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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022040303
(43)【公開日】2022-03-10
(54)【発明の名称】眼科用手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20220303BHJP
【FI】
A61F9/007 130J
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022005907
(22)【出願日】2022-01-18
(62)【分割の表示】P 2018177627の分割
【原出願日】2018-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】390003229
【氏名又は名称】マニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田澤 祥亨
(57)【要約】
【課題】パイプに補強スリーブを被せる場合に補強スリーブの長さの自由度向上などを図る。
【解決手段】眼球内で作業する眼科用手術器具は、先端から作業部が突出しているパイプと、前記パイプに接続され、前記眼科用手術器具の軸方向に摺動することで前記パイプを摺動させる移動部材を有し、前記移動部材が、前記眼科用手術器具の根元側で前記パイプに接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼球内で作業する眼科用手術器具であって、
貫通孔を備える本体部と、
前記本体部の貫通孔の内面に接する補強スリーブと、
前記補強スリーブの内側を通り、先端から作業部が突出しているパイプと、
前記パイプに接続され、前記眼科用手術器具の軸方向に摺動することで前記パイプを摺動させる移動部材を有し、
前記補強スリーブが前記眼科用手術器具の軸方向に摺動できる第1の摺動機構、及び、前記パイプが前記眼科用手術器具の軸方向に摺動できる第2の摺動機構を備え、前記第1及び第2の摺動機構は、いずれも他方の摺動機構の影響を受けない独立の摺動機構であることを特徴とする眼科用手術器具。
【請求項2】
前記移動部材が、前記眼科用手術器具の根元側で前記パイプに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の眼科用手術器具。
【請求項3】
前記補強スリーブが軸方向にスリットを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の眼科用手術器具。
【請求項4】
前記補強スリーブが後端位置に爪部分を備え、前記爪部分が前記本体部の内側に接触することを特徴とする請求項1から3に記載の眼科用手術器具。
【請求項5】
前記補強スリーブの先端側に金属製の先端補強パイプを有し、前記パイプが前記先端補強パイプを貫通していることを特徴とする請求項1から4に記載の眼科用手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硝子体手術に用いられる硝子体用鑷子等の眼科用手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
硝子体手術は、眼球内のゼリー状の硝子体や硝子体が変性して形成された網膜上の増殖膜を切断・除去する眼科手術である。このような硝子体手術において、眼科用手術器具等を眼球内で用いる際は、まず、カニューレを眼球に取り付け、そのカニューレを通して眼科用手術器具等が挿入される(例えば、特許文献1参照)。なお、眼科用手術器具としては、硝子体を掴んで除去する硝子体用鑷子などがある。
【0003】
図5は、従来の硝子体用鑷子の使用図であって、(a)は眼球の奥側の作業状況、(b)は眼球の手前側の作業状況である。硝子体手術において眼球Eに取付けられる一般的なカニューレ20は、金属性のパイプの基端部付近を樹脂製のベースに嵌め込んだ構成になっている。
【0004】
硝子体用鑷子100は、本体部105から突出したパイプ102の先端に、硝子体を掴む作業部101が設けられた構成になっている。パイプ102は、カニューレ20を通して眼球Eの内部へ挿入されるため、非常に細い素材が使われている。
【0005】
ここで、図5(a)のように、眼球Eの深い部分の硝子体を掴む作業をする場合は、カニューレ20の外側に出ているパイプ102の長さが短いので、本体部105を動かしてもパイプ102が湾曲する虞はほとんどないが、図5(b)のように、眼球Eの手前側の硝子体を掴む作業をする場合は、カニューレ20の外側に出ているパイプ102の長さが長いので、本体部105を動かすと、図のようにパイプ102が湾曲する虞がある。そこで、パイプ102の湾曲を抑えるために、パイプ102に補強スリーブを被せることができる外科手術用プローブがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
図6は、補強スリーブを有する従来の外科手術用プローブの断面図である。特許文献2で開示されているプローブ(硝子体用鑷子)100に設けられている補強スリーブ103は、バネ110によって眼球側(カニューレ20側)に付勢されており、手術の作業中は常にカニューレ20に接触した状態になる。つまり、カニューレ20の外側に位置するパイプ102は、基本的にいつも補強スリーブ103で補強されている状態になっている。
【0007】
しかしながら、このような構成の硝子体用鑷子の場合は、バネ110の付勢力が働いていると、常に眼球を押し続けていることになるので、眼球にとって負担になるし、施術者としては、持っている本体部105にバネ110の反力を常に受けていることになるので、細かい作業をするのに邪魔になることもあり、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/126076号
【特許文献2】特開2008-194465号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような実情に鑑み、本発明は、手術中に硝子体用鑷子等のパイプが湾曲することを防止するものであって、パイプに必要な長さの補強スリーブを被せることができる眼科用手術器具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の眼科用手術器具は、眼球内で作業する眼科用手術器具であって、貫通孔を備える本体部と、その本体部の貫通孔の内面に接する補強スリーブと、その補強スリーブの内側を通り、先端から作業部が突出しているパイプと、そのパイプに接続され、眼科用手術器具の軸方向に摺動することでパイプを摺動させる移動部材を有し、補強スリーブが眼科用手術器具の軸方向に摺動できる第1の摺動機構、及び、前記パイプが眼科用手術器具の軸方向に摺動できる第2の摺動機構を備え、第1及び第2の摺動機構は、いずれも他方の摺動機構の影響を受けない独立の摺動機構であることとする。
【0011】
また、移動部材が、眼科用手術器具の根元側でパイプに接続されていることにしたり、補強スリーブが軸方向にスリットを備えることにするとよい。また、補強スリーブが後端位置に爪部分を備え、その爪部分が本体部の内側に接触することにするとよい。さらに、補強スリーブが先端側に金属製の先端補強パイプを有し、前記パイプが先端補強パイプを貫通していることにするとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パイプに補強スリーブを摺動させて被せることで、パイプが湾曲することを防ぐことができ、さらに、補強スリーブが眼科用手術器具の本体部に適度に接することで摺動の際に摩擦抵抗を受け、補強スリーブを必要な長さだけパイプに被せることができるという効果を奏する。また、補強スリーブとパイプがそれぞれ独立に摺動する機構としたことで、他の摺動機構の設計の自由度が向上する、という効果を奏する。
【0013】
また、移動部材が、眼科用手術器具の根元側でパイプに接続されていることで、補強スリーブの長さ等の構成を制限する必要が無くなる、という効果を奏する。
【0014】
また、補強スリーブが軸方向にスリットを備えるようにしたことで、補強スリーブの外径が僅かに弾性変形可能となり適切な摩擦力を選択できるようにしたとともに、補強スリーブのスリットがパイプが摺動する際の逃げ部としての役割を果たすので、互いに引きずられるようなことがなく、独立の摺動を確実にするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の眼科用手術器具であって、(a)は補強スリーブを引き込んだ状態、(b)は補強スリーブを引き出した状態である。
図2】本発明の眼科用手術器具の使用図である。
図3】補強スリーブの斜視図である。
図4】先端補強パイプが長い場合の実施例である。
図5】従来の硝子体用鑷子の使用図であって、(a)は眼球の奥側の作業状況、(b)は眼球の手前側の作業状況である。
図6】補強スリーブを有する従来の外科手術用プローブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の眼科用手術器具であって、(a)は補強スリーブを引き込んだ状態、(b)は補強スリーブを引き出した状態である。また、図2は、本発明の眼科用手術器具の使用図である。なお、眼科用手術器具10として、具体的には硝子体用鑷子を用いて説明するが、本発明の要部は摺動機構にあるので、硝子体用鑷子以外の眼科用手術器具にも適用できる。
【0018】
眼科用手術器具10の基本動作は、作動部16を指で閉じると先端の作業部11の鑷子部分が閉じ、作動部16を開くと鑷子部分が開くというものである。作業部11はパイプ12の先端から突出している鑷子部分とパイプ12の内側を通っている軸部分とからなり、作動部16の根元付近で固定されている。そして、作動部16を押したり離したりすることで、作動部16から板バネで繋がっている移動部材17が本体部15に対して軸方向に動き、さらに移動部材17に繋がっているパイプ12が軸方向に動くこと(第2の摺動機構)で、作業部11の開閉作業が行われる構造になっている。
【0019】
眼科用手術器具10の基本的な構成としては、作業部11の軸部分の外側にパイプ12、パイプ12の外側に補強スリーブ13、補強スリーブ13の外側に本体部15、本体部15の外側に移動部材17を有している。ここで、移動部材17とパイプ12とは眼科用手術器具10の根元側で繋ぐことにすると良い。そうすることで、補強スリーブ13の摺動(第1の摺動機構)とパイプ12の摺動(第2の摺動機構)とは、他方の摺動の影響を受けず、独立に行われ、同時に、他の摺動機構の設計の自由度が向上する。
【0020】
パイプ12は、カニューレ20を通して眼球Eの内部へ挿入されるため、27ゲージのような非常に細い素材が使われる。したがって、カニューレ20の外側でパイプ12が湾曲するのを防ぐ必要がある。そこで、補強スリーブ13をパイプ12に被せてパイプ12の湾曲を抑える構成になっている。補強スリーブ13は、本体部15の貫通孔を貫通していて、この貫通孔の内面に接して摺動できる部材である。
【0021】
図3は、補強スリーブの斜視図である。補強スリーブ13の本体部分は、基本的には樹脂製とし、軸方向にパイプ12が貫通できる構成である。補強スリーブ13は、スライド抓み13aを指で触れながら、本体部15及びパイプ12に対し軸方向に摺動できる構造(第1の摺動機構)になっている。ここで、補強スリーブ13は本体部15の貫通孔を貫通して取り付けられているが、貫通孔との摩擦が大きすぎると補強スリーブ13を摺動させるのが困難になり、逆に摩擦が小さすぎると手術中に補強スリーブ13が勝手に動いてしまい手術作業がし難くなる。
【0022】
そこで、補強スリーブ13と本体部15との間には適度な摩擦が働くように取り付ける必要がある。しかし、製造誤差があるので、それぞれのサイズ管理だけで補強スリーブ13と本体部15との摩擦力を適切な値に調整するのは難しい。そこで、補強スリーブ13にスリット13bを設けることで、補強スリーブ13の外径を僅かに弾性変形できる構造にしている。弾性変形できることで、本体部15の貫通孔に対して少し太めに製造しても貫通させることができ、かつ、適切な摩擦を受けながら摺動させることができる。また、補強スリーブ13にスリット13bが無い場合にパイプ12に歪みが若干でもあると、パイプ12が軸方向に摺動する際、補強スリーブ13も一緒に引きずられ摺動してしまうおそれがあるが、スリット13bがパイプ12の逃げ部としての役割を果たすことにより、補強スリーブ13が引きずられるおそれはなくなる。つまり、パイプ12の摺動(第2の摺動機構)と補強スリーブ13の摺動(第1の摺動機構)とが、それぞれ独立して行われることを確実にできる。なお、スリット13bの深さは、補強スリーブ13の径の凡そ半分程度にすればよい。
【0023】
補強スリーブ13は、眼球Eの奥側の作業をするときは、図1(a)のように本体部15の中の方に引き込み、眼球Eの手前側の作業をするときは、図1(b)のように引き出して、パイプ12に被せて使用すればよい。このとき、補強スリーブ13と本体部15とは、前述した通り、適切な摩擦力が働いているので、必要な長さだけ補強スリーブ13を引き出したところで維持することができ、また、スライド抓み13aを持って簡単に摺動させることができるので、引き出し量を変えるのも容易である。
【0024】
さらに、補強スリーブ13の後端に爪部分13cを設けてもよい。爪部分13cも弾性変形できる構造とし、補強スリーブ13が摺動できる程度の力で本体部15の内面などに押圧力を与えられるものであればよく、特に形状を限定するものではない。このような爪部分13cを有することで、任意の長さだけ補強スリーブ13をパイプ12に被せることができ、また、その状態を維持することができる。
【0025】
補強スリーブ13の先端側には、先端補強パイプ13dを備えてもよい。つまり、補強スリーブ13の本体部分、先端補強パイプ13d及びパイプ12は、全て軸を同一にし、パイプ12は、補強スリーブ13と先端補強パイプ13dの孔を貫通している構成とする。そして、先端補強パイプ13dを金属製にすることで、先端補強パイプ13dの孔を通るパイプ12との接触を正確かつ滑らかに行うことができ、補強スリーブ13とパイプ12とのガタツキを抑えることができる。
【0026】
ここで、先端補強パイプ13dを補強スリーブ13の本体部分よりも長くしてもよい。図4は、先端補強パイプ13dが長い場合の実施例である。この場合は、補強スリーブ13の先端補強パイプ13dが補強スリーブ13の本体部分の外径より小さい外径を有するとともに、本体部15の貫通孔を貫通する構造になっている。
【0027】
補強スリーブ13の本体部分としては、スライド抓み13aと爪部分13cを含めた長さ部分のみでも良く、残りの部分を全て、先端補強パイプ13dで構成して、補強スリーブ13とすることも可能である。この場合、先端補強パイプ13dは、スリット13bを有さない構成としても良い。補強スリーブ13の本体部分と先端補強パイプ13dとの接続は、圧入、かしめ、接着等適当な方法を用いることができる。なお、本実施例では、先端補強パイプ13dが長いので、補強スリーブ13とパイプ12とのガタツキをより抑えることができる。
【0028】
以上のような、補強スリーブを備えた眼科用手術器具であれば、パイプに補強スリーブを摺動させて被せることで、パイプが湾曲することを防ぐことができ、さらに、補強スリーブが眼科用手術器具の本体部に適度に接することで摺動の際に摩擦抵抗を受け、補強スリーブを必要な長さだけ引き出してパイプに被せることができるという効果を奏する。また、補強スリーブとパイプがそれぞれ独立に摺動する機構としたことで、摺動機構の設計の自由度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0029】
10 硝子体用鑷子(眼科用手術器具)
11 作業部
12 パイプ
13 補強スリーブ
13a スライド抓み
13b スリット
13c 爪部分
13d 先端補強パイプ
15 本体部
16 作動部
17 移動部材
20 カニューレ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硝子体手術に用いられる硝子体用鑷子等の眼科用手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
硝子体手術は、眼球内のゼリー状の硝子体や硝子体が変性して形成された網膜上の増殖膜を切断・除去する眼科手術である。このような硝子体手術において、眼科用手術器具等を眼球内で用いる際は、まず、カニューレを眼球に取り付け、そのカニューレを通して眼科用手術器具等が挿入される(例えば、特許文献1参照)。なお、眼科用手術器具としては、硝子体を掴んで除去する硝子体用鑷子などがある。
【0003】
図5は、従来の硝子体用鑷子の使用図であって、(a)は眼球の奥側の作業状況、(b)は眼球の手前側の作業状況である。硝子体手術において眼球Eに取付けられる一般的なカニューレ20は、金属性のパイプの基端部付近を樹脂製のベースに嵌め込んだ構成になっている。
【0004】
硝子体用鑷子100は、本体部105から突出したパイプ102の先端に、硝子体を掴む作業部101が設けられた構成になっている。パイプ102は、カニューレ20を通して眼球Eの内部へ挿入されるため、非常に細い素材が使われている。
【0005】
ここで、図5(a)のように、眼球Eの深い部分の硝子体を掴む作業をする場合は、カニューレ20の外側に出ているパイプ102の長さが短いので、本体部105を動かしてもパイプ102が湾曲する虞はほとんどないが、図5(b)のように、眼球Eの手前側の硝子体を掴む作業をする場合は、カニューレ20の外側に出ているパイプ102の長さが長いので、本体部105を動かすと、図のようにパイプ102が湾曲する虞がある。そこで、パイプ102の湾曲を抑えるために、パイプ102に補強スリーブを被せることができる外科手術用プローブがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
図6は、補強スリーブを有する従来の外科手術用プローブの断面図である。特許文献2で開示されているプローブ(硝子体用鑷子)100に設けられている補強スリーブ103は、バネ110によって眼球側(カニューレ20側)に付勢されており、手術の作業中は常にカニューレ20に接触した状態になる。つまり、カニューレ20の外側に位置するパイプ102は、基本的にいつも補強スリーブ103で補強されている状態になっている。
【0007】
しかしながら、このような構成の硝子体用鑷子の場合は、バネ110の付勢力が働いていると、常に眼球を押し続けていることになるので、眼球にとって負担になるし、施術者としては、持っている本体部105にバネ110の反力を常に受けていることになるので、細かい作業をするのに邪魔になることもあり、好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2010/126076号
【特許文献2】特開2008-194465号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような実情に鑑み、本発明は、硝子体用鑷子等のパイプを長く設定することが容易にできる眼科用手術器具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の眼科用手術器具は、眼球内で作業する眼科用手術器具であって、
先端から作業部が突出しているパイプと、
前記パイプに接続され、前記眼科用手術器具の軸方向に摺動することで前記パイプを摺動させる移動部材を有し、
前記移動部材が、前記眼科用手術器具の根元側で前記パイプに接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、移動部材が、眼科用手術器具の根元側でパイプに接続されていることで、パイプの長さを長く設定することが容易にできる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の眼科用手術器具であって、(a)は補強スリーブを引き込んだ状態、(b)は補強スリーブを引き出した状態である。
図2】本発明の眼科用手術器具の使用図である。
図3】補強スリーブの斜視図である。
図4】先端補強パイプが長い場合の実施例である。
図5】従来の硝子体用鑷子の使用図であって、(a)は眼球の奥側の作業状況、(b)は眼球の手前側の作業状況である。
図6】補強スリーブを有する従来の外科手術用プローブの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の眼科用手術器具であって、(a)は補強スリーブを引き込んだ状態、(b)は補強スリーブを引き出した状態である。また、図2は、本発明の眼科用手術器具の使用図である。なお、眼科用手術器具10として、具体的には硝子体用鑷子を用いて説明するが、硝子体用鑷子以外の眼科用手術器具にも適用できる。
【0015】
眼科用手術器具10の基本動作は、作動部16を指で閉じると先端の作業部11の鑷子部分が閉じ、作動部16を開くと鑷子部分が開くというものである。作業部11はパイプ12の先端から突出している鑷子部分とパイプ12の内側を通っている軸部分とからなり、作動部16の根元付近で固定されている。そして、作動部16を押したり離したりすることで、作動部16から板バネで繋がっている移動部材17が本体部15に対して軸方向に動き、さらに移動部材17に繋がっているパイプ12が軸方向に動くこと(第2の摺動機構)で、作業部11の開閉作業が行われる構造になっている。
【0016】
眼科用手術器具10の基本的な構成としては、作業部11の軸部分の外側にパイプ12、パイプ12の外側に補強スリーブ13、補強スリーブ13の外側に本体部15、本体部15の外側に移動部材17を有している。ここで、移動部材17とパイプ12とは眼科用手術器具10の根元側で繋ぐことにすると良い。そうすることで、補強スリーブ13の摺動(第1の摺動機構)とパイプ12の摺動(第2の摺動機構)とは、他方の摺動の影響を受けず、独立に行われ、同時に、他の摺動機構の設計の自由度が向上する。
【0017】
パイプ12は、カニューレ20を通して眼球Eの内部へ挿入されるため、27ゲージのような非常に細い素材が使われる。したがって、カニューレ20の外側でパイプ12が湾曲するのを防ぐ必要がある。そこで、補強スリーブ13をパイプ12に被せてパイプ12の湾曲を抑える構成になっている。補強スリーブ13は、本体部15の貫通孔を貫通していて、この貫通孔の内面に接して摺動できる部材である。
【0018】
図3は、補強スリーブの斜視図である。補強スリーブ13の本体部分は、基本的には樹脂製とし、軸方向にパイプ12が貫通できる構成である。補強スリーブ13は、スライド抓み13aを指で触れながら、本体部15及びパイプ12に対し軸方向に摺動できる構造(第1の摺動機構)になっている。ここで、補強スリーブ13は本体部15の貫通孔を貫通して取り付けられているが、貫通孔との摩擦が大きすぎると補強スリーブ13を摺動させるのが困難になり、逆に摩擦が小さすぎると手術中に補強スリーブ13が勝手に動いてしまい手術作業がし難くなる。
【0019】
そこで、補強スリーブ13と本体部15との間には適度な摩擦が働くように取り付ける必要がある。しかし、製造誤差があるので、それぞれのサイズ管理だけで補強スリーブ13と本体部15との摩擦力を適切な値に調整するのは難しい。そこで、補強スリーブ13にスリット13bを設けることで、補強スリーブ13の外径を僅かに弾性変形できる構造にしている。弾性変形できることで、本体部15の貫通孔に対して少し太めに製造しても貫通させることができ、かつ、適切な摩擦を受けながら摺動させることができる。また、補強スリーブ13にスリット13bが無い場合にパイプ12に歪みが若干でもあると、パイプ12が軸方向に摺動する際、補強スリーブ13も一緒に引きずられ摺動してしまうおそれがあるが、スリット13bがパイプ12の逃げ部としての役割を果たすことにより、補強スリーブ13が引きずられるおそれはなくなる。つまり、パイプ12の摺動(第2の摺動機構)と補強スリーブ13の摺動(第1の摺動機構)とが、それぞれ独立して行われることを確実にできる。なお、スリット13bの深さは、補強スリーブ13の径の凡そ半分程度にすればよい。
【0020】
補強スリーブ13は、眼球Eの奥側の作業をするときは、図1(a)のように本体部15の中の方に引き込み、眼球Eの手前側の作業をするときは、図1(b)のように引き出して、パイプ12に被せて使用すればよい。このとき、補強スリーブ13と本体部15とは、前述した通り、適切な摩擦力が働いているので、必要な長さだけ補強スリーブ13を引き出したところで維持することができ、また、スライド抓み13aを持って簡単に摺動させることができるので、引き出し量を変えるのも容易である。
【0021】
さらに、補強スリーブ13の後端に爪部分13cを設けてもよい。爪部分13cも弾性変形できる構造とし、補強スリーブ13が摺動できる程度の力で本体部15の内面などに押圧力を与えられるものであればよく、特に形状を限定するものではない。このような爪部分13cを有することで、任意の長さだけ補強スリーブ13をパイプ12に被せることができ、また、その状態を維持することができる。
【0022】
補強スリーブ13の先端側には、先端補強パイプ13dを備えてもよい。つまり、補強スリーブ13の本体部分、先端補強パイプ13d及びパイプ12は、全て軸を同一にし、パイプ12は、補強スリーブ13と先端補強パイプ13dの孔を貫通している構成とする。そして、先端補強パイプ13dを金属製にすることで、先端補強パイプ13dの孔を通るパイプ12との接触を正確かつ滑らかに行うことができ、補強スリーブ13とパイプ12とのガタツキを抑えることができる。
【0023】
ここで、先端補強パイプ13dを補強スリーブ13の本体部分よりも長くしてもよい。図4は、先端補強パイプ13dが長い場合の実施例である。この場合は、補強スリーブ13の先端補強パイプ13dが補強スリーブ13の本体部分の外径より小さい外径を有するとともに、本体部15の貫通孔を貫通する構造になっている。
【0024】
補強スリーブ13の本体部分としては、スライド抓み13aと爪部分13cを含めた長さ部分のみでも良く、残りの部分を全て、先端補強パイプ13dで構成して、補強スリーブ13とすることも可能である。この場合、先端補強パイプ13dは、スリット13bを有さない構成としても良い。補強スリーブ13の本体部分と先端補強パイプ13dとの接続は、圧入、かしめ、接着等適当な方法を用いることができる。なお、本実施例では、先端補強パイプ13dが長いので、補強スリーブ13とパイプ12とのガタツキをより抑えることができる。
【0025】
以上のような、補強スリーブを備えた眼科用手術器具であれば、パイプに補強スリーブを摺動させて被せることで、パイプが湾曲することを防ぐことができ、さらに、補強スリーブが眼科用手術器具の本体部に適度に接することで摺動の際に摩擦抵抗を受け、補強スリーブを必要な長さだけ引き出してパイプに被せることができるという効果を奏する。また、補強スリーブとパイプがそれぞれ独立に摺動する機構としたことで、摺動機構の設計の自由度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0026】
10 硝子体用鑷子(眼科用手術器具)
11 作業部
12 パイプ
13 補強スリーブ
13a スライド抓み
13b スリット
13c 爪部分
13d 先端補強パイプ
15 本体部
16 作動部
17 移動部材
20 カニューレ
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼球内で作業する眼科用手術器具であって、
先端から作業部が突出しているパイプと、
前記パイプに接続され、前記眼科用手術器具の軸方向に摺動することで前記パイプを摺動させる移動部材を有し、
前記移動部材が、前記眼科用手術器具の根元側で前記パイプに接続されていることを特徴とする眼科用手術器具。