カラムを具備したOPUSカラムと具備しないOPUSカラムのそれぞれに、内径45cmとベッド高さ20cmで、セファロース6ファーストフロー(登録商標)レジン(Sepharose6FastFlow)(ジーイーヘルスケア、GE Health care)を充填した。
【0081】
この実験では、OPUSカラムを2~3倍のカラム体積の水を用いて流速100cm/hrで洗い流した。次に、カラムに、1カラム体積の1Mリン酸ナトリウム(Na3PO4)を流した。カラムにリン酸液を流して還流する間に0.5~1カラム体積ごとにサンプルを収集した。次に、カラムを水で洗い流した。カラムを洗い流した水のサンプルは、最初の2.5倍カラム体積について0.2カラム毎に採取した。サンプルは、合計6倍カラム体積について、0.5カラム体積ごとに採取した。リン酸アッセイの工程は、(必要でれば)サンプルを希釈して、250マイクロモーラーから1マイクロモーラーの範囲のリン酸の標準曲線を有する96ウェルプレートの各ウェルに100マイクロリットルづつ加えた。100マイクロリットルの試薬(アッセイ試薬は、2:1:1:1の体積比で、水と6規定の硫酸と2.5%アンモニウムモリブデン酸塩と10%アスコルビン酸からなる)を加えて60℃で10分間インキュベートした。リン酸アッセイの検出限界は1マイクロモルである。
【0082】
図16Aは、2.5倍カラム体積流した後の低分子(例えば、リン酸)クリアランスで6対数以上減少した、変更を加えていないカラムデザインを用いて行ったコントロール実験の結果を示す。
図16Bは、側面にポートを有するカラムの結果を示し、2.5倍カラム体積流した後の低分子(例えば、リン酸)クリアランスで6対数以上減少を表示している。これらの2つの図の形状は、ほぼ同一であることから、低分子(例えば、リン酸)は、チューブの壁の内部側壁のレジン回収ポートがあることによって「デッドゾーン」内部に捕捉されることはないことが示された。
【0083】
実施例5-細菌とエンドトキシンの除去によって計測したデッドゾーンの欠如
クロマトグラフィカラムをきれいにする性能は、重要な性質である。この実験では、側面にレジン回収ポートを有するカラムが、側面にポートを有さないカラムと同様に細菌やエンドトキシンの汚染を取り除いてきれいにすることができることが示された。
【0084】
セファロース6ファーストフロー(登録商標)(GEヘルスケア)をベッド高さ20cmまで充填した内径45cmのOPUS(登録商標)カラムに、OD600の濃度が1の大腸菌の培養液を意図的に添加した。100cm/hrの速度で1倍カラム体積の細菌の培養液をポンプで送ることによってカラムに載せた。その後16時間室温にカラムを放置してインキュベートした。インキュベート後、5倍体積カラムの水を100cm/hrで流して洗浄した。洗浄後、カラムを以下の方法に従って殺菌した。
・1Mの水酸化ナトリウム水溶液を上方向に流速100cm/hrで30分間流す。
・1Mの水酸化ナトリウム水溶液を下方向に流速100cm/hrで30分間流す。
・1Mの水酸化ナトリウム水溶液を上方向に100cm/hrで2時間還流する。
・1Mの水酸化ナトリウム水溶液で1時間カラムをインキュベートする(エンドトキシンを完全に除去する為の静止殺菌)。
・pHが中性になるまで、水を流速100cm/時間で流す。
【0085】
生物的負荷とエンドトキシンを検出する為に、植菌後と殺菌後に、廃液のサンプルを採取した。結果を表4に示す。
【0086】
【表4】
実施例6-液体を用いたレジンの回収
図17A~17Cについて、この実施例は、充填カラムからレジンを回収する為に使用される、カラムの側壁にポートが設置されたシステムを示す。
図17Aと17Bには、カラムの側面に取り付けられ、レジンの回収を始める際にポートを露出する為に取り除かれるサイドガード62と、回収前に継手から取り外されるタイラップ180(
図17C)とが示されている。レジン回収サイドポートを有する内径45cmのOPUS(登録商標)クロマトグラフィカラムにセファロース6ファーストフロー(登録商標)(GEヘルスケア)レジンを20cmベッド高さに充填した。カラムの入口と出口ポートにチューブを連結した。サイドポートプラグを取り外して、1.5”TC連結を用いて1.5”チューブを連結した。クロマトグラフィ媒体は、サイドポートを介して媒体をスラリーとして捕捉する回収管内に排出させた。これは、システムの背圧が1barを超えない流速を用いて各ポートに同時に水を送り込むことによって行った。この全システムと工程とは、
図9,10に大まかに示されているが、5倍体積カラムの緩衝液を用いて実施した。
【0087】
実施例7-液体と空気とを用いたレジンの回収
この実施例は、液体と空気とを用いて充填カラムからレジンを回収する為に使用されるポートが側壁に設置されているシステムを示す。レジン回収サイドポートを有するOPUS(登録商標)充填クロマトグラフィカラムに様々なクロマトグラフィレジンを充填した。入口ポートと出口ポートの両方に同時に流体を流せるように、チューブ一式を「y」の字の姿勢でカラムの入口と出口ポートに連結した。レジンスラリーを回収する為に、別のチューブをサイドポートアセンブリに取り付けて、その自由端を適切な寸法の回収管の中に配置した。
【0088】
第1工程は、入口ポートと出口ポートに流体を同時に流して回収サイドポートを介してレジンを排出し始める工程である。これは、水(又は、好ましい溶液に置換可能である)を1~2分間の間、100cm/hrから500cm/hrまで流速を上げることによって行った。流速500cm/hrは、45cmカラムでは13.7L/分に相当する。この工程では、入口ポートへの圧力は、1barを超えなかった。水溶液を約1倍カラム体積送った後、流すのを停止した。
【0089】
次に、全ての可能なスラリー(残っているレジン)がサイドポートを介して除去されるまで、0.5bar以下の圧力で入口ポートを介して空気を供給して、空気だけを排気させた。出口は、この工程の間閉鎖していた。
【0090】
次に、カラム出口の中に水(又は好適な水溶液)を送り込んだ(上向きの流れ)。流速は、水でカラムを満たして空気を除去する間に、全ての残っているレジンを確実に再スラリー化する(例えば、再懸濁される)為に1~2分間、100cm/hrから500cm/hrまで上げた。次に、入口ポートから廃棄口に流出し始めるまで、水(又は、好ましい水溶液)をポンプで送った。この時点で、流すのを停止した。サイドポートは、この工程の間、閉鎖していた。
【0091】
水と空気の排気を用いるこれらの工程は、全てのレジン(又はレジンの90%、又は所望の回収量)がカラムから回収されるまで繰り返し行った。回収率を決定する為に回収タンク内のレジンの量を計測した。全システムと工程を、
図11~12に模式的に示した。
【0092】
1つの実験では、3倍カラム体積の水溶液を用いて、セファロース(登録商標)6FF(GEヘルスケア)媒体を内径45cmのベッド高さ20cmのレジン回収サイドポートを有するOPUS充填カラムから回収したところ、回収率は、99%であった。第2の実験では、3.25倍カラム体積の水溶液を用いて、POROS(登録商標)50HQ媒体を同じく内径45cmのベッド高さ20cmのカラムから回収したところ、回収率は、99%であった。
【0093】
別の実施形態
本発明は、この明細書と関連付けて説明されているが、上記説明は例示であって、添付の請求項の範囲によって定義される本発明の範囲を限定することを意図したものではない。その他の態様、有利点、及び変更も以下の請求項の範囲に入る。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め充填されているクロマトグラフィカラムのカラム管内の複数のフローディストリビュータの間に設けられたチャンバーから充填媒体を回収する為の方法であって、前記チャンバーは入口と、出口と、第1フローディストリビュータ及び第2フローディストリビュータの間のクロマトグラフィカラムのカラム管の壁に配置されたポートアセンブリとを有し、前記方法は、
前記ポートアセンブリのポートの外側に延びるプラグの端部にアクセスして前記ポートから前記プラグを取り外す工程と、
前記ポートアセンブリと回収タンクとの間にチューブを取り付ける工程と、
前記回収タンク内に前記クロマトグラフィカラム内から充填媒体を回収する工程と、
を備える方法。
【請求項2】
前記ポートから前記プラグを取り外す工程は、前記ポートアセンブリから前記プラグを離脱させるために前記ポートアセンブリからサニタリ継手を取り外す工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポートから前記プラグを取り外す工程は、前記クロマトグラフィカラムのカラム管の壁の開口部内を貫通して延びるポートから前記プラグを取り外す工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
貯留タンクと、前記入口、および前記出口との間にチューブを取り付ける工程と、前記貯留タンク内から、前記入口および前記出口の中を通って前記クロマトグラフィカラム内の前記チャンバーの中に溶液を送る工程とをさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記回収タンクは、前記貯留タンクである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記回収タンクは、前記貯留タンクとは別である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記クロマトグラフィカラムのカラム管から前記ポートアセンブリの中を通って前記回収タンクの中に充填媒体を送る工程をさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記クロマトグラフィカラムのカラム管から前記ポートアセンブリの中を通って前記回収タンクの中に溶液を含む充填媒体を送ることにより、前記クロマトグラフィカラムから充填媒体を前記溶液とともに除去する工程をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記回収タンク内のメッシュを通して前記充填媒体を濾過して回収する工程をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記クロマトグラフィカラムの前記充填媒体を懸濁するために十分な量及び体積で、前記クロマトグラフィカラムの前記チャンバー内に気体を送る工程をさらに備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記クロマトグラフィカラムの前記チャンバーの中に、そして前記ポートアセンブリの中を通過して外部に、そして前記回収タンクの中に、気体を送ることにより、前記クロマトグラフィカラムから前記充填媒体を除去する工程をさらに備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記クロマトグラフィカラムの前記チャンバーを満たすとともに前記チャンバー内に残っている全ての充填媒体粒子を懸濁するために、前記回収タンクから前記溶液を送る工程をさらに備える、請求項4~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
所望する量の前記充填媒体が前記回収タンクの中に送られるまで前記クロマトグラフィカラムの前記チャンバーを満たす為に気体と溶液とを送る工程をさらに備える、請求項4~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
第1端及び第2端を有する円筒状の壁を備えるカラム管と、
前記カラム管の第1端の内部に配置された第1フローディストリビュータおよび前記カラム管の第2端の内部に配置された第2フローディストリビュータであって、前記第1フローディストリビュータと前記第2フローディストリビュータとの間にチャンバーを画定する、前記第1フローディストリビュータおよび前記第2フローディストリビュータと、
前記カラム管の壁の開口部の中を通って延びて前記チャンバーに連通するポートアセンブリと
を備える、クロマトグラフィカラムであって、
前記ポートアセンブリは、前記チャンバーの内部から、前記ポートアセンブリの中を貫通して媒体の除去させるためのポートと、前記ポートの中を取り外し可能に延びて前記カラム管の壁の前記開口部から離れて延びる前記ポートの端部に対して密封された端部を有するプラグとを備える、クロマトグラフィカラム。
【請求項15】
前記ポートは、前記カラム管の壁の前記開口部の中を貫通して取り外し可能に延びており、
前記ポートの前記端部に対して密封された前記プラグの端部は、ガスケットで密封されるとともに継手で前記ポートアセンブリの内部に固定されており、且つ、前記ポートから前記プラグの取り外しを容易にするように構成されている、請求項14に記載のクロマトグラフィカラム。
【請求項16】
前記ポートは、前記カラム管の壁の前記開口部内に固定されている、請求項14または15に記載のクロマトグラフィカラム。
【請求項17】
前記ポートは、前記カラム管の壁の内側表面に傾斜したフランジを備える、請求項14~16のいずれか一項に記載のクロマトグラフィカラム。
【請求項18】
前記ポートの前記フランジは、前記カラム管の壁の内側表面を超えて6mm未満で突出する、請求項17に記載のクロマトグラフィカラム。
【請求項19】
前記ポートの前記フランジは、前記カラム内の流体に流体アクセスのない領域の形成を防止する、請求項15に記載のクロマトグラフィカラム。
【請求項20】
前記クロマトグラフィカラムは、前記チャンバーの内部に含まれた充填媒体で事前に充填されており、前記充填媒体は、前記カラム管の前記第1端または前記第2端の一方を通過して前記クロマトグラフィカラムの中に充填され、及び前記カラム管の壁の前記開口部を介して前記クロマトグラフィカラムから除去される、請求項14~19のいずれか一項に記載のクロマトグラフィカラム。